説明

ポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法

【課題】 新規なポリテトラフルオロエチレン造粒粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリテトラフルオロエチレン粉末を水中においてノニオン性界面活性剤の存在下又は不存在下に造粒することによりポリテトラフルオロエチレン造粒粉末を製造するポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法であって、前記造粒は、前記ポリテトラフルオロエチレン粉末と前記水とからなる処理対象液を減圧下に攪拌することにより行うことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕造粒粉末製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTFE粉末は、例えばテトラフルオロエチレン〔TFE〕を重合して得られるPTFEの粗粉を粉砕して得られる。PTFE粉末は熱可塑性樹脂や熱溶融性樹脂のように溶融成形ができないため、粉末の状態で成形に供される。従って、PTFE粉末は、成形体に加工する場合、金型への粉末充填のし易さが求められるので、粉末流動性が良いこと、小さな金型で希望の予備成形品ができるよう見掛密度が大きいこと、適当な圧縮成形圧力にて緻密な成形品が得られること、等の特別な粉体特性が要求される。この点、粗粉を粉砕したPTFE粉末は、粉末流動性が悪く、見掛密度が小さいことから、造粒してPTFE造粒粉末とする必要がある。
【0003】
PTFE粉末を造粒して造粒粉末を得る製法としては多数の提案があり、例えば、特許文献1に沸点30〜150℃の水不溶性有機溶剤と粒径1〜200μmのPTFE粉末からなる混合物を水と共に攪拌しながら造粒する方法が記載されている。また、特許文献1記載の方法を更に改良する目的で、特許文献2に解砕機能を備えた装置を用いる方法が記載されている。また特許文献3には、沸点30〜150℃の有機溶剤と300μm以下のPTFEとフィラーを均一混合したスラリーを転動し、転動中もしくは転動後に有機溶剤を蒸発除去する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、上記方法ではPTFEを造粒するために有機溶剤を添加する必要があった。しかし、有機溶剤を使用する場合、一般に溶剤は高価であり、コスト高となる問題がある。
【0005】
有機溶剤を用いないPTFEの造粒方法として、温水中にて造粒する方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
また、有機溶剤を用いないPTFEの造粒方法として、界面活性剤水溶液を添加してPTFEを湿潤し転動させることにより造粒する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献1】特公昭44−22619号公報
【特許文献2】特開昭47−12332号公報
【特許文献3】特公昭44−22620号公報
【特許文献4】特開平9−52955号公報
【特許文献5】特開昭47−12332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規なPTFE造粒粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕粉末を水中においてノニオン性界面活性剤の存在下又は不存在下に造粒することによりPTFE造粒粉末を製造するPTFE造粒粉末製造方法であって、上記造粒は、上記PTFE粉末と上記水とを含む処理対象液を減圧下に攪拌することにより行うことを特徴とするPTFE造粒粉末製造方法である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、PTFE粉末を水中において造粒することによりPTFE造粒粉末を製造する方法である。
【0010】
本発明におけるPTFE粉末は、従来公知の重合方法により得ることができ、特に限定されないが、懸濁重合法により得られるものが好ましい。
上記PTFE粉末としては、特に限定されず、例えば、重合により得られる粉末ないし顆粒を粉砕することなくそのまま用いてもよいが(本明細書において、該粉末ないし顆粒であって未粉砕のものを「重合粉末」ということがある。)、該重合粉末を所望により粗粉砕したもの、該粗粉砕物を所望により粒子径により分級したもの、微粉砕したもの等を用いてもよい。
【0011】
上記懸濁重合法としては特に限定されず、従来公知の方法であってよい。上記懸濁重合法における重合条件は、目的とするPTFEの種類、量等に応じて適宜設定することができる。
【0012】
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕単独重合体に限定されるものではなく、TFEと共単量体とを重合して得られる変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。
本明細書において、上記「変性PTFE」とは、TFEと、TFE以外の共単量体との共重合体であって、数平均分子量が同じTFE単独重合体と同程度の溶融粘度を示すものを意味する。
上記共単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロテトラフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン、炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のパーフルオロ(ビニルエーテル);フルオロジオキソール;パーフルオロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられるが、なかでも、パーフルオロ(ビニルエーテル)が好ましい。
変性PTFEにおいて、上記共単量体に由来する共単量体単位の全単量体単位に占める含有率は、通常0.001〜1モル%の範囲である。
本発明におけるPTFEとしては、なかでも、TFE単独重合体が好ましい。
本明細書において、「全単量体単位に占める共単量体単位の含有率(モル%)」とは、上記「全単量体単位」が由来する単量体、即ち、フルオロポリマーを構成することとなった単量体全量に占める、上記共単量体単位が由来する共単量体のモル分率(モル%)を意味する。
【0013】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法において、上記PTFE粉末を水中において造粒することは、該PTFE粉末と該水とを含む処理対象液を減圧下に攪拌することにより行う。
本発明において、上記処理対象液は、上記造粒のために行う攪拌の対象となる液体である。
【0014】
上記処理対象液の調製方法としては特に限定されず、例えば、水に、予め調製したPTFE粉末を添加することにより調製することができる。
【0015】
本発明における処理対象液に添加する上記PTFE粉末の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、200μm未満であり、造粒効率の点で、より好ましくは1〜60μmである。
本明細書において、「PTFE粉末」は、便宜上「粉末」なる用語を用いるが、好ましくは上記範囲内の平均粒子径を有するものであれば、例えば、一般に顆粒と称されるものをも含み得る概念である。
本明細書において、上記PTFE粉末の平均粒子径は、日本電子(株)のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである。
【0016】
本発明における処理対象液は、上記水100質量部に対し、上記PTFE粉末を5〜40質量部(乾燥質量。以下、本段落において同じ。)添加したものであることが好ましいが、水の使用量はPTFE粉末との混合物に流動性を与えるに足りる量以上であればよく、反対にPTFE粉末の量が少ないと経済的に不利である。しかしPTFE粉末と水の混合物が完全に流動性を保てる状態であればよく、水の多少の増減は問題ではない。
【0017】
本発明における上記処理対象液は、上記PTFE及び上記水に加え、界面活性剤、特にノニオン界面活性剤を含有するものであってもよい。
上記界面活性剤としては、例えば、国際公開第98/41567号パンフレットに記載のノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤が挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤としては特に限定されないが、ポリ(オキシアルキレン)単位からなる疎水性セグメントとポリ(オキシエチレン)単位からなる親水性セグメントとを有する界面活性剤が好ましい。上記ポリ(オキシアルキレン)単位は炭素数3〜4のオキシアルキレンからなるものである。市販品としては、例えば、プロノン#104、プロノン#208(いずれも日本油脂社製のノニオン性界面活性剤)等が利用できる。
上記処理対象液がノニオン界面活性剤を含有するものである場合、該ノニオン界面活性剤は処理対象液の0.0001〜1質量%であることが好ましい。該ノニオン界面活性剤濃度は、より好ましい下限が0.001質量%であり、より好ましい上限が0.1質量%である。
【0018】
本発明における上記処理対象液は、上記PTFE粉末及び上記水に加え、必要に応じ、フィラーを1種又は2種以上含有したものであってもよい。
上記フィラーとしては特に限定されず、親水性フィラーであっても疎水性フィラーであってもよく、例えば、ガラス繊維、グラファイト粉末、青銅粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、ステンレス鋼粉末、ステンレス綱繊維、ニッケル粉末、ニッケル繊維等の金属繊維又は金属粉末;二硫化モリブデン粉末、フッ化雲母粉末、コークス粉末、カーボン繊維、チッ化ホウ素粉末、カーボンブラック等の無機系繊維又は無機系粉末;ポリオキシベンゾイルポリエステル等の芳香族系耐熱樹脂粉末、ポリイミド粉末、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末等の有機系耐熱樹脂粉末等が挙げられる。フィラーとしては、公知の撥水処理を行ったものを用いてもよい。
2種類以上のフィラーを用いる場合、例えば、ガラス繊維粉末とグラファイト粉末、ガラス繊維粉末と二硫化モリブデン粉末、青銅粉末と二硫化モリブデン粉末、青銅粉末とカーボン繊維粉末、グラファイト粉末とコークス粉末、グラファイト粉末と芳香族系耐熱樹脂粉末、カーボン繊維粉末と芳香族系耐熱樹脂粉末等の組み合わせが好ましい。またPTFE粉末とフィラーの混合方法は湿式法でも乾式法でもよい。
【0019】
上記例示したフィラーのうち、親水性フィラーの場合、PTFE粉末と均一に混合しにくい、つまり使用したフィラーの一部がPTFE造粒粉末から脱離する現象がみられる。この現象はフィラーの分離といわれる。
上記処理対象液におけるフィラーは、この問題に対処するため、フィラーを予め表面処理してからPTFE粉末と混合したものであってもよい。
上記表面処理をするための化合物として知られているものには、(a)アミノ官能基を有するシラン及び/又は可溶なシリコーン(特開昭51−548号公報、特開昭51−549号公報、特開平4−218534号公報)、(b)炭素数12〜20のモノカルボン酸炭化水素(特公昭48−37576号公報)、(c)シリコーン(特開昭53−139660号公報)等がある。
表面処理するためのより具体的な化合物としては、例えば、γ―アミノプロピルトリエトキシシララン(HN(CHSi(OC)、m−又はp−アミノフェニルトリエトキシシラン(HN―C−Si(OC)、γ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン(HNCONH(CHSi(OC)、N―(β―アミノエチル)―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン(HN(CHNH(CHSi(OCH)、N−(β―アミノエチル)―γ―アミノ―プロピルメチルジメトキシシラン(HN(CHNH(CHSiCH(OCH)等のアミノシランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のフェニル基含有シラン化合物;等の有機シラン化合物が挙げられる。
【0020】
上記フィラーの平均粒径又は平均繊維長としては、1〜1000μmであることが好ましい。
上記処理対象液は、フィラーをも含むものである場合、混合するフィラーの種類や混合造粒した粉体の成形品の使用目的にもよるが、該フィラーは、PTFE粉末100質量部(乾燥質量。以下、本段落において同じ。)に対し、2.5〜100質量部であることが好ましく、より好ましい下限が5質量部、より好ましい上限が80質量部である。
【0021】
上記処理対象液は、特に上記フィラーをも含むものである場合、該フィラーを効率良くPTFE造粒粉末内に取り入れる点で、上述のPTFE粉末の他に、PTFE水性ディスパージョンをも含むものであってもよい。またフィラーを含まないPTFE粉末の場合においても当該PTFEの微粉末の発生を抑える為、PTFE水性ディスパージョンを添加してもよい。
【0022】
本明細書において、上記「PTFE水性ディスパージョン」は、乳化重合により得られる乳化液であり、PTFE粒子の平均粒径が0.05〜0.5μmで固形分濃度が10〜60質量%である。
上記PTFE水性ディスパージョンにおけるPTFEとしては特に限定されず、TFE単独重合体であってもよいし、変性PTFEであってもよい。
【0023】
上記処理対象液は、上記PTFE水性ディスパージョンをも含むものである場合、PTFE水性ディスパージョンの配合量は、フィラー量にもよるが、通常、PTFE粉末又はPTFE粉末とフィラーとの混合物100質量部(乾燥質量)に対し、PTFE水性ディスパージョンの固形分が0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は3質量部である。
【0024】
本発明における処理対象液は、上記PTFE粉末及び上記水並びに所望により添加する上記フィラーに加え、例えば、触媒、担持材、着色剤等の各種添加剤をも適宜含むものであってもよい。
【0025】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上記処理対象液を減圧下に攪拌することにより行う上記PTFE粉末の造粒を含むものである。
上記減圧は、PTFE粉末と水とを含む処理対象液を入れた処理槽内を大気圧よりも低い圧力にするものであればよいが、造粒の効率の点で、好ましくは0PaG以下、好ましくは−0.005MPaG以下、より好ましくは−0.01MPaG以下に維持することにより行う。
【0026】
上記減圧は、PTFE粉末と水とを含む処理対象液を入れた処理槽内の圧力によるが、温度が0℃以上、100℃未満である条件下に行うことが好ましい。0℃未満であると、攪拌を効率的に行うことができず造粒効率に劣る場合があり、100℃以上であると、上記処理対象液中の水の蒸気圧が高くなりすぎ、造粒効率が悪化する場合がある。上記処理槽内の温度のより好ましい下限は20℃、更に好ましい下限は25℃であり、より好ましい上限は95℃、更に好ましい上限は92℃である。
上記処理槽内において、真空ポンプの能力や槽の状態にもよるが、例えば、温度が25℃の場合、圧力を−0.097MPaGにすることができ、温度が90℃の場合、圧力を−0.028MPaGにすることができる。
【0027】
本発明において、PTFE粉末の造粒のために行う減圧下での攪拌は、少なくとも上述の減圧下の状態において行うものであれば充分であるが、上記減圧下の状態の前後において行うことを排除するものではない。また攪拌途中に処理槽内圧力を変化させたり、温度を変化させることも差し支えない。
上記減圧下での攪拌は、例えば、攪拌機等を用いた機械的操作により行うことができる。また適当な解砕機が備わった装置を使用することもできる。
上記減圧下での攪拌は、使用するPTFE粉末の量等及び用いる装置に応じて、単位時間当たりの攪拌回転数等の各種条件を適宜調整して行うことができる。
上記減圧下での攪拌は、特に限定されないが、好ましくは3〜120分間、より好ましくは10〜60分間行うことができる。
【0028】
本発明において、上述の処理対象液を入れる処理槽としては特に限定されず、例えば、通常、密閉容器となり得るものであればよい。上述の減圧下に攪拌を行う処理槽を含む装置は、減圧装置及び攪拌装置(以下、「減圧・攪拌装置」ともいう。)を有するものであれば特に限定されない。本発明における造粒は、上記減圧・攪拌装置を有するものであれば、例えば、既存装置を用いることもでき、新たな設備投資を行わなくても実施することができる。
本発明における造粒は、また、適当な粉砕機を用いれば、重合槽をそのまま上記処理槽として用いることも可能であり、例えば、PTFEの重合、所望による粉砕、及び、減圧下での攪拌(本発明における造粒)よりなる一連の工程を全て重合槽及び粉砕機のみ使用して行うことも可能であり、この場合、次工程への進行も容易に行うことができる。
【0029】
本発明において、上記造粒を行うことによりPTFE造粒粉末が得られる。
上記PTFE造粒粉末は、上述のPTFE粉末を造粒したものである。該PTFE造粒粉末は、一般に造粒物と称されることもある。
【0030】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上述のとおり処理対象液を減圧下に攪拌することのみによって、PTFE粉末の造粒を可能としたものである。本発明がこのように優れた効果を奏する機構としては、明確ではないが、PTFEの撥水性によりPTFE粉末に包含されていた空気が減圧によりPTFE粉末から抜け出し、PTFE粉末が攪拌により水中に分散していき造粒が進行するものと考えられる。減圧を行わなければ、PTFE粉末は、包含する空気による浮力のため、攪拌しても水に浮いたままで水中に分散しづらく、造粒することが困難で、造粒できても見掛密度が低い等の問題があった。本発明は、PTFE粉末を用いる場合であっても、従来法のように有機溶剤を用いる必要がなく、また、必ずしも界面活性剤を用いてPTFE粉末を湿潤させる必要がなく、工程簡便化にもなる。
【0031】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上記造粒の後に乾燥工程を含むものであってよい。
上記乾燥工程は、通常、上記造粒により得られたPTFE造粒粉末を濾過等の水除去処理により処理対象液から分離したのちに行う。
【0032】
上記PTFE造粒粉末は、造粒前のPTFE粉末よりも見掛密度を高くすることができ、例えば、0.4〜0.8g/cmとすることができ、好ましい下限は0.5g/cmである。
本明細書において、見掛密度は、JIS K 6891−5.3に準じて測定することにより得られる値である。
【0033】
本発明において得られるPTFE造粒粉末は、平均粒子径が通常200〜1000μmであり、好ましくは300〜850μmである。上記平均粒子径は、目的とする成形体物性(絶縁破壊電圧、引張強度等)と粉体物性(見掛密度、粉末流動性等)に応じて上記範囲内で適宜選択することができる。
本明細書において、上記造粒の後における平均粒子径は、国際公開第98/41569号パンフレット記載の粒状粉末の平均粒径の測定法により得られる値である。上から順に10、20、32、48、60及び80メッシュ(インチメッシュ)の標準ふるいを重ね、10メッシュふるい上にPTFE粉体をのせ、ふるいを振動させて下方へ順次細かいPTFE粉体の粒子を落下させ、各ふるい上に残留したPTFE粉体の割合を%で求めたのち、対数確率紙上に各ふるいの目の開き(横軸)に対して残留割合の累積パーセント(縦軸)を目盛り、これらの点を直線で結び、この直線上で割合が50%となる粒径を求め、この値を平均粒子径とする。
【0034】
本発明において得られるPTFE造粒粉末は、特に限定されず、例えば、成形用粉末として好適に用いることができる。
【0035】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上述の構成よりなるものであるので、極めて簡便な方法によりPTFE粉末の造粒を可能としたものである。本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、また、下記の優れた効果を有する。
(1)溶剤を用いる必要がないので、溶剤の費用、また場合によっては必要な溶剤回収設備設備の費用のコストダウンの利点がある。
(2)溶剤を添加する必要がなく且つ必ずしも界面活性剤を添加する必要がないので、各工程においてPTFE粉末の質量を精密に計量する必要がない。すなわち溶剤を使用する場合、PTFE粉末、もしくはフィラー入りPTFE粉末の質量を精密に計量し、その質量に対する溶剤の量を決める必要があった。これは造粒後の品質のばらつきを抑制する為に必要であった。本発明では、重合上がりの粉末ないし顆粒を湿式粉砕し、そのまま使用することができる。フィラー入りPTFE粉末の場合においても、適当な混合方法で混合されたフィラー入りPTFE粉末の質量を精密に計量する必要がない。
(3)本発明により得られるPTFE造粒粉末は、見掛密度が高いので、取扱い性が向上し、例えば成形用粉末として用いる場合、成形機のホッパーや細径のシリンダー内で凝集(ブリッジ)しにくく、金型やシリンダーへの充填を均一化し得、例えば、未造粒物であれば手作業を要する成形機等への充填作業を自動化又は半自動化することもできる。また、見掛密度向上により、成形用粉末として単位重量当りの嵩を低減し得るので、金型やシリンダーの小型化や、1つの金型やシリンダー当りの生産性向上が可能である。
(4)本発明により得られるPTFE造粒粉末は、また、従来の造粒品と同等の成型品物性(絶縁破壊電圧等の電気特性、引張強度等の機械的強度)が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上記構成よりなるものであるので、溶剤を用いる必要がないため、低コストで簡易にPTFE造粒粉末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
PTFE造粒粉末及び比較例にて得られる造粒粉末についての見掛密度並びに平均粒径は、上述の方法により測定した。
【0038】
実施例1
攪拌機付の200L容量の槽に、純水130L、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−18F)40kgを仕込み、25℃に温調し、攪拌回転数300rpmにて攪拌しながら、真空ポンプを用い、槽内圧力を−0.092MPaGまで下げて、更に10分間攪拌を続けた。攪拌停止後、内容物を抜出し、160℃にて16時間乾燥した。乾燥後、得られた粒状PTFEを10メッシュの篩でふるい、通過させて、PTFE造粒粉末を得た。得られたPTFE造粒粉末は、見掛密度0.57g/cm、平均粒径850μmであった。
【0039】
実施例2
攪拌機付の25L容量の槽に、純水15L、PTFE粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−12)1500g、ノニオン界面活性剤として、純水で1%に希釈したプロノン#104(日本油脂(株))15gを仕込み、槽内を92℃に温調した後、攪拌回転数1200rpmにて攪拌しながら、真空ポンプを用い、槽内圧力を−0.015MPaGまで下げ、更に60分間攪拌を続けた。攪拌停止後、内容物を抜き出し、160℃にて16時間乾燥し、PTFE造粒粉末を得た。
得られたPTFE造粒粉末は、見掛密度0.71g/cm、平均粒径380μmであった。
【0040】
実施例3
攪拌機付の25L容量の槽に、純水15L、PTFE粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−12)1500gを仕込み、槽内を25℃に温調した後、攪拌回転数700rpmにて攪拌しながら、真空ポンプを用い、槽内圧力を−0.097MPaGまで下げて、10分間攪拌を続けた。攪拌停止後、内容物を抜き出し、160℃にて16時間乾燥し、PTFE造粒粉末を得た。得られたPTFE造粒粉末は、見掛密度0.52g/cm、平均粒径360μmであった。
【0041】
実施例4
攪拌機付の25L容量の槽に、純水15L、純水で1%に希釈したプロノン#104(15g)、平均粒径0.2μmのPTFE水性ディスパージョン(固形分濃度30質量%)45g、PTFE粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−12)とガラス繊維との混合物(ガラス繊維含有量:20質量%)1500gをこの順序で仕込み、槽内を92℃に温調した後、攪拌回転数1000rpmにて攪拌しながら、真空ポンプを用い、槽内圧力を−0.015MPaGまで下げ、更に30分攪拌を続けた。攪拌停止後、内容物を抜出し、160℃にて16時間乾燥後、ガラス繊維入りPTFE造粒粉末を得た。
得られたガラス繊維入りPTFE造粒粉末は、見掛密度0.70g/cm、平均粒径600μmであった。
なお、上記PTFE水性ディスパージョンにおけるPTFE粒子の平均粒子径は、固形分0.22重量%に水で希釈したディスパージョンの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定し、決定された数基準長さ平均粒子径との検量線をもとにして、上記透過率から決定した。
【0042】
比較例1
攪拌機付の25L容量の槽に、純水15L、PTFE粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−12)1500gを仕込み、槽内を25℃に温調した後、常圧下(0MPaG)、攪拌回転数700rpmにて10分間攪拌した。攪拌停止後、内容物を取り出し、160℃にて16時間乾燥した。
得られた造粒粉末は見掛密度0.36g/cm、平均粒径80μmであった。
【0043】
比較例2
攪拌機付の25L容量の槽に、純水15L、PTFE粉末(ダイキン工業(株)製、モールディングパウダーM−12)1500g、純水で1%に希釈したプロノン#104(15g)を仕込み、槽内を25℃に温調した後、常圧下、10分間攪拌(攪拌回転数700rpm)した。攪拌停止後、内容物を取り出し、160℃にて16時間乾燥した。得られた造粒粉末は、見掛密度0.37g/cm、平均粒径100μmであった。
【0044】
各実施例及び比較例のデータを表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
各実施例の結果より、本発明のPTFE造粒粉末製造方法によりPTFEの造粒を簡易に行うことができることが分かった。また、各実施例から得られたPTFE造粒粉末は、平均粒径が大きく、また、見掛密度が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のPTFE造粒粉末製造方法は、上記構成よりなるものであるので、溶剤を用いる必要がなく、低コストで簡易にPTFE造粒粉末を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン粉末を水中においてノニオン性界面活性剤の存在下又は不存在下に造粒することによりポリテトラフルオロエチレン造粒粉末を製造するポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法であって、
前記造粒は、前記ポリテトラフルオロエチレン粉末と前記水とを含む処理対象液を減圧下に攪拌することにより行う
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法。
【請求項2】
減圧は、ポリテトラフルオロエチレン粉末と水とを含む処理対象液を入れた処理槽内を0PaG未満に維持することにより行う請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法。
【請求項3】
減圧は、ポリテトラフルオロエチレン粉末と水とを含む処理対象液を入れた処理槽内の温度が0℃以上、100℃未満である条件下に行う請求項1又は2記載のポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法。
【請求項4】
ノニオン性界面活性剤は、ポリ(オキシアルキレン)単位からなる疎水性セグメントと、ポリ(オキシエチレン)単位からなる親水性セグメントとを有する界面活性剤であり、前記ポリ(オキシアルキレン)単位は、炭素数3〜4のオキシアルキレンからなるものである請求項1〜3の何れか1項に記載のポリテトラフルオロエチレン造粒粉末製造方法。