説明

ポリカーボネートの製造方法

トランスエステル化によるポリカーボネート製造方法は、少なくとも下記工程を有する:(a)少なくとも触媒の存在下、少なくとも一種の芳香族ジヒドロキシアリール化合物をジアリールカーボネートと溶融物で反応させる工程;(b)工程(a)で製造された溶融物を発泡剤と混合する工程;(c)工程(b)からの溶融物を入口開口部を経由して溜め容器内に入れることによって脱ガスする工程。方法は、工程(c)の脱ガスを発泡によって行い、溶融物を0.1〜20kg/hの部分流に入口開口部によって分割し、入口開口部に入れるときの温度は250〜340℃に達し、溜め容器内の圧力は0.1〜20mbarに達することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融物でジアリールカーボネートと芳香族ジヒドロキシアリール化合物を反応させ、その後、発泡剤を加えて溶融物を脱ガスすることによるトランスエステル化(又はエステル交換)法によるポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融トランスエステル化法による芳香族オリゴカーボネート/ポリカーボネートの製造は、十分に周知であり、例えば、Encyclopedia of Polymer Science、Vol. 10 (1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Polymer Reviews、H. Schnell、Vol. 9、John Wiley and Sons, Inc. (1964) 、DE-C 10 31 512 等に既に記載されている。
【0003】
化学平衡反応であるために、トランスエステル化法は、つねに、高い含有量の残留モノマー、即ち、モノヒドロキシアリール化合物、ジヒドロキシアリール化合物及びジアリールカーボネートを有する生成物を生ずる。従って、ヒドロキシ末端基を低含有量で有するポリカーボネートの場合、ヒドロキシ末端基を高含有量で有するポリカーボネートの場合より、高含有量のジアリールカーボネートと低含有量のモノヒドロキシアリール及びジヒドロキシアリール化合物が測定される。後者の場合、ジアリールカーボネートの含有量はより低いが、モノヒドロキシアリール及びジヒドロキシアリール化合物含有量はより高い。更に、分子量が増加するとともに、残留モノマー含有量は低下することが認められる。特に脱ガスによって溶融物(融解物又は溶解物)から残留モノマーは除去される。
【0004】
残留モノマーは、ポリカーボネートの加工の間に加工機の型にコーティングを生ずるので、残留モノマーは低含有量であることが望ましい。更に、残留モノマーの熱安定性は低いので、残留モノマーを高含有量で有するポリカーボネートは、熱安定性に関して、劣る性質を示す。また、残留モノマーは、ポリカーボネートの機械的破壊性について逆の効果を有する。例えば食料品又は医療分野等の選ばれた用途では、残留モノマーは、迷惑で望ましくないものとして考えられる。
【0005】
溶融トランスエステル化法によって製造されるポリカーボネートの場合、残留モノマーの最大の部分は、しばしばジアリールカーボネート成分、特にジフェニルカーボネートである。従って、揮発性構成要素を除去する際に特にこれらの成分を除去することが望ましい。特に大量のジアリールカーボネート成分は、光情報媒体に好ましく使用されるような、相当低分子量で、1.18〜1.22の相対粘度という結果をもたらす。
【0006】
更に問題は、脱ガスの間の化学反応により、ポリカーボネートから、低分子量構成要素、例えば、ヒドロキシアリール化合物、ジヒドロキシアリール化合物及び炭酸エステル等が再生成することであり、このことが脱ガスを更により困難にする。
【0007】
溶融トランスエステル化法とその後の追加の脱ガス工程を用いる残留モノマーの除去によって、ポリカーボネートを製造する種々の方法が既知である。これらの方法では、脱ガスする前に、ポリカーボネート中の残留触媒活性を低下させることが好ましい。触媒活性の低下は、抑制剤として酸成分、例えば、リン酸、硫酸、亜硫酸、トルエンスルホン酸等を加えることで行われる。
【0008】
触媒活性を減少させるそのような成分の添加及び混合は、技術的経費の増加を必要とする。更に、上述の成分は、重合と脱ガスを行う装置を通常製造するための材料に対して高い腐食作用をしばしば有する。更に、加えられる成分、例えばリン酸等は、次の脱ガス工程で、他の揮発性構成要素と一緒にポリカーボネートから分離し、装置内に蓄積し、腐食の結果として装置に損傷をもたらし得る。分離された揮発性構成要素(触媒抑制成分を含む)を、再び装置の回路に戻す場合、この方法では触媒抑制成分は重合反応の進行を抑制し得るので、反応の実行に関して逆の効果が更に予想される。
【0009】
更に、溶融トランスエステル化法によるポリカーボネートの製造の問題は、低下させた分圧下で脱ガス段階での滞留時間が長すぎるということである。もし溶融物が十分に反応性の場合、このことは脱ガス工程での分子量の相当の増加をもたらし得、それは脱ガスに望ましくない。
【0010】
US 5 852 156 は、窒素流れの下、発泡させることなく、溶融物を低圧ゾーンに通す、溶融トランスエステル化法によるポリカーボネートの製造方法を開示する。溶融物は、自由に落下しないが、垂直に(又はタテ型に)配置されたワイヤー(針金又は線)に沿って下方に流れるので、このゾーンの滞留時間は増加する。この方法では、脱ガス工程の間に分子量の相当の増加が観察される。
【0011】
EP 1 095 957 A 及び EP 1 095 960 A は、US 5 852 156 の方法と同様な方法を開示する。不活性ガスがオリゴマー溶融物に溶かされる。その後、溶融物を、発泡させながら、低圧下のゾーンに開放する。発泡は反応生成物の除去をもたらし、重合が進行し得る。垂直に配置されたワイヤーを用いて、滞留時間を延長し、その結果、脱ガス工程で分子量は著しく増加する。溶融物を開放する前に、溶融物を加熱しない。
【0012】
EP 914 355 A は、制限された溶解性を有する分離剤の導入とその後場合により発泡させながら低圧下の分離器内にポリマー溶液を解放することを開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、残留含有量が低いモノマー及び他の揮発性構成要素、例えば、モノヒドロキシアリール化合物、ジヒドロキシアリール化合物及びジヒドロキシアリールカーボネート等を有するポリカーボネートの溶融トランスエステル化法による製造方法を提供することである。本発明の範囲内で、モノマー及び他の揮発性構成要素が低残留含有量であるとは、200ppmより少ない、好ましくは100ppmより少ない含有量であることを意味すると理解される。可能であれば、方法は、抑制剤、即ち触媒を不活性にする化学成分を加えることなく、又は極めて少量のみの抑制剤を用いて行うべきである。抑制剤が少量であるとは、50ppmより少ない量、好ましくは20ppmより少ない量、特に好ましくは5ppmより少ない量であることを意味する。更に、その方法では、脱ガスの間に、100ppmより多くない、低分子量構成要素、即ち、モノヒドロキシアリール化合物、ジヒドロキシアリール化合物及びジヒドロキシアリールカーボネートのほんのわずかの再生成を生ずべきであり、ポリカーボネートの分子量は、ほんのわずか、(即ち、2000g/モルより多くない)増加するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも下記工程:
(a) 少なくとも触媒の存在下で、ジアリールカーボネートと少なくとも一種のジヒドロキシアリール化合物を溶融物で反応させる工程、
(b) 工程(a)で得られる溶融物を発泡剤と混合する工程、
(c) 工程(b)からの溶融物を、分離容器への入口開口部を通すことで脱ガスする工程
を含んで成るトランスエステル化法によるポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は、工程(c)に基づく脱ガスは、発泡して行われ、溶融物は、0.1〜20kg/hの部分流に入口開口部によって分割され、入口開口部に入る際の温度は250〜340℃であり、分離容器内の圧力は0.1〜20mbarであることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
工程(a)、(b)及び(c)に基づく溶融トランスエステル化法による本発明のポリカーボネート製造方法は、不連続的でも連続的でもよい。各々の工程(a)、(b)及び(c)は、一段階又は複数段階で行うことができる。
【0017】
本発明に関する製造方法の方法(又はプロセス)技術に関し、原則として工程(a)は、先行技術から既知の装置を用いて、先行技術から既知の条件下で行うことができる。例としてDE 10 114 808 A 又は DE 10 119 851 A に基づく手順を本明細書で言及できる。連続手順が、有利な生成物品質、例えば、末端基含有量、着色及び粘度の均一性等の理由で好ましい。
【0018】
少なくとも一種のジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネート、及び場合により更なる化合物が溶融物の形態になるとすぐに、適する触媒の存在下反応は開始する。トランスエステル化反応の転化率、又はポリカーボネートの分子量は増加して、所望の重合最終生成物に達する。例えば、重合の間に分離するモノヒドロキシアリール化合物を、温度を高め圧力を低下させることで取り出して、このことを達成することができる。末端基の濃度及び性質は、ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートとの比の選択によって、蒸気を経由するジアリールカーボネートの損失速度によって(それは、重合を行う装置と手順に依存する)、更に例えばより高沸点のモノヒドロキシアリール化合物等の追加の化合物によって決められる。
【0019】
ポリカーボネートの連続製造方法は、複数段階で行うことが好ましく、まず、ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートとの、場合により更なる反応物との、予備的縮合が、形成するモノヒドロキシアリール化合物を分離することなく、触媒を用いて行われる。その後、温度が段階的に高められ、圧力が段階的に下げられる複数の反応蒸発器段階で、分子量が所望の値まで高められる。
【0020】
個々の反応蒸発器段階に適する装置、器具、器械、設備及び反応器は、先行技術から十分に周知である。方法の順序に基づいて、それらは、熱交換器、圧力解放(又はフラッシュ)装置、分離器、カラム、蒸発器、攪拌槽及び攪拌反応器又は選択される温度及び圧力で必要な滞留時間を提供する他の装置である。選択される装置は、必要な熱の導入を可能としなければならず、連続的に増加する溶融粘度に適するように構成されなければならない。
【0021】
好ましい連続手順において、反応物を一緒に溶かすことができ、又は固体のジヒドロキシアリール化合物をジアリールカーボネートの溶融物に溶かすことができ、又は固体のジアリールカーボネートをジヒドロキシアリール化合物の溶融物に溶かすことができる。ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートを、好ましくは直接それらの製造物からの各々溶融物の形態で、一緒にすることも可能である。それらを組み合わせる前の原料溶融物の滞留時間、特にジヒドロキシアリール化合物の溶融物の滞留時間は、可能な限り短く調整される。他方、原料の混合物は融点がより低いので、相応するより低い温度にて個々の原料と比較すると、溶融物の混合物は、品質の損失無く長期間滞留することができる。
【0022】
触媒、好ましくはフェノールに溶けるものを溶融物に加える。その後、溶融物を反応温度に上げる。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとジフェニルカーボネートからポリカーボネートを製造する商業的に重要な方法の場合、開始温度は、180〜220℃、好ましくは185〜210℃、極めて特に好ましくは185〜195℃である。15〜90分間、好ましくは30〜60分間の滞留時間内で、生成するヒドロキシアリール化合物を除去することなく、反応平衡を達成する。反応は大気圧で行うことができるが、技術的な理由から、過圧下で行うこともできる。商業上の設備での好ましい圧力は、2〜15bar(絶対圧力)である。
【0023】
その後、溶融物の混合物を、100〜400mbar、好ましくは150〜300mbarに圧力が調整される第一真空チャンバー内に解放(又はフラッシュ)し、その後適する装置例えば、生成物は上から下へと流れる、垂直に(又はタテ型に)配置されるチューブ(又は管)を有するチューブバンドル(又は管束)装置で入口温度に再加熱する。解放操作の間に、生成するヒドロキシアリール化合物を、存在するいずれかのモノマーと一緒に蒸発で取り除く。溜め容器(又は溜め受器)内に5〜30分間の滞留時間後、場合により、同じ圧力同じ温度でポンプを用いて循環させて、反応混合物を、50〜200mbar、好ましくは80〜150mbarの圧力の第二真空チャンバー内に解放し、その後適する装置内で、同じ圧力で、190〜250℃、好ましくは210〜240℃、特に好ましくは210〜230℃に直接加熱する。ここでも生成するヒドロキシアリール化合物は存在するいずれかのモノマーと一緒に蒸発する。溜め容器内に5〜30分間の滞留時間後、場合により同じ圧力同じ温度でポンプを用いて再循環して、反応混合物を、30〜150mbar、好ましくは50〜120mbarの圧力の第三真空チャンバーに解放し、その後適する装置内で、同じ圧力で、220〜280℃、好ましくは240〜270℃、特に好ましくは240〜260℃の温度に、直接加熱する。ここでも生成するヒドロキシアリール化合物は、存在するいずれかのモノマーと一緒に蒸発する。溜め容器内に5〜20分間の滞留時間後、場合により同じ圧力同じ温度でポンプを用いて再循環して、反応混合物を、5〜100mbar、好ましくは15〜100mbar、特に好ましくは20〜80mbarの圧力の更なる真空チャンバーに解放し、その後適する装置内で、同じ圧力で、250〜300℃、好ましくは260〜290℃、特に好ましくは260〜280℃の温度に、直接加熱する。ここでも生成するヒドロキシアリール化合物は、存在するいずれかのモノマーと一緒に蒸発する。
【0024】
この場合、例えば4回のこれらの反応蒸発器段階の回数は、2〜6であってよい。もし、段階の回数を変更する場合、匹敵する結果を得られるように当業者に既知の方法で、温度と圧力を相応ずるよう適合させるべきである。これらの段階で達成されるオリゴマーカーボネートの相対粘度は、1.04〜1.20、好ましくは1.05〜1.15、特に好ましくは1.06〜1.10である。
【0025】
相対粘度は、ポリマー溶液の粘度と純粋な溶媒の粘度との比として測定される。一般に、ジクロロメタン中25℃で、1リットルの溶媒に対するポリマー5gの濃度にて測定する。
【0026】
溜め容器内に5〜20分間の滞留時間後、場合によりポンプを用いて再循環して、最後のフラッシュ(急速な蒸発:flash)段階又は蒸発器段階と同じ圧力及び同じ温度で、そのようにして製造されるオリゴカーボネートを、更に、250〜310℃、好ましくは250〜290℃、特に好ましくは250〜280℃で、1〜15mbar、好ましくは2〜10mbarの圧力で、30〜90分間、好ましくは30〜60分間の滞留時間で、ディスク型反応器(disk reactor)又はバスケット型反応器(basket reactor)内に供給し、濃縮(又は凝縮)する。ポリカーボネートは、1.12〜1.28、好ましくは1.13〜1.26、特に好ましくは1.13〜1.24の相対粘度に達する。
【0027】
この反応器を離れる溶融物は、更なるディスク型反応器又はバスケット型反応器で、所望の最終粘度又は所望の最終分子量に導かれる。温度は、270〜330℃、好ましくは280〜320℃、特に好ましくは280〜310℃であり、圧力は0.01〜3mbar、好ましくは0.2〜2mbarであり、滞留時間は60〜180分間、好ましくは75〜150分間である。相対粘度は、目的とする用途に要求される水準に調整され、1.18〜1.40、好ましくは1.18〜1.36、特に好ましくは1.18〜1.34である。
【0028】
直列で配置される二つのバスケット型反応器又はディスク型反応器の二段階手順の代わりに、バスケット型反応器又はディスク型反応器の一段階でポリカーボネートオリゴマーの重合を行うことも可能である。
【0029】
全ての方法の段階からの蒸気は、直ちに取り出され、集められ、処理される。処理は、一般に、回収された材料を高純度にするために、蒸留によって行われる。これは、例えば、DE 10 100 404 A に基づいて行うことができる。最も純粋な形態の分離されたモノヒドロキシアリール化合物の回収及び分離は、経済的な観点から自明である。モノヒドロキシアリール化合物は、ジヒドロキシアリール化合物又はジアリールカーボネートの製造に直接用いることができる。
【0030】
バスケット型反応器又はディスク型反応器は、長い滞留時間を有し、真空中で、絶えず更新される極めて大きな表面積を供給するという事実によって特徴付けられる。ジオメトリーに関して、バスケット型反応器又はディスク型反応器は、生成物の溶融粘度に基づいて作られる。適する反応器は、例えば、DE 44 47 422 C2、WO 02/44244、WO 02/85967 又は EP-A 1 253 163 に記載され、又は二軸反応器(twin-shaft reactor)は、WO 99/28 370 に記載されている。
【0031】
オリゴカーボネート(極めて低分子量のオリゴカーボネートを含む)とポリカーボネートは、一般に、種々の種類のスクリューポンプ又はギアポンプ又は特別な種類のディスプレイスメント・ポンプ(displacement pump)を用いて運ばれる。
【0032】
装置、設備、機器、反応器、パイプ、ポンプ及びバルブを製造するために特に適する材料は、タイプCのNi−系合金とCr Ni(Mo)18/10タイプのステンレススチールである。ステンレススチールは、約290℃のプロセス温度まで使用され、Ni−系合金は、約290℃を超えるプロセス温度で使用される。
【0033】
工程(a)に基づいて得られるポリカーボネート溶融物から開始して、工程(b)に基づいて発泡剤を添加することにより、及び工程(c)に基づいて、ポリカーボネート溶融物を部分流に分割し、低圧にすることによる少なくとも一種の発泡脱ガス工程によって、低分子量構成要素を低含有量で有するポリカーボネートを得られる。本発明の範囲内で、低分子量構成要素が低含有量であるとは、200ppmより少ない、好ましくは100ppmより少ない含有量であることを意味するとして理解される。
【0034】
工程(c)に基づいて除去されるべき低分子量構成要素とは、モノヒドロキシアリール化合物、ジヒドロキシアリール化合物及びジヒドロキシアリールカーボネート、例えばフェノール、ビスフェノールA及びジフェニルカーボネートを含む。
【0035】
本発明に基づく方法は、実質的に分子量を増加させることなく、モノマーの有害な再生成を相当抑制しながら、分圧を低下させることで、ポリカーボネートを脱ガスすることを可能とする。最高100ppmの低分子量構成要素が再生する。更に、ポリカーボネートの分子量は、工程(c)に基づく脱ガスの間に最高2000g/モル増加する。溶融物に発泡剤が加えられ、溶融物流れが一又はそれ以上の入口開口部を経由して分離容器(以後、「脱ガス容器」ともいう)内に移るので、分圧を低下させながら、真空中の溶融物の短い滞留時間で、効果的な脱ガスが可能である。発泡剤を加えることにより、溶融物の表面積は、著しく増加し、除去すべき揮発性物質の分圧は、更に低下する。
【0036】
発泡剤とは、一般に、高い蒸気圧を有し、容易に揮発する物質をいう。ポリカーボネート溶融物の発泡は、発泡剤の高い蒸気圧によって開始される。発泡は、表面積の相当の増加をもたらし、それは、脱ガスに有利である。更に、ポリマー中の溶媒又は他の揮発性構成要素の残渣の分圧の低下が、分離器の気相で生じ、その結果、揮発性構成要素のより低い残留含有量が、原則期待される。
【0037】
不活性ガス又は不活性液体又は不活性ガス及び/又は液体の混合物を、発泡剤として好ましく使用する。適する発泡剤の例は、窒素、二酸化炭素、水、メタン及びヘリウムである。使用される発泡剤は、特に好ましくは水、二酸化炭素又は窒素であり、特に好ましくは窒素である。
【0038】
本発明の範囲内で、もし発泡脱ガスを複数回連続して行うと、脱ガスの成功が実質的に増加することが更に見出された。そのため、工程(b)に基づいて、発泡剤を、各発泡脱ガス工程(c)の前に加える。複数段階の脱ガスを行う際に、好ましくない後重合、低分子量物質の再生成、変色及び劣化を防止するために、滞留時間は、全体で短いままであることを確保するべきである。短い滞留時間は、装置の適切な構造(配置又は形状)によって達成するべきである。もし、発泡脱ガスを複数の段階で行うならば、個々の段階を正確に同じ仕方で行う必要はない。用途に応じて、即ち、処理量、生成物の粘度及び温度に応じて、部分流の分割、発泡剤の量、入口開口部の直径及び温度について、種々変えて行ってよい。
【0039】
ポリカーボネート溶融物中の発泡剤の分散性及び溶解性を向上させるために、スタティックミキサー(又は静的ミキサー)の圧力を、適する装置、例えば圧力保持バルブ又はスロットルによって増加することができる。圧力が増加するとともに、大量の揮発性物質が溶融物中に溶解できることは、当業者に既知である。
【0040】
発泡剤は、工程(b)でポリカーボネート溶融物に分配される。発泡剤を分散及び溶解させるためにスタティックミキサーを用いることが好ましい。高粘性のポリカーボネート溶融物を混合するためのスタティックミキサーの常套の態様は、先行技術から十分に既知である。スタティックミキサーは、SMXミキサーの構造を有することが好ましく、それは、例えば、Arno Signer、Statisches Mischen in der Kunststoffverarbeitung und-herstellung、Plastverarbeiter 11(43)、1992 に詳細に記載されている。EP 947 239 A 又は US 6 394 644 B に基づくスタティックミキサーも好ましく使用することができる。例えば、ミキサーを通って物質が流れる方向に段階的に又は縦列(又はカスケード)で、特に好ましくは内径を自由に減少することができる、種々の混合要素のために、ミキサーの長さ方向に沿って、内径を自由に変えられるSMXミキサーが特に好ましい。
【0041】
ポリカーボネート溶融物中の発泡剤の分散性及び溶解性を向上するために、スタティックミキサー中の圧力を、適する装置、例えば圧力保持バルブ又はスロットルを用いて増加させることができる。圧力が増加するとともに、大量の揮発性物質が溶融物に溶解できることは当業者に周知である。
【0042】
解放する(又はフラッシュする)前に、工程(c)に基づいて入口開口部内に入れる際のポリカーボネートの性質、特に、一又はそれ以上の相が存在することは、方法の安定のために及び脱ガスの成功のために決定的である。もし、発泡剤を含む全ての揮発性成分を、解放する前に完全に溶かすと、脱ガスは著しく成功する。本発明の範囲内で、完全に溶かす(又は溶解する)とは、その中に溶媒を含み発泡剤が加えられたポリカーボネート溶融物が、単一相の混合物を形成することを意味する。その後、入口開口部に入れる際にポリカーボネート溶融物は気泡や滴を有さない。
【0043】
特に混合された発泡剤は、完全に溶解するべきである。この点に関して、発泡剤がポリカーボネート溶融物に完全に溶けるように、発泡剤の量、圧力及び温度は選択される。特定量の発泡剤が完全に溶解するために必要な圧力と温度は、該発泡剤の性質に依存する。当業者にとって、所定温度のポリカーボネート溶融物に対して、溶かすことができる発泡剤の最大量は圧力が上昇することで増加するということは周知である。
【0044】
入口開口部内に入れる際、圧力解放後、ポリカーボネート溶融物の活発な発泡を生じさせるために、たとえ少量でも十分なように、発泡剤を選択するべきである。本発明に基づく方法の範囲では、少量とは、ポリマーの重量を基準として、ポリカーボネート溶融物に、0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%、特に好ましくは0.05〜0.3重量%の発泡剤を加えることを意味する。少量の発泡剤にもかかわらず、解放は、ポリカーボネート溶融物の発泡を伴い行われる。
【0045】
溶融物中で、調整された濃度の発泡剤で、脱ガス工程(c)の入口開口部に入れる際に、一般的な温度に対する発泡剤の蒸気圧は、1〜100bar、好ましくは2〜60bar、特に好ましくは10〜40barである。
【0046】
発泡剤の混合前、混合中又は混合後に、ポリカーボネート溶融物を加熱又は冷却、好ましくは加熱することができる。高温(又は温度上昇)とは揮発性成分がより高い蒸気圧であることを意味し、その結果、泡の形成が次の脱ガスで助けられ、揮発性成分の分離がより容易であることを意味する。ポリマー溶融物を加熱し又は冷却するために適する装置及び機材、例えば、管式熱交換器(tubular heat exchanger)、平板熱交換器(plate heat exchanger)又はスタティックミキサーを備えた熱交換器は、当業者には周知である。
【0047】
工程(c)に基づいて、発泡剤を加える地点から入口開口部内に入れるまで、溶融物の温度変化は、100℃より大きくなく、90℃より大きくないことが好ましい。入口開口部に入れる際のポリカーボネート溶融物の温度は、250℃〜340℃であることが好ましく、260℃〜320℃であることが特に好ましい。もし、例えば、入口開口部及び解放要素として、加熱可能チューブを用いると、入口開口部に入れた後、脱ガス容器に入るまで、ポリカーボネート溶融物の更なる加熱も可能である。入口開口部に入れるときと分離容器に入れるときとの間の温度差は、100℃より大きくないことが好ましく、80℃より大きくないことが特に好ましい。
【0048】
工程(c)に基づいて、ポリカーボネート溶融物を、0.1〜20kg/hr、好ましくは0.125〜10kg/hr、特に好ましくは0.15〜5kg/hrの部分流で、入口開口部を経由して、分離容器に入れる(又は導入する)。
【0049】
ポリカーボネート溶融物を、0.1〜20mbar、好ましくは0.3〜10mbar、特に好ましくは0.5〜5mbarの低圧の分離容器内に解放する。脱ガス容器内に入れる際に、ポリカーボネート溶融物の温度は、本発明に基づいて、250〜340℃、好ましくは260〜320℃、特に好ましくは270〜300℃である。
【0050】
ポリカーボネート溶融物を、入口開口部を経由して上から分離容器内に入れる。従って、入口開口部は、分離容器の上部に配置する。入口開口部は、分離容器の上部の、特に一つの平面内に配置するが、入口開口部は、種々の平面内に配置してもよい。
【0051】
入口開口部は、解放要素として機能する。これらの解放要素のための必須の設計基準は、それらによって生ずる圧力損失である。圧力損失は、ポリマー溶融物の粘度によって与えられ、それは順に生成物の種類、発泡剤と揮発性構成要素の濃度と温度、及び解放要素の構造(形状又はジオミトリー)と処理量に依存する。穴の直径、質量流速度、ポリカーボネート溶融物の粘度と圧力損失との間の関係は、当業者に、周知である。圧力損失を解釈する際に、当業者は、同伴剤の影響を無視することができ、その結果、既知の技術法則に基づいて解釈することができる。圧力損失を調整して、入口開口部に入れる前の発泡を防止するために、入口開口部に入れる前の絶対圧力を十分に高くするべきである。溶融物が入口開口部に入るまで、発泡は生じない。
【0052】
適する入口開口部は、例えば、プレート(又は板)(以下「ノズルプレート」ともいう)中の、穴又はスリット(以下「ノズル」ともいう)である。ノズルは、ノズルプレート中の穴として設計することが好ましい。原則として、プレートは、いずれかの適する厚さを有してよい。
【0053】
本発明に基づく方法の好ましい態様において、ポリカーボネート溶融物の部分流れは、水平に配置されるプレート中のノズルを経由して、各々導かれる。穴は、低圧状態で存在する分離容器中に直接達する。ノズルの好ましい直径は、0.8〜5mm、特に好ましくは1〜4mmである。
【0054】
チューブも入口開口部として使用することができる。好ましくは、チューブを垂直に(又はタテ型)に配置し、ポリカーボネート溶融物は、チューブを経由して上から下に流れる。チューブの直径は、好ましくは4〜20mmであり、特に好ましくは5〜15mmである。
【0055】
本発明に基づく方法の更に好ましい態様において、チューブを熱交換器として使用する。このために、それらは特に平行な束の形態で配置され、熱媒体、好ましくは液体熱伝達油又は凝縮スチーム又は熱伝達油蒸気等によって囲まれる。チューブの長さは、300〜2500mmであることが好ましく、500〜2000mmであることが特に好ましい。
【0056】
従って、管式熱交換器のチューブは、直接分離容器内に達する。個々のチューブは、ポリカーボネート溶融物が、管式熱交換器内に入る際に泡を生じないように形成される。所定の圧力損失を保持するために、チューブはノズルによってより狭くされる。各チューブの圧力損失は、チューブの入口と出口の両方の揮発性構成要素の割合、処理量、チューブの入口と出口の温度、ポリカーボネートの状態に依存する。分離器へのチューブの外側でのみ、即ち分離容器の入口開口部でのみ、ポリマーフォームは形成される。チューブの直径は、4〜20mmであることが好ましく、5〜15mmであることが特に好ましい。圧力損失を増加させるために使用されるノズルは、0.8〜5mm、好ましくは1〜4mmの直径を有する。チューブ当たりの質量流速度は、0.1〜20kg/hrである。
【0057】
管式熱交換器を用いる本発明に基づく方法の実行は、上述したように、ポリマー溶融物を加熱又は冷却する好ましい方法を提供する。
【0058】
入口開口部同士の間隔(中点と中点の間隔を測定する)、従って、分離容器中に入る際の部分流同士の間隔は、5〜50mm、好ましくは10〜40mm、特に好ましくは15〜25mmである。
【0059】
分離容器中のポリカーボネート溶融物の滞留時間は、適切な脱ガスが可能なように十分に長くなければならない。他方で、滞留時間は、ポリカーボネートの製品品質に影響を与えないように、あまりに長すぎてはならない。工程(c)の分離容器中のポリカーボネート溶融物の滞留時間は、好ましくは10分間より長くなく、特に好ましくは5分間より長くない。
【0060】
本発明に基づく方法の更なる変更において、滞留時間は、ガイド要素(又は案内要素)によって影響され得る。ガイド要素は、滞留時間を拡大し、同時にポリカーボネート溶融物の表面を増加させる機能を有する。
【0061】
ガイド要素は、例えば、穴のあいたシート(又は板)、形彫りされた(又は形が切り抜かれた)シート、ワイヤー(針金又は線材)、金属網、鎖(連鎖又は連環)、任意の断面を有する狭い金属片等から構成され、好ましくは実質的に水平に配置される。そのようなガイド要素の例は、例えば、DE-A 10 144 233 又は EP-A 1 095 960 に開示されている。特に好ましいガイド要素は、ワイヤーの形態で形成され、分離容器内に実質的に水平に配置される。ポリカーボネート溶融物の脱ガスは、それによって、ポリカーボネートの有害な分裂を生ずることなく、著しく向上する。
【0062】
ワイヤーは、互いに接触せず、実質的に水平に配置される限り、実質的にいずれかの所望の方法で配置することができる。本発明の範囲内において、実質的に水平とは、水平から最大のずれが、20°であることを意味する。特に、二つ又はそれ以上のワイヤーは、例えば、交差することによって相互に接触するべきではない。例えば、複数のワイヤーを、複数の平面に設けてもよく、一つの平面のワイヤーも異なる平面のワイヤーも互いに接触しない。もし一つの平面に複数のワイヤーが設けられる場合、これらは実質的に互いに平行であってよい。特に、一つの平面のワイヤーは、20°を超えない角度を有するべきである。更に、もし、複数の平面にワイヤーが設けられる場合、異なる平面のワイヤーは、互いにいずれかの任意の角度で配置されてよい。異なる平面のワイヤーは、180°を超えない、特に好ましくは30〜150°、最も特に好ましくは70〜110°の角度を形成することが好ましい。もし、一つの平面の個々のワイヤーが平行に張られないならば、異なる平面のワイヤーのねじり角は、中線を用いて定められる。
【0063】
1〜5mmの直径を有するワイヤーが好ましく、2〜4mmの直径を有するワイヤーが特に好ましい。
【0064】
実質的に水平に配置されるワイヤー(それは分離容器の向かい合う壁の間に張られることが好ましい)の長所は、効果的な表面再生、従って、ガス空間とポリカーボネート溶融物との間の良好な物質移動(又は物質伝達)が、ワイヤーの金属材料とポリカーボネート溶融物との間の最小の接触面積(又は領域)で行われ得るということである。タテ型に配置されるワイヤーを用いると、最も好ましくない場合、相当粘性のポリマー溶融物の大量の蓄積物(又はホールドアップ)が形成され得、即ち、ポリカーボネート溶融物がワイヤー上に積み重なる。これは、望ましくない滞留時間分布又はポリマーの劣化をもたらし、分子量の増加と揮発性構成要素の再生成をもたらす。これらの全ては、生成物の品質に関して、有害であり得る。更に、例えば、EP-A 1 095 960 に記載のように、ワイヤーでできたネットワーク、メッシュ(又は網)、ファブリック等は、ワイヤーの交点でポリカーボネート溶融物の大きな妨害物を形成する傾向にあり、ポリマー劣化をもたらす傾向にあるということが実験的に見出された。水平に張られるワイヤーは、更にフォームストランドの良好な分配を生じ、従って、物質交換のために効果的に拡大した表面を生ずる。
【0065】
他の同じガイド要素を用いると、ポリカーボネートのより高い粘度は、より大きな蓄積物、より大きな層厚及びより長い滞留時間をもたらす。
【0066】
ポリカーボネート溶融物は、分離容器内を下方に、溜め容器の中に下り、適する排出装置、例えば、歯車式ポンプ(又はギアポンプ)又は排出押出機(discharge extruder)によって、それから取り出される。取り出しは、歯車式ポンプを用いて好ましく行うことができる。分離容器の床は、先端が下方に向いている円錐形であることが好ましい。水平に対する円錐の角度は、20〜60°であることが好ましく、30〜45°であることが特に好ましい。処理量が極めて大きい場合(例えば、1時間当たり12トンより大きい場合)、分離容器の床は複数の円錐から成り、その各々はその最も深い地点で排出装置を有する構成を選択することもできる。
【0067】
工程(c)で分離される低分子量化合物は、発泡剤から分離することができ、処理工程へ供給することができる。そのことによって、分離される揮発性構成要素は、その相当量は、方法で使用されるジアリールカーボネートから成るが、ポリカーボネートの製造方法にフィードバックすることができる。
【0068】
更に、本発明に基づく方法において、工程(a)で得られるポリカーボネートのフェノール性OH基の濃度は、100〜450ppmであることが好ましい。
【0069】
工程(a)の触媒は、少なくとも80重量%の範囲までに特に熱によって不活性化することが好ましい。触媒の活性は、それによって極めて減じられるので、反応は、工程(b)で継続することが防止される。
【0070】
工程(c)の更なる反応を防止するために、本発明の好ましい態様において、溶融物に抑制剤を加えることもできる。工程(a)の触媒が少なくとも80重量%の範囲までに不活性化されない場合、このことは特に行われる。抑制剤とは、決定的に、化学反応の反応速度を抑制する化合物であると理解される。従って、ポリマーへの品質低下の変化を避けることができる。熱的方法による低分子量化合物の含有量を減らすために、重合反応が完了するとすぐに、モノマーと反応生成物を含むポリマーの製造後、抑制剤の添加が必要である。
【0071】
溶融トランスエステル化法によって製造されるポリカーボネートのために適する抑制剤は、ルイス酸又はブレンステッド酸等の酸成分又は強酸のエステルが好ましい。酸のpKa値は、5より大きくなく、3より小さいことが好ましい。適する酸成分の例は、オルトリン酸、亜リン酸、ピロリン酸、次リン酸、ポリリン酸、ベンゼンホスホン酸、リン酸二水素ナトリウム、ホウ酸、アリールボロン酸、塩酸(塩化水素)、硫酸、アスコルビン酸、シュウ酸、安息香酸、サリチル酸、ギ酸、酢酸、アジピン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及び他の全てのフェニル置換ベンゼンスルホン酸、硝酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ステアリン酸及び他の脂肪酸、酸塩化物例えばクロロギ酸フェニルエステル、塩化ステアリル、アセトキシ−BP−A、塩化ベンゾイル、及びエステル、半エステル及び上述の酸の橋かけエステル、例えば、トルエンスルホン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、硫酸ジメチル、ボロン酸エステル、アリールボロン酸エステル等及び水の影響下、酸を生ずる他の成分、例えばトリ−イソ−オクチルホスフィン、Ultranox640及びBDP(ビスフェノールジホスフェートオリゴマー)である。
【0072】
オルトリン酸、亜リン酸、ピロリン酸、次リン酸、ポリリン酸、ベンゼンホスホン酸、リン酸二水素ナトリウム、ホウ酸、アリールボロン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンセンスルホン酸及び他の全てのフェニル置換ベンゼンスルホン酸、酸塩化物例えばクロロギ酸フェニルエステル、塩化ステアリル、アセトキシ−BP−A、塩化ベンゾイル、及びエステル、半エステル及び上述の酸の橋かけエステル、例えば、トルエンスルホン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ボロン酸エステル、アリールボロン酸エステル等及び水の影響下、酸を生ずる他の成分、例えばトリ−イソ−オクチルホスフィン、Ultranox640及びBDPが好ましく適する。
【0073】
オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、ベンゼンホスホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンセンスルホン酸及び他の全てのフェニル置換ベンゼンスルホン酸、及びエステル、半エステル及び上述の酸の橋かけエステル、例えば、トルエンスルホン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル等及び水の影響下、酸を生ずる他の成分、例えばトリ−イソ−オクチルホスフィン、Ultranox640及びBDPが特に好ましく適する。オルトリン酸、ピロリン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンセンスルホン酸及び他の全てのフェニル置換ベンゼンスルホン酸、及びエステル、半エステル及び上述の酸の橋かけエステル、例えば、トルエンスルホン酸エステル、リン酸エステル等が極めて特に好ましく適する。
【0074】
抑制剤は、固体、液体又は気体の形態で加えることができる。好ましい手順において、例えば所望の最終分子量に達した後製造処理中に直接、モノマーを有するべきではない生成物流れに、抑制剤として酸成分を連続的に、均一に加え、その結果、その後残留モノマーの蒸発を、直ちに開始することができる。特に好ましい手順において、個々の生成物の性質を向上する添加剤の添加は、酸の添加と蒸発後に行われ、蒸発工程と組み合わされない。なぜならば、蒸発するために必要な真空中で揮発性である添加剤がしばしば使用され、その後、ポリマー中での必要な濃度を調整することが困難だからである。酸成分は、液体の形態で加えることが好ましい。加えるべき量は極めて少ないから、酸成分の溶液を使用することが好ましい。適する溶媒は、方法を妨げず、化学的に不活性であり、迅速に蒸発するものである。適する溶媒の例は、水又はメタノールである。
【0075】
例として、下記表は、工程(a)に基づく溶融トランスエステル化法によって製造される種々のポリカーボネート試料中の揮発性構成要素の濃度を示す。フェノールは、モノヒドロキシアリール化合物であり、ジフェニルカーボネート(DPC)は、ジアリールカーボネートであり、BPA(ビスフェノールA)は、ジヒドロキシアリール化合物である。
【0076】
【表1】

【0077】
本発明は、本発明に基づく方法で得られる熱可塑性ポリカーボネートも提供する。それらは、残留含有量が、100ppmより少ない炭酸ジエステル、50ppmより少ないヒドロキシアリール化合物及び10ppmより少ないジヒドロキシアリール化合物を有し、陽イオンと陰イオンの各々について、60ppbを超えない、好ましくは40ppbを超えない、特に好ましくは20ppbを超えない(Na陽イオンとして計算)極めて低含有量の陽イオンと陰イオンを有するが(ここで、存在する陽イオンはアルカリ金属及びアルカリ土類金属である)、それらは使用される原材料、ホスホニウム及びアンモニウム塩から不純物として生ずる。他のイオン例えばFe、Ni、Cr、Zn、Sn、Mo、Alイオン及びそれらの同族体は、原材料中に存在してよく、又は使用される装置(又は設備)の材料から摩擦、摩耗又は腐食等によって生じてよい。そのようなイオンの含有量の合計は、2ppmを超えず、好ましくは1ppmを超えず、特に好ましくは0.5ppmを超えない。
【0078】
ポリカーボネート中に最小量の不純物を達成するために、高純度の原材料を使用する。そのような純粋な原材料は、例えば、洗浄等を用いる沈殿、蒸留、再結晶等の精製方法によってのみ得ることができる。
【0079】
存在する陰イオンは、等量の無機酸の陰イオン及び有機酸の陰イオン(例えば、塩化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、シュウ酸イオン等)である。
【0080】
ポリカーボネートは、トランスエステル化法の間に生成する、検出できる量の反応性末端基を有する切断、分裂又は分解生成物を含まないということによっても分類することができる。そのような切断、分裂又は分解生成物は、例えば、イソプロペニルモノヒドロキシアリール又はそのダイマーである。
【0081】
得られる平均分子量は、15,000〜40,000g/モル、好ましくは18,000〜36,000g/モル、特に好ましくは18,000〜34,000g/モルであり、平均分子量は、相対粘度によって測定される。特に、1.18〜1.22の相対粘度を有するポリカーボネートを、本発明に基づく方法によって得ることができる。
【0082】
本発明に基づいて得られるポリカーボネートのOH末端基の含有量は、100〜450ppm、好ましくは150〜400ppm、特に好ましくは200〜350ppmである。
【0083】
本発明に基づく方法により得られるポリカーボネートに、それらの性質を変えるために、通常の添加剤及び加えられる物質(例えば、助剤物質及び補強物質)を供給することができる。添加剤と加えられる物質の添加は、それらの使用可能年数を延長し(例えば、加水分解安定剤又は分解安定剤)、色安定性を向上し(例えば、熱安定剤及びUV安定剤)、加工(又は処理)を簡略化し(例えば、離型剤、流動性向上剤)、使用特性を向上し(例えば、静電防止剤)、防炎効果を向上し、光学的印象に影響し(例えば、有機着色剤、染料又は顔料)又はポリマーの特性を特定の応力に適合させる(衝撃強さ調整剤、細かく粉砕した鉱物、繊維状物質、石英粉、ガラス繊維及び炭素繊維)ため等に役に立つ。
【0084】
ジヒドロキシアリール化合物との反応に適するジアリールカーボネートは、下記式のものである:
【化1】

[ここで、R、R’及びR”は、各々他のものと独立して、H、場合により枝分かれ状のC〜C34−アルキル/シクロアルキル、C〜C34−アルキルアリール又はC〜C34−アリールであり、両側は異なっていてよい。Rは、−COO−R’”であってよく、R’”は、H、場合により枝分かれ状のC〜C34−アルキル/シクロアルキル、C〜C34−アルキルアリール又はC〜C34−アリールであってよい]。
【0085】
そのようなジアリールカーボネートは、例えば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニル−フェニルカーボネート及びジ−(メチルフェニル)カーボネート(混合物の形態であってよく、フェニル環のメチル基の位置は、所望の位置でよい)、ジメチルフェニル−フェニルカーボネート及びジ−(ジメチルフェニル)カーボネート(混合物の形態であってよく、フェニル環のメチル基の位置は、所望の位置でよい)であり、4−エチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ペンチルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニルフェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル−フェニル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)−フェニル−フェニルカーボネート、ジ−[4−(1−ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ−[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−プロピルサリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(イソブチルサリチレート)カーボネート、tert−ブチルサリチレート−フェニルカーボネート、ジ−(tert−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ−(フェニルサリチレート)カーボネート及びジ−(ベンジルサリチレート)カーボネートである。
【0086】
好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニル−フェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イル−フェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル−フェニルカーボネート及びジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネートである。
【0087】
ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0088】
ジアリールカーボネートは、それらを製造する残留含有量のモノヒドロキシアリール化合物を有するものを使用することができる。含有量は、20%、好ましくは10%、特に好ましくは5%、極めて特に好ましくは2%までであり得る。
【0089】
ジヒドロキシアリール化合物を基準として、ジヒドロキシアリール化合物の1モル当たり、1.02〜1.30モル、好ましくは1.04〜1.25モル、特に好ましくは1.06〜1.22モル、極めて特に好ましくは1.06〜1.20モルの量で、ジアリールカーボネートが使用される。上述のジアリールカーボネートの混合物を用いることもできる。
【0090】
末端基に影響を与えるため又は変更するために、使用されるジアリールカーボネートを製造するために使用されなかったモノヒドロキシアリール化合物を使用することも可能である。それは、下記一般式によって示される:
【化2】

[ここで、R、R’及びR”は、ジアリールカーボネートに関して定義されているが、特定の場合、RはHでなくてよいが、R’とR”はHであってよい]。
【0091】
そのようなモノヒドロキシアリール化合物は、例えば、1−、2−又は3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)−フェノール、4−(2−ナフチル)−フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、イソプロピルサリチレート、n−ブチルサリチレート、イソブチルサリチレート、tert−ブチルサリチレート、フェニルサリチレート及びベンジルサリチレートである。
【0092】
4−tert−ブチルフェノール、4−イソオクチルフェノール及び3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0093】
使用するジアリールカーボネートを製造するために使用されるモノヒドロキシアリール化合物の沸点より、高い沸点を有するモノヒドロキシアリール化合物を選択するべきである。反応の間のいずれかのときにモノヒドロキシアリール化合物を加えることができる。反応の開始時にまた反応の間にいずれかの所望の場所で加えることが好ましい。遊離のモノヒドロキシアリール化合物の量は、ジヒドロキシアリール化合物を基準として、0.2〜20モル%、好ましくは0.4〜10モル%であってよい。
【0094】
主に用いられるジアリールカーボネートのベースモノヒドロキシアリール化合物が有する沸点より、より高い沸点をベースモノヒドロキシアリール化合物が有するジアリールカーボネートを付随的に使用することによって末端基を変更することもできる。ここでも、反応の間のいずれかのときに加えることができる。反応の開始時に、また反応の間にいずれかの所望の場所で加えることが好ましい。使用されるジアリールカーボネートの量の合計を基準として、より沸点が高いベースモノヒドロキシアリール化合物を有するジアリールカーボネートの割合は、1〜40モル%、好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは1〜10モル%であってよい。
【0095】
ポリカーボネートを製造するために適するジヒドロキシアリール化合物は、下記式のものである:
HO−Z−OH
[ここで、Zは、一又はそれ以上の芳香核を含んでよい、置換されてよい、架橋要素としてヘテロ原子又はアルキルアリール又は脂肪族又は脂環式基を含んでよい6〜30炭素原子を有する芳香族基である]。
【0096】
ジヒドロキシアリール化合物の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキサイド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン及びそれらの核にアルキル化、ハロゲン化された化合物である。
【0097】
更に適するジヒドロキシアリール化合物は、先行技術から既知である。
【0098】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、例えば、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロ−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン及び2,2’,3,3’−テトラハイドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオールである。
【0099】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン及び1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンである。
【0100】
特に好ましいものは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン及びビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンである。
【0101】
ホモポリカーボネートの生成に一種のジヒドロキシアリール化合物を使用することができ、またコポリカーボネートの生成に複数のジヒドロキシアリール化合物を使用することができる。
【0102】
モノマーのジヒドロキシアリール化合物の代わりに、低分子量、主にOH末端基停止オリゴカーボネートを、出発化合物として使用することもできる。
【0103】
オリゴマー製造の際に分離する残留含有量のモノヒドロキシアリール化合物を有する低分子量オリゴカーボネート、又はジヒドロキシアリール化合物が製造される残留含有量のモノヒドロキシアリール化合物を有するジヒドロキシアリール化合物も使用し得る。含有量は、20%、好ましくは10%、特に好ましくは5%、極めて特に好ましくは2%までであってよい。
【0104】
ポリカーボネートは、特定の様式で枝分かれしてよい。適する枝分かれ剤は、ポリカーボネートの製造に既知であって、三又はそれ以上の官能基を有する化合物であり、三又はそれ以上の水酸基を有するものが好ましい。
【0105】
使用することができる三又はそれ以上のフェノール性水酸基を有する化合物の例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−メタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール及びテトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタンである。
【0106】
他の三官能性化合物は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル及び3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−インドールである。
【0107】
枝分かれ剤は、ジヒドロキシアリール化合物を基準として、0.02〜3.6モル%の量で使用される。
【0108】
好ましい枝分かれ剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−インドール及び1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0109】
ポリカーボネートを製造するための溶融トランスエステル化法で使用される触媒は、文献既知の塩基性触媒、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物、アンモニウム又はホスホニウム塩(以下、「オニウム塩」ともいう)である。オニウム塩は、好ましくは合成に使用され、特に好ましくはホスホニウム塩である。本発明の範囲のホスホニウム塩は、下記一般式のものである:
【化3】

[ここで、R1〜4は、同じでも異なってもよいC〜C10アルキル、C〜C14アリール、C〜C15アリールアルキル又はC〜Cシクロアルキルであってよく、好ましくはメチル又はC〜C14アリールであってよく、特に好ましくはメチル又はフェニルであってよい。Xは、陰イオン、例えば水酸化物、硫酸、硫酸水素、炭酸水素、炭酸又はハロゲン化物、好ましくは塩化物、又は式−OR(ここでRは、C〜C14アリール、C〜C15アリールアルキル又はC〜Cシクロアルキル、好ましくはフェニルであってよい)のアリレート(又はアリールオキサイド)又はアルキレート(又はアルコキサイド)であってよい]。
【0110】
好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイド、及びテトラフェニルホスホニウムフェノレートであり、テトラフェニルホスホニウムフェノレートが特に好ましい。
【0111】
ジヒドロキシアリール化合物の1モルを基準として、それらは、10−8〜10−3モルの量で使用することが好ましく、10−7〜10−4モルの量で使用することが特に好ましい。
【0112】
更に、重縮合速度を増加させるために、共触媒として、それら自身に関して又はオニウム塩に加えて用いることができる。
【0113】
これらは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルカリ反応性塩、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムの水酸化物、アルコキサイド及びアリールオキサイド、好ましくはナトリウムの水酸化物、アルコキサイド又はアリールオキサイド等を含む。最も好ましいものは、水酸化ナトリウム及びナトリウムフェノレート、更に2,2,−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンのジナトリウム塩である。
【0114】
それら自身に関する又は共触媒として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルカリ反応性塩の量は、形成すべきポリカーボネートを基準として、ナトリウムとして各々の場合に計算して、1〜500ppb、好ましくは5〜300ppb、最も好ましくは5〜200ppbの範囲であってよい。
【0115】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルカリ反応性塩は、オリゴカーボネートの製造の間に、換言すれば、合成の初期に使用してよく、又は望ましくない副反応を抑制するために重縮合の前に加えてもよい。
【0116】
重縮合の前に、同じ種類又は異なる種類の追加量のオニウム触媒を加えることもできる。
【0117】
添加中に有害な過剰濃度を防止するために、触媒は溶液で加えられる。溶媒は、方法において及び系内に内在する化合物、例えば、ジヒドロキシアリール化合物、ジアリールカーボネート又はモノヒドロキシアリール化合物である。ジヒドロキシアリール化合物とジアリールカーボネートは、わずかの昇温で、特に触媒の作用下で、容易に変化し、分解することが、当業者に既知なので、モノヒドロキシアリール化合物が特に好ましい。結果として、ポリカーボネートの品質は、損傷を受ける。ポリカーボネートを製造するために商業上重要なトランスエステル化法において、好ましい化合物はフェノールである。好ましく使用される触媒、テトラフェニルホスホニウムフェノレートは、フェノールとの混合結晶の形態で製造の間に分離されるので、フェノールも極めて適する。
【0118】
以下、添付した図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0119】
図1は、入口開口部8を有する水平に配置されたプレート7を上部に有する分離容器9を示す。分離容器9は、揮発性構成要素用出口10と下方に向いた円錐形出口13を下部に有し、円錐形出口13には排出装置11が設けられている。ワイヤー12の形態のガイド要素が、分離容器9の内部に設けられている。ワイヤー12は、実質的に水平に設けられ、各々の場合に、複数のワイヤー12が、ある平面を形成する。ある平面のワイヤーは、互いに実質的に平行に配置される。複数の平面にそのように平行に配置されたワイヤー12が設けられ(図1の3つの平面)、二つの重なり合う平面のワイヤーは、互いに、実質的に直角に配置される。
【0120】
ポリカーボネート溶融物を、供給パイプ1を経由して分離容器9に加える。供給パイプ2を用いて、秤量装置3を経由して、発泡剤をポリカーボネート溶融物に混合する。ポリカーボネート/発泡剤混合物を、まずスタティックミキサー4に通し、その後熱交換器6に通す。ポリカーボネート溶融物は、圧力保持バルブ5を経由して、入口開口部8が設けられたプレート7に流れる。それによって、溶融物は、部分流に分割される。ポリカーボネート溶融物の部分流は、入口開口部8を経由して、分離容器9に入る。分離容器9の底部13で、脱ガスされたポリカーボネート溶融物は、排出装置11を経由して取り出される。
【0121】
図2は、図1に説明した態様に対して、分離容器9の上部に、管式熱交換器の形態で垂直(又はタテ型)に配置された熱交換器6’を示す。下方に向けられるチューブが、入口開口部8’を構成する。
【0122】
図2に基づいて、ポリカーボネート溶融物は、供給パイプ1を経由して分離容器9に供給される。供給パイプ2を用いて、秤量装置3を経由してポリカーボネート溶融物に発泡剤を混合する。ポリカーボネート/発泡剤混合物は、まず、スタティックミキサー4を通る。その後、ポリカーボネート溶融物は、圧力保持バルブ5を経由して管式熱交換器6’の入口開口部8’を通って流れ、それによって、ポリカーボネート溶融物は、複数の部分流に分割される。入口開口部8’は、分離容器9に達する。分離容器9の底部13で、脱ガスされたポリカーボネート溶融物は、排出装置11を経由して取り出される。
【実施例】
【0123】
下記試験は、ビスフェノールAのポリカーボネートに関して行われた。除去すべき揮発性成分は、ジフェニルカーボネートであった。
【0124】
ガイド要素は、水平に配置された各々3mmの直径を有する十のワイヤーから成り、互いに10cm間隔で入口開口部の下に張られた。互いに重なって配置された二つのワイヤーは、水平方向に90°回転された。
【0125】
第一表は方法の条件と試験結果をまとめる。第一表において、入口開口部当たりの質量流速度とは、部分流の質量流速度を意味する。用語同伴剤と発泡剤は、同義で使用される。分離容器は、分離器ともいい、「sep」と省略する。ガイド要素は、バッフルともいい、入口開口部は、ノズルともいう。温度は、入口開口部に入る際の温度をいう。第8欄で、入口開口部に入る際の発泡剤の条件を記載する。
【0126】
第一表は、発泡剤は例3、4、7、10、13及び17に使用されていないことを示す。従って、揮発性成分ジフェニルカーボネートは、極めて不適切にのみ除去される。
【0127】
例1及び2では、発泡剤は、入口開口部に入れる際に完全に溶解されていない。これは、入口開口部に入れる際に発泡剤が溶解している例8、9、11、及び12と比較して乏しい脱ガスをもたらす。
【0128】
例14、15、16及び18、19及び20は、ガイド要素の具体的優位性を示す。
【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、本発明に基づく方法を行うための分離容器の第一の態様の模式図を示す。
【図2】図2は、分離容器の第二の態様の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記工程:
(a) 少なくとも触媒の存在下、ジアリールカーボネートと少なくとも一種の芳香族ジヒドロキシアリール化合物を溶融物で反応させる工程、
(b) 工程(a)で得られる溶融物を発泡剤と混合する工程、
(c) 工程(b)からの溶融物を、分離容器への入口開口部を通すことで脱ガスする工程
を含んで成るトランスエステル化法によるポリカーボネートの製造方法であって、
工程(c)に基づく脱ガスは、発泡を伴って行われ、溶融物は、0.1〜20kg/hの部分流に入口開口部によって分割され、入口開口部に入る際の温度は250〜340℃であり、分離容器内の圧力は0.1〜20mbarであることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
工程(c)に基づいて入口開口部に入る際に、発泡剤は完全に溶解していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発泡剤は、水、二酸化炭素又は窒素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で得られるポリカーボネートのフェノール性OH基の濃度は、100〜450ppmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(c)に基づいて、分離容器内の滞留時間は、10分間より長くないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の触媒は、少なくとも80重量%の範囲まで不活性化されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
抑制剤を加えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(c)に基づいて、入口開口部に入る前に、溶融物を250〜340℃の温度に加熱することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
実質的に水平に配置されるガイド要素は、分離容器内に設けられることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載の製造方法によって得られるポリカーボネート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533805(P2007−533805A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508778(P2007−508778)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003828
【国際公開番号】WO2005/103115
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】