説明

ポリマー色素、オーバーコート組成物及びサーマルリソグラフィック印刷プレート

(a)約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素、(b)ミクロ粒子又はナノ粒子を含むサーマルリソグラフィック印刷プレートのオーバーコート組成物が提供される。(a)親水性基材、(b)その親水性基材に配置される近赤外イメージング層、並びに(c)そのイメージング層に配置されるオーバーコート層を含み、そのオーバーコート層が、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素、及びミクロ粒子又はナノ粒子を含む、ネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレートが提供される。最終的には、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー色素、オーバーコート組成物及びサーマルリソグラフィック印刷プレートに関する。更に具体的に述べると、本発明は、サーマルリソグラフィック印刷プレートのイメージング層を保護するためのポリマー色素及び、これらの色素を含有するオーバーコート組成物に関する。本発明は、また、これらのオーバーコート組成物を含むサーマルリソグラフィック印刷プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートが従来技術において公知である。例えば、米国特許6,124,425号及び6,177,182号は、近赤外レーザー光で撮像されて水性現像剤で現像され得る放射線感光層を含むポジティブ及びネガティブ印刷プレートの生産について教示する。
【0003】
米国6,994,327号及び6,899,994号は、親水性ポリマーアンダー層及び放射線感光イメージング層を含むネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレートの生産について教示する。これらのプレートは、近赤外レーザー光で撮像され、インク及び湿し溶液を用いて、プレスして現像され得る。
【0004】
オーバーコート層を含むサーマルリソグラフィック印刷プレートもまた公知である。例えば、米国特許6,482,571号及び6,541,183号は、放射線感光アンダー層及び選択的な水溶性ポリビニルアルコールオーバーコート層を含むネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレートの生産について教示する。この選択的なオーバーコート層は透明であって光に対して感光しない。これらのプレートは、近赤外レーザー光で撮像され、インク及び湿し溶液を用いてプレスして現像され得る。
【0005】
米国特許6,846,614号は、放射線感光層及び、ポリビニルアルコールとポリビニルイミダゾールとの混合物から得られる水溶性オーバーコート層を含むネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレートの生産について教示する。この選択的なオーバーコート層は透明であって光に対して感光しない。これらのプレートは、近赤外レーザー光で撮像され、インク及び湿し溶液を用いてプレスして現像され得る。
【0006】
更に一般的には、従来技術は、近赤外レーザー光の感光層を含むネガティブサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートの生産を教示する。このイメージング層は、典型的には、近赤外線吸収化合物、開始剤(ラジカル又はカチオン性)及びバインダー樹脂を含み、さらに活性オリゴマー、着色剤等を含んでもよい。これらのプレートは、酸素又は/及び水分(湿気)から近赤外レーザー光の感光層(イメージング層)を通常保護するオーバーコート層を含んでよく、それにより、バックグランドのステイン及びイメージング感度の低下が未保護の印刷プレートのこれら種によって通常引き起こされるのを防止する。
【0007】
ところが、イメージング層において典型的に用いられる開始剤は、ヨードニウム 塩s, スルホニウム塩s、トリアジン化合物等である。これらの開始剤は、白色光に感度があることはよく知られている。実際のところ、これらの開始剤は白色光と反応し、多くの問題、例えば(度々、重度である)バックグランドのステインを引き起こす。このことは、プレートを、自然光でハンドリングができず、処理できないことを意味する。部分的にこの問題を解決するために、プレートは、「イエロー光」の下で通常ハンドリングされ、その光は、約550nm以下の振動数を有する光を取り除くためにフィルタをかけられた白色光である。
【0008】
従来の印刷プレートの別の問題は、その印刷プレートが、輸送及び保存中に互いの上部が接しながら通常積み重ねられるという事実から生じる。これらのプレート上のコーティング物は柔らかくて粘着性があるので、保護用の間紙が必要とされ、引っかき傷及び接着を防止するために、間紙が各々の印刷プレートの間に挿入される。このことは、間紙がコストを上げ、そして撮像前に手動で取り除かなければならない(そのことは、更にコストを上げる)ため不利である。もしも紙を取り除かないならば、その紙は、印刷機でプレートを装填するために用いられる自動プレートローディングプレートセッターでペーパージャミングを引き起こす。
【0009】
このように、白灯でハンドリングが可能であり、保存のために間紙の使用を必要としない更に良好な印刷プレートのニーズは未だにある。
【0010】
本明細書の記述は多くの文献を参照し、それらの文献の内容は、本願明細書において引用することによって完全に援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
サーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートのためのオーバーコート組成物を提供することを目的とし、さらに、白灯環境下で、サーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートをハンドリングすることが可能であり、処理することが可能であり、そして包装及び運搬のために間紙を必要としないように、プレートにオーバーコート層の生産を可能とするオーバーコート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
更に具体的に述べると、本発明によれば、300〜600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素及びミクロ粒子又はナノ粒子を含むサーマルリソグラフィック印刷プレートのオーバーコート組成物が提供される。
【0013】
また、親水性基材、その親水性基材に配置される近赤外イメージング層、並びにそのイメージング層に配置されるオーバーコート層を含み、そのオーバーコート層が、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素、及びミクロ粒子又はナノ粒子を含む、ネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレートが提供される。
【0014】
最終的には、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素が提供される。
【0015】
実施形態として、このポリマー色素は、サーマルリソグラフィック印刷プレートのためのオーバーコート層の使用のためである。
【0016】
本発明の実施形態として、吸収バンドは、約300〜約550nmでよい。さらには、約300〜約500nmでよく、約300〜約480nmでよい。
【0017】
本発明の実施形態として、ポリマー色素は、側鎖基としてアゾ色素又はアリールアミン色素と結合してもよい。
【0018】
実施形態として、水溶性ポリマー色素は下記で表される式でよい。
【化1】

その式中、
a及びcは、独立に、約0.05〜約0.95に変化し、
bは、約0.00〜約0.50に変化し、
dは、約0.02〜約0.20に変化し、
Rは、水素又はメチルを表し、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸を表し、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸を表し、及び
Q1、Q2、Q3及びQ4は、同じでも異なっていてもよく、その吸収バンドを有する発色団を表す。
【0019】
更に具体的に述べると、Q1、Q2、Q3及びQ4の一つは、下記で表される式でよい。
【0020】
【化2】

【0021】
オーバーコート組成物及び印刷プレートの実施形態として、オーバーコート組成物及びオーバーコート層は無機ナノ粒子を含んでよい。更に具体的に述べると、実施形態として、無機ナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛を含んでよい。更にまた特定の実施形態として、無機ナノ粒子は約80nm未満の粒子サイズを有してよい。
【0022】
オーバーコート組成物及び印刷プレートの実施形態として、オーバーコート組成物及びオーバーコート層は有機ミクロ粒子を含んでよい。更に具体的に述べると、実施形態として、有機ミクロ粒子は、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、又は直鎖若しくは分岐のアルキルメタクリレートとアクリレート或いはメチルメタクリレートとの架橋コポリマーを含んでよい。更にまた特定の実施形態として、有機ミクロ粒子は約2〜約8μmの粒子サイズを有してよい。
【0023】
オーバーコート組成物の実施形態として、オーバーコート組成物は水性溶媒を更に含んでよい。
【0024】
印刷プレートの実施形態として、イメージング層は近赤外吸収ポリマーナノ粒子及び活性ヨードニウムオリゴマーを含んでよい。更に特定の実施形態として、イメージング層は活性ポリマーバインダー樹脂を更に含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付図面において、
【図1】図1は、ThermolakTM NIP830の化学構造式である。
【図2】図2は、商標名TuxedoTM 06C051Dで市販されている活性ヨードニウムオリゴマーの成分の一つである。
【図3】図3は、商標名TuxedoTM 06C051Dで市販されている活性ヨードニウムオリゴマーの成分の一つである。
【図4】図4は、商標名TuxedoTM 06C051Dで市販されている活性ヨードニウムオリゴマーの成分の一つである。
【図5】図5は、TuxedoTM XAP02の化学構造式である。
【図6】図6は、PD1-01の理論化学構造式である。
【図7】図7は、PD1-02の理論化学構造式である。
【図8】図8は、PD1-03の理論化学構造式である。
【図9】図9は、PD2-01の理論化学構造式である。
【図10】図10は、PD2-02の理論化学構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
オーバーコート組成物
更に詳細に本発明を説明すると、サーマルリソグラフィック印刷プレートのオーバーコート組成物が提供される。印刷プレート上にコーティングされる場合に、このオーバーコート組成物は、(1)バックグランドのステインを減らすか又は実質的に又は完全に除去するので白灯でプレートをハンドリングすることを可能とするオーバーコート層を提供し、さらに(2) 間紙を必要とすることなくプレートを包装して運搬をすることを可能とするオーバーコート層を提供する。その上、このオーバーコート層は、酸素及び水分(湿気)を浸透させない保護層として作用して、それゆえ、O2及びH2Oからバックグランドのステインを保護し、さらに保護されていないプレートで通常起こるレーザーイメージング感度の低下を防ぐ。
【0027】
更に具体的に述べると、本発明のオーバーコート組成物は、(A)約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素と、(B)ミクロ粒子又はナノ粒子を含む。
【0028】
特有の実施形態において、水溶性ポリマー色素は、約300〜約550nmの吸収バンドを有してよく、約300〜約500nmの吸収バンドを有してよく、約300〜約480nmの吸収バンドを有してよい。
【0029】
本発明者らが約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素を含むオーバーコート組成物を最初に提供する。このポリマー色素が印刷プレート上にコーティングされたオーバーコートに存在する場合に、イメージング層に好ましくないバックグランドのステインを引き起こす有害波長の光が到達しないようにするために、そのポリマー色素は有害波長の光を吸収する。その上、分子色素とは対照的に、このポリマー色素は、印刷プレートのオーバーコート層及び/又は他の一方の層内で安定であり、相分離又は移動/拡散をしない。最終的には、このポリマー色素は効果的なO2及びH2Oバリアを提供する。
【0030】
ポリマー色素は水溶性であり、そのことは、そのポリマー色素が水によって溶解することを意味する。更に具体的に述べると、実施形態において、水溶性ポリマー色素は、水に対して少なくとも50mg/mLの溶解度を有する。
【0031】
本願の明細書において、ポリマー色素は、一つに以上の所定の波長の光を吸収するポリマーを意味する。例えば、このポリマーは、約300〜約600nmで一つ以上の吸収バンド(吸収ピークとも呼ばれる)を有することができる。このことを達成するために、ポリマーは一つ以上の発色団を含んでよい。これらの発色団は、ポリマーの主鎖の一部分でもよいし、又はこの主鎖に側鎖基として結合されていてもよい。
【0032】
本願の明細書において、「発色団」は、関心波長領域において一つ以上の吸収バンド(吸収ピークとも呼ばれる)を有する非ポリマー分子を表す。更に具体的に述べると、発色団は約300〜約600nmに少なくとも一つの吸収バンドを有してよい。
【0033】
発色団は、当該技術分野の当業者に公知である関心波長領域において一つ以上の吸収バンドを有する任意の発色団でよい。実施形態として、発色団はアゾ色素又はアリールアミン色素でよい。
【0034】
本願の明細書において、「アゾ色素」は、当該技術分野における通常の意味を有する。更に具体的に述べると、「アゾ色素」は、アゾ官能基、すなわち二つの二重結合の窒素原子: R-N=N-R'を含む発色団として理解されてよい。実施形態において、R及びR'基は芳香族基であり、その芳香族基によってN=N基が広範な非局在化系の一部になることによってそのN=N基の安定化を促進する。
【0035】
本願の明細書において、「アリールアミン色素」は、当該技術分野における通常の意味を有する。更に具体的に述べると、「アリールアミン色素」は、アリールアミン基、すなわち、窒素原子と結合するアリール基:Aryl-N(R1)(R2)、その式中、R1及びR2は、独立に、水素、アルキル又はアリールである。実施形態として、アルキルは、直鎖の、分岐の又は環状のC1-C12でよく、アリールは5〜12のカーボン原子を含んでよい。
【0036】
実施形態として、水溶性ポリマー色素は下記で表される式でよい。
【化3】

式中、
a及びcは、独立に、約0.05〜約0.95に変化してよいモル比であり、
bは、約0.00〜約0.50に変化してよいモル比であり、
dは、約0.02〜約0.20に変化してよいモル比であり、
Rは、水素又はメチルであり、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸であり、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸であり、及び
Q1,Q2,Q3及びQ4は、独立に、上述した吸収バンドを有する発色団を表す。
【0037】
これらの式において、「b」は0でよく、その意味は、これらの式の中間のセグメント(添え字として「b」を有する角括弧内に含まれるセグメント)は選択的である。したがって、この実施形態としては、この中間のセグメントは上記化学構造式から欠落してよい。
【0038】
実施形態として、アルコキシ及びアルキルは1〜12カーボン原子を含んでよい。また、実施形態として、ハロゲン化物はF、Cl、Br又はIでよい。
【0039】
本願の明細書において、「ポリエチレンオキシド鎖」は-(CH2-CH2-O-)n-を表す。実施形において、「n」は約50以下でよい。
【0040】
発色団Q1、Q2、Q3及びQ4は、全て同一でもよいし、又は互いに異なっていてもよい。実施形態として、スペクトルの広い部分がオーバーコート層によって吸収され、それゆえにイメージング層に到達するのを防止するように、異なる波長の吸収バンドを有する発色団の混合物を有することが有利である可能性が高い。同様に、実施形態として、オーバーコート組成物はポリマー色素の混合物を含んでもよい。
【0041】
ところで、上記の化学構造式は、各々のポリマー色素において二つの異なる発色団しか示されていないことを理解されたい。実際には、ポリマー色素は三つ以上の異なるタイプの発色団を含むことが可能であり、当然に、本発明は、これらのポリマー色素も含むことを意図する。
【0042】
実施形態において、任意のQ1、Q2、Q3及び/又はQ4発色団は、下記で表される式(吸収バンドの最大値は丸括弧内の値である。)のアゾ及びアリールアミン色素でよい。
【0043】
【化4】

【0044】
上述したように、本発明のオーバーコート組成物はミクロ粒子又はナノ粒子を含む。本発明者等がそのような粒子を含むオーバーコート組成物を最初に提供する。本発明者等は、オーバーコート層内のこれらの粒子の存在がオーバーコート層の硬さを増大させてオーバーコート層の引っかき傷に対する耐性をアップさせ、粘着性を小さくし、そのことによって包装及び保存中に間紙の必要性がないことを見出した。
【0045】
本願の明細書において、「ミクロ粒子」は、約0.1〜約20μmの粒子サイズを有する粒子であり、「ナノ粒子」は、約10〜約100nmの粒子サイズを有する粒子である。
【0046】
実施形態において、オーバーコート組成物はミクロ粒子及び/又はナノ粒子の混合物を含んでよい。
【0047】
オーバーコート組成物において用いられる粒子の正確な性能はあまり重要でない。したがって、オーバーコート組成物における粒子は無機又は有機材料から構成されてよい。さらに具体的に述べると、実施形態として、粒子は無機ナノ粒子又は有機ミクロ粒子でよい。
【0048】
実施形態として、無機ナノ粒子は、金属酸化物、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛から構成されてよい。特定の実施形態として、これらの粒子は約80nm未満の粒子サイズを有してよい。更に特定の実施形態として、無機ナノ粒子は以下のものが好ましい。
【0049】
【表1】

【0050】
実施形態として、有機ミクロ粒子はポリマーでよい。更に具体的に述べると、有機ミクロ粒子は、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、及び他の直鎖若しくは分岐のアルキルメタクリレートとアクリレート又はメチルメタクリレートとの架橋コポリマーから構成されてよい。実施形態として、直鎖又は分岐のアルキルメタクリレートは約2〜約20のカーボン原子を含んでよい。特定の実施形態として、これらの粒子は2〜8μmの粒子サイズを有してよい。更なる特定の実施形態として、有機ミクロ粒子は、商標名ThermolakTMNP02(約2μmの粒子サイズを有するメチルメタクリレートコポリマーの有機粒子)及びThermolakTMNP08(約8μmの粒子サイズを有するメチルメタクリレートコポリマーの有機粒子)のAmerican Dye Source,Inc.(カナダ)から市販されているものでよい。
【0051】
実施形態として、オーバーコート組成物は、例えば、水及び更に具体的には脱イオン化した水のような水性溶媒を更に含んでよい。
【0052】
実施形態として、オーバーコート組成物は、水性溶媒中、約1〜約15質量%の固形含有量(すなわち、ポリマー色素及びミクロ及び/又はナノ粒子)を含んでよい。実施形態として、オーバーコート組成物の固形含有量は、約80〜約98質量%ポリマー色素及び約2〜約20質量%のミクロ及び/又はナノ粒子を含んでよい。
【0053】
サーマルリソグラフィック印刷プレート
本発明は、ネガティブサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートに関し、それは、(A)親水性基材と、(B)その親水性基材に配置された近赤外イメージング層と、(C)そのイメージング層に配置されたオーバーコート層とを含み、さらに、オーバーコート層は、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素と、ミクロ粒子又はナノ粒子を含む。
【0054】
更に具体的に述べると、オーバーコート層のポリマー色素、ミクロ粒子及びナノ-粒子は、オーバーコート組成物に関する上述の記載とおりである。
【0055】
実施形態として、オーバーコート層は、(1)オーバーコート組成物が溶媒を含まないならば、水性溶媒をオーバーコート組成物に添加することによって、(2)イメージング層にオーバーコート組成物を配置することによって、そして(3)溶媒を蒸発させることによって、上述したオーバーコート組成物から生産されてよく、これにより、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素とミクロ粒子又はナノ粒子とを含むオーバーコート層を生産する。
【0056】
印刷プレートで用いられる親水性基材は、当該技術分野において当業者に公知であるような任意の基材でよい。基材の例示として、陽極酸化処理されたアルミニウム、プラスチックフイルム又は紙が含まれるが、限定されることはない。
【0057】
アルミニウム基材は艶消し又は電解質の粒状性アルミニウムで、その後酸性溶液で陽極酸化処理されたものでよい。陽極酸化処理されたアルミニウム基材は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸-コ-ビニルリン酸)又はポリビニルリン酸を含有する水溶液で後処理されてよく、その後約1100Cで乾燥される。
【0058】
実施形態として、基材は、例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルアセタールのコポリマーのようなポリマーと架橋したシリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)又は酸化チタンを含む親水性層でコーティングされたポリエステルでよい。
【0059】
近赤外(NIR)イメージング層は、レーザーの近赤外放射線に感度がある層である。NIR光で露光すると、この層の領域は化学及び/又は物理的な変化をし、それによって、像を記録する。現像をして像は露出されて印刷を可能とする。プレートは、「オンプレス」(像の未露光領域がインク及び湿し溶液によって取り除かれる)又は「オフ-プレス」(水性現像剤が層の未露光領域を取り除くために用いられる。)。
【0060】
イメージング層は、当該技術分野において当業者に公知であるような任意の層でよい。典型的には、イメージング層は、NIR発色団、開始剤及び活性バインダー樹脂を含む。それらの層は、また、増感剤、着色剤、安定剤、像保護剤、さらに他の試薬も含む。
【0061】
近赤外イメージング層は親水性基材に配置される。ところが、実施態様として、基材とイメージング層との間に一つ以上の他の層があってもよいことは理解されたい。
【0062】
実施形態として、イメージング層は、約0.80〜約2.50g/m2である。
【0063】
実施形態として、近赤外イメージング層は、2006年8月26日に出願された米国特許出願60/823415で開示されたものであり、その内容は本願において導入される。この近赤外イメージング層は近赤外吸収ポリマーナノ粒子及び活性ヨードニウムオリゴマーを含む。このイメージング層は、また、活性ポリマーバインダー樹脂、着色剤、安定剤、増感剤等を含んでもよい。
【0064】
更なる特定の実施形態として、このイメージング層の近赤外吸収ポリマーナノ粒子は、商標名ThermolakTM NIP830のAmerican Dye Source,Inc.(カナダ)から市販されているものである。これらの粒子は、780〜840nmの強い吸収バンドを有し、さらに260nmの平均粒子サイズを有する。ThermolakTM NIP830化学構造式は図1に示され、その式中、wは、エチレンオキシドの繰り返し単位数を表し、その単位数は約50であり、さらにその式中、a、k、h及びIは、各々、0.100、0.750、0.145及び0.005である。
【0065】
他の特有の実施形態として、このイメージング層の活性ヨードニウムオリゴマーは、商標名TuxedoTM06C051DのAmerican Dye Source,Inc.(カナダ)から市販されているものである。この活性ヨードニウムオリゴマーは、図2、3及び4で表される化合物の混合物であり、wは、エチレンオキシドの繰り返し単位数を表し、その単位数は約7である。
【0066】
更なる他の特定の実施形態として、このイメージング層の活性ポリマーバインダー樹脂は、商標名TuxedoTMXAP02のAmerican Dye Source,Inc.(カナダ)から市販されているものである。この活性ポリマーバインダー樹脂は、側鎖のラジカル活性メタクリレート官能性基を含むヒドロキシエチルセルロースである。TuxedoTM XAP02の化学構造式は図5に示される。
【0067】
オーバーコート層は近赤外イメージング層に配置される。ところが、実施態様として、イメージング層とオーバーコート層との間に一つ以上の他の層があってもよいことは理解されたい。
【0068】
オーバーコート層は白灯の有害な波長を取り除くが、NIR放射線には透過性があるのでイメージング層は印刷工程の一工程として撮像され得る。
【0069】
撮像後、オーバーコート層は、現像中に(イメージング層の未露光領域と同時に)取り除かれる。それゆえに、オーバーコート層は、水性現像剤又は湿し溶液によって取り除かれるように水に対して充分な溶解性がある。このことは、上述したように、オーバーコート組成物で用いられるポリマー色素が水溶性であるため可能である。ミクロ及びナノ粒子は水性現像剤又は湿し溶液に分散するので、オーバーコート組成物のミクロ及びナノ粒子は水溶性である必要はない。実用的には、オーバーコート組成物は、水性溶媒を用いてコーティングされる場合に、ミクロ及びナノ粒子は水性溶媒で不溶解性であることが好ましく、その結果としてコーティング層で粒子の形態で一旦存在する。
【0070】
さらに、実施形態として、イメージング層は、(水溶性とは反対に)溶剤に溶解性があるので、オーバーコート層は水性溶媒を用いてコーティングすることが好ましい。その理由は、イメージング層を損傷する可能性がある他の溶剤を用いることを回避できるからである。
【0071】
実施形態として、オーバーコート層は約0.30〜約2.50g/m2である。
【0072】
実施形態として、オーバーコート層は、約80〜約98質量%のポリマー色素を含み、そして、約2〜約20質量%のミクロ及び/又はナノ粒子を含む。
【0073】
ポリマー色素
また、本発明は、オーバーコート組成物についての上述したポリマー色素に関する。ここで確かに、これらのポリマー色素が再び述べられる。
【0074】
約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素が提供される。
【0075】
特定の実施形態において、水溶性ポリマー色素は約300〜約550nm、約300〜約500nm又は約300〜約480nmの吸収バンドを有してよい。
【0076】
このポリマー色素が印刷プレート上にコーティングされたオーバーコートに存在する場合に、イメージング層に好ましくないバックグランドのステインを引き起こす有害波長の光が到達しないようにするために、そのポリマー色素は有害波長の光を吸収する。分子色素とは対照的に、このポリマー色素は、印刷プレートのオーバーコート層及び/又は他の一方の層内で安定であり、相分離又は移動/拡散をしない。最終的には、このポリマー色素は効果的なO2及びH2Oバリアを提供する。
【0077】
ポリマー色素は水溶性であり、そのことは、そのポリマー色素が水によって溶解することを意味する。更に具体的に述べると、実施形態において、水溶性ポリマー色素は、水に対して少なくとも50mg/mLの溶解度を有する。
【0078】
また、本願の明細書において、ポリマー色素は、一つに以上の所定の波長の光を吸収するポリマーを意味する。例えば、このポリマーは、約300〜約600nmで一つ以上の吸収バンド(吸収ピークとも呼ばれる)を有することができる。このことを達成するために、ポリマーは一つ以上の発色団を含んでよい。これらの発色団は、ポリマーの主鎖の一部分でもよいし、又はこの主鎖に側鎖基として結合されていてもよい。
【0079】
また、本願の明細書において、「発色団」は、関心波長領域において一つ以上の吸収バンド(吸収ピークとも呼ばれる)を有する非ポリマー分子を表す。更に具体的に述べると、発色団は約300〜約600nmに少なくとも一つの吸収バンドを有してよい。
【0080】
発色団は、当該技術分野の当業者に公知である関心波長領域において一つ以上の吸収バンドを有する任意の発色団でよい。実施形態として、発色団はアゾ色素又はアリールアミン色素でよい。
【0081】
また、本願の明細書において、「アゾ色素」は、当該技術分野における通常の意味を有する。更に具体的に述べると、「アゾ色素」は、アゾ官能基、すなわち二つの二重結合の窒素原子: R-N=N-R'を含む発色団として理解されてよい。実施形態において、R及びR'基は芳香族基であり、その芳香族基によってN=N基が広範な非局在化系の一部になることによってそのN=N基の安定化を促進する。
【0082】
また、本願の明細書において、「アリールアミン色素」は、当該技術分野における通常の意味を有する。更に具体的に述べると、「アリールアミン色素」は、アリールアミン基、すなわち、アリール基に結合した窒素原子を有するアリール基:Aryl-N(R1)(R2)、その式中、R1及びR2は、独立に、水素、アルキル又はアリールである。実施形態として、アルキルは、直鎖の、分岐の又は環状のC1-C12でよく、アリールは5〜12のカーボン原子を含んでよい。
【0083】
実施形態として、水溶性ポリマー色素は下記で表される式でよい。
【化5】

式中、
a及びcは、独立に、約0.05〜約0.95に変化してよいモル比であり、
bは、約0.00〜約0.50に変化してよいモル比であり、
dは、約0.02〜約0.20に変化してよいモル比であり、
Rは、水素又はメチルであり、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸であり、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸であり、及び
Q1,Q2,Q3及びQ4は、独立に、上述した吸収バンドを有する発色団を表す。
【0084】
これらの式において、「b」は0でよく、その意味は、これらの式の中間のセグメント(添え字として「b」を有する角括弧内に含まれるセグメント)は選択的である。したがって、この実施形態としては、この中間のセグメントは上記化学構造式から欠落してよい。
実施形態として、アルコキシ及びアルキルは1〜12カーボン原子を含んでよい。また、実施形態として、ハロゲン化物はF、Cl、Br又はIでよい。また、本願の明細書において、「ポリエチレンオキシド鎖」は-(CH2-CH2-O-)n-を表す。実施形において、「n」は約50以下でよい。
【0085】
発色団Q1、Q2、Q3及びQ4は、全て同一でもよいし、又は互いに異なっていてもよい。実施形態として、スペクトルの広い部分がオーバーコート層によって吸収され、それゆえにイメージング層に到達するのを防止するように、異なる波長の吸収バンドを有する発色団の混合物を有することが有利である可能性が高い。同様に、実施形態として、オーバーコート組成物はポリマー色素の混合物を含んでもよい。
【0086】
ところで、上記の化学構造式は、各々のポリマー色素において二つの異なる発色団しか示されていないことを理解されたい。実際には、ポリマー色素は三つ以上の異なるタイプの発色団を含むことが可能であり、当然に、本発明は、これらのポリマー色素も含むことを意図する。
【0087】
実施形態において、任意のQ1、Q2、Q3及び/又はQ4発色団は、下記で表される式(吸収バンドの最大値は丸括弧内の値である。)のアゾ及びアリールアミン色素でよい。
【0088】
【化6】

【0089】
本願の明細書において、「約」は、定量化された値のプラス又はマイナス5%を意味する。
【0090】
本発明の別の目的、利点及び特長は、次の限定的ではない記述である特定の実施態様を確認することで更に明確となり、そして、その目的、利点及び特長は添付図面を参照しながら実施例によって示される。
【実施例】
【0091】
本発明は、次の限定的ではない実施例によって更に詳細に例証される。
【0092】
水溶性ポリマー色素の合成(生産)
水溶性ポリマー色素は、機械的スターラー、水凝縮器、加熱マントル、温度コントローラー及び窒素ガス注入口を備えた三つ口フラスコで合成された。得られたポリマーの分子量は、sing a ゲル浸透クロマトグラフィックシステム(カナダ、Watersから市販されているModel Breeze)を用いて測定された。水溶液中でのポリマー色素のUV-Vis(紫外-可視)スペクトルは、UV-VIS(紫外-可視)分光光度計(カナダ、Perkin Elmerから市販されているModel Lambda 35)を用いて得られた。
【0093】
次の材料は水溶性ポリマー色素を合成(生産)するために用いられた。
【0094】
【表2】

【0095】
実施例1
水溶性ポリマー色素、PD1-01を、三つ口フラスコに入れた700mlの脱イオン水に84.7グラム(0.9mol)の1-ビニルイミダゾールと、3.68グラム(0.1mol)の分散レッド1アクリレートとを添加することによって合成した。その溶液を、窒素雰囲気下で、30分間80℃で加熱した。一定の攪拌をしながら、10グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(その化合物は遊離ラジカル開始剤として作用する)懸濁水溶液を添加し、その溶液を1時間還流した。その後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、再び、その溶液を1時間還流した。最後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、その溶液を10時間80℃で加熱をした。
【0096】
ポリマー色素の赤味を帯びた溶液を得た。固形分を脱イオン水に対して10%に調節した。得られたポリマー色素の最大吸収バンドを約503nmで観察した。オーバーコート溶液を調製する際に使用するために、得られた生成物を準備した。PD1-01の化学構造式を図6に示す。その式中、a及びcは、各々0.1及び0.9である。
【0097】
実施例2
水溶性ポリマー色素、PD1-02を、三つ口フラスコに入れた700mlの脱イオン水に100.0グラム(0.9mol)の1−ビニル−2−ピロリドンと、4.0グラム(0.1mol)の分散レッド13アクリレートとを添加することによって合成した。その溶液を、窒素雰囲気下で、30分間80℃で加熱した。一定の攪拌をしながら、10グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩懸濁水溶液を添加し、その溶液を1時間還流した。その後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、再び、その溶液を1時間還流した。最後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、その溶液を10時間80℃で加熱をした。
【0098】
ポリマー色素の赤味を帯びた溶液を得た。固形分を脱イオン水に対して10%に調節した。得られたポリマー色素の最大吸収バンドを約503nmで観察した。オーバーコート組成物を調製する際に使用するために、得られた生成物を準備した。PD1-01の化学構造式を図7に示す。その式中、a及びbは、各々0.1及び0.9である。
【0099】
実施例3
水溶性ポリマー色素、PD1-03を、三つ口フラスコに入れた700mlの脱イオン水に64.8グラム(0.95mol)のアクリル酸と、4.2グラム(0.05mol)の直接レッド81メタクリレートとを添加することによって合成した。その溶液を、窒素雰囲気下で、30分間80℃で加熱した。一定の攪拌をしながら、10グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩懸濁水溶液を添加し、その溶液を1時間還流した。その後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、再び、その溶液を1時間還流した。最後に、5グラムの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を添加し、その溶液を10時間80℃で加熱をした。
【0100】
ポリマー色素の赤味を帯びた溶液を得た。固形分を脱イオン水に対して10%に調節した。得られたポリマー色素の最大吸収バンドを約503nmで観察した。オーバーコート組成物を調製する際に使用するために、得られた生成物を準備した。PD1-03の化学構造式を図8に示す。その式中、a及びbは、各々0.05及び0.95である。
【0101】
実施例4
窒素雰囲気及び一定攪拌下で、600Cで、220mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する反応フラスコに44グラムのCelvolTM103を添加することによって、水溶性ポリマー色素、PD2-01を合成した。DMSOにポリマーを完全に溶解した後、この反応について触媒として作用する2.0mlの濃縮した硫酸をフラスコに添加した。30分後、2.03グラムのDNAB(50mmol)をフラスコにゆっくり添加し、その混合物を600C5時間で攪拌した。そのポリマーをアセトンで沈殿し、ろ過し、ろ液の色が完全になくなるまで、大量のアセトン及びエタノールの混合物で洗浄をした。
【0102】
大気中で乾燥した後、茶色味を帯びたポリマー色素を得た。PD2-01の理論構造式を図9に示す。その式中、a、c及びdは、各々0.20、0.78及び0.02である。
【0103】
実施例5
窒素雰囲気及び一定攪拌下で、600Cで、220mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する反応フラスコに44グラムのCelvolTM103を添加することによって、水溶性ポリマー色素、PD2-02を合成した。DMSOにポリマーを完全に溶解した後、この反応について触媒として作用する2.0mlの濃縮した硫酸をフラスコに添加した。30分後、4.8グラムの4-カルボキシベンズアルデヒド(100mmol、カナダ、American Dye Source Inc.から市販されている)をフラスコにゆっくり添加し、その混合物を600C5時間で攪拌した。反応フラスコ上にディーントラップを設置した。その後、80mlのトルエン、2.8グラムの分散オレンジ3及び1.6グラムの分散イエロー9をその反応中にゆっくりと添加した。その反応を110℃まで加熱した。副生成物の水が作られ、ディーントラップ中に現れた。10時間後に反応を停止した。その時は、もはや水は反応によって作り出されなかった。そのポリマー色素をアセトンで沈殿し、ろ過し、ろ液の色が完全になくなるまで、大量のアセトン及びエタノールの混合物で洗浄をした。
【0104】
大気中で乾燥した後、茶色味を帯びたポリマー色素を得た。PD2-02の理論構造式を図10に示す。その式中、a、b、c及びdは、各々0.10、0.10、0.78及び0.02である。
【0105】
水溶性オーバーコート溶液の調製
オーバーコート組成物を、高せん断ミキサー (米国、Silversonから市販されている、Model L4RT-A)を利用して、脱イオン水に上記ポリマー色素ゆっくりと溶解し、完成品としての分散を作り出すために有機又は無機粒子を添加することによって調製をした。オーバーコート組成物が約10質量%の固形分(すなわち、ポリマー色素及び粒子)を有するよう調節された。
【0106】
前述の実施例において合成されたポリマー色素に加えて、次の材料がオーバーコート組成物の調製の際に用いられた。
【0107】
【表3】

【0108】
実施例6−11
本発明にしたがった六つのオーバーコート組成物を調製した。これらの組成物は、水、ポリマー色素及び有機ミクロ若しくはナノ粒子又は無機ミクロ若しくはナノ粒子を含む。更に具体的に述べると、これらの組成物は以下の表に記載されたものを含む。
【0109】
【表4】

【0110】
比較例12及び13
比較例として、ポリマー色素又は粒子を含まないポリマーオーバーコート組成物が調製された。これらのオーバーコート組成物は先行技術で提案されたものと同一であり、更に具体的に述べると、以下の表に記載されたものを含む。
【表5】

【0111】
無色のホモ(均質な)ポリマー溶液を得た。これらの溶液はろ過しないで利用可能である。
【0112】
近赤外レーザーイメージングコーティング溶液の調製
次の材料は近赤外レーザーイメージング層を調製するために用いられた。
【0113】
【表6】

【0114】
ネガティブサーマルリソグラフィックプリンティングオフセットプレートのために近赤外レーザーイメージングコーティング組成物を、上記の材料成分を用いて調製をした。更に具体的に述べると、コーティング溶液の液成分は、90質量%のn-プロパノール、9.8質量%の脱イオン水及び0.2質量%のBYK336界面活性剤であった。得られたコーティング溶液は、典型的には、下記の表にしたがって区分された全固体中の約7.0質量%を含んだ。
【0115】
【表7】

【0116】
サーマルリソグラフィック印刷プレートの作製
サーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートを以下のように作製した。第一に、ワイヤー巻きロッドを用いたアルミニウム基材に上述の近赤外レーザーイメージングコーティング溶液をコーティングした。その後、2分間、ホットエアオーブンで、950Cで乾燥をした。近赤外イメージング層の乾燥後の質量を約1.0g/m2に調節した。
【0117】
その後、各々のプレートに対して実施例6〜13の各々の水溶性オーバーコート溶液の一つを、ワイヤー巻きロッドを用いた近赤外レーザーイメージング層にコーティングをした。その後、5分間、ホットエアオーブンで、950Cで乾燥をした。オーバーコート層の乾燥後の質量は約1.0g/m2であった。
【0118】
印刷プレートの性能
白灯ハンドリング性及び接着性
上記で調製された異なるサーマルプレートの白灯ハンドリング性を、異なる継続時間で2つの蛍光灯ランプ(Philipsから市販されているModel F32WT8)から約1mのところに異なるオーバーコート層を有する印刷プレートを配置することによって詳細に調べた。その後、50質量%のDeveloper956(米国、Kodakから市販されているネガティブ印刷プレート用の水性現像剤)を用いてプレートを現像した。その後、白灯によって生産されるステインの量を評価した。
【0119】
プレートに対するオーバーコート層の接着性を、オーバーコート層に接着性テープを適用してテープを剥がすことによって試験をした。観察された性能を、「悪」、「普通」、「良好」及び「大変良好」にクラス分けをし、「悪」は、テープが適用された領域のほとんど全ての部分がテープを剥がすことによって取り除かれたことを意味し、「大変良好」は、テープが適用された領域が、テープを剥がすことによって全く又はほとんど剥がれないことを意味する。
【0120】
これらの2つ試験によって得られた結果を、以下の表のとおりである。
【0121】
【表8】

【0122】
この表から明らかなように、本発明のサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレート(実施例6-11)は、8時間超の間白灯に曝されてもバックグランドのステインは発生しなかった。反対に、比較例12及び13のオーバーコート層を含む印刷プレートは、たった3時間の蛍光灯の曝光で(重度な)バックグランドのステインを示した。
【0123】
この表から明らかなように、実施例6〜11のオーバーコート層の接着性は大変良好〜普通である。一方、ポリビニルアルコールのみを含む、実施例13のオーバーコート層の接着性は非常に悪い。実際のところ、接着性テープは、接着したほとんど全ての領域を取り除く。その上、プレートのカッティングエッジでも、オーバーコート層が剥がれた。
【0124】
間紙がない包装
上述された各々の100個のサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレート(実施例6-13)を生産した。間に間紙を挟まないでプレートを積み重ねた。これらの100-プレート積層体は、各々段ボール箱に収納されて、250Cで1ヶ月間保存された。箱を開いて、それらのプレートをチェックした。
【0125】
比較例12及び13により生産された印刷プレートは重度な引っかき傷を示し、同時に僅かに接着されていた。このことが、リソグラフィックプレートを包装する際に、今まで間紙を使用することが必要である理由である。反対に、実施例6-11のプレートは引っかき傷を起こさなく、同時に接着もしなかった。このことは、これらのプレートが間紙を使用しなで包装され得ることを実証する。
【0126】
近赤外レーザーの撮像及び印刷試験
プレートセッター(米国、Screenから市販されているPlate Rite 4300S)を用いて、150mJ/cm2で実施例6-11のサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートを撮像し、AB Dickプレス機に取り付けた。全てのプレートは、25回転後、ペーパーに良好な印刷画像を示した。
【0127】
湿度の影響
実施例6-13の各々のサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートの湿度の影響を、4O0C及び80%相対湿度でオーブンにコーティングプレートを配置することによって調べた。その後、それらのプレートを、50質量%のDeveloper956を含有する水溶液で現像をした。この試験によって得られた結果は以下である。
【0128】
【表9】

【0129】
オーバーコート層がないプレートは、オーブンにたった3日間置いただけで重度なバックグランドのステインを示した。実施例6-13のサーマルリソグラフィックオフセット印刷プレートは、4O0C及び80%相対湿度のオーブンに5日間置いても汚れがないバックグランドを提供した。このことは、本発明のオーバーコート層(実施例6-11)が、O2及びH2Oに対してイメージング層も、従来技術のオーバーコート層も保護することを実証する。
【0130】
本発明は、特定の実施形態によって以上のとおり述べたが、添付の特許請求の範囲によって画定された本発明の精神及び本質から離れなければ改良及び改変してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)300から600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素及び、
(b)ミクロ粒子又はナノ粒子、
を含むサーマルリソグラフィック印刷プレートのオーバーコート組成物。
【請求項2】
前記吸収バンドが、約300〜約550nmである、請求項1に記載のオーバーコート組成物。
【請求項3】
前記吸収バンドが、約300〜約500nmである、請求項2に記載のオーバーコート組成物。
【請求項4】
前記吸収バンドが、約300〜約480nmである、請求項3に記載のオーバーコート組成物。
【請求項5】
前記ポリマー色素が、側鎖基としてアゾ色素又はアリールアミン色素と結合する、請求項1から4のいずれか1項に記載のオーバーコート組成物。
【請求項6】
前記ポリマー色素が下記で表される式である、請求項1から5のいずれか1項に記載のオーバーコート組成物。
【化1】

該式中、
a及びcは、独立に、約0.05から約0.95に変化し、
bは、約0.00から約0.50に変化し、
dは、約0.02から約0.20に変化し、
Rは、水素又はメチルを表し、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸を表し、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸を表し、及び
Q1、Q2、Q3及びQ4は、同じでも異なっていてもよく、前記吸収バンドを有する発色団を表す。
【請求項7】
Q1、Q2、Q3及びQ4の一つが下記で表される式である、請求項6に記載のオーバーコート組成物。
【化2】

【請求項8】
無機ナノ粒子を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のオーバーコート組成物。
【請求項9】
前記無機ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛を含む、請求項8に記載のオーバーコート組成物。
【請求項10】
前記無機ナノ粒子が約80nm未満の粒子サイズを有する、請求項8又は9に記載のオーバーコート組成物。
【請求項11】
有機ミクロ粒子を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のオーバーコート組成物。
【請求項12】
前記有機ミクロ粒子が、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、又は直鎖若しくは分岐のアルキルメタクリレートと、アクリレート或いはメチルメタクリレートとの架橋コポリマーを含む、請求項11に記載のオーバーコート組成物。
【請求項13】
前記有機ミクロ粒子が約2〜約8μmの粒子サイズを有する、請求項11又は12に記載のオーバーコート組成物。
【請求項14】
水性溶媒を更に含む、請求項1から13のいずれか1項に記載のオーバーコート組成物。
【請求項15】
(a)親水性基材、
(b)該親水性基材に配置される近赤外イメージング層、並びに
(c)該イメージング層に配置されるオーバーコート層を含み、該オーバーコート層が、約300〜約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素、及びミクロ粒子又はナノ粒子を含む、
ネガティブサーマルリソグラフィック印刷プレート。
【請求項16】
前記吸収バンドが約300から約550nmである、請求項15に記載の印刷プレート。
【請求項17】
前記吸収バンドが約300から約500nmである、請求項16に記載の印刷プレート。
【請求項18】
前記吸収バンドが約300から約480nmである、請求項17に記載の印刷プレート。
【請求項19】
前記ポリマー色素が、側鎖基としてアゾ色素又はアリールアミン色素と結合する、請求項15から18のいずれか1項に記載の印刷プレート。
【請求項20】
前記ポリマー色素が下記で表される式である、請求項15から19のいずれか1項に記載の印刷プレート。
【化3】

該式中、
a及びcは、独立に、約0.05から約0.95に変化し、
bは、約0.00から約0.50に変化し、
dは、約0.02から約0.20に変化し、
Rは、水素又はメチルを表し、
R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸を表し、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸を表し、及び
Q1、Q2、Q3及びQ4は、同じでも異なっていてもよく、前記吸収バンドを有する発色団を表す。
【請求項21】
Q1、Q2、Q3及びQ4の一つが下記で表される式である、請求項20に記載の印刷プレート。
【化4】

【請求項22】
前記オーバーコート層が無機ナノ粒子を含む、請求項15から21のいずれか1項に記載の印刷プレート。
【請求項23】
前記無機ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛を含む、請求項22に記載の印刷プレート。
【請求項24】
前記無機ナノ粒子が約80nm未満の粒子サイズを有する、請求項22又は23に記載の印刷プレート。
【請求項25】
前記オーバーコート層が有機ミクロ粒子を含む、請求項15から24のいずれか1項に記載の印刷プレート。
【請求項26】
前記有機ミクロ粒子が、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、又は直鎖若しくは分岐のアルキルメタクリレートと、アクリレート或いはメチルメタクリレートとの架橋コポリマーを含む、請求項25に記載の印刷プレート。
【請求項27】
前記有機ミクロ粒子が約2〜約8μmの粒子サイズを有する、請求項25又は26に記載の印刷プレート。
【請求項28】
前記イメージング層が近赤外吸収ポリマーナノ粒子及び活性ヨードニウムオリゴマーを含む、請求項15から27のいずれか1項に記載の印刷プレート。
【請求項29】
前記イメージング層が活性ポリマーバインダー樹脂を更に含む、請求項28に記載の印刷プレート。
【請求項30】
約300から約600nmの吸収バンドを有する水溶性ポリマー色素。
【請求項31】
前記吸収バンドが約300から約550nmである、請求項30に記載のポリマー色素。
【請求項32】
前記吸収バンドが約300から約500nmである、請求項31に記載のポリマー色素。
【請求項33】
前記吸収バンドが約300から約480nmである、請求項32に記載のポリマー色素。
【請求項34】
サーマルリソグラフィック印刷プレートのオーバーコート層で使用するための請求項30から33のいずれか1項に記載のポリマー色素。
【請求項35】
前記ポリマー色素が、側鎖基としてアゾ色素又はアリールアミン色素と結合する、請求項30から34のいずれか1項に記載のポリマー色素。
【請求項36】
前記ポリマー色素が下記で表される式である、請求項30から35のいずれか1項に記載のポリマー色素。
【化5】

該式中、
a及びcは、独立に、約0.05から約0.95に変化し、
bは、約0.00から約0.50に変化し、
dは、約0.02から約0.20に変化し、
Rは、水素又はメチルを表し、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ハロゲン化物又はカルボン酸を表し、
Mは、カルボン酸、1-イミダゾール、2-ピロリドン、ポリエチレンオキシド鎖、スルホン酸又はリン酸を表し、及び
Q1、Q2、Q3及びQ4は、同じでも異なっていてもよく、前記吸収バンドを有する発色団を表す。
【請求項37】
Q1、Q2、Q3及びQ4の一つが下記で表される式である、請求項36に記載のポリマー色素。
【化6】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−534746(P2010−534746A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518464(P2010−518464)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001371
【国際公開番号】WO2009/015467
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510027467)アメリカン ダイ ソース インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】