説明

ポリマー外層を有する電解質コンデンサおよびその製造法

【課題】縁部を良好に被覆する高密度ポリマー外層を、簡単に得ることができ、かつ確実に再現することができる、低い等価直列抵抗を有する固体電解質コンデンサの向上した製造法を提供する。
【解決手段】電極物質の多孔質電極本体;電極物質の表面を覆う誘電体;および誘電体表面を導電性材料を少なくとも含む固体電解質を含むコンデンサ本体に、ポリアニリンおよび/またはポリチオフェンを含む導電性ポリマーの粒子b)を含む分散物a)を適用する工程;および導電性ポリマー外層の形成のために、分散剤d)を少なくとも部分的に除去し、かつ/または結合剤c)を硬化させる工程を含み、分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)が平均粒径70〜500nmを有する、固体電解質コンデンサの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマーの固体電解質および導電性ポリマー含有外層を有して成る、低等価直列抵抗および低残留電流を有する電界質コンデンサの製造法;この方法によって製造された電解質コンデンサ;およびそのような電界質コンデンサの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている固体電解質コンデンサは一般に、多孔質金属電極、その金属の表面上の酸化物層、多孔質構造物に組み込まれた導電性固体、外部電極(コンタクティング)、例えば銀層、ならびに電気接点および封入(encapsulation)を有する。
固体電解コンデンサの例は、タンタル、アルミニウム、電荷移動錯体を有するニオブおよび酸化ニオブコンデンサ、二酸化マンガンまたはポリマー固体電解質である。多孔質体の使用は、非常に高い容量密度、即ち高いキャパシタンスが、大きな表面積の故に小さなスペースで達成できるという利点を有する。
【0003】
π共役ポリマーは、それらの高い導電性の故に、固体電解質として特に適している。π共役ポリマーは、いわゆる導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。それらは、経済的にますます重要になっている。なぜならポリマーは、加工性、質量、および化学変性による目的とする性質調節に関し、金属に対して利点を有するからである。ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレンビニレン)は、既知のπ共役ポリマーの例であり、しばしばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とも呼ばれるポリ−3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェンは、それが酸化形態で非常に高い導電性を有するので、特に重要な工業的に使用されるポリチオフェンである。
【0004】
エレクトロニクスにおける技術の発展により、非常に低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解コンデンサが、ますます必要とされる。これは、例えば集積回路における論理電圧の減少、より高い集積密度およびクロック周波数の向上による。低いESRは、エネルギー消費も減少させ、これは、特に携帯のバッテリー稼動用途のために特に有利である。それゆえ、固体電解コンデンサのESRをできる限り低下させるという要請が存在する。
【0005】
欧州特許出願公開第340 512号は、3,4−エチレン−1,2−ジオキシチオフェンから製造される固体電解質の製造および酸化重合により製造されるカチオン性ポリマーの電解コンデンサ中における固体電解質としての使用を記載している。固体電解コンデンサ中における二酸化マンガンまたは電荷移動錯体の代用品としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、より高い導電性の故にコンデンサの等価直列抵抗を低下させ、周波数挙動を向上させる。
【0006】
低いESRに加えて、現代の固体電解コンデンサには、低い漏れ電流および外部応力に対する良好な安定性が要求される。コンデンサアノードの漏れ電流を大幅に上昇させ得る高い機械的応力は、特に製造プロセスの際のコンデンサアノードの封入時に生ずる。
そのような応力に対する安定性、およびそれによる低い漏れ電流は、主として、コンデンサアノード上に導電性ポリマーから形成された厚さ約5〜50μmの外層により達成することができる。そのような層は、コンデンサアノードおよびカソード側電極の間の機械的バッファとして使用される。これは、例えば機械的応力を受けたときに、銀層(電極)が誘電体と直接接触することを防ぐか、またはそれが損傷して、コンデンサの漏れ電流を上昇することを防ぐ。導電性ポリマーの外層自体は、自己修復挙動として知られるものを示す。バッファ効果にもかかわらず生ずる外部アノード表面上における誘電体中の比較的小さな欠陥は、電流による欠陥点で破壊される外層の導電性によって、電気的に絶縁される。
【0007】
厚い外層のインサイチュー重合による形成は、非常に困難である。層形成は、非常に多数の被覆サイクルをこの方法において要求する。多数の被覆サイクルの結果として、外層は非常に不均一に被覆され、特にコンデンサアノードのエッジは、しばしば不充分にしか被覆されない。特開2003-188052号公報は、均一なエッジ被覆が費用のかかる加工パラメーターの整合を必要とすることを記載している。しかしながらこれにより、製造方法は非常に中断しやすくなる。急速な層構築のための結合剤物質の添加も、結合剤物質が酸化インサイチュー重合を妨げるので困難である。さらにインサイチューで重合された層は、一般に、ポリマー層にホールを生じさせる残留塩を、洗浄により無くす必要がある。
【0008】
良好なエッジ被覆を有する密な導電性外層を、電気化学重合により達成することができる。しかしながら電気化学重合は、まず導電性箔を、コンデンサアノードの絶縁酸化物層に付着させ、次いでこの層を、各コンデンサのために電気的に接触させることを必要とする。この接触は、大量生産では非常に複雑であり、酸化物層を損傷し得る。
導電性ポリマーおよび結合剤の粉末を含有する配合物の使用は、個々の粉末粒子間の高い接触抵抗の故に、それらから低いESRを有する固体電解コンデンサを製造させるためには過剰の電気抵抗を有する。
【0009】
特開2001-102255号公報および特開2001-060535号公報では、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDT/PSS)(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸錯体またはPEDT/PSS錯体とも呼ばれる。)の層が、酸化物膜を保護するため、および酸化物膜への固体電解質の向上した接着のために、直接酸化物膜に適用される。次いでこの外層は、インサイチュー重合により、またはコンデンサアノードのテトラシアノキノジメタン塩溶液での含浸によりこの層に適用される。しかしながらこの方法は、PEDT/PSS錯体が、小さな孔を有する多孔質アノード体に浸透しないという欠点を有する。その結果、現代の高多孔質アノード物質を使用することができない。
【0010】
米国特許第6,001,281号は、実施例において、インサイチューで製造されたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)から製造された固体電解質およびPEDT/PSS錯体から製造された外層を有するコンデンサを記載している。しかしながらこれらコンデンサの欠点は、それらが130mΩおよびそれ以上の高いESRを有することである。
【0011】
未公開ドイツ特許出願第10349112号において、少なくとも1つのポリマー陰イオン、および少なくとも1つの任意に置換されていてよいポリマーアニリン、および/または一般式(I)、(II)の繰り返し単位または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン:
【化1】

および結合剤を含む分散物を適用することによって、ポリマー外層を形成している。この方法によって縁部の被覆を向上させることができるが、しかし、この方法によっては、高密度ポリマー外層を確実に再現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第340 512号
【特許文献2】特開2003-188052号公報
【特許文献3】特開2001-102255号公報
【特許文献4】特開2001-060535号公報
【特許文献5】米国特許第6,001,281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、縁部を良好に被覆する高密度ポリマー外層を、簡単に得ることができ、かつ確実に再現することができる、低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解質コンデンサの向上した製造法が現在も必要とされている。従って、本発明の目的は、そのような方法、およびその方法によって向上したコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外にも、平均粒径70〜500nmを有する導電性ポリアニリンおよび/または特にポリチオフェンの粒子、ならびに結合剤を含む分散物が、これらの要求を満たすことを見出した。
【0015】
分散物中の、導電性ポリマーから成る粒子b)の粒径分布は、意外にも、電解質コンデンサの外層形成にかなり影響する。特に、70nm未満の平均粒径を有する粒子b)を主に含む分散物を使用した場合、コンデンサ本体の縁部および角部を、密閉ポリマー皮膜で被覆することができない。従って、分散物中の粒径分布の目標とする調節は、角部および縁部の良好な被覆が確実に得られるようにする。
【0016】
従って、本発明は、電解質コンデンサの製造法を提供し、該方法は、
電極物質の多孔質電極本体(2);
電極物質の表面を覆う誘電体(3);および
誘電体表面を完全にまたは部分的に覆う導電性材料を少なくとも含む固体電解質(4)
を少なくとも含むコンデンサ本体(1)に、
少なくとも1つの任意に置換されていてよいポリアニリン、および/または一般式(I)または一般式(II)の繰り返し単位若しくは一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する1つのポリチオフェンを含む導電性ポリマーの粒子b):
【化2】

[式中、
Aは、任意に置換されていてよいC1〜C5アルキレン基を表し;
Rは、直鎖または分岐鎖の、任意に置換されていてよいC1〜C18アルキル基、任意に置換されていてよいC5〜C12シクロアルキル基、任意に置換されていてよいC6〜C14アリール基、任意に置換されていてよいC7〜C18アラルキル基、任意に置換されていてよいC1〜C4ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシル基を表し;
xは、0〜8の整数を表し;
いくつかのR基がAに結合している場合、これらは同じでも異なってもよい];
結合剤c)および分散剤d)
を少なくとも含む分散物a)を適用する工程;および
導電性ポリマー外層の形成のために、分散剤d)を少なくとも部分的に除去し、かつ/または結合剤c)を硬化させる工程;
を含む方法であり、分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)が平均粒径70〜500nmを有する方法である。一般式(I)および(II)は、x個の置換基Rがアルキレン基Aに結合しうることを意味するものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】固体電解質コンデンサの構造を示す図である。
【図2】図1の符号10の拡大図であり、コンデンサの層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、非限定的な図面によってさらに示す。
実施例を含む本明細書および特許請求の範囲に使用されており、特に指定されない限り、全ての数値は、「約」という語が明確に示されていない場合でも、「約」という語が前についているものとして理解される。さらに、本明細書に示されているどのような数値範囲も、その範囲に包含されるあらゆる部分範囲を含むものとする。
【0019】
導電性ポリマーの粒子b)の粒径は、粒径の関数としての、分散物a)中の粒子b)の重量分布に関する。それは、例えば、超遠心測定によって求められる。
【0020】
本発明の方法において、分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)は、好ましくは90〜400nm、特に好ましくは100〜300nmの平均粒径を有する。
【0021】
好ましくは、分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)の粒径分布は、50nmより大きいd10値および600nm未満のd90値、特に好ましくは70nmより大きいd10値および500nm未満のd90値、極めて好ましくは80nmより大きいd10値および400nm未満のd90値を有する。
【0022】
これに関して、粒径分布のd10値は、分散物a)中の導電性ポリマーの全粒子b)の合計重量の10%が、d10値と等しいかまたはそれ未満の直径を有する粒子b)であることを示す。粒径分布のd90値は、分散物a)中の導電性ポリマーの全粒子b)の合計重量の90%が、d90値と等しいかまたはそれ未満の直径を有する粒子b)であることを示す。
【0023】
本発明の方法によって製造される電解質コンデンサにおいて、電極物質は、高表面積を有する多孔質体を形成し、例えば、多孔質焼結体または粗面皮膜の形態である。以下では、この多孔質体を、略して電極本体とも称する。
【0024】
誘電体で覆われた電極本体は、以下では、略して、酸化電極本体とも称する。「酸化電極本体」という語は、電極本体の酸化によって製造されていない誘電体で覆われた電極本体も包含する。
【0025】
誘電体で覆われ、完全にまたは部分的に固体電解質で覆われた電極本体は、以下では、略して、コンデンサ本体とも称する。
【0026】
本発明の方法によって分散物a)から製造され、そして、少なくとも1つの任意に置換されていてよいポリアニリン、および/または一般式(I)または一般式(II)の繰り返し単位若しくは一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン、および少なくとも1つの結合剤c)を含む導電層は、本明細書においてポリマー外層と称する。
【0027】
好ましくは、分散物a)は、少なくとも1つのポリマー有機結合剤c)を含む。特に好ましい可能なポリマー有機結合剤c)は、例えば、以下の物質である:ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステルおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはセルロース。他の好ましい可能なポリマー有機結合剤c)は、架橋剤、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネートまたは官能性シラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラエトキシシラン加水分解物、または架橋性ポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレートまたはポリオレフィンを添加し、次に、架橋させることによって生成される結合剤である。ポリマー結合剤c)として好適なそのような架橋生成物は、例えば、添加された架橋剤と、分散物a)に任意に含有されるポリマー陰イオンとの反応によって形成することもできる。好ましい結合剤c)は、完成コンデンサが後に暴露される温度、例えばハンダ付け温度220〜260℃に耐えるために、適切な熱安定性を有する結合剤である。
【0028】
分散物a)中のポリマー結合剤c)の固形分は、0.1〜90wt%、好ましくは0.5〜30wt%、極めて好ましくは0.5〜10wt%である。
【0029】
分散物a)は、1つまたはそれ以上の分散剤d)を含有しうる。以下の溶媒が、分散剤d)の例として挙げられる:脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール;脂肪族ケトン、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、例えば、エチルアセテートおよびブチルアセテート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;クロロ炭化水素、例えば、メチレンクロリドおよびジクロロエタン;脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル;脂肪族スルホキシドおよびスルホン、例えば、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン;脂肪族カルボン酸アミド、例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;ならびに、脂肪族および芳香脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテルおよびアニソール。水、または水と前記有機溶媒との混合物も、分散剤d)として使用しうる。
【0030】
好ましい分散剤d)は、水、または他のプロトン性溶媒、例えばアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール)、ならびに水とこれらのアルコールとの混合物であり、水が特に好ましい溶媒である。
【0031】
適切であれば、結合剤c)が分散剤d)としても機能しうる。
【0032】
本発明に関して、ポリマーという用語は、2個以上の同じかまたは異なる繰り返し単位を有するあらゆる化合物を包含する。
【0033】
導電性ポリマーは、本明細書において、酸化または還元後に導電性を有するπ-共役ポリマーの化合物種を特に意味するものと理解される。好ましくは、導電性ポリマーは、酸化後に少なくとも1μScm−1程度の導電性を有するπ-共役ポリマーを意味するものと理解される。
【0034】
本発明に関して、接頭辞ポリ-は、2個以上の同じかまたは異なる繰り返し単位がポリマーまたはポリチオフェンに含有されていることを意味するものと理解される。ポリチオフェンは、合計n個の一般式(I)または一般式(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を含有し、ここで、nは、2〜2000、好ましくは2〜100の整数である。一般式(I)および/または(II)の繰り返し単位は、それぞれの場合に、ポリチオフェン内で同じでも異なってもよい。それぞれの場合に、一般式(I)、(II)、または(I)および(II)の同じ繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。
【0035】
ポリチオフェンは、それぞれの場合に、末端基にHを有するのが好ましい。
【0036】
固体電解質は、任意に置換されていてよいポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンを導電性ポリマーとして含有し得る。
本発明の固体電解質として好ましい導電性ポリマーは、式中のA、Rおよびxが、一般式(I)および(II)のために上で与えられた意味を有する、一般式(I)、(II)で示される反復単位または一般式(I)および(II)で示される反復単位を有するポリチオフェンである。
【0037】
式中のAが任意に置換されていてよいC2〜C3アルキレン基を表し、xが0または1を表す、一般式(I)、(II)で示される反復単位または一般式(I)および(II)で示される反復単位を有するポリチオフェンが、特に好ましい。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が、固体電解質の導電性ポリマーとして非常に好ましい。
【0038】
本発明の範囲内においてC1〜C5アルキレン基Aは、好ましくはメチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。本発明においてC1〜C18アルキルRは、好ましくは直鎖または分岐鎖C1〜C18アルキル基、例えばメチル、エチル、n−若しくはイソプロピル、n−、イソ−、sec−若しくはt−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを表し、C5〜C12シクロアルキルRは、例えばシクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C5〜C14アリールRは、例えばフェニルまたはナフチルを表し、C7〜C18アラルキルRは、例えばベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。前記のリストは、例として本発明を説明するために使用され、決定的なものとみなされるべきではない。
【0039】
多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボン酸塩、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシランの基並びにカルボキシアミド基を、C1〜C5アルキレン基Aおよび/または基Rのための任意のさらなる置換基として考慮することができる。
【0040】
ポリアニリンの可能な置換基は、例えば、上記の基AおよびR,並びに/若しくは基AおよびRの更なる置換基である。未置換ポリアニリンが好ましい。
【0041】
本発明の好ましい方法において固体電解質として使用されるポリチオフェンは、中性またはカチオン性であり得る。好ましい実施態様において、それらはカチオン性である。「カチオン性」は、単にポリチオフェン主鎖上に位置する電荷を指す。R基上の置換基に応じてポリチオフェンは、正および負の電荷を構造単位中に帯びることができ、正電荷は、ポリチオフェン主鎖上に位置し、負電荷は、任意に、スルホネートまたはカルボキシレートの基により置換されているR基上に位置する。この場合にポリチオフェン主鎖の正電荷を、部分的または全体的に、R基上に任意に存在するアニオン性基により補うことができる。全体的に見て、これらの場合のポリチオフェンは、カチオン性、中性、またはアニオン性でさえあり得る。それにもかかわらずそれらは、全て、本発明の範囲内においてカチオン性ポリチオフェンとみなされる。なぜならポリチオフェン主鎖上の正電荷が重要だからである。正電荷は、式中に示されていない。なぜならそれらの正確な数および位置を、完全に確定することができないからである。しかしながら正電荷数は、少なくとも1でnを超えず、nは、ポリチオフェン中における全ての反復単位(同じまたは異なるもの)の総数である。
【0042】
正電荷を補うために、これが、任意にスルホネートまたはカルボキシレートで置換され、そうして負に帯電したR基の結果として既になされていない場合に、カチオン性ポリチオフェンは、対イオンとしてアニオンを必要とする。
対イオンは、モノマーまたはポリマーアニオンであり得、後者は以下でポリアニオンとも呼ばれる。
【0043】
固体電解質に使用するポリマーアニオンは、例えば、ポリマーカルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸若しくはポリマレイン酸、またはポリマースルホン酸、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸のアニオンであり得る。これらのポリカルボン酸およびスルホン酸はまた、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と、他の重合性モノマー、例えばアクリル酸エステルおよびスチレンとのコポリマーであり得る。
【0044】
好ましくはモノマーアニオンが、固体電解質のために使用される。なぜならそれらは、酸化電極体に良好に浸透するからである。
モノマーアニオンとして作用するアニオンは、例えばC1〜C20アルカンスルホン酸、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン若しくは高級スルホン酸、例えばドデカンスルホン酸のアニオン、脂肪族パーフルオロスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸若しくはパーフルオロオクタンスルホン酸のアニオン、脂肪族C1〜C20カルボン酸、例えば2−エチルへキシルカルボン酸のアニオン、脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸若しくはパーフルオロオクタン酸のアニオン、任意にC1〜C20アルキル基により置換されている芳香族スルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸若しくはドデシルベンゼンスルホン酸のアニオン、およびシクロアルカンスルホン酸、例えばカンファースルホン酸のアニオン、またはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセナート若しくはヘキサクロロアンチモネートを含む。
【0045】
p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはカンファースルホン酸のアニオンが好ましい。
電荷補償のために対イオンとしてアニオンを含有するカチオン性ポリチオフェンは、しばしば専門家にはポリチオフェン/(ポリ)アニオン錯体とも呼ばれる。
【0046】
導電性ポリマーおよびまた任意に対イオンに加え、固体電解質は、結合剤、架橋剤、界面活性物質、例えばイオン若しくは非イオン界面活性剤または接着剤および/またはさらなる接着剤も含有し得る。
接着促進剤は、例えば有機官能性シランおよびそれらの水解物、例えば3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシランである。
【0047】
固体電解質は、好ましくは導電性ポリマーおよび対イオンとしてのモノマーアニオンを含む。
固体電解質は、誘電体表面上で、好ましくは200nm未満、特に好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満の厚さを有する層を形成する。
【0048】
誘電体の固体電解質による被覆は、本発明の範囲内において以下のように定められる:コンデンサのキャパシタンスは、乾燥および湿潤状態において120Hzで測定される。被覆率は、割合(%)として表される湿潤状態のキャパシタンスに対する乾燥状態でのキャパシタンスの比である。乾燥状態は、コンデンサが、その測定前に高温(80〜120℃)で数時間乾燥されたことを意味する。湿潤状態は、コンデンサが、例えば蒸気圧容器内において高圧で数時間、飽和大気水分にさらされたことを意味する。水分は、固体電解質により被覆されていない孔に浸透し、その中で液体電解質として作用する。
誘電体の固体電解質による被覆は、好ましくは50%を超え、特に好ましくは70%を超え、より好ましくは80%を超える。
【0049】
ポリマー外層は、好ましくは図1および図2に例として示されているように、コンデンサ本体の外表面の全体または一部分に存在する。外表面は、コンデンサ本体の外側の面を意味すると理解される。
【0050】
図1は、
1 コンデンサ本体
5 ポリマー外層
6 グラファイト/銀層
7 電極体2へのワイヤ接点
8 外部接点
9 封入
10 詳細図
を含む、タンタルコンデンサの例における固体電解コンデンサの構造を示す該略図である。
【0051】
図2は、
10 詳細図
2 多孔質電極体(アノード)
3 誘電体
4 固体電解質
5 ポリマー外層
6 グラファイト/銀層
を含む、タンタルコンデンサの概略的な層構造を示す、実施例1からの拡大した詳細図10を示す。
【0052】
幾何表面積は、幾何寸法から得られるコンデンサ本体1の外面を意味するために以下で用いられる。直角平行の焼結体についての幾何表面積は、従って:
幾何表面積=2(L×B+L×H+B×H)
〔式中、Lは該焼結体の長さであり、Bは幅であり、Hは高さであり、×は乗法の記号を表す。〕
である。ポリマー外層が設置されているコンデンサ本体の一部分のみが調べられる。
【0053】
複数のコンデンサ本体1がコンデンサ中で使用される場合、個々の幾何表面積の合計が、総幾何表面積となる。
例えば巻かれた箔を多孔質電極体として含有する固体電解コンデンサのために、展開された箔(長さ、幅)の寸法が、測定値として使用される。
【0054】
導電性ポリマーを含む固体電解質の代わりに、固体電解質コンデンサは、非ポリマー導電性物質、例えば電荷移動錯体、例えば、TCNQ(7,7,8,8-テトラシアノ-1,4-キノジメタン)、二酸化マンガンまたは塩、例えばイオン液体を形成しうる塩を含む固体電解質を含むこともできる。ポリマー外層は、固体電解質コンデンサに低残留電流をもたらすことになる。
【0055】
分散物a)に存在する、一般式(I)、(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する導電性ポリマーの粒子b)のポリチオフェンに関して、固体電解質中のポリチオフェンと同様の好ましい構造特徴が適用される。
【0056】
ポリマーまたはモノマーの陰イオンは、該粒子b)のポリアニリンおよび/またはポリチオフェン(一般式(I)、(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する)の対イオンとして機能することができる。しかし、ポリマー陰イオンは、分散物a)における対イオンとして機能するのが好ましい。
【0057】
本明細書中、ポリマーアニオンは、例えばポリマーカルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸若しくはポリマレイン酸、またはポリマースルホン酸、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸のアニオンであり得る。これらのポリカルボン酸およびスルホン酸はまた、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と、他の重合性モノマー、例えばアクリル酸エステルおよびスチレンとのコポリマーであり得る。
ポリマーカルボン酸またはスルホン酸のアニオンが、上記粒子b)中のポリマーアニオンとして好ましい。
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンが、ポリマーアニオンとして特に好ましい。
【0058】
ポリアニオンを供給するポリ酸の分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、好ましくは2,000〜500,000である。ポリ酸またはそのアルカリ金属塩は、市販されている、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸であるか、または代わりに既知の方法により製造することができる(例えば Houben Weyl, Processen der organischen Chemie, 第E 20巻 Makromolekulare Stoffe, 第2部, (1987), p. 1141 以降を参照)。
【0059】
分散物a)は、ポリマー陰イオンおよび導電性ポリマーを、特に、重量比0.5:1〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、特に好ましくは2:1〜20:1で含むことができる。この場合、導電性ポリマーの重量は、重合中に完全な変換が起こることを前提として、使用されるモノマーの重量に対応する。
【0060】
分散物a)は、モノマーの陰イオンも含むことができる。モノマーの陰イオンについては、固体電解質に関して先に挙げたのと同じ好ましい陰イオンが適用される。
【0061】
分散物a)は、他の成分、例えば界面活性物質、例えばイオン性および非イオン界面活性剤、または接着促進剤、例えば、有機官能性シランまたはその加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシランをさらに含むことができる。
【0062】
ポリマー外層の厚さは、好ましくは1〜1,000μm、特に好ましくは1〜100μm、とりわけ好ましくは2〜50μm、非常に好ましくは4〜20μmである。膜厚は、外面上で変わり得る。特に膜厚は、コンデンサ本体の側面よりもキャパシタ体のエッジでより厚くまたはより薄くなり得る。実質的に均一な膜厚が好ましい。
ポリマー外層は、結合剤c)および導電性ポリマーに関するその組成について均一または不均一な分布を有し得る。均一な分布が好ましい。
【0063】
ポリマー外層は、コンデンサ本体の外層を形成する多層系の構成要素であり得る。それゆえ1枚またはそれ以上のさらなる機能層(例えば、接着促進層)を、本発明の固体電解質およびポリマー外層の間に設置することができる。しかし、その結果外層の電気的機能が損なわれてはならない。さらなる機能層を、本発明のポリマー外層上に設置することもできる。複数の本発明のポリマー外層を、コンデンサ本体上に設置することもできる。
ポリマー外層は、好ましくは固体電解質上に直接設置される。ポリマー外層は、固体電解質との良好な電気接触を達成するためおよびコンデンサ本体への接着を向上させるために、好ましくはコンデンサ本体のエッジ領域に浸透するが、全ての孔の全部の深さには浸透しない(例えば図2参照)。
【0064】
特に好ましい実施態様において、新しい方法により製造される本発明の電解コンデンサは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)を含有する固体電解質、並びにポリスチレンスルホン酸(PSS)およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(これは、しばしばPEDOT/PSSまたはPEDT/PSSとも呼ばれる。)を含有するポリマー外層を有する。
特に好ましい実施態様において、新しい方法により製造される電解コンデンサは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびモノマー対イオンの固体電解質、並びにPEDT/PSSおよび結合剤c)のポリマー外層を含む。
【0065】
電極物質がバルブ金属またはバブル金属に匹敵する性質を有する化合物であることを特徴とする、電解コンデンサの製法が更に好ましい。
本発明の範囲内においてバルブ金属は、酸化物層が双方向に等しく可能な電流の流れを許さない金属を意味するために用いられる。アノードに電圧が印加されると、バルブ金属の酸化物層は電流の流れを遮断し、一方カソードに電圧が印加されると、酸化物層を破壊することがある大電流が生ずる。バルブ金属は、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびW、並びに少なくとも1種のこれら金属と他の元素との合金または化合物を含む。バルブ金属の最もよく知られている典型例は、Al、TaおよびNbである。バブル金属に匹敵する電気的性質を有する化合物は、酸化され得る金属的な導電性を有する化合物であり、その酸化物層は、上記の性質を有する。例えばNbOは、金属的な導電性を有するが、一般にバルブ金属とはみなされない。しかしながら酸化NbO層は、バルブ金属酸化物層の典型的な性質を有し、そうしてNbO、またはNbOと他の元素との合金もしくは化合物は、そのようなバブル金属に匹敵する性質を有する化合物の典型例である。
【0066】
従って用語「被酸化性金属」は、金属だけでなく、それらが金属的な導電性を有し、酸化され得る限り、金属と他の元素との合金または化合物も意味するために用いられる。
それゆえ本発明は、特に好ましくは、バルブ金属または匹敵する性質を有する化合物が、タンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、少なくとも1種のこれら金属と他の元素との合金若しくは化合物、NbO、またはNbOと他の元素との合金若しくは化合物であることを特徴とする電解コンデンサの製法を提供する。
誘電体は、好ましくは電極物質の酸化物からなる。それは、任意にさらなる元素および/または化合物を含有する。
【0067】
酸化電極体のキャパシタンスは、誘電体の種類に加えて、誘電体の表面積および厚さに依存する。比電荷は、酸化電極体が、単位質量あたりにどれほど電荷を蓄積することができるかの尺度である。電荷−質量比は、以下のように計算される:
比電荷=(キャパシタンス×電圧)/酸化電極体の質量。
キャパシタンスは、120Hzで測定される完成コンデンサのキャパシタンスから得られ、該電圧は、コンデンサの運転電圧である(定格電圧)。該酸化電極体の質量は、ポリマー、接点および封入の無い、単に誘電体で被覆された多孔質電極物質の質量に基づく。
本発明の電解コンデンサは、好ましくは10,000μC/gより高い、特に好ましくは20,000μC/gより高い、より好ましくは30,000μC/gより高い、最もこのましくは40,000μC/gより高い比電荷を有する。
【0068】
本発明の方法により製造される固体電解コンデンサは、低い残留電流および低い等価直列抵抗により特徴づけられる。ポリマー外層が、コンデンサ本体のまわりに密な層を形成し、そのエッジを非常に良好に被覆するので、コンデンサ本体は、機械的応力に対して丈夫である。さらにポリマー外層は、コンデンサ本体への良好な接着および高い導電性を示し、それにより低い等価直列抵抗を達成することができる。
【0069】
本発明は、好ましくは、本発明の方法により製造され、100kHzで測定して51mΩ未満のESRを有する電解コンデンサを提供する。本発明の方法により製造された電解コンデンサの周波数100kHzで測定されるESRは、特に好ましくは31mΩ未満、より好ましくは21mΩ未満、最も好ましくは16mΩ未満である。本発明の電解コンデンサの特に好ましい実施態様では、ESRは11mΩ未満である。
【0070】
固体電解コンデンサの等価直列抵抗は、コンデンサ本体の幾何表面積に反比例する。従って等価直列抵抗と幾何表面積との積は、構造寸法とは無関係な変数を与える。
それゆえ本発明は、好ましくは、100kHzで測定した等価直列抵抗とコンデンサ本体の幾何表面積との積が、4,000mΩmm2未満である、本発明の方法により製造された電解コンデンサをも提供する。等価直列抵抗と幾何表面積との積は、特に好ましくは3,000mΩmm2未満、より好ましくは2,000mΩmm2未満、最も好ましくは1,000mΩmm2未満である。本発明の電解コンデンサの特に好ましい実施態様では、等価直列抵抗と幾何表面積との積は600mΩmm2未満である。
【0071】
原理的に、本発明の電解質コンデンサは、以下のように製造することができる:第一に、例えば、高表面積を有するバルブ金属粉末を圧縮し、焼結して、多孔質電極本体を形成する。この手順において、粉末と同金属、例えばタンタルの、電気接触ワイヤも一般に、電極本体に圧入される。または、多孔質皮膜を得るために、金属皮膜をエッチングすることもできる。
【0072】
次に、電極本体を、例えば電気化学酸化によって、誘電体、即ち酸化物層で覆う。次に、固体電解質を形成する導電性ポリマーを、例えば酸化重合によって、化学的または電気化学的に、誘電体に付着させる。このために、導電性ポリマー製造用の先駆物質、1つまたはそれ以上の酸化剤、および任意に対イオンを、一緒にまたは順次に、多孔質電極本体の誘電体に適用し、そして、化学的酸化重合する、または導電性ポリマー製造用の先駆物質および対イオンを、電気化学重合によって、多孔質電極本体の誘電体に重合する。次に、本発明により、少なくとも1つの任意に置換されていてよいポリアニリンおよび/または1つのポリチオフェン(一般式(I)、(II)の繰り返し単位または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する)、および少なくとも1つの結合剤c)を含む層を、分散物a)からコンデンサ本体に適用する。状況に応じて、さらなる層をポリマー外層に適用してもよい。高導電性の層、例えばグラファイトまたは銀での被覆、または金属陰極本体は、電流を流すための電極として機能する。最後にコンデンサを接触させ、封入する。
【0073】
導電性ポリマーを製造するための前駆体(以下で前駆体とも呼ばれる。)は、対応するモノマーまたはその誘導体を意味すると理解される。異なる前駆体の混合物も使用することができる。適当なモノマー前駆体は、例えば任意に置換されていてよいチオフェン、ピロールまたはアニリン、好ましくは任意に置換されていてよいチオフェン、特に好ましくは任意に置換されていてよい3,4−アルキレンジオキシチオフェンを含む。
【0074】
置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンの例は、一般式(III)、(IV):
【化3】

〔式中、
Aは、任意に置換されていてよいC1〜C5アルキレン基、好ましくは任意に置換されていてよいC2〜C3アルキレン基を表し、
Rは、直鎖または分岐鎖の任意に置換されていてよいC1〜C18アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖の任意に置換されていてよいC1〜C14アルキル基、任意に置換されていてよいC5〜C12シクロアルキル基、任意に置換されていてよいC6〜C14アリール基、任意に置換されていてよいC7〜C18アラルキル基、任意に置換されていてよいC1〜C4ヒドロキシアルキル基、好ましくは任意に置換されていてよいC1〜C2ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8、好ましくは0〜6、特に好ましくは0または1の整数を表し、
いくつかのR基がAと結合している場合、これらは、同じまたは異なるものであり得る。〕
で示される化合物、または一般式(III)および(IV)で示されるチオフェンの混合物を含む。
【0075】
任意に置換されていてよい3,4−エチレンジオキシチオフェンが、とりわけ好ましいモノマー前駆体である。
置換3,4−エチレンジオキシチオフェンの例は、一般式(V):
【化4】

〔式中、Rおよびxは、一般式(III)および(IV)のために与えられた意味を有する。〕
で示される化合物を含む。
【0076】
これらモノマー前駆体の誘導体は、本発明により、例えばこれらモノマー前駆体のダイマーまたはトリマーを含むと理解される。モノマー前駆体の高分子量誘導体、即ちテトラマー、ペンタマーなども、誘導体として可能である。
一般式(VI):
【化5】

〔式中、
nは、2〜20、好ましくは2〜6、特に好ましくは2または3の整数を表し、
A、Rおよびxは、一般式(III)および(IV)のために与えられた意味を有する。〕
で示される化合物が、置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンの誘導体例として挙げられる。
【0077】
誘導体を、同じまたは異なるモノマー単位から製造することができ、純粋形態並びに相互および/またはモノマー前駆体との混合物で使用することができる。これら前駆体の酸化または還元形態も、その重合中に上で列挙した前駆体の場合と同じ導電性ポリマーが製造される場合、本発明の範囲内における用語「前駆体」により包含される。
【0078】
本発明に関して、C1〜C5アルキレン基Aは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレンまたはn-ペンチレンである。本発明に関して、C1〜C18アルキル基Rは、直鎖または分岐鎖C1〜C18アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-またはイソ-プロピル、n-、イソ-、sec-またはtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシルまたはn-オクタデシルであり、C5〜C12シクロアルキル基Rは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルであり、C5〜C14アリール基Rは、例えばフェニルまたはナフチルであり、C7〜C18アラルキル基Rは、例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリルまたはメシチルである。前記の例は、本発明を例示するものであり、限定するものと考えるべきでない。
【0079】
基Aおよび/または基Rの可能な任意のさらなる置換基は、多くの有機基、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基ならびにカルボキシアミド基である。
【0080】
前記先駆物質、特にチオフェン、好ましくは3,4-アルキレンジオキシチオフェンの、可能な置換基は、一般式(III)および(IV)のRに関して記載した基である。
【0081】
ピロールおよびアニリンの可能な置換基は、例えば、前記の基AおよびR、および/または基AおよびRのさらなる置換基である。
【0082】
導電性ポリマーおよびその誘導体の製造用のモノマー先駆物質の製造法は、当業者に既知であり、例えば、L. Groenendaal, F. Jonas, D. Freitag, H. Pielartzik & J. R. Reynolds, Adv. Mater. 12(2000)481-494およびそれに引用されている文献に記載されている。
【0083】
使用されるポリチオフェンの製造に必要とされる式(III)の3,4-アルキレンオキシチアチオフェンは、当業者に既知であるか、または既知の方法によって製造できる(例えば,P. Blanchard, A. Cappon, E. Levillain, Y. Nicolas, P. FrereおよびJ. Roncali, Org. Lett. 4(4), 2002, p.607-609)。
【0084】
導電性ポリマーは、誘電体で覆われた電極本体上で、下記の手順によって、導電性ポリマー製造用の先駆物質を酸化重合させることによって製造するのが好ましい。先駆物質、酸化剤および任意に対イオンを、好ましくは溶液状態で、電極本体の誘電体に、別々に順次に、または一緒に適用し、そして、使用される酸化剤の活性に依存して、任意に被覆物を加熱することによって、酸化重合を終了せる。
【0085】
該適用は、電極本体の誘電体上で、直接的に、または接着促進剤、例えばシラン、例えば、有機官能性シランまたはその加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン、および/または1つまたはそれ以上の機能層を使用して行うことができる。
【0086】
式(III)または(IV)のチオフェンの酸化化学重合は、使用される酸化剤および所望の反応時間に依存して、一般に、-10℃〜250℃、好ましくは0℃〜200℃で行われる。
【0087】
導電性ポリマー製造用の先駆物質および/または酸化剤および/または対イオンに関して挙げられる溶媒の例は、特に、反応条件下に不活性の以下の有機溶媒である:脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノールおよびブタノール;脂肪族ケトン、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、例えば、エチルアセテートおよびブチルアセテート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;クロロ炭化水素、例えば、メチレンクロリドおよびジクロロエタン;脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル;脂肪族スルホキシドおよびスルホン、例えば、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン;脂肪族カルボン酸アミド、例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;ならびに、脂肪族および芳香脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテルおよびアニソール。水、または水と前記有機溶媒との混合物も、溶媒として使用しうる。
【0088】
使用しうる酸化剤は、チオフェン、アニリンまたはピロールの酸化重合に好適な、当業者に既知のあらゆる金属塩である。
【0089】
好適な金属塩は、元素の周期表の主族または亜族の金属塩であり、後者は以下に遷移金属塩とも称す。好適な遷移金属塩は、特に、無機酸または有機酸または有機基含有無機酸と、遷移金属、例えば、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)およびルテニウム(III)との塩である。
【0090】
好ましい遷移金属塩は、鉄(III)の塩である。下記のような一般的な鉄(III)塩は、好都合にも安価であり、容易に入手でき、取り扱いが容易である:無機酸の鉄(III)塩、例えば、ハロゲン化鉄(III)(例えば、FeCl3)、または他の無機酸の鉄(III)塩、例えばFe(ClO43またはFe2(SO43、ならびに有機酸および有機基含有無機酸の鉄(III)塩。
【0091】
有機基含有無機酸の鉄(III)塩の例として挙げられるものは、C1〜C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩、例えば、硫酸ラウリルの鉄(III)塩である。
【0092】
特に好ましい遷移金属塩は、有機酸の遷移金属塩、特に有機酸の鉄(III)塩である。
有機酸の鉄(III)塩の例として挙げられるものは下記の塩である:C1〜C20アルカンスルホン酸、例えば、メタン-、エタン-、プロパン-、ブタン-または高級スルホン酸、例えばドデカンスルホン酸の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロオクタンスルホン酸の鉄(III)塩;脂肪族C1〜C20カルボン酸、例えば2-エチルヘキシルカルボン酸の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸の鉄(III)塩;C1〜C20アルキル基で任意に置換されていてよい芳香族スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸、例えば樟脳スルホン酸の鉄(III)塩。
これらの有機酸の鉄(III)塩の、任意の所望混合物も使用しうる。
【0093】
有機酸および有機基含有無機酸の鉄(III)塩の使用は、それらが腐食作用を有さないので極めて好都合である。
p-トルエンスルホン酸鉄(III)、o-トルエンスルホン酸鉄(III)、またはp-トルエンスルホン酸鉄(III)とo-トルエンスルホン酸鉄(III)との混合物が、金属塩として極めて好ましい。
【0094】
さらに好適な酸化剤は、ペルオキソ化合物、例えばペルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩)、特にペルオキソ二硫酸アンモニウムおよびアルカリ金属、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびカリウム、または過硼素酸アルカリ金属(触媒量の金属イオン、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンまたはバナジウムイオンの任意存在下)、および遷移金属酸化物、例えば、パイロルース鉱(酸化マグネシウム(IV))または酸化セリウム(IV)である。
【0095】
式(III)または(IV)のチオフェンの酸化重合のために、理論的に、チオフェン1モルにつき酸化剤2.25当量が必要とされる(例えば、J. Polym. Sc. part A Polymer Chemistry vol. 26, p.1287(1988)参照)。しかし、より少ないかまたはより多い当量の酸化剤を使用することもできる。本発明に関して、チオフェン1モルにつき、好ましくは1当量またはそれ以上、特に好ましくは2当量またはそれ以上の酸化剤を使用する。
【0096】
先駆物質、酸化剤および任意に対イオンを別々に適用する場合、電極本体の誘電体を、先ず、酸化剤および任意に対イオンの溶液で被覆し、次に、先駆物質の溶液で被覆するのが好ましい。先駆物質、酸化剤およびに任意に対イオンの好ましい同時適用の場合、電極本体の誘電体を、1つの溶液、即ち、先駆物質、酸化剤および任意に対イオンを含有する溶液だけで被覆する。
【0097】
下記のさらなる成分も溶液に添加しうる:例えば、有機溶媒に可溶の1つまたはそれ以上の有機結合剤、例えば、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリビチルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロリド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーンまたはスチレン/アクリル酸エステル、ビニルアセテート/アクリル酸エステルおよびエチレン/ビニルアセテートコポリマー、または水溶性結合剤、例えばポリビニルアルコール;架橋剤、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート、官能性シラン(例えば、テトラエトキシシラン、例えばテトラエトキシシランに基づくアルコキシシラン加水分解物、エポキシシラン、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン)、ポリウレタン、ポリアクリレートまたはポリオレフィン分散物;および/または添加剤、例えば界面活性物質、例えばイオン性または非イオン界面活性剤;または接着促進剤、例えば、有機官能性シランおよびその加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン。
【0098】
電極本体の誘電体に適用される溶液は、1〜30wt%の、一般式(III)のチオフェンまたは一般式(III)および(IV)のチオフェン混合物、および0〜50wt%の、結合剤、架橋剤および/または添加剤を含有するのが好ましい(両wt%は、混合物の全重量に基づく)。
【0099】
溶液は、電極本体の誘電体に、既知の方法、例えば、含浸、流し込み、滴下、吹き付け、噴霧、ナイフ塗布、刷毛塗り、スピンコーティングまたはプリンティング、例えば、インクジェット、スクリーン、コンタクトまたはタンポン(tampon)プリンティングによって適用される。
【0100】
溶液適用後の溶媒の除去は、室温で単に蒸発させることによって行うことができる。しかし、より速い処理速度を得るために、高温、例えば、20〜300℃、好ましくは40〜250℃の温度で溶媒を除去することがより好都合である。熱後処理を、溶媒除去と直接組み合わすことができ、または被覆物の製造から離れた時点で行うこともできる。
【0101】
熱処理時間は、被覆物に使用されるポリマーの性質に依存して5秒〜数時間である。種々の温度および滞留時間を有する温度プロフィルも熱処理に使用することができる。
【0102】
熱処理は、例えば以下の手順によって行うことができる:被覆酸化電極本体を、選択温度における所望の滞留時間が得られる速度で、所望温度の加熱室に通すか、または所望の滞留時間にわたって所望温度のホットプレートに接触させる。さらに、熱処理は、例えば、1つの加熱炉、またはそれぞれ異なる温度のいくつかの加熱炉で行うこともできる。
【0103】
溶媒の除去(乾燥)の後、および適切であれば、熱後処理の後に、過剰の酸化剤および残留塩を、好適な溶剤、好ましくは水またはアルコールで、被覆物から洗い流すことが好都合な場合がある。この場合、残留塩は、酸化剤の還元形態の塩、および適切であれば、存在する他の塩を意味するものと理解される。
【0104】
金属酸化物誘電体、例えばバルブ金属の酸化物については、酸化物皮膜における何らかの欠陥を修復し、それによって完成コンデンサの残留電流を減少させるために、重合後に、好ましくは洗浄中または洗浄後に、酸化物皮膜を電気化学的に再形成することが好都合な場合がある。このいわゆる再形成の間に、コンデンサ本体を電解質に浸漬し、正(positive)電圧を電極本体に適用する。流れる電流が、酸化物皮膜における欠陥部の酸化物、または高電流が流れる欠陥部の破壊導電性ポリマーを、再形成する。
【0105】
酸化電極本体の性質に依存して、より厚いポリマー層を得るために、酸化電極本体に混合物をさらに、好ましくは洗浄後に、含浸させることが好都合な場合がある。
【0106】
固体電解質のポリチオフェンを、電気化学的酸化重合によって、先駆物質から製造することもできる。
【0107】
電気化学重合において、誘電体で被覆した電解質本体を、導電性ポリマーの薄層で先ず被覆することができる。この層に電圧を適用した後、導電性ポリマーを含む層がこの上に形成される。他の導電層を付着層として使用することもできる。例えば、Y. Kudohら、Journal of Power Sources 60(1996)157-163は、酸化マンガンの付着層の使用を記載している。
【0108】
先駆物質の電気化学的酸化重合は、-78℃〜使用される溶媒の沸点の温度で行うことができる。電気化学的重合は、好ましくは-78℃〜250℃、特に好ましくは-20℃〜60℃の温度で行われる。
【0109】
反応時間は、使用される先駆物質、使用される電解質、選択される温度、および適用される電流密度に依存して、1分〜24時間である。
【0110】
先駆物質が液体の場合、電気重合条件下に不活性の溶媒の存在下または不存在下で、電気重合を行うことができ;固体先駆物質の電気重合は、電気化学重合条件下に不活性の溶媒の存在下で行われる。ある場合には、溶媒混合物を使用し、そして/または可溶化剤(洗浄剤)を溶媒に添加することが好都合なこともある。
【0111】
電気重合条件下に不活性である溶媒の例として、以下の溶媒が挙げられる:水;アルコール、例えば、メタノールおよびエタノール;ケトン、例えば、アセトフェノン;ハロゲン化炭化水素、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびフルオロ炭化水素;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル;炭酸エステル、例えば、炭酸プロピレン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;ニトリル、例えば、アセトニトリルおよびベンゾニトリル;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド;スルホン、例えば、ジメチルスルホン、フェニルメチルスルホンおよびスルホラン;液体脂肪族アミド、例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドンおよびN-メチルカプロラクタム;脂肪族、および混合脂肪族-芳香族エーテル、例えば、ジエチルエーテルおよびアニソール;ならびに、液体尿素、例えば、テトラメチル尿素またはN,N-ジメチル-イミダゾリジノン。
【0112】
電気重合の場合、電解質添加剤を、先駆物質またはその溶液に添加する。使用するのに好ましい電解質添加剤は、遊離酸、または使用される溶媒に特定の溶解性を有する一般的な導電性塩である。好適であることがわかっている電解質添加剤の例は以下のものである:遊離酸、例えば、p-トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸、さらには、アルカンスルホネート、芳香族スルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサクロロアンチオネート陰イオン、およびアルカリ金属、アルカリ土類金属または任意にアルキル化されたアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムおよびオキソニウム陽イオンを有する塩。
【0113】
先駆物質の濃度は0.01〜100wt%(液体先駆物質の場合のみ100wt%)にすることができる;その濃度は、好ましくは0.1〜20wt%である。
電気重合は、非連続的または連続的に行うことができる。
【0114】
電気重合のために電流密度は、広い範囲で変化させることができ、0.0001〜100mA/cm2、好ましくは0.01〜40mA/cm2の電流密度が一般に使用される。約0.1〜50Vの電圧を、これらの電流密度において設定する。
【0115】
金属酸化物誘電体については、酸化物皮膜における何らかの欠陥を修復し、それによって完成コンデンサの残留電流を減少させるために、電気化学重合後に、酸化物皮膜を電気化学的に再形成することが好都合な場合がある(再形成(re-formation))。
【0116】
好適な対イオンは、先に挙げたモノマーまたはポリマー陰イオン、好ましくはモノマーまたはポリマーアルカン-またはシクロアルカンスルホン酸または芳香族スルホン酸である。モノマーアルカン-またはシクロアルカンスルホン酸または芳香族スルホン酸の陰イオンは、これらを含有する溶液が誘電体で被覆した多孔質電極物質に浸透するのにより適しており、従って、これと固体電界質との間により広い接触面積を形成しうるので、本発明の電解質コンデンサに使用するのに特に好ましい。対イオンは、例えば、それらのアルカリ金属塩の形態で、または遊離酸として、溶液に添加される。電気化学重合の場合、これらの対イオンは、電解質添加剤または導電性塩として、溶液またはチオフェンに任意に添加される。
【0117】
使用される酸化剤に存在しうる陰イオンは対イオンとして機能することもでき、従って、化学酸化重合の場合に、さらなる対イオンを添加する必要が全くない。
【0118】
固体電界質の製造後に、ポリマー外層を前記のように適用する。
【0119】
分散物a)への結合剤c)の添加は、コンデンサ本体へのポリマー外層の付着を向上させるという優れた利点を有する。さらに、結合剤c)は、分散物における固形分を増加させ、それによって、1回の含浸で充分な外層厚みが得られ、縁部の被覆が著しく改善される。
【0120】
分散物a)は、さらに、架橋剤、界面活性物質、例えばイオン性または非イオン界面活性剤または接着促進剤、および/または添加剤を含むことができる。使用しうる架橋剤、界面活性物質および/または添加剤は、固体電解質に関して先に記載された物質である。
【0121】
分散物a)は、導電性を増加させる下記のような添加剤をさらに含むのが好ましい:エーテル基含有化合物、例えばテトラヒドロフラン、ラクトン基含有化合物、例えばγ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトン、アミドまたはラクタム基含有化合物、例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドンおよびピロリドン、スルホンおよびスルホキシド、例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)およびジメチルスルホキシド(DMSO)、糖または糖誘導体、例えば、スクロース、グルコース、フルクトースおよびラクトース、糖アルコール、例えばソルビトールおよびマンニトール、フラン誘導体、例えば2-フランカルボン酸および3-フランカルボン酸、および/またはジ-またはポリアルコール、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-およびトリエチレングリコール。テトラヒドロフラン、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはソルビトールを、導電性増加添加剤として使用するのが特に好ましい。
【0122】
分散物a)は、pH1〜14を有することができ、pH1〜8が好ましい。腐食過敏性誘電体、例えば酸化アルミニウムについては、誘電体を損傷させないためにpH4〜8の分散物が好ましい。
【0123】
分散物は、任意に置換されていてよいアニリン、一般式(III)、(IV)のチオフェン、または一般式(III)および(IV)のチオフェン混合物から、例えば、欧州特許出願第440957号(米国特許出願第5300575号)に記載されているのと同様の条件で製造される。可能な酸化剤および溶媒は、先に挙げた物質である。粒子b)の粒径分布は、例えば高圧均質化によって、調節することができる。
【0124】
ポリアニリン/ポリアニオンまたはポリチオフェン/ポリアニオン複合体の製造、その後の1つまたはそれ以上の溶媒への分散または再分散も可能である。
【0125】
分散物a)は、既知の方法、例えば、スピンコーティング、含浸、流し込み、滴下、吹き付け、噴霧、ナイフ塗布、刷毛塗りまたはプリンティング、例えば、インクジェット、スクリーンまたはタンポンプリンティングによって適用される。
【0126】
分散物a)の粘度は、適用方法に依存して、0.1〜100,000mPa・s(100s-1の剪断速度で測定)であってよい。粘度は、好ましくは1〜10,000mPa・s、特に好ましくは10〜1,000mPa・s、極めて好ましくは30〜500mPa・sである。
【0127】
分散物a)を含浸によってコンデンサ本体に適用する場合、含浸の前に、より高い粘度の薄膜を分散物a)の表面に形成させることが好都合な場合がある。次に、1回またはそれ以上の含浸および乾燥サイクルにおいて、コンデンサ本体をそのような分散物a)に連続的により深く浸漬する場合に、コンデンサ本体の縁部および角部の被覆が著しく改善され、乾燥ポリマー皮膜における気泡形成が抑制される。例えば、第一段階において、コンデンサ本体の半分だけを分散物a)に含浸し、次に、乾燥させることができる。次に、第二含浸段階において、コンデンサ本体を分散物a)に完全に浸漬し、次に、乾燥させることができる。分散物a)の表面におけるより高い粘度の薄膜形成は、例えば、単に開放雰囲気に置くことによって行うことができる。皮膜形成は、例えば、分散物a)を加熱するか、または分散物表面を熱風または放射熱で加熱することによって促進することができる。
【0128】
好ましくは、乾燥状態における比導電率が10 S/cmより大きい、より好ましくは20 S/cmより大きい、特に好ましくは50 S/cmより大きい、極めて好ましくは100 S/cmより大きい分散物a)を使用する。
【0129】
ポリマー外層の適用後に、乾燥、洗浄による層の清浄化、再形成および適用を数回行うこともできる(固体電解質の製造に関する先の記載と同様)。分散剤d)は、乾燥中に除去するのが好ましい。しかし、少なくともいくらかの分散剤d)をポリマー外層に残すこともできる。使用される結合剤c)または架橋剤に依存して、さらなる処理段階、例えば、熱または光による硬化または架橋も適用しうる。さらに、さらなる層をポリマー外層に適用することもできる。
【0130】
意外にも、金属酸化物誘電体について、低ESRおよび低残留電流を有する固体電解質コンデンサを製造するために、分散物a)の適用および乾燥後に、層におけるさらなる処理段階が必要でないことが見出された。ポリマー外層の他の製造法においては、低残留電流を得るために、導電性ポリマー外層の適用後に、酸化物層を一般に再形成しなければならない。電界質におけるこの再形成によって、ポリマー外層がコンデンサ本体から局所的に剥離する場合があり、その結果、ESRが増加する。本発明の方法を使用すれば、再形成を行う必要がなく、それにより残留電流が増加しない。
【0131】
ポリマー外層の製造後に、高導電性のさらなる層、例えば、グラファイトおよび/または銀層を、好ましくはコンデンサに任意に適用し、コンデンサを接触させ、封入する。
【0132】
電解質コンデンサついて先に記載したのと同等の電気特性を有するバルブ金属または化合物を、電極本体の製造に使用するのが好ましい。好ましい範囲は、状況に応じて適用される。
【0133】
被酸化性金属を、例えば粉末形態で焼結して多孔質電極本体を形成するか、または多孔質構造物を金属本体に型押しする。後者は、例えば皮膜のエッチングによって行うことができる。
【0134】
多孔質電極本体を、例えば燐酸のような好適な電解質において、電圧の適用によって、酸化させる。この形成電圧(forming voltage)のレベルは、達成すべき酸化層の厚み、またはコンデンサの後使用電圧(later use voltage)に依存する。好ましい電圧は、1〜300V、特に好ましくは1〜80Vである。
【0135】
電極本体の製造において、好ましくは、比電荷35,000μC/gより大きい、より好ましくは45,000μC/gより大きい、特に好ましくは65,000μC/gより大きい、極めて好ましくは95,000μC/gより大きい金属粉末を使用する。本発明の方法の好ましい態様において、比電荷140,000μC/gより大きい金属粉末を使用する。
【0136】
これに関して、比電荷は以下のように計算される:
比電荷 = (静電容量×電圧)/酸化電極本体の質量
【0137】
これに関して、静電容量は、水性電解質において120Hzで測定される酸化電極本体の静電容量から得られる。ここで、電解質の導電性は、120Hzにおいてまだ発生していない電解質の電気抵抗による静電容量の減少のために、充分に高い。例えば、18%の濃度の水性硫酸電界質を測定に使用する。前記の式における電圧は、最も大きい形成電圧(酸化電圧)に対応する。
【0138】
優れた縁部被覆および付着を有する高密度ポリマー外層を有する固体電解質コンデンサは、本発明の方法を使用して特に簡単に製造することができる。それと共に、コンデンサは、低残留電流および低ESRも特徴とする。
【0139】
本発明によって製造される電解質コンデンサは、それらの低残留電流および低ESRに基づいて、電子回路の部品として使用するのに極めて好適である。本発明は、その使用も提供する。例えば、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバ)、携帯電子機器、例えば携帯電話およびデジタルカメラ、エンターテイメントエレクトロニクス、例えばCD/DVDプレーヤーおよびコンピューターゲーム機、ナビゲーションシステムおよび電気通信設備に存在するような、デジタル電子回路が好ましい。
【実施例】
【0140】
実施例1
1. 酸化電極本体の製造
比静電容量50,000μFV/gを有するタンタル粉末を、タンタルワイヤ7の内包を伴って、ペレット2に対して圧縮し、焼結して、4.2mm×3mm×1.6mmの寸法の多孔質電極本体2を形成した。焼結ぺレット2(陽極ペレット)を、燐酸電解質中で30Vにおいて陽極酸化した。
【0141】
2. 陽極ペレットの化学的現場被覆
3,4-エチレンジオキシチオフェン(BAYTRON(登録商標)M, H.C. Starck GmbH)1重量部およびp-トルエンスルホン酸鉄(III)(BAYTRON(登録商標)C-E、H.C. Starck GmbH)の40wt%濃度エタノール溶液20重量部を含有する溶液を調製した。
【0142】
溶液を、18個の陽極ペレット2の含浸に使用した。陽極ペレット2をこの溶液で含浸し、次に、室温(20℃)で30分間乾燥させた。次に、それらを乾燥室において50℃で30分間熱処理した。次に、ペレット2を、p-トルエン酸の2wt%濃度の水溶液で30分間洗浄した。陽極ペレット2をp-トルエンスルホン酸の0.25wt%濃度の水溶液中で30分間再形成し、次に、蒸留水で濯ぎ、乾燥させた。同じペレット2を使用して、前記の含浸、乾燥、熱処理および再形成を、さらに2回行った。
【0143】
3. 本発明による分散物Aの製造
脱イオン水868g、ならびに平均分子量70,000および固形分3.8wt%を有するポリスチレンスルホン酸水溶液330gを、攪拌機および内部温度計付きの2L三つ口フラスコに先ず入れた。反応温度を20〜25℃に維持した。3,4-エチレンジオキシチオフェン5.1gを撹拌しながら添加した。溶液を30分間撹拌した。次に、硫酸鉄(III)0.03gおよび過硫酸ナトリウム9.5gを添加し、溶液をさらに24時間撹拌した。反応の終了後、無機塩を除去するために、強酸性陽イオン交換体100mLおよび弱塩基性陰イオン交換体250mLを添加し、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体を濾過によって除去した。得られたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散物は、固形分1.2wt%を有し、以下の粒径分布を有していた:
d10 100nm
d50 141nm
d90 210nm
導電性ポリマーの粒子b)の粒径は、粒径の関数としての、分散物中の粒子b)の重量分布に基づく。測定は、超遠心測定によって行った。
【0144】
このポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散物90部、ジメチルスルホキシド(DMSO)4部、スルホン化ポリエステル(Eastek(登録商標)1200、固形分:水中30wt%、Eastman)4.2部、および界面活性剤(Zonyl(登録商標)FS 300、Du Pont)0.2部を撹拌して、本発明による分散物Aを形成した。
【0145】
4. 平均粒径70nm未満を有する導電性粒子b)を使用した分散物Bの製造(比較)
脱イオン水868g、ならびに平均分子量70,000および固形分3.8wt%を有するポリスチレンスルホン酸水溶液330gを、攪拌機および内部温度計付きの2L三つ口フラスコに先ず入れた。反応温度を20〜25℃に維持した。3,4-エチレンジオキシチオフェン5.1gを撹拌しながら添加した。溶液を30分間撹拌した。次に、硫酸鉄(III)0.03gおよび過硫酸ナトリウム9.5gを添加し、溶液をさらに24時間撹拌した。反応の終了後、無機塩を除去するために、強酸性陽イオン交換体100mLおよび弱塩基性陰イオン交換体250mLを添加し、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体を濾過によって除去した。脱塩した2,4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート分散物を、高圧ホモジナイザーによって250バール下に4回均質化した。このようにして得た3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート分散物は、固形分1.2wt%を有し、以下の粒径分布を有していた:
d10 10nm
d50 31nm
d90 66nm
【0146】
このポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散物90部、ジメチルスルホキシド(DMSO)4部、スルホン化ポリエステル(Eastek(登録商標)1200、固形分:水中30wt%、Eastman)4.2部、および界面活性剤(Zonyl(登録商標)FS 300、Du Pont)0.2部を撹拌して、分散物Bを形成した。
【0147】
5. ポリマー外層の製造
次に、それぞれの場合に9個の陽極ペレット2を、本発明の分散物Aにおいて含浸し、さらに9個のペレット2を分散物Bにおいて含浸し、次に、ペレットを120℃で10分間乾燥させた。全てのペレット2について、含浸および乾燥をもう一回繰り返した。
【0148】
ポリマー外層5の適用後、陽極ペレットを光学顕微鏡で観察した:分散物Aに基づくポリマー外層5を有する本発明の陽極ペレット2は、外表面全体が高密度ポリマー皮膜で被覆されていた。縁部および角部もポリマー皮膜の連続被覆を示した。分散物Bに基づくポリマー外層5を有する陽極ペレット2は、特に陽極の上方角部および縁部において、ポリマー皮膜での被覆を示さなかった。
最後に、ペレット2を、グラファイトおよび銀層で被覆した。
【0149】
9個コンデンサは、いずれの場合にも平均して、以下の残留電流を有していた。
【表1】

【0150】
残留電流は、電圧10Vを適用してから3分後に、Keithley 199マルチメーターで測定した。
【0151】
ポリマー外層5でのより優れた被覆により、平均粒径141nmを有する導電性ポリマーの粒子b)を含有する分散物を使用して本発明の方法によって製造したコンデンサは、有意に低い残留電流を示す。平均粒径31nmを有する導電性ポリマーの粒子b)を含有する分散物を使用した本発明によらない方法においては、グラファイトおよび銀層が、明らかに、誘電体と直接接触し、それによって高残留電流が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質コンデンサの製造法であって、
電極物質の多孔質電極本体、
電極物質の表面を覆う誘電体、および
誘電体表面を完全にまたは部分的に覆う導電性材料を少なくとも含む固体電解質
を少なくとも含むコンデンサ本体に、
少なくとも1つの任意に置換されていてよいポリアニリン、および/または一般式(I)または一般式(II)の繰り返し単位若しくは一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有する1つのポリチオフェンを含む導電性ポリマーの粒子b)
【化1】

[式中、
Aは、任意に置換されていてよいC1〜C5アルキレン基を表し、
Rは、直鎖または分岐鎖の、任意に置換されていてよいC1〜C18アルキル基、任意に置換されていてよいC5〜C12シクロアルキル基、任意に置換されていてよいC6〜C14アリール基、任意に置換されていてよいC7〜C18アラルキル基、任意に置換されていてよいC1〜C4ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8の整数を表し、
複数のR基がAに結合している場合、これらは同じでも異なってもよい]、
結合剤c)および分散剤d)
を少なくとも含む分散物a)を適用する工程、および
導電性ポリマー外層の形成のために、分散剤d)を少なくとも部分的に除去し、かつ/または結合剤c)を硬化させる工程、
を含む方法であり、分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)が平均粒径90〜400nmを有し、分散物a)が、少なくとも1つのポリマー陰イオンをさらに含む方法。
【請求項2】
分散物a)が、架橋剤および/または界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体電解質の導電性材料が導電性ポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体電解質に含有されている導電性ポリマーが、任意に置換されていてよいポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
固体電解質に含有されている導電性ポリマーが、一般式(I)または一般式(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンである請求項4に記載の方法
【化2】

[式中、
Aは、任意に置換されていてよいC1〜C5アルキレン基を表し、
Rは、直鎖または分岐鎖の、任意に置換されていてよいC1〜C18アルキル基、任意に置換されていてよいC5〜C12シクロアルキル基、任意に置換されていてよいC6〜C14アリール基、任意に置換されていてよいC7〜C18アラルキル基、任意に置換されていてよいC1〜C4ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8の整数を表し、
複数のR基がAに結合している場合、これらは同じでも異なってもよい]。
【請求項6】
電極本体の電極物質が、バルブ金属、またはバルブ金属と匹敵する電気特性を有する化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって製造した電解質コンデンサ。
【請求項8】
請求項7に記載の電解質コンデンサを含む電子回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−199595(P2012−199595A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162790(P2012−162790)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2010−89311(P2010−89311)の分割
【原出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(307046626)ハー・ツェー・シュタルク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH