説明

ポリマー部材の製造方法、及びポリマー部材

【課題】表面が、例えば導電性や絶縁性などの所望の特性を有するように処理されており、且つ内部に液体を含み、一体性に優れるポリマー部材を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー部材の製造方法は、ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させて、ポリマーaと液体cとを含む基部及び物質bを含む表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層に覆われているポリマー部材を得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が好ましい性質に処理されており、内部に液体を含んでいるポリマー部材、及び該ポリマー部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーゲルは、クッション材、冷却材などのいろいろな用途に使われている。例えば、人間の感冒等による発熱症状を緩和するための除熱ゲル材や肌に保湿剤や美容液を供給するための美顔用ゲルパックとしては、プラスチックフィルムの表面に含水ゲル層を積層してなる含水ゲルシートやゲルパック材が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
また、内部に電解液を保持したポリマーゲルは、ゲル電解質として、電池、コンデンサー、アクチュエーターなどに利用できることが知られている(特許文献3参照)。このような用途では、ポリマーゲルは、電極材料あるいは絶縁材料と接触させて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347895号公報
【特許文献2】特開2008−247807号公報
【特許文献3】特開2007−35646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のポリマーゲルは、内部において何れの成分もほぼ均一に分布しており、ゲルの特定の部位に特定の成分がリッチに存在することはなかった。また、表面を所望の特性を有するように処理したポリマーゲルは、ゲルに含まれる液体が表面処理部分とゲル部分との間に作用することで表面処理部分が剥離しやすいという問題があり製造が困難であった。
【0006】
さらに、前記のポリマーゲルは、表面を所望の特性を有するように処理しようとしても、ゲルに含まれる液体の作用により、一体性に優れたポリマーゲルと表面処理部との積層構造を得ることが困難であった。例えば、ゲルに含まれる液体が水である場合、ハイドロゲル化した後では、水が表面処理部の形成について阻害作用を示し、一体性に優れる積層構造を得ることが困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、表面が、例えば導電性や絶縁性などの所望の特性を有するように処理されており、且つ内部に液体を含み、一体性に優れるポリマー部材を簡便に製造できる製造方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、表面が、例えば導電性や絶縁性などの所望の特性を有するように処理されており、且つ内部に液体を含み、一体性に優れるポリマー部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、ポリマーからなるポリマー材に、該ポリマーが吸収可能な液体(液体c)に該ポリマーに不溶性の物質(物質b)が分散している分散液を接触させると、前記の液体cはポリマー材に吸収されて内部に拡散し、さらに前記の物質bは表面に濃縮され、前記の物質bを含む表面層及びポリマーと前記の液体cとを含む基部を有し、表面層と基部との一体性に優れるポリマー部材が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させて、ポリマーaと液体cとを含む基部及び物質bを含む表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層で覆われているポリマー部材を得ることを特徴とするポリマー部材の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記のポリマー材がポリマーシートであって、該ポリマーシートの少なくとも片面に塗布することにより分散液を接触させる前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、ポリマーaが架橋されており、さらに基部がゲル状物である前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記のゲル状物が、ゲル電解質である前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、液体cが、水である前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、物質bが、導電性物質である前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、下記に定義されるポリマーaの膨潤度が1.5以上である前記のポリマー部材の製造方法を提供する。
ポリマーaの膨潤度:ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させた後のポリマーaの重量と、ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させてから乾燥処理した後のポリマーaの重量との比
【0016】
さらに、本発明は、ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させることにより形成され、ポリマーaと液体cとを含む基部及び物質bを含む表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層に覆われていることを特徴とするポリマー部材を提供する。
【0017】
また、本発明は、ポリマー材がポリマーシートであって、該ポリマーシートの少なくとも片面に塗布することにより分散液を接触させる前記のポリマー部材を提供する。
【0018】
また、本発明は、ポリマーaが架橋されており、さらにゲル状物である基部を有する前記のポリマー部材を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記のゲル状物が、ゲル電解質である前記のポリマー部材を提供する。
【0020】
また、本発明は、液体cが水である前記のポリマー部材を提供する。
【0021】
また、本発明は、物質bが、導電性物質である前記のポリマー部材を提供する。
【0022】
また、本発明は、下記に定義されるポリマーaの膨潤度が1.5以上である前記のポリマー部材を提供する。
ポリマーaの膨潤度:ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させた後のポリマーaの重量と、ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させてから乾燥処理した後のポリマーaの重量との比
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、表面が、例えば導電性や絶縁性などの所望の特性を有するように処理されており、且つ内部に液体を含み、一体性に優れるポリマー部材を簡便に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施例2のポリマー部材の断面の光学顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、比較例1のポリマー部材の断面の光学顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、実施例3及びポリマーシート(B)の引張物性を示す。
【図4】図4は、実施例4及びポリマーシート(C)の引張物性を示す。
【図5】図5は、実施例5及びポリマーシート(D)の引張物性を示す。
【図6】図6は、実施例6及びポリマーシート(E)の引張物性を示す。
【図7】図7は、実施例7及びポリマーシート(B)の引張物性を示す。
【図8】図8は、比較例2及びアクリル系ポリマーシート(A)の引張物性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において、ポリマー部材は、ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させることにより形成する。このようにして得られるポリマー部材は、物質bを含む表面層及びポリマーaと液体cとを含む基部を有している。また、該ポリマー部材では、基部表面の少なくとも一部が表面層に覆われている。そして、該ポリマー部材は、表面が所望の特性を有するように処理されており、且つ内部に液体を含んでいる。なお、本願では、「液体cに物質bが分散している分散液」を「特定の分散液」と称する場合がある。また、「ポリマーaからなるポリマー材」を「ポリマー材A」と称する場合がある。
【0026】
本発明では、特定の分散液をポリマー材Aに接触させると、ポリマー材Aを構成するポリマーaは特定の分散液中の液体cを吸収するので、液体cがポリマー材A内部まで移動して拡散する現象が生じる。この際、ポリマー材Aは体積の増加を生じてゲル化し、同時に、特定の分散液を接触させた側の面で物質bの濃縮が生じる。物質bの濃縮が生じるのは、ポリマー材A表面がフィルターの役割を果たすためと考えられる。その結果として、本発明では、物質bを含む表面層及びポリマーaと液体cとを含む基部を有するポリマー部材が形成され、また、ポリマー部材が内部に液体を含むようになる。
【0027】
そして、このような現象により、本発明では、表面層と基部との一体性に優れたポリマー部材が得られる。また、表面と内部との性質が大きく異なるポリマー部材が得られる。
【0028】
(ポリマー材A)
本発明において、ポリマー材Aは、ポリマーaを含み、一定の形状を有する物体である。
【0029】
ポリマー材Aは、ポリマーaを必須の構成成分としており、ポリマーaのみから構成されていてもよいし、必要に応じて任意の成分が含まれていてもよい。ポリマー材A中のポリマーaの含有量は、ポリマー材Aの全量に対して、70重量%以上(例えば70〜100重量%)が好ましく、より好ましくは95重量%以上(例えば95〜100重量%)である。
【0030】
ポリマー材Aを構成するポリマーaは、高分子量の物質を指す。本願では、分子量3000以上(好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上)のものが高分子量の物質の目安となる。なお、本発明では、分子量が実質的に無限大といえる架橋高分子を用いることができるので、分子量の上限は存在しない。また、ポリマーaは、合成高分子、天然高分子によらず用いることができる。さらに、ポリマーaの合成方法についても特に制限はない。なお、ポリマー材Aにおいて、ポリマーaは、一種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0031】
さらに、本発明では、ポリマーaは架橋構造を有することが好ましい。ポリマーaが架橋構造を有していると、ポリマー部材のポリマーaと液体cとを含む基部で液体cを化学的に安定して維持でき、さらに、基部の化学的安定性や強度を向上できると考えられる。
【0032】
本発明において、ポリマーaが合成高分子である場合、その具体的な例としては、アクリル系ポリマー、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキサイド)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0033】
また、ポリマーaが天然高分子である場合、その具体的な例としては、ゼラチン;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのセルロース類;アルギン酸ソーダ;ペクチン;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類やタンパク質が挙げられる。
【0034】
また、本発明では、後述のように液体cは水が好ましいことから、ポリマーaは、水分を吸収する吸水性ポリマーが好ましい。なお、あるポリマーが吸水性ポリマーであるか否かは、後述のポリマーaの膨潤度を求めることにより判断できる。水に対する膨潤度が1.0を超える場合、吸水性ポリマーであると判断できる。
【0035】
前記の吸水性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸ソーダ)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ペクチン、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキサイド)、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。また、これらのポリマーを、架橋により不溶化したもの、超高分子量とすることにより不溶化したもの、複雑に絡み合わせることにより不溶化したものなども用いることができる。
【0036】
さらにまた、前記の吸水性ポリマーとしては、親水性を有するモノマー成分(親水性モノマー)を必須の形成成分とするポリマー(例えば、後述の親水性アクリル系ポリマーなど)が挙げられる。
【0037】
特に、本発明では、吸水性ポリマーとしては、安定性、液体を含んだゲルとしての物性、取扱いの容易性、入手しやすさなどの点から、ポリビニルアルコール、後述の親水性アクリル系ポリマーを好適に用いることができる。
【0038】
上記のポリビニルアルコールとしては、重合度が200〜3000(好ましくは400〜2000)であり、けん化度が35〜99mol%(好ましくは80〜90mol%)であるものが特に好ましい。なお、ポリビニルアルコールとしては、分子内にカチオン基(例えば4級アンモニウム基等)やアニオン基(例えばスルホン酸基等)や反応性基(例えばアセトアセチル基等)などを有するような変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0039】
また、親水性アクリル系ポリマーは、親水性(メタ)アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として形成されたポリマーである。なお、本願において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0040】
親水性アクリル系ポリマーは、親水性(メタ)アクリル系モノマーを単独重合すること、又は他のモノマー成分(例えば、親水性(メタ)アクリル系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー、多官能性モノマーなどの共重合性モノマーなど)と共重合することにより得ることができる。
【0041】
親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分において、親水性(メタ)アクリル系モノマーは、必須の成分であり、親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して、20重量%以上(好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)であることが好ましい。親水性(メタ)アクリル系モノマーの含有量が親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して20重量%未満であると、水の吸収性が乏しくなる。なお、親水性アクリル系ポリマーは、親水性(メタ)アクリル系モノマーのみから形成されることは好ましくない。液体の吸収後の取扱い性や形状維持が困難な場合があるためである。
【0042】
親水性(メタ)アクリル系モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、窒素含有(メタ)アクリル系モノマー(窒素含有基(メタ)アクリル系モノマー)が挙げられる。
【0043】
上記の水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、グリセリンモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、エチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレートなどが挙げられる。また、上記のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、又はこれらの無水物(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸など)などが挙げられる。なお、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーは、塩(ナトリウム塩などの金属塩やアンモニウム塩など)になっていてもよい。さらに、上記の窒素含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N−モノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0044】
前記のように、親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、前記親水性(メタ)アクリル系モノマー以外のアクリル系モノマー、多官能性モノマー、その他の共重合性モノマーなどの各種共重合性モノマーが用いられていてもよい。親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として共重合性モノマーが用いられていると、ポリマー部材の親水性アクリル系ポリマーを含む基部において、弾性率、破断強度、耐薬品性、耐水性、耐溶剤性などの物性を調整することができる。なお、共重合性モノマーは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、本願では、「親水性(メタ)アクリル系モノマー以外のアクリル系モノマー」を「その他のアクリル系モノマー」と称する場合がある。
【0045】
その他のアクリル系モノマーとしては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
前記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは炭素数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、さらに好ましくは炭素数2〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)]などが挙げられる。
【0047】
また、前記の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、前記の酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。
【0048】
なお、その他のアクリル系モノマーとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外にも、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが用いられていてもよい。
【0049】
前記のその他のアクリル系モノマーは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としてその他のアクリル系モノマーが用いられている場合、その他のアクリル系モノマー(特に直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルなど)の含有量は、特に制限されないが、親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して、0〜80重量%以下(好ましくは0.05〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜50重量%である。80重量%以上となると水の吸収性が乏しくなることがある。
【0050】
また、親水性アクリル系ポリマーを形成する共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0051】
さらに、親水性アクリル系ポリマーを形成する共重合性モノマーとしての多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。このような多官能モノマーの配合により親水性アクリル系ポリマーの架橋度や架橋特性の制御が容易となる。
【0052】
親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として多官能性モノマーが用いられている場合、多官能性モノマーの使用量としては、得られるポリマー部材(ポリマーゲル)の目的、用途によって適宜調整することができるが、一般に親水性アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば、0.01〜30重量%)であり、好ましくは20重量%以下(例えば、0.02〜20重量%)である。30重量%を超えると、例えば、親水性アクリル系ポリマーの水吸収性が乏しくなるおそれがある。なお、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、モノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、ポリマー部材の親水性アクリル系ポリマーと水とを含む基部において、吸水状態での形状維持が困難になるおそれがある。
【0053】
また、前記の多官能性モノマー等以外の共重合性モノマー(その他の共重合性モノマー)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
親水性アクリル系ポリマーを得るための重合方法としては、従来公知の重合方法を用いることができる。例えば、溶液重合法;エマルション重合法;紫外線や電子線などの活性エネルギー線を利用する光重合法などを用いることができる。
【0055】
特に、本発明では、作業性、環境に対する負荷が少ない等の観点から、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましく、中でも光重合開始剤(光開始剤)を用いた活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる
【0056】
前記の光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0057】
具体的には、ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製)、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン (商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」チバ・ジャパン社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」チバ・ジャパン社製)などが挙げられる。α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア907」チバ・ジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名「イルガキュア369」チバ・ジャパン社製)などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「ルシリン TPO」BASF社製)などが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0058】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、親水性アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0059】
本発明では、光重合開始剤を用いた活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましいが、このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0060】
また、前記熱重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどのアゾ系熱重合開始剤;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどの過酸化物系熱重合開始剤;レドックス系熱重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0061】
また、本発明では、ポリマー材Aには、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、無機粒子などが挙げられる。これらの添加剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができる。
【0062】
前記の架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、取り扱い性の点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0064】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0065】
また、上記の添加剤(任意の成分)としての無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、金属粉、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0066】
本発明において、ポリマー材Aの形状としては、特に制限されず、適宜な形状を選択することできる。例えば、シート状、フィルム状、繊維状、ビーズ状(球状)、棒状、不織布状、発泡体状などが挙げられる。中でも、ポリマー材Aは、ロール to ロールの連続塗工で特定の分散液をポリマー材Aと接触させることが可能な点から、シート状を好ましく選択することができる。すなわち、ポリマー材Aは、ポリマーシートであることが好ましい。なお、本発明では、シートにはフィルムの概念も含まれる。
【0067】
本発明において、ポリマー材Aがシート状の形状を有する場合、その厚さは、特に制限されないが、取扱い性、生産性、コストなどの点から、10μm〜2000μmが好ましく、より好ましくは30〜1000μmである。
【0068】
また、本発明では、作業性や取り扱い性の点から、ポリマー材Aは、プラスチック基材や剥離フィルムなどの適宜な支持体上に、シート状に形成されていてもよい。すなわち、ポリマー材Aは、基材付きポリマーシートのポリマー層部分であってもよい。
【0069】
上記の支持体としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[例えば、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体などが挙げられる。中でも、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマーとするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。なお、これらの素材は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
(特定の分散液)
本発明において、前記の特定の分散液は、ポリマーaが吸収可能な液体cに、ポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液のことである。また、特定の分散液は、液体cを含み、混和成分としての物質bとが混ざり合って得られる液状物であることから、「混和物」に相当する。本発明では、後述のように液体cとしては水が好ましいので、特定の分散液は水の混和物であることが好ましい。
【0071】
特定の分散液において、物質bは、前記ポリマーaに吸収されない物質である。物質bは、ポリマーaの種類によって異なる。なお、物質bは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明では、物質bが液体cに分散している分散液(特定の分散液)をポリマー材Aに接触させており、後述のように液体cとしては水が好ましいので、特に、物質bは水に対して分散性を発揮するものが好ましい。液体cに分散する物質bとは、液体c中で分散している物質b粒子の平均粒径が100nm以上のサイズであるものを指す。なお、本発明では、得られたポリマー部材表面に物質bの層を形成することができないおそれがあるので、物質bとしては液体cに溶解するものを使用することは好ましくない。
【0073】
物質bとしては、具体的には、ポリマー、無機粒子、金属粒子、顔料などが挙げられる。
【0074】
前記のポリマーとしては、例えば、公知のポリマー(例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマーなど)などが挙げられる。また、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子も挙げられる。さらに、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の粘着剤も挙げられる。
【0075】
前記の無機粒子(無機物、無機微粒子、無機微粒子粉末)としては、例えば、セラミックス、シリカ、粘土鉱物、ガラス、カーボンブラック、グラファイト、カーボンクラスター、カーボンナノチューブなどが挙げられる。中でも、シリカ、粘土鉱物が好ましく、特に粘土鉱物が好ましい。なお、粒子は、中実体、中空体(バルーン)のいずれであってもよい。
【0076】
前記の無機粒子として特に好ましい粘土鉱物としては、中でも、層状粘土鉱物が好ましい。このような層状粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト;バーミキュライト;ベントナイト;カネマイト、ケニアナイト、マカナイト等の層状ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。このような層状粘土鉱物は、天然の鉱物として産するもの、あるいは化学合成法によって製造されたものも制限なく使用することができる。
【0077】
また、前記の無機粒子は、水、あるいは炭化水素系液体(例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテルなど)に膨潤、分散しやすくする加工を施したものを用いてもよい。このような無機粒子としては、例えば、その陽イオン交換特性を利用して、有機カチオン性化合物とイオン交換し、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを導入する事によって、アクリル系モノマーに膨潤、分散しやすくした層状粘土鉱物(例えば、商品名「ルーセンタイトSPN」コープケミカル株式会社製など)等が挙げられる。
【0078】
前記の金属粒子(金属微粒子)としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ゲルマニウム、モリブテン、ロジウム、銀、インジウム、スズ、タングステン、イリジウム、白金、鉄、金などの金属;鉄酸化物、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化バナジウム、フェライトなどの金属酸化物;炭化ケイ素、炭化チタンなど金属炭化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンなどの金属窒化物;窒化ホウ素など金属ホウ化物;金属水酸化物などが挙げられる。
【0079】
本発明において、前記の金属粒子としては、ポリマー部材の表面に導電性を付与する観点からは、金属酸化物が好ましく、特に金属元素がドープしている金属酸化物が好ましい。金属元素がドープしている金属酸化物において、ドープしている金属元素としては、特に制限されないが、例えば、アンチモン、インジウム、アルミニウム、鉄、銅、バナジウム、マンガン、亜鉛などが挙げられる。また、金属元素がドープしている金属酸化物の具体例としては、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛などが挙げられる。
【0080】
なお、本発明では、前記の無機粒子として、金属原子がドープしている金属酸化物により被覆されている無機粒子(特に、金属元素がドープしている金属酸化物により被覆されている無機粒子)を用いてもよい。
【0081】
前記の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、アンバー、シェンナ、炭酸カルシウム、紺青、亜鉛華、チタン白などの無機顔料;メチルレッド、フタロシアニンブルーなどの有機顔料などが挙げられる。
【0082】
物質Bが粒子の形状を有する場合(例えば、前記の無機粒子や金属粒子など)、その粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、本発明のポリマー部材における該粒子による表面機能化の観点から、なるべく粒子が緻密に詰まっている方が好ましく、例えば、一次粒子径としては、5nm〜5μm(好ましくは6nm〜1μm、さらに好ましくは7nm〜0.5μm)の範囲から選択することができる。なお、粒子は、粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
また、その形状は、真球状や楕円球状などの球状、不定形状、針状、棒状、平板状などのいずれの形状であってもよい。また、粒子は、その表面に、孔や突起などを有していてもよい。
【0084】
特定の分散液において、液体cは、前記のポリマーaに吸収可能な液体である。本発明において、液体cにおける「液体」とは、室温(25℃)において1分間の観察時間内で流動性を示す物質である。なお、液体cは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0085】
液体cとしては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;アルデヒド類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;ヘキサンなどの炭化水素類などの低分子量有機溶媒などが挙げられる。
【0086】
本発明では、液体cとして、適用範囲の広さ、安全性、入手の容易さ、コストの点から、特に水が好ましく用いられる。
【0087】
本発明において、特定の分散液のより具体的な例としては、ポリマーが液体cに分散している分散液(ポリマーが液体cにディスパージョンしている分散液)、無機粒子が液体cに分散している分散液、金属粒子が液体cに分散している分散液などが挙げられる。なお、ポリマーが液体cに分散している分散液は、その組成に応じて、粘着剤層を形成する組成物(粘着剤組成物)としての作用する場合がある。また、無機粒子が液体cに分散している分散液や金属粒子が液体cに分散している分散液は、その組成に応じて、着色剤や顔料を含む着色液や導電性を付与する液として作用する場合がある。
【0088】
前記の特定の分散液において、物質bと液体cの割合(重量基準)は、特に制限されないが、分散のしやすさ、分散液の取り扱いやすさの点から、物質b/物質cで、0.01〜5が好ましく、より好ましくは0.02〜2である。
【0089】
前記の特定の分散液では、物質b及び液体cの他に、増粘剤、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水などのpH調整剤などが含まれていてもよい。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0090】
前記の特定の分散液は、例えば、物質b、液体c、及び必要に応じて任意の成分を、分散機を使用して高速で攪拌することにより得ることができる。なお、特定の分散液を得る際には、必要に応じて分散剤が用いられていてもよい。
【0091】
また、上記のポリマーが液体cに分散している分散液は、前記の分散機を使用して高速で攪拌することに加えて、液体c中でポリマーを形成するモノマー成分を重合することでも得ることができる。例えば、液体cが水である場合、ポリマーが水に分散している分散液は、ポリマーを形成するモノマー成分を水中でエマルション重合することにより得ることができる。より具体的には、前記のポリマーaとしてのアクリル系ポリマーの形成に用いられているアクリル系モノマーなどのモノマー成分をエマルション重合すると、水に分散しているアクリル系ポリマーを得ることができる。なお、モノマー成分の重合の際には
、適宜な添加剤(例えば、エマルション重合の際の乳化剤、界面活性剤、連鎖移動剤など)を使用してもよい。
【0092】
本発明において、ポリマー部材は、ポリマーaからなるポリマー材(ポリマー材A)に、物質b及び液体cを含む特定の分散液を接触させて、基部及び表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層で覆われているポリマー部材を得ることにより作製することができる。
【0093】
本発明において、ポリマーa、物質b及び液体cの組み合わせについては、ポリマー部材の用途、ポリマー部材へ施す表面処理の内容などに応じて適宜選択することができる。
【0094】
本発明において、あるポリマーとある液体が本発明のポリマーaと液体cとの組み合わせに該当するかどうか(ポリマーaが液体cを吸収できるかどうか)は、下記で定義されるポリマーaの膨潤度で判断できる。膨潤度が1.0を超える場合、ポリマーaは吸収できると判断できる。
ポリマーaの膨潤度:ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させた後のポリマーaの重量(液体を吸収したポリマー重量)と、ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させてから、乾燥処理した後のポリマーaの重量(乾燥後のポリマー重量)との比
ポリマーaの膨潤度=(液体を吸収したポリマー重量)/(乾燥後のポリマー重量)
なお、上記の乾燥処理としては、例えば、熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。より具体的には、液体cが水である場合の130℃での3時間の熱処理などが挙げられる。
【0095】
特に、本発明では、液体の吸収しやすさ、吸収できる液体量の点から、上記で定義されるポリマーaの膨潤度が1.5以上(例えば1.5〜1000)であることが好ましく、より好ましくは2.0以上(例えば2.0〜100)である。
【0096】
本発明において、あるポリマーとある物質が本発明のポリマーaと物質bとの組み合わせに該当するかどうかは、あるポリマーとある物質を接触させた状態で、物理的な負荷はかけずに、室温(23℃)に1日放置することで判断できる。放置後、両者の状態が変化していない場合、本発明のポリマーaと物質bとの組み合わせに該当すると判断できる。一方、放置後、両者の状態が変化している場合(例えば、溶け合ったり、混ざり合ったりしている場合など)には、本発明のポリマーaと物質bとの組み合わせに該当しないと判断できる。
【0097】
また、本発明において、ポリマー材Aに特定の分散液を接触させる手法としては、特に制限されないが、例えば、塗布法(ポリマー材Aに特定の分散液を塗布することにより接触させる方法)、転写法(特定の分散液の粘度が高い場合、別途設けた特定の分散液からなる物体をポリマー材Aに転写することにより接触させる方法)などの簡便な方法を用いることができる。
【0098】
より具体的には、ポリマー材Aがシート状である場合、片面又は両面に特定の分散液を塗布することが挙げられる。なお、シート状のポリマー材Aに特定の分散液を塗布する際の厚さとしては、任意の厚さを選択することができるが、例えば1μm〜1000μm程度である。
【0099】
このように、本発明のポリマー部材の製造方法は、ポリマー材Aに特定の分散液を接触させることのみで、基部及び表面層を有するポリマー部材を得ることができ、簡便性に優れている。また、ポリマーa、物質b、及び液体cを、幅広く組み合わせて使用することができるので、汎用性に優れている。
【0100】
また、本発明では、表面を好ましい性質(例えば、導電性、絶縁性、意匠性、粘着性など)に処理したポリマー部材(特にポリマーゲル)を簡便な方法で得ることができる。
【0101】
(ポリマー部材)
本発明において、ポリマー部材は、前記のポリマー材Aに、前記の特定の分散液を接触させることにより形成され、物質bを含む表面層及びポリマーaと液体cとを含む基部を有している。また、ポリマー部材において、基部は表面層により少なくとも一部が覆われている。つまり、ポリマー部材において、表面層は、基部表面全体を覆っていてもよく、基部表面を部分的に覆っていてもよい。
【0102】
前記のポリマー部材の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、繊維状、ビーズ状(球状)、棒状などが挙げられる。
【0103】
ポリマー材Aがポリマーシートである場合、ポリマーaと液体cとを含む基部の層(基層)と、物質bを含む表面層を有するシート状のポリマー部材を得ることができる。このように、多層構造のシート状のポリマー部材を得ることができる。なお、ポリマー部材がシート状の形状を有する場合、ポリマー部材表面の表面層は、片面側のみに形成されてもよいし、両方の表面に形成されてもよい。
【0104】
前記の表面層は、物質bを含む層であり、ポリマー部材中に基部表面と接する形態で存在している。
【0105】
前記のポリマー部材において、表面層の厚さは、特に制限されないが、0.1〜200μmが好ましく、より好ましくは1〜100μmである。
【0106】
また、前記の基部は、ポリマーaと液体cとを含んでいる。さらに、基部では、液体cが拡散している。
【0107】
特に、本発明では、ポリマー部材の基部は、ポリマーaが液体cを取り込み、ゲル状物となっていることが好ましい。前記のように、液体cとしては水が好ましいので、ポリマー部材の基部は、水を吸収することにより得られるハイドロゲルであることが好ましい。なお、本発明では、ポリマー材Aとしてポリマーシートを使用し、液体cとしては水を使用すれば、物質bの表面層を有し、内部にハイドロゲルである基層を有する多層構造のポリマー部材を得ることができる。
【0108】
特に、本発明では、また、経時の安定性の点から、ポリマーaが架橋されており、ポリマー部材の基部がゲル状物であることが好ましい。なお、この場合のポリマー部材の基部は、架橋による三次元的な網目構造を有しており、さらに内部に液体cを吸収し膨潤した高分子ゲルである。
【0109】
さらに、前記のゲル状物である基部は、水の保持性に優れる点から、ゲル電解質であることが好ましい。なお、本発明において、「ゲル電解質」とは、外部からの電場によりイオンを移動させることができるポリマーゲルの意味である。ゲル電解質である基部を有するポリマー部材は、例えば、前記の親水性アクリル系ポリマーからなるポリマー材に、液体cが水である特定の分散液を接触させることにより得ることができる。
【0110】
前記のポリマー部材において、基部の形状や基部の大きさは特に制限されないが、例えば、シート状のポリマー部材である場合、基部(基層部)の厚さは、10〜2000μmが好ましく、より好ましくは20〜1000μmである。
【0111】
前記のポリマー部材において、その厚さや大きさは特に制限されないが、ポリマー部材がシート状の形状である場合、その全体の厚さ(基部及び表面層で構成される部分の厚さ)は、10〜2000μmが好ましく、より好ましくは20〜1000μmである。
【0112】
本発明において、ポリマー部材は、さらに加熱、電磁波(例えば紫外線など)の照射、延伸処理、圧縮処理などの処理を行うことができる。そして、これらの処理により、物質B、表面の物質Bの層、液体を吸収したポリマー、ポリマー部材全体の形状や性質(溶解性などの化学的性質および強度などの物理的性質)が変化してもよい。
【0113】
本発明において、ポリマー部材は物質bを含む表面層を有しているので、物質bを選択することにより、ポリマー部材表面を好ましい性質に処理できる。例えば、物質bとして前記の導電性高分子、前記の金属粒子、前記の無機粒子の中で導電性を発揮する無機粒子を選択すれば、ポリマー部材の表面を導電性に処理できる。また、物質bとして前記の粘着剤を選択すれば、ポリマー部材は、表面に粘着剤層を有することとなり、表面を粘着性に処理できる。さらに、物質bとして、前記の公知のポリマー(例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマーなど)や、前記の無機粒子の中で絶縁性を発揮する無機粒子を選択すれば、ポリマー部材の表面を絶縁性に処理できる。さらに、物質bとして、有色のもの(無色でないもの)を選択すれば、ポリマー部材の表面を着色でき、意匠性を付与できる。さらに、物質bとして、無機粒子を選択すれば、ポリマー部材表面で硬化性を発揮することができる場合がある。
【0114】
このように、本発明では、ポリマー部材の表層と内部とで、その性質を大きく異なるようにすることができる。
【0115】
また、本発明において、ポリマー部材は、特定の分散液をポリマー材Aに接触させることにより製造されるので、表面層と基部との一体性に優れる。
【0116】
例えば、液体cとして水を用いた場合にハイドロゲル化したポリマー部材を得ることができるが、該ハイドロゲル化したポリマー部材は、特定の分散液をポリマー材Aに接触させることにより製造されるので、表面層と水を含む基部との一体性に優れる。また、該ハイドロゲル化したポリマー部材は、表層と内部とで、その性質が大きく異なる。
【0117】
さらにまた、本発明において、ポリマー部材はポリマーaと液体cとを含む基部を有しているので、部材内部に液体を安定的に含むことができる。
【0118】
このようなポリマー部材は、表面で所望の性質を発揮するとともに、基部で液体(特に水)を含むことによる性質(例えば、除熱性、冷却性、柔軟性など)を発揮することができる。
【0119】
本発明において、ポリマー部材は、例えば、クッション材、冷却材、パック材などとして用いることができる。また、液体cとして水を用いるとハイドロゲルを有するポリマー部材を得ることができ、該ポリマー部材は、除熱ゲル材、含水シートとして用いることができる。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0121】
(光重合性シロップの調製例1)
モノマー成分として、ブチルアクリレート:40重量部、アクリル酸:10重量部、及びN−ビニルピロリドン:50重量部が混合されたモノマー混合物と、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部とを、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(A)」と称する場合がある)を得た

【0122】
(光重合性シロップの調製例2)
モノマー成分として、シクロヘキシルアクリレート:100重量部と、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部とを、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(B)」と称する場合がある)を得た。
【0123】
(基材)
基材として、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラー S−10」東レ社製)を用いた。
【0124】
(カバーフィルムの使用例1)
カバーフィルムとして、片面がシリコーン系離型処理剤で離型処理された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、商品名「MRF38」、三菱樹脂社製)を用いた。なお、該カバーフィルムをカバーフィルム(A)と称する場合がある。
【0125】
(カバーフィルムの使用例2)
カバーフィルムとして、片面がシリコーン系離型処理剤で離型処理された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、商品名「MRN38」、三菱樹脂社製)を用いた。なお、該カバーフィルムをカバーフィルム(B)と称する場合がある。
【0126】
(ポリマーシートの作製例1)
ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバール PVA205」クラレ社製)を蒸留水に溶解させて10重量%水溶液を調製した。該PVA水溶液:100重量部に、水溶性有機チタン化合物(商品名「TC310」、松本製薬工業社製、架橋成分):0.1重量部を加え、これをディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)を用いて200rpmで5分間攪拌し、均一に混合した。これを前記基材上に硬化後の厚さが50μmとなるように塗布し、130℃で2時間乾燥して、基材付きポリマーシート(基材/ポリマーシートの層構成)を作製した。
なお、ポリマーシートの作製例1で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(A)」と称する場合がある。
【0127】
(ポリマーシートの作製例2)
ヒドロキシエチルメタクリレート:100重量部、前記の光重合性シロップ(A):14重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部を均一に混合することにより得られる組成物を、カバーフィルム(A)の剥離処理面に硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、組成物層を形成させた。そして、該層上に、剥離処理面が接する形態でカバーフィルム(B)を貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該層を硬化させてポリマー層を形成させることにより、両面がカバーフィルムで保護されたポリマーシート(カバーフィルム(A)/ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、ポリマーシートの作製例2で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(B)」と称する場合がある。
【0128】
(ポリマーシートの作製例3)
ヒドロキシエチルアクリレート:100重量部、前記の光重合性シロップ(A):14重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部を均一に混合することにより得られる組成物を、カバーフィルム(A)の剥離処理面に硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、組成物層を形成させた。そして、該層上に、剥離処理面が接する形態でカバーフィルム(B)を貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該層を硬化させてポリマー層を形成させることにより、両面がカバーフィルムで保護されたポリマーシート(カバーフィルム(A)/ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、ポリマーシートの作製例3で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(C)」と称する場合がある。
【0129】
(ポリマーシートの作製例4)
ヒドロキシエチルアクリレート:50重量部、N−ビニルピロリドン:50重量部、前記の光重合性シロップ(A):14重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部を均一に混合することにより得られる組成物を、カバーフィルム(A)の剥離処理面に硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、組成物層を形成させた。そして、該層上に、剥離処理面が接する形態でカバーフィルム(B)を貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該層を硬化させてポリマー層を形成させることにより、両面がカバーフィルムで保護されたポリマーシート(カバーフィルム(A)/ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、ポリマーシートの作製例4で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(D)」と称する場合がある。
【0130】
(ポリマーシートの作製例5)
前記の光重合性シロップ(A):100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部を均一に混合することにより得られる組成物を、カバーフィルム(A)の剥離処理面に硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、組成物層を形成させた。そして、該層上に、剥離処理面が接する形態でカバーフィルム(B)を貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該層を硬化させてポリマー層を形成させることにより、両面がカバーフィルムで保護されたポリマーシート(カバーフィルム(A)/ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、ポリマーシートの作製例5で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(E)」と称する場合がある。
【0131】
(ポリマーシートの作製例6)
前記の(ポリマーシートの作製例3)において、カバーフィルム(A)の代わりに前記基材を使用して、基材上に組成物を塗布し組成物層を形成させたこと以外は、同様の方法で、ポリマー層を形成させることにより、ポリマー層の片面がカバーフィルムで保護されている基材付きポリマーシート(基材/ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、ポリマーシートの作製例6で得られたポリマーシートを「ポリマーシート(F)」と称する場合がある。
【0132】
(アクリル系ポリマーシートの作製例1)
前記の光重合性シロップ(B):100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・ジャパン社製):0.2重量部を均一に混合することにより得られる組成物を、カバーフィルム(A)の剥離処理面に硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、組成物層を形成させた。そして、該層上に、剥離処理面が接する形態でカバーフィルム(B)を貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該層を硬化させて硬化層を形成させることにより、両面がカバーフィルムで保護されたアクリル系ポリマーシート(カバーフィルム(A)/アクリル系ポリマーシート/カバーフィルム(B)の層構成)を得た。
なお、アクリル系ポリマーシートの作製例1で得られたアクリル系ポリマーシートを「アクリル系ポリマーシート(A)」と称する場合がある。
【0133】
(水分散性組成物の調製例1)
水分散アンチモンドープ酸化スズ(商品名「SN−100D」、石原産業社製):100重量部に、増粘剤(アクリル系エマルション、商品名「B500」、東亞合成社製):10重量部、及び0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液:10重量部を加えた。これをディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)を用いて、2000rpmで5分間攪拌し、水分散性組成物(「水分散性組成物(A)」と称する場合がある)を得た。
【0134】
(水分散性組成物の調製例2)
水に不要な赤色顔料(商品名「特級メチルレッド」、キシダ化学社製)及び純水を、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)に投入して、2000rpmで5分間攪拌し、赤色顔料が5重量%含まれているメチルレッド分散液を得た。このメチルレッド分散液:100重量部に、増粘剤(アクリル系エマルション、商品名「B500」、東亞合成社製):2.5重量部、及び0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液:2.5重量部を加えた。これをディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)を用いて2000rpmで5分間攪拌し、水分散性組成物(「水分散性組成物(B)」と称する場合がある)を得た。
【0135】
(水分散性組成物の調製例3)
水分散アンチモンドープ酸化スズ(商品名「SN−100D」、石原産業社製):100重量部に、増粘剤(アクリル系エマルション、商品名「B500」、東亞合成社製):10重量部、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液:10重量部、及び1mol/lの水酸化カリウム水溶液:25重量部を加えた。これをディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)を用いて2000rpmで5分間攪拌し、水分散性組成物(「水分散性組成物(C)」と称する場合がある)を得た。
【0136】
(水分散性組成物の調製例4)
ブチルアクリレート:86重量部、2−エチルヘキシルアクリレート:10重量部、アクリル酸:3重量部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学社製):0.07重量部、連鎖移動剤(商品名「1-ドデカンチオール」、東京化成工業製):0.05重量部、界面活性剤(商品名「ラテムルE−118B」、花王社製):7.7重量部、及びイオン交換水:29重量部を加え、ホモジナイザー(プライミクス社製)を用いて、5分間、5000l/minで攪拌し強制乳化して、モノマープレエマルションを調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水:40重量部と重合開始剤(商品名「VA−057」和光純薬製):0.1重量部とを投入し、攪拌しながら反応容器を1時間程度かけて窒素置換した。次に、この容器を60℃に加温して、上記のモノマープレエマルションの全量を4.5時間かけて滴下して重合させた。滴下後さらに60℃で3時間攪拌を続けた。
次いで、これを室温まで冷却し、10%アンモニア水を添加して、pHを8に調整し、さらに、増粘剤(アクリル系エマルション、商品名「B500」、東亞合成社製):3.0gを添加して、水分散性組成物(「水分散性組成物(D)」と称する場合がある)を得た。
なお、水分散性組成物(D)を乾燥・硬化することにより得られる層は、粘着性を発揮する。よって、水分散性組成物は、水分散型の粘着剤組成物でもある。
【0137】
(水溶性組成物の調製例1)
水溶性染料(商品名「食用色素赤」、共立食品社製)を蒸留水に溶解させて2.5重量%染料水溶液を調製した。
この染料水溶液:100重量部に、増粘剤(アクリル系エマルション、商品名「B500」、東亞合成社製):2.5重量部、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液:2.5重量部を加えた。これをディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」、プライミクス社製)を用いて2000rpmで5分間攪拌し、水溶性組成物(「水分散性組成物(A)」と称する場合がある)を得た。
【0138】
(実施例1)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(A)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に水分散アンチモンドープ酸化スズの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は12であった。
【0139】
(実施例2)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(A)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(B)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に層状の赤色着色部分を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は12であった。
【0140】
(実施例3)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(B)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性ポリピロール(商品名「PPY−12」、丸菱油化工業社製、ポリピロールと分散剤と水からなる組成物)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性ポリピロールを塗布した側にポリピロールの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は2.3であった。
【0141】
(実施例4)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(C)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に水分散アンチモンドープ酸化スズの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は5.2であった。
【0142】
(実施例5)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(D)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に水分散アンチモンドープ酸化スズの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は7.0であった。
【0143】
(実施例6)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(E)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に水分散アンチモンドープ酸化スズの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は2.4であった。
【0144】
(実施例7)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(B)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(C)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側に水分散アンチモンドープ酸化スズの層状構造を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は2.3であった。
【0145】
(実施例8)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(F)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(D)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、水分散性組成物(D)(白色)を塗布すると、水分散性組成物を塗布した側の面では速やかに白色から透明へと変化した。また、得られたポリマー部材は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物(D)を塗布した側の表面では粘着性を有していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は5.2であった。
【0146】
(比較例1)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたポリマーシート(A)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水溶性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材はハイドロゲル化しており、またポリマー部材全体が赤色に着色されていた(図2参照)。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は12であった。
【0147】
(比較例2)
カバーフィルム(B)を剥がして露出させたアクリル系ポリマーシート(A)上に、ベーカー式アプリケーターを用いて、ギャップ厚さ100μmで、水分散性組成物(A)を塗布することにより、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を得た。
なお、得られたポリマー部材はハイドロゲル化していなかった。さらに、該ポリマー部材では、水分散性組成物の塗布層により構成されている部分で水分散アンチモンドープ酸化スズが均一に分布していた。
また、本実施例におけるポリマーシートと水との膨潤度は1.2であった。
【0148】
(評価)
実施例及び比較例について、下記の(評価1)〜(評価4)を行うことにより、評価した。
【0149】
(評価1)
実施例及び比較例について、下記の「表面抵抗率の測定方法」により、表面抵抗率を測定した。その測定結果を表1に示した。表1において、「水分散性組成物塗布側」は、ポリマー部材作製時に水分散性組成物を塗布した側と同じ側の面を意味する。また「ポリマーシート側」は、ポリマー部材作製時にポリマーシートやアクリル系ポリマーシートが存在していた側と同じ側の面であり、上記「水分散性組成物塗布側」と反対側の面を意味する。
【0150】
また、ポリマーシート(B)、ポリマーシート(C)、ポリマーシート(D)、ポリマーシート(E)、及びアクリル系ポリマーシート(A)についても、表面抵抗率を測定した。その測定結果を表2に示した。
【0151】
(表面抵抗率の測定方法)
ハイレスター抵抗測定機(三菱化学社製)を用いて、表面抵抗率を測定した。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
ポリマーシートは、もとから絶縁性であった(表2参照)。これに対して、表1で示すように、実施例はポリマーシート上に導電性物質を分散させた水分散性組成物を塗布することにより得ているので、実施例では水分散性組成物を塗布した側の表面抵抗率は低下しており、導電性の向上がみられた。さらに、実施例では、水を含みハイドロゲル化するので、もとから絶縁性であったポリマーシートが存在していた側(ポリマーシート側、水分散性組成物を塗布した側とは反対側)も、表面抵抗率が低下した。
【0155】
(評価2)
実施例及び比較例1について、光学顕微鏡(装置名「OPTIPHOT−2」株式会社ニコン製)により、部材の断面を観察した。
【0156】
実施例は、ハイドロゲル化しており、水分散性組成物を塗布した側(水分散性組成物塗布側)の表面及びその表面付近に、実施例に応じた物質の層状部分を有していることが確認できた。一方、比較例1は、ハイドロゲル化しており、また部材全体に比較例1に応じた物質が存在していることが確認できた。
【0157】
例えば、図1及び図2には、それぞれ、実施例2のポリマー部材の断面の光学顕微鏡写真及び比較例1のポリマー部材の断面の光学顕微鏡写真が示されているが、実施例2(図1)は表面にのみ赤い着色層がみられるが、比較例1(図2)は部材全体が赤く染色していることが確認できた。
【0158】
(評価3)
万能引張試験機(装置名「TG−1kN」ミネベア社製)を使用して、測定サンプルの「応力−歪み曲線」を測定し、引張物性を評価した。そして、その結果を図3〜8に示した。
測定サンプルは、実施例及び比較例のポリマー部材を幅5cmにカットすることにより得た。なお、測定サンプルでは、カバーフィルムを剥がし取り、除いている。
応力−歪み曲線は、チャック間長さ:20mm、引張速度:50mm/分、測定温度:23℃の条件で測定サンプルを引っ張り、荷重と伸びを測定することにより求めた。
【0159】
実施例のポリマー部材では、ハイドロゲル化することで、実施例で用いたそれぞれのポリマーシートと比較して、物性が軟らかい方向に変化していることが確認できた。
【0160】
(評価4)
万能引張試験機(装置名「TG−1kN」ミネベア社製)を使用して、測定サンプルの接着強さ(N/20mm)を測定し、接着性を評価した。そして、その結果を表3に示した。
実施例のポリマー部材の測定サンプルは、ポリマー部材(カバーフィルム(A)上のポリマー部材)を幅:20mm、長さ:60mmにカットすることにより得た。なお、該測定サンプルは、カバーフィルム(A)/ポリマー部材の構成を有している。
また、参考例として、ポリマーシート(C)のカバーフィルム(B)を剥がして、十分な量の蒸留水に室温(23℃)で1時間浸漬させたものを用いた。
測定サンプルを、被着体としてのスライドガラスに、カバーフィルム(A)と反対側の面が接する形態で貼り合わせてから、2kg荷重のゴムローラを一往復させて圧着した。
その後、測定サンプルを、上記万能引張試験機を用いて、ピール角度:180°、引張速度:50mm/minで引っ張り、その時の接着強さ(N/20mm)を求めた。
【0161】
【表3】

なお、表3において、参考例は、「ポリマーシート(C)のカバーフィルム(B)を剥がして、十分な量の蒸留水に室温(23℃)で1時間浸漬させたもの」を意味する。
【0162】
前記の評価1〜3より、本発明は、ハイドロゲルに導電性層を簡便に設けることができるので、例えば電気信号で稼働するアクアチューターなどへの応用が期待できる。また、表面のみが着色したハイドロゲルを作成できることから外部からは可視化が容易でありながらハイドロゲル内部は光信号が透過できるという機能を付与するいこともできる。さらにまた、粘着層を作製しながら同時にハイドロゲル化させることも可能である。
【0163】
このように、本発明によれば、ポリマーシートから、例えば導電性や絶縁性など、表面が所望の性質に処理されたポリマーゲルを簡便な方法で作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させて、ポリマーaと液体cとを含む基部及び物質bを含む表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層に覆われているポリマー部材を得ることを特徴とするポリマー部材の製造方法。
【請求項2】
前記のポリマー材がポリマーシートであって、該ポリマーシートの少なくとも片面に塗布することにより分散液を接触させる請求項1記載のポリマー部材の製造方法。
【請求項3】
ポリマーaが架橋されており、さらに基部がゲル状物である請求項1又は2記載のポリマー部材の製造方法。
【請求項4】
前記のゲル状物が、ゲル電解質である請求項3記載のポリマー部材の製造方法。
【請求項5】
液体cが、水である請求項1〜4の何れかの項に記載のポリマー部材の製造方法。
【請求項6】
物質bが、導電性物質である請求項1〜5の何れかの項に記載のポリマー部材の製造方法。
【請求項7】
下記に定義されるポリマーaの膨潤度が1.5以上である請求項1〜6の何れかの項に記載のポリマー部材の製造方法。
ポリマーaの膨潤度:ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させた後のポリマーaの重量と、ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させてから乾燥処理した後のポリマーaの重量との比
【請求項8】
ポリマーaからなるポリマー材に、ポリマーaが吸収可能な液体cにポリマーaに吸収されない物質bが分散している分散液を接触させることにより形成され、ポリマーaと液体cとを含む基部及び物質bを含む表面層を有し、基部表面の少なくとも一部が表面層に覆われていることを特徴とするポリマー部材。
【請求項9】
ポリマー材がポリマーシートであって、該ポリマーシートの少なくとも片面に塗布することにより分散液を接触させる請求項8記載のポリマー部材。
【請求項10】
ポリマーaが架橋されており、さらにゲル状物である基部を有する請求項8又は9記載のポリマー部材。
【請求項11】
前記のゲル状物が、ゲル電解質である請求項10記載のポリマー部材。
【請求項12】
液体cが水である請求項8〜11の何れかの項に記載のポリマー部材。
【請求項13】
物質bが、導電性物質である請求項8〜12の何れかの項に記載のポリマー部材。
【請求項14】
下記に定義されるポリマーaの膨潤度が1.5以上である請求項8〜13の何れかの項に記載のポリマー部材。
ポリマーaの膨潤度:ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させた後のポリマーaの重量と、ポリマーa0.1gを液体c100gに25℃で1時間浸漬させてから乾燥処理した後のポリマーaの重量との比

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213943(P2011−213943A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85306(P2010−85306)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】