説明

ポリカーボネートポリオールおよびその製造方法

【課題】1、3−ブタンジオールなどの従来の方法ではエステル交換反応が進行しにくいジオールを用いる場合であっても、効率的にポリカーボネートポリオールを製造することができ、しかも、得られるポリカーボネートポリオールがウレタン化反応を容易に制御することが可能なものとなるポリカーボネートポリオールの製造方法を提供すること。
【解決手段】ジアルキルカーボネートと、下記式(1):
【化1】


(式(1)中、R〜Rは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも4つは水素原子である。)
で表されるジオールとを、アルコキシ基の炭素数が4以下のナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸の炭素数が4以下のカルボン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の反応触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリカーボネートポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートポリオールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、耐熱性、耐候性、耐加水分解性および耐薬品性に優れたポリウレタン樹脂が得られるという観点から、有用なポリウレタン樹脂原料であることが知られている。特に、非晶性のポリカーボネートポリオールはハンドリング性に優れており、このような非晶性のポリカーボネートポリオールとして、1,3−プロパンジオールや2−メチル−1,3−プロパンジオールを用いて得られるポリカーボネートポリオールが知られている。また、このポリカーボネートポリオールは1分子中のカーボネート基数が多いため、ポリウレタン樹脂原料として使用すると、ポリウレタン樹脂の物性が向上することも知られている。
【0003】
このようなポリカーボネートポリオールは、通常、炭酸エステルとジオールとを触媒の存在下でエステル交換反応させることによって製造されている。例えば、特開2004−35636号公報(特許文献1)には、ジメチルカーボネートと1,3−プロパンジオールとをチタン化合物などの触媒の存在下でエステル交換反応させるポリトリメチレンカーボネートジオールの製造方法が開示されている。触媒としてチタン化合物を使用した場合、前記エステル交換反応が進行しにくいため、触媒を増量させる必要がある。しかしながら、触媒を増量させると、ポリカーボネートポリオールが着色しやすく、また、イソシアネートとの反応性(ウレタン化反応性)が非常に高くなり、イソシアネートとの反応(ウレタン化反応)を制御することは困難であった。
【0004】
また、国際公開第2006/088152号(特許文献2)には、ジオールとして2−メチル−1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどを併用したポリカーボネートポリオールの製造方法が開示されている。具体的には、酢酸鉛を触媒として使用し、エチレンカーボネートと2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールとをエステル交換反応させている。しかしながら、酢酸鉛は毒性が強く、安全性に問題があった。また、エチレンカーボネートなどの環状カーボネートは熱分解によりエーテル結合が生成する可能性があるため、得られるポリカーボネートポリオールの耐候性、耐熱性および耐薬品性が低下するおそれがある。
【0005】
一方、特開2002−356550号公報(特許文献3)には、ジフェニルカーボネートと、ポリオール(具体的には、ヘキサンジオール、またはポリプロピレングリコールとトリメチロールプロパンの併用)とを、触媒(具体的には、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ジブチルスズオキシド、テトライソ酪酸ジルコニウム、チタンテトラプロポキシド、またはヒドロキシ炭酸マグネシウム)の存在下で反応させるポリカーボネートポリオールの製造方法が例示されている。特開2003−147057号公報(特許文献4)には、ジメチルカーボネートと、1,6−ヘキサンジオールおよびジエチレングリコールとを、ナトリウムメトキシドの存在下で反応させるポリカーボネートジオールの製造方法が例示されている。特開2007−277507号公報(特許文献5)には、ジエチルカーボネートと、ポリオール(具体的には、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、または3−メチル−1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンの併用)とを、触媒(具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、またはナトリウムt−ブトキシド)の存在下で反応させるポリカーボネートジオールの製造方法が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−35636号公報
【特許文献2】国際公開第2006/088152号
【特許文献3】特開2002−356550号公報
【特許文献4】特開2003−147057号公報
【特許文献5】特開2007−277507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1、3−ブタンジオールなどの従来の方法ではエステル交換反応が進行しにくいジオールを用いる場合であっても、効率的にポリカーボネートポリオールを製造することができ、しかも、得られるポリカーボネートポリオールがウレタン化反応を容易に制御することが可能なものとなるポリカーボネートポリオールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジアルキルカーボネートとジオールとのエステル交換反応においては、使用するジオールと反応触媒の組み合わせによって、その反応性が大きく異なり、ある種のジオールにおいて高い活性を示す反応触媒が、他のジオールにおいて必ずしも高い活性を示すとは限らないことを見出した。具体的には、ジオール成分として、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの少なくとも4つは水素原子である。)
で表されるジオールを用いる場合に、反応触媒として、チタンアルコキシド、カルボン酸ナトリウムおよびマグネシウムアルコキシドのうちの少なくとも1種を用いると、少量の反応触媒では前記エステル交換反応が十分に進行しないこと、また、ジオール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールのうちの少なくとも1種を用いる場合に、反応触媒としてナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を用いても少量の反応触媒では前記エステル交換反応が十分に進行しないことを見出した。そして、本発明者らは、ジオール成分として、前記式(1)で表されるジオールを用いる場合には、反応触媒としてナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を用いることによって、少量の反応触媒でも前記エステル交換反応が十分に進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法は、
ジアルキルカーボネートと、下記式(1):
【0012】
【化2】

【0013】
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの少なくとも4つは水素原子である。)
で表されるジオールとを、アルコキシ基の炭素数が4以下のナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸の炭素数が4以下のカルボン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の反応触媒の存在下で反応させることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のポリカーボネートポリオールは、このような本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法により得られることを特徴とするものである。
【0015】
本発明において、前記式(1)で表されるジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、また、前記ジアルキルカーボネートとしては、ジエチルカーボネートが好ましく、さらに、前記反応触媒としては、ナトリウムエトキシドおよび酢酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1、3−ブタンジオールなどの従来の方法ではエステル交換反応が進行しにくいジオールを用いる場合であっても、効率的にポリカーボネートポリオールを製造することができ、しかも、得られるポリカーボネートポリオールがウレタン化反応を容易に制御することが可能なものとなるポリカーボネートポリオールの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法は、ジアルキルカーボネートと、下記式(1):
【0019】
【化3】

【0020】
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの少なくとも4つは水素原子である。)
で表されるジオールとを、アルコキシ基の炭素数が4以下のナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸の炭素数が4以下のカルボン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の反応触媒の存在下で反応させる方法である。この製造方法は、ジアルキルカーボネートと前記式(1)で表されるジオールとのエステル交換反応を利用するものである。
【0021】
先ず、本発明に用いられるジアルキルカーボネート、ジオール成分、および反応触媒について説明する。
【0022】
本発明に用いられるジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの対称のジアルキルカーボネート;メチルエチルカーボネートなどの非対称のジアルキルカーボネートが挙げられ、中でも、ジエチルカーボネートが好ましい。これらのジアルキルカーボネートは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、ジオール成分として、前記式(1)で表されるジオールを使用する。このようなジオールを用いることにより、ウレタン化反応を容易に制御可能な非晶性のポリカーボネートポリオールを得ることができる。一方、ジオール成分としてエチレングリコールを用いる(前記式(1)で表されるジオールを併用する場合を除く)と、ジアルキルカーボネートとのエステル交換反応が十分に進行せず、効率的にポリカーボネートポリオールを製造することが困難となる傾向にある。また、ジオール成分として1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールのうちの少なくとも1種を用いる(前記式(1)で表されるジオールを併用する場合を除く)と、ジアルキルカーボネートとのエステル交換反応が十分に進行せず、ポリカーボネートポリオールの分子量が増大しにくい傾向にあり、さらに得られるポリカーボネートポリオールにおいては、ウレタン化反応を制御することが困難となる傾向にある。
【0024】
前記式(1)で表されるジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。中でも、ウレタン化反応の制御がさらに容易となるという観点から、1,3−ブタンジオールなどの2級水酸基を含むジオールが好ましい。
【0025】
本発明において、前記式(1)で表されるジオールは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、ジオール成分として、前記式(1)で表されるジオールと他のジオールとを併用することも可能である。例えば、前記式(1)で表されるジオールと1,4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数4〜10の1級のジオール(好ましくは脂肪族ジオール)とを併用すると、ウレタン化反応の制御性を維持したまま、ウレタン化反応性を高くすることができる。他のジオールの配合量としては、ジオール成分全体に対して90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。他のジオールの配合量が前記上限を超えると、ウレタン化反応性が高くなりすぎ、ウレタン化反応の制御が困難となる傾向にある。
【0026】
本発明に用いられる反応触媒は、アルコキシ基の炭素数が4以下のナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸の炭素数が4以下のカルボン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0027】
前記ナトリウムアルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn−プロポキシド、ナトリウムi−プロポキシド、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムs−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシドなどが挙げられ、中でも、ポリカーボネートポリオールを効率的に製造することができ、得られるポリカーボネートポリオールにおいては、ウレタン化反応を容易に制御できるという観点から、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドが好ましい。一方、反応触媒としてカルボン酸ナトリウムを用いると、エステル交換反応が十分に進行せず、ポリカーボネートポリオールが製造できない傾向にあり、また、反応触媒として水酸化ナトリウムを用いると、ポリカーボネートポリオールは製造できるものの、ポリカーボネートポリオール中に水酸化ナトリウムが不均一に分散するため、ポリカーボネートポリオールのウレタン化反応性にバラツキが生じる傾向にある。
【0028】
また、前記カルボン酸マグネシウムとしては、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、酪酸マグネシウムなどが挙げられ、中でも、ポリカーボネートポリオールを効率的に製造することができ、得られるポリカーボネートポリオールにおいては、ウレタン化反応を容易に制御できるという観点から、酢酸マグネシウムが好ましい。一方、反応触媒としてマグネシウムアルコキシドを用いると、エステル交換反応が十分に進行せず、ポリカーボネートポリオールが製造できない傾向にある。
【0029】
次に、本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法について説明する。本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法においては、前記ジアルキルカーボネートとジオール成分(すなわち、前記式(1)で表されるジオールおよび必要に応じて他のジオール)とを前記反応触媒の存在下でエステル交換反応させる。このとき、生成したアルコールを留出させることによって反応の進行を速めることができる。
【0030】
前記ジアルキルカーボネートと前記ジオール成分との混合比率としては特に制限はないが、モル比で、ジアルキルカーボネート:ジオール成分=1:0.7〜1:1.8が好ましく、1:0.8〜1:1.4がより好ましい。前記ジアルキルカーボネートと前記ジオール成分との混合比率が前記下限未満になると反応時間が長時間となり、得られるポリカーボネートポリオールの色数が高くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるポリカーボネートポリオールにおいて、ウレタン化反応を制御することが困難となる傾向にある。
【0031】
また、前記反応触媒の添加量としては特に制限はないが、得られるポリカーボネートポリオールにおいて、ウレタン化反応を容易に制御できるという観点から、可能な限り少量であることが好ましく、具体的には、前記ジアルキルカーボネートと前記ジオール成分の仕込量の合計100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.0005〜0.01質量部がより好ましい。反応触媒の添加量が前記下限未満になると反応を促進するために高い反応温度を要するため、得られるポリカーボネートポリオールの色数が高くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるポリカーボネートポリオールにおいて、ウレタン化反応を制御することが困難となる傾向にある。また、前記範囲内において反応触媒の添加量を増加させると、得られるポリカーボネートポリオールのウレタン化反応性を高くすることができる。
【0032】
本発明にかかるエステル交換反応における反応温度としては特に制限はないが、80〜200℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。反応温度が前記下限未満になると、エステル交換反応が十分に進行せず、所望のポリカーボネートポリオールが製造できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるポリカーボネートポリオールの色数が高くなる傾向にある。また、エステル交換反応は、温度を一定に保って行なってもよいし、反応進行度に応じて段階的または連続的に昇温させながら行なってもよい。なお、反応進行度はアルコールの留出量から見積もることができる。
【0033】
また、前記エステル交換反応は、常圧下で行うこともできるが、反応後半において減圧下、例えば101〜0.5kPaで行うこともできる。これにより、アルコールの留出速度を速めることができ、反応の進行を速めることが可能となる。
【0034】
このようにして得られる本発明のポリカーボネートポリオールは非晶性であり、ウレタン化反応を容易に制御できるものである。また、このようなポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては300〜5000が好ましく、500〜3000がより好ましい。数平均分子量が前記下限未満になると、得られるポリカーボネートポリオールにおいて、ウレタン化反応を制御することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応に長時間を要し、得られるポリカーボネートポリオールの色数が高くなる傾向にある。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリカーボネートポリオールの物性は以下の方法により測定した。
【0036】
<水酸基価、色数>
JIS K1557に準拠して測定した。
【0037】
<数平均分子量>
反応に関与したジオール成分のモル比よりポリカーボネートポリオール1分子中の平均水酸基数を計算し、この平均水酸基数と前記水酸基価とから数平均分子量を算出した。
【0038】
<ウレタン化反応性>
ポリカーボネートポリオール(80℃)300gとジフェニルメタンジイソシアネート(50℃)1.07当量を混合して撹拌した後、粘度の経時変化を測定した。測定開始から粘度が20Pa・sに達するまでの時間を求めた。この時間が3分以上であればウレタン化反応の制御が可能であることを意味し、5分以上であれば容易に制御できることを意味し、10分以上であればより容易に制御可能であることを意味する。
【0039】
(実施例1)
得られるポリカーボネートポリオールの数平均分子量(以下、「目標分子量」という)が2000となるように、撹拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を備える反応装置に、1,3−ブタンジオール(2331g)、ジエチルカーボネート(3169g)、反応触媒としてナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液(0.74g)を仕込んだ。この反応物を、窒素気流下で反応温度を100〜120℃に保持しながら撹拌し、生成するエタノールを留出させた。エタノールの留出量が理論生成量の30〜40%に達したことを確認した後、4〜10℃/時間の昇温速度で170℃まで昇温した。反応温度を170℃に保持しながらエタノールの留出が終了するまで反応を継続した。次に、反応温度を170℃に保持しながら、反応装置内の圧力を1.3kPaまで徐々に減圧し、1.3kPaの減圧度において、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.44gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
(実施例3)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の代わりに酢酸マグネシウム・4水和物(0.15g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0042】
(実施例4)
1,3−ブタンジオールの代わりに1,3−プロパンジオール(2098g)を用い、ジエチルカーボネートの仕込量を3402gに、ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.69gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例5)
1,3−ブタンジオールの代わりに2−メチル−1,3−プロパンジオール(2331g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
(実施例6)
添加剤として2−エチルヘキシルアシッドフォスフェート(0.42g)をさらに仕込んだ以外は実施例4と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例7)
1,3−ブタンジオール(2331g)の代わりに1,3−ブタンジオール(1098g)と1,6−ヘキサンジオール(1439g)を用い、ジエチルカーボネートの仕込量を2963gに、ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.78gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の代わりにテトラエトキシチタン(0.15g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールは得られなかった。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0047】
(比較例2)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の代わりにテトラブトキシチタン(0.15g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールは得られなかった。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0048】
(比較例3)
テトラブトキシチタンの仕込量を1.48gに変更した以外は比較例2と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0049】
(比較例4)
添加剤として2−エチルヘキシルアシッドフォスフェート(3.71g)をさらに仕込んだ以外は比較例3と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0050】
(比較例5)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液(0.74g)の代わりにナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液(0.12g)とテトラブトキシチタン(0.04g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0051】
(比較例6)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の代わりに酢酸ナトリウム(0.15g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールは得られなかった。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0052】
(比較例7)
酢酸マグネシウム・4水和物の代わりにマグネシウムエトキシド(0.15g)を用いた以外は実施例3と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールは得られなかった。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0053】
(比較例8)
ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の代わりに水酸化ナトリウム(0.15g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
(比較例9)
1,3−ブタンジオールの代わりに1,4−ブタンジオール(1098g)と1,6−ヘキサンジオール(1439g)を用い、ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.74gに変更した以外は実施例7と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0055】
(比較例10)
1,3−ブタンジオールの代わりに1,4−ブタンジオール(2331g)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールを合成した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定し、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続した。得られたポリカーボネートポリオールの物性を前記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
(比較例11)
ジエチルカーボネートの仕込量を4033gに変更した以外は比較例10と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまでには長時間必要であったため、色数が100を超えたところで反応を中断した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0057】
(比較例12)
1,3−ブタンジオールの代わりに1,6−ヘキサンジオール(2391g)を用い、ジエチルカーボネートの仕込量を3109gに、ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.72gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまでには長時間必要であったため、色数が100を超えたところで反応を中断した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0058】
(比較例13)
1,3−ブタンジオールの代わりにエチレングリコール(1832g)を用い、ジエチルカーボネートの仕込量を3668gに、ナトリウムエトキシドの20質量%エタノール溶液の仕込量を0.64gに、減圧度を10kPaに変更した以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまでには長時間必要であったため、色数が100を超えたところで反応を中断した。なお、ポリカーボネートポリオールの目標分子量は2000に設定した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1〜2に示した結果から明らかなように、本発明のポリカーボネートポリオールは、従来のポリカーボネートポリオールに比べて、ウレタン化反応を容易に制御できるものであることが確認された。
【0062】
例えば、反応触媒としてナトリウムアルコキシド(実施例1)またはカルボン酸マグネシウム(実施例3)を用いると、色数が低く、数平均分子量が約2000のポリカーボネートポリオールが比較的高収率で合成できることがわかった。また、実施例2の結果から明らかなように、反応触媒の添加量を調整することによってウレタン化反応を容易に制御できることが確認された。
【0063】
一方、実施例1および3と同量のチタン系反応触媒を用いた場合(比較例1〜2)には、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールを合成することはできなかった。そこで、エステル交換反応が進行するようにチタン系反応触媒を増量した(比較例3)ところ、数平均分子量が約2000のポリカーボネートポリオールは合成できたものの、色数が高くなり、また、ウレタン化反応については、ゲル化が激しく、制御することは困難であった。このため、ウレタン化反応性を低下させるために、リターダーとして酸性リン酸エステルを添加した(比較例4)が、ウレタン化反応性は殆ど低下せず、ウレタン化反応の制御は困難であった。また、色数も高いものであった。なお、比較例5の結果から明らかなように、チタン系反応触媒が少量でも含まれていると、ウレタン化反応性が非常に高く、ウレタン化反応の制御が困難であることがわかった。
【0064】
また、反応触媒として酢酸ナトリウム(比較例6)またはマグネシウムエトキシド(比較例7)を用いても、エステル交換反応が進行せず、ポリカーボネートポリオールを合成することはできなかった。さらに、反応触媒として水酸化ナトリウム(比較例8)を用いると、数平均分子量が約2000のポリカーボネートポリオールを合成できたものの、ポリカーボネートポリオール中に水酸化ナトリウムが均一に溶解していないため、ウレタン化反応性にバラツキが生じ、ウレタン化反応の制御は困難であった。
【0065】
ジオール成分として1,3−プロパンジオール(実施例4)または2−メチル−1,3−プロパンジオール(実施例5)を用いると、1,3−ブタンジオールを用いた場合(実施例1)に比べてウレタン化反応性は高くなったが、制御可能なものであった。また、ウレタン化反応性を低下させるために、リターダーとして酸性リン酸エステルを添加した(実施例6)ところ、ウレタン化反応性が低下し、酸性リン酸エステルの添加によりウレタン化反応の制御が可能であることが確認された。
【0066】
また、ジオール成分として1,3−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを併用(実施例7)すると、1,3−ブタンジオールのみを用いた場合(実施例1)と比べて、ウレタン反応性は高くなったが、制御可能なものであった。
【0067】
これに対して、ジオール成分として1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを併用した場合(比較例9)や1,4−ブタンジオールのみを用いた場合(比較例10)には、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量を約2000まで高めることが困難であった。これは、エステル交換反応に対して触媒活性が強すぎるため、多量のエタノールが生成して留出し、これに同伴してジエチレンカーボネートが多量に留出したためと考えられる。そこで、数平均分子量が約2000となるようにジエチルカーボネートの仕込量を増量し、各成分の配合比を調整してポリカーボネートポリオールの合成を試みたが、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いた場合(比較例11)や1,6−ヘキサンジオールを用いた場合(比較例12)には、分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続することが困難であり、得られたポリカーボネートポリオールは、ポリウレタン原料として使用するには不向きなものであった。
【0068】
また、エチレングリコールを用いた場合(比較例13)には、減圧度を十分に下げることが出来ず,分子末端エチル基が0.1(KOHmg/g)以下になるまで反応を継続することが困難であり、得られたポリカーボネートポリオールは、ポリウレタン原料として使用するには不向きなものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法によれば、ウレタン化反応を容易に制御することが可能なポリカーボネートポリオールを効率的に製造することが可能となる。
【0070】
したがって、本発明のポリカーボネートポリオールは、機械強度、耐候性、耐薬品性などに優れており、ポリウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、ウレタン弾性繊維、塗料などの原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルカーボネートと、下記式(1):
【化1】

(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの少なくとも4つは水素原子である。)
で表されるジオールとを、アルコキシ基の炭素数が4以下のナトリウムアルコキシドおよびカルボン酸の炭素数が4以下のカルボン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の反応触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記ジオールが、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項3】
前記ジアルキルカーボネートがジエチルカーボネートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項4】
前記反応触媒が、ナトリウムエトキシドおよび酢酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の製造方法により得られるものであることを特徴とするポリカーボネートポリオール。

【公開番号】特開2012−46659(P2012−46659A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190818(P2010−190818)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】