説明

ポリカーボネート樹脂、それを用いた電子写真感光体、及びポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】 従来のポリカーボネート樹脂を感光層に含有する電子写真感光体では困難であった、電気的特性と潤滑性を両立する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂がケイ素原子を含み、且つ水酸基量が9μ当量/g以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂、及び該ポリカーボネート樹脂を感光層に含有する電子写真感光体。また、該ポリカーボネート樹脂は、合成反応工程において水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.4以上の合成反応工程を経由することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂と、それを用いた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置、並びにポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、電気的特性及び潤滑性に優れる電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械的強度および耐衝撃性、電気的性能が極めて高い等の優れた特性を数多く有し、幅広い分野で多量に使用されている。具体的には、各種機械部品、自動車部品、ヘルメット等の安全防護材料、各種電気絶縁性材料、光ディスクや電子写真感光体用材料等の情報機器材料、等の極めて多岐な用途が挙げられ、その用途分野の拡大に伴ってさらに高性能のものが望まれている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の用途の1つである電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られること等から、複写機、各種プリンター等の分野で広く使われている。電子写真技術の中核となる感光体については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が使用されている。
有機系感光体においては、有機光導電性物質をバインダー樹脂に溶解または分散して、塗膜を形成して用いるのが通常である。その塗膜は有機光導電性物質とバインダー樹脂を溶解または分散後、塗布乾燥して形成される。これらの中でも、光導電性微粉末をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体と、電荷発生層及び電荷移動層を積層させた積層型感光体とが知られている。なかでも、積層型感光体は、それぞれ効率の高い電荷発生物質、及び電荷移動物質を組み合わせることにより高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また感光層の塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから感光体の主流であり、鋭意開発され実用化されている。
【0004】
通常、電荷輸送層はバインダー樹脂と電荷輸送物質の固溶体から成り立っており、良好な電気的特性を得るため種々のバインダー樹脂が開発されている。これまで電荷輸送層のバインダー樹脂としてはポリメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられている。中でもバインダー樹脂として優れた性能を有する種々のポリカーボネート樹脂が開発され、耐摩耗性や耐擦傷性、応答性が優れたポリカーボネート樹脂が実用化されている。(特許文献1〜3)
これらの電子写真感光体には、当然ながら適用される電子写真プロセスに応じた電気的、機械的、更には光学的特性等様々な特性が要求される。特に繰り返し使用される感光体にあっては、帯電、露光、現像、転写、クリーニングといった電気的、機械的な負荷が直接的または間接的に繰り返し加えられるため、それらに対する長期安定性と耐久性が要求される。
【0005】
具体的には、帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物による劣化や、放電やクリーニングによる電子写真感光体表面の磨耗や傷といった電気的及び機械的劣化に対する耐久性が求められている。
この電子写真感光体の耐久性を向上させるための手段として、電子写真感光体表面の潤滑性を向上させる試みがなされており、具体的には、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂が鋭意検討されている。(特許文献4〜7)
しかしながら、残存している水酸基が電子写真感光体表面の電気的特性に、どのような影響を及ぼすのか検討されてはおらず、製造方法からみても水酸基量がμ当量/gオーダーでは多く存在していたと推測される。従って、電子写真感光体表面の電気的特性と潤滑性を両立させることが困難であるのが現状である。尚、特開2007−199688号公報(特許文献5)には、シロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂を有する電子写真感光体が記載されており、ここで得られたポリカーボネート樹脂は「水酸基は認められなかった」旨記載されているが(0047段落)、ここでは赤外線吸収スペクトルで分析した結果であり、その場合μ当量/gオーダーの水酸基量までは検知しえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−105550号公報
【特許文献2】特開昭62−212661号公報
【特許文献3】特開平03−221962号公報
【特許文献4】特許第3606074号公報
【特許文献5】特開2007−199688号公報
【特許文献6】特開2008−280389号公報
【特許文献7】特開2008−291115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものである。
即ち、本発明の目的は電子写真感光体に用いた際に、電気的特性と潤滑性を両立させた、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該ポリカーボネート樹脂の製造方法にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電子写真感光体表面の電気的特性と潤滑性を両立させるために、本発明者らは鋭意検討の結果、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂において、水酸基量が9μ当量/g以下であるケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
即ち、第1の発明は、ポリカーボネート樹脂がケイ素原子を含み、且つ水酸基量が9μ当量/g以下であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂に存する。
【0009】
第2の発明は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを有し、前記感光層が前記のケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
第3の発明は、前記のケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の合成反応工程において、水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.4以上の合成反応工程を経由することを特徴とする、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂において、水酸基量が9μ当量/g以下であるポリカーボネート樹脂であり、該ポリカーボネート樹脂を電子写真感光体に用いた場合、電子写真感光体表面の電気的特性と潤滑性を両立させた電子写真感光体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の形態が適用される、電子写真感光体を用いた画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂は、水酸基量が9μ当量/g以下である、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂である。
【0013】
ここで、水酸基量が9μ当量/g以下であるが、好ましくは8μ当量/g以下、さらに好ましくは7μ当量/g以下である。水酸基量が過度に大きいと、電子写真感光体の電気的特性が悪化し、画像欠陥等が生じる可能性があるため好ましくない。
水酸基量は、例えばNMR測定、比色定量測定等により測定可能である。
ポリカーボネート樹脂中にケイ素原子を含有させる方法は、様々な方法があるが、特に、ポリカーボネート樹脂と化学結合していることが好ましい。この方法として、(1)炭素炭素2重結合を有するポリカーボネート樹脂と、Si−H結合を有するポリシロキサンとのヒドロシリル化反応、(2)ケイ素原子を含む2価フェノール及び/又はケイ素原子を含む1価フェノールを、ポリカーボネート樹脂を合成する際に添加する方法、等が挙げられるが、(2)が、製造簡便性、生成物の電気的特性を勘案すると、好ましい。
ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂は、具体的にはポリカーボネート樹脂中に下記一般式(1)及び/又は(2)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)(2)中、R、R10、R20は脂肪族及び/又は芳香族を含む2価の有機残基を表す。また、R11〜R19はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、特にアルキル基、又はフェニル基が好ましい。n、mは0以上500以下の整数を表す。n、mが過度に大きいと反応性が低下し、好ましくない。
【0016】
一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂構成材料となる、ケイ素原子を含む2価フェノールの具体例としては、以下に示す化学構造のものが挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
製造の簡便性を考慮すると、これらの中で、(1−1)、(1−2)、(1−5)、(1−6)、(1−8)、(1−10)、(1−11)が好ましく、(1−1)、(1−11)が特に好ましい。
一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂構成材料となる、ケイ素原子を含む1価
フェノールの具体例としては、以下に示す化学構造のものが挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
製造の簡便性を考慮すると、これらの中で、(2−1)、(2−2)、(2−5)、(2−9)、(2−10)、(2−14)が好ましく、(2−1)、(2−5)、(2−14)が特に好ましい。
【0023】
また、上記ケイ素原子を含む2価フェノール及び上記ケイ素原子を含む1価フェノール
は、少なくとも1種を添加すれば良いが、特に上記ケイ素原子を含む1価フェノールを添
加することが好ましい。好ましい理由としては、ケイ素原子を含む1価フェノールの方が、電気的特性と潤滑性に優れた電子写真感光体が得られるためである。
〔ポリカーボネート樹脂の製造方法〕
ポリカーボネート樹脂を製造する従来公知の方法として、2価フェノールとホスゲンとを反応させオリゴマーを得る工程(第1工程)と、第1工程で得られたオリゴマーを触媒の存在下に重合反応させポリカーボネート樹脂を製造する工程(第2工程)が挙げられる。ここで、本発明のケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を製造するには、上記ケイ素原子を含む2価フェノール及び/又は上記ケイ素原子を含む1価フェノールを、第1工程及び/又は第2工程に任意量添加することが必要であるが、第2工程で添加することが好ましい。
【0024】
オリゴマーを得る第1工程では、少なくとも、2価フェノールとホスゲンが用いられるが、通常、2価フェノールを含有した水酸化アルカリ金属水溶液、もしくは該水酸化アルカリ金属水溶液および水不混合性有機溶媒の撹拌条件下にホスゲンを導入する方法が用いられる。
ここで用いられる、ケイ素原子を含む2価フェノール以外の2価フェノールの具体例としては、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン等が挙げられ、これらの2価フェノールを複数組み合わせて用いることも可能である。
【0025】
ここで用いられる水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。水酸化アルカリ金属の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1〜4倍当量の範囲が好ましい。
ここで用いられる水不混合性有機溶媒とは、水と混合した場合完全には水に溶解せず、少なくとも一部が水と分離して2層を形成し得る有機溶媒であればよい。具体的には、ヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素;その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が含まれる。これらの中でも、ジクロロメタンまたはクロロベンゼンが好ましい。これらの水不混合性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒と混合しても使用することが可能である。また、2価フェノールを含有した水酸化アルカリ金属水溶液と水不混合性有機溶媒の比は体積比で、(2価フェノールを含有した水酸化アルカリ金属水溶液):(水不混合性有機溶媒)=1:0.2〜1であることが好ましい。有機溶媒中のオリゴマー濃度は、生成するオリゴマーが溶解する範囲であれば良く、具体的には、10重量%〜40重量%である。
【0026】
一方、ホスゲンは気体状、液体状あるいは水不混合性有機溶媒溶液として導入される。ホスゲンの好ましい導入量は、反応条件、特に反応温度及び水相中の2価フェノールを含有した水酸化アルカリ金属水溶液の濃度によっても影響は受けるが、2価フェノール1モ
ルに対するホスゲンのモル数は、通常1〜3、好ましくは1〜2である。この比が小さすぎると、生成するオリゴマー中へのクロロホーメート基量が少なくなり、続く重合反応が進行しなくなるので好ましくない。オリゴマーの水酸基量に対するクロロホーメート基量の比が1.5以上が好ましく、1.5〜5が特に好ましい。オリゴマーの水酸基量に対するクロロホーメート基量の比が1.5以下になると重合反応が進行しにくくなるので好ましくない。
【0027】
オリゴマーを製造する際の反応系の温度は、通常0〜40℃、好ましくは0〜20℃である。反応温度が高すぎると、有機溶媒の蒸発や副反応が進行するため、好ましくない。
またこの第1工程において、必要であれば、触媒、1価フェノール、還元剤などを用いることも可能である。ここで触媒としては、重縮合反応で使用されている公知の触媒から任意に選択して使用することができる。具体的には、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、ピリジン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリンが適しており、特に、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。
また、1価フェノールを添加させても良く、1価フェノールの具体例として、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体および2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類、o,m,p−フェニルフェノールが挙げられる。
【0028】
また、還元剤を添加させても良く、還元剤の具体例としては、ハイドロサルファイトナトリウム等が用いられ、還元剤を添加することで着色を抑制することができる。
この第1工程において得られるオリゴマーの粘度平均分子量は通常500〜10,000、好ましくは、1,000〜5,000である。さらにオリゴマーは水不混合性有機溶媒の溶液で得られるため、その溶液のまま、次のポリカーボネート樹脂の製造に直接用いることができるため、簡便である。
【0029】
続いて、ポリカーボネート樹脂を製造する工程(第2工程)とは、第1工程で得られた
オリゴマーを触媒の存在下に重合反応させる工程である。
ここで用いられる触媒とは、重縮合反応で使用されている公知の触媒から任意に選択して使用することができる。
さらに、重合反応では、水酸化アルカリ金属水溶液の添加が必要である。水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。水酸化アルカリ金属は重合反応で消費されるため、消費される水酸化アルカリ金属量以上の量を持つ水酸化アルカリ金属水溶液が必要である。水酸化アルカリ金属量が少なすぎると重合反応の反応速度が低下し、好ましくない。一方、水酸化アルカリ金属量が多すぎると、クロロホーメート基の加水分解反応が頻繁に起こり、末端の水酸基量が多いポリカーボネート樹脂が生成し、特性を悪化させるため、好ましくない。
【0030】
さらに、上記ケイ素原子を含む2価フェノール及び/又は上記ケイ素原子を含む1価フェノールを添加することが必要であるが、その他に2価フェノール、1価フェノール、還
元剤などを任意に選択し、用いることが可能である。1価フェノールとして、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノー
ル、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体および2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類、o,m,p−フェニルフェノールが挙げられる。また、還元剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム等が用いられ、還元剤を添加することで着色を抑制することができる。
【0031】
この第2工程において、上記ケイ素原子を含む2価フェノール及び/又は上記ケイ素原
子を含む1価フェノールを添加する場合は、ジクロロメタン等の有機溶媒に溶解させて添加させても良いし、アルカリ水溶液に溶解又は懸濁させて添加させても良い。また、その添加する時期は、重合反応開始前、重合反応途中、重合反応終期、いずれでも良い。
また、必要に応じ、上記の水不混合性有機溶媒を追加し、該オリゴマーの濃度を調整して用いられる。水不混合性有機溶媒を追加する量は、重合反応によって生成する有機相中のポリカーボネート樹脂の濃度が3重量%〜30重量%となる量である。
【0032】
本発明では、ポリカーボネート樹脂の合成反応工程時、詳しくはポリカーボネート樹脂を製造する第2工程の水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.4以上の工程を経由することが好ましい。α/βが0.4未満であると、有機相中に水相が分散した状態や、乳化した状態を取りやすくなるため、ケイ素原子を含む2価フェノールや、ケイ素原子を含む1価フェノールの反応率が低下したり、合成反応工程を停止した際に、水相と有機相の分離が悪くなり、遠心分離工程が余分に必要になったり、得られるケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の収率が低下したり、電子写真感光体に用いた場合の電気的特性が悪化したりして、好ましくない。ここで、α/βが0.4以上とする理由は、合成反応工程における、水相と有機相の分散状態に密接に関係がある。α/βが0.4以上であれば、反応系は、水相中に有機相が分散した状態を形成しやすくなり、ケイ素原子を含む2価フェノールや、ケイ素原子を含む1価フェノールの反応率が上昇したり、合成反応工程を停止した際に、水相と有機相の分離が良好になりやすいため、好ましい。さらに、水相中に有機相が分散した状態を形成するには、それぞれの相の添加順序に密接に関係があり、まず水相を添加し、撹拌条件下で、有機相を添加する方が、水相中に有機相が分散した状態を形成しやすくなり、好ましい。α/βの範囲は、通常、0.4〜100であるが、好ましくは、0.45〜50であり、特に好ましくは、0.5〜10である。
【0033】
重合温度は0℃〜40℃の範囲であることが好ましい。温度が過度に高いと、副反応が併発し、生成するポリカーボネート樹脂の特性が悪化するので、好ましくない。
重合時間は1時間〜20時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。
合成反応工程が終了後、水相と有機相とを分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とするポリカーボネート樹脂が得られる。
【0034】
洗浄工程では、水相と有機相の体積比については、何ら制限は無く、生産性の効率に応じて種々選択することができる。
このようにして得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常、10,000〜300,000、好ましくは、12,000〜200,000、特に好ましくは、15,000〜150,000の範囲である。粘度平均分子量が過度に小さい場合、電子写真感光体を形成する等の膜として得たときの機械的強度が低下して好ましくない。また、粘度平均分子量が過度に大きい場合は、電子写真感光体の塗布液としての粘度が上昇し、適当な膜厚に塗布することが困難になり、好ましくない。
また、本発明のポリカーボネート樹脂に含まれるポリシロキサン含有量(一般式(1)の
O、R、R10、OCOを除いた部分、及び一般式(2)のO、R20を除いた部分)はポリカーボネート樹脂全量中、0.01〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜40重量%、さらに好ましくは0.01〜35重量%である。ポリカ
ーボネート樹脂に含まれるポリシロキサンの含有量が少なすぎると、例えば電子写真感光体に用いた場合、潤滑性が充分に得られず、本発明のケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を多く添加する必要があり、好ましくない。また、ポリカーボネート樹脂に含まれるポリシロキサンの含有量が多すぎると、機械的特性、光学的特性、電気的特性および接着性等に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。
【0035】
〔電子写真感光体〕
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂は、例えば、電子写真感光体に用いることができる。ポリカーボネート樹脂を電子写真感光体に用いる際は、電子写真感光体の感光層に用いられることができる。
電子写真感光体は、所定の導電性基体上に設けた感光層を備えている。電子写真感光体の具体的な構成としては、例えば、導電性基体上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層とを積層した積層型感光体;導電性基体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体等が挙げられる。本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂は、 感光層の最外層に用いられるのが好ましい。通常は
電荷輸送物質を含有する層のバインダー樹脂として用いられ、好ましくは積層型感光層の電荷輸送層のバインダー樹脂として用いられる。
【0036】
尚、本実施の形態が適用される電子写真感光体における感光層には、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂と他の樹脂とを混合して用いることも可能である。ここで混合される他の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体またはその共重合体;ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂または種々の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂が好ましい。また、併用する樹脂の混合割合は、特に限定されないが、潤滑性、機械的特性、光学的特性、電気的特性、接着性等を勘案すると、バインダー樹脂全体としてポリシロキサン含有量換算で0.001〜50重量%となることが好ましい。
【0037】
〔導電性基体〕
本実施の形態が適用される電子写真感光体に使用される導電性基体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化スズ等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が挙げられる。
【0038】
導電性基体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状等が挙げられる。また、金属材料を用いた導電性基体の上に、導電性・表面性等の制御または欠陥被覆等を目的として、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性基体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、予め、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施しても良い。尚、陽極酸化処理を施す場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
【0039】
導電性基体の表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法または研磨処理により、または、導電性基体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
本実施の形態が適用される電子写真感光体に使用される感光層の具体的な構成としては、例えば、積層型感光体の場合は電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有し、静電荷を保
持して露光により発生した電荷を輸送する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有し、露光により電荷対を発生する電荷発生層と、を有する。また、その他にも必要に応じて、例えば、導電性基体からの電荷注入を阻止する電荷阻止層、レーザー光等の光を拡散させて干渉縞の発生を防止する光拡散層等を有する場合がある。分散型(単層型)感光体の場合は、感光層は、電荷移動物質及び電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散されている。
【0040】
〔電荷発生層〕
本実施の形態が適用される電子写真感光体が積層型感光体である場合、感光層を構成する電荷発生層には電荷発生物質が含有される。電荷発生物質としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等の各種光導電材料が挙げられる。これらの中でも、特に、有機顔料、更に、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの 電荷発生層物質の微粒子は、例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。電荷発生物質の使用量は、特に限定されないが、通常、バインダー樹脂100重量部に対して30重量部〜500重量部の範囲で使用される。尚、電荷発生層の膜厚は、通常、0.1μm〜1μm、好ましくは、0.15μm〜0.6μmが好適である。
【0041】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を使用する場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。特に、感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。尚、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型については、W.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit.Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2°が27.3°に明瞭なピークを示す結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物または結晶状態における混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
【0042】
〔電荷輸送層〕
本実施の形態が適用される電子写真感光体が積層型感光体である場合、感光層を構成する電荷輸送層には電荷輸送物質が含有される。電荷輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物;テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物;ジフェノキノン等のキノン類等の電子吸引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物またはこれらの化合物が複数結合されたもの;あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質が挙げられる。これ
らの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましく、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体が複数結合されてなるものが好ましい。
【0043】
電荷輸送物質のなかでも、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物が好ましく用いられる。
【0044】
【化6】

【0045】
一般式(3)中、Ar1〜Ar6は各々独立して、置換基を有しても良いアリーレン基または置換基を有しても良い2価の複素環基を表す。m,mは各々独立して0または1を表す。m=0の場合のAr5,m=0の場合のAr6は、それぞれ置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、または置換基を有しても良い1価の複素環基である。m=1の場合のAr5,m=1の場合のAr6は、それぞれ置換基を有しても良いアルキレン基、置換基を有しても良いアリーレン基、または置換基を有しても良い2価の複素環基を表す。Qは、直接結合または2価の残基を表す。R〜Rは各々独立して水素原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、または置換基を有しても良い複素環基を表す。n〜nは各々独立して0〜4の整数を表す。また、Ar1〜Ar6は互いに結合して環状構造を形成しても良い。
【0046】
さらに、一般式(3)中、R〜Rは、各々独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基、置換基を有していても良い複素環基を表す。
一般式(3)中、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの内炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基がアリール置換基を有する場合は、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、炭素数7〜12のアルキル基が好ましい。
【0047】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられ、炭素数6〜12のアリール基が好ましい。
複素環基は、芳香族性を有する複素環が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられ、単環の芳香族複素環が更に好ましい。
〜Rにおいて、最も好ましいものは、メチル基及びフェニル基である。
【0048】
一般式(3)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有しても良いアリーレン基または置換基を有しても良い2価の複素環基を表す。m,mは各々独立して0または1を表す。m=0の場合のAr5,m=0の場合のAr6は、それぞれ置換基を有し
ても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、または置換基を有しても良い1価の複素環基を表し、m=1の場合のAr5,m=1の場合のAr6は、それぞれ置換基を有しても良いアルキレン基、置換基を有しても良いアリーレン基、または置換基を有しても良い2価の複素環基を表す。具体的には、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられ、炭素数6〜14のアリール基が好ましく;アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0049】
一般式(3)中、1価の複素環基としては、芳香族性を有する複素環が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられ、単環の芳香族複素環が更に好ましい。2価の複素環基としては、芳香族性を有する複素環が好ましく、例えば、ピリジレン基、チエニレン基等が挙げられ、単環の芳香族複素環が更に好ましい。これらのうち、最も好ましいものは、Ar1及びAr2はフェニレン基であり、Ar3はフェニル基である。
【0050】
一般式(3)中、R〜R及びAr1〜Ar6で表される基のうち、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基は、さらに置換基を有していても良い。その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基,エトキシ基,プロピルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基,フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基,ナフチル基等のアリール基;スチリル基,ナフチルビニル基等のアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基または上述したアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基;さらに、シアノ基、ニトロ基、水酸基等が挙げられる。これらの置換基は互いに結合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した環状炭化水素基や複素環基を形成しても良い。
【0051】
これらの中、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数6〜12のアリールチオ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基が更に好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0052】
一般式(3)中、n〜nは各々独立して0〜4の整数を表すが、0〜2が好ましく、1が特に好ましい。m、mは0又は1を表し、0が好ましい。
一般式(3)中、Qは、直接結合又は2価の残基を表し、2価の残基として好ましいものは、16族原子、置換基を有しても良いアルキレン、置換基を有しても良いアリーレン基、置換基を有しても良いシクロアルキリデン基、またはこれらが互いに結合した、例えば[−O−Z−O−]、[−Z−O−Z−]、[−S−Z−S−]、[−Z−Z−]等が挙げられる(但し、Oは酸素原子、Sは硫黄原子、Zは置換基を有しても良いアリーレン基または置換基を有しても良いアルキレン基を表す)。
【0053】
Qを構成するアルキレン基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、中でもメチレン基及びエチレン基が更に好ましい。また、シクロアルキリデン基としては、炭素数5〜8
のものが好ましく、中でもシクロペンチリデン基及びシクロヘキシリデン基が更に好ましい。アリーレン基としては、炭素数6〜14のものがこのましく、中でもフェニレン基及びナフチレン基が更に好ましい。
【0054】
また、これらアルキレン基、アリーレン基、シクロアルキリデン基は置換基を有しても良く、好ましい置換基としては、例えば、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
本実施の形態が適用される電子写真感光体の感光層を構成する電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の具体例としては、例えば、特開平9−244278号公報に記載されるアリールアミン系化合物、特開2002−275133号公報に記載されるアリールアミン系化合物等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独で用いても良いし、いくつかを混合しても良い。これらの電荷輸送物質がバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0055】
本実施の形態が適用されるバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質30重量部〜200重量部、好ましくは、40重量部〜150重量部の範囲で使用される。また電荷輸送層の膜厚は、通常、5μm〜50μm、好ましくは10μm〜45μmである。
尚、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤等の添加剤を含有させても良い。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0056】
〔分散型(単層型)感光層〕
分散型感光層の場合には、バインダー樹脂と電荷輸送物質とからなる電荷輸送媒体中に、前述した電荷発生物質が分散される。電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量が過度に少ないと、充分な感度が得られず、過度に多いと、帯電性の低下、感度の低下等の弊害がある。電荷発生物質の使用量は、好ましくは0.5重量%〜50重量%、より好ましくは1重量%〜20重量%の範囲で使用される。
【0057】
分散型感光層の膜厚は、通常5μm〜50μm、より好ましくは10μm〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可撓制、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル、その他の添加剤が添加されていても良い。分散型感光層の上に、分散型感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による分散型感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。また、電子写真感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層には、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0058】
〔電子写真感光体の調製方法〕
本実施の形態が適用される電子写真感光体の調製方法は、特に限定されないが、通常、導電性基体上に、バインダー樹脂を含有する感光層形成塗布液を、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法等の公知の方法により塗布して形成される。これらの中でも生産性の高さから浸漬塗布法が好ましい。
【0059】
〔下引き層〕
本実施の形態が適用される電子写真感光体は、導電性基体と感光層との間に、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、例えば、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらの金属酸化物粒子は、1種類の粒子のみを用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。
【0060】
これらの中でも、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均1次粒径として10nm以上、100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上、50nm以下である。
【0061】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸樹脂、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示し好ましい。バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の配合組成比は、特に限定されないが、通常、10重量%〜500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。尚、下引き層の膜厚は、特に限定されないが、感光体特性及び塗布性から0.1μm〜20μmが好ましい。また、下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
【0062】
〔画像形成装置〕
次に、本実施の形態が適用される電子写真感光体を用いた画像形成装置の一例について説明する。図1は、画像形成装置を説明する図である。図1に示された画像形成装置10は、所定の導電性基体上に、樹脂を含有する感光層を設けた電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させる帯電ローラーからなる帯電装置2と電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成する露光装置3と、電子写真感光体1表面にトナー(T)を供給する現像装置4と、トナー(T)の帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(P)に転写する転写装置5と、電子写真感光体1に付着した残留トナーを掻き落とし回収するクリーニング装置6と、記録紙(P)に転写されたトナー像を定着させる定着装置7と、を有している。
【0063】
電子写真感光体1は、円筒状の導電性基体の表面に上述した樹脂を含有する感光層を設けたドラム状の形状を有している。
帯電装置2は、ローラー型の帯電ローラーを有している。尚、帯電装置2は、例えば、コロトロンまたはスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等が良く用いられる。
【0064】
尚、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカート
リッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【0065】
露光装置3は、電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成できるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうこともできる。露光を行なう際に使用する光は特に限定されないが、例えば、波長780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等が挙げられる。
【0066】
現像装置4は、内部にトナー(T)が貯留されている現像槽41を備え、さらに、現像槽41は、トナー(T)を撹拌するアジテータ42と、貯留されているトナー(T)を担持して後述する現像ローラー44に供給する供給ローラー43と、電子写真感光体1及び供給ローラー43に各々当接し、供給ローラー43によって供給されるトナー(T)を担持して電子写真感光体1の表面に接触させる現像ローラー44と、現像ローラー44に当接する規制部材45と、を有している。また、必要に応じ、ボトル、カートリッジ等の容器から現像槽41にトナー(T)を補給する補給装置(図示せず)を付帯させても良い。現像装置4の種類に特に制限は無く、例えば、カスケード現象、1成分導電トナー現象、2成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方法等の任意の装置を用いることができる。
【0067】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナー(T)を撹拌するとともに、トナー(T)を供給ローラー43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けても良い。供給ローラー43は、例えば、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラー44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロールまたは金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。現像ローラー44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えても良い。規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード又は金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。規制部材45は、現像ローラー44に当接し、バネ等によって現像ローラー44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、規制部材45にトナー(T)との摩擦帯電によりトナー(T)に帯電を付与する機能を設けても良い。尚、供給ローラー43及び現像ローラー44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。
【0068】
トナー(T)の種類は特に限定されないが、通常、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナー(T)の粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。尚、トナー(T)は、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置10本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナー(T)が無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置10本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2及びトナー(T)が備えられたカートリッジを用いることもできる。
【0069】
転写装置5は、図示しないが、電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラー、転写ベルト等から構成されている。また、転写装置5の種類に特に制限は無く、例えば、コロナ転写、ローラー転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。
クリーニング装置6は、特に限定はされないが、例えば、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラークリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。
【0070】
定着装置7は、定着ローラーからなる上部定着部材71と、上部定着部材71に当接する定着ローラーからなる下部定着部材72と、上部定着部材71の内部に設けられた加熱装置73と、を有している。尚、加熱装置73は下部定着部材72内部に設けても良い。上部定着部材71または下部定着部材72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコーンゴムを被覆した定着ロール、テフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。更に、上部定着部材71または下部定着部材72は、離型性を向上させるためにシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としても良い。尚、定着装置7の種類に特に制限は無く、例えば、熱ローラー定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0071】
次に、画像形成装置10の作用について説明する。
電子写真感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させても良い。続いて、帯電された電子写真感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。次に、電子写真感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。即ち、現像装置4は、供給ローラー43により供給されるトナー(T)を、現像ブレード等の規制部材45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは電子写真感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラー44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0072】
現像ローラー44に担持された帯電トナー(T)が電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。続いて、このトナー像は、転写装置5によって記録紙(P)に転写される。この後、転写されずに電子写真感光体1の感光面に残留しているトナー(T)は、クリーニング装置6で除去される。記録紙(P)上に転写されたトナー(T)は、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナー(T)が溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙(P)上にトナー(T)が定着され、最終的な画像が得られる。
【0073】
尚、画像形成装置10は、上述した構成に加え、例えば、除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体1に露光を行うことで電子写真感光体1の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0074】
また、画像形成装置10は更に変形して構成しても良く、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナー(T)を用いたフルカラータンデム方式の構成としても良い。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。尚、本実施の形態は実
施例に限定されない。尚、実施例及び比較例中の部及び%は、特に限定しない限り重量基準である。
〔2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以後、BP−aと呼ぶ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(以後、BP−bと呼ぶ)、を用いたオリゴマーの製造〕
窒素雰囲気下、撹拌しながら溶解槽に、脱塩水(24.52kg)、25重量%水酸化ナトリウム水溶液(7.69kg)、ハイドロサルファイトナトリウム(5.68g)、BP−a(2.5kg)、BP−b(2.53kg)を加え、均一に溶解させた(以後、BP−a/bのアルカリ水溶液と呼ぶ)。
【0076】
段差をつけた3つの反応槽(1.8L、1.8L、4.5Lの内容積を持つ各反応槽)
を備えた連続流れ撹拌槽反応器(CSTR反応器、continuous-flow stirred tank reactor)に、
第1反応槽(内部温度35℃):
・BP−a/bのアルカリ水溶液(7858mL/時)
・ジクロロメタン(3251mL/時)
・ガス状ホスゲン(10.6g/分)
第2反応槽(内部温度30℃):
・16重量%p−tert−ブチルフェノールのジクロロメタン溶液(59mL/時)
第3反応槽(内部温度30℃):
・2重量%トリエチルアミン水溶液(16.8mL/時)
の条件になるように連続添加し、所定時間反応を行った。反応後の液体を静置し、有機相と水相とに分離させ、有機相(以後、BP−a/bオリゴマー溶液と呼ぶ)を得た。
【0077】
BP−a/bオリゴマー溶液の分析値は以下の通り。
・オリゴマー濃度(蒸発乾固させて測定した):24.4重量%
・末端クロロホルメート基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、アニリンと純水を添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定し測定した):0.4規定
・末端フェノール性水酸基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、四塩化チタン、酢酸溶液を加え発色させ、分光光度計を用い、546nmの波長で吸光度を測定した):0.1規定
〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以後、BP−cと呼ぶ)、を用いたオリゴマーの製造〕
窒素雰囲気下、撹拌しながら溶解槽に、脱塩水(27.75kg)、25重量%水酸化ナトリウム水溶液(3.58kg)、ハイドロサルファイトナトリウム(2.26g)、BP−c(2kg)を加え、均一に溶解させた(以後、BP−cのアルカリ水溶液と呼ぶ)。
【0078】
段差をつけた3つの反応槽(1.8L、1.8L、4.5Lの内容積を持つ各反応槽)
を備えた連続流れ撹拌槽反応器(CSTR反応器、continuous-flow stirred tank reactor)に、
第1反応槽(内部温度35℃):
・BP−cのアルカリ水溶液(8835mL/時)
・ジクロロメタン(2276mL/時)
・ガス状ホスゲン(6.4g/分)
の条件になるように連続添加し、所定時間反応を行った。反応後の液体を静置し、有機相と水相とに分離させ、有機相(以後、BP−cオリゴマー溶液と呼ぶ)を得た。
BP−cオリゴマー溶液の分析値は以下の通り。
・オリゴマー濃度(蒸発乾固させて測定した):18.8重量%
・末端クロロホルメート基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、アニリンと純水を添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定し測定した):0.47規定
・末端フェノール性水酸基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、四塩化チタン、酢酸溶液を加え発色させ、分光光度計を用い、546nmの波長で吸光度を測定した):0.009規定
〔BP−aを用いたオリゴマーの製造〕
窒素雰囲気下、撹拌しながら溶解槽に、脱塩水(23.91kg)、25重量%水酸化ナトリウム水溶液(8.13kg)、ハイドロサルファイトナトリウム(5.65g)、BP−a(5kg)を加え、均一に溶解させた(以後、BP−aのアルカリ水溶液と呼ぶ)。
【0079】
段差をつけた3つの反応槽(1.8L、1.8L、4.5Lの内容積を持つ各反応槽)
を備えた連続流れ撹拌槽反応器(CSTR反応器、continuous-flow stirred tank reactor)に、
第1反応槽(内部温度35℃):
・BP−aのアルカリ水溶液(7858mL/時)
・ジクロロメタン(3251mL/時)
・ガス状ホスゲン(11.2g/分)
第3反応槽(内部温度30℃):
・2重量%トリエチルアミン水溶液(16.8mL/時)
の条件になるように連続添加し、所定時間反応を行った。反応後の液体を静置し、有機相と水相とに分離させ、有機相(BP−aオリゴマー溶液と呼ぶ)を得た。
BP−aオリゴマー溶液の分析値は以下の通り。
・オリゴマー濃度(蒸発乾固させて測定した):25.2重量%
・末端クロロホルメート基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、アニリンと純水を添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定し測定した):0.56規定
・末端フェノール性水酸基濃度(オリゴマー溶液をジクロロメタンで希釈した後、四塩化チタン、酢酸溶液を加え発色させ、分光光度計を用い、546nmの波長で吸光度を測定した):0.326規定
〔ポリカーボネート樹脂の製造〕
実施例1
〔樹脂A〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.37g)、脱塩水(290.72mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液(105.71g)、ジクロロメタン(113.70mL)、ケイ素原子を含む1価フェノールとして例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:3.6985g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0080】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂A(全理論
収量に対する収率:94%)を得た。樹脂Aの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0081】
【化7】

【0082】
実施例2
〔樹脂B〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.03g)、脱塩水(205.25mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(1.28mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0083】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液(105.71g)、ジクロロメタン(194.68mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:3.6985g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=0.75)、3時間合成反応を行った。
【0084】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂B(全理論収量に対する収率:93%)を得た。樹脂Bの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0085】
【化8】

【0086】
実施例3
〔樹脂C〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.40g)、脱塩水(290.72mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0087】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液(105.71g)、ジクロロメタン(113.70mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:88、添加量:3.6976g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0088】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂C(全理論収量に対する収率:92%)を得た。樹脂Cの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0089】
【化9】

【0090】
実施例4
〔樹脂D〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.10g)、脱塩水(291.47mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.43mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0091】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−cオリゴマー溶液(142.66g)、ジクロロメタン(85.70mL)、p−tert−ブチルフェノール(0.1987g)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:3.7227g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0092】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂D(全理論収量に対する収率:94%)を得た。樹脂Dの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0093】
【化10】

【0094】
実施例5
〔樹脂E〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.18g)、脱塩水(291.47mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.43mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0095】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−cオリゴマー溶液(142.66g)、ジクロロメタン(85.70mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:2.2336g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:8.4重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0096】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(332.19mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(395mL)で3回、脱塩水(395mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂E(全理論収量に対する収率:93%)を得た。樹脂Eの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0097】
【化11】

【0098】
実施例6
〔樹脂F〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.14g)、脱塩水(291.47mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.43mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0099】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−cオリゴマー溶液(142.66g)、ジクロロメタン(85.70mL)、p−tert−ブチルフェノール(0.2359g)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:88、添加量:3.7479g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.3重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0100】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂F(全理論収量に対する収率:93%)を得た。樹脂Fの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0101】
【化12】

【0102】
実施例7
〔樹脂G〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.18g)、脱塩水(291.47mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.43mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0103】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−cオリゴマー溶液(142.66g)、ジクロロメタン(85.70mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:88、添加量:6.7733g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:21.8重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0104】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(332.19mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(395mL)で3回、脱塩水(395mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂G(全理論収量に対する収率:92%)を得た。樹脂Gの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0105】
【化13】

【0106】
実施例8
〔樹脂H〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.56g)、脱塩水(290.70mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0107】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−aオリゴマー溶液(103.81g)、ジクロロメタン(115.13mL)、p−tert−ブチルフェノール(0.2071g)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:3.8811g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.7重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0108】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂H(全理論収量に対する収率:94%)を得た。樹脂Hの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0109】
【化14】

【0110】
実施例9
〔樹脂I〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.64g)、脱塩水(290.70mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0111】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−aオリゴマー溶液(103.81g)、ジクロロメタン(115.13mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:2.3287g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:8.8重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0112】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(332.19mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(395mL)で3回、脱塩水(395mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂I(全理論収量に対する収率:93%)を得た。樹脂Iの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0113】
【化15】

【0114】
実施例10
〔樹脂J〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.59g)、脱塩水(290.70mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0115】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−aオリゴマー溶液(103.81g)、ジクロロメタン(115.13mL)、p−tert−ブチルフェノール(0.2459g)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:88、添加量:3.9074g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.7重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0116】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(80.98mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(207mL)で3回、脱塩水(207mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂J(全理論収量に対する収率:94%)を得た。樹脂Jの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0117】
【化16】

【0118】
実施例11
〔樹脂K〕
300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(3.64g)、脱塩水(290.70mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(0.87mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを反応槽に添加し、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0119】
別途、300mLビーカーに、先に調製したBP−aオリゴマー溶液(103.81g)、ジクロロメタン(115.13mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:88、添加量:7.0615g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:22.5重量%)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=1.5)、3時間合成反応を行った。
【0120】
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は良好であったため、遠心分離操作は必要無かった。分離した有機相にジクロロメタン(332.19mL)を添加した後、有機相を0.1規定塩酸(395mL)で3回、脱塩水(395mL)で2回洗浄した。
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂K(全理論収量に対する収率:92%)を得た。樹脂Kの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0121】
【化17】

【0122】
比較例1
〔樹脂L〕
反応槽に、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液(217.51g)、ジクロロメタン(592.80mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:7.6101g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0123】
別途、300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.45g)、脱塩水(225.86mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(1.79mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=0.3)、3時間合成反応を行った。
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は悪かったため、遠心分離操作を行った。分離した有機相を0.1規定塩酸(228mL)で3回、脱塩水(228mL)で2回洗浄した。
【0124】
再沈殿法は経由せずに、得られた有機相中の有機溶媒を除去し、目的の樹脂L(全理論収量に対する収率:78%)を得た。樹脂Lの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0125】
【化18】

【0126】
比較例2
〔樹脂M〕
反応槽に、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液(217.51g)、ジクロロメタン(592.80mL)、例示化合物(2−5)(ジメチルシロキサン単位mの平均繰り返し数:26、添加量:7.6101g、全理論収量に対する例示化合物(2−5)の添加量:13.2重量%)を加え、反応槽の外温を10℃に保持し、撹拌を開始した。
【0127】
別途、300mLビーカーに、水酸化ナトリウム(5.45g)、脱塩水(225.86mL)、2重量%トリエチルアミン水溶液(1.79mL)を加え、均一に混合したものを調整し、これを先の反応槽に添加し(この時点での水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/β=0.3)、3時間合成反応を行った。
撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。水相と有機相の分離状態は悪かったため、遠心分離操作を行った。分離した有機相を0.1規定塩酸(228mL)で3回、脱塩水(228mL)で2回洗浄した。
【0128】
得られた有機相の5倍体積量のメタノールを用いた再沈殿法を行い、樹脂を沈殿させ、ろ過し、有機溶媒を除去し、目的の樹脂M(全理論収量に対する収率:75%)を得た。樹脂Mの構造を以下に示す。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。
【0129】
【化19】

【0130】
得られた樹脂A〜Mの粘度平均分子量(Mv)、及び水酸基量を以下の方法で測定した。
<粘度平均分子量(Mv)>
ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t0:135.40秒)を用いて、20.0℃において、樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を測定し、以下の式に基づき、樹脂の粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp=(t/t0)−1
X=(0.2092×ηsp)+1.0734
Y=100×ηsp/C
C=6.00 [g/L]
η=Y/X
Mv=3207×(η1.205)
結果を表1に示す。
【0131】
<樹脂の水酸基量>
樹脂をジクロロメタンで溶解し、所定量の濃度に調整した後、酢酸溶液、四塩化チタン、を加え発色させ、分光光度計を用い、480nmの波長で吸光度を測定した。なお、樹脂の水酸基量を定量するために、各樹脂の製造に用いたオリゴマー溶液の製造に使用した2価フェノールのモル比通りの2価フェノールジクロロメタン溶液を作成し、これを検量液として使用した。
【0132】
結果を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
これらの結果から、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の合成反応工程において、水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.3で合成された樹脂Lと樹脂Mは、合成反応停止時の分液性が悪く、遠心分離工程が必要であり、収率も低く、再沈殿法を使用しても水酸基量が高い。一方、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の合成反応工程において、α/βが0.4以上で合成された樹脂A〜樹脂Kは、合成反応停止時の分液性が良好であり、遠心分離工程は必要無く、高収率で目的物が得られる。さらに再沈殿法を使用しなくとも、水酸基量の少ないケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂が合成されることを示している。
【0135】
〔感光体シートの製造〕
実施例12
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
【0136】
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイヤーバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を作製した。こうして得られた160重量部の顔料分散液をポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部に加え、適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて、最終的に固形分濃度4.0重量%の分散液を作製した。
【0137】
この分散液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として特開2002−80432号公報中に示されるような、下記、電荷輸送物質(1)で表わされる構造を主成分とする、幾何異性体の化合物群からなる混合物を50重量部、実施例1で得られた樹脂Aを100重量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部、安定剤としてイルガノックス1076を8重量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0138】
【化20】

【0139】
この電荷輸送層形成用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートを作製した。
これら感光体シートを、下記の方法で電気的特性、摩擦試験の評価を行った。
<電気的特性>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載、川口電機(株)製モデルEPA8100)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気的特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、780nmの光を2.4μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)を測定した。VL測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を139msとした。測定環境は、温度5℃、相対湿度10%下(L/L)及び温度25℃、相対湿度50%下(N/N)で行った。この表面電位(VL)の値の絶対値が小さいほど、応答性が良いことを示す。
【0140】
結果を表2に示す。
<摩擦試験>
トナーを上記で作成した感光体の上に0.1mg/cm2となるよう均一に乗せ接触させる面にクリーニングブレードと同じ材質のウレタンゴムを1cm幅に切断したものを用い45度の角度で用い、荷重200g、速度5mm/sec、ストローク20mmでウレタンゴムを100回移動させたときの100回目の動摩擦係数を協和界面化学(株)社製全自動摩擦摩耗試験機DFPM−SSで測定した。
【0141】
結果を表2に示す。
実施例13〜41、比較例3〜9
上記、実施例12の樹脂Aを、樹脂B〜M、及び下記の樹脂N、O、Pと表2に記載のブレンド重量比で混合させたものに代えた以外は、実施例12と同様にして感光体シートを作製し、実施例12と同様に、電気的特性、摩擦試験の評価を行った。
【0142】
結果を表2に示す。
〔樹脂N〕
樹脂Nは、先に調製したBP−a/bオリゴマー溶液を用いて製造した、以下に示す構造のものを用いた。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。樹脂Nの粘度平均分子量(Mv)は32400、水酸基量は4.40μ当量/gであった。
【0143】
【化21】

【0144】
〔樹脂O〕
樹脂Oは、先に調製したBP−cオリゴマー溶液を用いて製造した、以下に示す構造のものを用いた。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。樹脂Oの粘度平均分子量(Mv)は40300、水酸基量は2.42μ当量/gであった。
【0145】
【化22】

【0146】
〔樹脂P〕
樹脂Pは、先に調製したBP−aオリゴマー溶液を用いて製造した、以下に示す構造のものを用いた。なお、樹脂末端基は、以下に示すものの中から様々な組み合わせがある。樹脂Pの粘度平均分子量(Mv)は31900、水酸基量は7.22μ当量/gであった。
【0147】
【化23】

【0148】
【表2】

【0149】
これらの結果より、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を電子写真感光体の感光層に用いた場合、水酸基量が9μ当量/gよりも多い樹脂Lと樹脂Mは、電気的特性が悪いが、水酸基量が9μ当量/g以下である樹脂A〜樹脂Kは、電気的特性が良好であると共に、摩擦係数が低く、電子写真感光体表面の潤滑性が良好である。
また、ケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂の合成反応工程において、水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.4以上で合成すると、合成反
応停止時の分液性が良好であり、遠心分離工程は必要無く、高収率で、水酸基量の少ない目的物が得られる。このようにして得られたケイ素原子を含むポリカーボネート樹脂を電子写真感光体に用いた場合、上記のように電子写真感光体表面の電気的特性と潤滑性を両立させた電子写真感光体が得られるため、実用上、非常に有用である。
【符号の説明】
【0150】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂がケイ素原子を含み、且つ水酸基量が9μ当量/g以下であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【化1】

(式(1)(2)中、R、R10、R20は脂肪族及び/又は芳香族を含む2価の有機残基を表す。また、R11〜R19はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していても良い炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、n、mは0以上500以下の整数を表す。)
【請求項3】
導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された感光層とを有し、前記感光層が請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項4】
請求項3に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち、少なくとも一つを備えたことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジ。
【請求項5】
請求項3に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えたことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂の合成反応工程において、水相の体積をα、有機相の体積をβとすると、αとβの比、α/βが0.4以上の合成反応工程を経由することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1458(P2011−1458A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145439(P2009−145439)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】