説明

ポリカーボネートを調製するための方法および装置

【課題】ポリカーボネートの合成および加工時に、特に脱色や不溶成分がない、高い品質のポリマーを得る方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネートと金属との間の相互作用を最小にするために、ポリカーボネートを調製または加工するために用いられる装置の試薬と接触する金属表面の領域において少なくとも部分的に、1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物溶融物を用いて前処理し、装置の金属表面を不動態化する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2009年12月22日に出願されたドイツ特許出願102009059990.8の利益を主張し、そのすべての記載をここに導入する。
【技術分野】
【0002】
本発明は材料表面の前処理方法およびポリカーボネートの調製および加工におけるこれらの不動態化した材料の使用に関する。
この方法により、ポリカーボネートと金属との相互作用を減少し、ポリカーボネートの加工および合成において退色および不溶部分のない高い品質のポリマーを得ることを可能にする。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートの合成は連続的またはバッチで行ってもよい。反応は攪拌容器、チューブ状反応器、ポンプ化循環反応器および攪拌容器カスケードまたはそれらの組み合わせで行ってもよい。これらの攪拌容器またはチューブ状反応器およびパイプラインなどのための典型的な材料は例えばV4Aスチール1.4571またはHastelloy−Cである。
【0004】
ポリカーボネート溶液の洗浄は滞留容器、攪拌容器、コアレッサー(coalescer)またはセパレータもしくはこれらの組み合わせを通過させることによって行われる。これらのプラント成分も上記材料からなる。
【0005】
溶液からのポリマーの単離は温度、真空または加熱運搬ガスによって溶媒の蒸留によって行ってもよい。他の単離方法は結晶および沈殿である。これらの方法もまた上記材料を含むコンテナー中で行われる。熱ワークアップ(work up)方法において、有用な材料はより高い温度のために特に重要である。そのような熱ワークアップ方法は、例えばスーパー加熱および減圧による溶媒除去、いわゆる「フラッシュプロセス」(Thermische Drennverfahren[熱分離方法])[VCH Verlagsanstalt,1988年、第114頁参照]である。すべてのこれらの方法は特許文献や教科書に記載されていて、当業者に知られている。温度(蒸留)および技術的により効果的なフラッシュ方法による溶媒の除去により、高度に濃縮されたポリマー溶融物が得られる。溶媒の残りを高濃縮ポリマー溶融物から、ベント式押出器(BE−A866,991、EP−A0,411,510、US−A4,980,105、DE−A3332065)、薄層エバポレータ(EP−A0,267,025)、落下フィルムエバポレータ、ストランドエバポレータまたはフリクションコンパクティング(EP−A0,460,450)、要すれば共留剤、例えば窒素または二酸化炭素、もしくは真空の使用(EP−A0,039,96、EP−A0,256,003、US−A4,423,207)によって直接除去してもよい。ここでまたポリマー溶融物に接触する使用材料はスペシャルロール(special role)を有する。
【0006】
この方法によって調製されたポリカーボネートは高い品質の射出成形品、特に高い透明性と低いYI(黄色度インデックス)が重要なもの、例えば光学データ貯蔵体、拡散スクリーンまたは自動車部品用パンに好適である。
【0007】
ポリカーボネートの加工および合成時に、材料表面との接触、特に高温で長い滞留時間および鉄含有材料の使用に関して、ポリカーボネートの損失が起こることが知られている。その損失は色の退色(黄変)および不要部分の形成である。この損失は特にステンレス鋼の新しい表面、例えばスタートアップ加工時に特に顕著である。この損失、特にスチール表面および金属イオンの存在においてポリカーボネートの黄変は例えばEP0819717、EP0905184、EP0386616に詳しく記載されている。
【0008】
従来技術はこのポリカーボネートの損失を減らす種々のアプローチが存在する。
【0009】
WO2002037148、EP1383821、EP0512223、EP1155737およびEP0635532には、鉄含有量が低い高品質の材料の使用が記載されている。特に低い鉄合金の調製および処理のコストが高くなって、そのような高品質の材料の広い使用は経済的には優れた解決策ではない。EP1155737に記載され、ニッケル顔料5〜15%およびクロム含量10〜20%を有する材料組成が典型的な合成および加工条件下に所望の低い範囲でポリカーボネートの損失を維持するためにさらに適当ではない。
【0010】
EP0905184にはポリカーボネートに対する安定化添加剤としてホスフィンジエステルの使用が記載され、それが鉄イオンとの相互作用を抑制することが記載されている。安定化剤の配合は成品組成における変化または反応における影響のために特に好ましくない。
【0011】
US20080154018、US20080210343、EP1156071、EP0819717には、ポリカーボネートに不活性な金属材料を形成する処理方法が記載されている。US20080154018、US20080210343、EP1156071およびEP0819717に記載された方法は非常に複雑で、結果が不十分である。EP1156071およびEP0819717には、種々の洗浄方法が金属表面の熱処理と組み合わされている。US20080154018およびUS20080210343には熱酸化処理工程が記載されている。また、US20080154018およびUS2002021034に記載された目的は蛍光粒子の形成を抑えることであって、当業者はどうして着色および不溶残分を向上するかに関してこの公開公報には何ら解決策が示されていない。
【0012】
防錆性を改善するホスフェートの使用は例えばCH580685、JP−81018675、DE−4129529、DE−19621184、US−6117251、C.A.Melendresら、Electrochimica Acta34(1989)281に記載されている。一般に水性ホスフェートおよびリン酸溶液は金属表面の錆に対する耐性を改善する目的で金属表面の処理に用いられる。そのような表面処理はポリカーボネートの特性を改善するかもしれないが言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】BE−A866991
【特許文献2】EP−A0440411510、
【特許文献3】US−A4980105
【特許文献4】DE−A3332065
【特許文献5】EP−A0267025
【特許文献6】EP−A0460450
【特許文献7】EP−A003996
【特許文献8】0256003
【特許文献9】US−A4423207
【特許文献10】EP−0819717
【特許文献11】EP−0905184
【特許文献12】EP−0386616
【特許文献13】WO2002037148
【特許文献14】EP1383821
【特許文献15】EP051223
【特許文献16】EP1155737
【特許文献17】EP0635532
【特許文献18】EP0905184
【特許文献19】US20080154018
【特許文献20】US2008021034
【特許文献21】EP1156071
【特許文献22】EP0819717
【特許文献23】CH−580685
【特許文献24】JP−81018675
【特許文献25】DE−4129529
【特許文献26】DE−19621184
【特許文献27】US−61187251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的はスチール表面の前処理の簡単な方法であって、金属表面とポリカーボネートとの相互作用を最小にして、出来る限りその損失を抑制するもしくは減少することである。理想的には、この方法は新しい装置の組立て前または製造時に、すでに存在する装置や機械に操作時に直接使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様は試薬と接触する金属表面の領域において少なくとも部分的に1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物で前記金属表面を処理する工程を包含するポリカーボネートを調製または加工するために用いられる装置の金属表面を不動態化するための方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様では上記処理が1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物で280〜480℃の温度範囲で1〜24時間の滞留時間で行われる除去方法である。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、ポリカーボネート溶融物中の1以上のリン化合物の濃度が金属表面1mに付きホスフェート0.1〜5000gの範囲である上記方法である。
【0018】
本発明の別の態様では、上記方法において1以上のリン化合物がリン酸またはリン酸誘導体もしくは有機ホスフェート化合物である前記方法である。
【0019】
本発明の別の態様では1以上のリン化合物がホスファイトまたはホスフェートである上記方法である。
【0020】
本発明のさらに別の態様では、処理が酸素含有ガスまたは不活性ガスの存在下に行われる上記方法である。
【0021】
本発明の別の態様では、上記金属表面が1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物で処理される前に、酸化雰囲気中で熱的に前処理される上記方法である。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、上記ポリカーボネートの調製および加工に用いられる金属表面が前記方法によって不動態化されている、ポリカーボネートの調製および加工のための装置である。
【0023】
本発明の別の態様は、上記装置中でカーボネートジエステルとビスフェノールとの溶融ポリ縮合によってポリカーボネートを得る方法からなるポリカーボネートを調製する方法である。
【0024】
本発明の別の態様では、上記方法によってビスフェノールがビスフェノールAである上記方法である。
【発明の効果】
【0025】
驚くべきことに、1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物と鉄含有金属表面とを接触することがその後の製造および加工のための金属表面の使用時にポリカーボネートに損傷を完全に与えない表面変性をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による前処理は鉄含有スチール、例えば高合金クロム−ニッケルステンレススチール、特に好ましくはステンレススチール1.4571(X6CrNiMoTi17−12−2、Ti−安定化クロム−ニッケルスチール)に適用され得る。この目的のために、スチール表面が更なる前処理やその後の洗浄またはクリーニング工程をせずにPC溶融物と接触され得る。処理は実際の製造および処理の前に前段階として行われ得る。前処理は温度280〜480℃、好ましくは300〜380℃、特に好ましくは320〜350℃で行われる。処理時間は1〜24時間、好ましくは6〜12時間である。処理の間溶融物を金属表面と安定して接触させる。処理は空気中または不活性大気中で行ってもよい。水性リン酸および有機ホスフェートまたはホスファイト化合物をリン化合物として用いてもよい。例えば、以下のトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェートPO(OR)3およびジアルキルホスフェートPO(OR)2OHおよびホスファイトP(OR)3または(RO)P(OR’)OHを用いてもよい。
【0027】
それらの例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリビニルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジフェニルホスファイトである。
【0028】
リン化合物はポリカーボネート溶融物中に金属表面1mに付き0.1g〜5000gの濃度で添加される。好ましくは1mに付き1g〜100g、特に好ましくは5g〜50gで用いられる。特に好ましくはより高い濃度は処理時間を短くする場合用い、低い濃度は処理時間が長い場合に用いられる。リン化合物を純粋物質または溶液として溶融の前にPCピレットに加えるか、PC溶融物に混合する。
【0029】
これらの金属表面は例えばポリカーボネート溶融物を移動するための加熱パイプ、チューブの束または熱交換器の内部表面、反応容器またはフィルター装置もしくは押出器やポンプの他の溶融物移動部分であってもよい。ポリカーボネートの調製は一般にプラント成分、すなわちスチールまたは特定のスチール合金を含むパイプ、反応容器などの中で行われる。これらのプラントにおいて、ポリカーボネートを製造し、移動し、濃縮し、単離しおよび加工する。
【0030】
本発明の更なる態様において、温度400〜500℃、好ましくは440〜460℃で空気中または酸素含有体雰囲気中で熱酸化性方法によって前処理された金属表面を用い、ホスフェート含有PCで述べられた同じ温度および濃度範囲で空気中または不活性ガス中でホスファイト含有PC溶融物で前処理される。
【0031】
移動していないPC溶融物を用いる前記の前処理についての別の方法として、ホスフェ
ート含有PC溶融物の金属表面への連続供給も可能である。この目的のために、ホスフェート含有PC溶融物は処理されるパイプライン、容器、装置または機械の表面に数時間、好ましくは6〜12時間で280〜480℃、好ましくは320〜350℃で連続的に流す。
【0032】
特に好ましくは、本発明による方法はポリカーボネートの調製および加工、例えば配合および射出成形に用いられる。黄色インテックス(YI)によって測定されたポリカーボネートの着色、非着色の場合に特に有用である。本発明によるスクリューエレメントは特に非揮発ゾーンに用いられる。
【0033】
本発明にいうポリカーボネートはホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートであり、ポリカーボネートは公知の方法で直鎖または分岐鎖を有してもよい。
【0034】
本発明に用いられるポリカーボネート(ポリエステルカーボネートを含む)の調製の好ましい方法は公知の溶融エステル交換法および公知の界面方法である。
【0035】
ホスゲンは好ましくは第1の場合および好ましくは後者のジフェニルカーボネートとして機能する。触媒、溶媒、ワークアップ、反応条件などは両方の場合に十分に開示されており公知である。
【0036】
本発明に好適なポリカーボネート中のカーボネートの1部、80モル%以下、好ましくは20〜50モル%は芳香族ジカルボン酸エステル基で置換してもよい。そのようなカルボン酸の酸基と分子鎖中に導入された芳香族ジカルボン酸の酸基との両方を含むポリカーボネートは正確には芳香族ポリエステルカーボネートと定義される。簡単のために、それらは本願ではすべて熱可塑性芳香族ポリカーボネートとして記載する。
【0037】
本発明による方法はポリカーボネートの調製に特に有用である。従って、本発明はまた調製方法の少なくとも1ステップが本発明による押出方法を含むことを特徴とするポリカーボネートとの調製方法にも関する。
【0038】
本発明による方法の使用によるポリカーボネートの調製はジフェノール、カルボン酸誘導体、要すれば連鎖停止剤および要すれば分岐剤から公知の方法で行われ、カルボン酸誘導体の一部は芳香族ジカルボン酸またはポリエステルカーボネート調製のためのジカルボン酸の誘導体、特に芳香族ポリカーボネート中において置換されるカーボネート構造ユニットによって芳香族ポリカーボネート中で置換されるカーボネート構造ユニットの割合に従って置換されてもよい。
【0039】
ポリカーボネートの調製の例としては、Schnell、「ポリカーボネートの化学および物理」、ポリマー・リビュー、第9冊、インターサイエンス・パプリシャーズ、ニューヨーク、ロンドン、シドニー1964年を参考にしてよい。
【0040】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む本発明の方法に用いられる熱可塑性ポリカーボネートは平均分子量Mw(CHCL中およびCHCl100mlにつき濃度0.5g/100mlの濃度で25℃で相対粘度を測定すること)12,000〜120,000、特に好ましくは15,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜60,000を有する。
【0041】
ポリカーボネート調製のための本発明による方法に好適なジフェノールは従来技術に広く開示されている。
【0042】
好適なジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよび核中にアルキル化、アルキレート化および核上にハロゲン化されたそれらの化合物が挙げられる。
【0043】
好ましいジフェノール4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0044】
特に好ましいビフェノールは4,4−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0045】
これらおよび他のジヒドロキシアリール化合物はDE−A3,832,396、FR−A1,561,518、H.Schnellの「ポリカーボネートの化学および物理」、インターサイエンス・パプリシャーズ、ニューヨーク、1964の第28頁以下、第102頁以下およびD.G.Legrand、J.T.Bendler、「ポリカーボネートの科学および技術のハンドブック」、Marcel Dekker、ニューヨーク、2000年、第72頁以降に記載されている。
【0046】
1種類のジフェノールはホモポリカーボネートの場合使用され、複数のジフェノールはコポリカーボネートの場合使用される。出発物質は可能な限り純粋であるのが望ましいが、使用されるジフェノールや合成時に添加される他の化学薬品や、助剤はその合成、処理および貯蔵に起因する不純物を含んでいてもよい。
【0047】
溶融エステル交換におけるジヒドロキシアリール化合物での反応に好適なジアリルカーボネートは一般式(II)のもの
【0048】
【化1】

【0049】
(式中、R、R’およびR’’は互いに独立して、かつ同一または異なって、水素、直鎖または分岐鎖C−C34−アルキル、C−C34アルキルアリールまたはC−C34−アリールを表わし、Rはさらに−COO−R’’’(式中、R’’’は水素、直鎖または分岐鎖C−C34−アルキル、C−C34−アルキルアリールまたはC−C34−アリールを表わす。)を表わしてもよい。)
のものである。
【0050】
好ましいジアリールカーボネートは例えば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルフェニルカーボネートおよびジ(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニルビニルカーボネート、ジ(4−イソブチルフェニル)カーボネート、4−t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−t−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ペンチルフェニルビニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ノニルフェニルビニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4−(1−ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(n−プロピルサリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(イソブチルサリチレート)カーボネート、t−ブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(t−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ(フェニルサリチレート)カーボネートおよびジ(ベンジルサリチレート)カーボネートが挙げられる。
【0051】
特に好ましいジアリール化合物はジフェニルカーボネート、4−t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−t−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]カーボネートおよびジ(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0052】
ジフェニルカーボネートが特に好ましい。一種のジアリールカーボネートまたは異なるジアリールカーボネートのどちらを用いてもよい。
【0053】
ジアリールカーボネートはそれが調製されるモノヒドロキシアリール化合物の残存含有量で使用される。モノヒドロキシアリール化合物の残存含有量は20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、より特に好ましくは2重量%以下である。
【0054】
ジヒドロキシアリール化合物に基づいて一般にジヒドロキシアリール化合物の1モルにつきジアリールカーボネート1.02〜1.30モル、好ましくは1.04〜1.25モル、特に好ましくは1.045〜1.22モル、より特に好ましくは1.05〜1.20モル/の量で使用される。上記ジアリールカーボネートの混合物を用いてもよく、その場合、前述のジヒドロキシアリール化合物1モルに付きのモル数はジアリールカーボネートの混合物の総重量に関する。
【0055】
分子量を制御するために必要な単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールまたはアルキルフェノール、特にフェノール、t−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロカルボン酸エステルまたはモノカルボン酸の酸クロライドもしくはこれらの連鎖停止剤の混合物を合成または反応中にビスフェノールまたはビスフェノレートと共に添加してもよく、所望の時間に添加してもよい。ただし、ホスゲンまたはクロロカルボン酸末端基が反応混合物中に存在している場合、連鎖停止剤として酸クロライドまたはクロロカルボン酸エステルの場合には、得られるポリマーの十分なフェノール末端基が存在している場合に添加される。好ましくは、連鎖停止剤はその場でホスゲン化の後、またはホスゲン化時にホスゲンが存在していないか触媒が添加されていないときに添加される。また、触媒の前に、触媒と共にまたは平行に添加してもよい。
【0056】
同様に、分岐剤および分岐剤の混合物を合成に添加してもよい。通常、分岐剤は連鎖停止剤の前に添加される。一般に、トリスフェノール、クォーターフェノールまたはトリ−またはテトラカルボン酸の酸クロライドもしくはポリフェノールの混合物もしくは酸クロライドの混合物を用いる。分岐剤として好適で3つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物のいくつかは、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0057】
他の酸官能化合物のいくつかは2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸塩化物、および3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オクソ−2,3−ジヒドロインドールが挙げられる。
【0058】
好ましい分岐剤は3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オクソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0059】
ポリカーボネートの界面重合に用いられる触媒は三級アミン、特にトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピぺリジン、N−メチルピペリジン、N−iso/n−プロピルピペリジン、第四級アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム、トリブチルべンジルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド、ハイドロジェンサルフィドおよびテトラフルオロボレートおよびアンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物が挙げられる。これらの化合物は文献に典型的な界面触媒として記載され、市販され、当業者に公知である。触媒は、個々に、混合物としてまたは1つづつ、もしくは連続して合成に添加されてもよく、要すればホスゲン化の前にでもよいが、ホスゲン化の後に計量添加するのが好ましく、ただしオニウム化合物またはオニウム化合物の混合物が触媒でないときに限る。この場合、ホスゲン添加の前の添加が好ましい。触媒の計量添加は不活性溶媒中、好ましくはポリカーボネート合成の溶媒中、もしくはそのアンモニウム塩として第三級アミンの場合、酸、好ましくは鉱酸、特に塩酸とともに水溶液として行われる。複数の触媒の使用または触媒の全量の一部の計量添加の場合、異なる部分で異なる時間において異なる計量添加方法で行ってもよい。触媒の総重量は使用されるビスフェノールのモル数に基づいて0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜8モル%、特に好ましくは0.05〜5モル%である。
【0060】
ポリカーボネートの調整用の溶融エステル交換方法に用いられる触媒は文献に公知な塩基性触媒、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属ヒドロキシドおよびオキシドおよび/またはオニウム塩、例えばアンモニウム塩またはホスホニウム塩である。好ましくはオニウム塩、特に好ましくはホスホニウム塩が合成に用いられる。そのようなホスホニウム塩は例えば式(IV):
【0061】
【化2】

【0062】
(式中、R7−10は同一または異なって、要すれば置換されてもよいC−C10−アルキル、C−C14−アリール、C−C15−アリールアルキルまたはC−C−シクロアルキル基、好ましくはメチルまたはC−C14−アリール、特に好ましくはメチルまたはアリール、特にメチルまたはフェニルを表わし、かつXはヒドロキシド、スルフェート、ハイドロジェンスルフェート、ハイドロジェンカーボネート、カーボネート、ハライド、好ましくはクロライドおよび式−OR11(式中、R11は要すれば置換してもよいC−C14−アリール、C−C15−アリールアルキルまたはC−C−シクロアルキル基、C−C20−アルキル、好ましくはフェニルである。)のアルキレーまたはアクレートからなる群からなる選択されるアニオンを表わす。)
を有する化合物である。
【0063】
特に好ましい触媒は塩化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウムフェノレートであり、特に好ましくはテトラフェニルホスホニウムフェノレートである。
【0064】
触媒はジヒドロキシアリール化合物の1モルにつき10−8〜10−3モル、好ましくは10−7〜10−4モルの量で使用される。要すれば、ポリ縮合の速度を増加するために共触媒を用いてもよい。
【0065】
これらは例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルカリ塩、例えばヒドロキシド、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの要すれば置換C−C10−アルコキシドおよびC−C14−アリールオキシド)、好ましくはナトリウムのヒドロキシド、要すれば置換C−C10−アルコキシドまたはC10−C14−アリールオキシドである。水酸化ナトリウム、フェノール化ナトリウムおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのジナトリウム塩が好ましい。
【0066】
もしアルカリ金属およびアルカリ土類金属イオンがその塩の形で添加されたならば、原子吸収分光分析法によって決定されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンの量は形成されたポリカーボネートに基づいて1〜500ppb、好ましくは5〜300ppbおよび5〜200ppbである。本発明による方法の好ましい態様では、アルカリ金属塩は使用しない。
【0067】
ポリカーボネート合成は連続的またはバッチで行ってもよい。従って反応は攪拌容器、チューブ状反応器、ポンプ化循環反応器および攪拌容器カスケードまたはそれらの組合せ中で行ってもよい。既に述べた要素の複数を用いて、水層および有機層は、合成混合物が完全に反応し、すなわちホスゲンまたはクロロカルボン酸エステルからの加水分解性塩素を含まないときに、可能な限り分離することを確保する。
【0068】
界面方法中にホスゲンを導入した後に、有機層および水層を所定時間完全に混合して、その後分岐剤(これはビスフェノレートと共に添加されない)、連鎖停止剤および触媒を添加するのが有利である。そのような後反応時間は添加後が有用である。その後の攪拌時間は10秒〜60分、好ましくは30秒〜40分、特に好ましくは1〜15分である。
【0069】
有機層は溶媒または複数の溶媒の混合物からなってもよい。好適な溶媒は塩素化炭化水素(脂肪族および/または芳香族)、好ましくはジクロロメタン、トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンおよびクロロベンゼンおよびそれらの混合物である。しかしながら、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、m/p/o−キシレンまたは芳香族エーテル、例えばアニソールを単独で、塩素化炭化水素との混合物としてまたは塩素化炭化水素に添加して用いてもよい。合成の他の態様ではポリカーボネートを溶解せずに膨潤するだけの溶媒を用いる。ポリカーボネートの非溶媒を溶媒と組み合わせて用いることも可能である。溶媒成分が第2の有機層を形成する場合には、使用される溶媒は水層に溶解しうる溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,3/1,4−ジオキサンまたは1,3−ジオキサンであってもよい。
【0070】
痕跡量の(<2ppm)クロロカルボン酸エステルを含む完全に反応した少なくとも2層の反応混合物を静置して層分離させる。溶媒および触媒成分が分離され回収される場合には水性アルカリ層を完全にまたは部分的に水層としてポリカーボネート合成中に移動し、または排水ワーキングアップとして供給される。ウォークアップの他のバリエーションとしては、有機不純物、特に溶媒およびポリマー残渣が分離された後、要すればあるpHが水酸化ナトリウム溶液を越えることにより達成されたのち、塩が、例えば水層が要すれば合成中にリサイクルされる間に、単離され、クロロアルキル電解に供給され得る。
【0071】
ポリカーボネートを含有する有機層は精製してアルカリ性、イオン性または触媒型のすべての不純物を除く。1回以上の静置した後でも有機層には水性アルカリ相の一部の小さな液滴や触媒、例えば第三級アミンの一部が含まれている。静置工程は要すれば有機層が静置容器、攪拌容器、コアレッサーまたはセパレータもしくはそれらの組み合わせの中を通るのならば必要に応じてサポートされ、ある環境下で活性および積極的な混合要素の使用と共にいくつかの分離工程中で水中で計量添加することが必要である。
【0072】
アルカリ性水性層の大まかな分離の後有機層を1回および数回希釈酸、鉱酸、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸および/またはスルホン酸で洗浄される。水性鉱酸、特に塩酸、リン酸および亜リン酸またはこれらの酸の混合物が好ましい。これらの酸の濃度は0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜5重量%であるべきである。
【0073】
さらに、有機層は脱ミネラル化水または蒸留水で繰返し洗浄される。個々の洗浄工程の後水性層の一部分で分散された有機層の分離は静置容器、攪拌容器、コアレッサーまたは分離器もしくはそれらの組み合わせで行ってもよく、要すれば活性または積極的な混合要素の使用で洗浄工程の間に水洗水中で計量添加してもよい。
【0074】
水洗工程の間または水洗の後、酸、好ましくはポリマー溶液の基礎を形成する溶媒中に溶解された酸を必要に応じて添加してもよい。塩酸ガスおよびリン酸または亜リン酸(これらは混合物として用いてもよい)をここでは好ましく用いられる。
【0075】
ポリエステルカーボネートの調製に好適な芳香族ジカルボン酸はフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル−3−フェニリンダン−4,5’−ジカルボン酸である。
【0076】
芳香族ジカルボン酸の中で、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が特に好ましく用いられる。
【0077】
ジカルボン酸の誘導体はジカルボン酸ジハライドおよびジカルボン酸ジアルキルエステル、特にジカルボン酸ジクロリドおよびジカルボン酸ジメチルエステルである。
【0078】
芳香族ジカルボン酸エステル基によるカルボネート基の置換は実質的に化学量論および/または定量的に行われて反応試薬のモル比が調製されたポリエステルカーボネート中でも起こる。芳香族ジカルボン酸エステル基の導入はランダムまたはブロックで行われてもよい。
【0079】
本発明において、C−C−アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルであり、C−C−アルキルはさらにn−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルであり、C−C10−アルキルはさらにn−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、アイソマー状メンチル、n−ノニル、n−デシルであり、C−C34−アルキルはさらにn−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを示す。同じことが、例えばアラルキルまたはアルキルアリール、アルキルフェニルまたはアルキルカルボニル基中の対応するアルキル基にも適用される。態様するヒドロキシアルキルまたはアラルキルまたはアルキルアリール基中のアルキレン基は例えば上記アルキル基に対応するアルキレン基を表わす。
【0080】
アリールは骨格炭素原子6〜34を有するカルボ環状芳香族基を意味する。同じことがアリールアルキル基またはアラルキル基の芳香族部分にも適用され、より複雑な基のアリール置換基、例えばアリールカルボニル基のアリール基にも適用される。
【0081】
−C34−アリールの例としてはフェニル、o−、p−およびm−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルである。
【0082】
アリールアルキルまたはアラルキルは各々の場合独立して、直鎖、環状、分岐または非分岐アルキル基(上記定義に対応する)であり、それらは上記定義に対応するアリール基でモノ置換、ポリ置換または完全に置換されていてもよい。上記リストは例示として理解されて限定するものではない。本明細書中においてppbおよびppmは別途指示しない限り重量部に基づく。
【0083】
上述した文献は有用な部分全部をここに導入する。
本発明を表わしたものを特定の構造を示し記載するが、これらの部分の変形および変更は本発明の概念に横たわる精神と範囲から逸脱しない範囲ですることができ、またそれらはここに記載した特定の形態に限定されるものではないと解釈される。
【実施例】
【0084】
金属製テスト試料の前処理を空気中またはアルゴン中で攪拌されていないバッチ反応器中で行う。金属的テスト試料は例えば同じ粒径でグラインドすることによって形成された同じ凹凸を有するオーステニック(austenitic:1.457)またはマルテンシティック(martensitic:1.4122)ステンレススチールのサンプルである。試験試料の更なる前処理は行っていない。ホスフェートの所望量、例えば水性リン酸または有機ホスフェートの形態における所望量をPCペレット中に室温で測定添加する(Makrolon2600、バイエルマテリアルサイエンス)。この混合物を次いで金属テスト試料の存在下に処理温度に昇温する。作用時間の終了後、金属サンプルを完全に塩化メチレン中に溶解することによってポリカーボネート溶融物から遊離し、更なる前処理を行わずにテストに用いた。連続セットアップ中に、ホスフェート処理後の溶解工程が不要になり、ホスフェート含有PC溶融物は実際の生成物と共に直接排出した。
【0085】
異なる温度で前処理した金属表面の影響を評価するために、前述のように前処理したテスト試料を2つの温度および滞留時間でテストを行った。各々の場合不活性条件(アルゴン)下に加熱実験を340℃(6時間の滞留時間)および290℃(96時間の滞留時間)で行った。すべての実験を同じバッチからのポリカーボネートMakrolonCD2005(バイエル・マテリアルサイエンス)で行った。
【0086】
評価基準は黄色インデックス(YI、ASTM E313−00(2000)による測定、各々の場合に4mm厚さの着色サンプルシートのデータ)および標準金属表面[mg/cm]上に形成されたPC残留物の量(室温で塩化メチレン中に16時間後に溶解形成されたもの)である。
【0087】
(参考例1)
金属接触なし
(比較例2)
前処理なしの1.4571
(実施例3)
空気中で12時間340℃でPC中HPOとしてPO3−の1mにつき21gで1.457(X6CrNiMoTi17−12−2)の前処理
(実施例4)
空気中で16時間340℃でPC中BuHPOとしてPO3−の1mにつき20gで1.4571の前処理
(実施例5)
アルゴン下に6時間340℃でPC中のトリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートとしてPO3−の1mにつき4gで1.4571の前処理。
(実施例6)
空気中4時間450℃でリン酸PCフィルムとしてPO3−の1mにつき1300gで1.457の前処理。
(比較例7)
空気中で4時間450℃で1.457の前処理。
(実施例8)
まず空気中で4時間450℃、つぎにアルゴン中で12時間340℃でトリフェニルホスファイトとしてPO3−の1mにつき17gで1.4571の前処理。
(比較例8)
前処理なしの1.4122。
(実施例9)
空気中で6時間340℃でPC中のHPOとしてPO3−の1mにつき24gで1.4122の前処理。




























【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬と接触する金属表面の領域において少なくとも部分的に1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物で前記金属表面を処理する工程を包含するポリカーボネートを調製または加工するために用いられる装置の金属表面を不動態化するための方法。
【請求項2】
前記処理が1以上のリン化合物を含有するポリカーボネート溶融物を用いて280〜480℃の温度で、1〜24時間の滞留時間で行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネート溶融物中の1以上のリン化合物の濃度は金属表面の1mに付きホスフェート0.1〜5000gの範囲である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1以上のリン化合物がリン酸またはリン酸誘導体もしくは有機ホスフェート化合物である請求項1記載の方法。
【請求項5】
1以上のリン化合物がホスファイトまたはホスフェートである請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記処理が酸素含有ガスまたは不活性ガスの存在下に行われる請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記金属表面が1以上のリン化合物含有ポリカーボネート溶融物での処理の前に酸化性雰囲気で熱的に前処理される請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリカーボネートの調製および加工に用いられる金属表面が請求項1の方法で不動態化されているポリカーボネートの調製または処理のための装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置中でビスフェノールをカーボネートジエステルで溶融ポリ縮合することによりポリカーボネートを得る工程を含むポリカーボネートを調製する方法。
【請求項10】
ビスフェノールがビスフェノールAである請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2011−137157(P2011−137157A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285955(P2010−285955)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】