説明

ポリケトンの製造方法

【課題】短い重合時間でも触媒活性および極限粘度を向上させたポリケトンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、触媒活性および固有粘度を向上させたポリケトンの製造方法に関し、具体的には、触媒成分としては予め合成した塩化パラジウムと1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンとからなる前駆体を用い、液状媒体としては40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用いるポリケトンの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性および固有粘度を向上させたポリケトンの製造方法に関するものである。具体的には、触媒存在下、液状媒体中で一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物とを共重合させてポリケトンを製造する方法において、前記触媒は(a)第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物、および(b)第15族の元素を有する配位子からなる有機金属錯体であって、さらに(b)成分は1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンであり、液状媒体は40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒であるポリケトンの製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物との共重合体、特に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン型不飽和化合物由来の繰り返し単位とが実質的に交互に連結された構造のポリケトンは、機械的、熱的性質に優れ、また、耐摩耗性、耐薬品性、ガスバリアー性が高くて、様々な用途として有用な材料である。さらに、完全交互共重合ポリケトンの高分子は、より高い機械的および熱的性質を有し、経済性の高いエンジニアリングプラスチック材として有用であると知られている。特に、耐摩耗性が高いために自動車のギヤなどの部品、耐薬品性が高いために化学搬送パイプのライニング材など、ガスバリアー性が高いために軽量ガソリンタンクなどに用いることができる。また、固有粘度2以上の超高分子量のポリケトンを繊維に用いる場合には、高倍率の延伸が可能となり、延伸方向に配向された高強度および高弾性率を有する繊維を製造することができる。そのように製造された繊維は、ベルト、ゴムホースの補強材やタイヤコード、コンクリート補強材などの建築材料や産業資材の用途として非常に適した材料となる。
【0003】
高い機械的、熱的性質を発揮する高分子量のポリケトンを得る方法として、特許文献1には、パラジウムと1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンと陰イオンとからなる触媒を用いて、低温で重合する方法が開示されている。また、特許文献2には、パラジウムと2−(2,4,6−トリメチルベンゼン)−1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンと陰イオンとからなる触媒を用いる方法が開示されている。また、特許文献3には、パラジウムと2−ヒドロキシ−1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンと陰イオンとからなる触媒を用いる方法が開示されている。しかし、これらの方法では、触媒当たりポリケトンの収得量が低く、さらに、リン配位子の合成方法が難しく、高価であるため経済的な面で問題があった。
【0004】
安価な触媒を用いて高分子量のポリケトンを得る方法として、特許文献4には、パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンとホウ素系フッ化物の陰イオンとからなる触媒を用いて、tert−ブタノール溶媒中で重合する方法が開示されている。この方法では、高分子量のポリケトンを得ることはできるが、触媒当たりポリケトンの収得量が非常に低く、その結果としてポリケトンの原価が高くなる問題があった。
【0005】
高分子量のポリケトンを経済的に高収得率で得る方法として、特許文献5には、メタノールと1〜50容量%の水との混合溶媒中で重合を行う方法が開示されている。この方法では、パラジウムなどの第10族金属元素と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンと無機酸の陰イオンとからなる触媒が用いられる。特に、水を17容量%含有するメタノール溶媒中で酢酸パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンとリンタングステン酸を用いれば、85℃、エチレンと一酸化炭素の等モルの混合ガス4.8MPaにおいて30分間の重合反応によって、固有粘度1.36の重合体が得られた。その時の触媒活性は5.7kg/g−Pd・hrである。同混合溶媒にリンタングステン酸の代わりに硫酸を用いれば、触媒活性は9.5kg/g−Pd・hrである。この方法では、高い触媒活性のため、ある程度高分子量のポリケトンが得られるが、重合時間を長く延ばしても高性能材料とするために必要な固有粘度2以上の重合体を得ることは不可能であるという問題があった。
【0006】
特許文献6には、パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンにトリフルオロ酢酸を用いて、低圧力で重合する方法が開示されている。この方法では、50℃、エチレンと二酸化炭素の投入比を1:2にし、4MPaにおいて5.2時間の重合反応によって触媒活性が1.3kg/g−Pd・hr、固有粘度1.8の重合体を得ることができる。この方法では、相対的に低温低圧下でポリケトンを得ることができるが、高性能材料に必要な高い固有粘度を有するポリケトンを得ることは不可能である。
【0007】
特許文献7では、従来の技術と類似する触媒システムにおいて無機酸として硫酸を用いた。メタノール溶媒にパラジウムなどの第10族金属元素と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを、80℃、エチレンと一酸化炭素の等モルの混合ガス5.5MPaにおいて30分間の重合反応によって、固有粘度6.45の重合体が得られた。その時の触媒活性は6.0kg/g−Pd・hrであった。
【0008】
以上のように、一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物を原料とするポリケトンの製造方法において、高い触媒活性を有するのみならず、タイヤコード用として用いるのに適した高粘度を有するポリケトンの製造技術の開発が要望されている。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第319038号明細書
【特許文献2】特開平4−227726号公報
【特許文献3】特開平5−140301号公報
【特許文献4】特表平6−510552号公報
【特許文献5】特開平8−283403号公報
【特許文献6】ヨーロッパ特許第0361584号明細書
【特許文献7】特開2002−317044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためのものであり、本発明は、触媒成分として予め合成した塩化パラジウムと1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体を用い、液状媒体として40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用いることにより、短い重合時間でも触媒活性および極限粘度を向上させたポリケトンの製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、触媒の存在下、液状媒体中で一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物とを共重合させてポリケトンを製造する方法において、前記触媒は、(a)第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物、および(b)第15族の元素を有する配位子からなる有機金属錯体であって、また(a)成分は塩化パラジウムで、(b)成分は1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンであり、触媒は(a)と(b)との成分からなる、触媒前駆体として予め合成して用いるポリケトンの製造方法が提供され得る。
【0011】
本発明の他の好適な実施例によれば、液状媒体は40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒であり得る。
【0012】
本発明のまた他の好適な実施例によれば、前記触媒の(a)成分と(b)成分のモル比は1:1であり得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒成分として塩化パラジウムと1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体を予め合成し、液状媒体として40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用いることにより、触媒活性が向上し、短い反応時間でも活性が向上するポリケトンの製造方法が提供される。したがって、本発明によれば、タイヤコード用として用いるに非常に適した高粘度を有するポリケトンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のポリケトンの製造方法は(a)第9族、第10族、第11族の遷移金属化合物、(b)第15族の元素を有する配位子からなる有機金属錯体触媒の存在下で、液状媒体中で一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物とを共重合させてポリケトンを製造する方法において、液状媒体として40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用い、触媒として塩化パラジウムと1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体を用い、一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物は1:1のモル比で投入される。
【0015】
本発明では、液状媒体として従来のポリケトンの製造に主に用いられてきたメタノール、ジクロロメタン、またはニトロメタンなどを用いず、酢酸と水とからなる混合溶媒を用いるのが特徴である。本発明によって、液状媒体として酢酸と水を用いてポリケトンを製造すれば、ポリケトンの製造費用を節減するだけでなく触媒活性も向上させることができる。
【0016】
液状媒体として酢酸と水の混合溶媒を用いる場合、水の濃度は40〜60モル%にすることが好ましい。水の濃度が40モル%未満で少ない時は触媒活性が減少する傾向があり、水の濃度が60モル%を超過する時は触媒活性が影響をより少なめに受ける傾向がある。
【0017】
したがって、本発明では液状媒体として40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用いることが好ましい。最も好ましくは、60モル%の酢酸と40モル%の水を用いる。
【0018】
本発明における触媒は、周期律表(IUPAC無機化学命名法改正版、1989)の(a)第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物、および(b)第15族の元素の配位子からなるものである。
【0019】
第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物(a)中、第9族遷移金属化合物の例としては、コバルトまたはルテニウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、およびスルホン酸塩などが挙げられる。具体的な例としては、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセテート、酢酸ルテニウム、トリフルオロ酢酸ルテニウム、ルテニウムアセチルアセテート、およびトリフルオロメタンスルホン酸ルテニウムなどが挙げられる。
【0020】
第10族遷移金属化合物の例としては、ニッケルまたはパラジウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、およびスルホン酸塩などが挙げられる。具体的な例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセテート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセテート、塩化パラジウム、ビス(N,N−ジエチルカルバメート)ビス(ジエチルアミン)パラジウム、および硫酸パラジウムなどが挙げられる。
【0021】
第11族遷移金属化合物の例としては、銅または銀の錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、およびスルホン酸塩などが挙げられる。具体的な例としては、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、銅アセチルアセテート、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、銀アセチルアセテート、およびトリフルオロメタンスルホン酸銀などが挙げられる。
【0022】
これらのうち、安価で経済的に好ましい遷移金属化合物(a)としてはニッケルおよび銅化合物であり、ポリケトンの収得量および分子量の面で好ましい遷移金属化合物(a)としてはパラジウム化合物である。本発明では、塩化パラジウム錯体を用い、触媒活性および固有粘度を向上することのできる方法を提供する。
【0023】
第15族の原子を有する配位子(b)の例としては、2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ピコリン、および2,2’−ビキノリンなどの窒素配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス[ジ(2−メチル)ホスフィノ]プロパン、1,3−ビス[ジ(2−イソプロピル)ホスフィノ]プロパン、1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン、1,3−ビス[ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ]プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス[(ジフェニルホスフィノ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]メチル]ベンゼン、1,2−ビス[[ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ]メチル]ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ヒドロキシ−1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン、2,2−ジメチル−1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、および1,3−ビス[ビス(2−メトキシ−5−メチルフェニル)ホスフィノ]プロパンなどのリン配位子などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、従来技術とは異なり、触媒の第15族の元素の配位子(b)として式(1)で示す1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン(BDOMPP)を用いる。触媒の配位子成分として1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンを用いるので、高い触媒活性を有するポリケトンを製造することができる。
【0025】
本発明では、触媒成分として予め合成した塩化パラジウムと1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体を用い、液状媒体として40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒を用いることにより、触媒活性が向上し、短い反応時間でも活性が向上した。
【0026】
【化1】

【0027】
第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物(a)の使用量は、選択されるエチレン型不飽和化合物の種類や他の重合条件によって好適な値が異なる。そのため一律に範囲を限定することはできないが、通常、反応帯域の容量1リットル当り0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜10ミリモルの範囲である。反応帯域の容量とは反応機の液状の容量のことをいう。
【0028】
配位子(b)の使用量も特に制限はないが、遷移金属化合物(a)1モル当たり通常1〜3モルの範囲が好ましく、より好ましくは1モルである。
【0029】
本発明において、一酸化炭素と共重合するエチレン型不飽和化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラセン、1−ヘキサデセン、およびビニルシクロヘキサンなどのα−オレフィン;スチレン、a−メチルスチレンなどのアルケニル芳香族化合物;シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロドデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、および8−エチルテトラシクロドデセンなどの環状オレフィン;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;エチルアクリレート、メチルアクリレートなどのアクリル酸エステルなどが挙げられる。これらのエチレン型不飽和化合物は単独または複数種の混合物として用いられる。これらのうちの好ましいエチレン型不飽和化合物はα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数2〜4のオレフィン、最も好ましくはエチレンである。
【0030】
本発明において、一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物の投入比は1:1にすることが好ましい。一酸化炭素と前記エチレン型不飽和化合物との共重合は、前記第9族、第10族、第11族の遷移金属化合物(a)、第15族の元素を有する配位子(b)からなる有機金属錯体の触媒による。
【0031】
前記触媒は前記2成分を接触させることによって生成される。接触させる方法としては公知の任意の方法を用いることができる。例えば適宜な溶媒中で2成分を予め混合した溶液を作って用いるか、重合系に2成分各々を別々に供給して重合系内で接触させてもよい。本発明では(a)と(b)の成分を混合して生成された前駆体を沈殿によって得、これを触媒として用いれば活性および固有粘度が向上するということを見出した。
【0032】
本発明を実施するにおいて、重合法としては、液状媒体を用いる溶液重合法、懸濁重合法、および少量の重合体に高濃度の触媒溶液を含浸させる気相重合法などが用いられ得る。重合は、バッチ式または連続式のいずれかの方法で実施してもよい。重合に用いる反応機は公知のものをそのまま又は加工して用いることができる。重合温度については特に制限はないが、通常40〜180℃の範囲であり、好ましくは50〜120℃の範囲である。重合時の圧力に対しても制限はないが、通常、常圧〜20MPaの範囲であり、好ましくは4〜15MPaの範囲である。
【実施例】
【0033】
以下、具体的な実施例および比較例によって本発明の構成および効果をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は単に本発明をより明確に理解させるためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
実施例および比較例におけるポリケトンの固有粘度および触媒活性は、下記のような方法で評価した。
【0035】
(1)固有粘度
重合された樹脂を0.01g/100ml〜1g/100ml(m-cresol)の濃度で、60℃の恒温槽で1〜5時間ほど溶かした後、Ubelode粘度計を用いて30℃で粘度を測定する。濃度に応じる粘度をプロットした後、外挿して固有粘度を求める。
【0036】
(2)触媒活性
重合された樹脂の重量/パラジウムの重量時間(g/gPd・hr)によって求める。
【0037】
[実施例1]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が90℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を90℃、内圧を110atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体20.6gを得た。
【0038】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は22300g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は3.8dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0039】
[実施例2]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が80℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を80℃、内圧を110atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体12.60gを得た。
【0040】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は14000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は6.1dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0041】
[実施例3]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が70℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が45atmになるまで加えた。内温を70℃、内圧を45atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体9.89gを得た。
【0042】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は11000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は3.3dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0043】
[実施例4]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が60℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を60℃、内圧を110atmに維持しつつ、4時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体14.4gを得た。
【0044】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は4000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は11.1dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0045】
[実施例5]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸48mlと水32mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が90℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を90℃、内圧を110atmに維持しつつ、2時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体36.51gを得た。
【0046】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は20300g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は4.5dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0047】
[実施例6]
塩化パラジウム−1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンの前駆体0.60mgを酢酸48mlと水32mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が70℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を70℃、内圧を110atmに維持しつつ、4時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体21.95gを得た。
【0048】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は6100g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は10.3dl/gであった。
その結果を整理したものを表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
*PdCl2:塩化パラジウム
*BDOMPP:1,3−[ビス(ジメトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン
【0051】
[比較例1]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が90℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を90℃、内圧を110atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体13.67gを得た。
【0052】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は15200g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は2.1dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0053】
[比較例2]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が80℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を80℃、内圧を110atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体9.0gを得た。
【0054】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は10000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は4.5dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0055】
[比較例3]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が70℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が45atmになるまで加えた。内温を70℃、内圧を45atmに維持しつつ、1時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体5.57gを得た。
【0056】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は6200g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は2.2dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0057】
[比較例4]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸36mlと水44mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が60℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を60℃、内圧を110atmに維持しつつ、4時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体9.0gを得た。
【0058】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は2500g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は6.5dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0059】
[比較例5]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸48mlと水32mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が90℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を90℃、内圧を110atmに維持しつつ、2時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体25.17gを得た。
【0060】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は14000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は2.6dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0061】
[比較例6]
塩化パラジウム0.150mgおよび1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.450mgを酢酸48mlと水32mlの混合溶媒に溶解した。次にこの溶液を真空によって空気を除去した後、窒素置換されたステンレンス製オートクレーブに装入した。オートクレーブを密閉した後、内容物を700rpmの速度で攪拌しながら加温した。内温が70℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの1:1(モル比)混合気体をオートクレーブの内圧が110atmになるまで加えた。内温を70℃、内圧を110atmに維持しつつ、4時間攪拌し続けた。冷却後、オートクレーブ内の気体を除去して内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、メタノールで数回洗浄した後、室温〜80℃で減圧乾燥して重合体14.39gを得た。
【0062】
13C−NMRおよびIRの結果から、この重合体が実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位とからなるポリケトンであることが確認された。触媒活性は4000g/g−Pd・hrに相当し、固有粘度は7.0dl/gであった。
その結果を整理したものを表2に示した。
【0063】
【表2】

【0064】
*Pd(OAc)2:酢酸パラジウム
*BDOMPP:1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第9族、第10族、または第11族の遷移金属化合物、および(b)第15族の元素を有する配位子からなる有機金属錯体触媒の存在下、液状媒体中で一酸化炭素とエチレン型不飽和化合物とを共重合させてポリケトンを製造する方法において、
前記触媒中の、(a)成分は塩化パラジウムで、(b)成分は1,3−ビス[ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンであり、
前記触媒は、触媒前駆体として予め合成して用いることを特徴とする、ポリケトンの製造方法。
【請求項2】
前記液状媒体は、40〜60モル%の酢酸と40〜60モル%の水とからなる混合溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトンの製造方法。
【請求項3】
前記(a)成分:(b)成分のモル比が1:1であることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトンの製造方法。

【公開番号】特開2008−163291(P2008−163291A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168921(P2007−168921)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(503434298)ヒョスング コーポレーション (22)
【Fターム(参考)】