説明

ポリトリメチレンエーテルグリコール及びそのコポリマーの製造方法

ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびポリトリメチレンエーテルグリコールコポリマーを製造する方法であって、反応が進行するにつれて生成した気相の少なくとも一部を凝縮し、再循環することにより収率損失を減少させ、ポリマー色を薄める方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子反応生成物の改良した製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの商業的方法と同様、ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびポリトリメチレンエーテルグリコールコポリマーの製造に附随する時間と費用への最少の犠牲で品質および収率を最大にすることが望ましい。
【0003】
高度に精製されたポリトリメチレンエーテルグリコール(以後、「PO3G」とも呼ぶ)は視覚的に無色であり、それはポリウレタンおよび他の熱可塑性エラストマーの多くの商用末端使用用途のために望ましい特徴である。しかし、低着色のPO3GまたはPO3Gコポリマーの合成は、一般に必要な非常に長い反応時間または広範な前処理または後処理を有し、それは余分の製造コストの原因となる。1,3−プロパンジオール(以後、「PDO」とも呼ぶ)の酸触媒重縮合から製造されたPO3Gは、モノマーの品質と、反応温度、反応時間、触媒濃度および水濃度などの処理条件によって非常に影響される。プレ重合処理法は、PDO中に存在する色前駆体を除去する先行技術(例えば、米国特許第6,235,948号明細書)において開示されている。ポリトリメチレンエーテルグリコールの後重合の色を薄めようとする試みも行われてきた。例えば、Sunkaraらは、PO3Gを吸着剤に接触させ、その後、吸着剤からPO3Gを分離することによりPO3Gの色を薄める方法を開示している(米国特許第7,294,746号明細書)。
【0004】
前重合法または後重合法は、PO3Gに関する製造プロセスに余分の工程、時間および費用を不当に追加する場合がある。重合中にPO3Gの色を制御するために反応条件を変えようとする試みも行われてきた。例えば、米国特許出願公開第20050272911号明細書は、酸および塩基からなる触媒の存在下で脱水−縮合反応を実施することにより色の形成を制御する方法を開示している。米国特許出願公開第20090118464号明細書は、少なくとも約0.08重量%より上に反応混合物中の水濃度を維持することにより色を薄める方法を開示している。
【0005】
ポリマー製造プロセスに関する収率を改善する1つの方法は、重縮合中に反応物損失を最少化することである。米国特許第5,635,590号明細書は、エチレングリコールによるテレフタル酸のエステル化中に生成したエチレングリコール/水混合物からエチレングリコールを除染する方法を開示している。この方法において、汚染されたエチレングリコールは、水および低沸留分からの分離のための予備蒸溜に供され、そして汚染されたエチレングリコールが除染されたエチレングリコールとして重縮合プロセスに再供給される前に更なる処理に供される。
【0006】
従って、PO3GおよびPO3Gコポリマーの製造において色を薄め収率損失を最少化するために改善された好都合な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
a)容器中で少なくとも1種の重縮合触媒の存在下で1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物を含む反応物を重合させて反応生成物を生成させ、それによって水とこの反応物とを含む気相を重合が進行するにつれて生成させる工程と、
b)水とこの反応物とを含む凝縮物を生成させるのに十分な温度で上述の気相の少なくとも一部を凝縮させ、集める工程と、
c)上述の凝縮物の少なくとも一部を上述の容器に再循環する工程と、
を含む上述の反応生成物を生成させる方法であって、重合の過程にわたって反応物損失が約5重量%未満であり、上記反応生成物の色が約200APHA単位未満である方法が本明細書において提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
PDOの重合に触媒作用を及ぼすための酸の使用は、アリルアルコールおよび他の不飽和化合物などの色前駆体を生じさせる副反応を引き起こし得る。色前駆体は、互いに、そしてモノマーと更に反応して、好ましくない黄色度をポリマーに与える化合物を生成させ得る。同時係属米国公表特許出願第2009/0118464号明細書において開示された通り、反応系における十分な水量の存在は、色前駆体および色形成性化合物の生成を防止することが可能である。しかし、当業者に知られている通り、重縮合重合反応において水の量が増加するにつれて、反応速度は、望ましくなく低下し得る。典型的には、水は、水が生成されるにつれて、反応から除去される(例えば、米国特許第6,977,291号明細書を参照すること)。しかし、本明細書において開示された方法によると、水および反応物を含有する凝縮物の少なくとも一部を反応混合物に再循環して戻すことが反応物損失を最少化し、凝縮物を再循環しない反応または水を除去する反応を実施することにより得られる色と比較して反応生成物の色を薄めることが見出された。
【0009】
容器中で少なくとも1種の重縮合触媒の存在下で1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物、および任意選択によりコモノマーを含む反応物を重合させて反応生成物を生成させることによって、この反応生成物を調製する方法が本明細書において提供される。ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびポリトリメチレンエーテルグリコールコポリマーを調製する方法は知られており、例えば、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書において開示されている。重合中に、水を含む気相が生成する。本明細書において開示された方法に関しては、気相の一部を凝縮させて、水と反応物とを含む液体凝縮物を生成させ、この凝縮物を少なくとも部分的に上述した反応器に再循環する。凝縮されない気相の成分は残留オーバーヘッドとして除去される。
【0010】
本明細書において提供される方法は、約200APHA未満の色を有する反応生成物も生成させつつ、投入された反応物を基準にして低い反応物損失を提供する。
【0011】
1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物もしくはそれらのコポリマーおよび任意選択により少なくとも1種のコモノマージオールは、重縮合触媒の存在下で重合されて、反応生成物を生成させる。重縮合触媒の存在下で1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物を単独で重合させるのは、経時的にポリトリメチレンエーテルグリコールの少なくとも1種のホモポリマーの生成につながる。重合が1,3−プロパンジオールのコポリマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物により、もしくは任意選択のコモノマージオールにより実施される場合、反応生成物は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの少なくとも1種のコポリマーを含む。
【0012】
一実施形態において、1,3−プロパンジオールは、アクロレインを用いる方法のような石油化学源から調製される(以後、「化学誘導1,3−プロパンジオール」)。一実施形態において、1,3−プロパンジオールは、生化学経路によって調製される(「以後、生物誘導1,3−プロパンジオール」)。
【0013】
一実施形態において、生物誘導1,3−プロパンジオール源は、再生可能な生物源を用いる発酵法を経由する。トウモロコシ原料などの生物・再生可能源から製造された原料を用いる1,3−プロパンジオールへの生化学経路は開示されてきた。例えば、1,3−プロパンジオールにグリセロールを転化できる菌株は、種クレブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)およびラクトバシラス(Lactobacillus)中で見出されている。技法は、米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む幾つかの刊行物において開示されている。米国特許第5,821,092号明細書は、特に、組換え型生物を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物生産のための方法を開示している。
【0014】
好ましい生物誘導1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された大気二酸化炭素からの炭素を含有する。この方法において、生物誘導1,3−プロパンジオールは、再生可能な炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物誘導1,3−プロパンジオールを用いる生物誘導1,3−プロパンジオールに基づくポリマーは、用いられる1,3−プロパンジオールが減少しつつある化石燃料を枯渇させず、分解すると、もう一度植物による使用のために大気に炭素を放出して戻すので、環境に及ぼす影響が少ない。従って、組成物は、石油系ジオールを含む類似組成物より自然且つより低い環境影響を有するとして特徴付けることが可能である。
【0015】
一実施形態において、任意選択の少なくとも1種のコモノマージオールは、1,2−エタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオールからなる群から選択される。一実施形態において、コモノマージオールは1,2−エタンジオールである。反応混合物は、反応混合物の全重量を基準にして約30重量%まで、約40重量%まで、または約50重量%までのコモノマージオールを含むことが可能である。
【0016】
重縮合触媒は、1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物を含む反応物を重合するための当該技術分野で知られたいかなるものでも可能である。重縮合触媒は、好ましくは酸触媒であり、有機または無機であることが可能であり、均一または不均一であることが可能である。適する酸重縮合触媒は当該技術分野で知られている(例えば、米国特許出願公開第2009/0118465号明細書を参照すること)。好ましい酸触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸および硫酸を含む。
【0017】
用いられる酸触媒の量は、所望の反応速度、所望の生成物分子量、触媒費用および/または反応混合物からの触媒除去の容易さなどの要素に基づいて選択される。幾つかの実施形態において、反応器に供給される酸触媒の量は、反応混合物の全重量を基準にして約0.01重量%〜約10重量%である。一実施形態において、反応器に供給される酸触媒の量は、約0.02重量%〜約2重量%である。なお別の実施形態において、酸触媒の量は、約0.03重量%〜約0.5重量%である。
【0018】
一実施形態において、重合反応は約120℃〜約250℃の温度で行われる。別の実施形態において、重合反応は約120℃〜約210℃の温度で行われる。なお別の実施形態において、重合反応は約140℃〜約190℃の温度で行われる。なお他の実施形態において、重合反応は約160℃〜約190℃の温度で行われる。
【0019】
他の実施形態において、重合反応は、米国特許出願公開第2009/0118464号明細書において開示された通り「高−低」温度分布で実施される。高−低温度分布は、段階的方式でまたは連続でのいずれかで温度に傾斜をつけることにより実施することが可能である。段階的方式で実施する場合、反応は温度の一段階変化または多段階変化で実施することが可能である。一実施形態において、重合反応は、反応の第1の部分の平均温度が反応の第2の部分の平均温度より約2〜約50℃高い、約120℃〜約210℃の温度で高−低−温度分布を用いて行われる。別の実施形態において、重合反応は、反応の第1の部分の平均温度が反応の第2の半分の平均温度より約2〜約30℃高い、約140℃〜約190℃の温度で用いて行われる。一実施形態において、重合反応の第1の部分は、少なくとも約180℃で実施され、重合反応の第2の部分は、少なくとも約165℃で実施される。一実施形態において、重合反応の第1の部分は、全重合反応のための時間の半分より長い。
【0020】
一実施形態において、重合は大気圧で実施される。当業者は、反応容器を反応に対して不活性であるいかなる材料からも作ることができることを認めるであろう。例えば、容器は、非腐食性金属または好ましくはガラスであってもよい。容器の内容物が重合中に機械的攪拌を受けることが好ましい。当業者は、攪拌速度が増すにつれて、飽和点に達するまで、より多くの水が気相に移ることを認めるであろう。好ましい攪拌速度は、約100〜約600rpmであり、約350rpmがより好ましい。反応混合物は、好ましくは窒素ガスパージされる。好ましい窒素流量は、約0.05〜約2容器体積/分であり、0.1〜約1容器体積/分が、より好ましい。
【0021】
所望のポリマーを生成させるための時間は、反応物の濃度、反応条件、反応器のタイプ、および運転条件などの要素によって決定される。当業者は、作られる分子量の速度が、反応混合物中の含水率の関数であり、所望の分子量を有する反応生成物の所望の収率を達成するために反応時間を調節することができることを認めるであろう。
【0022】
本明細書において開示された方法に関しては、重合が進行するにつれて生成した気相成分の少なくとも一部は凝縮される。気相組成は、典型的には、蒸発、攪拌速度および窒素パージ速度によって影響される。気相組成は、典型的には、反応物、水および軽質有機物を含み、従って、凝縮物は、典型的には、これらの成分の1種以上を含む。気相組成および従って凝縮物組成は、反応が進行するにつれて経時的に変化する。例えば、重合が進行するにつれて、蒸発するのにより少ない反応物が容器中で利用できる。
【0023】
凝縮物を集め、再循環するために、反応容器は、凝縮物混合物の一部または全部を容器に戻すことができるように運転することができる市販の凝縮器装置(例えば、実験室規模の「磁気制御蒸溜ヘッド(Magnetic Control Distillation Head)」、Wilmad Lab Glass(Buena、NJ、USA)製の部品番号LG−6280−100)を装備することが可能である。適する他の装置は、当業者に対して明らかであり、オーバーヘッド凝縮器、分縮器または精留装置として知られている装置を含む。本明細書において用いられる「凝縮物」は、凝縮器装置において凝縮され、重合の過程にわたって液体として集められる気相の成分を意味する。凝縮物は、凝縮器から反応容器に直接戻してもよいか、別の容器にオフラインで蓄積し、反応器に投入して戻してもよい。凝縮器装置内に集められない気相の成分は、残留オーバーヘッドとして除去される。
【0024】
凝縮器は、好ましくは、凝縮物が実質的に水および反応物であるように運転される。「実質的に水および反応物」は、凝縮物の約85重量%超が水および反応物であることを意味する。凝縮物の約90重量%超が水および反応物であることが好ましい。幾つかの実施形態において、凝縮物は、少なくとも約60%(重量)の水と反応物とを含む。軽質有機物が「残留オーバーヘッド」として除去され、従って、凝縮物中で最少化されることが好ましい。「軽質有機物」は、水の沸点より低い沸点を有し、色形成に対する前駆体として作用し得る共役不飽和カルボニル化合物を含む気相中の成分を意味する。
【0025】
凝縮物の好ましい組成への本明細書における言及は、重合の過程にわたり反応容器に戻される全凝縮物の好ましい組成を意味する。重合中の所与のいかなる時間においても、凝縮物の所与のいかなる成分の量も好ましい量から逸脱してもよい。こうした逸脱は、重合の過程にわたり容器に再循環される量が好ましい範囲内に入るなら許容できる。
【0026】
凝縮物が約50重量%超の水を含むことが好ましい。さらにより好ましくは、凝縮物は、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超の水を含む。可能な限り多くの反応物を凝縮させることが有利である。幾つかの実施形態において、凝縮物は約60%未満の反応物を含み、幾つかの実施形態において、凝縮物は約50重量%未満の反応物を含む。一実施形態において、外部水は、プロセス中に反応混合物または容器に添加されない。
【0027】
残留オーバーヘッドの組成および凝縮物の組成は、当業者に公知の方法を用いて決定することが可能である。例えば、凝縮物中の水濃度は、サンプルを回収し、カールフィッシャー滴定によってサンプルを分析することにより決定することが可能である。凝縮物中の反応物の量は、ガスクロマトグラフィを用いて決定することが可能であり、軽質有機物の存在は、質量分析法を使用してもまたは使用しなくても、液体クロマトグラフィおよび/またはガスクロマトグラフィを用いて分析することが可能である。
【0028】
凝縮器の温度は、凝縮物組成物の構成に影響を及ぼすために操作し制御することが可能である。本明細書において用いられる「凝縮物を生成させるのに十分な温度」は、液体を気相から凝縮させる温度を意味する。反応物が1,3−プロパンジオールを含む場合、一般に、反応中に生成する軽質有機物は、約210℃〜約212℃の標準沸点を有する1,3−プロパンジオールより揮発性が高い。「標準沸点」は、大気圧での沸点を意味する。非常に低い温度、例えば、0℃での凝縮器の運転は、気相の実質的にすべてを凝縮させることが可能である。しかし、容器に戻された場合に反応生成物の色を濃くし得る色形成種を軽質有機物が含む場合があるので、軽質有機物を凝縮させないように気相の成分を分別することが望ましい。選択された温度での運転は、反応容器に戻される凝縮物の構成の制御を可能にする。例えば、本明細書において開示された方法に関しては、水と反応物とを含む凝縮物が生成する。凝縮器を約60℃より高い温度で運転することが好ましい。約60℃〜約110℃での運転は、より好ましい。約80℃〜約110℃の凝縮器温度は、なおより好ましい。従って、好ましくない軽質有機物は、水および反応物が凝縮物中で維持されつつ残留オーバーヘッドの一部として除去することが可能である。
【0029】
反応容器に戻される凝縮物の量は、反応生成物の収率および色に影響を及ぼすために制御することが可能である。凝縮物の全質量の百分率として容器に再循環される凝縮物の質量を本明細書において「還流比」と呼ぶ。高い生成物収率のために、可能な限り多くの反応物を容器に再循環することが有利である。好ましい還流比は、約50%〜約90%の範囲内である。幾つかの実施形態において、還流比は約40%より大きい。幾つかの実施形態において、還流比は、約50%より大きい、約60%より大きい、約70%より大きい、または約80%より大きい。
【0030】
好ましい実施形態において、反応物は1,3−プロパンジオールを含み、反応生成物はポリトリメチレンエーテルグリコールを含む。幾つかの実施形態において、1,3−プロパンジオールは唯一の反応物である。幾つかの実施形態において、凝縮は、約60℃〜約110℃の温度で行われ、凝縮物の約50%〜約90%は容器に再循環される。
【0031】
「反応物損失」は、反応物損失が収率損失の主たる誘因であるので収率の評価として本明細書において用いられる。反応物損失は、反応に供給される反応物の質量の一部として反応器に戻されないオーバーヘッド中の未反応出発材料の質量を決定し、結果を百分率として表現することにより計算される。オーバーヘッド中の未反応出発材料の質量は、例えば、残留オーバーヘッド中の未反応出発材料の量を決定し、反応容器に戻されない凝縮物中の未反応出発材料の量をその量に加えることにより決定することが可能である。当業者は、還流比が100%未満である場合、反応容器に戻されない凝縮物中の多少の未反応出発材料が失われることを認めるであろう。凝縮器温度に応じて、多少の未反応出発材料は凝縮しない場合があり、従って残留オーバーヘッドから失われる。
【0032】
本明細書において開示された方法は、反応物損失が少ないおよび低着色の反応生成物の製造を考慮している。幾つかの実施形態において、反応物損失は約10重量%未満である。好ましい実施形態において、反応物損失は約5重量%未満であり、より好ましい実施形態において、反応物損失は約3重量%未満である。幾つかの実施形態において、反応物損失は約2重量%未満である。
【0033】
反応生成物の分子量は、典型的には、約500〜約5000g/モルの範囲内である。好ましくは、分子量は、約1000〜約3000g/モルである。幾つかの実施形態において、生成物ポリマーは、約1000〜約2250g/モルの分子量を有する。幾つかの実施形態において、反応生成物の分子量は、約500g/モルより高い。他の実施形態において、反応生成物の分子量は、1000g/モルより高く、幾つかの実施形態において、反応生成物の分子量は、約1500g/モルより高い。分子量を決定する方法は当業者に公知であり、陽子−NMRから得られたヒドロキシル価からの計算を含む。別の例として、分子量は、ポリマーの粘度を測定し、それをポリマーの粘度に基づく発生標準曲線と対照して比較することにより決定してもよい。
【0034】
APHA色値は、ASTM規格D−1209(2005年)において定義された色の基準である。好ましい目標色値は、生成物の所望の分子量および/または所望の最終用途に応じて選択することが可能である。本明細書において開示された方法は、好ましくは、約200APHA単位未満の色、より好ましくは、約100未満の色、なおより好ましくは約50未満の色を有するポリマーをもたらす。色は、約40APHA単位未満または約30APHA単位未満であることが可能である。特定の実施形態において、色は約30〜約100APHA単位である。
【0035】
本明細書において開示された方法は、(例えば、米国特許第6,235,948号明細書において開示されたような)色を除去するために原材料を前処理する方法または(例えば、米国特許第7,294,746号明細書において開示されたような)色を除去するためにポリマー生成物を後処理する方法と一緒に用いることが可能である。幾つかの実施形態において、本明細書において開示された方法は、前処理または後処理の必要性を排除するか、または減少させることが可能であり、それでもなお、望ましいAPHA色のポリマーを生成させる。
【0036】
他の後重合精製手順は知られており、本明細書において開示された方法と一緒に用いることが可能である。例えば、米国特許第7,388,115号明細書は、水溶性無機化合物の添加の前の加水分解工程および更なる精製工程においてポリマーに水を添加することによりヒドロキシル化合物と触媒の反応から生成した酸エステルを除去する方法を開示している。米国特許第7,161,045号明細書および米国特許第7,157,607号明細書は、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する方法であって、加水分解後の相分離を有機溶媒の添加によって促進する方法を開示している。
【実施例】
【0037】
一般材料および方法
用いられた1,3−プロパンジオール(PDO)は、DuPont TateおよびLyle BioProducts,LLC(Wilmington、DE、USA)製のBio−PDO(登録商標)であった。硫酸をEMD Chemicals(Gibbstown、NJ、USA)から購入した。
【0038】
リットルは、「L」と略す。重量%を「wt%」と略す。摂氏の度を「℃」と略す。「rpm」は、回転数/分を示す。分子量を「MW」と略す。
【0039】
色測定およびAPHA値
Hunterlab Color Quest XE Spectrocolorimeter(Reston、VA、USA)を用いて、ポリマーの色を測定した。ポリマーの色数をASTM規格D−1209に準拠してAPHA値(白金−コバルトシステム)として測定する。ポリマーの分子量を陽子−NMRによって得られたヒドロキシル価から計算した。報告されたすべての分子量は数平均分子量(Mn)である。
【0040】
一般反応手順
メカニカルスターラー、浸漬管およびオーバーヘッド凝縮器装置(Wilmad Lab Glass、Buena、NJ、USA製の部品番号LG−6280−100)が装備された1リットルのケトル型Mortonガラス反応器(Wilmad Lab Glass、Buena、NJ、USA製の部品番号LG−8011−100)に、所望の濃度で1,3−プロパンジオールおよび触媒を添加した。オーバーヘッド凝縮器を2つの方法で運転できた。
a.気相の実質的にすべての成分を残留オーバーヘッドとして除去してもよい。
b.凝縮物材料の一部または全部を機械的作動弁の助けにより反応器に移して戻すことが可能である。
【0041】
エチレングリコールと水の混合物で満たされた循環浴を用いて、所望の凝縮器温度を維持した。反応混合物を窒素パージし、電気加熱マントルを用いて所望の温度に加熱した。反応開始時間を反応器内容物が所望の温度に達した時間として設定した。反応を350rpmでの攪拌下で一定バッチ時間にわたり実施し、オーバーヘッド蒸気を除去するかまたは凝縮させ、選択された還流比に従い反応器に戻した。反応混合物および凝縮物のサンプルを一定時間間隔で集めた。反応混合物を放置して室温に冷却することにより反応を終了させた。
【0042】
発明実施例に関しては、反応を上で開示された通り実施した。一旦反応温度を達成すると、薄まった色のポリマーを達成するために、凝縮物の一部を反応器に移して戻した。
【0043】
比較/対照実施例に関しては、気相の成分を凝縮も再循環もせずに反応を上で開示された通り実施した。
【0044】
残留オーバーヘッド中の、および反応器に移して戻されなかった凝縮物の一部中の、出発材料(PDO)の組み合わせ質量を決定し、反応に供給されたPDOの質量によって除算することにより「PDO損失」を計算した。結果を百分率として表現する。
【0045】
実施例1
反応質量の1.5重量%の硫酸を触媒として用いた。凝縮器を0℃で一定に保った。2つの反応を実施した。結果を表1においてまとめている。凝縮物を反応器に戻さなかった場合、反応生成物の色は1132g/モルの分子量で228APHAであった。しかし、発生凝縮物の50%を反応器に供給して戻した場合、反応生成物の色は1096g/モルの分子量で140APHAに薄まった。
【0046】
実施例2
反応質量の1.5重量%の硫酸を触媒として用いた。凝縮器を反応の全持続時間にわたり85℃で運転した。凝縮物を反応器に戻さなかった場合、ポリマーの色は124APHAであり、分子量は1176g/モルであり、反応器に凝縮物の50%を移すと、色は、1172g/モルの分子量で115APHAであった。凝縮物の90%を反応容器に移すと、色は、1214g/モルの分子量で50APHA未満に薄まった。
【0047】
実施例3
反応質量の1.4重量%の硫酸を触媒として用いた。183℃の反応温度を用いた。凝縮器を実験の全持続時間にわたり85℃で運転した。凝縮物を反応器に戻さなかった場合、ポリマーの色は1800g/モルの分子量で544APHAであり、凝縮物の90%を反応器に移すと、色は1760g/モルの分子量で400APHAに薄まった。
【0048】
実施例4
反応質量の1.4重量%の硫酸を触媒として用い、170℃の反応温度を用いた。凝縮器を実験の全持続時間にわたり105℃で運転した。凝縮物を反応器に戻さなかった場合、ポリマーの色は788g/モルの分子量で118APHAであった。凝縮物の90%を反応器に移すと、色は750g/モルの分子量で76APHAに薄まった。
【0049】
実施例5
反応質量の1.5重量%の硫酸を触媒として用い、170℃の反応温度を用いた。凝縮器を実験の全持続時間にわたり85℃で運転し、凝縮物の90%を反応器に移すと、1349g/モルの分子量で29APHAの色を有するポリマーを生成した。
【0050】
表1:データのまとめ
[反応条件:硫酸:1.5重量%;攪拌速度:350rpm;窒素パージ流速:標準状態で0.5L/分]

【0051】
実施例6
反応質量の0.25重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(TFESA)を触媒として用いた。実験6aにおいて、反応温度を6時間にわたり183℃で保持し、その後、実験の残りにわたり165℃に下げた。凝縮器を0℃で保ち、凝縮物を反応器に戻さなかった。776g/モルの分子量で色772APHAの反応生成物を生成した。実験6bにおいて、凝縮器を最初の5時間にわたり85℃で設定し、その後、実験の残りにわたり60℃に下げ、凝縮物の90%を全実験中に反応器に移して戻した。反応生成物の色は、824g/モルの同等の分子量で9APHAに薄まった。
【0052】
実施例7
反応質量の0.25重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(TFESA)を触媒として用いた。実験7aにおいて、反応温度を6時間にわたり183℃で保持し、その後、実験の残りにわたり165℃に下げた。凝縮器を0℃で保ち、凝縮物を反応器に戻さなかった。342g/モルの分子量で31APHAの色を有する反応生成物を達成した。実験7bにおいて、凝縮器を最初の5時間にわたり85℃で設定し、その後、実験の残りにわたり60℃に下げ、凝縮物の90%を全実験中に反応器に戻した。反応生成物の色は、362g/モルの同等の分子量で6APHAに薄まった。
【0053】
表2:データのまとめ
[反応条件:0.25重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(TFESA);攪拌:35rpm]


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)容器中で少なくとも1種の重縮合触媒の存在下で1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのオリゴマー、ポリ−1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物を含む反応物を重合させて反応生成物を生成させ、それによって水と前記反応物とを含む気相を重合が進行するにつれて生成させる工程と、
b)水と前記反応物とを含む凝縮物を生成させるのに十分な温度で前記気相の少なくとも一部を凝縮させ、集める工程と、
c)前記凝縮物の少なくとも一部を前記容器に再循環する工程と、
を含む前記反応生成物を製造する方法であって、重合の過程にわたって約5重量%未満である反応物損失および約200APHA未満の色を有する前記反応生成物によって特徴づけられる方法。
【請求項2】
前記反応物がコモノマージオールを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1,3−プロパンジオールが生物誘導1,3−プロパンジオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1,3−プロパンジオールが化学誘導1,3−プロパンジオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記重縮合触媒が酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重縮合触媒が硫酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重縮合触媒が1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記気相の前記凝縮を約110℃未満の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記気相の前記凝縮を少なくとも約80℃の温度で初期時間にわたり、および少なくとも約60℃の温度で第2の時間で行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凝縮物の約50%〜約90%を前記反応容器に再循環することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応物損失が約3%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記凝縮物が少なくとも約50重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記凝縮物が少なくとも約70重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応生成物がホモポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応生成物が少なくとも約1000g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記色が約100APHA未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記色が約50APHA未満である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515144(P2013−515144A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546078(P2012−546078)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061014
【国際公開番号】WO2011/084686
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】