説明

ポリビニルアルコール多孔質体およびその製造方法

【課題】主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法の提供。
【解決手段】加熱しながらポリビニルアルコール水溶液に水と混和性の第1の溶媒を加えてポリビニルアルコール溶液を得、前記ポリビニルアルコール溶液を冷却して析出した成形体を得、前記成形体を第2の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる水および/または第1の溶媒を前記第2の溶媒と置換させ、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を得る工程を含み、前記水と第1の溶媒の体積割合(第1の溶媒/水)が、0.5〜1.1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体は分離剤、吸着剤等として多方面で多く用いられている。無機系多孔質体は、シリカ系多孔質体に関して膨大な研究がなされている。シリカ系多孔質体の中でも多孔体シリカ粒子を作成する技術が一般的である。この多孔体シリカ粒子は、分析用材料として実用化されている。一方、高分子系多孔質体としては、ビニルモノマーの懸濁重合時に適切な希釈剤を加えて多孔質体粒子を得る技術が知られている。この高分子系多孔質体は、高分子材料の軽量性という特徴を活かして、各種吸着剤や分離剤として実用化されている。
【0003】
連続した骨格と空隙が互いに絡み合った構造を有する一塊の材料は、モノリスと呼ばれる。シリカ系多孔質体には、厚みのある成形体であるモノリスを作成する技術も知られている。高分子系多孔質体としては、ビニルポリマーのモノリスについては、重合法による合成技術が報告されているが、構造制御が容易ではないため、実用化に至っていない。
【0004】
高分子材料として、ポリビニルアルコール(以下、PVAと呼ぶことがある)は、水溶性かつ親水性ポリマーの一つとして知られている。このPVAは、一般に、繊維、フィルム、紙加工剤、接着剤、保護コロイド等の用途において用いられている。このPVAを原料とする多孔質体は、吸水性および保水性が高く、かつ、湿潤時に柔軟性に優れることから、化粧用パフ、吸水マット、浴用スポンジ、食器洗い具、研磨剤、吸水スポンジ、菌や微生物等の培養担体、活性汚泥等の菌や微生物の保持担体等として、広く使用されている。しかしながら、PVAを原料とする多孔質体(ポリビニルアセタール系多孔質体)を製造するためには、PVA、気孔形成材、アルデヒド類、酸類および水からなる反応液に不溶性もしくは難溶性ポリエーテルポリオール類を添加混合し、この反応液を架橋反応させた後、気孔形成材を除去する必要があり、煩雑な操作を要するために製造コストがかさんでいた(例えば、特許文献1および2参照)。また、ポリビニルアルコールに架橋剤としてホウ酸を添加した混合液を架橋させ、PVAを原料とする多孔質体を製造する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような製造方法においては、毒性のあるホウ酸を大量に用いる必要があり、製造に3日という長い時間を要し、さらに操作が煩雑であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−211918号公報
【特許文献2】特開2008−274018号公報
【特許文献3】特開2001−98082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法であって、簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法であって、
加熱しながらポリビニルアルコール水溶液に水と混和性の第1の溶媒を加えてポリビニルアルコール溶液を得、
前記ポリビニルアルコール溶液を冷却して析出した成形体を得、
前記成形体を第2の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる水および/または第1の溶媒を前記第2の溶媒と置換させ、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記水と第1の溶媒の体積割合(第1の溶媒/水)が、0.5〜1.1である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡便な、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法を提供することが可能である。また、本発明の製造方法により、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図4(a)】図4(a)は、実施例4で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図4(b)】図4(b)は、実施例4で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図5(a)】図5(a)は、実施例5で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図5(b)】図5(b)は、実施例5で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図6】図6は、実施例6で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図7】図7は、実施例7で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【図8】図8は、実施例8で得られたPVA多孔質体のSEM写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多孔質体の形状は限定されないが、例えば、膜状、立方体状、直方体状、円柱状、卵形状等が挙げられる。また、この多孔質体の縦横高さの3つの方向のうち、最も短いものを便宜的に厚みと呼ぶ。本発明の多孔質体の厚みは限定されないが、例えば10μm以上であり、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは1mm以上である。
【0011】
本発明において、ポリビニルアルコールは分子量は限定されないが、分子量が、例えば、5千〜500万であり、好ましくは1万〜400万であり、より好ましくは1万〜300万である。また、重合度は、例えば、100〜10万、好ましくは200〜8万、より好ましくは200〜6万である。また、ポリビニルアルコールは、けん化度が、例えば60モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上である。
【0012】
本発明における製造方法で用いるポリビニルアルコール水溶液は、従来公知の方法により、ポリビニルアルコールを水に溶解させて得ることができる。例えば、ポリビニルアルコールを水に溶解させる際、物理的刺激を与えて行ってもよい。その物理的刺激としては、例えば、攪拌、振とう、超音波処理等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールを水に溶解させる際、加熱してもよい。この加熱温度は、例えば、30℃〜100℃であり、好ましくは、40℃〜100℃である。
【0013】
次に、加熱しながら前記ポリビニルアルコール水溶液に水と混和性の第1の溶媒を加えてポリビニルアルコール溶液を得る。前記ポリビニルアルコール水溶液に前記第1の溶媒を加える際の加熱温度は、例えば、30℃〜95℃であり、好ましくは、40℃〜90℃である。
【0014】
前記第1の溶媒は、水と混和性であり、かつ水以外の溶媒であれば、限定されない。前記第1の溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサンおよびアセトニトリルが挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法においては、前記ポリビニルアルコール溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、例えば、10〜300mg/ml、好ましくは15〜200mg/ml、より好ましくは20〜160mg/mlである。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記水と前記第1の溶媒の体積割合(前記第1の溶媒/水)は、0.5〜1.1であり、好ましくは0.6〜1.05、より好ましくは0.65〜1.0である。
【0017】
本発明における製造方法においては、次に、前記ポリビニルアルコール溶液を冷却して析出した成形体を得る。この冷却温度は、例えば、−196℃〜40℃、好ましくは−196℃〜35℃、より好ましくは−196℃〜30℃である。冷却時間は、好ましくは10秒〜48時間であり、より好ましくは30秒〜24時間である。なお、このポリビニルアルコール溶液を冷却する際、ポリビニルアルコール溶液を容器に入れて冷却してもよい。また、このポリビニルアルコール溶液を冷却する際、グラビアコーター、バーコーター、バードフィルムアプリケーター等の塗布装置を用いて基板上に塗布し、それを冷却してもよい。基板上にポリビニルアルコール溶液を塗布して冷却する場合、膜状の多孔質体を最終的に得ることが可能である。
【0018】
本発明における製造方法においては、次に、前記成形体を第2の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる水および/または前記第1の溶媒を前記第2の溶媒と置換させ、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を得る。
【0019】
前記第2の溶媒は、水、低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサンおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上が好ましく、水、アセトンがより好ましい。前記低級アルコールとしては、炭素数1〜6を有する低級アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノールが挙げられる。なお、前記第2の溶媒溶媒が水である場合、前記成形体中に含まれる水および/または前記第1の溶媒を前記溶媒と置換させる工程は、前記成形体中に含まれる前記第1の溶媒を前記第2の溶媒(水)と置換させる工程である。また、前記第2の溶媒が第1の溶媒と同一である場合、前記成形体中に含まれる水および/または前記第1の溶媒を前記第2の溶媒と置換させる工程は、前記成形体中に含まれる水を前記第2の溶媒と置換させる工程である。
【0020】
前記溶媒と置換させた後、得られた成形体を乾燥して多孔質体を得てもよい。前記乾燥は、例えば0℃〜90℃、好ましくは10℃〜80℃で行う。また、前記乾燥は、例えば減圧〜常圧、好ましくは減圧で行う。
【0021】
本発明の多孔質体は、前記のようにポリビニルアルコールを主成分として含む。また、本発明の多孔質体は、前記のようにポリビニルアルコールを主成分として含み、孔径は、例えば0.05μm〜30μmであり、骨格径は、例えば0.05μm〜10μmである。また、PVAの分子量が1万〜300万であり、PVAのけん化度が85モル%以上であり、第1溶媒がアセトンであり、水と第1溶媒の割合が0.65〜1であり、PVA溶液におけるPVA濃度が20〜160mg/mlであり、第2の溶媒が水またはアセトンである、本発明の主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体の製造方法により得られる場合、前記多孔質体の前記孔の孔径は、例えば0.2μm〜10.0μmであり、骨格径は、例えば0.1μm〜4μmである。また、本発明の多孔質体は、その厚みは限定されないが、例えば10μm以上である。また、本発明の多孔質体の比表面積は、例えば、3〜900m2/gであり、好ましくは5〜800m2/gである。なお、比表面積は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。従って、このような多孔質体は、例えばフィルター、吸着材等として、用いることができる。
【0022】
本発明において、「主成分」とは、原料であるポリマー成分全体に対して、ポリビニルアルコールが例えば55重量%〜100重量%、好ましくは65重量%〜100重量%、より好ましくは80重量%〜100重量%含まれることを意味する。
【0023】
本発明はまた、主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体の製造方法であって、本発明の製造方法により得られた主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を、架橋剤と反応させ、前記多孔質体を架橋する工程を含む。
【0024】
前記架橋剤としては、ポリビニルアルコールを架橋する剤であれば、限定されない。前記架橋剤としては、例えば、2以上のカルボキシル基有するポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物、2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、ポリアルデヒド、モノアルデヒド、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。前記ポリカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。前記ポリカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。前記チタン化合物としては、乳酸チタン、乳酸チタンアンモニウム、チタントリエタノールアミネート、四塩化チタン等が挙げられる。前記ジルコニウム化合物としては、硝酸ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル等が挙げられる。前記架橋剤としてポリカルボン酸を用いる場合、前記架橋工程において脱水剤をさらに用いるのが好ましい。前記脱水剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられる。前記ポリアルデヒドとしては、グルタルアルデヒド等の脂肪族ポリアルデヒド類が挙げられる。前記モノアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクリルアルデヒド等の脂肪族モノアルデヒド類、ベンズアルデヒド等の芳香族モノアルデヒド等が挙げられる。
【0025】
前記架橋剤と共に、架橋触媒を用いてもよい。前記架橋触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸およびマレイン酸等の有機酸が挙げられる。
【0026】
本発明の主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体の孔径は、例えば0.05μm〜30μmであり、骨格径は、例えば0.05μm〜10μmである。また、PVAの分子量が1万〜300万であり、PVAのけん化度が85モル%以上であり、第1溶媒がアセトンであり、水と第1溶媒の割合が0.65〜1であり、PVA溶液におけるPVA濃度が20〜160mg/mlであり、第2の溶媒が水またはアセトンであり、架橋剤がポリアルデヒドである、本発明の主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体の製造方法により得られる場合、孔径は、例えば0.2μm〜10.0μmであり、骨格径は、例えば0.1μm〜4μmである。また、本発明の主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体は、その厚みは限定されないが、例えば10μm以上である。従って、このような架橋された多孔質体は、例えばフィルター、吸着材等として、用いることができる。
【0027】
本発明はまた、半金属を担持する、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法であって、本発明の製造方法により得られた主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を、半金属を含む化合物の溶液中に浸漬させ、前記多孔質体に半金属を担持させる工程を含む。
【0028】
前記半金属を含む化合物としては、ホウ酸、メタホウ酸、ポリホウ酸等が挙げられる。
【0029】
前記多孔質体に半金属を担持させる工程は、前記のように、前記半金属を含む化合物の溶液中に、前記主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を浸漬させることにより行う。前記半金属を含む化合物の溶液の溶媒としては、例えば、水、アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。前記浸漬は、例えば、20℃〜80℃、好ましくは、20℃〜70℃で行うことができる。
【0030】
本発明の半金属を担持する、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体は、例えばフィルター、吸着材等として、用いることができる。
【0031】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を用いる。
PVA:ポリビニルアルコール
SEM:走査電子顕微鏡
【0032】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
SEM:日立S−3000N(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
イオンスパッタ:日立E−1010
比表面積(BET法):マイクロメリティックス トライスター3000(株式会社島津製作所製)
本明細書において孔径および骨格径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から測定した孔径および骨格径の最小値および最大値を記載した。
【実施例1】
【0033】
5ccのサンプル管にPVA(重合度2,000、けん化度98モル%、和光純薬製)を入れ、水を105mg/mLとなるように加えて95℃で溶解させた。その溶液を50℃に冷却し、そこへ、アセトンを添加して、アセトン/水の体積比が0.75であり、かつ、最終的なPVAポリマー濃度が40mg/mlのPVA溶液を調製した。このPVA溶液の入ったサンプル管を20℃で12時間静置した。この冷却時の間に相分離が起こり、円柱状の成形体が得られた。24時間中にアセトンを3回交換して混合溶媒中の水をアセトンに置換した。その後24時間常温で減圧乾燥を行い、アセトンを除去して多孔質体を得た(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状)。
【0034】
<SEM観察>
15.0mAの放電電流で150sスパッタリングを行った後、15.0kVから25.0kVの印加電圧でSEM観察を行った。
【0035】
得られた多孔質体のSEM写真を図1に示す。図1に示すように、多孔質体は、孔径が2.0〜8.0μm、骨格径が2.0〜4.0μmの多孔質体であることが確認できた。
【実施例2】
【0036】
最終的なPVAポリマー濃度を、60mg/mlに変更した以外は、実施例1と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は1.0〜4.0μm、骨格径は1.0〜2.0μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図2に示す。
【0037】
<BET比表面積測定>
サンプル脱ガス装置を用い、窒素気流下60℃で40分間脱気した後、BET3点法による比表面積測定を行った。得られたBET法による比表面積値は、1.1×1022/gであった。この値から十分に大きい比表面積を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例3】
【0038】
最終的なPVAポリマー濃度を、80mg/mlに変更した以外は、実施例1と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は1.4〜5.0μm、骨格径は0.2〜1.0μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図3に示す。
【実施例4】
【0039】
PVA(重合度2,000、けん化度98モル%、和光純薬株式会社製)を、PVA(分子量13,000〜23,000、けん化度87〜89モル%以上、アルドリッチ社製)に、かつ、アセトン/水の体積比を0.75から0.85へ変更した以外は、実施例2と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は2.0〜8.0μm、骨格径は2.0〜4.0μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図4(a)と図4(b)に示す。
【実施例5】
【0040】
PVA(重合度2,000、けん化度98モル%、和光純薬株式会社製)を、PVA(分子量146,000〜186,000、けん化度99モル%以上、アルドリッチ社製)に変更した以外は、実施例2と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は2.0〜8.0μm、骨格径は1.2〜3.0μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図5(a)と図5(b)に示す。
【実施例6】
【0041】
PVA溶液の入ったサンプル管の静置温度を20℃から−18℃に、かつ、静置時間を12時間から6時間へ変更した以外は、実施例2と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は1.0〜4.0μm、骨格径は0.6〜1.2μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図6に示す。
【実施例7】
【0042】
PVA溶液の入ったサンプル管の静置温度を20℃から−196℃に、かつ、静置時間を12時間から1分へ変更した以外は、実施例2と同一にして多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は0.4〜2.0μm、骨格径は0.4〜0.6μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図7に示す。
【実施例8】
【0043】
実施例2において、相分離後に得られた円柱状の成形体を24時間中に水を3回交換して混合溶媒中のアセトンを水に置換した。この成形体を、1.0M塩酸を含む25重量%の架橋剤水溶液中に浸漬させ、バイオシェイカー中で20℃で3時間振とうさせた。前記溶液から成形体を取り出し、水洗した後、アセトンに浸漬させた(アセトン置換)。その成形体をアセトンから取り出し、常温真空乾燥させて、架橋された多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は1.0〜4.0μm、骨格径は1.0〜2.0μm)を得た。得られた多孔質体のSEM写真を図8)に示す。前記架橋剤としては、グルタルアルデヒド(和光純薬株式会社製)を用いた。
【0044】
得られた多孔質体を水に含浸したところ、外観に変化は見られなかった。一方、実施例2で得られた多孔質体(架橋剤で未処理)を水へ含浸すると膨張する。この相違点から判断して、実施例8で得られた多孔質体は、架橋されていることが確認できた。
【実施例9】
【0045】
実施例2において得られた多孔質体(寸法:直径10mm、厚み6mmの略円柱状、孔径は1.0〜4.0μm、骨格径は1.0〜2.0μm、0.16g)を、ホウ素溶液(10mL)中に浸漬させ、バイオシェイカー中で室温で4時間振とうさせた。前記ホウ素溶液は、ホウ素標準液(1000ppm、ホウ酸水溶液、和光純薬工業株式会社製)を水で4倍に希釈して調製した。前記溶液から多孔質体を取り出し、水洗した後、常温真空乾燥させて、ホウ素処理した多孔質体(0.21g)を得た。なお、前記ホウ素処理した多孔質体は、原料と比較して重量が増加したことから、ホウ素が多孔質体内部に取り込まれたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法により得られたポリビニルアルコール多孔質体は、フィルター、吸着材等への利用も期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体の製造方法であって、
加熱しながらポリビニルアルコール水溶液に水と混和性の第1の溶媒を加えてポリビニルアルコール溶液を得、
前記ポリビニルアルコール溶液を冷却して析出した成形体を得、
前記成形体を第2の溶媒に浸漬させて、前記成形体中に含まれる水および/または第1の溶媒を前記第2の溶媒と置換させ、主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記水と第1の溶媒の体積割合(第1の溶媒/水)が、0.5〜1.1である製造方法。
【請求項2】
前記第1の溶媒が、アセトンである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール溶液におけるポリビニルアルコールの濃度が、10〜300mg/mlである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
主成分としてポリビニルアルコールを含む架橋された多孔質体の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質体を、架橋剤と反応させ、前記多孔質体を架橋する工程を含む製造方法。
【請求項5】
主成分としてポリビニルアルコールを含む多孔質体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251057(P2012−251057A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123811(P2011−123811)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】