説明

ポリ乳酸系不織布

【課題】 繊維化のための操業性が良好で、耐熱性に優れ、柔軟性に優れ、かつ機械的強度が保持しうるポリ乳酸系不織布を提供する。
【解決手段】 L−乳酸またはD−乳酸が95モル%以上からなるポリ乳酸系重合体によって構成される繊維を構成繊維とする不織布であって、該ポリ乳酸系重合体中には、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルと、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とするポリブチレンサクシネート重合体とを含み、ポリ乳酸系重合体100質量部に対してポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを0.5〜5.0質量部含み、該ポリブチレンサクシネート重合体を3〜10質量%含み、構成繊維同士が熱接着することにより一体化しているポリ乳酸系不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然環境保護の見地から、自然界で分解する生分解性重合体を用いた製品が求められている。そのような中、従来から生分解性熱可塑性重合体を用いてなる繊維の開発が盛んに行われている。この代表的な生分解性熱可塑性重合体がポリ乳酸系重合体である。
【0003】
ポリ乳酸系重合体は、トウモロコシに代表される農作物を原料とし、近年、問題視されている地球温暖化の原因の一つされるCO発生の抑制効果が高い。また、従来使用されてきたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される化石燃料を原料とする重合体とは異なり、再生可能資源を原料としているため、原料の枯渇の心配が少なく、今後、ますます、その需要は伸びていくものと予想されている。
【0004】
しかしながら、このポリ乳酸系重合体を用いた繊維や不織布は硬く、柔軟性に劣るため、衛生材料やその他の柔軟性を必要とする用途に用い難いものであった。
【0005】
本件出願人は、このような硬いという性質を持つポリ乳酸系重合体に柔軟性を付与するために、ポリ乳酸系重合体に、特定の脂肪酸エステルを特定量含有させ、この重合体を用いて溶融紡糸することにより、柔軟性を有する繊維を得る方法を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特願2011−144292号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件出願人が提案する特許文献1記載の技術により、操業性が良好で、耐熱性に優れ、さらには柔軟性が向上する繊維を得ることができた。しかし、この繊維を堆積してなる不織布を得る際に、構成繊維の一部を溶融させて熱接着する方法により不織布化した場合、得られる不織布の機械的強度が、やや低下する傾向にあることが分かった。そこで、本発明者は、特許文献1記載の発明を利用して、構成繊維の一部を溶融させて熱接着する方法により不織布化する場合であっても、機械的強度を保持できる不織布を提供しようと検討した。
【0008】
本発明の課題は、繊維化のための操業性が良好で、耐熱性に優れ、柔軟性に優れたポリ乳酸繊維によって構成される不織布であって、構成繊維同士が熱接着により一体化した不織布であり、機械的強度が保持しうるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、L−乳酸またはD−乳酸が95モル%以上からなるポリ乳酸系重合体によって構成される繊維を構成繊維とする不織布であって、該ポリ乳酸系重合体中には、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルと、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とするポリブチレンサクシネート重合体とを含み、ポリ乳酸系重合体100質量部に対してポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを0.5〜5.0質量部含み、該ポリブチレンサクシネート重合体を3〜10質量%含み、構成繊維同士が熱接着することにより一体化していることを特徴とするポリ乳酸系不織布を要旨とするものである。
【0010】
本発明のポリ乳酸系不織布は、ポリ乳酸系重合体によって構成されるため、微生物によりほぼ完全に分解されるため、不要となった場合の廃棄処理を行う手間が省け、しかも自然環境を汚染することが少ない。
【0011】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との郡から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が低コスト化の点から好ましい。
【0012】
本発明においては、上記ポリ乳酸系重合体であってL−乳酸またはD−乳酸の含有率が95%以上である必要がある。好ましくは、98%以上、さらに好ましくは99%以上である。95%以上とすることにより、結晶性が高くなり、操業性が良好であり、耐熱性が良好なものとなる。
【0013】
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とを反応させて得るエステルである。本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンを具体的に示すと、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等が挙げられ、好ましくはジグリセリン、デカグリセリンであり、これらの1種又は2種以上の混合物が利用される。
【0014】
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は柔軟性付与、ガラス転移温度の低下防止を考慮して、飽和脂肪酸を用いることが好ましい。さらには、炭素数が12以上の脂肪酸を用いることが好ましい。繊維からのポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードすることを防止できるためである。好ましく用いられる脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられ、好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸であり、これらの1種又は2種以上の混合物として利用される。
【0015】
本発明において好ましく用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルが挙げられ、これらの一種又は二種以上の混合物が利用される。また、これらのうち特に、ジグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルが好ましく用いられる。
【0016】
本発明に用いられるポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと縮合ヒドロキシ脂肪酸とを反応させて得られるエステルである。ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンは、上記したように、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、キサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリン等が挙げられ、好ましくはヘキサグリセリンであり、これらの1種又は2種以上の混合物が利用される。
【0017】
縮合ヒドロキシ脂肪酸とは、ヒドロキシ脂肪酸の縮合体である。ヒドロキシ脂肪酸とは、分子内に1個以上の水酸基を有する脂肪酸であり、具体的に示すと、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)、サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イソプール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニぺリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、カムロレン酸、フェロン酸、セレブロン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、好ましくは、リシノレイン酸である。
【0018】
本発明の不織布の構成繊維は、前記ポリ乳酸系重合体によって構成されるポリ乳酸繊維であり、該ポリ乳酸系重合体中には、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを含んでおり、ポリ乳酸100質量部に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを0.5〜5.0質量部含んでおり、1.0質量部〜3.0質量部含むことがより好ましい。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを含む量が、0.5質量部未満の場合、得られるポリ乳酸繊維の柔軟性が不十分となり、本発明の目的を達成することができない。また、5.0質量部を超えると、柔軟性の点では過剰品質となり、またブリードアウトしやすく、コスト高にもなる。
本発明の不織布の構成繊維は、前記したようにポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを含むポリ乳酸系重合体であって、さらに重合体中には、1,4−ブタンジオールとコハク酸を構成成分とするポリブチレンサクシネート重合体を3〜10質量%含んでいる。
【0020】
ポリ乳酸系重合体に含有させるポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルは、いわゆる可塑剤として機能する。一般的に可塑剤はブリードアウトし易いため、可塑剤のブリードアウトが原因で、繊維表面がべた付く等の種々の問題が生じ易いが、本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルは、ブリードアウトしにくく、繊維表面がべた付く等の問題は生じない。しかしながら、多数の繊維が堆積してなる不織ウェブを熱接着により不織布化した場合、得られる不織布の機械的強度が低下する傾向にあるのは、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルが何らか影響していると考える。本発明では、ポリ乳酸系重合体にポリブチレンサクシネートを特定量含有させることにより、ポリ乳酸系重合体よりも融点の低いポリブチレンサクシネートを熱接着の際の熱接着剤として機能させて、熱接着部における熱接着強度を向上させることができたものである。また、ポリブチレンサクシネートは、柔軟性を有するため、得られる繊維や不織布の柔軟性を損なうことなく、機械的強度を保持させることができる。
【0021】
ポリブチレンサクシネートの含有量が3質量%未満であると、ポリブチレンサクシネートの含有させる効果を十分に発揮できず、熱接着部における熱接着強度の向上が顕著に現われない。一方、ポリブチレンサクシネートの含有量が10質量%を超えると、ポリ乳酸系重合体とポリブチレンサクシネートとの流動性の違いから、溶融紡糸の際に糸切れが多発する傾向となり操業性に劣る。
【0022】
ポリブチレンサクシネートの溶融流量(MFR)は、30〜50g/分が好ましい。MFRが低いと、糸条が弾性を有するものとなり、溶融紡糸時の製糸性が劣る。一方、MFRが高いと、粘度が低下しすぎてしまい製糸性を損なう。なお、ポリブチレンサクシネートのMFRは、ASTM−D1238(L)に基づき210℃、20.2Nで測定する。
ポリブチレンサクシネートの融点は、105〜120℃が好ましい。融点が高いと、熱接着剤としての効果を発揮しにくく、熱接着部の熱接着強度が向上しにくい傾向となる。一方、融点が低すぎると、不織布の耐熱性が劣る傾向となる。
【0023】
本発明のポリ乳酸系不織布は、150℃×5分間熱処理した後であっても、繊維を構成するポリ乳酸系重合体中に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルが繊維表面にブリードアウトしないことが好ましい。ブリードアウトが起こると繊維に接触した際、ブリードアウトしたポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルが付着し、用途によっては好ましく用いることができなくなる。
【0024】
ポリ乳酸系重合体には、本発明の目的が達成される限りにおいて、添加剤を含有させてもよい。例えば、ポリ乳酸系重合体の結晶化を促進するための不活性微粒子を添加することが好ましい。このような不活性微粒子としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等が好適に使用できる。
【0025】
このような不活性微粒子の添加量は0.1〜2.0質量%が好適である。不活性微粒子の添加が0.1質量%よりも少ないと十分な結晶化の促進効果が得られず、不活性微粒子の添加量が2.0質量%を超えると、溶融紡糸の際に糸切れが多発しやすくなる。また、このような不活性微粒子の粒子径(D50 レーザー回析法)は0.1〜5μmのものを用いるとよい。5μm以上の場合、繊維化の際に糸切れの原因となりやすく好ましくない。また、0.1μm以下の場合は、粒子の凝集が起こりやすく、分散性に劣る。
【0026】
ポリ乳酸系重合体に添加する添加剤としては、上記したもの以外に、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、末端封鎖剤、離形剤、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
【0027】
本発明におけるポリ乳酸繊維のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上であることが好ましい。50℃未満の場合、耐熱性が劣る上、ポリ乳酸系重合体の分解速度が飛躍的に上昇し好ましくない。
【0028】
本発明におけるポリ乳酸繊維の単糸繊度は、用途に応じて適宜選択すればよいが、1〜10デシテックス程度がよい。単糸繊度が1デシテックス未満であると、製糸工程において操業性を損なう。単糸繊度が10デシテックスを超えると、不織布の柔軟性が損なわれる傾向となる。
【0029】
ポリ乳酸繊維の繊維横断面は、通常の円形断面の他にも、中空断面、異形断面、並列型複合断面、多層型複合断面、芯鞘型複合断面、分割型複合断面など、その目的と用途に応じて任意の繊維横断面形態を採用することができる。
【0030】
ポリ乳酸繊維の形態は、連続繊維であっても、特定の長さを有する短繊維やショートカット繊維であっても、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0031】
本発明では、ポリ乳酸繊維を多数堆積させて、熱接着することにより構成繊維同士を一体化させて、不織布を得ることができる。
【0032】
本発明の不織布の目付は、5〜200g/mの範囲にあることが好ましい。目付が5g/m未満であると、機械的物性が弱く、十分な機能を発揮することができない。目付が200g/mを超えると柔軟性が劣る傾向となる。
【0033】
本発明において、ポリ乳酸繊維は、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを含有してなるポリ乳酸系重合体を用い、公知の方法で溶融紡糸することにより得られる。
【0034】
また、例えば、連続繊維によって構成される不織布を得るときは、いわゆるスパンボンド法にて効率よく製造できる。すなわち、上述のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルと、ポリブチレンサクシネートとを含有してなるポリ乳酸系重合体を加熱溶融して紡糸口金から吐出させ、得られた紡出糸条を従来公知の横型吹付や環状吹付などの冷却装置を用いて冷却し、その後、エアーサッカーなどの吸引装置にて牽引細化する。引き続き、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、スクリーンから成るコンベアの如き移動堆積装置上に堆積させてウェブとする。次いで、この移動堆積装置上に形成されたウェブに、加熱されたエンボスロールまたは超音波融着装置などの部分熱圧着装置を用いて、部分的に熱圧着を施すことにより不織布を得る。牽引細化においては、1000〜6000m/分の高速で行うとよい。紡出糸条を牽引細化する際に牽引速度が1000m/分未満では、重合体の配向結晶化が進まず、得られる不織布の機械的強力が低下したり、生分解速度が過度に促進されることとなり、逆に、牽引速度が6000m/分を越えると、製糸性が急激に悪化して糸切れを起こすため、好ましくない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、柔軟性、耐熱性、操業性に優れ、かつ様々な用途に適用しうる実用的な機械的強度を有するポリ乳酸系不織布を得ることができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例において、各特性値の測定を次の方法により実施した。
【0037】
(1)目付(g/m):10cm×10cmの試料片10点を作成し、標準状態における各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して、不織布の目付(g/m)とした。
【0038】
(2)MFR(g/10分):ASTM−D1238(L)に基づき210℃、20.2Nで測定した。
【0039】
(3)単糸繊度(デシテックス):顕微鏡を用いて繊維ウェブを観察し、50本の繊維の繊維径をそれぞれ測定し、密度補正して求めた繊度の平均値を単糸繊度(デシテックス)とした。
【0040】
(4)引張強力(N/5cm幅)および伸度(%):幅5cm×長さ30cmの試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、商品名「UTM−4−1−100」)を用いて、JIS−L−1906に準じて測定した。このときの条件は、つかみ間隔が20cm、引張速度10cm/分であった。伸張−荷重曲線を描き、得られた伸長−荷重曲線から、求められる最大荷重時の強さ(N/5cm幅)を測定し、10点の平均値を引張強力とした。また、最大荷重時の伸びを測定し、この伸びから伸度を求めて、10点の平均値を伸度(%)とした。
【0041】
参考例
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR60g/10分のL−乳酸/D−乳酸共重合体(L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%)を用意した。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、チラバゾールVR−08(太陽化学社製)をポリ乳酸系重合体100質量部に対して2.0質量部になるように計量配合したポリ乳酸系重合体を溶融し、紡糸口金を用いて、溶融紡糸を行った。
吐出糸条を冷却装置にて冷却した後、引き続き紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊機を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウェブとして捕集堆積させた。
次いで、このウェブを圧接面積率15%、ロール温度130℃としたエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通して部分的に熱圧着し、単糸繊度が3.3デシテックスの連続繊維からなる目付が70g/mである不織布を得た。
【0042】
実施例
参考例において、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して2.0質量部となるようにポリグリセリン脂肪酸エステルを計量配合した重合体中に、融点115℃、MFR45g/10分のポリブチレンサクシネートを添加し、重合体中に5.0質量%となるように軽量配合したポリ乳酸系重合体を用いて、溶融紡糸したこと以外は、参考例と同様にして、単糸繊度が3.3デシテックスの連続繊維からなる目付が70g/mである不織布を得た。
【0043】
比較例
参考例において、ポリ乳酸系重合体中にポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリブチレンサクシネートを添加しなかったこと以外は、参考例と同様にして、単糸繊度が3.3デシテックスの連続繊維からなる目付が70g/mである不織布を得た。
【0044】
参考例、実施例および比較例は、いずれも操業性は良好であった。参考例および実施例で得られた不織布は、手で触って感触を確認した結果、いずれも柔らかく柔軟性に優れたものであった。一方、比較例の不織布は、参考例および実施例の不織布に比べて、柔軟なものではなかった。
【0045】
参考例および実施例の機械的強度を測定した結果、参考例は、機械方向の引張強度が103N/5cm幅、機械方向と直交する方向の引張強度が43N/5cm幅、機械方向の伸度が13%、機械方向と直交する方向の伸度が17%であるのに対して、実施例の機械方向の引張強度が124N/5cm幅、機械方向と直交する方向の引張強度が51N/5cm幅、機械方向の伸度が22%、機械方向と直交する方向の伸度が21%であり、機械的物性が向上したものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−乳酸またはD−乳酸が95モル%以上からなるポリ乳酸系重合体によって構成される繊維を構成繊維とする不織布であって、該ポリ乳酸系重合体中には、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルと、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とするポリブチレンサクシネート重合体とを含み、ポリ乳酸系重合体100質量部に対してポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを0.5〜5.0質量部含み、該ポリブチレンサクシネート重合体を3〜10質量%含み、構成繊維同士が熱接着することにより一体化していることを特徴とするポリ乳酸系不織布。
【請求項2】
ポリブチレンサクシネート重合体の溶融流量が30〜50g/10分、融点が105〜120℃であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系不織布。
【請求項3】
脂肪酸が炭素数12以上である飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸系不織布。



【公開番号】特開2013−11042(P2013−11042A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146027(P2011−146027)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】