説明

ポリマーコーティングを有するセルロース製品

【課題】結晶性エチレンセグメントを含有し、油、グリース、溶媒、水、及び水蒸気に対する耐性を付与するのに有用である水性系の半結晶性酢酸ビニル−エチレンポリマーエマルジョンを含む、紙などのセルロース製品のコーティング組成物を提供する。
【解決手段】エチレンと酢酸ビニルなどのコモノマーとの直接の水性系遊離基乳化重合により調製される半結晶性水性系ポリマーエマルジョンであって、該半結晶性水性系ポリマーエマルジョンは結晶溶融点と、5〜100J/gの範囲の結晶融解熱とを有する。この半結晶性水性系エマルジョンポリマーは、油、グリース、溶媒、水、及び水蒸気に対する耐性を付与するための紙又は板紙などのセルロース製品用コーティングとして直接使用する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
未処理紙のようなセルロース製品が水や他の水性及び非水性液体に対して浸透性であるということは、当該技術において周知である。かくして、水、油、グリース、溶媒、等のような様々な液体に対するバリヤ性及び耐性を付与するために、紙や他のセルロース製品をロウ、ポリマー、フルオロカーボン、等のような様々なコーティング剤でコーティング又は処理することが慣行になっている。かかるコーティング又は処理された紙、板紙及び箱用厚紙基材は、食品包装材及び食品ラッパー、食品容器、並びに食品に接触する様々な他の紙基材用に用いられる。ファーストフード及び電子レンジ適用品のような高脂肪/油含分食品を包装又は保持するための最近のセルロース基材グレードの開発品は、熱い油及び/又は脂肪のような流体がセルロース基材を透過して包装品の外部を汚すのを防止するために、セルロース基材上のコーティングを必要とする。更に、かかるコーティングはまた、倉庫及び/又は運送容器中において高温にさらされかねない包装食品の貯蔵寿命のために、セルロース基材を流体が透過するといったことを防止しなければならない。
【0002】
肉、果物及び野菜を包装する際に用いるための、ポリエチレンやロウでコーティングされた板紙のような撥水紙製品は、再パルプ化するのが困難である。それらのコーティングは、繊維を一緒に保持する傾向がある。コーティングの粒子は、紙メーリング装置、ワイヤプレス及び乾燥機に粘着することがよくある。加えて、食品等を包装するためのバリヤコーティングされた紙製品の多くは粘着性になって、コーティングされた板紙の積み重ねられた又は隣接しているシートが一緒にブロッキング又は粘着する原因となる。
【0003】
ファーストフード及び電子レンジ適用品のような食品の包装のために利用されるセルロース基材は、材料が最終容器への加工中にしばしば折り畳まれ、折り目を付けられ又は巻き付けられるので、可撓性である必要がある。基材を油、脂肪及び他の液体がしみ通るのを防止するために、これらのセルロース基材用のバリヤコーティングは、これらの折畳み目、折り目又は巻付け部分におけるセルロース繊維を保護する必要がある。フルオロカーボンは、繊維の表面エネルギーを下げることにより、これを成し遂げる。たいていのポリマーエマルジョンコーティングは、かかる応力を受けるとポリマー皮膜が破れるので、折畳み目又は折り目線を保護できない。本発明のポリマーエマルジョンコーティングは、それらの可撓性により、コーティングが折畳み目又は折り目線を横切って伸張しそして液体が基材をしみ通るのを防止するようにされる点において特異なものである。
【0004】
バリヤコーティングされた紙製品の分野において先行技術の例示となる代表的特許文献には、次のものが含まれる。
【0005】
米国特許第5897411号明細書には、包装作業において用いるための紙及び板紙、例えば、樹脂ラテックスと小板構造を有する疎水性成分とを含む再パルプ化可能な水蒸気バリヤ層でコーティングされた食品包装材が開示されている。その例には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル、カルボキシル化ブタジエン−スチレン、エチレン/塩化ビニル、等が包まれる。小板構造を有する疎水性成分の例は、雲母、タルク、シリカ、等を包含する。
【0006】
米国特許第6066379号明細書には、ロウでコーティングされた板紙の改良品として、バリヤ剤としてポリマーマトリックス/ロウ/顔料混合物を含有する水性コーティングが組み込まれている再パルプ化可能な撥水板紙が開示されている。この撥水コーティング剤の皮膜は、顔料、ロウ、及びカルボキシル化ブタジエン−スチレンラテックスのようなペンダントのカルボン酸によってイオン的に架橋されたポリマー鎖のポリマーマトリックスを含む。
【0007】
米国特許第5876815号明細書には、改善されたグリース、油、ロウ及び溶媒反撥性と改善された接着性及び印刷性との両方を有するラミネート製品が開示されている。該ラミネートは紙基材を含み、すなわち、該基材の少なくとも一方の表面上の、フッ素含有ポリマー部分の少なくとも1層と、フッ素含有ポリマー部分層の該少なくとも1層上の、ラテックスを含む少なくとも1層との上面を含む。ラテックスの例は、スチレン−アクリルコポリマー、エチレン/酢酸ビニル(Airflex 100HS)、エチレン/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリル、等を包含する。
【0008】
国際公開第02/14426号パンフレットには、フルオロケミカルを含有しないバリヤ配合物が取り入れられている耐グリース紙製品が開示されている。該配合物はまた、シリコーンの使用なしに下にある基材に剥離性を付与するためのコーティング剤又は処理剤として有用である。該配合物は、ポリビニルアルコールと脂肪酸メラミンとパラフィンロウを含有する。
【0009】
米国特許第5989724号明細書には、一方の表面上に下塗りコーティング及び該下塗りコーティング上の少なくとも1層の追加のコーティングを塗布されたリサイクル可能でかつ再パルプ化可能なコーティングされた紙素材が開示されている。両方のコーティングは、アクリル、エチレン−酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、等のようなポリマーを基剤とする。ポリエチレン皮膜及びロウコーティングと異なり、記載されたコーティングは再パルプ化可能である。
【0010】
米国特許第3436363号明細書には、重合性エテノイド不飽和一塩基性又は多塩基性カルボン酸又はスルホン酸及び水の存在下でのエチレンの重合のための回分式又は連続式の方法が開示されている。代表的重合性エテノイド酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、等を包含する。ポリマーエマルジョンの固形分レベルは、約25〜30重量%である。該エマルジョンは、紙用コーティング剤、繊維製品仕上げ剤、艶出し剤及び表面コーティング剤に有用であると報告されている。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5897411号明細書
【特許文献2】米国特許第6066379号明細書
【特許文献3】米国特許第5876815号明細書
【特許文献4】国際公開第02/14426号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5989724号明細書
【特許文献6】米国特許第3436363号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、水蒸気、油、グリース、溶媒、水並びに他の水性及び非水性流体に対するバリヤを付与するバリヤコーティングが適用されている紙又は板紙製品のようなセルロース製品の改良を目指している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この改良は、コーティングとしての乳化重合したエチレン−酢酸ビニルポリマーに存し、該ポリマーは、
(a)20℃/分の加熱速度にて測定して35〜110℃、好ましくは50〜90℃の範囲の結晶溶融点(Tm)、及び
(b)6.28rad/secにて測定して115℃において少なくとも1×105ダイン/cm2の引張貯蔵弾性率、
を有する。
【0014】
加えて、これらのポリマーは、(c)5〜100ジュール/グラム(J/g)、好ましくは15〜70J/gの範囲の結晶融解熱(Hf)、(d)+25℃〜約−35℃のガラス転移温度(Tg)、及び(e)約50℃の温度における非ブロッキング性、を有するべきである。
【0015】
有意な利点を本発明でもって達成することができ、そしてそれらは次のものを包含する。すなわち、
フルオロケミカルを必要としないバリヤコーティングのセルロース含有組成物を製造する直接方法を提供できること、
電子レンジに適用可能でありかつ熱い油及びグリースに耐性である紙及び板紙製品を製造できること、
バリヤ性を有する紙及び板紙を製造するために湿式コーティング法を使用できること、並びに
再パルプ化可能でなくそして埋立て処理されねばならないポリエチレン紙及び板紙とは異なり再パルプ化可能である板紙製品を提供できること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の水性系エチレン−酢酸ビニルポリマーエマルジョンは、酢酸ビニル及びエチレンを基剤とし、酢酸ビニルの重合単位のレベルはポリマーの15〜90重量%の範囲及びエチレンの重合単位のレベルは10〜85重量%の範囲、好ましくは25〜80重量パーセントの酢酸ビニル及び20〜75重量%のエチレン、最も好ましくは35〜75重量%の酢酸ビニル及び25〜65重量%のエチレンである。本発明のもう一つの態様は、ポリマーが30〜50wt%の酢酸ビニル及び50〜70wt%のエチレンで構成される水性系酢酸ビニル−エチレンポリマーエマルジョンである。
【0017】
酢酸ビニル−エチレンポリマーのバリヤ性を堅実に高めるための追加の成分が、カルボン酸又は自己架橋性成分で取り入れられる。カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイソクロトン酸のようなC3〜C10アルケン酸、並びにマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸のようなα,β−不飽和C4〜C10アルケン二酸を包含する。架橋性モノマーは、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、NMAとアクリルアミドの、典型的には50/50比の、しばしばMAMDと称される、混合物、アクリルアミドブチルアルデヒド、ジメチルアセタールジエチルアセタール、アクリルアミドグリコール酸、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル、イソブチルメチロールアクリルアミド、等を包含する。NMA及びMAMDが好ましい架橋剤であり、また商業的に好ましいものである。典型的には、これらの酸及び自己架橋性モノマーは、0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量にて取り入れられる。バリヤ用途用の典型的なポリマーは、25〜80%の酢酸ビニル含有量、20〜75%のエチレン含有量、及び該ポリマーの0〜5重量%のカルボン酸又は自己架橋性モノマーレベルを有する。
【0018】
酢酸ビニル−エチレンとの乳化共重合のために用いることができる他のエチレン列不飽和モノマーは、C1〜C15アルキルビニルエステル、塩化ビニル、C1〜C15アルキルアクリレート又はC1〜C15アルキルメタクリレート、例としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのようなもの、C1〜C6ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなもの、C1〜C15アルキルマレエート、C1〜C15アルキルフマレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ナトリウムビニルスルホネート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート、及びそれらの混合物や、窒素含有モノオレフィン系不飽和モノマー、特にニトリル、そしてアミドを包含するが、しかしそれらに限定されない。該モノマーは、小量にて、例えばポリマーの0〜約10重量%、好ましくは5重量%未満にて取り入れることができる。
【0019】
乳化重合によるバリヤ用途用の酢酸ビニル−エチレンポリマーの開発の際に、ポリマー中の酢酸ビニル及びエチレンの濃度のみがバリヤコーティングとしてのその効用を担うものではない、ということが分かった。基材に接着性及び可撓性を付与するのに十分なレベルの無定形エチレン−酢酸ビニルポリマーセグメント及びバリヤ特性と非ブロッキング性の適正なバランスをもたらすのに十分なレベルの結晶性エチレンポリマーセグメントがあることが必要である、ということが分かった。重合したエチレンセグメントは、ポリマーにおけるエチレン結晶化度に通じる。
【0020】
ポリマー中の結晶性ポリエチレンドメインは、ポリマーにTm及びHfを与える。ポリマー中の無定形エチレン−酢酸ビニルドメインと結晶性エチレンドメインとのバランスに影響を与えることにより、ポリマーがTg、Tm、Hf及び高温すなわち約115℃の温度における高い引張貯蔵弾性率を示すある範囲の水性コポリマー分散液を生じさせることができる、ということも分かった。
【0021】
結晶性セグメントに関して、本発明のポリマーは、5〜100ジュール/グラム(J/g)、好ましくは10〜70J/gの範囲の結晶融解熱及び35〜110℃、好ましくは50〜90℃の範囲の結晶溶融点を有する。
【0022】
ポリマー中の結晶性セグメント及び分枝度は高い引張貯蔵弾性率を与え、また他の酢酸ビニル−エチレンポリマーが溶融して溶融流動特性を示す温度において、高粘性であって最小限の流動性しか有さない。ここに記載されたポリマーは、それらの溶融温度より十分に高い温度において、高粘度及び流動抵抗を維持する。該弾性率は、6.28rad/secの試験周波数にて測定される場合、115℃において少なくとも1×105ダイン/cm2(好ましくは、2×105)であるべきである。ポリマーのTgは、約+25〜−40℃であることができる。−25〜−35℃のTgが、折り目が付けられた又は折り畳まれた紙についての使用にとって好ましい。
【0023】
ポリマーのTgは、エチレン含有量を調整することにより制御することができ、すなわち、他のコモノマーに対してポリマー中に存在するエチレンが多くなればなるほど、Tgはより低くなる。しかしながら、結晶性ポリエチレンドメインの形成に有利である特定の重合条件下では、Tgがエチレン濃度の増加に比例して一貫して減少し続けることはない、ということが分かった。
【0024】
ポリマー中のエチレンの結晶性ドメインの形成を増加させる一つの好ましいやり方は、反応器中に存在する未反応の酢酸ビニルレベルが重合過程中の種々の段階において最小になるように、すなわち未反応の遊離酢酸ビニルモノマーが5%未満になるように、重合過程中の酢酸ビニルの添加を遅らすか又は段階的にすることである。特に、カルボキシル又は自己架橋性官能基の不存在下では、初期の間は重合過程における酢酸ビニルの添加を段階的にすることが好ましい。典型的には、全重合期間の75%以内で、そして一般には3時間以内で、添加を完了する。かくして、酢酸ビニル/エチレンの重合を、エチレンの、全部ではなくほとんどが、無定形領域にある一つの段階において行うことができ、そして結晶性エチレンドメインの大部分の形成を重合過程の別の段階にて行うことができる。
【0025】
ポリマー内の結晶性エチレンドメインをもたらす他の因子は、重合の圧力と温度である。圧力はポリマー中のより高いエチレン濃度レベルの達成に影響を及ぼすけれども、それはまた、存在するエチレンの量が無定形領域又は結晶性ドメインにあるかどうかを決定する因子でもある。温度もまた、エチレン結晶性の形成に関係がある。最後に、開始剤のレベルもまた、バリヤ用途用のコポリマーを作り上げる際の因子である。
【0026】
重合及びバリヤ用途用のポリマーの形成を行うための好ましい方法では、エチレン、酢酸ビニル、及び随意にカルボン酸の重合を、熱開始剤により又はレドックス系により開始させる。熱開始剤は、典型的には、約60℃以上、好ましくは約70℃以上の温度にて用いられる。レドックス系は、広範囲の温度にわたって用いることができるが、しかし典型的には約60℃以下の温度にて用いられる。この方法において用いられる開始剤の量は、典型的には、水性系酢酸ビニル/エチレン分散ポリマーを形成させるのに従来の方法で用いられるよりも実質的に多い。典型的には、開始剤のレベルは、投入された全モノマーの少なくとも0.5重量%、典型的には0.8重量%より多い。加えて、開始剤は重合時間にわたって添加されることが好ましい。開始剤のかかる比較的高いレベルによって発生された大きなラジカル量が、この低圧重合過程中の間のエチレンの取り込みを促進し、そしてその結果得られるコポリマー中の結晶性エチレンセグメント及び分枝状ポリマー構造をもたらし、かくして高温におけるより高い引張貯蔵弾性率、熱溶融点及び融解熱を示すものと考えられる。熱開始剤は乳化ポリマー技術において周知であり、そして例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、等を包含する。適当なレドックス系は、スルホキシレート及び過酸化物を基剤とする。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートと、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)や過酸化水素のような過酸化物との組合わせが、代表的なものである。
【0027】
次いで、エチレン、そして随意に他のモノマーを、約2000psig(13,891kPa)未満、例えば1200〜1800psig(8375〜12,512kPa)の圧力及び撹拌下で導入し、そして温度を反応温度に上昇される。開始剤、酢酸ビニル及び乳化剤を、反応期間にわたって段階的に加え又は徐々に増加させて加え、そして反応混合物を所望生成物を生成するのに要する時間反応温度に維持する。
【0028】
乳化重合ポリマーを生成する際に、保護コロイド及び界面活性剤を基剤とした安定化用の系を用いることができる。ここに記載された適当な安定化用の系の一つの成分として用いられる保護コロイドは、セルロースコロイドである。セルロース保護コロイドの例は、ヒドロキシエチルセルロースである。保護コロイドは、全モノマーを基準として約0.1〜10wt%、好ましくは0.5〜5wt%の量にて用いることができる。ポリビニルアルコールもまた配合物で用いることができる。
【0029】
界面活性剤又は乳化剤は、モノマーの全量を基準として約1〜10wt%、好ましくは1.5〜6wt%のレベルにて用いることができ、そして乳化重合において従来用いられている公知及び慣用の界面活性剤と乳化剤、主として非イオン性、アニオン性及びカチオン性物質、のいずれも包含することができる。良好な結果をもたらすことが分かったアニオン界面活性剤の中には、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、及びイソデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルスルフェート及びエーテルスルフェートや、ドデシルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート及びスルホスクシネートのようなスルホネートや、様々な線状アルコールホスフェートエステル、分枝状アルコールホスフェートエステル及びアルキルフェノールホスフェートエステルのようなホスフェートエステルがある。
【0030】
適当な非イオン界面活性剤の例は、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール及びドデシルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなどのような、約7〜18個の炭素原子を含有するアルキル基を有しかつ約4〜100個のエチレンオキシ単位を有する一連のアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールの一員であるイゲパール(Igepal)界面活性剤を包含する。他の例は、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、及びそれらのエトキシレート、酸化エチレン/酸化プロピレンブロックポリマー、第二アルコールエトキシレート、並びにトリデシルアルコールエトキシレートを包含する。一般のカチオン性界面活性剤の例は、ジアルキル4級化合物(dialkyl quaternaries)、ベンジル4級化合物、及びそれらのエトキシレートである。
【0031】
本発明の乳化ポリマーのポリマー粒子についての平均粒度分布は、0.05ミクロン〜5ミクロン、好ましくは0.10ミクロン〜2ミクロンの範囲にある。
【0032】
ポリマー中のエチレンレベルは、物質収支により決定された。
【0033】
温度の関数としての引張貯蔵弾性率は、6.28rad/secの試験周波数にて測定され、そしてダイン/cm2として表された。より具体的には、引張り貯蔵弾性率を測定するためのポリマーサンプルの動機械的試験を、次の手順を用いて行った。ASTM−D−4065−94及びASTM−D−5026−94を、この手順についてのガイドラインとして使用した。各ポリマーエマルジョンをフィルムとして流延し、そして周囲条件にて最小限数日間乾燥された。乾燥フィルム厚は、一般に0.3〜0.5mmの範囲にあった。室温にて十分にはフィルムを形成しなかったサンプルについては、ポリマーを100〜150℃にて圧縮成形した。試験に用いられた試験片はフィルムから打ち抜き、幅が約6.3mmで長さが30mmであった。引張動機械的特性を得るために、これらの試験片をRheometric Scientific, Inc.からのRheometrics Solid Analyzer(RSA II)により試験した。繊維/フィルムの固定具及び6.28rad/secの変形周波数を用いて、−100〜200℃の範囲にわたって6℃ごとにデータを得た。線形粘弾性条件を確実にするのを助けるために、適用されたヒズミは典型的に、ガラス領域において0.05%そしてゴム領域において最高で1%であった。等温条件を確実にするために、各温度において1分の均熱時間を使用した。各温度について、RSA IIにより、サンプルの幅、厚さ及び長さに基づいて、引張貯蔵弾性率(E′)、引張損失弾性率(E″)及び正接デルタ(tan δ)を算出した。
【0034】
g、Tm及びHfは、DSC 2010モジュールを備えたTA Instruments Thermal Analyst 3100を用いて、示差走査熱量測定法(DSC)により測定した。ポリマーサンプルは、試験に先だって十分に乾燥させた。サンプルを熱量計内において100℃で5分間保持し、−75℃に冷却し、そして次に走査を20℃/分の加熱速度にて200℃の最終温度まで行った。Tgは、加熱走査中のガラス転移においてベースラインシフトから得られた外挿の開始値に相当する。溶融点温度は、熱流曲線におけるピークに相当する。融解熱は、溶融吸熱線の下にある面積を積分することにより算出された。この積分についてのベースラインは、溶融後の熱流曲線の線状領域を溶融前の熱流曲線との交点まで外挿することにより得られた。
【0035】
本発明のポリマーバリヤコーティングは、バリヤ特性を必要とする多くのセルロース製品に対して用いられるよう設計され、そしてこれらは紙、板紙、袋用素材、切符用素材、段ボール用原紙、さらしクラフト紙又は天然クラフト紙、厚紙、又は他の箱作製用材料を包含する。他のセルロース製品は、綿製品又は綿との混紡製品、壁紙及び木材製品を包含する。セルロース製品は、慣用的に実施されているように、サイズ剤で処理し、又は着色してもよい。
【0036】
ポリマーエマルジョンは、紙や板紙素材のようなセルロース製品上に直接的にコーティングして、油、グリース、溶媒及び水蒸気に対して耐性であるコーティングされた紙又は板紙をもたらすことができ、かくしてポリマーの押出し/ラミネート化のような追加の生産工程をなくし、またフルオロケミカルのような環境上有害な物質を排除することができる。この分散液は、最後の乾燥機の直前の抄紙機のドライエンドの近くで適用することができる。
【実施例】
【0037】
本発明は、次の例を検討することにより更に明らかとなるが、これらの例は本発明の単なる例示であることを意図するものである。
【0038】
(例1)
ここでは、63%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0039】
結晶性エチレンセグメントを含有するエチレン−酢酸ビニルエマルジョンポリマーを、次の手順により製造した。3ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0040】
【表1】

【0041】
Rhodapon UBラウリル硫酸ナトリウム(30%水溶液)はRhodia社により供給され、Natrosol 250GR(2%水溶液)はRhodia社により供給されたヒドロキシエチルセルロースである。
【0042】
次の遅延混合物を使用した。
【0043】
【表2】

【0044】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに開始した。次いで、撹拌を600rpmに増し、そして反応器を80℃に加熱した。反応器をエチレンで1800psig(12,512kPa)に加圧した後、開始剤溶液15gを10.0g/minの速度にて添加した。10分の時点で、モノマーの遅延供給を3.49g/minにて始め、界面活性剤の遅延供給を1.79g/minにて始め、そして開始剤の遅延供給を0.71g/minにて再開した。1800psig(12,512kPa)のエチレン圧を420分間維持した。酢酸ビニルの遅延供給、界面活性剤の遅延供給、開始剤の遅延供給及びエチレンの供給を420分の時点で完了し、その後反応混合物をその温度に更に30分間保持した。
次いで、反応物を30℃に冷却し、脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤6gを添加した。得られたエマルジョンコポリマーの次の特性を測定した。
【0045】
【表3】

【0046】
(例2)
ここでは、51%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0047】
結晶性エチレンセグメントを含有するエマルジョンポリマーを、次の手順により製造した。1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0048】
【表4】

【0049】
Aerosol MA801はCytec社により供給されたものである。
次の遅延供給混合物を使用した。
【0050】
【表5】

【0051】
Rhodacal DS−10はRhodia社により供給されたものである。
【0052】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を900rpmに増し、そして反応器を80℃に加熱した。反応器をエチレンで1400psig(9754kPa)に加圧した後、開始剤溶液15gを5.0g/minの速度にて添加した。この15gの開始剤を添加したら、開始剤の遅延供給速度を0.30g/minに減じた。15分の時点で、モノマーの遅延供給を3.0g/minにて始め、そして界面活性剤の遅延供給を0.72g/minにて始めた。1400psigのエチレン圧を330分間維持した。酢酸ビニルの遅延供給を、3時間の時点で停止した。界面活性剤の遅延供給とエチレンの供給を、330分の時点で停止した。開始剤の遅延供給を360分の時点で停止し、その後反応混合物をその温度に更に30分間保持した。次いで、反応物を30℃に冷却し、脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンコポリマーの次の特性を測定した。
【0053】
【表6】

【0054】
(例3)
ここでは、41%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0055】
結晶性エチレンセグメントを含有するエマルジョンポリマーを、次の手順により製造した。1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0056】
【表7】

【0057】
次の遅延供給混合物を使用した。
【0058】
【表8】

【0059】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を900rpmに増し、そして反応器を60℃に加熱した。次いで、反応器をエチレンで1400psig(9754kPa)に加圧した。次いで、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液10gを添加した。0.3g/minのtert−ブチル水素ペルオキシドと0.3g/minのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの遅延供給を開始した。10分後、モノマーの遅延供給を3.0g/minにて始め、界面活性剤の遅延供給を0.85g/minにて始め、そしてレドックスの遅延供給を0.20g/minに減じた。1400psigのエチレン圧を330分間維持した。モノマー遅延供給を、3時間の時点で停止した。エチレンの供給を、330分の時点で停止した。界面活性剤の遅延供給及びレドックスの遅延供給を、360分の時点で停止した。次いで、反応物を30℃に冷却し、そして脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンコポリマーの次の特性を測定した。
【0060】
【表9】

【0061】
(例4)
ここでは、74%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0062】
結晶性エチレンセグメントを含有するエマルジョンポリマーを、次の手順により製造した。3ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0063】
【表10】

【0064】
次の遅延供給混合物を使用した。
【0065】
【表11】

【0066】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を600rpmに増し、そして反応器を80℃に加熱した。反応器をエチレンで1400psig(9754kPa)に加圧した後、開始剤溶液15gを5.0g/minの速度にて添加した。次いで、開始剤速度を0.90g/minに減じた。10分の時点で、モノマーの遅延供給を8.33g/minにて始め、そして界面活性剤の遅延供給を3.30g/minにて始めた。1400psigのエチレン圧を300分間維持した。酢酸ビニル遅延供給を90分の時点で停止した。2時間の時点で、開始剤速度を1.30g/minに増した。界面活性剤の遅延供給、開始剤の遅延供給、及びエチレンの供給を300分の時点で停止し、その後反応混合物をその温度に更に30分間保持した。次いで、反応物を30℃に冷却し、脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンコポリマーの次の特性を測定した。
【0067】
【表12】

【0068】
(例5)
ここでは、52%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0069】
1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0070】
【表13】

【0071】
次の遅延供給混合物を利用した。
【0072】
【表14】

【0073】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を800rpmに増し、そして反応器を60℃に加熱した。次いで、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液10グラムを添加した。0.3g/minでのtert−ブチル水素ペルオキシドの遅延供給及び0.3g/minでのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの遅延供給を始めた。酢酸ビニルの初期投入量のほとんどが消費された後、反応器をエチレンで1600psig(11,133kPa)に加圧した。次いで、モノマーの遅延供給を0.83g/minにて始め、そして界面活性剤の遅延供給を0.65g/minにて始めた。1600psigのエチレン圧を5時間維持した。モノマーの遅延供給、界面活性剤の遅延供給、及びエチレンでの加圧を、5時間の時点で完了した。レドックス開始剤の遅延供給を320分の時点で完了した。次いで、反応物を35℃に冷却して脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンポリマーの次の特性を測定した。
【0074】
【表15】

【0075】
(例6)
ここでは、45%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0076】
結晶性エチレンセグメントを含有するポリマーエマルジョンを、最初に1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に次の混合物を投入することにより製造した。
【0077】
【表16】

【0078】
次の遅延供給混合物を使用した。
【0079】
【表17】

【0080】
100rpmでの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を900rpmに増し、そして反応器を60℃に加熱した。反応器をエチレンで1400psig(9754kPa)に加圧した後、8%水性ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート10gを反応器に添加した。0.4g/minでのtert−ブチル水素ペルオキシド(4%)の遅延供給及び0.4g/minでの8%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの遅延供給を始めた。10分後に、界面活性剤の遅延供給を0.85g/minにて始め、そしてモノマー溶液の遅延供給を3.0g/minにて始めた。レドックスの速度を反応中に調整して、適度な反応速度を維持した。1400psigのエチレン圧を5.5時間維持した。モノマー溶液の遅延供給を3時間の時点で止めた。エチレン補給弁を5.5時間の時点で閉じた。界面活性剤の遅延供給及び開始剤の遅延供給を6時間の時点で停止した。次いで、反応物を35℃に冷却し、脱ガス器に移して未反応エチレンを除去し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンポリマーの次の特性を測定した。
【0081】
【表18】

【0082】
(例7)
ここでは、63%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/N−メチロールアクリルアミドポリマーを説明する。
【0083】
3ガロンのステンレス鋼圧力反応器に、次の混合物を投入した。
【0084】
【表19】

【0085】
Aerosol MA−801はRhodia社により供給された。
次の遅延供給混合物を使用した。
【0086】
【表20】

【0087】
100rpmの撹拌を、窒素パージとともに始めた。次いで、撹拌を600rpmに増し、そして反応器を80℃に加熱した。反応器をエチレンで1400psig(9754kPa)に加圧した後、開始剤溶液15gを5.0g/minの速度にて添加した。この15gの開始剤を反応器に入れてから、開始剤の遅延供給速度を0.90g/minに減じた。初めに、酢酸ビニルの遅延供給を9.0g/minにて始め、界面活性剤の遅延供給を2.16g/minにて始め、そしてNMAの遅延供給を1.17g/minにて始めた。1400psigのエチレン圧を5.5時間維持した。酢酸ビニルの遅延供給を3時間の時点で停止した。エチレン供給を5.5時間の時点で停止した。界面活性剤の遅延供給、NMAの遅延供給、及び開始剤の遅延供給を6時間の時点で停止し、その後反応混合物をその温度に更に30分間保持した。次いで、反応物を冷却し、脱ガス器に移し、そしてRhodaline 675消泡剤2gを添加した。得られたエマルジョンポリマーの次の特性を測定した。
【0088】
【表21】

【0089】
(例8)
ここでは、49%エチレンを含有する酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸ポリマーを説明する。
【0090】
反応器の初期投入物が300gのNatrosol 250 GR(2%)、10gのAerosol MA801、800gの水、及び120gのモノマー溶液からなることを除き、例2の手順に従った。
【0091】
【表22】

【0092】
(例9)
ここでは、バリヤ用途用のポリマー組成物の比較試験性能を説明する。
【0093】
例1〜8のエマルジョンポリマーからのサンプルを、11ポイントの白板紙(SBS)(基本重量(basis weight)120ポンド/3000平方フィート)上に、ワイヤ巻き線ロッドでコーティングした。おおよそ1.5ポンド/3000平方フィートの乾燥コーティング重量を、#10ロッドで得た。湿潤コーティングを250°Fで90秒間乾燥された。性能結果を表にし、そしていくつかの商業的に入手できるエマルジョンポリマーについての結果とともに下記に示す。第1の市販サンプルは、ポップコーン用袋、ペットフード用袋及びファーストフード用包装材のような用途のためにグリース及び油に対する耐性を付与するようフルオロケミカルで処理されている商業用の耐油性の紙である。第2の市販サンプルは、冷凍食品及び無菌処理包装材のような用途用の多重コート板紙サンプルとしてより一般的に知られている紙/ポリエチレン複合材のものである。このサンプルは、16ポイントのSBS板紙上に0.5ミルの低密度ポリエチレン(LDPE)を押出コーティングすることにより作製される。
【0094】
同じ手順での試験に先だって、コーティングされたシートを、TAPPIの方法T 402 om−93に従って、恒温恒湿室に置きそして状態調節した。
【0095】
油の浸透に対しコーティングされたシートのトウモロコシ油耐性を、トウモロコシ油保留試験でもって行った。トウモロコシ油(マゾラ)2滴を、各サンプルのコーティングされた表面に配置した。油がコーティングに浸透したことを指示するベースシートの可視の変色について、サンプルを24時間にわたって1時間毎に調べた。
【0096】
コーティングのグリース及び油耐性を、キット試験としても知られているTAPPIの方法T 559 pm−96に従って評価した。
【0097】
平らなコーティングされたサンプル(コーティングされたままのもの)について、及び機械方向にそして次いで機械横断方向に1回折り畳まれたサンプルについて、キット試験を行った。折り畳まれたサンプルは十字(+)の領域において試験した。コーティングされたシートの水を吸収する能力を、コッブ(Cobb)吸水試験(T 441 om−90)により評価した。
【0098】
テレビン油耐性及びコーティング欠陥の測定を、TAPPIの方法T 454 om−94でもって行った。
【0099】
水蒸気透過速度を、コーティングされたサンプルについて、TAPPIの方法T 464 om−95に従って測定した。
【0100】
ブロッキング性(コーティングされた面対コーティングされていない面)を、44%及び75%の相対湿度において、TAPPI UM 565を用いて評価した。
【0101】
熱植物油試験: 熱い高脂肪/油含有量の食品についての包装環境をシミュレートするために、植物油すなわちオリーブ油1滴を、コーティングされた高温の紙の上に配置した。この熱油が紙サンプルの裏面まで浸透する時間を記録した。計時は180〜200秒にて止めた。コーティングは、受容可能であるためには、最小限180〜200+秒間熱油の浸透を阻止しなければならない。
【0102】
【表23】

【0103】
【表24】

【0104】
上記の例に記載されたエマルジョンポリマーでコーティングされたすべての紙サンプルは、フルオロケミカルで処理された耐油紙に匹敵するトウモロコシ油の保留、キット試験性能、及びテレビン油の保留結果を示す。フルオロケミカルで処理された紙に対して、本発明のエマルジョンポリマーはまた、紙の水を吸収する能力を有意に低下させ、これは多くの用途にとって有益なことである。
【0105】
エマルジョンポリマーはまた、商業用の多重コート板紙に匹敵する性能も示した。本発明のエマルジョンポリマーの一つの利点は、それらが押出LDPEよりも著しく再パルプ化が可能であり、繊維の回収を可能にすることである。加えて、本発明のエマルジョンポリマーは製紙プロセスにおいて適用して、それによりLDPE押出しに比べて処理工程を省くことができる。
【0106】
例1〜8のエマルジョンポリマーは、商業的に入手できるポリ(酢酸ビニル)(PVAc)よりも、及びポリ(酢酸ビニル−エチレン)(VAE)ポリマーのうちの多くのものよりも、良好なキット性能(平らなものも折り畳まれたものも)を示した。トウモロコシ油及びテレビン油の結果は同等であった。
【0107】
本発明のエマルジョンポリマーはまた、アクリル酸を取り入れたものを含めて商業的なVAEよりも、またPVAcポリマーよりも、良好な耐ブロッキング性を示した。これは、本発明のエマルジョンポリマーはTgが低く、また商業的なポリマーよりも有意に多くのエチレンを含有するので、やや意外なことであった。
【0108】
本発明のポリマーと、熱溶融温度及び融解熱を示すのに十分な結晶性を持たない商業的なポリマーとの間には、熱植物油/オリーブ油耐性に大きい差があった。例1〜8のポリマーは、セルロース基材中への熱油の浸透を180+秒以上防ぐことにより、優れた熱植物油/オリーブ油耐性を示す。熱油の浸透に対して良好な耐性を有していた一つの商業的なVAE−アクリル酸(Tg=−20℃)ポリマーはまた、耐ブロッキング性が乏しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリヤ特性を付与するポリマーコーティングを適用したセルロース製品において、
該ポリマーコーティングが、界面活性剤又は界面活性剤と組み合わされた保護コロイドから本質的になる安定化用の系の存在下でエチレン及び酢酸ビニルを乳化重合させることにより製造される結晶性エチレンセグメントを含むエチレン−酢酸ビニルポリマーを含み、該エチレン−酢酸ビニルポリマーが、
(a)20℃/分の加熱速度にて測定して35〜110℃の範囲の結晶溶融点、及び、 (b)6.28rad/secにて測定して115℃の温度において少なくとも1×105ダイン/cm2の引張貯蔵弾性率、
を有することを特徴とするセルロース製品。
【請求項2】
前記ポリマーが、該ポリマーの全重量を基準として15〜90重量%の酢酸ビニルの重合単位及び約10〜85重量%のエチレンの重合単位から構成されている、請求項1記載のセルロース製品。
【請求項3】
前記ポリマーが、該ポリマーの全重量を基準として25〜80重量%の酢酸ビニルの重合単位及び約20〜75重量%のエチレンの重合単位から構成されている、請求項2記載のセルロース製品。
【請求項4】
前記ポリマーが、該ポリマーの全重量を基準として35〜75重量%の酢酸ビニルの重合単位及び約25〜65重量%のエチレンの重合単位から構成されている、請求項2記載のセルロース製品。
【請求項5】
前記ポリマーが、該ポリマーの全重量を基準として30〜50重量%の酢酸ビニルの重合単位及び約50〜70重量%のエチレンの重合単位から構成されている、請求項4記載のセルロース製品。
【請求項6】
カルボン酸又はN−メチロールアクリルアミドの重合単位が、前記ポリマー中に該ポリマーの約0.2〜約10重量%の量にて存在する、請求項2記載のセルロース製品。
【請求項7】
前記ポリマーが、6.28rad/secにて測定して115℃において少なくとも2×105ダイン/cm2の引張貯蔵弾性率を有する、請求項3記載のセルロース製品。
【請求項8】
前記ポリマーが、エチレンの重合単位、酢酸ビニルの重合単位、及びアクリル酸の重合単位から本質的になる、請求項7記載のセルロース製品。
【請求項9】
前記ポリマーの結晶融解熱が、20℃/分の加熱速度にて測定して約5〜100J/gである、請求項8記載のセルロース製品。
【請求項10】
ガラス転移温度が20℃/分の加熱速度にて測定して+25℃〜約−40℃である、請求項9記載のセルロース製品。
【請求項11】
結晶熱溶融点が20℃/分の加熱速度にて測定して50〜90℃の範囲にある、請求項10記載のセルロース製品。
【請求項12】
前記ポリマーのTgが−25〜−35℃である、請求項8記載のセルロース製品。
【請求項13】
前記結晶融解熱が20℃/分の加熱速度にて測定して好ましくは15〜70J/gの範囲にある、請求項12記載のセルロース製品。
【請求項14】
バリヤ特性を付与するポリマーコーティングを適用した紙又は板紙製品であり、該ポリマーコーティングがポリマーエマルジョンを含む紙又は板紙製品において、
該ポリマーコーティングが、エチレン、酢酸ビニル、及びカルボン酸又はN−メチロールアクリルアミドの重合単位から本質的になりかつ結晶性エチレンセグメントを含有するポリマーを含み、該ポリマーは、界面活性剤又は界面活性剤と組み合わされた保護コロイドから本質的に成る安定化用の系の存在下でエチレン、酢酸ビニル、及びカルボン酸又はN−メチロールアクリルアミドを乳化重合させることにより製造されており、該エチレン−酢酸ビニルポリマーが、
(a)20℃/分の加熱速度にて測定して50〜90℃の範囲の結晶溶融点、及び、
(b)6.28rad/secにて測定して115℃の温度において少なくとも1×105ダイン/cm2の引張貯蔵弾性率、
を有することを特徴とする紙又は板紙製品。
【請求項15】
前記ポリマーのTgが−25〜−35℃の範囲にある、請求項14記載の紙又は板紙製品。
【請求項16】
前記ポリマーの融解熱が20℃/分の加熱速度にて測定して10〜70J/gである、請求項15記載の紙又は板紙製品。
【請求項17】
前記ポリマーが、該ポリマーの全重量を基準として35〜75重量%の酢酸ビニル、25〜65重量%のエチレン、及び0.2〜10重量%のカルボン酸又はN−メチロールアクリルアミドを有する、請求項16記載の紙又は板紙製品。
【請求項18】
前記ポリマーがエチレン、酢酸ビニル及びアクリル酸から本質的になる、請求項16記載紙又は板紙製品。

【公開番号】特開2009−41014(P2009−41014A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−196466(P2008−196466)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2004−210438(P2004−210438)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(508286843)ワッカー ケミカル コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】