説明

ポリ乳酸の合成装置及び方法

【課題】ポリ乳酸の合成方法及び装置において、乳酸を縮合した後、これを解重合してラクチドを得る。得られたラクチドを開環重合し、ポリ乳酸を合成する。
【解決手段】本実施例は、乳酸供給装置、濃縮装置、乳酸縮合装置、解重合装置、ラクチド精製装置、開環重合装置、解重合残渣分解装置、触媒分離装置、触媒除去装置を備える。解重合装置から排出された残渣は解重合残渣分解装置に供給され、水もしくは水を含んだ乳酸により、残渣に含まれる乳酸オリゴマーは加水分解される。その後、加水分解された解重合残渣は触媒分離装置に供給され、アルカリ土類金属水酸化物を添加されることにより解重合残渣に含まれる触媒成分が分解・析出される。触媒成分が分解・析出された解重合残渣は触媒除去装置に供給され、触媒成分が除去される。触媒成分が除去された残渣はアルカリ土類金属乳酸化物として再利用することができる。これにより、原料である乳酸の利用効率を高めると共に、触媒成分を含んだ廃棄物を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸の合成方法及び装置に係り、特に、乳酸を濃縮・縮合した後、これを解重合してラクチドを得る方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は乳酸を原料として作られる脂肪族ポリエステルである。ポリ乳酸を合成する方法の一つとして、乳酸を濃縮して含有水分を低減させた後に縮合させることで乳酸オリゴマーを生成させ、これにオクチル酸スズ等の触媒を添加して一度解重合させることにより環状二量体(ラクチド)を生成させ、必要に応じて晶析等による精製を行った後、ラクチドにオクチル酸スズ等の触媒を添加して開環重合する方法がある。
【0003】
濃縮工程ではモノマーである乳酸に不純物として10〜15%程度の水分(以下、自由水)が含まれている場合があり、モノマー間におけるエステル化処理を起こりやすくさせるためにこの自由水の除去が実施される。この濃縮工程では、120〜250℃での加熱及び、必要に応じて真空ポンプ等を用いた減圧により水分の除去が実施される。
【0004】
縮合工程は、モノマー間のエステル化反応によって生成される水を120〜250℃での加熱及び真空ポンプ等による減圧環境下、望ましくは10Torr以下での減圧により気化して除去する。ここでの減圧は濃縮工程におけるものとは異なり、エステル化反応を進展させるための必須条件である。この縮合工程によりモノマーから乳酸縮合物(以下、オリゴマーと呼称する)が生成する。
【0005】
縮合工程で生成したオリゴマーは解重合工程に送られ、120〜250℃での加熱及び真空ポンプ等による減圧環境下、望ましくは100Torr以下での減圧環境下においてオクチル酸スズ等の解重合触媒との接触により、ラクチド(乳酸環状二量体)が生成する。生成したラクチドは解重合工程での環境下では通常気体であることが多く、冷却・凝縮により回収された後、精製工程へ送られる。
【0006】
乳酸はキラリティーのある分子であるため、L−乳酸及びD−乳酸というエナンチオマーが存在する。そのため、環状二量体であるラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド及びL−乳酸とD−乳酸の環状二量体であるメソラクチドといった光学異性体がある。自然界に多く存在する乳酸はL−乳酸であるため、ポリ乳酸合成にはL−ラクチドが用いられることが多い。精製工程では溶媒抽出、再結晶等の手法でL−ラクチドとD−ラクチド及びメソラクチドを分離する。
【0007】
解重合工程においては、ラクチドを生成した後の乳酸オリゴマーが残渣として排出される。この残渣は、解重合反応の平衡反応である開環重合反応により分子量が増大し、それに伴い粘度が増大している場合が多い。この残渣中には触媒が含まれているが、酸化アンチモン等の固体触媒の場合、濾過等により除去することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平7−503490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先に述べた特許文献1では、オクチル酸スズ等の液体触媒の場合、濾過等では分離することができない。また、触媒を除去していない解重合残渣は重金属を含む産業廃棄物として処理する必要があり、環境負荷が大きくなる。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、解重合残渣中に存在する液状触媒を効率よく除去する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記目的を達成すべく、上記課題について鋭意検討した結果、下記のポリ乳酸製造方法及び装置を見出した。
【0012】
即ち本発明は、以下を包含する:
(1)乳酸を縮合する工程;
乳酸縮合物を液体触媒の存在下で解重合して乳酸環状二量体を生成する工程;
生成した乳酸環状二量体を気化し、分離する工程;
気化した乳酸環状二量体を凝縮し、精製する工程;及び
精製した乳酸環状二量体を開環重合する工程;
を含むポリ乳酸の合成方法であって、
解重合残渣を除去する工程;
除去された解重合残渣に含まれる乳酸縮合物を加水分解する工程;及び
加水分解後、解重合残渣にアルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を除去する工程;
を含むことを特徴とする前記ポリ乳酸の合成方法。
【0013】
(2)乳酸を縮合するための乳酸縮合装置;
乳酸縮合物を液体触媒の存在下で解重合して乳酸環状二量体を生成するための解重合装置;
生成した乳酸環状二量体を気化し、分離するための蒸留塔;
気化した乳酸環状二量体を凝縮するための凝縮器;
凝縮した乳酸環状二量体を精製するための精製装置;及び
精製した乳酸環状二量体を開環重合するための開環重合装置;
を含むポリ乳酸の合成装置であって、
解重合残渣を除去し、解重合残渣に含まれる乳酸縮合物を加水分解するための解重合残渣分解装置;及び
加水分解後、解重合残渣にアルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を分解及び析出させるための触媒分離装置;及び
析出した液体触媒を除去するための触媒除去装置;
を含むことを特徴とする前記ポリ乳酸の合成装置。
【0014】
(3)乳酸縮合物と液体触媒との混合物から液体触媒を除去する方法であって、
前記乳酸縮合物を加水分解する工程;
加水分解後、アルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を除去する工程;
を含む前記液体触媒の除去方法。
【0015】
図1にその概略図を示す。乳酸は乳酸供給装置1から供給され、乳酸濃縮装置3において水分を除去され濃縮乳酸となる。濃縮乳酸は濃縮乳酸バッファタンク5を経て乳酸縮合装置7に供給され、縮合反応によりオリゴマー(乳酸縮合物)となる。オリゴマーはオリゴマーバッファタンク9を経て解重合装置11に送られ、オクチル酸スズ等の触媒を添加された後、解重合反応により粗ラクチドとなり、蒸留塔12でオリゴマーと分離された後蒸留塔下段13で凝縮・回収される。回収された粗ラクチドは精製装置15に送られ、精製ラクチド(L−ラクチド)になる。精製ラクチドは開環重合装置17に供給され、開環重合反応によりポリ乳酸となる。
【0016】
解重合装置内のオリゴマーからは解重合反応によりラクチドが生成するが、同時に平衡反応である開環重合反応によりオリゴマーの分子量が増大する。分子量が増大したオリゴマーは粘度が増大し、触媒の分散性が低下するため解重合反応の反応速度が低下し、ラクチドの生成量が減少する。そのため、触媒を含む分子量が増大したオリゴマーを残渣として解重合装置から排出し、解重合残渣分解装置28を用いて水分を添加することにより分子量の増大したオリゴマーを加水分解し、乳酸とする。オリゴマーの加水分解にはスチーム、水分を含む乳酸等を用いることができる。オリゴマーを加水分解した残渣は触媒分離装置30に送られ、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を添加される。触媒分離装置では、例えば触媒がオクチル酸スズ、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムの場合、触媒はオクチル酸カルシウムと酸化スズに分解され、オクチル酸カルシウムと酸化スズは水に不溶性なため沈降する。また、残渣に含まれる乳酸は乳酸カルシウムとなる。沈降したオクチル酸カルシウム及び酸化スズは触媒除去装置31において濾過等により解重合残渣溶液から分離された後、廃棄される。一方、水及び乳酸カルシウムは蒸留等により分離された後、水は還流もしくは廃棄、乳酸カルシウムは肥料等として再利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、解重合残渣分解装置を用いて解重合装置から排出される残渣に含まれる乳酸オリゴマーを加水分解させた後、触媒分離装置を用いて触媒を分解・析出させ、触媒除去装置を用いて触媒の分解物を除去すると共に、解重合残渣に含まれる乳酸オリゴマーをアルカリ土類金属乳酸化物として回収することができるため、原料利用率が高く、廃棄物排出量の小さい、安定したポリ乳酸の製造を可能とするポリ乳酸合成に関する方法及びこれを用いたポリ乳酸合成に関する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のポリ乳酸合成に関する装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明のポリ乳酸合成に関する装置の一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明のポリ乳酸合成に関する装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び表により本発明の実施形態について説明する。このポリ乳酸合成に関する装置は反応経路上流側から、乳酸供給装置1、液送ポンプ2、乳酸濃縮装置3、液送ポンプ4、濃縮乳酸バッファタンク5、液送ポンプ6、乳酸縮合装置7、液送ポンプ8、オリゴマーバッファタンク9、液送ポンプ10、解重合装置11、蒸留塔12、蒸留塔下段13、液送ポンプ14、ラクチド精製装置15、液送ポンプ16、開環重合装置17の順番で配置され、解重合装置11の解重合残渣排出口から解重合残渣分解装置28、触媒分離装置30、触媒除去装置31の順番で配置されて成る。
【0020】
本発明のポリ乳酸製造装置は、乳酸濃縮装置において乳酸中に含まれる水分を蒸発させて濃縮乳酸とし、乳酸縮合装置において濃縮乳酸を縮合してオリゴマーを生成させ、得られたオリゴマーを解重合装置において減圧下で解重合させることによりラクチドを生成させた後精製したラクチドを開環重合させポリ乳酸を製造するものである。
【0021】
乳酸に含まれている水分は、可能な限り加熱して蒸発させることにより除去することが好ましい。
【0022】
乳酸縮合装置において、乳酸を減圧下で加熱することによりオリゴマーを生成させる。本発明においてオリゴマーとは、乳酸の2量体から分子量5万程度までの乳酸重合物を含む概念であるが、上記の乳酸縮合反応によって得られるオリゴマーの分子量は、平均分子量で通常150〜1万、好ましくは500〜5,000である。
【0023】
乳酸縮合反応は通常圧力100Torr以下、望ましくは10Torr以下、さらに好ましくは1Torr以下で、通常160〜220℃、好ましくは170〜200℃で実施する。加熱時間を可能な限り短くすることで、乳酸及びオリゴマーの熱分解を抑制することができる。
【0024】
乳酸縮合反応に関しては、必要に応じて、乳酸縮合反応のための触媒を添加しても良い。触媒としては従来公知のものを使用することができ、例えば、有機スズ系の触媒(例として乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α―ナフトエ酸スズ、β―ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズ等)及び粉末スズ等が挙げられる。
【0025】
解重合反応は液体触媒の存在下で行う。本発明において使用する液体触媒とは反応条件下にて液体である触媒を意味する。例えば、周期律表IVA族から選択される金属化合物からなる触媒を使用できる。
【0026】
IVA族に属するものとしては、例えば、有機スズ系の触媒(例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α―ナフトイエ酸スズ、β―ナフトイエ酸スズ、オクチル酸スズ等)等を挙げることができる。
【0027】
これらの中でも、オクチル酸スズを使用するのが好ましい。
【0028】
これら触媒の使用量は、オリゴマーに対して0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。
【0029】
解重合装置は、少なくとも反応器、オリゴマー供給口、ラクチド排出口及び残渣排出口を有する。また、通常温度計も設置される。反応器としては特に制限されず、縦型反応器、横型反応器又はタンク型反応器を用いることができる。攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。
【0030】
反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または攪拌翼の回転軸内部に熱媒を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用しても良い。
【0031】
解重合装置には減圧装置が設置されており、通常100Torr以下、好ましくは10Torr以下の減圧環境下、通常120〜250℃、好ましくは120〜200℃で加熱することによりオリゴマーの解重合反応を実施する。当該解重合反応によりラクチドが気体として生成する。本発明においてラクチドとは、乳酸2分子から水2分子を脱水反応させることにより生じる環状エステルを示す。
【0032】
解重合装置で生成したラクチドを含む蒸気は解重合装置の外に排出され、蒸留塔に導入される。冷媒の温度を適切に制御することによりラクチド蒸気は通過させ、オリゴマーは凝縮・液化された後還流される。ラクチドと分離させたオリゴマーを含む液体は解重合反応によってオリゴマーの分子量が小さくなっている場合がある。この場合の分子量は重量平均分子量で好ましくは500未満、特に好ましくは1000未満である。ラクチドの収率を向上させるためには再度縮合させて分子量を向上させることが望ましいので、低分子量オリゴマーを含む液体は乳酸縮合装置で再度縮合されることが望ましい。オリゴマーを戻す装置としては乳酸濃縮装置、濃縮乳酸バッファタンク、乳酸縮合装置、オリゴマーバッファタンク、解重合装置入口等がある。また、オリゴマーを分子量に応じて分離させた後に還流させるために、蒸留塔を多段化しても良い。この場合、低分子量オリゴマーは乳酸濃縮装置、濃縮乳酸バッファタンク、乳酸縮合装置の少なくとも一つに、高分子量オリゴマーは、乳酸縮合装置、乳酸オリゴマーバッファタンク、解重合装置入口の少なくとも一つに戻すことが望ましい。ここを通過したラクチドは蒸留塔下段に移送される。
【0033】
蒸留塔については、金属管を隔てて蒸気と冷媒が間接的に接触する表面凝縮器が望ましい。これはラクチド及びオリゴマーが水を含む冷媒と直接接触すると分解して酸を生成するためである。これは酸触媒として開環重合反応の進捗を阻害する上、蒸留塔等の材料腐食を引き起こす可能性がある。冷媒としてラクチド及びオリゴマーに対し不活性なものを用いる場合は上記の限りではないが、その場合、冷媒を十分乾燥させ湿分を低減する必要がある。
【0034】
蒸留塔で液化されたオリゴマーと分離されたラクチドを含む蒸気は蒸留塔下段に供給される。ここでラクチドは冷却・凝縮されて回収された後、ラクチド精製装置に移送される。
【0035】
蒸留塔下段については、金属管を隔てて蒸気と冷媒が間接的に接触する表面凝縮器が望ましい。これはラクチドが水を含む冷媒と直接接触すると分解して酸を生成するためである。これは酸触媒として開環重合反応の進捗を阻害する上、蒸留塔下段等の材料腐食を引き起こす可能性がある。冷媒としてラクチドに対し不活性なものを用いる場合は上記の限りではないが、その場合、冷媒を十分乾燥させ湿分を低減する必要がある。
【0036】
ラクチド精製装置では目的とするラクチド、主にL−ラクチドとその他不純物を分離・精製する。精製の方法としては特に制限されず、溶媒抽出又は溶融結晶化等を用いることができる。
【0037】
ラクチド精製装置は少なくとも反応器、粗ラクチド供給口、精製ラクチド排出口及び廃液排出口を有する。また、通常温度計も設置される。
【0038】
ラクチド精製装置から排出されたラクチドは開環重合装置に移送される。
【0039】
開環重合装置では不活性ガス雰囲気下、通常120〜250℃、好ましくは120〜200℃で加熱することによりラクチドの開環重合反応を実施する。当該開環重合反応によりポリ乳酸が生成する。
【0040】
開環重合装置は、少なくとも反応器、ラクチド供給口及びポリ乳酸排出口を有する。また、通常温度計も設置される。反応器としては特に制限されず、縦型反応器、横型反応器又はタンク型反応器を用いることができ、2つ以上の反応器を直列されていても構わない。攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。
【0041】
反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または反応器内部の伝熱管(コイル)を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用しても良い。
【0042】
開環重合反応の触媒としては、必要に応じて解重合反応のための触媒と同じものを用いても良い。触媒としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、周期律表IA族、IIIA族、IVA族、IIB族及びVA族からなる群から選択される金属又は金属化合物からなる触媒を使用できる。
【0043】
IA族に属するものとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属と弱酸の塩(例えば、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、オクチル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、乳酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、オクチル酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等)等を挙げることができる。
【0044】
IIIA族に属するものとしては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミナ、塩化アルミニウム等を挙げることができる。
【0045】
IVA族に属するものとしては、例えば、有機スズ系の触媒(例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α―ナフトイエ酸スズ、β―ナフトイエ酸スズ、オクチル酸スズ等)の他、粉末スズ、酸化スズ、ハロゲン化スズ等を挙げることができる。
【0046】
IIB族に属するものとしては、例えば、亜鉛粉末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物を挙げることができる。
【0047】
IVB族に属するものとしては、例えば、テトラプロピルチタネート等のチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物等を挙げることができる。
【0048】
これらの中でも、オクチル酸スズ等のスズ系化合物又は三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物を使用するのが好ましい。
【0049】
これら触媒の使用量は、ラクチドに対して1〜2000ppm、好ましくは5〜1500ppm、より好ましくは10〜1000ppm程度である。
【0050】
開環重合反応においては、分子量の調整等を目的として、必要に応じて開環重合反応のための重合開始剤を添加しても良い。重合開始剤としては1−ドデカノール等のアルコール類のように水酸基を有する物質を用いることができる。
【0051】
解重合装置から排出された解重合残渣は、解重合残渣分解装置へ移送される。
【0052】
解重合残渣分解装置では不活性ガス雰囲気下、通常100〜250℃、好ましくは120〜200℃で加熱することにより解重合残渣に含まれる乳酸オリゴマーの加水分解反応を実施する。当該加水分解反応により乳酸もしくは低分子量オリゴマーが生成する。
【0053】
解重合残渣分解装置は、少なくとも反応器、解重合残渣供給口、解重合残渣排出口を有する。また、通常温度計も設置される。反応器としては特に制限されず、縦型反応器、横型反応器又はタンク型反応器を用いることができる。攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。
【0054】
反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または攪拌翼の回転軸内部に熱媒を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用しても良い。
【0055】
解重合残渣分解装置において、解重合残渣の混合性を向上させるためには解重合残渣の溶融状態を維持することが望ましいが、そのためには解重合残渣の温度を130〜200℃程度に保つ必要がある。一方、乳酸の大気圧での沸点は120℃程度であるため、反応容器としてオートクレーブ等の耐圧容器を用い、加圧条件化で加水分解反応させることにより、解重合残渣の溶融状態を保ったまま分解を進行させることができる。もしくは、解重合残渣を固化させ、粉砕して粉末にした後、加水分解させることもできる。
【0056】
解重合残渣分解装置から排出された分解された解重合残渣は触媒分離装置に移送される。
【0057】
触媒分離装置では不活性ガス雰囲気下、通常0〜250℃、好ましくは5〜130℃でアルカリ土類金属水酸化物を加えることにより解重合残渣に含まれる触媒の分解反応を実施する。当該分解反応により触媒成分に含まれる金属の酸化物が生成する。
【0058】
触媒分離装置は、少なくとも反応器、解重合残渣供給口、解重合残渣排出口を有する。また、通常温度計も設置される。そして、アルカリ土類金属供給口を備える。反応器としては特に制限されず、縦型反応器、横型反応器又はタンク型反応器を用いることができる。攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。
【0059】
反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または攪拌翼の回転軸内部に熱媒を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用しても良い。
【0060】
触媒分離装置で用いられるアルカリ土類金属水酸化物は、触媒成分を分離できるものであれば何を用いても良いが、特に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが望ましい。
【0061】
触媒分離装置から排出された解重合残渣は触媒除去装置へ移送される。
【0062】
触媒除去装置は、少なくとも除去装置、解重合残渣供給口、解重合残渣排出口を有する。また、通常温度計も設置される。除去装置としては特に制限されず、濾過分離装置、沈降分離装置、遠心分離装置等を用いることができる。
【0063】
触媒除去装置から排出された解重合残渣は、水分分離装置へ移送され、水分を除去される。除去された水分は解重合残渣分解装置等に還流されるが、廃棄しても良い。水分を除去された解重合残渣はアルカリ土類金属の乳酸塩だが、肥料等として利用することができる。また、触媒除去装置で除去された触媒は廃棄される。
【0064】
本発明の一実施形態では図2に示す装置構成のポリ乳酸装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行う。
【0065】
乳酸濃縮装置3では、加熱により乳酸に含まれる水分を蒸発させる。加熱は窒素ガス流通下、120〜150℃で行う。
【0066】
乳酸濃縮反応では水分、乳酸が気体として発生する。これらの気体は還流器18に入り、乳酸が気体から除去され、乳酸濃縮装置3に還流される。
【0067】
乳酸濃縮装置3で製造された濃縮乳酸は濃縮乳酸バッファタンク5を経て乳酸縮合装置7へ送られる。
【0068】
乳酸縮合装置7では乳酸の縮合反応を進め、これに伴い発生する水分を蒸発させる。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で行う。乳酸縮合反応では水分、乳酸、低分子量のオリゴマー及びその分解で発生するラクチドが気体として発生する。これらは乳酸縮合装置7から減圧装置23に向かって移動する。これらの気体は還流器21に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、乳酸縮合装置7に還流される。
【0069】
乳酸縮合装置7で生成したオリゴマーは解重合装置11へ送られる。
【0070】
解重合装置11ではオリゴマーの解重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、乳酸オリゴマーを解重合触媒であるオクチル酸スズに接触させて行う。この反応により生成した気体ラクチドは還流冷却器12に送られる。
【0071】
還流冷却器12では気体ラクチドを冷却することでラクチドに含まれるオリゴマー等の不純物を液化し、気体であるラクチドはラクチド凝縮器13に送られる。ラクチドと分離されたオリゴマーを含む液体は解重合反応によってオリゴマーの分子量が小さくなっているものが多い。ラクチドの収率を向上させるためには分子量の小さいオリゴマーを再度縮合させて分子量を向上させることが望ましいので、ラクチドと分離された低分子量オリゴマーを含む液体は乳酸縮合装置7に還流される。
【0072】
気体ラクチドは蒸留塔下段13において冷却・凝縮された後ラクチド精製装置15に送られる。ラクチドと分離された水蒸気を多く含む気体は凝縮器24に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、蒸留塔下段13に還流される。
【0073】
凝縮器24において凝縮されなかった蒸気は不純物冷却器25に入り、ここで凝縮・液化される。液化された不純物は通常廃棄される場合が多い。不純物冷却器25で凝縮されなかったガスは減圧装置26を経て、系外に放出される。
【0074】
ラクチド精製装置15では目的とするラクチド、主にL−ラクチドとその他不純物を分離・精製する。精製の方法としては特に制限されず、溶媒抽出又は溶融結晶化等を用いることができる。例えば、溶融結晶化法では、溶融させた粗ラクチドを少なくともラクチドの凝固点まで冷却し、溶融物を部分的に結晶化させて不純物の少ない固体結晶相と不純物の多い液相を形成し、結晶相と液相を分離させた後、結晶相を発汗させて不純物を溶融・除去する。
【0075】
ラクチド精製装置は少なくとも反応器、粗ラクチド供給口、精製ラクチド排出口及び廃液排出口を有する。また、通常温度計も設置される。
【0076】
ラクチド精製装置15から排出されたラクチドは開環重合装置17に移送される。
【0077】
開環重合装置17ではラクチドの開環重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、ラクチドを三酸化アンチモンやオクチル酸スズ等の開環重合触媒及び1−ドデカノール等の重合開始剤に接触させて行う。重合開始剤の濃度が700ppmの場合、ポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0078】
解重合残渣分解装置28では解重合装置11から排出される解重合残渣を加水分解させる。加水分解は加圧条件下、120〜250℃の温度で、解重合残渣にスチームを加えて行う。この反応により乳酸もしくは低分子量オリゴマーに分解した解重合残渣はバッファタンク29を経て触媒分離装置30に送られる。
【0079】
触媒分離装置30では解重合残渣分解装置28から排出される解重合残渣に含まれる触媒(オクチル酸スズ)を分解・分離させる。触媒の分解は不活性ガス雰囲気下、0〜200℃の温度で、解重合残渣に水酸化カルシウムを加えて行う。この反応により触媒であるオクチル酸スズはオクチル酸カルシウム及び酸化スズに分解され、これらは水及び乳酸に不溶性であるため析出する。触媒成分を分解した解重合残渣は触媒除去装置31に送られる。
【0080】
触媒除去装置31では触媒分離装置30から排出される解重分解された触媒成分(オクチル酸カルシウム及び酸化スズ)を除去させる。触媒成分の除去は濾過装置を用いて行う。触媒成分を除去した解重合残渣は水分分離装置32に送られ、水分を分離された後、乳酸カルシウムとして二次利用もしくは廃棄される。
【0081】
本発明の別の実施形態では図3に示す装置構成のポリ乳酸装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行う。
【0082】
乳酸濃縮装置3では、加熱により乳酸に含まれる水分を蒸発させる。加熱は窒素ガス流通下、120〜150℃で行う。
【0083】
乳酸濃縮反応では水分、乳酸が気体として発生する。これらの気体は還流器18に入り、乳酸が気体から除去され、乳酸濃縮装置3に還流される。
【0084】
乳酸濃縮装置3で製造された濃縮乳酸は濃縮乳酸バッファタンク5を経て乳酸縮合装置7へ送られる。
【0085】
乳酸縮合装置7では乳酸の縮合反応を進め、これに伴い発生する水分を蒸発させる。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で行う。乳酸縮合反応では水分、乳酸、低分子量のオリゴマー及びその分解で発生するラクチドが気体として発生する。これらは乳酸縮合装置7から減圧装置23に向かって移動する。これらの気体は還流器21に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、乳酸縮合装置7に還流される。
【0086】
乳酸縮合装置7で生成したオリゴマーは解重合装置11へ送られる。
【0087】
解重合装置11ではオリゴマーの解重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、乳酸オリゴマーを解重合触媒であるオクチル酸スズに接触させて行う。この反応により生成した気体ラクチドは還流冷却器12に送られる。
【0088】
還流冷却器12では気体ラクチドを冷却することでラクチドに含まれるオリゴマー等の不純物を液化し、気体であるラクチドはラクチド凝縮器13に送られる。ラクチドと分離されたオリゴマーを含む液体は解重合反応によってオリゴマーの分子量が小さくなっているものが多い。ラクチドの収率を向上させるためには分子量の小さいオリゴマーを再度縮合させて分子量を向上させることが望ましいので、ラクチドと分離された低分子量オリゴマーを含む液体は乳酸縮合装置7に還流される。
【0089】
気体ラクチドは蒸留塔下段13において冷却・凝縮された後ラクチド精製装置15に送られる。ラクチドと分離された水蒸気を多く含む気体は凝縮器24に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、蒸留塔下段13に還流される。
【0090】
凝縮器24において凝縮されなかった蒸気は不純物冷却器25に入り、ここで凝縮・液化される。液化された不純物は通常廃棄される場合が多い。不純物冷却器25で凝縮されなかったガスは減圧装置26を経て、系外に放出される。
【0091】
ラクチド精製装置15では目的とするラクチド、主にL−ラクチドとその他不純物を分離・精製する。精製の方法としては特に制限されず、溶媒抽出又は溶融結晶化等を用いることができる。例えば、溶融結晶化法では、溶融させた粗ラクチドを少なくともラクチドの凝固点まで冷却し、溶融物を部分的に結晶化させて不純物の少ない固体結晶相と不純物の多い液相を形成し、結晶相と液相を分離させた後、結晶相を発汗させて不純物を溶融・除去する。
【0092】
ラクチド精製装置は少なくとも反応器、粗ラクチド供給口、精製ラクチド排出口及び廃液排出口を有する。また、通常温度計も設置される。
【0093】
ラクチド精製装置15から排出されたラクチドは開環重合装置17に移送される。
【0094】
開環重合装置17ではラクチドの開環重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、ラクチドを三酸化アンチモンやオクチル酸スズ等の開環重合触媒及び1−ドデカノール等の重合開始剤に接触させて行う。重合開始剤の濃度が700ppmの場合、ポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0095】
解重合残渣分解装置28では解重合装置11から排出される解重合残渣を加水分解させる。加水分解は加圧条件下、120〜250℃の温度で、解重合残渣に50%乳酸を加えて行う。この反応により乳酸もしくは低分子量オリゴマーに分解した解重合残渣はバッファタンク29を経て触媒分離装置30に送られる。
【0096】
触媒分離装置30では解重合残渣分解装置28から排出される解重合残渣に含まれる触媒(オクチル酸スズ)を分解・分離させる。触媒の分解は不活性ガス雰囲気下、0〜200℃の温度で、解重合残渣に水酸化カルシウムを加えて行う。この反応により触媒であるオクチル酸スズはオクチル酸カルシウム及び酸化スズに分解され、これらは水及び乳酸に不溶性であるため析出する。触媒成分を分解した解重合残渣は触媒除去装置31に送られる。
【0097】
触媒除去装置31では触媒分離装置30から排出される解重分解された触媒成分(オクチル酸カルシウム及び酸化スズ)を除去させる。触媒成分の除去は濾過装置を用いて行う。触媒成分を除去した解重合残渣は水分分離装置32に送られ、水分を分離された後、乳酸カルシウムとして二次利用もしくは廃棄される。
【0098】
本発明の更なる実施形態では図3に示す装置構成のポリ乳酸装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行う。
【0099】
乳酸濃縮装置3では、加熱により乳酸に含まれる水分を蒸発させる。加熱は窒素ガス流通下、120〜150℃で行う。
【0100】
乳酸濃縮反応では水分、乳酸が気体として発生する。これらの気体は還流器18に入り、乳酸が気体から除去され、乳酸濃縮装置3に還流される。
【0101】
乳酸濃縮装置3で製造された濃縮乳酸は濃縮乳酸バッファタンク5を経て乳酸縮合装置7へ送られる。
【0102】
乳酸縮合装置7では乳酸の縮合反応を進め、これに伴い発生する水分を蒸発させる。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で行う。乳酸縮合反応では水分、乳酸、低分子量のオリゴマー及びその分解で発生するラクチドが気体として発生する。これらは乳酸縮合装置7から減圧装置23に向かって移動する。これらの気体は還流器21に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、乳酸縮合装置7に還流される。
【0103】
乳酸縮合装置7で生成したオリゴマーは解重合装置11へ送られる。
【0104】
解重合装置11ではオリゴマーの解重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、乳酸オリゴマーを解重合触媒であるオクチル酸スズに接触させて行う。この反応により生成した気体ラクチドは還流冷却器12に送られる。
【0105】
還流冷却器12では気体ラクチドを冷却することでラクチドに含まれるオリゴマー等の不純物を液化し、気体であるラクチドはラクチド凝縮器13に送られる。ラクチドと分離されたオリゴマーを含む液体は解重合反応によってオリゴマーの分子量が小さくなっているものが多い。ラクチドの収率を向上させるためには分子量の小さいオリゴマーを再度縮合させて分子量を向上させることが望ましいので、ラクチドと分離された低分子量オリゴマーを含む液体は乳酸縮合装置7に還流される。
【0106】
気体ラクチドは蒸留塔下段13において冷却・凝縮された後ラクチド精製装置15に送られる。ラクチドと分離された水蒸気を多く含む気体は凝縮器24に入り、乳酸、低分子のオリゴマー、ラクチドが気体から除去され、蒸留塔下段13に還流される。
【0107】
凝縮器24において凝縮されなかった蒸気は不純物冷却器25に入り、ここで凝縮・液化される。液化された不純物は通常廃棄される場合が多い。不純物冷却器25で凝縮されなかったガスは減圧装置26を経て、系外に放出される。
【0108】
ラクチド精製装置15では目的とするラクチド、主にL−ラクチドとその他不純物を分離・精製する。精製の方法としては特に制限されず、溶媒抽出又は溶融結晶化等を用いることができる。例えば、溶融結晶化法では、溶融させた粗ラクチドを少なくともラクチドの凝固点まで冷却し、溶融物を部分的に結晶化させて不純物の少ない固体結晶相と不純物の多い液相を形成し、結晶相と液相を分離させた後、結晶相を発汗させて不純物を溶融・除去する。
【0109】
ラクチド精製装置は少なくとも反応器、粗ラクチド供給口、精製ラクチド排出口及び廃液排出口を有する。また、通常温度計も設置される。
【0110】
ラクチド精製装置15から排出されたラクチドは開環重合装置17に移送される。
【0111】
開環重合装置17ではラクチドの開環重合反応を進める。反応は10torr以下まで減圧し、120〜250℃の温度で、ラクチドを三酸化アンチモンやオクチル酸スズ等の開環重合触媒及び1−ドデカノール等の重合開始剤に接触させて行う。重合開始剤の濃度が700ppmの場合、ポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0112】
解重合残渣分解装置28では解重合装置11から排出される解重合残渣を加水分解させる。加水分解は不活性ガス雰囲気下、100〜120℃の温度で、粉砕し粉末とした解重合残渣に50%乳酸を加えて行う。この反応により乳酸もしくは低分子量オリゴマーに分解した解重合残渣はバッファタンク29を経て触媒分離装置30に送られる。
【0113】
触媒分離装置30では解重合残渣分解装置28から排出される解重合残渣に含まれる触媒(オクチル酸スズ)を分解・分離させる。触媒の分解は不活性ガス雰囲気下、0〜200℃の温度で、解重合残渣に水酸化カルシウムを加えて行う。この反応により触媒であるオクチル酸スズはオクチル酸カルシウム及び酸化スズに分解され、これらは水及び乳酸に不溶性であるため析出する。触媒成分を分解した解重合残渣は触媒除去装置31に送られる。
【0114】
触媒除去装置31では触媒分離装置30から排出される解重分解された触媒成分(オクチル酸カルシウム及び酸化スズ)を除去させる。触媒成分の除去は濾過装置を用いて行う。触媒成分を除去した解重合残渣は水分分離装置32に送られ、水分を分離された後、乳酸カルシウムとして二次利用もしくは廃棄される。
【実施例】
【0115】
以下本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0116】
〔実施例1〕
図2に示すポリ乳酸製造装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行った。原料として、数平均分子量630の乳酸オリゴマーを解重合装置11に投入した。解重合装置11での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。解重合装置11における乳酸オリゴマーの滞留時間を5時間、液膜厚さ(液深)を55cm、触媒(2−エチルヘキサン酸スズ)濃度を0.7kg/mとした。
【0117】
ここでオリゴマーの滞留時間は溶融オリゴマーの供給流量と解重合装置から排出される蒸気の凝縮物流量が等しく、液膜厚さが安定化した時の溶融オリゴマー供給流量/オリゴマー解重合装置11における溶融オリゴマー滞留量で定義した。
【0118】
開環重合装置17での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。開環重合における重合開始剤の濃度は、700ppmとした。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0119】
解重合残渣分解装置28での反応は、加圧条件下、200℃の温度で行った。解重合残渣に対するスチームの投入量は重量比で約15倍とした。
【0120】
触媒分離装置30での反応は、不活性ガス雰囲気下、20℃の温度で行った。解重合残渣に対する水酸化カルシウムの投入量は約55%とした。
【0121】
触媒除去装置31では、濾過装置を用いて触媒成分であるオクチル酸カルシウム及び酸化スズの除去を行った。触媒除去装置出口での解重合残渣に含まれるスズ濃度は1ppm以下であった。
【0122】
以上から、従来廃棄していた解重合装置からの解重合残渣から触媒成分を効率よく分離・除去することにより廃棄物の低減が可能となる。
【0123】
〔実施例2〕
図3に示すポリ乳酸製造装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行った。原料として、数平均分子量630の乳酸オリゴマーを解重合装置11に投入した。解重合装置11での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。解重合装置11における乳酸オリゴマーの滞留時間を5時間、液膜厚さ(液深)を55cm、触媒(2−エチルヘキサン酸スズ)濃度を0.7kg/mとした。
【0124】
ここでオリゴマーの滞留時間は溶融オリゴマーの供給流量と解重合装置から排出される蒸気の凝縮物流量が等しく、液膜厚さが安定化した時の溶融オリゴマー供給流量/オリゴマー解重合装置11における溶融オリゴマー滞留量で定義した。
【0125】
開環重合装置17での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。開環重合における重合開始剤の濃度は、700ppmとした。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0126】
解重合残渣分解装置28での反応は、加圧条件下、200℃の温度で行った。解重合残渣に対する50%乳酸の投入量は重量比で約10倍とした。
【0127】
触媒分離装置30での反応は、不活性ガス雰囲気下、20℃の温度で行った。解重合残渣に対する水酸化カルシウムの投入量は約100%とした。
【0128】
触媒除去装置31では、沈殿槽を用いて触媒成分であるオクチル酸カルシウム及び酸化スズの除去を行った。触媒除去装置出口での解重合残渣に含まれるスズ濃度は1ppm以下であった。
【0129】
以上から、従来廃棄していた解重合装置からの解重合残渣から触媒成分を効率よく分離・除去することにより廃棄物の低減が可能となる。
【0130】
〔実施例3〕
図3に示すポリ乳酸製造装置を用いて、ポリ乳酸の製造を行った。原料として、数平均分子量630の乳酸オリゴマーを解重合装置11に投入した。解重合装置11での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。解重合装置11における乳酸オリゴマーの滞留時間を5時間、液膜厚さ(液深)を55cm、触媒(2−エチルヘキサン酸スズ)濃度を0.7kg/mとした。
【0131】
ここでオリゴマーの滞留時間は溶融オリゴマーの供給流量と解重合装置から排出される蒸気の凝縮物流量が等しく、液膜厚さが安定化した時の溶融オリゴマー供給流量/オリゴマー解重合装置11における溶融オリゴマー滞留量で定義した。
【0132】
開環重合装置17での反応は、10torr以下まで減圧し、200℃の温度で行った。開環重合における重合開始剤の濃度は、700ppmとした。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は200000程度であった。
【0133】
解重合残渣分解装置28での反応は、加圧条件下、200℃の温度で行った。解重合残渣に対する50%乳酸の投入量は重量比で約10倍とした。
【0134】
触媒分離装置30での反応は、不活性ガス雰囲気下、20℃の温度で行った。解重合残渣に対する水酸化カルシウムの投入量は約100%とした。
【0135】
触媒除去装置31では、濾過装置を用いて触媒成分であるオクチル酸カルシウム及び酸化スズの除去を行った。触媒除去装置出口での解重合残渣に含まれるスズ濃度は1ppm以下であった。
【0136】
以上から、従来廃棄していた解重合装置からの解重合残渣から触媒成分を効率よく分離・除去することにより廃棄物の低減が可能となる。
【0137】
〔比較例〕
実施例1および2と同じ数平均分子量630の乳酸オリゴマーを用いて、解重合残渣の分解及び触媒の分離・除去を行わない従来の装置で重合を行った。その結果、解重合装置から排出された解重合残渣について、スズ含有率は5%であった。
【符号の説明】
【0138】
1 乳酸供給装置
2 液送ポンプ
3 乳酸濃縮装置
4 液送ポンプ
5 濃縮乳酸バッファタンク
6 液送ポンプ
7 乳酸縮合装置
8 液送ポンプ
9 オリゴマーバッファタンク
10 液送ポンプ
11 解重合装置
12 蒸留塔
13 蒸留塔下段
14 液送ポンプ
15 ラクチド精製装置
16 液送ポンプ
17 開環重合装置
18 還流器
19 冷却器
20 減圧装置
21 還流器
22 冷却器
23 減圧装置
24 凝縮器
25 不純物冷却器
26 減圧装置
27 解重合残渣バッファタンク
28 解重合残渣分解装置
29 バッファタンク
30 触媒分離装置
31 触媒除去装置
32 水分分離装置
33 還流器
34 冷却器
35 水供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を縮合する工程;
乳酸縮合物を液体触媒の存在下で解重合して乳酸環状二量体を生成する工程;
生成した乳酸環状二量体を気化し、分離する工程;
気化した乳酸環状二量体を凝縮し、精製する工程;及び
精製した乳酸環状二量体を開環重合する工程;
を含むポリ乳酸の合成方法であって、
解重合残渣を除去する工程;
除去された解重合残渣に含まれる乳酸縮合物を加水分解する工程;及び
加水分解後、解重合残渣にアルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を除去する工程;
を含むことを特徴とする前記ポリ乳酸の合成方法。
【請求項2】
請求項1において、解重合残渣に水蒸気を加えることで加水分解することを特徴とする合成方法。
【請求項3】
請求項1において、解重合残渣に水を含む乳酸を加えることで加水分解することを特徴とする合成方法。
【請求項4】
請求項1において、解重合残渣の加水分解を加圧条件下で行うことを特徴とする合成方法。
【請求項5】
請求項1において、乳酸環状二量体と分離された解重合残渣を乳酸縮合工程へ還流させることを特徴とする合成方法。
【請求項6】
請求項1において、加水分解された解重合残渣に水酸化カルシウムを添加し、解重合残渣に含まれる触媒を分解及び析出させることを特徴とする合成方法。
【請求項7】
請求項1において、加水分解された解重合残渣に水酸化マグネシウムを添加し、解重合残渣に含まれる触媒を分解及び析出させることを特徴とする合成方法。
【請求項8】
乳酸を縮合するための乳酸縮合装置;
乳酸縮合物を液体触媒の存在下で解重合して乳酸環状二量体を生成するための解重合装置;
生成した乳酸環状二量体を気化し、分離するための蒸留塔;
気化した乳酸環状二量体を凝縮するための凝縮器;
凝縮した乳酸環状二量体を精製するための精製装置;及び
精製した乳酸環状二量体を開環重合するための開環重合装置;
を含むポリ乳酸の合成装置であって、
解重合残渣を除去し、解重合残渣に含まれる乳酸縮合物を加水分解するための解重合残渣分解装置;
加水分解後、解重合残渣にアルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を分解及び析出させるための触媒分離装置;及び
析出した液体触媒を除去するための触媒除去装置;
を含むことを特徴とする前記ポリ乳酸の合成装置。
【請求項9】
請求項8において、解重合残渣に水蒸気を加えることで加水分解するためのスチーム装置を含むことを特徴とする合成装置。
【請求項10】
請求項8において、解重合残渣に水を含む乳酸を加えることで加水分解するための乳酸及び水供給装置を含むことを特徴とする合成装置。
【請求項11】
請求項8において、解重合残渣の加水分解を加圧条件下で行うための加圧装置を含むことを特徴とする合成装置。
【請求項12】
請求項8において、乳酸環状二量体と分離された解重合残渣を乳酸縮合工程へ還流させるための液送ポンプを含むことを特徴とする合成装置。
【請求項13】
乳酸縮合物と液体触媒との混合物から液体触媒を除去する方法であって、
乳酸縮合物を加水分解する工程;
加水分解後、アルカリ土類金属水酸化物を加えて液体触媒を除去する工程;
を含む前記液体触媒の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236317(P2011−236317A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108339(P2010−108339)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】