説明

ポリマー処理顔料およびその製造方法

【課題】 有機溶媒でも良好な分散安定性を示す特定のポリマーで処理された顔料、及び、汎用の顔料に適用でき有機溶媒でも良好な分散安定性を示すポリマー処理顔料を得る製造方法を提供する。
【解決手段】 顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)の加水分解縮合物を有するポリマー処理顔料、または、顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)と一分子中に少なくとも1個の官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合物を有するポリマー処理顔料(但し、官能基Xと官能基Yは互いに反応するものとする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料表面にポリマーを有するポリマー処理顔料に関し、さらに詳細には、塗料、プラスチック、印刷インキ、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写インキなどの色材として使用可能なポリマー処理顔料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は一般に不溶性の色材であるため、塗料、印刷インキ、カラーフィルター等の製造やプラスチックの着色において、溶剤や樹脂等の媒体中に顔料粒子を均一に分散させる事が重要な課題になっている。
顔料の分散性は顔料粒子の表面の性質に大きく依存することから、様々な表面処理による分散性の向上が試みられている。これらの処理方法としては、ロジン処理やカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤処理、顔料誘導体処理、ポリマー処理がある。
【0003】
これらの処理方法のうち、顔料表面にポリマーをコートさせることで分散性の向上を図るポリマー処理法には、in−situ重合法、相分離(コアセルベーション)法、液中乾燥法等がある。
その中で、in−situ重合法に代表されるin−situ条件下で重合あるいは縮合等の反応を行い、ポリマー処理する方法は従来より行われている方法であり、特許文献1〜10に記載されている。これらの方法は全て水系条件下で行われている。例えば特許文献1および2に記載の方法では、顔料を界面活性剤や水溶性ポリマーを用いて水系媒体に安定分散後、単量体を重合することでポリマー処理顔料を得ている。また特許文献3および4に記載の方法では、重合性界面活性剤を使用してポリマー処理顔料を得ている。また特許文献5に記載の方法では、重合性官能基を有するアルキレンオキサイド鎖含有化合物を使用し、顔料を分散した系で単量体を重合しポリマー処理顔料を得ている。
しかし、いずれの方法も、顔料が水系媒体に安定に分散できる状態が必須であるため使用できる顔料が特定されてしまうことや、得られるポリマー処理顔料の分散安定性は、水系媒体でないと得られず、有機溶媒では分散安定性が得られないといった問題があった。
特許文献6に記載の方法は、顔料とモノマーとを混合後、分散安定剤を用いた懸濁重合によりポリマー処理顔料を得る方法であるが、該方法では微細なポリマー処理顔料は得られない。
また、特許文献7に記載の方法は、親水性の有機溶剤および水の共存媒体中、予めシランカップリング剤で表面を覆った顔料の存在下で単量体を重合してポリマー処理顔料を得る方法である。しかしシランカップリング剤となじみにくい有機顔料には適用できない。
特許文献8に記載の方法は、特定の水溶性樹脂を有機顔料あるいはカーボンブラック表面に吸着した後、シランカップリング剤等によりカップリング処理を行う方法であり、特許文献9に記載の方法は、特定のポリマーとシリカ系物質で無機顔料粒子や有機顔料粒子を被覆する方法であり、特許文献10に記載の方法は、顔料に対して、シロキサン結合を用いて、β−ジケトン基とカチオン性塩生成基を有する特定の高分子化合物で被覆する方法である。しかし、いずれも方法も水溶性樹脂等を用いた方法であり、有機溶剤での顔料分散性を高める事はできない。
【0004】
溶媒として水を使用しないin−situ重合法としては、例えば特許文献11〜16に記載されている。これらはいずれも、誘電率1.5〜20および表面張力15〜60mN/mの非水溶媒中でin−situ重合法を行っている。しかし該文献に記載の方法はいずれも、表面処理された顔料を使用し、特定の分散安定剤で顔料を安定に分散させる事が必須条件であるため、汎用的ではない。
【0005】
これに対し発明者らは、非水溶媒条件下でのin−situ重合法で有機溶剤でも分散安定性が良好なポリマー処理顔料を発明し開示している(例えば特許文献17,18参照)。これらは顔料表面にアクリル樹脂やアルキド樹脂等を有しているもので、有機溶剤中でも顔料分散性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−189928号公報
【特許文献2】特開2004−189929号公報
【特許文献3】特開2005−097517号公報
【特許文献4】特開平10−316909号公報
【特許文献5】特開2004−155818号公報
【特許文献6】特開平13−72887号公報
【特許文献7】特開2005−120365号公報
【特許文献8】特許第3617302号、
【特許文献9】特開2001−11342号公報
【特許文献10】特開2008−291112号公報
【特許文献11】特開2004−2501号公報
【特許文献12】特開2004−18736号公報
【特許文献13】特開2004−35592号公報
【特許文献14】特開2004−083660号公報、
【特許文献15】特開2004−107523号公報、
【特許文献16】特開2004−107524号公報
【特許文献17】特開2008−88211号公報、
【特許文献18】特開2008−239869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、有機溶媒でも良好な分散安定性を示す特定のポリマーで処理された顔料、及び、汎用の顔料に適用でき有機溶媒でも良好な分散安定性を示すポリマー処理顔料を得る製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料表面に、非水溶媒に可溶な特定のポリマーの存在下、少なくとも1種の2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物を加水分解縮合することにより得られるポリマー処理顔料が、良好な顔料分散性を示す事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のポリマー処理顔料は、顔料(A)と非水溶媒及び非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)とを混合後、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)とを加水分解縮合させるか、もしくは、顔料(A)と非水溶媒及び非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)とを混合後、一分子中に少なくとも1個の官能基Xと反応する官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合させるかにより得ることができる。
本発明では前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)あるいは官能基Xを有するポリマー(B−2)で顔料(A)の表面が濡らされる事により、形成される顔料(A)と前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)あるいは官能基Xを有するポリマー(B−2)との界面が加水分解縮合反応の場になると考えられ、顔料が分散安定剤に微細かつ安定に分散された場は必須ではないため、微細に分散された状態を形成するための顔料の表面処理等は必ずしも必要ではなく、広範囲の種類の顔料に適用できるものである。
【0010】
即ち本発明は、顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)の加水分解縮合物を有することを特徴とするポリマー処理顔料を提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載のポリマー処理顔料の製造方法であって、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)とを混合後、加水分解縮合することを特徴とするポリマー処理顔料の製造方法を提供する。
【0012】
また本発明は、顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)と一分子中に少なくとも1個の官能基Xと反応する官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合物を有することを特徴とするポリマー処理顔料を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載のポリマー処理顔料の製造方法であって、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)とを混合後、一分子中に少なくとも1個の官能基Xと反応する官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合することを特徴とするポリマー処理顔料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリマー処理顔料は有機溶媒でも良好な分散安定性を示すので、塗料、プラスチック、印刷インキ、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写インキなどの有機溶剤を溶媒としたときの色材として非常に有用である。
また、本発明のポリマー処理顔料の製造方法は、未処理顔料、処理顔料、有機無機問わず、汎用の顔料に適用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(顔料(A))
本発明で使用する顔料(A)は、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。
【0016】
有機顔料としては、例えば、ペリレン・ペリノン系化合物顔料、キナクリドン系化合物顔料、フタロシアニン系化合物顔料、アントラキノン系化合物顔料、フタロン系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料、イソインドリノン系化合物顔料、メチン・アゾメチン系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、不溶性アゾ系化合物顔料、溶性アゾ系化合物顔料、縮合アゾ系化合物顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例を挙げると、例えば次の通りである。
ペリレン・ペリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentViolet 29、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、C.I.Pigment Black 31、同32、C.I.Pigment Orange 43等の顔料が挙げられる。
キナクリドン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 19、同42、C.I.Pigment Red 122、同202、同206、同207、同209、C.I.Pigment Orange 48、同49等の顔料が挙げられる。
フタロシアニン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、C.I.Pigment Green 7、同36、同58等の顔料が挙げられる。
アントラキノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Yellow 24、同108、C.I.Pigment Red 168、同177、C.I.Pigment Orange 40等の顔料が挙げられる。
フタロン系化合物顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138等の顔料が挙げられる。
ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37等の顔料が挙げられる。
イソインドリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 109、同110、同173、C.I.Pigment Orange 61等の顔料が挙げられる。
メチン・アゾメチン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentYellow 139、同185、C.I.Pigment Orange 66、C.I.Pigment Brown 38等の顔料が挙げられる。
ジケトピロロピロール系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentRed 254、同255等の顔料がある。
不溶性アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同97、同130、同151、同152、同154、同156、同165、同166、同167、同170、同171、同172、同174、同175、同176、同180、同181、同188、C.I.Pigment Orange 16、同36、同60、C.I.Pigment Red5、同22、同31、同112、同146、同150、同171、同175、同176、同183、同185、同208、同213、C.I.PigmentViolet 43、同44、C.I.Pigment Blue 25、同26等の顔料が挙げられる。
溶性アゾ系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 53:1、同57:1、同48等の顔料がある。
縮合アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 93、同94、同95、同128、同166、C.I.PigmentOrange 31C.I.Pigment Red 144、同166、同214、同220、同221、同242、同248、同262、C.I.Pigment Brown 41、同42等の顔料がある。
【0017】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、窒化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー等が挙げられる。
【0018】
本発明においては特に無機顔料、カーボンブラックであると、本発明の効果をより発揮することができる。有機顔料では、前記キナクリドン系化合物顔料、前記フタロシアニン系化合物顔料、前記不溶性アゾ系化合物顔料、前記溶性アゾ系化合物顔料、前記縮合アゾ系化合物顔料の使用が好ましい。
【0019】
(非水溶媒)
本発明で使用する非水溶媒は、脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤を必須とする有機溶剤である。脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シェルケミカルズ社製品の「ロウス」もしくは「ミネラルスプリットEC」、エクソンモービルケミカル社製品の「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「ナフサ3号」、「ナフサ5号」もしくは「ナフサ6号」、出光石油化学株式会社製品の「ソルベント7号」、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」もしくは「IPソルベント2835」、株式会社ジャパンエナジー製品の「ホワイトゾール」、丸善石油化学株式会社製品の「マルカゾール8」、新日本石油株式会社製品の「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」および「AFソルベント7号」等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の有機溶剤を混合して使用してもよい。このような有機溶剤としては、具体的には例えば、丸善石油株式会社製品の「スワゾール100ないしは150」、トルエンもしくはキシレンの等の芳香族炭化水素系溶剤類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルもしくは酢酸アミルの等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンもしくはシクロヘキサノンの等のケトン類;またはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールもしくはn−ブタノールの等のアルコール類が挙げられる。
混合して使用する際には、前記脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤の使用量を、50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
【0021】
(非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1))
本発明で使用する非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)とは、具体的には、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体を必須成分とするコポリマーである。具体的には、前記加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体と、炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合性不飽和単量体を共重合したポリマー等が好ましい例として挙げられる。
【0022】
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルフェニルメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルフェニルメチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
また、アルキル(メタ)アクリレート以外の使用が可能な重合性不飽和単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンもしくはビニルトルエンの等の芳香族系ビニル系モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレートもしくはトリブロモフェニル(メタ)アクリレートの等の(メタ)アクリレート類、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸の等の不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル類、安息香酸ビニル、「ベオバ」(オランダ国シェル社製のビニルエステル)の等のビニルエステル類等が挙げられ、前記のアルキル(メタ)アクリレート類とともに共重合して使用することができる。
これらのアルキル(メタ)アクリレート以外の使用が可能な重合性不飽和基含有単量体の単独の重合体は該非水媒体での溶解性が低いため、アルキル(メタ)アクリレートとランダム重合体として使用されることが好ましい。ブロック状あるいはグラフト状に共重合を行った場合は、該非水媒体での溶解性を著しく低下させるおそれがある。
【0024】
これらの重合性不飽和単量体は単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート等の炭素数4個から18個のアルキル基を持つ直鎖あるいは分岐のアルキル(メタ)アクリレートの使用が特に好ましい。
【0025】
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体を必須成分とし、炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合性不飽和単量体を共重合したポリマーは常法により重合することで得られる。
【0026】
(非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2))
本発明で使用する非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)とは、具体的には、カルボキシル基、水酸基、3級アミノ基、及びグリジジル基等の官能基Xを有する重合性不飽和単量体を必須成分とし、炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合性不飽和単量体を共重合したポリマー、あるいは、非水溶媒に可溶なカルボキシル基、水酸基等の官能基Xを有するアルキド樹脂等を指称するものである。
【0027】
前記カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類との各種のモノエステル類(ハーフエステル類); アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、後掲するような各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物などであるし、さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような各種の単量体類などが挙げられる。
【0028】
前記水酸基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類; ポリエチレングリコールなどで以て代表されるような、種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸とから得られる、各種のポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;あるいは前掲したような各種の水酸基含有単量体類と、ε − カプロラクトンなどで以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物; またはグリシジル(メタ)アクリレートなどで以て代表されるような、種々のグリシジル基含有不飽和単量体と、酢酸などで以て代表されるような、種々の酸類との付加物などであるし、さらには、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カージュラE」(オランダ国シェル社製の商品名)などで以て代表されるような、α − オレフィンのエポキサイド系化合物以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような種々の水酸基含有単量体類などが挙げられる。
【0029】
前記3級アミノ基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートまたはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有( メタ) アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールもしくはN−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ) アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ) エチル( メタ)アクリルアミド、N−( 3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−[2−(メタ)アクリルアミド] エチルモルホリンの如き、各種の3 級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ) エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミドまたはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルまたは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などが挙げられる。
【0030】
前記グリシジル基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3 ,4 −エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き、種々の化合物などが挙げられる。
【0031】
前記カルボキシル基、水酸基、3級アミノ基、及びグリジジル基等の官能基Xを有する重合性不飽和単量体を必須成分とし、前記の炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合性不飽和単量体を共重合したポリマーは常法により重合することで得られる。
【0032】
また、前記非水溶媒に可溶なカルボキシル基、水酸基等の官能基を有するアルキド樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を脂肪油や脂肪酸で変性したものである。またアクリル等のビニル変性、フェノール変性、エポキシエステル変性、シリコン変性等も知られている。本願においては、非水溶媒への溶解性の高さから油成分の多いアルキド樹脂の使用が好ましく、長油アルキド樹脂の使用が好ましい。
アルキド樹脂としては具体的には、たとえば、オクチル酸、ラウリル酸、ステアリン酸もしくは「バーサティック酸」(シェル社製の合成脂肪酸)の等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸もしくはリシノール酸の等の不飽和脂肪酸;「パモリン200もしくは300」(米国ハーキュレス社製の合成乾性油脂肪酸)、支那桐油(脂肪酸)、あまに油(脂肪酸)、脱水ひまし油(脂肪酸)、トール油(脂肪酸)、綿実油(脂肪酸)、大豆油(脂肪酸)、オリーブ油(脂肪酸)、サフラワー油(脂肪酸)、ひまし油(脂肪酸)もしくは米糖油(脂肪酸)の等の(半)乾性油(脂肪酸);または水添やし油脂肪酸、やし油脂肪酸もしくはパーム油脂肪酸の等の不乾性油(脂肪酸)などの油又は脂肪酸から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用して、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールまたはソルビトールの等の多価アルコールの1種または2種以上と、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、テトラクロロ(無水)フタル酸、ヘキサクロロ(無水)フタル酸、テトラブロモ(無水)フタル酸、トリメリット酸、「ハイミック酸」〔日立化成工業(株)製品〕、(無水)こはく酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、アジピン酸、セバチン酸または、しゆう酸などのカルボン酸の1種または2種以上とを、常法により、さらに必要に応じて、「トーレシリコーンSH−6018」〔トーレシリコーン(株)製品〕、「X−22−160AS、KR−212もしくは213」〔信越化学工業(株)製品〕のような反応性シリコーン樹脂、「カージュラE」(前掲の「バーサティック酸」のグリシジルエステル;シェル社製品)などの脂肪酸のグリシジルエステルのようなモノエポキシ化合物、または「エピクロン200もしくは400」〔DIC(株)製品〕ないしは「エピコート828もしくは1001」(シェル社製品)のようなポリエポキシ化合物、あるいはトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートもしくは4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などのジイソシアネート類、これらのジイソシアネート類と上記多価アルコールや水などとの付加反応により得られるポリイソシアネート類、またはジイソシアネート類同士の(共)重合により得られるイソシアヌル環を有するポリイソシアネート類の1種または2種以上で以て、前記多価アルコールやカルボン酸などの一部を置き換えて、常法により、反応させて得られるものが挙げられる。
【0033】
(一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1))
一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランもしくはテトラ−n−ブトキシシランの如き、各種のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランもしくはn−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシランもしくはジ−n−ブチルジエトキシシランまたはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシランの如き、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;あるいはテトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシランの如き、各種のクロロシラン類などであるし、さらには、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランもしくはジフェニルジアセトキシシランの如き各種のアセトキシシラン類などが挙げられる。
【0034】
(一分子中に少なくとも1個の官能基Yと2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2))
一分子中に少なくとも1個の官能基Yと2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)において、官能基Yとは、前記官能基Xと反応しうる官能基である。具体的には、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
例えば官能基Yがグリシジル基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、アミノ基、カルボキシル基等であり、アミノシランの如き、官能基Yがアミノ基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、グリシジル基等であり、イソシアネートシラン類の如き、官能基Yがイソシアネート基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、水酸基、アミノ基等である。
このような珪素化合物(C−2)としては、例えば、γ−グリシドキシトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの如き、エポキシシラン類;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランの如きアミノシラン類:3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランの如きイソシアネートシラン類などが挙げられる。エポキシシラン類の如き、官能基Yがグリシジル基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、アミノ基、カルボキシル基等であり、アミノシランの如き、官能基Yがアミノ基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、グリシジル基等であり、イソシアネートシラン類の如き、官能基Yがイソシアネート基である場合には、非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2)の官能基Xは、水酸基、アミノ基等である。
【0035】
本発明のポリマー処理顔料のうち、顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)の加水分解縮合物を有するポリマー処理顔料は、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)とを混合後、加水分解縮合することで得られる。
また、顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)と一分子中に少なくとも1個の官能基Xと反応する官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合物を有するポリマー処理顔料は、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)とを混合後、一分子中に少なくとも1個の官能基Xと反応する官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物を混合後、加水分解縮合することで得られる。
【0036】
顔料(A)と、前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)や前記官能基Xを有するポリマー(B−2)とは、加水分解縮合を行う前に混合することが好ましい。混合方法としては、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を使用することが可能である。本発明においては、使用する顔料の形態は問わず、スラリー、ウエットケーキ、粉体のいずれの形態でもかまわない。即ち、本発明の製造方法においては、ウエットケーキのような水を含む顔料であっても使用可能である。
【0037】
前記顔料(A)と、前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)や前記官能基Xを有するポリマー(B−2)との混合後に、前記一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)あるいは前記一分子中に少なくとも1個の官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物、水、必要に応じて触媒を加える事でポリマー処理顔料が得られる。この際、加水分解縮合反応は、室温等の低温でも進行するが、熱を加え、反応を促進する事が好ましい。また、反応促進のため触媒を添加しても良い。
【0038】
前記触媒としては、例えば、塩酸、硫酸または燐酸の如き、各種の無機酸類; p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピルまたは酢酸の如き、各種の有機酸類;水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの如き、各種の無機塩基類; テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートの如き、各種のチタン酸エステル類; ジブチル錫ジラウレートまたはオクチル酸錫の如き、各種の錫カルボン酸塩類;鉄、コバルト、マンガンまたは亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩; あるいはオクチル酸塩の如き、各種の金属カルボン酸塩類; あるいはアルミニウムトリスアセチルアセトネートの如き、各種のアルミニウム化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU) 、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミンまたはブチルアミンもしくはオクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールもしくは1,4−ジエチルイミダゾールの如き、各種のアミン化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩もしくはo−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、さらには、代表的なる対アニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類などであるが、塩基性触媒の使用が好ましく、アミン化合物の使用が特に好ましい。
【0039】
最終的に顔料にコートされる前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)や前記官能基Xを有するポリマー(B−2)の量は、顔料(A)100部に対して、2〜400部が好ましく使用され、より好ましくは10〜100部、さらに好ましくは10〜60部である。その際、前記加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)や前記官能基Xを有するポリマー(B−2)の100部に対して、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)あるいは一分子中に少なくとも1個の官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)は通常10〜400部の割合で使用することが好ましく、好ましくは30〜400部、さらに好ましくは50〜200部である。
【0040】
反応温度は特に制限はないが、通常60℃〜130℃の範囲である。加水分解反応のために、添加される水、加水分解により発生するアルコール、縮合により発生する水等により、反応系内の温度が上がらない場合があるが、そのままの温度で反応を継続しても良いし、あるいは、反応系から水やアルコールを除去し、反応を行っても良い。
また顔料(A)が有機顔料の場合、重合温度があまり高温では該顔料の変質や結晶成長などの形態変化が著しい場合があるため、その場合は50〜80℃で反応を行う事が好ましい。
【0041】
加水分解縮合後、ろ過により反応に使用した非水溶媒等を除去し、さらに乾燥、粉砕を行う事で粉体のポリマー処理顔料として得ることができる。ろ過方法には、ヌッチェ、フィルタープレス等を使用できる。また乾燥には、箱型乾燥機、真空乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等の公知の乾燥装置により乾燥することができる。また粉砕には、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の粉砕装置を使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0043】
<参考例1 非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1−1)の合成>
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ヘプタンの500部、酢酸ブチルの500部を仕込んで80℃に昇温し、同温度に達したところで、アクリル酸ブチルの950部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの50部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の7部からなる混合物を5時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持して反応を続行する事で、非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有する共重合体(B−1−1)の溶液を得た。配合比を表1に示す。
【0044】
<参考例2〜3 非水溶媒に可溶な加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1−2)〜(B−1−3)の合成>
配合比を表1に記載の配合比とする以外は、参考例1と同様の方法により加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1−2)〜(B−1−3)を得た。
【0045】
<参考例4〜6 非水溶媒に可溶な官能基Xを有するポリマー(B−2−1)〜(B−2−3)の合成>
配合比を表1に記載の配合比とする以外は、参考例1と同様の方法により官能基Xを有するポリマー(B−2−1)〜(B−2−3)を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
表1中、
重合開始剤1:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
重合開始剤2:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
−Ac:アクリレートの略称である。
−MAc:メタアクリレートの略称である。
マルカゾール8:丸善石油化学株式会社製の脂肪族炭化水素系溶剤
【0048】
<参考例7 カルボキシル基を有するアルキド樹脂(B−2−4)の合成>
温度計、撹拌機、デカンターおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、大豆油650部とペンタエリスリト−ル137部と水酸化リチウム0.15部とを仕込み、250℃まで昇温した。同温度で1時間保持してエステル交換を行った後、200℃まで降温して、無水フタル酸240部およびキシレン30部を仕込み、240℃まで昇温した。キシレン還流下、同温度で脱水しながら酸価が6となるまで約5時間反応させた後、不揮発分が60%になるように「ロウス」(シェルケミカルズ社製品、脂肪族炭化水素溶剤/芳香族炭化水素溶剤=70/30)で希釈し、酸価が3.6で油長が65%のアルキド樹脂(B−2−4)を得た。
【0049】
<実施例1 ポリマー処理顔料(PM−1)の合成>
ファーストゲンブルーFGF(DIC株式会社のブルー顔料)の100部、参考例1で得られた共重合体(B−1−1)の30.4部、1.25mmのジルコニアビーズの600部、ヘプタンの400部をポリエチレン広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社)で90分間混合を行った。ヘプタンの200部で希釈した後、ジルコニアビーズを除去し、顔料混合液を作成した。
得られた顔料混合液の400部を温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに仕込んだ後、一分子中に2個以上の加水分解性基を有する珪素化合物(C−1)として、テトラエトキシシランの37.9部、イオン交換水の3.2部およびジメチルアミノエタノールの3.8部を加えた。室温で30分間攪拌を続けた後、80℃まで昇温し、反応とともに温度が低下するが、70℃から80℃の温度を保持し、15時間反応を続けた。降温後、濾過を行う事で、ポリマー処理顔料と反応溶剤を分離した。得られたポリマー処理顔料を熱風乾燥機により100℃で5時間乾燥後、粉砕機にて粉砕を行う事で、74重量%の顔料化合物を含有するポリマー処理顔料(PM−1)を得た。
【0050】
<実施例2〜11 ポリマー処理顔料(PM−2)〜(PM−11)の合成>
使用する顔料(A)、ポリマー(B−1)もしくは(B−2)、非水溶媒の種類及び量を表4〜5に記載の顔料(A)及びポリマー(B−1)もしくは(B−2)に変更する以外は実施例1と同様にして、顔料混合液を作成した。
得られた顔料混合液の400部を使用し、珪素化合物(C−1)もしくは(C−2)に記載の珪素化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリマー処理顔料(PM−2)〜(PM−11)を得た。
【0051】
【表2】

【0052】
表2中、
アルキド樹脂:ベッコゾールP−470−67B:DIC株式会社製大豆油系アルキド樹脂、不揮発分:67%、溶剤:「ロウス」(シェルケミカルズ社製)
顔料1:ファーストゲンブルーFGF(粉体) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料)
顔料2:チタンブラック13M(粉体)(株式会社ジェムコ製ブラック顔料)
顔料3:MA11(粉体)(三菱化学株式会社製カーボンブラック)
顔料4:カーミン6B300(粉体) C.I.Pigment Red 57:1(DIC株式会社製レッド顔料)
顔料5:ファーストゲンブルーTGR(ウエットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料) 顔料成分45%
珪素化合物1:テトラエトキシシラン
珪素化合物2:フェニルトリメトキシシラン
珪素化合物3:メチルトリエトキシシラン
珪素化合物4:ジメチルジエトキシシラン
珪素化合物5:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
珪素化合物6:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
溶剤1は分散時に使用する溶剤で、溶剤2は取り出し時に加えた溶剤。
【0053】
【表3】

【0054】
表3中、
アルキド樹脂:ベッコゾールP−470−67B:DIC株式会社製大豆油系アルキド樹脂、不揮発分:67%、溶剤:「ロウス」(シェルケミカルズ社製)
顔料1:ファーストゲンブルーFGF(粉体) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料)
顔料2:チタンブラック13M(粉体)(株式会社ジェムコ製ブラック顔料)
顔料3:MA11(粉体)(三菱化学株式会社製カーボンブラック)
顔料4:カーミン6B300(粉体) C.I.Pigment Red 57:1(DIC株式会社製レッド顔料)
顔料5:ファーストゲンブルーTGR(ウエットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料) 顔料成分45%
珪素化合物1:テトラエトキシシラン
珪素化合物2:フェニルトリメトキシシラン
珪素化合物3:メチルトリエトキシシラン
珪素化合物4:ジメチルジエトキシシラン
珪素化合物5:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
珪素化合物6:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
溶剤1は分散時に使用する溶剤で、溶剤2は取り出し時に加えた溶剤。
【0055】
<応用例1>
実施例1で得られたポリマー処理顔料(PM−1)の5部およびアジスパーPB−821(味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤)の2.1部を酢酸エチルの21.4部に溶解した溶液、1.25mmのジルコニアビーズの125部をポリエチレン広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社)で2時間分散を行った。酢酸エチルの7.1部を加え、ジルコニアビーズを除去した後、バーコーターNo.6によりガラス板に塗装した。室温にて、10時間乾燥後、ヘイズグロス計(BYKガードナー製品)にて、60°光沢を測定した結果、86であった。また、スペクトロアイ(SpectroEye)(GretagMacbeth社製品)により、シアンの濃度(OD値)を測定した結果、1.8であり、良好な顔料分散性を示す事が確認された。
【0056】
<応用例2〜11>
ポリマー処理顔料(PM−1)、顔料分散剤、および溶剤を表4および表5に記載の通り変更する以外は、応用例1と同様の方法にて、顔料分散、塗装、および評価を行った。
【0057】
<比較応用例1〜5>
顔料、顔料分散剤、および溶剤を表6の様に変更する以外は、応用例1と同様の方法にて、顔料分散、塗装、および評価を行った。
【0058】
【表4】

【0059】
表4中、
アジスパーPB-821:味の素ファインテクノ製顔料分散剤
Disperbyk-2000:ビックケミー社製顔料分散剤、有効成分40%
EFKA−4401:チバスペシャルティーケミカルス社製顔料分散剤、有効成分50%
ソルスパーズ76500:ルーブリゾール社製顔料分散剤、有効成分50%
【0060】
【表5】

【0061】
表5中、
アジスパーPB-821:味の素ファインテクノ製顔料分散剤
Disperbyk-2000:ビックケミー社製顔料分散剤、有効成分40%
EFKA−4401:チバスペシャルティーケミカルス社製顔料分散剤、有効成分50%
ソルスパーズ76500:ルーブリゾール社製顔料分散剤、有効成分50%
【0062】
【表6】

【0063】
表6中、
顔料1:ファーストゲンブルーFGF(粉体) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料)
顔料2:チタンブラック13M(粉体)(株式会社ジェムコ製ブラック顔料)
顔料3:MA11(粉体)(三菱化学株式会社製カーボンブラック)
顔料4:カーミン6B300(粉体) C.I.Pigment Red 57:1(DIC株式会社製レッド顔料)
顔料5:ファーストゲンブルーTGR(ウエットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料)、顔料成分45%
アジスパーPB-821:味の素ファインテクノ製顔料分散剤
Disperbyk-2000:ビックケミー社製顔料分散剤、有効成分40%
EFKA−4401:チバスペシャルティーケミカルス社製顔料分散剤、有効成分50%
ソルスパーズ76500:ルーブリゾール社製顔料分散剤、有効成分50%
【0064】
実施例1〜11で得られたポリマー処理顔料(PM−1)〜(PM−11)を使用した塗布膜は、光沢がポリマー処理前の顔料と比較して、同等以上の非常に高い光沢値を与え、顔料分散性が優れていた。また、展色フィルム中の顔料分は、ポリマー処理前の顔料よりも低いが、発色は同等以上の値を示しており、ポリマー処理顔料の発色性が高いことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のポリマー処理顔料は、塗料、プラスチック、印刷インキ、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写インキなどの色材として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)の加水分解縮合物を有することを特徴とするポリマー処理顔料。
【請求項2】
顔料(A)表面に、非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)と一分子中に少なくとも1個の官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物の加水分解縮合物を有することを特徴とするポリマー処理顔料(但し、官能基Xと官能基Yは互いに反応するものとする)。
【請求項3】
請求項1に記載の加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)あるいは請求項2に記載の非水溶媒に可溶なポリマー(B−2)がアクリル樹脂、アルキド樹脂から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のポリマー処理顔料。
【請求項4】
前記非水溶媒が脂肪族炭化水素系溶剤及び/又は脂環式炭化水素系溶剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー処理顔料。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー処理顔料の製造方法であって、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)と一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−1)とを混合後、加水分解縮合することを特徴とするポリマー処理顔料の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載のポリマー処理顔料の製造方法であって、顔料(A)と非水溶媒に可溶な、官能基Xを有するポリマー(B−2)とを混合後、一分子中に少なくとも1個の官能基Yおよび2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物(C−2)を必須とする1種以上の珪素化合物とを混合後、加水分解縮合することを特徴とするポリマー処理顔料の製造方法(但し、官能基Xと官能基Yは互いに反応するものとする)。
【請求項7】
請求項5に記載の加水分解性シリル基を含有するポリマー(B−1)あるいは請求項6に記載の非水溶媒に可溶なポリマー(B−2)がアクリル樹脂、アルキド樹脂から選択される少なくとも1種である請求項5または6に記載のポリマー処理顔料の製造方法。
【請求項8】
前記非水溶媒が脂肪族炭化水素系溶剤及び/又は脂環式炭化水素系溶剤を含む、請求項5〜7のいずれかに記載のポリマー処理顔料の製造方法。

【公開番号】特開2010−235782(P2010−235782A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85497(P2009−85497)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】