説明

ポリマーペレット運搬船、ポリマーペレット運搬用バージ、及びその荷役方法

【課題】多くの種類のポリマーペレットを混合することなく同時に大量に効率よく輸送できるポリマーペレット運搬船及びポリマーペレット運搬用バージを提供する。
【解決手段】ポリマーペレットPを収容する貨物用ホールド10を複数組み合わせてロット用ホールドセットを形成すると共に、陸上側の揚げ荷ラインに接続されるロット用揚げ荷ライン42を用いて、前記ロット用ホールドセット毎に同種のポリマーペレットPを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、前記貨物用ホールド10毎に別種のポリマーペレットPを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役を選択的に行うように、前記貨物用ホールド10の各々の下部にホールド用揚げ荷開閉弁を備えたホールド用揚げ荷ラインを接続して設け、前記ロット用ホールドセット毎に前記ホールド用揚げ荷ラインを前記ロット用揚げ荷ライン42に統合して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来技術では、損傷と汚染を嫌って袋詰めで輸送されていたポリマーペレット等の粉粒体をもバラ積みで輸送することができ、しかも、多くの種類のポリマーペレットを同時に大量に効率よく輸送できるポリマーペレット運搬船、ポリマーペレット運搬用バージ、及びその荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、ポリマーペレットを船舶で海上輸送する場合には、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
【0003】
このポリマーペレットは、高圧で製造される低密度ポリエチレン(比重が約0.92)、低圧で製造される高密度ポリエチレン(比重が約0.95)、透明で結晶性(95%)のあるポリプロピレン(比重が約0.9)などのポリマーと呼ばれるものを、大きさがφ3mm×L3mm〜φ6mm×L6mm程度のペレット状に形成したものである。このポリマーペレットの物性は、比重が約0.9〜1.0であり、かさ比重は約0.5程度と比較的軽く、安息角も約30度程度である。
【0004】
このポリマーは次のようにして製造される。石油精製工業においては、原油を蒸留して、沸点の差により、石油ガス、ガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油、重油、アスファルトに分けて、このうちのナフサをナフサ分解装置で加熱分解させて簡単な構造の物質に変化させて、エチレン、プロピレン、ブチレン等の物質毎に抽出する。このエチレンやプロピレン等を化学反応で、同じ物質の分子と分子を結び付ける重合反応によって、別の性質を持つポリエチレンやポリプロピレン等のポリマー(重合体)を製造している。
【0005】
このポリマーの性質は、可燃性のため、粉塵状態では爆発混合気を形成して危険状態となる場合があるが、ペレット状態では、常温での取り扱いで危険性は無く、また、生理学的に不活性であり、人体への特別な毒性はない。また、水との反応性や自己反応性や爆発性はなく、常温では安定しているが、ペレットがこぼれた場合には、足を滑らせて転倒する可能性があるので、漏出防止と漏出時の回収は重要である。特に、輸送時に水域に漏出した場合には、動物が飲み込むと窒息する可能性があるので、注意が必要である。
【0006】
多くのポリマーの場合、表面に水分が付着したままで成形すると、製品の表面不良や外観不良や機械的物性(強度)不良などが生じる。また、ペレットの損傷により砕けた細かいポリマーがコンタミネーションとなることから、ペレットの表面の損傷も嫌われるので、ペレット表面の欠陥防止のため、管や貨物倉の内面でのペレット磨耗を避けることが望ましい。
【0007】
特に、材料の成分や材質や色などの違いで非常に数多くの種類があり、異なった種類のポリマーペレットの混合は、ポリマーペレットを使用した製品の品質低下に繋がるので、このポリマーペレットの輸送においては、塗装や錆との混合を避けるだけではなく、異種のポリマーペレット間の混合を厳しく避ける必要がある。そのため、前述のように、従来技術では、ポリマーペレットの海上及び水上輸送では、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
【0008】
しかしながら、この袋とコンテナを使用する輸送方法では、ペレットの袋詰め作業や、コンテナへの収納作業や、開封のための袋の破断作業や、袋からのペレット取り出し作業等のために、人手や機械による作業が必要となり、効率が悪いという問題がある。特に、トレイサービリティ(追跡性)の確保という面において、ペレットの袋毎に管理する必要があり、非常に煩雑になるという問題がある。
【0009】
また、ペレットの小口運搬時に使用する袋等の包装資材が資源の無駄遣いになるという問題もある。今後も、ポリマーペレットの需要は世界的に伸びてきており、効率的な海上輸送方法が業界で望まれている。
【0010】
一般に、石炭、小麦、チップ等をバラ積み状態で運搬する船舶は、乾貨物バラ積み船、又は、バルクキャリヤと呼ばれており、その貨物倉の構造は、通常は、二重底の内底板、船側外板、上甲板、隔壁で周囲を囲われ、船側下方には、ホッパーサイドタンクが、船側上方にはトップサイドタンクが設けられ、上甲板にはハッチが開口され、ハッチカバーで覆われる構造となっている(例えば、引用特許文献1参照)。
【0011】
また、貨物倉の下部からバラ積み乾貨物を揚げ荷役する場合には、各貨物倉の下端から切り出したバラ積み乾貨物(ばら物)を、船の前後方向に延びる無端式の切り出しコンベアで船首側又は船尾側に搬送して、別のコンベアに移送して、陸上荷役施設のコンベアに搬送している(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
しかしながら、ポリマーペレットの輸送に関しては、多種のポリマーペレットを船舶の積載量に比較して非常に小さな量ずつ混合させることなく、荷役して輸送する必要がある上に、品質管理が厳しく、製造、積み荷前の保管、輸送、揚げ荷後の保管、消費までロット毎に管理してトレイサービリティ(追跡性)を確保することが要求されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実昭62−165193号公報
【特許文献2】特開平5−124576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、多種多様なポリマーペレットを、袋詰めによる搬送ではなく、バラ積み状態における搬送で効率良く大量輸送でき、しかも、多くの種類のポリマーペレットを同時に大量に効率よく輸送できるポリマーペレット運搬船、ポリマーペレット運搬用バージ、及びその荷役方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明のポリマーペレット運搬船は、複数種類のポリマーペレットを混合することなく運搬するポリマーペレット運搬船であって、ポリマーペレットを収容する貨物用ホールドを複数組み合わせてロット用ホールドセットを形成すると共に、陸上側の揚げ荷ラインに接続されるロット用揚げ荷ラインを用いて、前記ロット用ホールドセット毎に同種のポリマーペレットを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、前記貨物用ホールド毎に別種のポリマーペレットを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役とを選択的に行うように、前記貨物用ホールドの各々の下部にホールド用揚げ荷開閉弁を備えたホールド用揚げ荷ラインを接続して設け、前記ロット用ホールドセット毎に前記ホールド用揚げ荷ラインを前記ロット用揚げ荷ラインに統合して構成される。
【0016】
この構成によれば、揚げ荷役時は、ホールド用揚げ荷開閉弁等を適切に開閉制御することにより、貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットの種類がロット用ホールドセット毎で同じ場合には、第1の揚げ荷役を用いて、同じロット用ホールドセットの貨物用ホールド全体を同時に揚げ荷役して、効率良く、同じ種類のポリマーペレットを陸上側の貨物用サイロに収容することができる。
【0017】
また、貨物用ホールド毎に収容されたポリマーペレットの種類が異なる場合には、第2の揚げ荷役を用いて、貨物用ホールド毎に順次揚げ荷役して、貨物用ホールド毎に収容された異なった種類のポリマーペレットを混合させることなく、陸上側の貨物用サイロに別々に収容することができる。
【0018】
また、1つのロット用揚げ荷ラインを用いながら、ホールド用揚げ荷開閉弁等を適切に制御することで、複数の貨物用ホールドを順次選択しながら、あるいは、同時に揚げ荷役することができるので、個々の貨物用ホールドにそれぞれ揚げ荷配管を設けて、個々に陸上側の揚げ荷ラインを接続して荷役する場合に比べて、陸上側と船上側との間の揚げ荷ラインの接続数を著しく減少できる。
【0019】
これにより、荷役作業の工数の低減を図ることができる。また、ロット用揚げ荷ラインを用いて、第1の揚げ荷役で、陸上側で品質管理するロット単位の容量に相当する収容容量を持つロット用ホールドセット毎に揚げ荷役したり、第2の揚げ荷役で、陸上側で品質管理するサイロ単位の容量に相当する収容容量を持つ貨物用ホールド毎に揚げ荷役したりするので、輸送、揚げ荷役、陸上での保管等においてきめ細かく管理することができ、品質管理上のトレイサービリティを著しく向上させることができる。
【0020】
これにより、多種多様なポリマーペレットを、袋詰めによる搬送ではなく、バラ積み状態における搬送で効率良く大量輸送でき、しかも、多くの種類のポリマーペレットを混合させることなく、同時に大量に効率よく輸送できる。
【0021】
上記のポリマーペレット運搬船において、前記貨物用ホールドの下側のホールド用揚げ荷ラインにおいて、ホールド用揚げ荷開閉弁の下側に定量排出弁を設けると共に、該定量排出弁の下側に開閉弁を設ける。
【0022】
この構成によれば、ロータリーバルブ等で形成される定量排出弁と、ホールド用揚げ荷ラインとロット用揚げ荷ラインとの合流部との間に設けた開閉弁を閉じることにより、揚げ荷役で、ロット用揚げ荷ラインを使用して、一つの貨物用ホールドからポリマーペレットを輸送している最中に、このポリマーペレットが、他の種類のポリマーペレットを収容する別の貨物用ホールドの下側の定量排出弁へ侵入することを防止できる。これにより、定量排出弁に進入した種類の異なるポリマーペレットが、この別の貨物用ホールドのポリマーペレットを揚げ荷役するときに、混入して同時に揚げ荷役されることを防ぐことができるので、コンタミネーションを防止できる。
【0023】
上記のポリマーペレット運搬船において、前記ロット用揚げ荷ラインに陸上側の設備からの搬送用の空気を供給して、この搬送用の空気により、前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷役する。
【0024】
この構成によれば、陸上側から供給される搬送用の空気を使用して、各貨物用ホールドのポリマーペレットを空気輸送にて揚げ荷することができるので、ポリマーペレット運搬船の船上側には、荷役ライン数に対応した数の揚げ荷役用の圧縮空気発生装置を設ける必要がなくなる。従って、船上設備を低減できる。
【0025】
また、船上側と陸上側を含めた全体システムにおいて、全体として大きな容量が必要となる圧縮空気発生設備を陸上側に設置するので、設置工事や保守点検を行い易くなる。また、陸上側の圧縮空気発生装置の稼働率が高まるので、圧縮空気発生装置を効率よく使用することができる。しかも、陸上側に圧縮空気発生装置を設置することにより、陸上サイロ間移送や、製造プラントから運ばれてきたポリマーペレットの陸上サイロへの移送にも利用可能となる。
【0026】
上記のポリマーペレット運搬船において、陸上側の制御装置により当該ポリマーペレット船内の揚げ荷役設備の制御を行うように構成される。
【0027】
この構成によれば、船上の揚げ荷役ラインの制御装置を、陸上側に設けるので、全体システムとして、揚げ荷役ラインの制御装置の数を少なくすることができる。
【0028】
また、タンカー等の配管ラインを有する船舶では、船舶側の制御装置を用いて、船舶側で揚げ荷役ラインを制御して、貨物を船上側から陸上側に揚げ荷するのに対して、このポリマーペレット運搬船では、陸上側の制御装置を用いて、陸上側で船上側の揚げ荷役ラインも制御するので、陸上側の貨物用サイロと船上側の貨物用ホールドまたはロット用ホールドセットとの対応関係を陸上側で一括一元管理でき、ポリマーペレットの品質管理、トレイサービリティ確保、そして、荷役オペレーションミスの回避という面において、著しく向上させることができる。
【0029】
上記のポリマーペレット運搬船において、1個の前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷できる分量の空気量よりも大きな空気量を発生できる圧縮空気発生装置を備えて構成される。
【0030】
この構成によれば、陸上側に圧縮空気発生設備が設けられていない港で揚げ荷役する場合や、陸上側の圧縮空気発生設備や空気ラインに不具合がある場合であっても、本船上の圧縮空気発生装置を使用して揚げ荷することが可能となる。また、比較的容量の小さい非常用の圧縮空気発生装置を搭載し、揚げ荷ラインを全て同時に稼働させるのに十分な能力の圧縮空気発生装置は備えないので、揚げ荷ラインを全て同時に稼働させるための圧縮空気発生装置を備える場合に比べて、船上の設備を著しく小さくすることができる。
【0031】
そして、上記の目的を達成するためのポリマーペレット運搬用バージは、上記のポリマーペレット運搬船を、推進装置を持たないバージ船として形成する。この構成のポリマーペレット運搬用バージは、上記のポリマーペレット運搬船と同様な効果を奏することができる。
【0032】
上記の目的を達成するための本発明のポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法は、ポリマーペレットを収容する貨物用ホールドを複数組み合わせてロット用ホールドセットを形成して、複数種類のポリマーペレットを混合することなく運搬するポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法であって、陸上側の揚げ荷ラインに接続されるロット用揚げ荷ラインを用いて、前記ロット用ホールドセット毎に同種のポリマーペレットを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、前記貨物用ホールド毎に別種のポリマーペレットを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役を選択的に行うことを特徴とする方法である。
【0033】
この方法によれば、揚げ荷役時は、ホールド用揚げ荷開閉弁等を適切に開閉制御することにより、貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットの種類がロット用ホールドセットで同じ場合には、第1の揚げ荷役を用いることができ、また、貨物用ホールド毎に収容されたポリマーペレットの種類が異なる場合には、第2の揚げ荷役を用いることができる。
【0034】
第1の揚げ荷役では、同じロット用ホールドセットの貨物用ホールドで収容した同種類のポリマーペレットを同時に揚げ荷役できるので、効率良く、陸上側の貨物用サイロに収容することができる。
【0035】
また、第2の揚げ荷役では、貨物用ホールド毎に順次揚げ荷役して、貨物用ホールド毎に収容された異なった種類のポリマーペレットを混合させることなく、陸上側の各貨物用サイロに揚げ荷することができる。これにより、少量多種のポリマーペレットを、種類を変えて収容した貨物用ホールド毎に揚げ荷役することができる。
【0036】
上記のポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法において、前記ロット用揚げ荷ラインに陸上側の設備からの搬送用の空気を供給して、この搬送用の空気により、前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷役するようにすると、ポリマーペレット運搬船の船上側には、荷役ライン数に対応した数の揚げ荷役用の圧縮空気発生装置を設ける必要がなくなるので、船上設備を低減できる。また、船上側と陸上側を含めた全体システムにおいて、大容量となる圧縮空気発生装置を陸上側に設置するので、設置工事や保守点検を行い易くなる。そして、この陸上側の圧縮空気発生装置の稼働率を高めて効率よく使用することができる。
【0037】
しかも、陸上側に圧縮空気発生装置を設置することにより、陸上サイロ間移送や、製造プラントから運ばれてきたポリマーペレットの陸上サイロへの移送にも利用可能となる。
【0038】
上記のポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法において、陸上側の制御装置により当該ポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの内部の荷役設備の制御を行って揚げ荷役と積み荷役を行うと、陸上側の貨物用サイロと船上側の貨物用ホールドまたはロット用ホールドセットとの対応関係を陸上側で一括管理できるので、ポリマーペレットの品質管理、トレイサービリティ確保、そして、荷役オペレーションミスの回避という面において、著しく向上させることができる。また、船上の揚げ荷役ラインの制御装置を、陸上側に設けるので、全体システムとして、揚げ荷役ラインの制御装置の数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のポリマーペレット運搬船、ポリマーペレット運搬用バージ、及びその荷役方法によれば、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体も、粉粒体に損傷を与えることなくバラ積みして輸送することができ、しかも、多くの種類のポリマーペレットを混合することなく同時に大量に効率よく輸送できる。
【0040】
これにより、従来技術で行われている粉粒体の袋詰め作業や袋のコンテナ収納作業、袋からの粉粒体の取り出し作業等を無くして、輸送時の作業効率を向上させ、大量輸送を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る実施の形態のポリマーペレット運搬船における貨物用ホールドの配置を示した船体の側断面図である。
【図2】図1のポリマーペレット運搬船における貨物用ホールドの配置を示した船体の水平面図である。
【図3】図1のポリマーペレット運搬船における貨物用ホールドの配置を示した船体の横断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のポリマーペレット運搬船の貨物用ホールドにおける荷役ライン等を示した図である。
【図5】ポリマーペレット運搬船における積み荷役ライン等を模式的に示した図である。
【図6】ポリマーペレット運搬船における揚げ荷役ライン等を模式的に示した図である。
【図7】ポリマーペレット運搬船における空気ライン等を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明に係るポリマーペレット運搬船及びポリマーペレット運搬用バージについて説明する。なお、ここでは、推進装置を有するポリマーペレット運搬船について説明するが、本発明は、推進装置を持たないポリマーペレット運搬用バージに関しても同様に適用できる。なお、図面は説明のための図であり、必ずしも実船で用いる船型や貨物用ホールドの寸法比で作図したものではない。
【0043】
図1〜図3に示すように、本発明に係る実施の形態のポリマーペレット運搬船1は、ポリマーペレットを搭載する貨物用ホールド10(斜線のハッチング部分)を備えて構成される。この貨物用ホールド10は横断面形状が円や楕円や多角形等の形状、好ましくは円形状をしている筒状体で形成され、その下部にホッパー形状をしたホッパー部10aを設けて形成される。また、この貨物用ホールド10はアルミニウム合金又はステンレススチールで製作することが好ましい。
【0044】
貨物用ホールド10を、アルミニウム合金製又はステンレススチール製の筒状体で形成することにより、貨物用ホールド10の壁面を補強する補強材を略不要にすることができるので、隣接する貨物用ホールド10との隙間(クリアランス)を小さくすることができる。その結果、ポリマーペレット運搬船1の船体の貨物区画内に貨物用ホールド10を数多く配設することができるようになる。また、材質にアルミニウム合金又はステンレススチールを採用することで、軽量化が可能で、錆発生による異種物混入を防止できる。
【0045】
また、このポリマーペレット運搬船1に配設される貨物用ホールド10の殆ど又は全てを同一サイズで同一形状に形成し、貨物用ホールド10の形状及び容量を変えることなく、ポリマーペレット運搬船1の船体形状に合わせて効率的に配置することにより、貨物用ホールド10に関しては、1品種による大量生産ができるようになるので、建造が容易となり、製造コストを低減できる。
【0046】
更に、貨物用ホールド10の支持構造を下部に設けて、船体に固定配置するように構成し、これにより、貨物用ホールド10を船体に固定するためのフレーム構造を無くす。これにより、船体の内部における無駄な空間(スペース)を減らすことができ、船体の内部の空間を有効に利用できる。なお、必要に応じて、更に、貨物用ホールド10の上部にも支持構造を設けて船体に固定してもよい。
【0047】
そして、図2に示すように、この貨物用ホールド10を複数(図1〜3では、3個)組み合わせてロット用ホールドセット11を形成する。このように、複数の貨物用ホールド10でロット用ホールドセット11を形成すると、このロット用ホールドセット11の容量を、陸上荷役システムにおける管理単位であるロットの量に対応させて、この管理単位を維持したまま船積みすることができるので、ロット単位でのトレイサービリティ(追跡性)を維持できるようになる。
【0048】
更に、ロット用ホールドセット11を単数又は複数(図1〜3では、2セット)組み合わせて一体化して貨物用ユニット12を形成し、この一体化した貨物用ユニット12を船体内部に配置する。そして、最大船幅部分においては、船幅方向に関して貨物用ユニット12を複数(図1〜3では、2ユニット)横並びになるように配置する。
【0049】
このように単数又は複数のロット用ホールドセット11で、貨物用ユニット12を形成すると、建造時に、複数(図1〜3では6個)の貨物用ホールド10で構成された貨物用ユニット12を陸上で製造し、この貨物用ユニット12毎で船体内部に搭載することができ、各貨物用ホールド10を1つずつ船体内部に搭載する場合に比べて、工数の低減及び建造日数の短縮化ができる。
【0050】
図2の構成では、ポリマーペレット運搬船1は、船首側からは縦並びの貨物用ユニット12を一つ、横並びの1貨物用ユニット12を一つ、縦並びの貨物用ユニット12を2つを横並びにしたものを一ずつ計五つ並べて搭載しており、全部で12の貨物用ユニット12で24のロット用ホールドセット11を、最終的には72の貨物用ホールド10を搭載している。
【0051】
また、下部にホッパー部10aを設けた筒状体で形成した貨物用ホールド10を、ロット用ホールドセット11、貨物用ユニット12に組み合わせて、船体内部に効率よく配置することにより、船幅に比べて比較的小さな径の貨物用ホールド10を多数配置することになるので、従来技術のバラ積み船のように比較的大きな容量の貨物倉を設ける場合に比べて、ホッパー部10aの高さを低くすることができる。従って、ホッパー部10aの外側の空間を少なくすることができ、船体内部のスペースを有効活用できる。
【0052】
更に、ポリマーペレットを低い位置にまで積み込むことができるので、積み荷貨物の重心、及び、積み荷時の航海における船体の重心を低くすることができる。その上、貨物用ホールド10の幅が従来技術のバラ積み船よりも著しく小さくなるので、航海中におけるポリマーペレットの横移動が少なくなり、船体の横揺れ(ロール)に対する安定性が増加する。
【0053】
また、このポリマーペレット運搬船1においては、図3に示すように、船底側には二重底2を、船側部にはバラストタンク3等を、上部には、カバー5を設けて、船体の貨物区画をダブルハル構造で、かつ、閉鎖構造(エンクローズ構造)として形成することが好ましい。
【0054】
この構成により、万一、座礁や衝突等により船体が損傷した時であっても、ポリマーペレットが海洋に流出することを防止できる、また、閉鎖構造により、直射日光による貨物用ホールド10、及びその内部のポリマーペレットの温度の上昇を防ぐことができる。
【0055】
更に、船体の船側部にバラストタンク3を設けると、船の姿勢(ヒール、トリム)のアンバランスの原因となる空の貨物用ホールド10がある場合や、左右舷で、比重の異なるポリマーペレットを定容量積載した場合や、荷役中において貨物用ホールド10内のポリマーペレット量が変化する場合等に対して、船側部のバラストタンク3のバラスト水の量を調整することにより、容易に、船の姿勢(ヒール、トリム)のアンバランスを解消できるようになる。
【0056】
更に、貨物用ホールド10及び荷役用のライン全体と、作業スペースと、貨物用ホールド10の上部への通路を内包するようにカバー5を設けると、海水打ち込み等による貨物用ホールド10の損傷を防ぐことができ、また、貨物用ホールド10の内面、外面や荷役用のラインの配管の外面等の海水による腐食を軽減することができる。更に、荒天時における貨物用ホールド10の上部での作業の作業性を向上することができ、メンテナンスし易くなる。また、カバー5によって、海上輸送時の貨物用ホールド10の内部の温度管理や湿度管理が容易になる。
【0057】
また、カバー5に、貨物用ホールド10の上方で必要な配管等の支持部をカバー5側に設ける設計とすることで、これらの配管を先行艤装することができるので、建造工期を短縮できるという建造時のメリットもある。
【0058】
次に、荷役ラインについて説明する。このポリマーペレット運搬船1の荷役ラインとしては、積み荷ラインと揚げ荷ラインとがある。図4及び図5に示すように、貨物用ホールド10においては、その上部に、ホールド用積み荷ライン21が接続されている。このホールド用積み荷ライン21は、ホールド選択弁(流路切換弁)21aを介してロット用積み荷ライン22に統合するように構成されている。
【0059】
図5に示すように、このロット用積み荷ライン22は、個別に陸上の積み荷ライン100と連結されるように、開閉弁22aを通って積み荷用接続部22bに導かれる。この積み荷用接続部22bは、右舷(スターボードサイド)側のみに設けられる。この積み荷用接続部22bに、陸上側の積み荷ライン100が接続される。この実施の形態では、3つの貨物用ホールド10、即ち、一つのロット用ホールドセット11が、陸上側の積み荷ライン100と接続される。これにより、ロット用ホールドセット11の容量に対応する容量のロット単位で積み荷役でき、ロット間のコンタミネーションを避けることができる。
【0060】
なお、ロット間のコンタミネーションが問題にならないような場合には、ロット用積み荷ライン22をユニット用積み荷ライン(図示しない)に統合したり、更に、いくつかのユニット用積み荷ラインを統合したりしてもよい。
【0061】
また、この貨物用ホールド10の上部には、搬送用の空気Aを抜くためのホールド用空気ライン31が設けられる。このホールド用空気ライン31は開閉弁31aを備えており、ロット用ホールドセット11毎に、ロット用空気ライン32に統合される。
【0062】
このロット用空気ライン32の先端側には、開閉弁32bとその先の接続部32cが設けられている。この接続部32cには、陸上側の排出空気浄化装置30に接続する陸上側の空気排出用ライン110が接続される。この空気排出用ライン110には、排出空気浄化装置30が設けられている。
【0063】
これらの配管の統合により、全体としては船上側の積み荷ラインと空気排出用ラインの配管を短くすることができる。また、貨物用ホールド10にから排出される搬送に使用しダスト等が混じった空気Aを、排出空気浄化装置30で浄化して大気中に排出できる。
【0064】
つまり、各貨物用ホールド10の上部に、ホールド選択弁21aを介して、ホールド用積み荷ライン21を接続して設け、このホールド用積み荷ライン21をロット用ホールドセット11毎にロット用積み荷ライン22に統合して、このロット用積み荷ライン22を片舷(通常は右舷)側に導いて、この舷側側に設けられた、陸上側の積み荷ライン100との接続部である積み荷ライン接続部22bに接続して設ける。
【0065】
また、揚げ荷ラインとしては、図4及び図6に示すように、貨物用ホールド10のホッパー部10aの下に、ホールド用揚げ荷開閉弁41a、定量排出弁となるロータリーバルブ41b、開閉弁41cを有するホールド用揚げ荷ライン41を設けると共に、このホールド用揚げ荷ライン41をロット用揚げ荷ライン42に接続して設ける。
【0066】
図6に示すように、このロット用揚げ荷ライン42は、更に、流路切換弁42aで、右舷用揚げ荷ライン42Sと左舷用揚げ荷ライン42Pに分岐されて、マニホールド甲板4に導かれ、開閉弁42Sa、42Paを通過した後、それぞれの舷側に設けられた揚げ荷ライン接続部42Sb、42Pbに導かれる。この揚げ荷ライン接続部42Sb、42Pbの一方に、陸上側の揚げ荷ライン120が接続される。
【0067】
つまり、各貨物用ホールド10の各々の下部に、ホールド用揚げ荷開閉弁41aを備えたホールド用揚げ荷ライン41を接続して設け、ロット用ホールドセット11毎にホールド用揚げ荷ライン41をロット用揚げ荷ライン42に統合し、このロット用揚げ荷ライン42を流路切換弁42aで分岐して両舷側のマニホールド甲板4に導いて、それぞれの舷側側に設けられた、陸上側の揚げ荷ライン120との接続部である揚げ荷ライン接続部42Sb、42Pbに接続して設けて構成する。
【0068】
このポリマーペレット運搬船1において、貨物用ホールド10の下側のホールド用揚げ荷ライン41において、ホールド用揚げ荷開閉弁41aの下側にロータリーバルブ41bを設けると共に、ロータリーバルブ41bの下側に開閉弁41cを設けているので、ロータリーバルブ41bと、ホールド用揚げ荷ライン41とロット用揚げ荷ライン42との合流部との間に設けた開閉弁41cを閉じることにより、揚げ荷役で、ロット用揚げ荷ライン42を使用して、一つの貨物用ホールド10からポリマーペレットPを輸送している最中に、このポリマーペレットPが、他の種類のポリマーペレットPを収容する別の貨物用ホールド10の下側のロータリーバルブ41bへ侵入することを防止できる。これにより、ロータリーバルブ41bに進入した種類の異なるポリマーペレットPが、この別の貨物用ホールド10のポリマーペレットPを揚げ荷役するときに、混入して同時に揚げ荷役されることを防ぐことができるので、コンタミネーションを防止できる。
【0069】
これらの構成により、図6に示すように、陸上側の圧縮空気発生設備(コンプレッサー)から、陸上側の空気供給ライン130より、揚げ荷用の圧縮空気Aを、接続部51b、開閉弁51a、揚げ荷用空気供給ライン51、開閉弁42b、ロット用揚げ荷ライン42へと供給する。
【0070】
この揚げ荷役時には、貨物用ホールド10の内部に収容されていたポリマーペレットPは、貨物用ホールド10から、ホールド用揚げ荷ライン41のホールド用揚げ荷開閉弁41a、ロータリーバルブ41b、開閉弁41cを経由して、ロット用揚げ荷ライン42に落下し、搬送用の空気Aと共に、ロット用揚げ荷ライン42、42S(または42P)を経由して、陸上側の揚げ荷ライン120に揚げ荷される。
【0071】
この構成によれば、ホールド用揚げ荷開閉弁41a、開閉弁41c等を適切に制御することにより、陸上から供給される圧縮空気Aを使用して、各貨物用ホールド10のポリマーペレットPを空気輸送にて、ロット用ホールドセット11毎に同種のポリマーペレットPを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、貨物用ホールド10毎に別種のポリマーペレットPを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役を選択的に行うことができるようになる。
【0072】
また、ポリマーペレット運搬船1の船上には、常用の荷役用のコンプレッサー(例えば、荷役ライン数に対応した数)を設けずに、荷役用の圧縮空気を発生する専用設備を港に設けることにより、陸上側のコンプレッサーの稼働率を向上できる。その一方、船上には、大規模な圧縮空気のコンプレッサーが不要になるので、船上設備を低減できる。
【0073】
更に、図4及び図7に示すように、乾燥装置34を備えた乾燥ライン33が設けられている。この乾燥ライン33では、乾燥用の空気Aを、乾燥装置34、開閉弁33a、33bを経由して、各貨物用ホールド10のホールド用乾燥ライン33cで貨物用ホールド10の内部に送りこむ。
【0074】
この乾燥用の空気Aにより、貨物用ホールド10の内部を乾燥することができる。この貨物用ホールド10を乾燥した後の空気Aは、ホールド用空気ライン31及びロット用空気ライン32を経由して、乾燥ライン33に戻り、乾燥の対象となった貨物用ホールド10が乾燥するまで循環する。この乾燥ライン33を用いて貨物用ホールド10の内部を積み荷役前とポリマーペレットPを収容中の両方で乾燥することにより、ポリマーペレットPを乾燥状態で輸送することができ、大量のポリマーペレットPを高品質に維持したままで輸送できる。
【0075】
なお、本船上に、少なくとも1つの貨物用ホールド10のポリマーペレットPを空気輸送にて揚げ荷できる容量の圧縮空気発生装置35を装備することが好ましい。この圧縮空気発生装置35は、図5〜図7の構成では、揚げ荷用空気供給ライン51に接続して設けられている。
【0076】
この構成により、陸上設備の圧縮空気発生装置に不具合がある場合でも、本船上の圧縮空気発生装置35を使用して、発生した空気Aを揚げ荷用空気供給ライン51を経由して、ロット用揚げ荷ライン42に供給して揚げ荷役することが可能となる。この場合に、非常用の圧縮空気発生装置35は搭載するが、荷役ラインを全てを同時に稼働させるのに十分な能力の圧縮空気発生装置は装備しない。
【0077】
次に、貨物用ホールド10の洗浄設備について説明する。このポリマーペレット運搬船1では、貨物用ホールド10を洗浄水Wで洗浄するための洗浄設備を備える。図4に示すように、貨物用ホールド10には、清水等の洗浄水Wを貨物用ホールド10に噴射して内部を洗浄するために、先端に、洗浄用ノズル52aを備えた洗浄用ライン52が設けられる。なお、貨物用ホールド10を洗浄した洗浄液Wを、船上に設けた浄化装置(図示しない)で浄化し再利用するように構成すると、洗浄水Wの再利用により環境汚染を防止でき、洗浄水Wの搭載量を軽減できる。
【0078】
ポリマーペレット運搬船1に、洗浄ライン52と乾燥ライン33を備えることにより、バラスト航海中に、清水等の洗浄水Wにて、貨物用ホールド10を洗浄した後、乾燥又は除湿により貨物用ホールド10を乾燥することができる。そのため、積み荷港に着いて直ぐに、種類の異なる貨物を積荷することができる。
【0079】
この構造によれば、ホールド用積み荷ライン21をロット用積み荷ライン22に統合して、積み荷用接続部22bに導き、また、ホールド用揚げ荷ライン41をロット用揚げ荷ライン42に統合して、左舷用のユニット用揚げ荷ライン42Pと右舷用のユニット用揚げ荷ライン42Sに分岐して、それぞれの揚げ荷ライン接続部42Pb,42Sbに導いている。
【0080】
そのため、船上における荷役ラインの配管の長さを短くすることができるだけでなく、このロット用ホールドセット11の収容量を、陸上荷役システムにおける管理単位であるロットの量に対応させたロット用ホールドセット11毎に、各ロット用ホールドセット11の専用ラインを用いて積み荷役と揚げ荷役をすることができる。また、積み荷ラインと揚げ荷ラインを別々に区別して設けることにより、輸送するポリマーペレットPの汚れや他種類との混合等のコンタミネーションを防止できる。
【0081】
従って、各ロット間のコンタミネーションを防止しながら、このロットの管理単位を維持したまま荷役することができ、ロット単位でのトレイサービリティ(追跡性)を維持できる。
【0082】
また、ロット用積み荷ライン22を上下二段に振り分けて複数のラインを左右に導くライン構成とすることにより、船上の限られたスペースを有効活用でき、カバー5の高さを低く抑えることができる。また、貨物用ホールド10の側部の垂直配管を、貨物用ホールド10に支持部材を設けて配置すると、これにより、建造時に陸上側の工場で艤装することができるようになる。
【0083】
このポリマーペレット運搬船1においては、陸上側の制御装置により、ポリマーペレット船1内の揚げ荷役設備の制御を行うように構成される。この構成によれば、船上側に揚げ荷役ラインの制御装置を設けずに、陸上側にのみ設けるので、全体システムとして、揚げ荷役ラインの制御装置の数を少なくすることができる。
【0084】
また、このポリマーペレット運搬船1では、陸上側の制御装置を用いて、陸上側で船上側の揚げ荷役ラインも制御するので、陸上側の貨物用サイロと船上側の貨物用ホールド10またはロット用ホールドセット11との対応関係を陸上側で一括一元管理でき、ポリマーペレットPの品質管理を著しく向上させることができ、高いトレイサービリティ(追跡性)を確保できる。
【0085】
次に、上記の構成のポリマーペレット運搬船1における荷役について説明する。積み荷役時には、図5に示すように、陸上側積み荷ライン100が、ポリマーペレット運搬船1の積み荷用接続部22bに接続され、また、陸上側の空気排出用ライン110が、接続部32cに接続される。そして、開閉弁22aと開閉弁32bが開弁される。
【0086】
陸上側積み荷ライン100により、陸上側の基地サイロから、ポリマーペレットPが搬送用空気Aと共に、ロット用積み荷ライン22に送り込まれ、ホールド用積み荷ライン21から、貨物用ホールド10の内部に供給される。このポリマーペレットPは内部に収納される。
【0087】
一方、搬送用の空気Aは、開閉弁31aを備えたホールド用空気ライン31により排出され、ロット用空気ライン32経由で、陸上側の空気排出用ライン110に送られ、排出空気浄化装置30でポリマーペレットPの破片等が除去された状態で大気中に放出される。
【0088】
このとき、ロット用積み荷ライン22とロット用空気ライン32を使用して積み荷役するので、ロット毎に積み荷役でき、ロット間の混合を防止できる。従って、ロットの管理単位毎に、多種類のポリマーペレットPを混合させることなく、効率良く、各貨物用ホールド10に収容することができる。
【0089】
また、揚げ荷役時は、図6に示すように、陸上側の揚げ荷ライン120を、左右舷のどちらか一方の舷側に設けられた揚げ荷ライン接続部42Sb(又は42Pb)に接続し、陸上側の圧縮空気移送ライン130を船側の圧縮空気ライン接続部51bに接続して、圧送用の空気Aを送り込むと、この圧送用の空気Aは、揚げ荷用空気供給ライン51を経由して、ロット用揚げ荷ライン42に至る。
【0090】
一方、ポリマーペレットPは、この貨物用ホールド10のホッパー部10aの下部から、ホールド用揚げ荷開閉弁41aとロータリーバルブ41bと開閉弁41cを備えたホールド用揚げ荷ライン41、ロット用揚げ荷ライン42、流路切換弁42aを経由して、揚げ荷ライン接続部42Sb(または、42Pb)から陸上側の揚げ荷ライン120に搬送される。
【0091】
このとき、空気流量を適切に制御することにより、ロット用ホールドセット11毎の第1の揚げ荷役、または、貨物用ホールド10毎の第2の揚げ荷役を行って、揚げ荷役することができる。これにより、第1の揚げ荷役では、同じ種類のポリマーペレットPを効率良く同時に陸上側の各貨物用サイロに収容することができ、第2の揚げ荷役では、多種類のポリマーペレットPを混合させることなく、順次、陸上側の各貨物用サイロに収容することができる。
【0092】
従って、1つのロット用積み荷ライン22、又は、1つのロット用揚げ荷ライン42を用いながら、ホールド選択弁21a、又は、ホールド用揚げ荷開閉弁41a、開閉弁41c等を適切に制御することで、複数の貨物用ホールド10に、同時または経時的に選択しながら積み荷役又は揚げ荷役をすることができるので、陸上と船上との間の積み荷ライン、及び、揚げ荷ラインの接続数を減少できる。これにより、荷役作業の工数の低減を図ることができる。
【0093】
言い換えれば、ホールド選択弁21aでロット用貨物セット11の全部の貨物用ホールド10を選択して同時に積荷役する時には、少ない数の積み荷ラインで効率良く積み荷できる。また、ホールド選択弁21aで一つの貨物用ホールド10を選択して、この選択する貨物用ホールド10を順次変更して積み荷役する時には、少ない数の積み荷ラインで、異なった種類及びグレードのポリマーペレットPを別々の貨物用ホールド10に積み込むことができる。
【0094】
通常は、陸上の基地側サイロは、1サイロをポリマーペレットPの1ロットに相当する大きさに作るが、この基地側サイロの1ロットに対応するように、船側の貨物用ホールド10を幾つか合わせてロット用ホールドセット11を形成することにより、ポリマーペレットPのバラ積み輸送時の貨物用ホールド10の容量を規格統一化することができる。また、基地側のポリマーペレットPの1ロットの製造能力に合わせて、各貨物用ホールド10の容積を形成することで、同じコンセプトでポリマーペレット運搬船1の大型船も設計することができる。
【0095】
また、基地側の1ロットの容量が将来現状よりも大きくなっても、その1ロットに対して使用する貨物用ホールド10の数を増加させることで、将来の1ロットの容量の大型化にも対応できる。つまり、非常に荷役のフレキシビリティーが高いポリマーペレット運搬船1となる。
【0096】
これにより、多種多様なポリマーペレットPを、袋詰めによる搬送ではなく、バラ積み状態における搬送で効率良く大量輸送でき、しかも、多くの種類のポリマーペレットPを同時に大量に効率よく輸送できる。
【0097】
また、積み荷用接続部22bは、積荷港を想定して片舷側(通常右舷側)のみ配置にすることで、配管長を削減することができ、また、揚げ荷用接続部42Sb,42Pbを両舷に装備することにより、冗長性を有する構成としておき、揚げ荷港が今後、複数の港に増加した場合に対応できるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリマーペレット運搬船及びポリマーペレット運搬用バージは、ポリマーペレット等の粉粒体も、粉粒体に損傷を与えることなくバラ積みして輸送することができ、しかも、多くの種類のポリマーペレットを同時に大量に効率よく輸送でき、これにより、従来技術で行われている粉粒体の袋詰め作業や袋のコンテナ収納作業、袋からの粉粒体の取り出し作業等を無くして、輸送時の作業効率を向上させ、大量輸送を効率よく行うことができるという効果を奏することができるので、ポリマーペレットの輸送に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ポリマーペレット運搬船
10 貨物用ホールド
10a ホッパー部
11 ロット用ホールドセット
12 貨物用ユニット
21 ホールド用積み荷ライン
21a ホールド選択弁
22 ロット用積み荷ライン
22a 開閉弁
22b 積み荷用接続部
30 陸上側の排出空気浄化装置
31 ホールド用空気ライン
32 ロット用空気ライン
32b 開閉弁
32c 接続部
33 乾燥ライン
34 乾燥装置
35 圧縮空気発生装置
41 ホールド用揚げ荷ライン
41a ホールド用揚げ荷開閉弁
41b ロータリーバルブ
42 ロット用揚げ荷ライン
42a 切換弁
42b 開閉弁
42P 左舷用揚げ荷ライン
42S 右舷用揚げ荷ライン
42Pa,42Sa 開閉弁
42Pb,42Sb 揚げ荷ライン接続部
51 揚げ荷用空気供給ライン
51a 開閉弁
51b 接続部
52 洗浄用ライン
52a 洗浄用ノズル
100 陸上側の積み荷ライン
110 陸上側の空気排出用ライン
120 陸上側の揚げ荷ライン
130 陸上側圧縮空気移送ライン
A 搬送用の空気
P ポリマーペレット
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のポリマーペレットを混合することなく運搬するポリマーペレット運搬船であって、
ポリマーペレットを収容する貨物用ホールドを複数組み合わせてロット用ホールドセットを形成すると共に、
陸上側の揚げ荷ラインに接続されるロット用揚げ荷ラインを用いて、前記ロット用ホールドセット毎に同種のポリマーペレットを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、前記貨物用ホールド毎に別種のポリマーペレットを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役を選択的に行うように、前記貨物用ホールドの各々の下部にホールド用揚げ荷開閉弁を備えたホールド用揚げ荷ラインを接続して設け、前記ロット用ホールドセット毎に前記ホールド用揚げ荷ラインを前記ロット用揚げ荷ラインに統合したことを特徴とするポリマーペレット運搬船。
【請求項2】
前記貨物用ホールドの下側のホールド用揚げ荷ラインにおいて、ホールド用揚げ荷開閉弁の下側に定量排出弁を設けると共に、該定量排出弁の下側に開閉弁を設けることを特徴とする請求項1項に記載のポリマーペレット運搬船。
【請求項3】
前記ロット用揚げ荷ラインに陸上側の設備からの搬送用の空気を供給して、この搬送用の空気により、前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷役することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーペレット運搬船。
【請求項4】
陸上側の制御装置により当該ポリマーペレット船内の揚げ荷役設備の制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーペレット運搬船。
【請求項5】
1個の前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷できる分量の空気量よりも大きな空気量を発生できる圧縮空気発生装置を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーペレット運搬船。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーペレット運搬船を、推進装置を持たないバージ船としたことを特徴とするポリマーペレット運搬用バージ。
【請求項7】
ポリマーペレットを収容する貨物用ホールドを複数組み合わせてロット用ホールドセットを形成して、複数種類のポリマーペレットを混合することなく運搬するポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法であって、
陸上側の揚げ荷ラインに接続されるロット用揚げ荷ラインを用いて、前記ロット用ホールドセット毎に同種のポリマーペレットを同時に揚げ荷する第1の揚げ荷役と、前記貨物用ホールド毎に別種のポリマーペレットを順次揚げ荷する第2の揚げ荷役を選択的に行うことを特徴とするポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法。
【請求項8】
前記ロット用揚げ荷ラインに陸上側の設備からの搬送用の空気を供給して、この搬送用の空気により、前記貨物用ホールドに収容されたポリマーペレットを揚げ荷役することを特徴とする請求項7に記載のポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法。
【請求項9】
陸上側の制御装置により当該ポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの内部の荷役設備の制御を行って揚げ荷役と積み荷役を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載のポリマーペレット運搬船又はポリマーペレット運搬用バージの荷役方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14149(P2013−14149A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201809(P2010−201809)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000205535)株式会社 商船三井 (21)