説明

ポリマーおよびポリマー組成物

本発明は、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを提供する。このポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、二価の基を介して互いに連結された1個以上のポリオルガノシロキサンブロックと1個以上のポリオキシアルキレンブロックとを有し、かつ、少なくとも2個のケイ素結合アルコキシ基を有する。好ましくは、PS−(A−PO)−(A−PS)型(式中、POはポリオキシアルキレンブロックであり、PSはポリオルガノシロキサンブロックを表し、Aは二価の基であり、mおよびnは独立して少なくとも1の値を有する)であり、少なくとも1個の、式:(R’)(OR)−SiO(3−q)/2(式中、Rは1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、各R’は1から6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、または式:‐ORのアルコキシ基を表し、qは0、1または2の値を有する)のアルコキシ置換シロキサン単位を含む(但し、少なくとも2個のケイ素結合基ORがブロックコポリマー中に存在することを条件とする)。本発明はまた、上記ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの硬化性組成物(この組成物は、縮合触媒を含んでいてもよい)と、この組成物を水分の存在下で硬化することによって製造される親水性ポリマーネットワークであって、興味深い可逆的な親水性をものとを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシリコーンポリマー、このポリマーを含む硬化性組成物、およびこの硬化性組成物から製造され、独特の表面特性を有する水不溶性、親水性のポリマーネットワークに関する。本発明はまた、これらのポリマーおよびポリマーネットワークの製法方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシロキサン組成物は、一般に、低表面エネルギーを有し、疎水性である。ポリオルガノシロキサン組成物のいくつかの用途では、ポリオルガノシロキサンの有利な特性の一部を維持しながら、水性液体がポリマーの表面に接触する場合のポリマー表面の湿潤性が改善された、親水性ポリマーが求められている。
【0003】
特開2001−106781号には、場合によりエステル交換触媒の存在下で、ポリオキシアルキレングリコールとシリケート化合物とを反応させることによって得られるシラン変性ポリエーテルが記載されている。この製品は水分硬化性であり、シーラントまたは接着剤として有用である。
特開2007−238820号は、親水性オルガノポリシロキサン硬化物、ならびにコーティングにおけるその用途に関し、優れた自己洗浄型、静電気防止性、防汚性、および低汚染性特性がもたらされている。これらは、少なくとも2個のシラノール基と、親水性基とを有するオルガノポリシロキサンをベースにしていて、このシラノール基は、縮合反応して硬化物を形成する能力を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−106781号
【特許文献2】特開2007−238820号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、驚くべきことに、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーであって、ポリオキシアルキレンが反応によりこのコポリマーの骨格内に組み込まれているものを用いることが、縮合反応によるポリマーネットワークへの反応に特に有用であり、このネットワークが親水性を示すことを見出した。このブロックコポリマーは、新規であり、発明者自身の権利であることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従って、本発明は、第一の態様において、二価の基を介して互いに連結した1個以上のポリオルガノシロキサンブロックと1個以上のポリオキシアルキレンブロックとを有し、ケイ素結合(ケイ素に結合した)アルコキシ基を少なくとも2個有する、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを提供する。
【0007】
好ましくは、本発明によるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、
PS−(A−PO)−(A−PS)
(式中、POはポリオキシアルキレンブロックであり、PSはポリオルガノシロキサンブロックを表し、Aは二価の基であり、mおよびnは独立して少なくとも1の値を有する)
であり、
式:(R’)(OR)−SiO(3−q)/2
(式中、Rは1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、各R’は1から6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、または式:‐ORのアルコキシ基を表し、かつ、qが0、1または2の値を有する)
のアルコキシ置換シロキサン単位を少なくとも1個含み、
但し、ケイ素結合(ケイ素に結合した)基ORが前記ブロックコポリマー中に少なくとも2個存在することを条件とする。
【0008】
特に、このポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、前記式中の末端のPSブロックが、式:
【化1】

(式中、RおよびR’は、上述により定義したとおりである)
を有するアルコキシ置換シロキサン単位であって、酸素原子を介して別のPSブロックのケイ素原子に連結している単位で末端化されたポリオルガノシロキサンブロックを表すことが特に好ましい。言い換えると、アルコキシ置換シロキサン単位がPSブロックの一部を形成していることが好ましい。また、ブロックポリマー中の少なくとも2個の隔てられたケイ素原子が、それぞれ少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基ORで置換されていることが好ましい。
【0009】
好ましいブロックコポリマーの(A−PO)ブロックおよび(A−PS)ブロックは、そのブロックコポリマー内にランダムに分布していてよい。mおよびnの値は、任意の値であってよいが、好ましくは100以下、より好ましくは20以下、最も好ましくは5以下である。mおよびnが1であることが特に好ましい。各R’は、好ましくはアルコキシ基ORを示す。特に好ましいポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、式:PS−(A−PO−A−PS)(式中PO,PS、Aおよびnは、上述により定義したとおりである)。
【0010】
本発明による好ましいポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、通常、少なくとも2個のポリオルガノシロキサンブロックと、少なくとも1個のポリオキシアルキレンブロックとを含む。アルコキシ基置換シロキサン単位は、本発明の別の態様による親水性ポリマーネットワークの製造のための架橋性反応性基Xを形成する単位であり、必須要件ではないが、最も好ましくは、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの末端シロキサン単位である。しかし、架橋反応性アルコキシ基Xは、ブロックポリマー中のいずれかのシロキサン単位を含め、ブロックポリマー中のいかなるシロキサン単位にも位置することができる。
【0011】
あるいは、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、PO−(A−PS)−(A−PO)型またはPO−(A−PS−A−PO)型である(式中、PO、PS、A、mおよびnは、上述により定義したとおりである)。これらのブロックポリマーは、PS部分、したがって、明らかにブロックポリマーの末端位ではないであろう部分に位置している1個以上の基Xを有していてもよい。あるいは、X基を含むシロキサン単位は、POブロックの末端に位置することができる。しかし、これらのブロックコポリマーは、発明の別の態様による親水性ポリマーネットワークのための用途にはあまり好ましくはない。
【0012】
PSブロックは、一般式:
(R”)SiO(4−r)/2
〔式中、R”は、OR、アルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル(好ましくは1から18個の炭素原子を有するもの)を表し、rは、0から3までの値を示す〕
のシロキサン単位を含む。特に好ましいR”は、ORに加えて、1から6個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基である。R”は、1から3個のアルキル基を示すことがさらに好ましく、メチルが最も好ましい。ブロックポリマー中最高4個までのR”基だけがOR基を示すことが好ましく、より好ましくは2個だけであり、最も好ましくはブロックポリマーの末端ケイ素原子に存在している。このことは、好ましいブロックポリマーでは、末端PSブロックのみにケイ素結合OR基がそれぞれ少なくとも1個存在することを意味する。ブロックポリマーが、POブロックが末端に存在する型のものである場合には、当業者であれば、OR基が、少なくとも1個の不飽和脂肪族置換基を有するアルコキシ含有有機ケイ素化合物と、少なくとも3個の水素原子を有するPS前駆体ブロックとのヒドロシリル化反応によって導入されるとすると、PSブロック中のR基のみがORであり得ることは明らかである。PSブロックに関して、rの値は、好ましくは平均で1.6と2.4の間、最も好ましくは1.9から2.1までである。しかし、rが3の値であるシロキサン単位は、ケイ素結合ORが位置するシロキサン単位にとって特に望ましい末端基として存在する。さらに、rの値が0または1であるシロキサン単位が存在してもよいが、これらはPSブロックに分岐を導入するため、PSブロック中の全シロキサン単位の例えば2%以下などの最小限に抑えることが好ましい。
【0013】
したがって、1つの側でアルコキシ置換シロキサン単位により末端封鎖可能であり、かつ、他の側で二価の連結基Aに連結されうるポリジメチルシロキサン部分である末端PSブロックが最も好ましい。mおよび/またはnが1より大きい値を有する場合には、より中央のPSブロックは、両側でA基に連結されることになる。各PSブロックのシロキサン単位の数は重要ではなく、ブロックコポリマーまたはそれから得られる親水性ポリマーネットワークの所望する特性を考慮して選択する。PSブロックは、好ましくは2から200シロキサン単位を有し、より好ましくは4から40、最も好ましくは10から30のシロキサン単位を有する。
【0014】
POブロックは、一般式:
−(C2sO)
(式中、各sは独立して2から6、好ましくは2から3の値を有し、tは1から100、好ましくは4から40、より好ましくは3から10の値を有する)
を有するポリオキシアルキレンブロックである。あまり好ましくないブロックコポリマー(すなわち、POブロックが末端にあるブロックコポリマー)を用いる場合には、末端POブロックの上記一般式は:
Q−(C2sO)
〔式中、Qは、ポリオキシアルキレンの末端封鎖基を示し、例えばアルキル基、ヒドロキシル基もしくはアシル基、またはアルコキシ基であるかそれを含む基(アルコキシ置換シランもしくはシロキサン基を含む)である〕となる。ポリオキシアルキレンブロックの例として、ポリオキシエチレンブロック、ポリオキシプロピレンブロック、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック、ポリオキシイソプロピレンブロック、およびアルキレン単位の異なるタイプの混合を含むブロックが、最も好ましいものとして挙げられる。必要な親水性を得るために、ポリオキシアルキレンブロック中のポリオキシアルキレン単位の少なくとも50%は、オキシエチレン単位であることが好ましい。
【0015】
PSおよびPOブロックの相対量は、限定されないが、予想される特定の最終用途に適応させることができる。より親水性であることが望まれる場合には、より多くの重量割合のPOブロック、特にポリオキシエチレン単位を含むPOブロックを、親水性ポリマーネットワークの製造に使用するブロックコポリマーの合計重量に対する割合として選択することになる。これと同程度の親水性が必要とされない場合は、POブロックの重量割合を小さくすることができるが、代わりにPOブロックの組成を、例えばブロック中のポリオキシエチレン単位数を少なく変化させることもできる。ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー中のシロキサン単位に対するオキシアルキレン、例えばオキシエチレン単位のモル比は、好ましくは0.05:1から0.5:1までの範囲である。
【0016】
基Aは、PSブロックと、POブロックとを一緒に連結する二価の基である。最も簡単な形態では、これらは、例えば一般式:C2S(式中sは、上述により定義したとおりである)の二価アルキレン基であり、好ましくは2から10個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば、ジメチレン、プロピレン、イソプロピレン、メチルプロピレン、イソブチレン、またはヘキシレンであってよく、PSおよびPOブロック間の適切な他の連結基であってもよい。これらには、例えば、ジオルガノシリルアルキレン単位で末端化された二価のポリオルガノシロキサン基、例えば:
−C2S−[Si(R)O]Si(R)C2S
(式中、Rは、ここではアルコキシ基であってはならないことを除いてR”について上述により定義したとおりであり、sおよびtは、上述により定義したとおりである)
が含まれる。当業者であれば、これが基Aの限定されない例であることを理解するであろう。基Aは、PO基とPS基とを一体に連結するために用いる方法によって、より詳細には以下に説明するとおりに、一般的に定義される。二価の基AはいかなるSi‐O‐C結合も有さないことが好ましい。
【0017】
PS−(A−PO)−(A−PS)型のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、2個のSi‐H基を有するポリオルガノシロキサン(すなわち、PS前駆体)と、2個の脂肪族系、好ましくはオレフィン系、より好ましくはエチレン性不飽和基を有するポリエーテル(すなわち、PO前駆体)とを、場合により2個の脂肪族系、好ましくはオレフィン系、より好ましくはエチレン性不飽和基を有するポリオルガノシロキサンの存在下で、Si‐H基が、脂肪族系不飽和基に対して少なくともある程度過剰モルまたは過剰数で存在し、したがって好ましいブロックコポリマーが製造されるような量で反応させ、その後、こうして得られたブロックコポリマー(ブロックポリマー中間体)と、アルコキシ−官能性有機ケイ素化合物(例えば、少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基と、1個の脂肪族系不飽和基とを有するシランまたはシロキサン)とを、ヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。本明細書において、脂肪族系不飽和基には、オレフィン系およびアセチレン系不飽和基、および特に、好ましくは式>CH=CH(例えばビニル、アリル、またはメタリル基)を有する部分を含むエチレン性不飽和基が含まれる。あるいは、あまり好ましくはないが、末端ではない炭素原子間に存在する不飽和基を有するオレフィン系不飽和基から選択される脂肪族系不飽和基、またはアセチレン系不飽和基(例えばアルキニル基など、例えばエチニルもしくはプロピニル)を使用することもできる。
【0018】
式:PO−(A−PS)−(A−PO)またはPO−(A−PS−A−PO)のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを製造する場合には、上記の方法に代えて、2個の脂肪族系、好ましくはオレフィン系、より好ましくはエチレン性不飽和基を有する第一のポリエーテルと、1個だけの脂肪族系不飽和基を含有し、他の末端は末端封鎖基、例えばアルキル、ヒドロキシル、またはアシル基を有する第二のポリエーテルとの混合物を使用することができる。第二のポリエーテルは、ブロックコポリマーの末端POブロックを形成することになる。しかし、この場合、PS前駆体が、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有すること必要であり、最初の2個は、A基を介してPOブロックの連結を形成するために反応させることができ、3番目およびそれに続くケイ素結合水素は、さらにアルコキシ基含有機ケイ素化合物と反応させることができる。第一のポリエーテルだけを使用する場合は、アルコキシ官能性を、上述したとおりに導入することができ、あるいは、末端POブロック上で利用可能な脂肪族不飽和基と、少なくとも1個のアルコキシ置換基を有する有機ケイ素化合物(但し、この有機ケイ素化合物は脂肪族不飽和置換基の代わりにPOブロックの脂肪族不飽和末端基と付加反応するケイ素結合水素原子を有する)とを反応させて、導入することができる。
【0019】
PS前駆体とPO前駆体間との反応、および、アルコキシ置換有機ケイ素化合物との好ましいブロックポリマーとするための最終反応は、一般に、ヒドロシリル化触媒、例えば白金族金属またはこれらの錯体もしくは化合物(例えば、白金、ロジウム、およびそれらの錯体もしくは化合物)などの存在下で行う。このような好ましいヒドロシリル化反応から得られる二価の基Aは、使用したポリエーテルの脂肪族不飽和基に依存して、例えば、2から6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、あるいは、使用した脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンに依存して、α,ω−アルキレン末端封鎖ポリジオルガノシロキサンである。
【0020】
PS−(A−PO−A−PS)型の好ましいポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを製造する場合には、上述した製法を用いることができ、α,ω−アルキレン末端封鎖ポリジオルガノシロキサンの使用を省略することができる。α,ω−アルキレン末端封鎖ポリジオルガノシロキサンの使用を省略しない場合には、PSをPOにおよびPSをPSに連結するA基が、ランダムに分布する機会の制御が容易ではない。しかし、式:PS−(A−PO)−(A−PS)またはPS−(A−PO−A−PS)のいずれかにしたがって製造したポリマーは、硬化性組成物および本発明の他の態様による親水性ポリマーネットワークに著しく好適である。
【0021】
ポリエーテル(PO前駆体)と反応させて、ブロックコポリマーを形成するポリオルガノシロキサン(PS前駆体)は、分岐状であってもよいが、好ましくは、2から250シロキサン単位、より好ましくは2から200、さらにより好ましくは4から40シロキサン単位、最も好ましくは10から30シロキサン単位の重合度(DP)を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンである。このポリオルガノシロキサンのケイ素原子の置換基である有機基は、好ましくは、1から18個、好ましくは1から6個の炭素原子を有するアルキル基、およびフェニル基から選択される。最も好ましくは、Siに結合した有機基の少なくとも90%がメチル基であり、例えば、ポリオルガノシロキサンはSi‐H官能性ポリジメチルシロキサンである。このポリオルガノシロキサンは、2個より多いSi‐H基を有することができるが、その場合には、分岐状ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーをもたらす可能性がある。最も好ましくは、ポリオルガノシロキサンPS前駆体が、2個のSi‐H基だけをポリジオルガノシロキサン鎖の各末端に一つずつ有する。この結果、下記の反応スキーム(式中、mは上述により定義したとおりであり、pは少なくとも1の値を有する)に示すとおり、ポリエーテルとの反応により、ブロックコポリマーの中間体ポリオルガノシロキサンブロックの末端ケイ素原子上に位置した反応性Si‐H基を有する、より好ましいポリオルガノシロキサン−末端ブロックコポリマーがもたらされる。このブロックコポリマーを、アルコキシ置換有機ケイ素化合物とのさらなる反応に用いることができる。
【化2】

これらに代えて、Si‐H基を、末端ではないシロキサン単位に、あるいは末端のシロキサン単位および末端ではないシロキサン単位の両方に有するポリオルガノシロキサンを使用することができる。
【0022】
ポリオキシアルキレン(PO前駆体)は、好ましくはポリエチレンオキシドであるが、大部分がポリオキシエチレン単位であるポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)コポリマーを使用することもできる。ポリエーテルの好ましいエチレン性不飽和基は、例えば、アリル、ビニル、メタリル、ヘキセニル、またはイソブテニル基であってよい。好ましいポリエーテルの一例は、ポリエチレングリコールジアリルエーテルである。ポリエチレンオキシドは、好ましくは4から100、より好ましくは4から40個のオキシエチレン単位の重合度を有する。
【0023】
より好ましいブロックコポリマーを製造するためには、Si‐H官能性ポリオルガノシロキサン(PS前駆体)と、脂肪族不飽和基を有するポリエーテル(PO前駆体)とを、脂肪族系不飽和基、最も好ましくはエチレン性不飽和基に対するSi‐H基のモル比が好ましくは、1.5:1から6:1、より好ましくは2:1から4:1である範囲で、反応させるいことが好ましい。この反応は周囲温度で行うことができるが、60から200℃範囲の温度、例えば100から150℃に昇温することも好ましい。反応は、一般に、例えば白金またはロジウムなどの白金族金属、またはこれらの錯体もしくは化合物を含む触媒の存在下で行われる。一つの好ましい白金触媒は、ヘキサクロロ白金酸、またはクロロ白金酸と末端脂肪族不飽和を有する有機ケイ素化合物との反応生成物であり、別の例は、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体である。触媒は、好ましくは、Si‐H官能性ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.00001から0.5部、最も好ましくは0.00001−0.002部の白金またはロジウムの量で用いる。
【0024】
ヒドロシリル化触媒に加えて、特に、白金ベースの触媒である場合には、適切なヒドロシリル化触媒抑制剤が必要とされ得る。任意の適切な白金族タイプの抑制剤を使用することができる。白金触媒抑制剤の一つの有用なタイプは、米国特許第3,445,420号に記載されている。この特許を本明細書に、特定のアセチレン系抑制剤およびその使用を示すために参照により組み込む。アセチレン系抑制剤の好ましい類は、アセチレンアルコール類、とりわけ2‐メチル‐3‐ブチン‐2‐オールおよび/または1‐エチニル‐2‐シクロヘキサノールであり、これらは白金をベースとする触媒の活性を25℃で抑える。白金触媒抑制剤の第二のタイプは、米国特許第3,989,667号に記載されており、この特許を本明細書に、特定のオレフィン系シロキサン、その製造方法、および白金触媒抑制剤としてのそれらの使用を示すために参照により組み込む。白金触媒抑制剤の第三のタイプには、1分子当たり3から6個のメチルビニルシロキサン単位を有するポリメチルビニルシクロシロキサンが含まれる。
【0025】
Si‐H官能性ポリオルガノシロキサン(PS前駆体)と、脂肪族不飽和基を有するポリエーテル(PO前駆体)とを、不飽和基を含有するポリエーテルをモル過剰で用いて、例えば、Si‐H基の不飽和基に対するモル比が1:1.5から1:6である範囲で反応させる場合には、PO−(A−PS−A−PO)型またはPO−(A−PS)−(A−PO)型のブロックコポリマー中間体が得られる(式中、PO、PS、A、mおよびnは、上述により定義したとおりであり、POブロックは、末端脂肪族系不飽和基、好ましくはエチレン性不飽和基を有する)。
【0026】
より好ましいポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン中間体ブロックコポリマーを上述したとおりに製造した場合、その後これらを、本発明によるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを得るために、ケイ素結合アルコキシ基を少なくとも1個有し且つ脂肪族不飽和基を1個有する有機ケイ素化合物と、さらに反応させる。これにより、アルコキシ基が、最終的に所望する場所、最も好ましいブロックコポリマーの場合にはブロックコポリマーの末端ケイ素原子上の場所に、確実に位置することになる。脂肪族系不飽和末端基を有する末端PO単位を有するあまり好ましくないブロックコポリマーを製造した場合には、これらを、ケイ素結合アルコキシ基を少なくとも1個有し且つケイ素結合水素原子を1個有する有機ケイ素化合物と、反応させる。
【0027】
上述したとおりに製造したブロックコポリマー中間体と反応させることができるSi‐OR含有有機ケイ素基は、エチレン性不飽和基またはSi‐H基を有する化合物であってよく、下記一般式:
【化3】

(式中、Zは、脂肪族系不飽和基、好ましくはエチレン性不飽和基(例えばビニル、アリル、イソブテニル、もしくは5‐ヘキセニルなど)、水素、または、脂肪族系、好ましくはエチレン系の不飽和置換基、もしくは末端ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサン基である)
を有する。このような有機ケイ素基の例には、シラン類(例えば、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ヒドロトリメトキシシラン、およびヒドロメチルジメトキシシランなど)が含まれる。好適なシロキサン有機ケイ素化合物には、トリメトキシシロキサン末端基を有するビニルジメチル末端封鎖ポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0028】
Si‐結合アルコキシ基を2個より多く有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、自己架橋性ポリマーであり、それは、以下に記述するように、水不溶性、親水性のポリマーネットワークに硬化することができる。このようなブロックコポリマーの例は、下記単位:
【化4】

(式中、RおよびR’は、上述により定義したとおりである)
で末端化されたポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーであり、例えば、下記反応性単位:
【化5】

がポリオルガノシロキサンブロックの末端ケイ素原子に位置しているPS−(A−PO−A−PS)型のブロックコポリマーである。
【0029】
Si‐結合アルコキシ基を有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、代替的に、PO−(A−PS−A−PO)型のブロックコポリマーであることができる。このようなブロックコポリマーは、末端エチレン性不飽和基を有する中間体であり、上述したとおりに製造することができ、その後、このブロックコポリマーを、下記式:
【化6】

(式中、RおよびR’は、上述により定義したとおりである)
のシランと反応させて、そのエチレン性不飽和基を、本発明の第一の態様によるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーのケイ素原子にそれぞれ結合した1個、2個または3個の反応性アルコキシ基を有する下記式:
【化7】

の反応性基に変換する。このようなシラン類の例は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、およびジメチルエトキシシランである。特に、トリアルコキシシランが好ましい。
【0030】
本発明は、第二の態様で、水不溶性、親水性のポリマーネットワークに硬化可能なポリマー組成物を提供する。この組成物は、
本発明の第一の態様のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、すなわち、ケイ素結合反応性アルコキシ基Xを少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを含み、
場合により、前記基Xと縮合反応により反応可能である、ケイ素結合アルコキシ基Yを少なくとも2個有する有機ケイ素架橋剤を場合により含有していてもよい。
但し、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、反応性基Xを1分子あたり2個しか有さない場合には、有機ケイ素架橋剤が存在し、かつ、前記有機ケイ素架橋剤が、ケイ素結合反応性アルコキシ基Yを1分子あたり平均2個より多く有していることを条件とする。
【0031】
上述したとおりに製造した発明の第一の態様によるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの基Xと縮合により反応するケイ素結合アルコキシ基Yを少なくとも2個有する有機ケイ素架橋剤と、反応させることができる。ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが1分子当たり反応性基Xを2個しか有さない場合には、架橋剤は、反応性基Yを、通常1分子あたり平均して2個より多く、例えば1分子当たり2.5から6個有する。これは、以下に記述する親水性ポリマーネットワークの形成に必要とされる、単なる鎖延長だけではなく網目構造(ネットワーク)形成(架橋)を助けるためである。例えば、有機ケイ素架橋剤が少なくとも3個の反応性基Yを有する分岐状ポリオルガノシロキサンである場合には、この架橋剤は、本発明の第一の態様のブロックポリマーから生じる少なくとも3つのポリマー鎖と結合することになり得る。
【0032】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー上の反応性基Xは、例えば、下記式:
【化8】

(式中、Rは、1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、各R’は1から6個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、または式:‐ORのアルコキシ基を表す)
のシロキサン単位に存在することができる。このような基の例として、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、メチルジメトキシシリル、ジメチルメトキシシリル、およびジメチルエトキシシリルがある。
【0033】
有機ケイ素架橋剤は、これを使用する場合、好ましくはポリシロキサンである。このポリシロキサンは、例えば、式:(SiO4/2)のQ単位、RSiO3/2のT単位、RSiO2/2のD単位、および式RSiO1/2のM単位から選択されるシロキサン単位からなり得る(式中、R、R、およびR置換基は、1から6個の炭素原子を有するアルキルおよびアルコキシ基から選択され、少なくとも3個のR、RおよびRは、アルコキシ単位である)。
【0034】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、反応性Si‐OR基Xがポリオルガノシロキサンブロックの末端ケイ素原子上に位置しているPS−(A−PO−A−PS)型のコポリマーである場合には、架橋剤の適切なタイプの1つは、少なくとも3個の分岐鎖上に位置するケイ素結合アルコキシ基Yを有する分岐状ポリオルガノシロキサンである。そのような分岐状ポリオルガノシロキサンは、一般に、Qおよび/またはT単位、M単位、および任意のD単位を含んでいる。アルコキシ基は、好ましくはM単位に存在する。このポリオルガノシロキサンは、例えば、1個以上の式:(SiO4/2)のQ単位、0から250個の式:RSiO2/2のD単位、および式:RSiO1/2のM単位を含む、分岐状ポリシロキサンであることができる(式中、RおよびR置換基は、1から6個の炭素原子を有するアルキルおよびアルコキシ基から選択され、分岐状シロキサン中少なくとも3個のR置換基がアルコキシ基である)。ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが比較的長い鎖長のものである場合には、低分子量のQ‐分岐(4分岐)状シロキサン架橋剤が好ましい。例えば、1個のQ単位、4個のトリアルコキシシリルM単位(例えば、トリメトキシシリルM単位)、および0から20個のジメチルシロキサンD単位を含むアルコキシ官能性Q‐分岐状シロキサンであってよく、それは次式を有し得る:
【化9】

【0035】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーがSi‐OR基を2個より多く有する場合、例えば、少なくとも3個のケイ素結合アルコキシ基を有するシロキサン単位1個もしくは2個で末端封鎖されたブロックコポリマー、少なくとも2個のケイ素結合アルコキシ基を有するシロキサン単位2個で末端封鎖されたブロックコポリマー、または、3個以上のSi‐OR基を含有する熊手型コポリマーである場合には、有機ケイ素架橋剤は、ケイ素結合アルコキシ基を2個より多く含有する必要はない。例えば、架橋剤は、2個のケイ素結合アルコキシ基を含有するポリジオルガノシロキサン(例えば、ジメチルメトキシシリル‐末端ポリジメチルシロキサンなど)であることができ、あるいは、このような2個のケイ素結合アルコキシ基を有するポリジオルガノシロキサンと、少なくとも3個の分岐上に位置するケイ素結合アルコキシ基Yを有する分岐状ポリオルガノシロキサンとの混合物であることができる。しかし、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーがケイ素結合アルコキシ基を2個より多く有する場合には、有機ケイ素架橋剤を全く使用しないことが最も好ましい。
【0036】
架橋剤は、それを使用する場合には、オルガノポリシロキサンであることが、反応性Si‐結合アルコキシ基Yを提供するために通常好ましい。架橋剤は、例えば、ポリジオルガノシロキサン、例えば、下記式:
【化10】

の末端単位、特にR’基の少なくとも1個がアルコキシ基である末端単位を有するポリジメチルシロキサンであり、あるいは、分岐状ポリオルガノシロキサンであって、各分岐鎖が下記式:
【化11】

の基で末端化されているものであることが好ましい。
【0037】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが下記式:
【化12】

の反応性基で末端化されている場合の硬化性組成物の架橋剤は、代替的または追加的に、下記の基:
【化13】

(式中、RおよびR’は、上述により定義したとおりである)
を含有する分岐状ポリオルガノシロキサンを含むことができる。この分岐状ポリオルガノシロキサンは、例えば、各分岐鎖が、下記の基:
【化14】

基で末端化されているQ‐分岐状ポリシロキサンであることができる。このような分岐状ポリオルガノシロキサンは、エチレン性不飽和分岐状ポリオルガノシロキサン(例えば、上述したビニル‐官能性Q‐分岐状シロキサン)を、Si‐H基および下記式:
【化15】

の基を有する短鎖ポリシロキサン、例えば、下記式:
【化16】

のポリシロキサンと、白金族金属触媒の存在下で反応させることによって形成させることができる。分岐状ポリオルガノシロキサン架橋剤は、代替的に、Si‐H基を含有する分岐状ポリオルガノシロキサン、例えば、末端ジメチル水素シリル基を有するQ‐分岐状ポリシロキサンと、下記式:
【化17】

(式中、R、R’およびZは、上述により定義したとおりである)
のエチレン性不飽和アルコキシシランとから製造することができる。好ましくは、アルコキシ‐末端ポリジオルガノシロキサンと、アルコキシ‐末端Q‐分岐状ポリシロキサンとの混合物を使用することできる。
【0038】
架橋剤は、使用する場合には、ヒドロシリル化反応によりまた製造することができる。例えば、Si‐H末端ポリオルガノシロキサンを、エチレン性不飽和アルコキシシランと反応させることができる。あるいは、エチレン性不飽和基を有するポリオルガノシロキサンを、Si‐H基および少なくとも1個のSi‐アルコキシ基を有するポリシロキサンと、反応させることができる。
【0039】
架橋剤上の反応性基Yは、下記式:
【化18】

(式中、RおよびR’は、上述した意味を有する)
のシランまたはシロキサン単位に存在していてもよい。その一番簡単な形態では、架橋剤は、トリアルコキシシランであり、例えば、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、もしくはn‐オクチルトリエトキシシランなど)、またはジアルコキシシラン、例えば、ジアルキルジメトキシシラン(例えば、ジメチルジエトキシシランなど)、またはテトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシランなど)であることができる。
【0040】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーがSi‐結合アルコキシ基を2個しか有しない場合には、有機ケイ素架橋剤は、Si‐結合アルコキシ基を2個より多く有するべきであり、例えば、架橋剤は、トリアルコキシシラン、または‐Si(OR)単位を少なくとも1個有するポリシロキサン(式中、Rは、上述により定義したとおりである)、または下記単位:
【化19】

(式中、R’は、上述により定義したとおりである)
を少なくとも2個含有するポリシロキサン、または下記単位:
【化20】

(式中、R’は、上述により定義したとおりである)
を少なくとも3個含有するポリシロキサンであり得る。
【0041】
ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、Si‐結合アルコキシ基を2個より多く有する場合には、Si‐結合アルコキシ基を2個しか有しない有機ケイ素架橋剤、および/またはSi‐結合アルコキシ基を2個より多く有する有機ケイ素架橋剤を使用することができる。あるいは、Si‐結合アルコキシ基を2個より多く有するこのようなポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを、さらなる架橋剤を必要とすることなく、水分および好ましくは遷移金属触媒の存在下で、Si‐結合アルコキシ基の互いの反応によって硬化させることができる。
【0042】
当然のことながら、下記式:
【化21】

の反応性基で末端化されたポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー鎖間の架橋の一部は、架橋剤が存在していても起こり得る。少量の架橋剤を使用することは、硬化ポリマー組成物の特性を制御するために好ましいと考えられる。例えば、Si‐結合アルコキシ基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、架橋度および/または架橋密度を高めるために添加して、より固い硬化ポリマー組成物を得ることができる。比較的鎖長が長いアルコキシ‐末端ポリジオルガノシロキサン、例えば、100から250まで、またはさらに500までの重合度(D.P.)のポリジメチルシロキサンを、架橋密度を下げるために添加して、より柔軟な硬化ポリマー組成物を得ることができる。アルコキシ‐官能性ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー全体の、他のアルコキシ‐官能性ポリオルガノシロキサンに対する割合は100:0から10:90の範囲の任意の値であってよい。
【0043】
硬化性組成物を現場で、例えばコーティングまたはシーラントとして適用しなければならない一部の用途のためには、高温で架橋反応を実施することが実行可能ではない可能性がある。幸いにも、ケイ素結合アルコキシ基の縮合による架橋反応は、周囲温度で急速に進行する。このようなSi‐アルコキシ基の互いの反応は、水分と触媒の存在下で起こり得る。本発明の第二の態様による硬化性組成物は、したがって、ブロックコポリマーの互いの縮合または架橋剤との縮合を促進する触媒を含んでいてもよい。加えて、この反応は、ケイ素結合アセトキシ基、ケトキシモ基、アミド基、またはヒドロキシル基を有する他の有機ケイ素化合物と共に行うこともできる。
【0044】
Si‐アルコキシ基は、水分の存在下で互いに反応して、Si‐O‐Si結合を形成する。この反応は、触媒なしに周囲温度でも進行することができ、シロキサン縮合触媒の存在下ではもっと急速に進行する。任意の適切な重縮合触媒を利用することもできる。これらの触媒には、プロトン酸、ルイス酸、有機塩基および無機塩基、遷移金属化合物、金属塩ならびに有機金属錯体が含まれる。
【0045】
シロキサン縮合触媒は、例えば、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから選択される遷移金属の化合物を含むことができる。好ましいチタン化合物は、チタンアルコキシドであり、これは、チタネートエステルとしても知られている。代替的に、ジルコニウムアルコキシド(ジルコネートエステル)またはハフニウムアルコキシドを使うことができる。チタネートおよび/またはジルコネートをベースとする触媒は、それぞれ一般式:Ti(ORおよびZr(ORの化合物を含んでいてもよい(式中、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、1から10個の炭素原子を有し、直鎖状であっても分岐状であってもよい、一価の、第一級、第二級、または第三級の脂肪族炭化水素基を表す)。場合により、チタネートは、部分的に不飽和基を含有してもよい。しかし、Rの好ましい例には、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert‐ブチル、および分岐状第二級アルキル基(例えば、2,4‐ジメチル‐3‐ペンチル等)が含まれる。好ましくは、各Rが同じである場合、Rは、イソプロピル、分岐状の第二級アルキル基もしくはtert‐アルキル基、特にtert‐ブチルである)。
【0046】
あるいは、チタネートはキレート化することができる。キレート化は、任意の適切なキレート化剤、例えば、アルキルアセチルアセトナート(例えば、メチル-またはエチルアセチルアセトナートなど)等で行うことができる。任意の適切なキレート化チタネートまたはジルコネートを利用することができる。好ましくは、使用するキレート基は、モノケトエステル(例えばアセチルアセトナートおよびアルキルアセトアセトナートなど)であり、これらはキレート化チタネート〔例えば、ジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセタート)など〕を与える。適切な触媒の例は、欧州特許第1254192号および国際公開WO2001/49774にさらに記載されている、これらを、参照により本明細書に組み込む。
【0047】
触媒として存在する遷移金属化合物(例えば、チタナートエステルなど)の量は、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと架橋剤との合計重量に基づいて、例えば、0.01から2%であってよい。
【0048】
本発明において重合反応用触媒として使用することができる、適切なさらなる縮合触媒としては、錫、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、またはゲルマニウムを組み入れた縮合触媒が挙げられる。例としては、金属トリフラレート、有機錫金属触媒、例えばトリエチルスズタルトレート、オクタン酸錫、スズオレエート、スズナフテート(tin naphthate)、ブチルスズトリ‐2‐エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート(carbomethoxyphenyl tin trisuberate)、イソブチルスズトリセロエート(isobutyltin triceroate)、およびジオルガノスズ塩、特にジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、ジメチルスズジネオデカノエート、またはジブチルスズジオクトエートが挙げられる。
【0049】
触媒は、代替的に、ルイス酸触媒であってもよい(「ルイス酸」は電子対を受容して、共有結合を形成する任意の物質である)。例えば、三フッ化ホウ素、FeCl、AlCl、ZnCl、ZnBr、式:Mの触媒(式中、Mは、B、Al、Ga、InまたはTlであり、各Rは、独立して、同じであるかまたは異なり、6から14個の炭素原子を有する一価芳香族炭化水素基を表す。この一価芳香族炭化水素基は、好ましくは少なくとも1個の電子求引性元素もしくは電子吸引性基、例えば‐CF、‐NOもしくは‐CNなどを有し、あるいは少なくとも2個のハロゲン原子で置換されている。Xは、ハロゲン原子であり、fは、1、2、または3であり、gは0、1または2であり、ただしf+g=3である)。このような触媒の一例は、B(Cである。
【0050】
塩基触媒の例は、アミンまたは第四級アンモニウム化合物、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどである。アミン触媒は単独で用いることができ、あるいは他の触媒(例えば、カルボン酸錫塩または有機スズカルボキシラートなど)とともに用いることができ、例えば、ラウリルアミンはスズ化合物とともに用いる場合に特に効果的であり得る。
【0051】
Si‐アルコキシ基を有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと、Si‐アルコキシ基を有する架橋剤とは、水分の非存在下では触媒の存在下であっても反応しないため、これらに基づく硬化性組成物は、試薬が乾燥されており、かつ容器が湿性であることを条件として、単一の容器で保管することができる。容器を開封した直後に、硬化性組成物を表面に適用することができ、一般に、大気中の水分の存在下で硬化する。硬化は、周囲温度で、触媒、特にチタンテトラアルコキシドまたはキレート化チタンアルコキシドの存在下で急速に進行する。
【0052】
本発明による硬化性組成物のタイプの1つは、下記式:
【化22】

(式中、各Rは、1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R’は、1から6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、または式:‐ORのアルコキシ基を表し;POはポリオキシアルキレンブロックを表し、Aは二価の基を表し、nは少なくとも1個の値を有する)
のSi‐アルコキシ基を有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと、シロキサン縮合触媒とを含み、防湿容器に包装されている。
【0053】
下記式:
【化23】

の反応性基で末端化されたポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、そのブロックコポリマー鎖の各末端に2または3個のSi‐結合反応性アルコキシ基を有する。このコポリマーは、ネットワークを形成させるために、高度に官能性または分岐状架橋剤と、反応させる必要がない。このようなポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーとともに用いる架橋剤は、例えば、ポリジオルガノシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン、例えば、下記式:
【化24】

の基などのSi‐アルコキシ基で末端化されたポリジメチルシロキサンである。
このようなアルコキシ末端ポロジオルガノシロキサンは、SiH末端ポリジオルガノシロキサンと、下記式:
【化25】

のエチレン性不飽和アルコキシシランとの、白金族元素触媒の存在下での反応によって製造することができる。このポリジオルガノシロキサンは、例えば、4から500シロキサン単位の範囲の重合度のポリジメチルシロキサンであってよい。
【0054】
硬化性組成物はまた、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーに加えて、ポリオキシアルキレン部分を全く有さないが、ケイ素に結合した同じ反応性アルコキシ基Xを有するポリオルガノシロキサンを含むことができる。このポリオルガノシロキサンは、例えば、ポリジオルガノシロキサン、例えば、反応性基Xで末端化されたポリジメチルシロキサンであることができる。架橋剤が、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと、同じ反応性基Xを有するポリオルガノシロキサンとに同時に反応すると、このポリオルガノシロキサンは反応して、水不溶性、親水性のポリマーネットワークに組み込まれる。ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの、同じ反応性基Xを有するポリオルガノシロキサンに対する割合は、100:0から10:90の範囲内の任意の値であってよい。
【0055】
本発明の硬化性組成物は、フィラーを含有していなくても、補強性フィラーまたは非補強性フィラーを含有していてもよい。適切なフィラーの例として、シリカ(ヒュームドシリカを含む)、溶融シリカ、沈殿シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸塩(例えばタルク、長石、およびカオリン粘土)、ベントナイト、および他のクレーならびに固体シリコーン樹脂(通常縮合、分岐されたもの)、ポリシロキサン、例えば式:(SiO4/2)のQ単位および式:RSiO1/2のM単位を含むシリコーン樹脂(式中、R置換基は、1から6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、かつ、M単位のQ単位に対する比が0.4:1から1:1までの範囲にあるもの)が挙げられる。
【0056】
本発明の第三の態様により提供する、水不溶性、親水性のポリマーネットワークは、
ネットワークの形成前にポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー上に存在していたケイ素結合アルコキシ基間の縮合反応によって形成された、ケイ素原子上の架橋部位間の結合によって、かつ/あるいは、
ネットワークの形成前に前記ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー部分上および前記有機ケイ素架橋部分上に存在していたケイ素結合アルコキシ基間の縮合反応によって形成された、ケイ素原子上の架橋部位に結合した有機ケイ素架橋部分を介して、
互いに連結したポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー部分を含む。
【0057】
このような親水性ポリマーネットワークの形成方法は、本発明の別の態様により提供され、本発明の第二の態様による硬化性組成物を反応させる工程を含む。これは、ケイ素結合反応性アルコキシ基Xを少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの2個以上を、場合により、この基Xと反応可能なケイ素結合アルコキシ基Yを少なくとも2個有する有機ケイ素架橋剤の存在下で、縮合反応により互いに反応させる工程を意味する。ただし、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが1分子当たり反応性基Xを2個だけしか有していない場合には、架橋剤が存在し、かつ、この架橋剤が1分子当たり平均して2個より多い反応性基Yを有する。
【0058】
したがって、本発明の水不溶性、親水性のポリマーネットワークは、ネットワークの形成前のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーのケイ素原子上、好ましくは、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーのポリオルガノシロキサンブロックに位置するケイ素原子上のSi‐アルコキシ基に由来する架橋部位から誘導されたSi‐O‐Si結合によって互いに連結されたポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー部分を含むことができる。
【0059】
本発明の組成物を硬化することによって製造されるポリマーネットワークは、実質的に水不溶性であり、特異な親水特性を有する。硬化ポリマーネットワークの表面は、乾燥状態ではある程度疎水性であるが、表面が水または水性液で濡らされると親水性になる。この効果は可逆的である。濡れた表面が乾燥すると、疎水特性に復帰し、再度湿すことによって再び親水性になり得る。特に、ブロックコポリマー中のポリシロキサンの重合度とポリエチレンオキシドの重合度との合計が15から35の範囲にある場合に、このような特性を持つ親水性ポリマーネットワークが生成する。
【0060】
この可逆的な親水性は、水滴を表面に適用し、経時的に水滴を観察することによって知ることができる。水滴を表面に最初に適用すると、表面上に水滴として留まり、表面上での水の接触角を測定することができる。水滴の表面への適用の2秒後に測定すると、この接触角が典型的に60°から120°の範囲にあり、通常適用30秒後でも上記の60°より大きいが、水滴は時間とともに拡がり、接触角は3分後には少なくとも10°は減少し、さらに減少し続け、接触角は概ね60°以下となり、水滴の適用10分後には親水性表面を示す30°以下になり得る。疎水性表面からより親水性表面のへの変化は、ポリマーネットワーク中のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの一部をポリオルガノシロキサンで置き換えると観察される。水との接触角の減少により測定されるこの変化の程度は、ポリマーネットワーク中のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの割合が低下するにつれて小さくなるが観察される。その後、表面が乾燥し、この乾燥した表面に水滴を適用すると、水滴の適用2秒後に測定した接触角は、最初に水滴を適用した後に測定した接触角と実質的に同じであり、最初の適用後と実質的に同じ速さで接触角が時間とともに減少する。
【0061】
本発明のポリマー組成物は、ポリマー表面が水または水性液に接触しなければならず、かつ親水性が必要とされる各種の用途で使用可能である。本ポリマー組成物はコーティングまたはシーラントとして表面に適用することができ、その場で硬化して、水不溶性、親水性のポリマーネットワークを形成することができる。あるいは、本ポリマー組成物は、例えば押出しにより成形することができ、その後、硬化してポリマーネットワークを形成することができる。ヒドロシリル化反応により硬化するポリマー組成物は、例えば、成形し、その後加熱硬化することができる。
【0062】
本発明を、以下の実施例により例証する。実施例中、別段表示しない限り、部およびパーセントはいずれも、重量部および重量パーセントである。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
平均の重合度(D.P.)が4.5であるポリエチレングリコールジアリルエーテル6.20gを、三口フラスコ内のトルエン31.20gに入れ、窒素下65℃に加熱した。続いて、165μlのクロロ白金酸、その後、平均重合度19のジメチル水素シリル末端ポリジメチルシロキサン流体であるポリジメチルシロキサン流体100gを、滴下により添加した。SiH基のアリル基に対するモル比は、3:1であった。この混合物を、80℃にて1時間加熱し、その後冷却して、SiH含量2.37%のSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーの溶液を形成させた。
【0064】
こうして製造したSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー100gを、三口フラスコ内の30gのトルエンに入れ、窒素下、65℃にて加熱した。37.16gのビニルトリメトキシシランを、滴下により添加した。SiH基のビニル基に対するモル比は、1:3であった。この混合物を、80℃にて1時間加熱し、その後冷却して、Si(CH‐CHCHSi(OCH基で末端化されたポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液を形成させた。このブロックコポリマーは、3535の数平均分子量Mnを有し、6.95重量%のメトキシ基を含有していた。
【0065】
実施例1のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマーを、チタニウムテトラ-n-ブトキシド触媒と、ブロックコポリマーに基づいて0.1重量%のチタンの量で混合し、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。親水性ポリマーネットワークが生成した。
【0066】
[実施例2]
下記式:
【化26】

のビニル末端Q‐分岐状ポリシロキサンは、合計4個のD単位(すなわち、1分子当たりnの合計=4)を有する。
このビニル末端Q‐分岐状ポリシロキサンを、下記式:
【化27】

の型の重合度4を有するSi‐H末端トリメトキシシリル官能性ポリジメチルシロキサンと、ビニルシロキサンコポリマーに白金0.5%の量で溶解した白金ビニルシロキサン錯体2重量%の存在下で反応させて、分岐状Si‐メトキシ官能性架橋剤を製造した(分子量1657およびメトキシ含量25.55重量%)。SiH末端ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーのSiH基の、ビニル基に対するモル比は、1.4:1であった。
【0067】
実施例1のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマー9.09gを、0.91gのSi‐メトキシ末端分岐状架橋剤、および全シロキサンに基づいて0.1重量%のチタン量のチタニウムテトラ‐n‐ブトキシド触媒と反応させた。これを、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。実施例1のネットワークよりも硬質の親水性ポリマーネットワークが生成した。
【0068】
[実施例3〜5]
実施例1のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマーの一部を、以下の重量比〔50:50(実施例3)、30:70(実施例4)、および10:90(実施例5)〕で、Si‐メトキシ末端ポリジメチルシロキサンと置き換えたことを除いて、実施例2を繰り返した。これらのポリジメチルシロキサンは、Si(CH‐CHCH‐Si(OCH基で末端化されていて、実施例1のブロックコポリマーと同様の分子量およびメトキシ含量を有していた。各組成物は、親水性ポリマーネットワークに硬化した。
【0069】
実施例2から5の硬化ポリマーネットワークのそれぞれについて、水の接触角を経時的に測定した。1μlの水滴を各表面に適用し、30秒、1,2および3分後、ならびに実施例2および3については5分後に接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0070】
表1(図3)により理解されるとおり、実施例2から5の硬化ポリマー上での水の接触角は時間とともに減少した。実施例2の硬化ポリマーでは、表面に適用30秒後の約95°から表面適用3分後には約70°に減少した。これは、水と接触している間に、表面がより親水性になったことを示している。
【表1】

【0071】
[実施例6]
実施例1の製法に従って、製造したSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー100gを、85.46gのビニルトリメトキシシランと反応させて(SiH対ビニルの比1:3)、分子量1754およびメトキシ含量18.47重量%を有し、Si(CH‐CHCH‐Si(OCH基で末端化された、ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーを製造した。
【0072】
実施例6のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマーを、チタニウムテトラ‐n‐ブトキシド触媒と混合してチタン0.1重量%の濃度とし、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。親水性ポリマーネットワークが生成した。
【0073】
[実施例7]
実施例6のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマー9.03gを、実施例2で記載したSi‐メトキシ末端分岐状架橋剤0.97gおよびチタニウムテトラ‐n‐ブトキシド触媒と混合してチタン0.1重量%の濃度とし、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。実施例6のネットワークよりも硬質の親水性ポリマーネットワークが生成した。
【0074】
[実施例8〜10]
実施例6のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマーの一部を、以下の重量比〔50:50(実施例8)、30:70(実施例9)、および10:90(実施例10)〕で、Si‐メトキシ末端ポリジメチルシロキサンと置き換えたことを除いて、実施例7を繰り返した。これらのポリジメチルシロキサンは、Si(CH‐CHCH‐Si(OCH基で末端化され、実施例1のブロックコポリマーと同様の分子量およびメトキシ含量を有していた。各ブレンドを、チタニウムテトラ-n-ブトキシド触媒と混合してチタン0.1重量%の濃度とし、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。各組成物は親水性ポリマーネットワークに硬化した。
【0075】
実施例7から10の硬化ポリマーネットワークのそれぞれについて、水の接触角を経時的に測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0076】
表2から理解されるとおり、実施例7の硬化ポリマー上の水の接触角は、表面への適用30秒後の約98°から表面への適用5分後の約72°に、時間とともに減少した。実施例8から10の硬化ポリマー上の接触角も減少したが、その顕著性は劣っていた。
【0077】
[実施例11]
平均重合度11.8のジメチル水素シリル末端ポリジメチルシロキサン流体100gを、三口フラスコ内の50gのトルエンに入れ、窒素下、80℃に加熱した。平均重合度7のポリエチレングリコールジアリルエーテル1滴を添加し、次いで、30μlのクロロ白金酸触媒を添加した。その後、12.76gのポリエチレングリコールジアリルエーテルが滴下により添加した。SiH基のアリル基に対する比は、3:1であった。この混合物を、80℃にて1時間加熱し、その後冷却した。SiH含量2.325%のSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液が生成した。
【0078】
100gのこのSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーを三口フラスコ内の50gのトルエンに入れ、窒素下、80℃にて加熱した。30μlのクロロ白金酸触媒を添加し、その後54.75gのビニルトリメトキシシランを滴下により添加した。SiH基のビニル基に対するモル比は、1:3であった。この混合物を、80℃にて1時間加熱し、その後冷却した。Si(CH‐CHCH‐Si(OCH基で末端化されたポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液が生成した。このブロックコポリマーは、数平均分子量Mn2611を有し、10.26重量%のメトキシ基を含有していた。
【0079】
実施例11のSi‐メトキシ末端ブロックコポリマーを、チタニウムテトラ‐n‐ブトキシド触媒と混合して、ブロックコポリマーに基づいてチタン0.1重量%の濃度とし、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。親水性ポリマーネットワークが生成した。
【0080】
[実施例12]
SiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレン中間体ブロックコポリマーを、平均重合度6.7のポリエチレングリコールジメタリルエーテル15.43g、平均重合度18のジメチル水素シリル末端ポリジメチルシロキサン流体73.22g、および平均重合度54のジビニル末端ポリジメチルシロキサン流体11.35gを三口フラスコ内の25gのトルエンに入れ、窒素下85℃にて加熱し、次いで0.1gの白金ビニルシロキサン錯体を添加することによって製造した。EO基のPDMS基に対する重量比は、1:5であった。この混合物を、80℃にて1時間加熱し、その後冷却して、SiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液を形成させた。
【0081】
ブロックコポリマーは0.545%のSiH含量を有し、残渣の触媒を含有していた。100gのSiH末端ポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーを、三口フラスコ内の25gのトルエンに入れ、窒素下80℃にて加熱した。7.67gのビニルトリメトキシシランを滴下した。SiH基のビニル基に対するモル比は、1:3であった。この混合物を、85℃にて1時間加熱し、その後冷却して、Si(CH‐CHCH‐Si(OCH基で末端化されたポリシロキサン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液を形成させた。このコポリマーは、数平均分子量Mn10133を有し、2.48重量%のメトキシ基を含有していた。
【0082】
次いで、このSi‐メトキシ末端コポリマーを、ジブチルスズジラウラート(DBTDL)触媒と混合して1.5%の濃度とし、さらに、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)架橋剤を、コポリマーに基づいて7重量%の量で混合し、試験表面に適用し、湿った大気中、周囲温度にて硬化させた。親水性ポリマーネットワークが製造された。
【0083】
硬化ポリマーネットワーク上の水の接触角を、上述したように経時的に測定した。結果を表3に示す。表3から理解されるとおり、硬化ポリマーネットワーク上の水の接触角は時間とともに、表面への適用5秒後の約113°から、表面への適用5分後の約53°に減少した。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価の基を介して互いに連結した1個以上のポリオルガノシロキサンブロックと1個以上のポリオキシアルキレンブロックとを有し、かつ、少なくとも2個のケイ素結合アルコキシ基を有する、ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項2】
PS−(A−PO)−(A−PS)
(式中、POはポリオキシアルキレンブロックであり、PSはポリオルガノシロキサンブロックを表し、Aは二価の基であり、mおよびnは独立して少なくとも1の値を有する)
であり、
式:(R’)(OR)−SiO(3−q)/2
(式中、Rは1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、各R’は1から6個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、または式:‐ORのアルコキシ基を表し、かつ、qは0、1または2の値を有する)
のアルコキシ置換シロキサン単位を少なくとも1個含み、
但し、ケイ素結合基ORが前記ブロックコポリマー中に少なくとも2個存在することを条件とする、請求項1に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項3】
PS−(A−PO−A−PS)
(式中、PS、PO、A、およびnは請求項2で定義したとおりである)
である、請求項1または2に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項4】
前記式中の末端のPSブロックが、式:
【化1】

(式中、RおよびR’は請求項2で定義したとおりである)
を有するアルコキシ置換シロキサン単位であって、酸素原子を介してPSブロックの別のケイ素原子に連結している単位で末端化されたポリオルガノシロキサンブロックを表す、請求項2または3に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項5】
前記PSブロックの大部分が、4から40個のシロキサン単位を有するポリジメチルシロキサンブロックである、請求項2〜4のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項6】
前記POブロックが、一般式:
−(C2sO)
(式中、各sは、独立に2から6までの値を有し、tは、4から40までの値を有する)を有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項7】
Aが、PSブロックとPOブロックとを一緒に連結する二価の基であり、
2から10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基、および
一般式:
−C2s−[Si(R)O]Si(R)C2s
〔式中、Rは、アルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル(好ましくは1から18個の炭素原子を有するもの)で定義され、sおよびtは請求項6で定義したとおりである〕
のジオルガノシリルアルキレン単位で末端化された二価のポリオルガノシロキサン基
から選択される基である、請求項2〜6のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項8】
ヒドロシリル化触媒の存在下、2個のSi‐H基を有するポリオルガノシロキサンと、2個の脂肪族不飽和基を有するポリエーテルとを、任意で2個の脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンが存在していてもよい条件下、Si‐H基が脂肪族不飽和基に対してモル過剰すなわち過剰数で存在する量で反応させることによってヒドロシリル化反応させ、その後、得られたブロックコポリマーと、少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基および1個の脂肪族不飽和基を有するアルコキシ官能性有機ケイ素化合物とを、さらにヒドロシリル化反応させることによって製造される、請求項2〜7のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項9】
ケイ素結合アルコキシ基のそれぞれが、式:(OR)‐SiO1/2‐を有する隔てられたシロキサン単位中に存在している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー。
【請求項10】
水不溶性、親水性のポリマーネットワークに硬化可能なポリマー組成物であって、
ケイ素結合反応性アルコキシ基Xを少なくとも2個有する請求項の1から9までのいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーを含み、
場合により、前記基Xと縮合反応により反応可能である、ケイ素結合アルコキシ基Yを少なくとも2個有する有機ケイ素架橋剤を含有していてもよく、
但し、前記ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、反応性基Xを1分子あたり2個しか有さない場合には、前記有機ケイ素架橋剤が存在し、かつ、前記有機ケイ素架橋剤が、ケイ素結合反応性アルコキシ基Yを1分子あたり平均2個より多く有していることを条件とする、硬化性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記架橋剤が、式:(SiO4/2)のQ単位、式:RSiO3/2のT単位、式RSiO2/2のD単位、および式:RSiO1/2のM単位から選択されるシロキサン単位を含むポリシロキサン(式中、置換基R、R、およびRは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基およびアルコキシ基から選択され、置換基R、R、および/またはRの少なくとも3個がアルコキシ基である)である、請求項10に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項12】
存在する前記ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、ケイ素結合反応性アルコキシ基Xを平均してそれぞれ2個より多く有し、かつ、架橋剤が存在しない、請求項10に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項13】
プロトン酸、ルイス酸、有機塩基および無機塩基、遷移金属化合物、金属塩、ならびに有機金属錯体からなる群から選択される縮合触媒をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記シロキサン縮合触媒が、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから選択される遷移金属の化合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項15】
前記触媒が、チタニウムテトラアルコキシドまたはキレート化チタニウムアルコキシドであることを特徴とする、請求項14に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項16】
前記シロキサン縮合触媒が、錫の有機化合物を含むことを特徴とする、請求項14に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項17】
ポリオルガノシロキサンであって、ポリオキシアルキレン部分を全く有さず、ケイ素結合反応性アルコキシ基を1個以上有するポリオルガノシロキサンをさらに含む、請求項10〜16のいずれか一項に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項18】
シリカ(ヒュームドシリカを含む)、溶融シリカ、沈降シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリケート(タルク、長石、および白陶土を含む)、ベントナイトおよび他のクレー、ならびに固体シリコーン樹脂からなる群から選択されるフィラーをさらに含む、請求項10〜17のいずれか一項に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項19】
前記組成物が、シロキサン縮合触媒を含有し、かつ、防湿容器に包装されていることを特徴とする、請求項10〜18のいずれか一項に記載の硬化性ポリマー組成物。
【請求項20】
ネットワークの形成前に請求項1〜9に記載のポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー上に存在していたケイ素結合アルコキシ基間の縮合反応によって生じるケイ素原子上の架橋部位間の結合によって、かつ/あるいは、
ネットワークの形成前に前記ポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー部分上および前記有機ケイ素架橋部分上に存在していたケイ素結合アルコキシ基間の縮合反応によって生じるケイ素原子上の架橋部位に結合した有機ケイ素架橋部分を介して、
互いに連結したポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー部分を含む、水不溶性、親水性のポリマーネットワーク。
【請求項21】
請求項10から19のいずれか一項に記載の硬化性組成物を、水分の存在下で反応させる工程を含む、請求項20に記載の親水性ポリマーネットワークの形成方法。
【請求項22】
前記ポリマーネットワークの表面上の水滴の接触角が、表面に水滴を適用した後で時間とともに減少することによって示されるとおり、前記ポリマーネットワークの表面を水で湿らせると、より親水性になり、逆に、前記ポリマーネットワークの表面を乾燥させると、より疎水性になる、請求項20に記載の水不溶性、親水性のポリマーネットワーク。

【公表番号】特表2010−525133(P2010−525133A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504746(P2010−504746)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055369
【国際公開番号】WO2008/132236
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】