説明

ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用されるビーズ、該ビーズを製造する装置及び方法

ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な複数のビーズを製造する方法が提供され、該方法は、(i)ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する物質とを供給すること;(ii)試料導管と、不混和液体(immiscible liquid)が流れる第1キャリア流体導管とを備え、前記試料導管と前記第1キャリア流体導管とは接合部で合流している反応装置を供給すること;(iii)ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを密な混合物(intimate admixture)で含有する液体を形成するために、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを加熱すること;(iv)前記試料導管内に前記液体を、前記第1キャリア流体導管にキャリア流体を、それぞれ通過させて、前記接合部で又は前記接合部の下流で、小滴の形成をもたらすこと;(v)前記小滴を冷却することにより、固形ビーズの形成をもたらすことを含む。このような方法に使用される装置も提供され、このような方法で複数のビーズが作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応、例えば(これのみではないが)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR, polymerase chain reaction)に使用されるビーズ、該ビーズを製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリヌクレオチド増幅反応は、増幅を開始する1または複数のプライマーと連動して、問題となるポリヌクレオチドシーケンスの増幅を促進させる酵素(ポリメラーゼ)を一般的に使用する。従来の増幅反応では、最初のDNA変性の前を含む、反応プロセスの全体にわたって試薬は互いに接触している。これらの反応条件は、望ましくない増幅生成物の生成をもたらし得る。少なくともいくつかの試薬を互いに分離するために、融解可能なビーズ(meltable beads)はPCR反応に使用されてきた。従来のビーズを製造するために使用される技術では、均一でないサイズのビーズが製造され、そのためユーザーはビーズの中に含有する試薬の正確な分量を知らず、ある種の用途では問題を引き起こす可能性がある。更に、従来のビーズの使用期限は限定される可能性がある。また、一般的に、従来のビーズを製造するために使用される各技術は、小さいサイズの範囲のビーズの製造にのみ適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、これらの問題のうちの1又は複数を解決するために提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面によれば、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な複数の球形ビーズが提供され、該ビーズは50から2500ミクロンまでの平均直径を有し、複数のビーズの直径の標準偏差は、該複数のビーズの平均直径の5%を超えない。該ビーズの各々は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬を含有している。
【0005】
これらのビーズは、ポリヌクレオチドの増幅反応での使用に特に有益であると判明した。
【0006】
1又は複数の試薬は、標識されていない(unlabelled)オリゴヌクレオチド、標識されている(labelled)オリゴヌクレオチド、標識されているデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されているオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないオキシヌクレオシド三リン酸、ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ポリヌクレオチド、使用時に緩衝効果(buffering effect)をもたらす染料(stain)又は色素(dye)及び組成物(compound)のうちの1又は複数を含有してもよい。
【0007】
標識されていないオリゴヌクレオチドは、PCR反応に使用されるプリマーとしてよい。標識されているオリゴヌクレオチドは、PCR反応に使用されるプローブとしてよい。ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素の例は当業者によく知られ、例えばTaq(登録商標)ポリメラーゼ又はリバーストランスクリプターゼである。ポリヌクレオチドは、増幅反応中に増幅されるポリヌクレオチドでもよい。もし試薬組成物が例えば陽性標準試料(positive control sample)を形成するならば、このようなポリヌクレオチドは有利に試薬組成物に組み込まれ得る。ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応での使用時に緩衝効果をもたらす組成物は、例えばTRIS−HCl(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール,塩酸)でよい。
【0008】
染料又は色素は、ポリヌクレオチドの増幅反応の進展を追跡するのに一般的に使用される染料又は色素のうちの1つであればよい。このような色素又は染料は、一般的に蛍光色素(fluorophores)でよい。色素又は染料は、インターカレーター(intercalator)(すなわち、二重らせん構造内の境界となる分子)でよい。SYBR Green I及び臭化エチジウムは、このようなインターカレーターの例である。あるいは、色素又は染料は、Hoechst 33258のような非インターカレーティング(non-intercalating)であってもよい。
【0009】
各ビーズは、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応のための酵素、例えばTaqポリメラーゼを含有していることが好ましい。各ビーズは、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応のための酵素と、使用時に緩衝効果をもたらす組成物とを含有してもよい。各ビーズは、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応のための酵素と、使用時に緩衝効果をもたらす組成物と、デオキシヌクレオシド三リン酸(標識されている、又は標識されていない)とを含有してもよい。
【0010】
ビーズは、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する物質を含有していることが好ましい。一般的に、このような物質は、このような固形ビーズを製造するのには都合がよい、液滴(liquid droplet)から、固形で融解可能なビーズの形成を容易にする。
【0011】
固形ビーズの形成を促進する物質は、1又は複数のワックス又はゲル化剤、例えば多糖類を含有してよい。多糖類は、カードランガム、カラギーナン、β−グルカン、グアーガム、ジェランガム、ゼラチン、ローカストビーンガム、ペクチン及びキサンタンガムのうちの1又は複数を含有してよい。多糖類は、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、アガロースなどのガラクタンを含有してよい。
【0012】
ビーズは、0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、好ましくは0.3から3重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、より好ましくは0.3から1.5重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、更に好ましくは0.4から1.2重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を含有してよい。固形ビーズの形成を促進する物質がゲル化剤、特に多糖類、より格別にガラクタン、特別にアガロースである場合、百分率組成(percentage composition)が特に効果的であることが判明した。
【0013】
ビーズの平均直径は、500から2500ミクロンまで、より好ましくは800から1500ミクロンまで、更に好ましくは900から1200ミクロンまでとすることができる。
【0014】
ビーズの直径の標準偏差は小さいことが好ましい。複数のビーズの直径の標準偏差は、ビーズの平均直径の3%を超えない、より好ましくは平均直径の2%を超えないとすることができる。
【0015】
ビーズの融点は、使用する酵素に適した所定の温度とすることが好ましい。酵素の包括(entrapment)は、酵素がポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成を補助することを阻害する。そのため、所望の動作温度に達したときのみに酵素が放出されるようにビーズの融点を選択する。もし酵素が包括されていないなら、酵素はポリヌクレオチドの増幅又は合成を自由に補助するため、所望のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを生成する可能性がある。例えば、Taqポリメラーゼを包括しているビーズは、酵素の通常動作温度の数度以下で融解するように準備してよい。この場合、酵素の通常動作温度は約94℃なので、ビーズの融解は90℃としてよい。
【0016】
ビーズの融解温度は100℃を超えないことが好ましい。ビーズの融解温度は30℃未満でないことが好ましい。ビーズの融解温度は80℃から95℃までが好ましい。
【0017】
複数のビーズは、少なくとも10個のビーズを、好ましくは少なくとも30個のビーズを、より好ましくは少なくとも100個のビーズを含有していることがよい。
【0018】
本発明は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な球形ビーズであり、本発明の第1の側面に従う複数のビーズから選択された融解可能な球形ビーズを更に提供する。
【0019】
本発明の第2の側面によれば、複数の反応管(reaction vessels)が提供され、各反応管は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の融解可能な球形ビーズを収納している。複数の反応管の中のビーズは50ミクロンから2500ミクロンまでの平均直径を有し、複数の反応管の中のビーズの直径の標準偏差は平均直径の5%を超えない。該ビーズの各々は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬を含有している。
【0020】
提供された融解可能な球形ビーズは、本発明の第1の側面について既に述べた特徴を示す。例えば、ビーズは、固形ビーズの形成を促進する物質、例えばガラクタンを含有してよい。
【0021】
本発明の第3の側面によれば、融解可能なビーズを製造する反応装置が提供される。反応装置は、
(i) 冷却時に融解可能なビーズを形成する第1液体が流れる試料導管(sample conduit)と、
(ii) 前記試料導管と第1キャリア流体導管とは接合部で合流している、キャリア流体が流れる第1キャリア流体導管(carrier fluid conduit)と、
(iii) 前記接合部から遠ざかる分割流れ導管(segmented flow conduit)であって、
前記接合部に結合された近位部(proximal portion)と、前記接合部から下流にある遠位部(distal portion)とを備え、前記接合部で又は前記接合部の近傍で、前記反応装置は使用時に前記キャリア流体内の前記第1液体のセグメントの形成をもたらす、流れの狭窄(constriction)又は不連続(discontinuity)を備える、分割流れ導管と、
(iv) 前記試料導管と前記第1キャリア流体導管と、前記接合部と、選択的に前記分割流れ導管の近位部とを加熱するヒーターと、
(v) 前記第1液体のセグメントの固形化を促進するために、前記分割流れ導管の遠位部を冷却するクーラーとを備える。
【0022】
本発明の装置は、固形ビーズを形成する、第1液体のセグメントを冷却することにより本発明の第1の側面のビーズを製造する、効果的な装置である。
【0023】
反応装置は、接合部で試料導管と合流する第2キャリア流体導管を更に備えてもよい。
【0024】
反応装置は、好ましくはマイクロ流体装置(microfluidic device)である。「マイクロ流体(microfluidic)」という語は、当業者に概してよく理解されている。このようなマイクロ流体装置の導管は、一般的に2mm以下の幅、好ましくは0.5から2.0mmまでの幅を有する。導管の深さは、一般的に2mm未満、好ましくは0.5から2.0mmまでである。流体の流量は、特に導管の断面積に依存し、ここで与えられた好ましい値は、
1mmから及び2mmの深さ、1mmから2mmまでの幅を有する導管に関連する。例えば、試料導管を流れる第1液体の流量は、有利には毎時約0.02から約5ml、より好ましくは毎時約0.1から約2mlとすることができる。キャリア流体の流量は、毎時約0.2から約60ml、好ましくは毎時約0.2から約15ml、より好ましくは毎時約1から約3mlとすることができる。
【0025】
試料導管、第1及び第2キャリア流体導管、分割流れ導管のうち、1又は複数(好ましくはすべて)は、ブロックなどの基体の表面に備えてよい。このことは都合がよい反応装置を提供し、基体内の機械加工導管(machining conduit)により一般的に形成される。基体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、例えばテフロンなどの低エネルギー材料を含んでよい。代替的には、比較的高い表面エネルギーの基体を機械加工し、低エネルギーの表面を有する通路を提供する低エネルギー材料で機械加工された基体を被覆することにより、導管を形成することができる。
【0026】
反応装置は、固形ビーズを出す装置出口(device outlet)を好ましくは備えている。
【0027】
反応装置は、固形ビーズによる出口の遮断を阻止するため、噴出液(flushing liquid)を装置出口に供給する、1又は複数の噴出導管(flushing conduit)を備えてもよい。
【0028】
1又は複数の噴出導管は、装置出口の上流で分割流れ導管に合流していることが好ましい。1又は複数の噴出導管は、装置出口の近傍で分割流れ導管に合流していてよい。例えば、1又は複数の噴出導管は、装置出口の上流の、分割流れ導管の幅の20倍未満の距離で分割流れ導管に合流している(ここで分割流れ導管の幅は、分割流れ導管が1又は複数の噴出導管に合流している位置での幅である)。反応装置は、噴出接合部(flushing junction)で分割流れ導管に合流する、2つの噴出導管を備えていることが好ましい。
【0029】
1又は複数の噴出導管は、液体を1又は複数の噴出導管に導入する、噴出注入口(flush
inlet)と流体的に連通(in fluid communication)していることが好ましい。1つのみの噴出注入口があることが好ましい。
【0030】
噴出液は、ビーズの形成に使用されるキャリア流体と同じでよい。
【0031】
装置は、試料導管、第1キャリア流体導管、接合部、第2キャリア流体導管(もしあれば)及び選択的に分割流れ導管の近位部を加熱する、加熱プレートを備えてよい。
【0032】
装置は、分割流れ導管の遠位部を冷却する、冷却プレートを備えてよい。特に導管が基体又はブロックに形成されている場合、冷却プレートは、装置の他の部位との良好な熱的接触を形成する好都合な方法である。
【0033】
装置は、加熱プレートと冷却プレートを備えることが好ましい。この場合、加熱プレートと冷却プレートとの間に断熱間隙(insulating gap)があることが好ましい。断熱間隙は、空気などの断熱ガスを含んでいる。断熱間隙は0.1から10mmまでが好ましい。加熱プレートと冷却プレートとの間隔を0.1から10mmまでとしてよい。
【0034】
冷却プレートと熱的に連通している分割流れ導管の長さは、加熱プレートと熱的に連通している分割流れ導管の長さの2から5倍までとすることができる。
【0035】
分割流れ導管は、接合部から下流に、段差(step)を備えることができる。段差は、球形ビーズの形成を補助する。
【0036】
段差は、分割流れ導管が接合部に合流する点から0.5aから5aまでの距離だけ下流に位置する。”a”は、段差よりすぐ上流での分割流れ導管の深さである。段差は、分割流れ導管が接合部に合流する点から0.5aから2.0aまで(より好ましくは0.5aから1.5aまで)の距離だけ下流に位置することが好ましい。”a”は、段差よりすぐ上流での分割流れ導管の深さである。これらの装置の幾何学的配置(geometries)は、球形ビーズの製造において効果的であることが判明した。
【0037】
分割流れ導管は、分割流れ導管が接合部に合流する点から下流に、断面拡大部(enlargement in cross-section)を備えてもよい。このような断面拡大部は、拡大部において段差を作る。
【0038】
断面拡大部は、分割流れ導管が接合部に合流する点から0.25dから2.5dまでの距離だけ下流に位置する。”d”は、拡大部よりすぐ下流での分割流れ導管の深さである。断面拡大部は、分割流れ導管が接合部に合流する点から0.25dからdまで(より好ましくは0.25dから0.75dまで)の距離だけ下流に位置することが好ましい。
【0039】
拡大部よりすぐ下流での分割流れ導管の断面積は、拡大部よりすぐ上流での分割流れ導管の断面積の1.5から6倍まで(より好ましくは2から5倍まで)とすることができる。
【0040】
本発明の第4の側面によれば、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な球形ビーズを製造する方法が提供され、該方法は、
(i) ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する物質とを供給すること;
(ii) 試料導管と、不混和液体(immiscible liquid)が流れる第1キャリア流体導管とを備え、前記試料導管と前記第1キャリア流体導管とは接合部で合流している反応装置を供給すること;
(iii) ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを密な混合物(intimate admixture)で含有する液体を形成するために、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを加熱すること;
(iv) 前記試料導管内に前記液体を、前記第1キャリア流体導管にキャリア流体を、それぞれ通過させて、前記接合部で又は前記接合部の下流で、小滴の形成をもたらすこと;
(v) 前記小滴を冷却することにより、固形ビーズの形成をもたらすこと;
を含む。
【0041】
この方法は、ビーズ、特に球形のビーズを形成する効果的な方法を提供する。この方法は、低い多分散性、つまりサイズにおける小さい偏差を有するビーズを製造する効果的な方法であり、更に所望のサイズが広い範囲にわたるビーズの製造において効果的であることが判明した。
【0042】
反応装置は、本発明の第3の側面に従う反応装置が好ましく、したがって本発明の第3の側面の反応装置に関して上述した特徴が組み込まれてもよい。
【0043】
この方法は、本発明の第1の側面のビーズを形成するために使用してよい。したがって、本発明の第1の側面のビーズに関連するビーズ組成物に関連した記述もまた本発明の第4の側面の方法に関係する。
【0044】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬は、本発明の第1の側面のビーズに関連して上述した試薬が好ましい。例えば、1又は複数の試薬は、標識されていない(unlabelled)オリゴヌクレオチド、標識されている(labelled)オリゴヌクレオチド、標識されているデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されているオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないオキシヌクレオシド三リン酸、ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ポリヌクレオチド、使用時に緩衝効果(buffering effect)をもたらす染料(stain)又は色素(dye)及び組成物(compound)のうちの1又は複数を含有してもよい。
【0045】
標識されていないオリゴヌクレオチドは、PCR反応に使用されるプリマーとしてよい。標識されているオリゴヌクレオチドは、PCR反応に使用されるプローブとしてよい。ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素の例は当業者によく知られ、例えばTaq(登録商標)ポリメラーゼ又はリバーストランスクリプターゼである。ポリヌクレオチドは、増幅反応中に増幅されるポリヌクレオチドでもよい。もし試薬組成物が例えば陽性標準試料(positive control sample)を形成するならば、このようなポリヌクレオチドは有利に試薬組成物に組み込まれ得る。ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応での使用時に緩衝効果をもたらす組成物は、例えばTRIS−HCl(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール,塩酸)でよい。
【0046】
染料又は色素は、ポリヌクレオチドの増幅反応の進展を追跡するのに一般的に使用される染料又は色素のうちの1つであればよい。このような色素又は染料は、一般的に蛍光色素(fluorophores)でよい。色素又は染料は、インターカレーター(intercalator)(すなわち、二重らせん構造内に結合される分子)でよい。SYBR Green I及び臭化エチジウムは、このようなインターカレーターの例である。あるいは、色素又は染料は、Hoechst 33258のような非インターカレーティング(non-intercalating)であってもよい。
【0047】
ステップ(iii)で形成される液体は、好ましくは水溶性である。したがって、キャリア流体は、水性混合物(aqueous mixture)、溶液(solution)又は懸濁液(suspension)と不混和(fluid immiscible)であることが好ましい。
【0048】
更に、固形ビーズの形成を促進する物質は、1又は複数のワックス又はゲル化剤、例えば多糖類を含有してよい。多糖類は、カードランガム、カラギーナン、β−グルカン、グアーガム、ジェランガム、ゼラチン、ローカストビーンガム、ペクチン及びキサンタンガムのうちの1又は複数を含有してよい。多糖類は、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、アガロースなどのガラクタンを含有してよい。
【0049】
ステップ(iii)で形成される液体は、0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、好ましくは0.3から3重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、より好ましくは0.3から1.5重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、更に好ましくは0.4から1.2重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を含有してよい。固形ビーズの形成を促進する物質がガラクタンなどのゲル化剤である場合、これらの範囲は特に有益である。
【0050】
ビーズの融点は、使用する酵素に適した所定の温度とすることが好ましい。酵素の包括(entrapment)は、酵素がポリヌクレオチドの増幅又は合成を補助することを阻害する。そのため、所望の動作温度に達したときのみに酵素が放出されるようにビーズの融点を選択する。もし酵素が包括されていないなら、酵素はポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成を自由に補助し、そして、所望のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを生成する可能性がある。
【0051】
装置は、接合部から遠ざかる分割流れ導管を備えていることが好ましく、液体ビーズ(liquid beads)が分割流れ導管の中で冷却される。分割流れ導管は、接合部に結びつく近位部と、接合部から下流にある遠位部とを備えることが好ましい。
【0052】
本発明の第5の側面によれば、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能なビーズの形成のための水性組成物が提供され、組成物は、固形ビーズの形成を促進する物質と、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬とを含有し、組成物は0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を含有する。
【0053】
組成物は、好ましくは0.3から3重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、より好ましくは0.3から1.5重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を、更に好ましくは0.4から1.2重量%までの固形ビーズの形成を促進する物質を含有してよい。固形ビーズの形成を促進する物質が多糖類などのゲル化剤である場合、これらの範囲は特に有益である。
【0054】
装置は、マイクロ流体装置としてよい。
【0055】
装置は、好ましくは接合部で試料導管と合流する第2キャリア流体導管を備えてもよい。
【0056】
本発明の第5の側面に従う組成物は、例えば、本発明の第4の側面の方法を用いて、本発明の第1の側面のビーズを形成するために使用される。本発明の第5の側面の組成物は、本発明の第4の側面で使用される液体としてよい。本発明の第1の側面のビーズの組成物に関連した記述は、本発明の第5の側面の混合物にも適用される。
【0057】
例えば、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬は、以下の1又は複数を含有してよい:標識されていないオリゴヌクレオチド、標識されているオリゴヌクレオチド、標識されているデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されているオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないオキシヌクレオシド三リン酸、ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ポリヌクレオチド、使用時に緩衝効果をもたらす染料又は色素及び組成物。
【図面の簡単な説明】
【0058】
次の図面を例示のためのみに参照して、本発明を以下に説明する。
【図1】図1は、本発明に従う反応装置の平面図である。図1Bは、装置出口(device outlet)の周囲である、図1の装置の一部の平面図で、噴出配置(flushing arrangement)を示す。
【図2】図2は、図1の反応装置の概略斜視図である。
【図3a】図3aは、反応装置の接合部の周囲の領域の平面図である。
【図3b】図3bは、反応装置の接合部の周囲の領域の断面図である。
【図4】図4は、液体内に格納された1又は複数の試薬と比較した、固形ビーズ内の1又は複数の試薬の包括の効果を示す、PCR生成物のゲルプレートの電気泳動像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は本発明に従う反応装置を示し、反応装置は符号1で概して示される。反応装置1は、冷却時に融解可能なビーズを形成する第1液体が流れる試料導管2と、キャリア流体が流れる第1キャリア流体導管4とを含み、試料導管2と第1キャリア流体導管4とは接合部14で合流する。分割流れ導管7は接合部から遠ざかり、分割流れ導管7は接合部14に結合された近位部18と、接合部から下流にある遠位部19とを有する。反応装置は、キャリア流体が流れる第2キャリア流体導管3を更に備える。第2キャリア流体導管3は接合部14で試料導管2に合流する。接合部で、又は、接合部の近傍で、反応装置は使用時にキャリア流体内の第1液体のセグメントの形成をもたらす、流れの狭窄又は不連続を備える。この場合、接合部位自身が流れの狭窄をもたらしている。図3a及び3bを参照すれば、接合部14のすぐ下流にある、分割流れ導管7の部分34の断面は、試料導管2と第1及び第2キャリア流体導管のそれぞれと同じである。このことは流れの狭窄をもたらし、該狭窄はキャリア流体内の第1液体のセグメントの形成をもたらす。反応装置1は、試料導管と第1キャリア流体導管と、接合部と、分割流れ導管の近位部18とを加熱するヒーター(図示しない)を更に備える。反応装置1は、第1液体のセグメントの固形化を促進するために、分割流れ導管の遠位部19を冷却するクーラー(図示しない)を更に備える。
【0060】
図2を参照すれば、ヒーター(図示しない)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の基体の底面に対して当接して固定された、加熱プレート16と熱的に連通し、該基体には、試料導管2、第1及び第2キャリア流体導管及び分割流れ導管7が形成されている。同様に、クーラー(この場合、水冷ポンプシステム)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の基体の底面に対して当接して固定された、冷却プレート17と熱的に連通している。の場合、加熱プレート16と冷却プレート17とは、小さい断熱間隙(insulating gap)15(この場合5mmの空気が提供される)により分割されている。断熱間隙15は、加熱プレート16と冷却プレート17との間の熱的な連通を減少させる。この分離は、接合領域14と分割流れ導管7の領域18が冷却プレート17により著しく冷却されないこと、逆に分割流れ導管7の領域19が加熱プレート16により著しく加熱されないことを保証する。
【0061】
接合部14の幾何学的配置は、図3a及び3bに詳細に示される。接合部14にて第1及び第2キャリア流体導管は試料導管2に合流する。分割流れ導管7は接合部14から遠ざかる。分割流れ導管7は、接合部14から下流に、断面における拡大部(enlargement)33を備える。分割流れ導管7の拡大部33から上流の部分34の深さは、分割流れ導管7の拡大部33からすぐ下流の部分35の深さの約0.7倍である。更に、分割流れ導管7の拡大部33から上流の部分34の幅は、1.25mmであり、分割流れ導管7の拡大部33からすぐ下流の部分35の幅(1.7mm)の約0.7倍である。分割流れ導管7が接合部14に合流する点36から拡大部33までの距離は、部分34の深さとほぼ同じである。更に、分割流れ導管7の拡大部33からすぐ下流の深さは、1.7mmであり、分割流れ導管7の拡大部33からすぐ上流の部分の深さ(1.25mm)の約1.4倍である。この拡大部33と、拡大部の接合部14に対する相対的な位置は、球形ビーズの形成を補助することにおいて有益であることが判明した。試料導管2及びキャリア流体導管3、4はそれぞれ1.25mmの幅及び深さを有する。導管のサイズは、製造されるビーズのサイズの決定の助けとなり、異なる幅や深さの導管は、異なるサイズのビーズの製造に使用することができる。
【実施例1】
【0062】
図1、2、3a、3bを参照して、本発明に従う、融解可能なビーズの製造方法の例を説明する。
【0063】
Taq(登録商標)ポリメラーゼとアガロース(シグマ−アルドリッチ社、ギリンガム、ドーセット、英国)との水溶液を以下のように準備した。既知量のアガロースを既知量の水に、すなわち水1000μlあたり11mgのアガロースが加えられた。電子レンジ内で、ファルコン管内の水及びアガロースを加熱することにより、アガロースの溶解が促進された。そして、ファルコン管は70℃の水槽に入れられた。100μlのTaq(登録商標)ポリメラーゼ(ヘレナ バイオサイエンシズ、ゲートシード、英国)を測ってエッペンドルフ管内に入れられ、エッペンドルフ管は70℃の水槽に入れられた。
【0064】
エッペンドルフ管とファルコン管と70℃の水槽から取り除かれた。948μlのアガロース溶液は、Taq(登録商標)ポリメラーゼが入っているエッペンドルフ管にピペットで移され、エッペンドルフ管の内容物は、2700rpmで2〜4秒撹拌混合(vortex-mix)された。次に、エッペンドルフ管はスペクトラフュージ遠心分離機に挿入され、エッペンドルフ管の内容物は約5から10秒遠心分離された。
【0065】
そして、エッペンドルフ管は70℃の水槽に戻される。30秒未満の持続時間の間、エッペンドルフ管は水槽から出さなければならない。
【0066】
予熱された1mlの注射器にTaq(登録商標)/アガロース溶液が注入される。注射器は、注射器とその内容物を約65℃に維持する注射器ヒーター(図示しない)に挿入される。注射器は注入口(inlet)5に接続される。3本の10mlの注射器に鉱物油(シグマ−アルドリッチ社、ギリンガム、ドーセット、英国)が注入される。3本の注射器の各々が、キャリア流体注入口6の1つ及び噴出注入口10に接続される。自動注射器駆動(automated syringe driver)により各注射器から液体が放出される。キャリア流体32はキャリア流体注入口6へ、第1及び第2キャリア流体導管3、4へ、毎時10mlの流量で押し流される。アガロース及びTaq(登録商標)の水溶液31は試料導管2へ毎時1.3mlの流量で押し流される。噴出流体(flushing fluid)は噴出導管(flushing conduit)8へ毎時15mlの流量で押し流される。
【0067】
図3a、3bを参照すると、キャリア流体32と水溶液31とが接合部14で合流すると、水溶液の首のある小滴形状(necked-droplet shape)の形成が見られる。首のある小滴形状が下流に移動するにつれて、首が狭くなり、分裂して分離された水滴となるのが見られる。接合部より下流で分離された小滴の形成が見られる。拡大部33が球形小滴の形成を促進しているようである。
【0068】
図1を参照すると、球形小滴の形成を促進するために分割流れ導管7の領域18が加熱される。金属プレート17の底面全体に氷で冷やされた水を流すことにより、分割流れ導管7の領域19は冷却される。
【0069】
小滴は冷却された領域19を通過し、冷やされ、固形ビーズを形成する。キャリア流体32により、固形ビーズは装置出口9内を通って装置1の外に運ばれる。
【0070】
装置1は、固形ビーズによる装置出口9の遮断を阻止する噴出配置(flushing arrangement)を備えている。図1Bは、装置1の装置出口9の周囲領域の平面図である。図1及び図1Bを参照すれば、固形ビーズは分割流れ導管7に沿って装置出口9に向かって通過する。噴出流体(この場合、キャリア流体32と同じである)は、噴出注入口10を介して注射器(図示しない)から導管8へ流れる。導管8は、噴出導管8a、8bに噴出流体を供給する。噴出導管8a、8bは、装置出口9の近傍にある噴出接合部11で分割流れ導管7に合流する。比較的高い流量で、分割流れ導管7の装置出口9のすぐ上流において、噴出流体を導入することは、固形ビーズを装置出口9の外に押し流し、装置出口9の遮断を阻止する。
【0071】
そして、固形ビーズは適切に保管された。
【実施例2】
【0072】
実施例1の方法が繰り返され、0.1単位のTaq(登録商標)ポリメラーゼをそれぞれ含有するビーズが製造された。1つのビーズが、PCR”ストリップ(strip)”のウェル(well)の各々に置かれ、各々のウェルに5μlのPCR”マスターミックス(master mix)”を加えた。マスターミックスは、キアゲン緩衝(Qiagen buffer)、MgCl溶液、dNTPミックス(dNTP mix)、水、PBR322プラスミド(plasmid)、Sal1及びBamH1プライマーを含有していた。この処理は、5つのウェルすべてに反復された。陽性標準試料(positive control sample)は、ビーズを含む試料と同時に投入された。陽性標準は、PCRマスターミックスにTaq(登録商標)ポリメラーゼ溶液(Taq(登録商標)ポリメラーゼを含有するビーズと対照に)を加えることにより作られた。ウェルはキャップで密閉されてMJリサーチ(MJ Research)社のサーマルサイクラー(thermal cycler)に置かれ、サーマルサイクリングシーケンス(thermal cycling sequence)が実行された。使用されたサーマルサイクリングシーケンスは、
(i) 初期変性 − 94℃ 5分
(ii) 30サイクルの3ステップサイクリング。各サイクルは次のステップを含む:
変性 − 94℃ − 30秒
アニーリング − 55℃ − 30秒
伸長 − 72℃ − 1分
(iii) 最終伸長 − 72℃ − 10分
【0073】
電気泳動槽内のアガロースゲル上で、サーモEC(Thermo EC)社の電源を用いて、PCR生成物の電気泳動を行なった。紫外線透過照射器を用いて、生成物はゲル上に視覚化された。
【0074】
電気泳動は、PCRウェルから摘出された5つの試料のそれぞれが陽性標準と同じ電気泳動バンドを示し、効果的な増幅が起こったことを示した。
【0075】
この実施例は、本発明のビーズを使用して、非常に小さい反応容積が使用できることを明らかにしている。
【実施例3】
【0076】
実施例1及び2に述べた方法で融解可能なビーズが製造され、上述した陽性標準試料と並行して上述したPCR反応が行なわれた。図4を参照すると、”L”は陽性標準試料を示し、”LAD”は2−log DNAラダー参照試料(2-log DNA ladder reference sample)を示し、”B1”及び”B2”は本発明に従う融解可能ビーズを使用して作られた2つの試料を示す。ビーズは1つの電気泳動バンドのみを与えるPCR生成物を作り、1つだけの増幅生成物が生成されたことを示していることは明らかである。陽性標準試料は少なくとも3つの電気泳動バンドを示し、PCR反応により少なくとも3つの増幅生成物が生成されたことを示している。本発明のビーズを使用して得られた、増大した増幅の特異性は、ビーズが90℃以上で溶解してTaq(登録商標)ポリメラーゼが放出されるまで、TaqがPCRマスターミックス内の試薬から分離されていたことによると考えられる。
【実施例4】
【0077】
実施例1〜3は、どのようにしてポリメラーゼがビーズ内に包括(entrap)されたかを示す。また、本発明のビーズ内に1又は複数のプライマーを取り込むこともできる。
【0078】
150μlのSal1プライマー溶液(ストック濃度=10ピコモル/μl)と150μlのBAMH1プライマー溶液(ストック濃度=10ピコモル/μl)を、300μlの溶融(molten)アガロース溶液の2重量%溶液に加えた。これで1重量%のアガロースと各プライマー1500pmolとを含有する溶液が生成された。
【0079】
図1、1B、2、3A、3Bを参照して説明された装置を用いて、プライマーを含有するビーズが製造された。試料導管2に供給されるアガロース/プライマー溶液の流量は、毎時1.86mlであった。第1及び第2キャリア流体導管3、4に供給されるキャリア流体の流量は、毎時20mlであった。噴出導管8a、8bに供給される噴出流体の流量は、毎時15mlであった。
【0080】
固形ビーズは集められ、Motic Images Plus 2.0ソフトウェアと組み合わたMotic社の顕微鏡を用いて、ビーズのサイズが測定された。製造された球形ビーズは、1230±30μmの直径を有すると判明した。各ビーズは3.08pmolの各プライマーを含有していることが計算できる。
【0081】
プライマーを含有するビーズは、上記実施例2で説明した反応と同様なPCR反応に使用される。所望の増幅生成物が生成され、電気泳動像により確認された。
【実施例5】
【0082】
Qiagen SYBR Green PCRマスターミックスをビーズに取り込むために、実施例1及び2の方法が修正された。形成されたビーズは公称1000μmの直径を有する。したがって、約526nlのマスターミックスを含有する。22マスターミックスを含有するビーズからなる試料及びpBR3222テンプレートに対して、上記実施例2で説明したサーマルサイクリングが実行された。マスターミックス溶液を含有する陽性標準試料に対して、同様のサーマルサイクリングの体制が実行された。電気泳動は、ビーズが陽性標準試料と等価な増幅を起こしたことを示した。
【実施例6】
【0083】
実施例2で説明したようにTaq(登録商標)ポリメラーゼを含有するビーズが形成された。ドナーからのcDNAの試料、ベータ−アクチン遺伝子の増幅のためにプライマーを含有する、ヒトのベータ−アクチン遺伝子(beta-actin gene)の増幅に必要なすべての試薬を含有するPCRマスターミックスに、3個のビーズ(合計0.5単位のTaq(登録商標)ポリメラーゼ)が加えられた。サーマルサイクリングの後、電気泳動は、PCR反応が成功したことを示した。このことは、本発明のビーズはcDNAからヒト遺伝子を増幅するために使用できることを示す。
【実施例7】
【0084】
実施例2で説明したようにTaq(登録商標)ポリメラーゼを含有するビーズが形成された。1ステップ逆転写酵素(one-step reverse transcriptase)PCR反応が以下に説明するように実行された。polyTプライマーが70度に加熱してテンプレートRNAにアニールされ、0℃に急速冷却(crash-cooling)された。そして、5μlのプライムド(primed)RNAが、本発明に従うビーズを含有するRT−PCRマスターミックスに加えられた。ビーズはTaq(登録商標)ポリメラーゼ)を含有する。反応混合物(reaction mixture)は25℃で5分間維持され、42℃に加熱された。反応混合物はこの温度で60分間維持され、RNAテンプレートからcDNAの逆転写が容易となった。次に、試料が70℃に加熱され、この温度で15分間維持された。この温度で、RNA−cDNA二重鎖(duplex)は溶解し、cDNAの二重鎖が形成される。各サイクルが94℃、30秒の変性、60℃、30秒のアニーリング、72℃、1分の伸長のステップを含有する、30サイクルの3ステップサイクリングを行なうことにより、cDNAが増幅される。72℃、5分の最終伸長のステップが実行された。同時に陽性標準遺伝子(positive control gene)が陽性標準プライマー(positive control primer)を用いて増幅された。本発明に従うビーズを含有する試料は所望の増幅生成物を生成したことが電気泳動で確認された。ミスプライミング(mispriming)によると思われる、いくつかの大きい分子量のDNAバンドが観測された。
【0085】
低表面エネルギーのポリマーの、この場合ポリテトラフルオロエチレンのブロックから導管を機械加工することにより、図1、2、3a、3bの装置のすべての導管は製造された。
【0086】
本発明のビーズの製造方法は、上述した装置以外の装置を用いて実行できることは、当業者にとって容易に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な複数の球形ビーズを製造する方法であって、該方法は、
(i) ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する物質とを供給すること;
(ii) 試料導管と、不混和液体(immiscible liquid)が流れる第1キャリア流体導管とを備え、前記試料導管と前記第1キャリア流体導管とは接合部で合流している反応装置を供給すること;
(iii) ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを密な混合物(intimate admixture)で含有する液体を形成するために、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬と、固形ビーズ(solid beads)の形成を促進する前記物質とを加熱すること;
(iv) 前記試料導管内に前記液体を、前記第1キャリア流体導管にキャリア流体を、それぞれ通過させて、前記接合部で又は前記接合部の下流で、小滴の形成をもたらすこと;
(v) 前記小滴を冷却することにより、固形ビーズの形成をもたらすこと;
を含有する。
【請求項2】
前記装置は、前記接合部から遠ざかる分割流れ導管(segmented flow conduit)を備え、液体ビーズ(liquid beads)が前記分割流れ導管の中で冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装置は、マイクロ流体装置(microfluidic device)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記装置は、前記接合部で前記試料導管と合流する第2キャリア流体導管を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記分割流れ導管は、前記接合部に結合された近位部(proximal portion)と、前記接合部から下流にある遠位部(distal portion)とを備える、請求項2又は、請求項2に従属する請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応装置は、
(a) 冷却時に融解可能なビーズを形成する第1液体が流れる試料導管(sample conduit)と、
(b) 前記試料導管と第1キャリア流体導管とは接合部で合流している、キャリア流体が流れる第1キャリア流体導管(carrier fluid conduit)と、
(c) 前記接合部から遠ざかる分割流れ導管(segmented flow conduit)であって、
前記接合部に結合された近位部(proximal portion)と、前記接合部から下流にある遠位部(distal portion)とを備え、前記接合部で又は前記接合部の近傍で、前記反応装置は使用時に前記キャリア流体内の前記第1液体のセグメントの形成をもたらす、流れの狭窄(constriction)又は不連続(discontinuity)を備える、分割流れ導管と、
(d) 前記試料導管と前記第1キャリア流体導管と、前記接合部と、選択的に前記分割流れ導管の近位部とを加熱するヒーターと、
(e) 前記第1液体のセグメントの固形化を促進するために、前記分割流れ導管の遠位部を冷却するクーラーとを含む、マイクロ流体装置である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬は、標識されていない(unlabelled)オリゴヌクレオチド、標識されている(labelled)オリゴヌクレオチド、標識されているデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されているオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないオキシヌクレオシド三リン酸、ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ポリヌクレオチド、使用時に緩衝効果(buffering effect)をもたらす染料(stain)又は色素(dye)及び組成物(compound)のうちの1又は複数を含有している、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(iii)で形成される液体は水溶性である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア流体は、水性混合物(aqueous mixture)、溶液(solution)又は懸濁液(suspension)と不混和(fluid immiscible)である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
固形ビーズの形成を促進する前記物質は、1又は複数のワックス又はゲル化剤を含有している前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iii)で形成される液体は、0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する前記物質を含有している、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な複数の球形ビーズを製造する方法であって、
前記ビーズは50から2500ミクロンまでの平均直径を有し、前記複数のビーズの直径の標準偏差は前記複数のビーズの平均直径の5%を超えず、前記ビーズの各々はポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬を含有している、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
融解可能な球形ビーズを製造するマイクロ流体反応装置であって、前記反応装置は
(i) 冷却時に融解可能なビーズを形成する第1液体が流れる試料導管(sample conduit)と、
(ii) 前記試料導管と第1キャリア流体導管とは接合部で合流している、キャリア流体が流れる第1キャリア流体導管(carrier fluid conduit)と、
(iii) 前記接合部から遠ざかる分割流れ導管(segmented flow conduit)であって、
前記接合部に結合された近位部(proximal portion)と、前記接合部から下流にある遠位部(distal portion)とを備え、前記接合部で又は前記接合部の近傍で、前記反応装置は使用時に前記キャリア流体内の前記第1液体のセグメントの形成をもたらす、流れの狭窄(constriction)又は不連続(discontinuity)を備える、分割流れ導管と、
(iv) 前記試料導管と前記第1キャリア流体導管と、前記接合部と、選択的に前記試料導管の近位部とを加熱するヒーターと、
(v) 前記第1液体のセグメントの固形化を促進するために、前記分割流れ導管の遠位部を冷却するクーラーとを含む。
【請求項14】
固形ビーズによる出口の遮断を阻止するため、噴出液(flushing liquid)を装置出口に供給する、1又は複数の噴出導管(flushing conduit)を備える請求項13に記載の反応装置。
【請求項15】
1又は複数の前記噴出導管は、前記装置出口の上流で前記分割流れ導管に合流している請求項14に記載の反応装置。
【請求項16】
1又は複数の前記噴出導管は、前記装置出口の近傍で前記分割流れ導管に合流している請求項15に記載の反応装置。
【請求項17】
前記反応装置は、噴出接合部(flushing junction)で前記分割流れ導管に合流する、2つの噴出導管を備える請求項14乃至16のいずれかに記載の反応装置。
【請求項18】
噴出導管は、液体を1又は複数の噴出導管に導入する、噴出注入口(flush inlet)と流体的に連通(in fluid communication)しており、前記装置は1つのみの噴出注入口を備える請求項17記載の反応装置。
【請求項19】
前記接合部で、前記試料導管と第1キャリア流体導管とに合流する第2キャリア流体導管を更に備える請求項13乃至18のいずれかに記載の反応装置。
【請求項20】
前記装置は、前記試料導管と前記第1キャリア流体導管と前記接合部と選択的に前記分割流れ導管の近位部を加熱する、加熱プレートを備える請求項13乃至19のいずれかに記載の反応装置。
【請求項21】
前記装置は、前記分割流れ導管の遠位部を冷却する、冷却プレートを備える請求項13乃至20のいずれかに記載の反応装置。
【請求項22】
前記装置は、前記試料導管と前記第1キャリア流体導管と前記接合部と選択的に前記分割流れ導管の近位部を加熱する、加熱プレートと、前記分割流れ導管の遠位部を冷却する、冷却プレートと備え、前記加熱プレートと前記冷却プレートとの間に断熱間隙(insulating gap)がある、請求項13乃至21のいずれかに記載の反応装置。
【請求項23】
前記クーラーと熱的に連通している前記分割流れ導管の長さは、前記加熱プレートと熱的に連通している前記分割流れ導管の長さの2から5倍まである、請求項13乃至22のいずれかに記載の反応装置。
【請求項24】
前記分割流れ導管は、前記接合部から下流に段差(step)を備え、前記段差は、前記分割流れ導管が前記接合部に合流する点から1aから5aまでの距離だけ下流に位置し、”a”は、前記段差よりすぐ上流での前記分割流れ導管の深さである請求項13乃至23のいずれかに記載の反応装置。
【請求項25】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な複数の球形ビーズであって、前記ビーズは50から2500ミクロンまでの平均直径を有し、前記複数のビーズの直径の標準偏差は前記複数のビーズの平均直径の5%を超えず、前記ビーズの各々はポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬を含有している。
【請求項26】
ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、前記1又は複数の試薬は、標識されていない(unlabelled)オリゴヌクレオチド、標識されている(labelled)オリゴヌクレオチド、標識されているデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないデオキシヌクレオシド三リン酸、標識されているオキシヌクレオシド三リン酸、標識されていないオキシヌクレオシド三リン酸、ポリヌクレオチドの増幅及び/又は合成のための酵素、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ポリヌクレオチド、使用時に緩衝効果(buffering effect)をもたらす染料(stain)又は色素(dye)及び組成物(compound)のうちの1又は複数を含有している請求項25に記載の融解可能な複数の球形ビーズ。
【請求項27】
前記ビーズは固形ビーズの形成を促進する物質を含有し、固形ビーズの形成を促進する前記物質は、1又は複数のワックス又はゲル化剤を含有している請求項25又は26に記載の融解可能な複数の球形ビーズ。
【請求項28】
前記ビーズは、0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する前記物質を含有している請求項25乃至27のいずれかに記載の融解可能な複数の球形ビーズ。
【請求項29】
前記ビーズの平均直径は、800から1500ミクロンまでである請求項25乃至28のいずれかに記載の複数のビーズ。
【請求項30】
前記複数のビーズの直径の標準偏差は、前記複数のビーズの平均直径の3%を超えない請求項25乃至29のいずれかに記載の複数のビーズ。
【請求項31】
複数の反応管(reaction vessels)であって、各反応管は、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、融解可能な1又は複数の球形ビーズを収納しており、前記複数の反応管内の前記ビーズは50から2500ミクロンまでの平均直径を有し、前記複数の反応管内の前記ビーズの直径の標準偏差は前記平均直径の5%を超えず、前記ビーズの各々はポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬を含有している。
【請求項32】
融解可能なビーズの形成のための水性組成物で、前記組成物は、固形ビーズの形成を促進する物質と、ポリヌクレオチドの増幅反応及び/又は合成反応に使用される、1又は複数の試薬とを含有し、前記組成物は0.1から10重量%までの固形ビーズの形成を促進する前記物質を含有する。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505391(P2010−505391A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529775(P2009−529775)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003734
【国際公開番号】WO2008/040959
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509071552)キュー チップ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】