説明

ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の揮発分抑制方法

【課題】ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を成形する際の揮発分の発生を抑制する方法を提供すること。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対し、
ポリスチレン系樹脂5〜40質量部、
及びDBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラック5〜40質量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法であって、
前記熱可塑性樹脂組成物中の鉱油の含有量を0.1質量%未満とし、
かつ、前記カーボンブラック中に、DBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックを前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し0.5質量部以上となるように含有させる熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品包装用成型体に好適なポリフェニレンエーテル樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法に関する。本発明の揮発物発生抑制方法は特に、微細な構造部を有するIC、LED等の電子部品包装用のキャリアテープ、マガジン、トレイ、バッグ等の成形体を射出成形により製造する際に、微細空間内のガスの断熱圧縮による部分的な温度上昇が生じた場合に揮発物の発生による成形体の汚染や着色を防止するのに適する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、機械的性質、耐熱性、寸法安定性などの諸特性に優れた熱可塑性樹脂であり、IC、LED等の電子部品包装用のキャリアテープ、マガジン、トレイ、バッグ等の成形体に使用される。このポリフェニレンエーテル樹脂は単独では加工性が悪いため、相溶性のポリスチレン系樹脂をポリフェニレンエーテル樹脂に加えて流動性を改良することにより加工性を改良することが一般に行われている。他方、電子部品包装用成形体として使用する際は、静電気による電子部品の破損を防止する目的で、導電性カーボンブラックや導電性カーボンファイバーなどの導電性物質を混合することにより、ポリフェニレンエーテル樹脂に導電性が付与される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-162961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品包装用成形体は一般に射出成形により製造されるが、高耐熱性のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の射出成形温度は、一般に300℃〜350℃と高く、成形時に樹脂の分解物や揮発成分に起因するガスの発生が多くなる。
特に近年は電子部品の小型化によって電子部品包装用成形体も小型化し、構造も微細化する傾向にある。これに伴い、金型も小型化になり、構造も微細になっている。このような小型化・微細化した金型にポリフェニレンエーテル樹脂を充填して成形すると、金型の微細部分においてガスが断熱圧縮を起こし、金型中の樹脂が部分的にさらに高温になる。そしてこのように高温になることで、樹脂の分解物や揮発成分に起因するガスの発生がより促進され、発生したガスにより金型や製品が汚染される問題が生じる。
本発明は、このような従来技術における問題を解決することを課題とする。すなわち本発明は、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を成形する際の揮発分の発生を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、主に成型時の流動性を向上することを目的として、1〜5質量%程度の量の鉱油がポリスチレン系樹脂に添加されているのが一般的であるところ、ポリスチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物中の鉱油の含有量を低減することにより、揮発分の発生を抑制できることを見出した。
すなわち、本発明により、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対し、
ポリスチレン系樹脂5〜40質量部、及び
DBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラック5〜40質量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法であって、
前記熱可塑性樹脂組成物中の鉱油の含有量を0.1質量%未満とし、
かつ、前記カーボンブラック中に、DBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックを前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し0.5質量部以上となるように含有させることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を成形する際の揮発分の発生を抑制することができる。これにより、揮発物の発生による成形体の汚染や着色を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
−ポリフェニレンエーテル樹脂−
本発明に用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記の一般式で表される単位構造を有する。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して水素、ハロゲン、炭化水素、置換炭化水素、シアノ基、フェノキシ基、ニトロ基、アミノ基もしくはスルホ基である。
ポリフェニレンエーテル樹脂としては、具体的には、ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジクロルメチル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジニトリル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,6−ジクロル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ−2,5−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル等が挙げられる。このうち、ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルが好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の用途に応じて、強度、耐熱性又は成形性を有するものが用いられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品としては、IUPIACE PX100F、PX100R(三菱エンジニアリングプラスチックス社)、ザイロンS−201A、ザイロンS−202A(旭化成ケミカルズ株式会社)、PPO−640、PPO−646、SA−120(いずれもSABICイノベーティブプラスティックス社)などが使用できる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の固有粘度(IV)は、0.3〜0.5dL/100gが好ましく、0.3〜0.45dL/100gがより好ましく、0.35〜0.45dL/100gが更に好ましい。前記固有粘度(IV)が0.5dL/100gを超えると、粘度が高すぎて成形加工性に劣ることがあり、0.3dL/100g未満であると、分子量が低すぎて所望の剛性が得られないことがある。なお、本発明において、樹脂の固有粘度(IV)は、30℃、クロロホルム中で測定する。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の前記導電性熱可塑性樹脂組成物に対する含有量としては、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、55〜75質量%がさらに好ましい。前記含有量が40質量%未満であると、所望の耐熱性及び高温寸法安定性を得ることができないことがあり、90質量%を超えると、成形加工性及び耐衝撃性に劣ることがある。前記好ましい含有量では耐熱性及び高温寸法安定性と成形加工性及び耐衝撃性がより優れたものとなる。
【0010】
−ポリスチレン系樹脂−
本発明に用いるポリスチレン系樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、ゴム成分で強化された耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などが挙げられ、これらを好適に用いることができる。ポリスチレン系樹脂は、それぞれ一種類ないし二種類の樹脂を併用しても良い。
ポリスチレン系樹脂は、成型時の流動性を向上するため等のために鉱油(別名 ミネラルオイル;ホワイトミネラルオイル;液パラフィン;流動パラフィン)を含有するものが一般的であり、通常、鉱油はポリスチレン系樹脂中に1〜5質量%程度添加されている。
本発明の樹脂組成物中の鉱油含有量を所定内とするよう、ポリスチレン系樹脂としては、鉱油の含有量が1質量%未満であるものを使用することが好ましく、好ましくは0.5質量部未満、より好ましくは実質的に鉱油を含有しない(つまり、鉱油の量が検出下限以下)、或いはポリスチレン系樹脂に鉱油を添加していないポリスチレン系樹脂を使用することがより好ましい。
【0011】
鉱油の含有量が1質量%以上のポリスチレン系樹脂であっても、鉱油が揮発する温度以上で混練することにより、鉱油の量を1質量%未満まで低減すれば、本発明に使用することができる。
鉱油の含有量が1質量%未満のポリスチレン系樹脂の市販品としては、PSJ−ポリスチレン 680、685、G9305(以上はGPPS)、H0104(HIPS)などが使用できる(いずれもPSジャパン社製)。これらは何れも実質的に鉱油を含有しない。
ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、5〜40質量部であり、20〜30質量部が好ましい。
ポリスチレン系樹脂の含有量が5質量部未満であると、得られるコンパウンド(合成物)の流動性が低く、成形性が損なわれる場合があり、40質量部を超えると、耐熱性が悪化する場合がある。
ポリスチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、4.0〜25.0g/10minであるのが好ましく、5.0〜10.0g/10minであるのがより好ましい。MFRはISO 1133に準拠し、温度200℃、荷重49Nで測定した値による。
【0012】
−カーボンブラック−
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、DBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラックを、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し5〜40質量部含有し、かつ、そのうちにDBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックを前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して少なくとも0.5質量部含有する。
カーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であると、熱可塑性樹脂組成物に良好な導電性を付与することができる。また、DBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックを前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して少なくとも0.5質量部含有すると、揮発物の発生による成形体の汚染や着色の防止効果を得ることができる。
【0013】
DBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラックとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オイルファーネス法によって製造されるファーネスブラック、特殊ファーネス法によって製造されるケッチェンブラック、アセチレンガスを原料として製造されるアセチレンブラック、閉鎖空間で原料を直燃して製造されるランプブラック、天然ガスの熱分解によって製造されるサーマルブラック、拡散炎をチャンネル鋼の底面に接触させて捕捉するチャンネルブラックなどが挙げられる。例えば、旭カーボン社から製品名F−200で市販されている。
なお、前記カーボンブラックのDBP吸油量は、ASTM規格のD2414に準拠して測定することができる。
DBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラックの含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対し、5〜40質量部であり、5〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。5質量部未満であると、熱可塑性樹脂組成物に十分な導電性を付与できない。40質量部を超えると、カーボンブラックの分散が困難となり、成形が困難となる。
【0014】
DBP吸油量が310ml/100g以上としては、特殊ファーネス法によって製造されるケッチェンブラックEC等(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)、DBP給油量が350ml〜/100gであるCHEZACARB等(AKZO NOBEL社製)、DBP給油量が420ml/100gであるPrintex XE2−B等(デグサ社製)などがあげられる。
DBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックの含有量としては、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、0.5質量部であり、1質量部以上40質量部以下が好ましく、更には3質量部以上20質量部以下が好ましい。前記カーボンブラックの含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上であると、成形加工時の揮発分の発生を抑制する効果が得られる。前記カーボンブラックの含有量が40質量部を超えると、前記熱可塑性樹脂組成物をペレット状のコンパウンドに加工する場合の加工性、前記成形品の成形加工性が損なわれることがあり、更に、前記熱可塑性樹脂組成物の導電性が高過ぎて、前記成型品に電磁誘導、静電誘導などにより起電力が生じてIC等の電子部品を破壊してしまうことがある。
【0015】
−ポリスチレン系エラストマー樹脂−
本発明において、ポリスチレン系エラストマー樹脂を用いてもよい。ポリスチレン系エラストマー樹脂を熱可塑性樹脂組成物に含ませることにより、流動性が向上し、成形体の強度などの機械物性が向上するので好ましい。用いることのできるポリスチレン系エラストマー樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン成分の多いスチレン−ブタジエン共重合体(ハイスチレンSBS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン含有エラストマーが挙げられる。ポリスチレン系エラストマー樹脂は、それぞれ一種類ないし二種類の樹脂を併用して用いても良い。ポリスチレン系エラストマー樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体を特に好適に用いることができる。
ポリスチレン系エラストマー樹脂の溶液粘度は、3000〜10000mPa・sであるのが好ましく、4000〜8200mPa・sであるのがより好ましい。溶液粘度がこのような範囲にあると、成形体の強度などの機械物性が向上するので好ましい。溶液粘度は、樹脂の濃度が25重量%のトルエン溶液の25℃のおける粘度である。
ポリスチレン系エラストマー樹脂の含有量は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましい。ポリスチレン系エラストマー樹脂の含有量が1質量部未満であると、衝撃強度が低下することがある。20質量部を超えると、曲げや引張の負荷を与えた際の弾性率が低下し、成形品とした場合に必要な機械的強度を維持できないことがある。
【0016】
−その他の成分−
その他の成分としては、例えば、他の合成樹脂、滑剤、核剤、可塑剤、増粘剤、難燃剤、加工安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、表面処理剤、架橋剤、カップリング剤、及び摺動性改善のためのポリテトラフルオロエチレン、衝撃性向上のためのゴム状樹脂等、熱可塑性樹脂と混練されうるすべての添加剤が例示される。このうち、酸化防止剤を含むのが好ましい。酸化防止剤を含むことにより、熱安定性が向上し樹脂の劣化を防止し、分子量や機械物性の低下を防ぐので好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系、ホスファイト系、リン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等使用することができる。中でも、フェノール系、ホスファイト系が好ましい。酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物に対して0.01〜1.0質量%程度含まれるのが良い。
【0017】
−樹脂組成物の製造及び成形方法−
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、所定のカーボンブラックのそれぞれを所定量と、必要によりその他成分とを、適宜選択した公知の方法により混合、混練することにより調製することができる。例えば、溶融混練してペレット状コンパウンドとすることができる。前記ペレット状コンパウンドとする方法としては、特に制限はなく、通常の熱可塑性樹脂の混合、混練に用いられる装置、設備を用いて容易に製造することができる。例えば、各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサーなどの予備混合機に同時に仕込んで均一に混合したのち混練することができ、あるいは混練機へ特定成分を別々に定量フィーダーや容量フィーダーなどを用いて供給することもできる。各成分の混合物を溶融混練機に供給して溶融混練し、ダイから押し出し、ペレタイザーなどを用いてペレット化することができる。使用する混練機としては、例えばベント付き単軸押出機、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機などを好適に用いることができる。また押出機に代えてスーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、タンブラー、コニーダーなどの公知の混練機も用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、射出成形や押出成型等の既存の成形機を用いて成形することにより各種の用途に使用することができる。
【実施例】
【0018】
実施例及び比較例で用いた試薬を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
上記表1に示す試薬を用い、下記表2に示す組成で実施例1〜3及び比較例1〜3の熱可塑性樹脂組成物のペレットを調製した。ペレットの調整は、各配合成分を高速混合機により均一に混合した後、長さ(L)/径(D)=38のベント付き同方向二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化することで行った。
【0021】
【表2】

【0022】
<白色度の測定>
攪拌機(商品名:ラボプラストミル、メーカー名:株式会社東洋精機製作所)を用いて下記手順にて評価を行なった。
320℃(=射出成形時のシリンダ温度)に加熱した攪拌機に、60gのペレットを投入した。ペレット投入時の攪拌機の回転数は15rpmとし、2分で投入を完了した。投入完了後、攪拌機の回転数を70rpmに上げ、1分間混合した。
その後、メタノールで表面を拭いた10cm×10cm×0.5cmのガラス板を攪拌機上部(原料添加口)に乗せ、5分間混練し、ペレットから揮発するガス成分をガラス板に吸着させた。この際、厚み0.1cmのアルミ板を加工して作製した0.95cm×0.7cmのスペーサーを攪拌機原料添加口とガラス板との間に設置し、攪拌機原料添加口で発生する熱でガラス板が破損するのを防止した。攪拌機原料添加口と、スペーサーと、ガラス板とは、隙間が無いように密着させ、ペレットから発生する揮発ガスが外に漏れないようにした。混練開始から5分後にガラス板を外し、ガラスの白色度を測定した。
ガラス板の白色度(WI)は、揮発分を吸着させたガラス板を白色紙(PPC紙 上質紙・中性紙)上に置き、日本電色工業社製の白色度計PF−10を使用することにより測定した。なお、揮発分を吸着させる前のガラス板を白色紙上に置いて測定した白色度をブランクとした。結果を表3に示す。
<樹脂中の流動パラフィンの測定>
樹脂試料をヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン及びエタノールを溶媒として溶解し、上澄み液を採取し、前記溶媒を揮発除去した後にテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として、有機溶媒系GPCカラム(日本分光 Finepak gel 101F)を使用した高速液体クロマトグラフにより測定した。
【0023】
<揮発量の測定>
ガラスに付着した揮発物の量を、最小表示0.0001gの電子天秤により測定した。結果を表3に示す。
【0024】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対し、
ポリスチレン系樹脂5〜40質量部、
及びDBP吸油量が100ml/100g以上750ml/100g以下であるカーボンブラック5〜40質量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法であって、
前記熱可塑性樹脂組成物中の鉱油の含有量を0.1質量%未満とし、
かつ、前記カーボンブラック中に、DBP吸油量が310ml/100g以上であるカーボンブラックを前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し0.5質量部以上となるように含有させることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂の鉱油の含有量が1質量%未満である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物の成形時の揮発物発生抑制方法。

【公開番号】特開2012−121939(P2012−121939A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271431(P2010−271431)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】