説明

ポリマー組成物および水性建築材料系および水ベース塗料系およびコーティング系への添加剤としてのその使用

本発明は水溶性または水膨潤性スルホ基含有コポリマーおよびメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)のような非イオン性ポリサッカリド誘導体およびウェランガムまたはジウタンガムからなるポリマー組成物および前記組成物のセメント、石灰、石膏、無水石膏のような水硬性結合剤をベースとする水性建築材料系への添加剤としての使用に関する。組成物は水ベース塗料およびコーティング系に使用できる。本発明の組成物は特性相互の改良を示し、この種の建築材料および塗料にきわめて少ない量で使用した場合でもきわめて有効な保水剤であり、前記保水剤はすぐれた気泡安定性および粘着力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非イオン性ポリサッカリド誘導体と結合した水溶性または水膨潤性スルホ基含有会合性増粘作用コポリマーからなるポリマー組成物およびセメント、しっくい、石膏、無水石膏のような水硬性結合剤をベースとする水性建築材料系および水ベース塗料およびコーティング系への添加剤としてのその使用に関する。
【0002】
ポリサッカリドの水溶性非イオン性誘導体、特にセルロース誘導体および澱粉誘導体は、水和および加工能力に必要である水の好ましくない蒸発もしくは下地へのその流出を遅らせるかまたは避けるために、一般に水性建築材料混合物に使用される。
【0003】
この種の添加剤は、塗料、しっくい、接着モルタル、塗装材料および継ぎ目充填剤、トンネル構造用吹き付けコンクリートおよび地下水用コンクリートにおいて保水の中心的機能を調節することにより、コンシステンシー(可塑性)、開放時間、平滑能力、分離、粘着性、付着力(下地および材料での)、安定性、滑り抵抗、引張り強さ、圧縮強さもしくは収縮に決定的に作用する。
【0004】
Ullmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie(第4版、9巻、208〜210頁、Verlag Chemie Weinheim)により一般に使用される保水剤は人工的に製造された非イオン性セルロース誘導体および澱粉誘導体、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。微生物により製造されたポリサッカリド、例えばウェランガム(Welan Gum)、ジウタンガム(Diutan Gum)および天然由来の抽出により単離されたポリサッカリド(ヒドロコロイド)、例えばアルギネート、キサンタン、カラギーナン、ガラクトマンナン等は技術水準に相当して水性建築材料および塗料系の水分代謝およびレオロジーの調節のために使用される。
【0005】
米国特許第5863975号およびドイツ特許第19806482号により保水特性を有し、カルボキシル基含有またはスルホ基含有コポリマーを含有する合成ポリマーが記載される。
【0006】
カルボキシル基含有生成物に比べて、特に欧州特許第554749号に記載されるスルホアルキル化セルロース誘導体はドイツ特許第19806482号によるスルホ基含有ポリ電解質と同様に例えばカルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムのような多価カチオンとの際立った相溶性を有する。
【0007】
WO02/10229号によりきわめて高い分子の水溶性または水膨潤性スルホ基含有会合性造粘作用コポリマーが開示され、前記コポリマーは前記ポリ電解質と異なり、高い塩濃度の存在で粘度の低下を示さない。
【0008】
ドイツ特許第19806482号またはWO02/10229号から公知の水膨潤可能なスルホ基含有コポリマーは特にタイル接着剤およびしっくい中で必要な粘着性を有しない欠点を有する。例えばタイル接着剤はこてへの付着が少なすぎ、鋸状こてで再び取り入れることがむずかしい。しかし両方の使用、とくにしっくいの使用において気泡の安定性がばらばらであることが問題である。しばしば気泡形成剤により導入される空気は約10〜20分後に明らかに分解する。
【0009】
これに対して前記欠点を有しないセルロースエーテルはしっくいの使用においてしばしば粘着力が高すぎ、製剤成分の添加によってのみ弱めることができる。更に高すぎる粘着力はセルロースエーテルの使用量、それとともに調節可能な保水力を制限し、しっくいまたはタイル接着剤の配量が高すぎる場合にもはや処理できないからである。
【0010】
安定したタイル接着剤中でセルロースエーテルを澱粉エーテルおよびポリアクリルアミドのような製剤成分と混合しなければならず(製剤添加されたセルロースエーテルは例えばドイツ特許第1283726号およびドイツ特許第3913518号の刊行物に記載されている)、これにより必要な安定性が達成される。
【0011】
従って本発明の課題は、合成ポリマーの不足する粘着性および悪い気泡安定性を製剤により改良し、更に建築材料および塗料系に処理中におよび得られたもしくは乾燥した状態ですぐれた使用技術的特性を付与することである。更に重要な目的は妨害する粘着力または好ましくない増粘なしに保水特性の向上を達成することである。
【0012】
前記課題は、本発明により、請求項1記載のスルホ基含有コポリマーと非イオン性ポリサッカリド誘導体の組み合わせにより解決される。
【0013】
すなわち、意想外にも、スルホ基含有コポリマーと非イオン性ポリサッカリド誘導体、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)およびウェランガムまたはジウタンガムとの本発明による組み合わせが予想されない協力作用を示すことが示された。例えばポリサッカリド誘導体を有する組成物により特に水硬性結合剤、例えばセメント、石灰、石膏、無水石膏等をベースとする水性建築材料系および水ベース塗料およびコーティング系における保水能力、気泡安定性および粘着性のかなりの改良が達成され、これはいかなる場合も予想されなかった。
【0014】
本発明に相当して使用されるスルホ基含有コポリマーは少なくとも4個の構造基a)、b)、c)およびd)からなる。第1構造基a)は以下の式(I)のスルホ基含有置換されたアクリルまたはメタクリル誘導体である。
【0015】
【化1】

式中、
は水素またはメチルであり、
、R、Rは水素、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、置換されていないかまたはメチル基により置換されているフェニル基であり、
Mは水素、一価または二価金属カチオン、アンモニウムもしくは有機アミン基であり、
aは1/2または1である。
【0016】
一価または二価金属カチオンとして有利にナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを使用する。有機アミン基として有利に第一級、第二級または第三級C〜C20−アルキルアミン、C〜C20−アルカノールアミン、C〜C−シクロアルキルアミン、およびC〜C14−アリールアミンから誘導される、置換されたアンモニウム基が使用される。相当するアミンの例はメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミンおよびジフェニルアミンであり、プロトン化されたアンモニウムの形である。aは水素、一価金属カチオン、アンモニウムおよび有機アミン基に関して1である。二価金属カチオンに関してaは1/2である。
【0017】
構造基a)は有利に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸のようなモノマーから誘導される。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に有利である。
【0018】
第2構造基b)は式(IIa)および/または(IIb)に相当する。
【0019】
【化2】

式中、
Wは−CO−、−CO−O−(CH−、−CO−NR−(CH−であり、
xは1〜6であり、
およびRは前記のものを表し、
およびRは互いに独立に水素、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6〜14個の炭素原子を有するアリール基であり、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基またはスルホン酸基により置換されていてもよく、
Qは式IIb)において水素または−CHRであり、QがHでない場合は、(IIb)中でRおよびRは一緒に−CH−(CH−メチレン基を形成し、yは1〜4であり、前記基は式(IIb)
【化3】

の基を取り込んで5員〜8員の複素環を形成し、
は水素、C〜C−アルキル基、カルボン酸基またはカルボキシレート基−COO−Mであり、その際Mおよびaは前記のものを表わす。
【0020】
構造式(IIa)を形成するモノマーとして有利に以下の化合物が該当する。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド等。構造式(IIb)のベースとしてのモノマーの例はN−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン−5−カルボン酸等である。
【0021】
第3構造基c)は式(IIIa)および/または(IIIb)に相当する。
【0022】
【化4】

式中、
Y=O、NHまたはNR
【化5】

X=ハロゲン、有利にCl、Br、C〜C−アルキルスルフェート、有利にメチルスルフェート、またはC〜C−アルキルスルホネートであり、
、R、R、R、R、Mおよびxは前記のものを表わす。
【0023】
構造式(IIIa)を形成するモノマーとして有利に以下の化合物が該当する。
[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、
[2−(アクリロイルアミノ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、
[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムメトスルフェート、
[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドもしくはメトスルフェート、
[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、
N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリルオキシエチル−N′−N−ジメチルアンモニウムベタイン、
N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインおよび1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタイン。
【0024】
構造式(IIIb)のベースとしてのモノマーの例はN,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリドおよびN,N−ジエチルジアリルアンモニウムクロリドである。
【0025】
第4構造基d)は式(IV)に相当する。
【0026】
【化6】

(式中、
Zは−COO(C2mO)−R、−(CH−O(C2mO)−Rであり、
はH、C〜C−アルキル、
【化7】

および20〜40個の炭素原子を有する不飽和、飽和、直鎖または分枝状脂肪族アルキル基であり、
10はH、C〜C−アルキル、フェニル、ベンジル、C〜C−アルコキシ、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、シアノ、−COOH、−COOR、−CONH、−OCORであり、
11はC〜C12−アルキル基およびC〜C14−アリール基を有するアリールアルキル基であり、
mは2〜4であり、
nは0〜200であり、
pは0〜20であり、
およびRは前記のものを表わす.。
【0027】
構造式(IV)を形成する有利なモノマーはメチルポリエチレングリコール−750−メタクリレート、ポリエチレングリコール−500−メタクリレート、アリルポリエチレングリコール−350、メチルポリエチレングリコール−2000−モノビニルエーテル、フェニルトリエチレングリコールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコール−500−ビニルオキシブチルエーテル、メチルポリエチレングリコール−ブロック−ポリエチレングリコールアリルエーテル、トリスチリルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、トリスチリルポリエチレングリコール−1100−アクリレート、トリスチリルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル、フェニルトリエチレングリコールアクリレート、トリスチリルポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシブチルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシブチルエーテル、トリスチリルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル等である。
【0028】
コポリマーが構造基a)3〜96モル%、構造基b)3〜96モル%、構造基c)0.05〜75モル%および構造基d)0.01〜30モル%からなることが本発明に重要であるとみなされる。有利に使用されるポリマーはa)15〜90モル%、b)5〜80モル%、c)0.25〜50モル%およびd)0.05〜20モル%を含有する。きわめて有利に使用されるポリマーはa)40〜80モル%、b)15〜55モル%、c)2〜30モル%およびd)0.1〜10モル%を含有する。
【0029】
本発明のコポリマー中の繰返し構造単位の数は制限されず、それぞれの使用分野にきわめて強く依存する。しかしコポリマーが50000〜10000000の数平均分子量を有するように構造単位の数を調節することが有利であることが示された。
【0030】
コポリマーの製造は自体公知方法で構造a)〜d)を形成するモノマーの、ラジカル、イオンまたは錯体配位による塊状重合、溶液重合、ゲル重合、乳化重合、分散重合または懸濁重合による結合により行われる。
【0031】
これらのコポリマーはすでに知られており、WO02/10229号およびドイツ特許第19806482号に記載されている。
【0032】
非イオン性ポリサッカリド誘導体として、種々の鎖長および置換の程度(DS)を有する、セルロースエーテル、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)を使用することができるが、ウェランガムまたはジウタンガムも使用できる。本発明の範囲でセルロースエーテルに関して有利な置換の程度はセルロースエーテルの種類に応じてメチル基に関しては0.5〜5、より有利に1.0〜2.5であり、ヒドロキシエチル基もしくはヒドロキシプロピル基に関して0.1〜5、より有利に0.1〜1である。平均的置換の程度は1.0〜2.8である。セルロースエーテルの鎖長は2%溶液の粘度で示され、100〜100000mPas、有利に1000〜80000mPas(ブルックフィールド粘度計RVTで測定)である。
【0033】
本発明のポリマー組成物は前記コポリマーとセルロース誘導体が1:5〜10:1の比で構成される。1:2〜7:1の比の混合物が有利である。1:1〜5:1の比の混合物が特に有利である。
【0034】
本発明のこの組成物をセメント、石灰、石膏、無水石膏のような水硬性結合剤をベースとする水性建築材料系に決められた用量で添加剤として使用する場合は、両方の個々の成分を全部の用量が同じで使用する場合よりも改良された特性が達成され、すなわち協力作用の向上である。
【0035】
従って本発明の組成物により保水能力、気泡安定性および粘着性のかなりの改良が達成される。
【0036】
セルロースエーテルの用量が高い(0.5質量%)場合に、高分子セルロースエーテルにおいて好ましくない粘着性および悪い、かたすぎる処理コンシステンシーが生じる。低い粘着性を有するが、きわめて良好な保水力を有する低粘性スルホ基含有コポリマーの選択により例えばタイル接着剤を製造することができ(保水剤の全含量約0.7〜1質量%)、前記接着剤は明らかに良好な保水特性およびこれにより挿入されたタイルのより長い修正時間を可能にする。前記接着剤は保水剤の高い用量にもかかわらずきわめて良好な処理特性を示す(軟らかい、クリーム状コンシステンシー、粘着力が高すぎない)。
【0037】
水ベース塗料およびコーティング系に使用する場合に、本発明の組成物により前記特性の予想されない改良が達成される。
【0038】
本発明の組成物の有利な使用量は使用の種類に応じて建築材料、塗料もしくはコーティング系の乾燥含量に対して0.01〜10質量%、有利に0.01〜5質量%である。
【0039】
本発明のポリマー組成物はすぐれた保水特性を有し、顔料含有塗料、しっくい、接着用モルタル、刷毛塗り材料、継ぎ目充填剤、吹き付けコンクリート、地下水用コンクリート、石油ボーリング用セメント等に処理状態でおよび硬化もしくは乾燥した状態で特にすぐれた使用技術的特性を付与する。前記組成物は更に建築材料混合物中ですぐれた気泡安定性および粘着性が得られ、これらを合成ポリマーの割合および選択により意図的に調節できることによりすぐれている。
【0040】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。
【0041】
実施例
WO02/10229号およびドイツ特許第19806482号により、ゲル重合によりスルホ基含有コポリマーを製造した。選択されたコポリマーの組成を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
非イオン性ポリサッカリド誘導体として表2に示される種々の市販されたセルロースエーテルを使用した。
【0044】
【表2】

【0045】
コポリマーおよびポリサッカリド誘導体から本発明の組成物を製造した。混合比は表3に記載する。
【0046】
【表3】

【0047】
本発明の組成物および比較例の使用技術的評価をタイル接着用モルタルの分野の試験混合物により行った。
【0048】
このために、本発明の添加剤もしくは比較生成物を固体の形で混合した、すぐに使える調製された乾燥混合物を使用して実際に近い状態で試験した。乾式混合に続いて決められた量の水を添加し、G3混合機を有するボーリング機を使用して激しく攪拌した(時間2×15秒)。引き続き攪拌した混合物を5分間熟成し、その後目での一回目の評価を行った。
【0049】
流延性の測定
流延性の測定はDIN18555、2部により、熟成時間の後に行い、攪拌の30分後(手で短時間攪拌後に)に2回目を行った。
【0050】
保水性の測定
保水性をDIN18555、7部により攪拌の約15分後に測定した。
【0051】
気泡安定性の測定
気泡安定性を目での評価により定性的に測定した。
【0052】
粘着性の測定
粘着性を目での評価により定性的に測定した。
【0053】
タイルの湿潤性の測定
タイル接着剤組成物を繊維セメント板に塗装し、10分後にタイル(5×5cm)をのせ、タイルに30秒間2kgの重りで負荷を与えた。更に60分後タイルを取り出し、タイルの裏側に接着剤がなお何%付着しているかを測定した。
【0054】
タイルの修正能力の測定
タイル接着剤組成物を繊維セメント板に塗装し、5分後、3つのタイル(5×5cm)をのせ、タイルに30秒間2kgの重りで負荷を与えた、5分後、10分後および15分後、それぞれタイルを修正した。接着層でタイルを移動するための力の消耗を評価した。評価尺度はきわめて良好に修正可能、良好、中程度、劣悪、きわめて劣悪に修正可能およびもはや修正不可能を含む。
【0055】
安定性の測定(滑り試験)
滑り試験のために、タイル(15×15cm)をタイル接着剤組成物に入れ、5kg重りで30秒間負荷を与え、試験構造物を垂直に立てた。引き続きタイルの上の縁部にそれぞれ30秒間重りで負荷を与え、タイルがそれだけの重さで滑るか調べた。
タイル接着モルタルの組成を表4に記載する。
【0056】
【表4】

【0057】
本発明の組成物および比較例で得られた試験結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
表5の試験結果は本発明の組成物(例1〜11)が比較例1および2と同様の流延性を生じることを示す。しかし粘着性、湿潤性、滑り、気泡安定性および保水値は比較例1および2より明らかに良好である。本発明の組成物(例1〜11)を比較例3および4と比較すると、同様の保水値、粘着性、湿潤性および気泡安定性である。しかし比較例3および4では流延性が高く、保水値および滑りが明らかに劣る。
【0060】
本発明の組成物でのスルホ基含有コポリマーと非イオン性ポリサッカリド誘導体の協同作用はコポリマーと非イオン性ポリサッカリド誘導体の添加物組合せより処理特性が明らかに良好であることにより明らかである。きわめて良好な滑り特性で軟らかいクリーム状処理特性が特に記載すべきである。簡単で力を節約して処理することができ、それにもかかわらずきわめて安定な接着剤の要求に応じるタイル接着剤を製造することが可能である。
【0061】
高い用量での試験結果(表6)は本発明の組成物(例12)がきわめて良好な処理特性を示すことを示す。比較例3は強すぎる粘着性もしくはチューインガム状コンシステンシーを示し、比較例5は滑りを有する。例12においてはすぐれたコンシステンシー(流延性、気泡安定性および粘着性)を有して時間にわたるすぐれた修正能力およびきわめて良好な安定性を記載すべきである。
【0062】
本発明の組成物は比較例に使用される個々の成分(コポリマーおよび非イオン性ポリサッカリド誘導体)より明らかにすぐれており、技術水準のかなりの改良である。
【0063】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)以下のものからなる水溶性または水膨潤性スルホ基含有コポリマー
a)式(I):
【化1】

(式中、
は水素またはメチルであり、
、R、Rは水素、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、置換されていないかまたはメチル基により置換されているフェニル基であり、
Mは水素、一価または二価金属カチオン、アンモニウムもしくは有機アミン基であり、
aは1/2または1である)
の化合物3〜96モル%
b)式(IIa)および/または(IIb)
【化2】

(式中、
Wは−CO−、−CO−O−(CH−、−CO−NR−(CH−であり、
xは1〜6であり、
およびRは水素、1〜20個の炭素原子を有する置換されていないかまたは置換された脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6〜14個の炭素原子を有するアリール基であり、
Qは水素または−CHRであり、QがHでない場合は、(IIb)中でRおよびRは一緒に−CH−(CH−メチレン基を形成し、yは1〜4であり、
は水素、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、−COO−Mであり、その際R、R、Mおよびaは前記のものを表わす)
の化合物3〜96モル%
c)式(IIIa)および/または(IIIb):
【化3】

(式中、
Y=O、NHまたはNR
【化4】

X=ハロゲン、C〜C−アルキルスルフェート、有利にメチルスルフェート、またはC〜C−アルキルスルホネートであり、
、R、R、R、R、Mおよびxは前記のものを表わす)
の構造基0.05〜75モル%
d)式(IV):
【化5】

(式中、
Zは−COO(C2mO)−R、−(CH−O(C2mO)−Rであり、
はH、C〜C−アルキルおよび20〜40個の炭素原子を有する不飽和、飽和、直鎖または分枝状脂肪族アルキル基であり、
10はH、C〜C−アルキル、フェニル、ベンジル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、シアノ、−COOH、−COOR、−CONH、−OCORであり、
11はC〜C12−アルキル基およびC〜C14−アリール基を有するアリールアルキル基であり、
mは2〜4であり、
nは0〜200であり、
pは0〜20であり、
およびRは前記のものを表わす)の構造基0.01〜50モル%
および
B)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースおよびウェランガムまたはジウタンガムの群から選択される非イオン性ポリサッカリド誘導体
を含有し、A)とB)の質量比が1:5〜10:1であるポリマー組成物。
【請求項2】
一価または二価金属カチオンがナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンからなる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機アミン基が有利に第一級、第二級および第三級C〜C20−アルキルアミン、C〜C20−アルカノールアミン、C〜C−シクロアルキルアミンおよびC〜C14−アリールアミンから誘導される置換されたアンモニウム基である請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
およびRの炭化水素基またはアリール基がヒドロキシル基、カルボキシル基またはスルホン酸基により更に置換されている請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
式(IIIb)中のXが塩素または臭素である請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
コポリマーが構造基a)40〜80モル%、構造基b)15〜55モル%、構造基c)2〜30モル%、および構造基d)0.5〜10モル%からなる請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
コポリマーが数平均分子量50000〜10000000を有する請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
スルホ基含有コポリマーと非イオン性ポリサッカリド誘導体の質量比が1:2〜7:1、有利に1:1〜5:1である請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
セメント、石灰、石膏および無水石膏のような水硬性結合剤をベースとする水性建築材料系および水ベース塗料およびコーティング系への添加剤としての請求項1から8までのいずれか1項記載のポリマー組成物の使用。
【請求項10】
ポリマー組成物を保水剤、安定剤およびレオロジー変性剤として使用する請求項9記載の使用。
【請求項11】
ポリマー組成物を建築材料、塗料またはコーティング系の乾燥質量に対して0.01〜5質量%の量で使用する請求項9または10記載の使用。

【公表番号】特表2007−529583(P2007−529583A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503281(P2007−503281)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002799
【国際公開番号】WO2005/090424
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】