説明

ポリ乳酸系樹脂発泡体

【課題】ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の高温高湿条件下での体積膨張率を制御する。
【解決手段】乳酸成分の光学異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92であるポリ乳酸系樹脂を主成分とし、ポリ乳酸系樹脂に対する可塑効果を有する化合物群のうち、少なくとも一種を構成成分に含む添加剤を、当該ポリ乳酸系樹脂組成物中に0.5質量%以上10質量%未満含むポリ乳酸系樹脂組成物からなる発泡体。
【効果】体積膨張率の制御が可能になり、広い用途に対応できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系発泡体およびその成形体に関する。具体的には、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の高温時における寸法安定性を改善した発泡体および発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油事情、また環境問題といった観点から、従来の合成樹脂製品はリサイクル、リユースされるようになってきている。主に魚箱、家電緩衝材、食品トレー等に用いられる発泡スチロール(発泡ポリスチレン)も例外ではなく、破砕減容して主にマテリアルリサイクルされるようになってきている。
【0003】
しかし、こう言ったマテリアルリサイクルの試みは卸売市場で発生する使用済み魚箱、大型家電の緩衝材等、使用済みのものの回収が容易なものに限られており、一般小売業者、飲食店で発生するものや末端消費者が直接自宅に持ち帰る商品に使用されているものの回収率はきわめて低い。
【0004】
回収が困難な発泡スチロール製品は一般ゴミといっしょに廃棄されることが多いが、相応の設備を有しない焼却処分場では、その高い燃焼熱ゆえに焼却炉を傷めてしまう。
【0005】
本発明者らは、これらの状況に鑑み、燃焼熱が低く炉を傷めず、しかも微生物による分解が可能な発泡資材として、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびその成形体を開発し、特許文献1等でその技術を開示している。
【0006】
ところが、特許文献1で開示したポリ乳酸系樹脂発泡体およびその成形体は、高温高湿条件下では著しく体積膨張し、海外輸出等の過酷な条件下では使用できないという欠点があった。このため、本発明者らは、高温高湿下における寸法安定性を確保すべく鋭意検討を行い、これまでに特許文献2、特許文献3などを出願開示してきた。
【0007】
特許文献2では、ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶化度を一定の範囲に制御して結晶化による耐熱性の向上を得ようとするものであったが、結晶化度を制御することが難しく、予備発泡の段階で結晶化が進みすぎて成形性が損なわれる場合があった。
【0008】
特許文献3では、過酸化物を用いてポリ乳酸系樹脂に分岐構造を生成させることによって、樹脂の伸張応力を高め、高温高湿下における寸法安定性を確保したが、複数の架橋剤を用いているため樹脂の伸張応力の調整が難しいという欠点があった。
【0009】
【特許文献1】国際公開99/21915号パンフレット
【特許文献2】特開2003−301067号公報
【特許文献3】特開2004−107430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、成形性に優れ、成形品の高温高湿下における体積膨張が少ないポリ乳酸系樹脂発泡体およびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本願発明に到達した。
【0012】
すなわち、ポリ乳酸系樹脂発泡体の樹脂組成物中に、ポリ乳酸系樹脂に対して用いられる可塑剤のうち、少なくとも1種を構成成分とする可塑剤をポリ乳酸系樹脂に対して0.5質量%以上10質量%未満添加することにより、課題は解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いた発泡体は汎用の発泡スチロール成形機による成形が可能で、かつその成形品は高温高湿下における体積膨張が小さく、寸法安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
通常、ポリ乳酸の可塑剤として用いられる化合物の多く物質とポリ乳酸は相溶する。このため、これらを添加した場合、ガラス転移点を始めとする諸物性は樹脂成分と可塑剤の混合比率によって変化し、支配されることが知られている。
【0015】
通常、可塑剤をその主たる用途である可塑化、柔軟化用途に用いる場合は、樹脂のガラス転移点が室温以下になる程度まで添加し、その量は可塑剤の種類、分子量等にもよるが、概ね10質量%以上であり、10質量%未満で用いられることは稀である。
【0016】
例えば、大八化学工業(株)のDIFATTY101、荒川化学(株)のラクトサイザー2001、ラクトサイザー4001、リケンビタミン(株)のグリセリン酢酸脂肪酸エステル類リケマールSL−009,012,014,019、トリアセチン(グリセリントリアセチル)、ジブチルセバケート(DBS)、ビス(2−エチルへキシル)セバケート(DOS)などの場合、いずれも室温下に於いて目的を達成する為には10質量%以上の添加が必要である。
【0017】
しかし、本発明に於いては、一般的に可塑剤として用いられる添加剤を可塑剤としてではなく、ガスバリア性制御剤として用いる点で明確に目的を異にする。このため、添加量も10質量%を超えることは無く、むしろ10質量%を超えると発泡倍率が下がり、成形性が不良になるといった、発泡体としては好ましくない結果となる。
【0018】
本発明がポリ乳酸系樹脂発泡体およびその成形体の高温高湿条件下における体積膨張率を著しく抑えることに成功したメカニズムとしては、これらの通常可塑剤として用いられる成分を可塑剤としての効果が顕著となる量よりも少量添加することによって、ポリ乳酸の発泡ガスや空気に対する高すぎるバリア性が適度に低下した結果、(1)発泡後の余剰ブタンガスが無添加に比較して比較的速やかに抜け、(2)成形後に外気温が上昇した場合の緩やかな空気の膨張による内圧の上昇を比較的容易に緩和できるためと推察している。
【0019】
これらの可塑剤の添加量は、可塑剤の種類によって微妙に左右されるが、分子量1000以下の可塑剤の場合、0.5質量%以上10質量%未満の範囲である。
【0020】
例えば、2−(2−メトキシエトキシ)エチルベンジルアジペートを主たる成分とするDIFATY101(大八化学工業(株)製)の場合、1〜10%未満の添加が好ましく、さらに好ましくは3〜7%である。
【0021】
添加量と高温高湿下における体積膨張率はほぼ逆比例の関係にあって、添加量6〜7質量%の間で60℃×80%RH(相対湿度)×24時間における体積膨張率は、ほぼゼロ
に達する。
【0022】
また、トリアセチンを用いる場合は、同じく添加量と高温高湿下における体積膨張率はほぼ逆比例の関係にあって、添加量4〜5質量%の間で60℃×80%RH(相対湿度)×24時間における体積膨張率は、ほぼゼロに達し、それ以上添加すると発泡倍率が低下し、成形性が不良となり、成形品は高温高湿下で収縮する。
【0023】
なお、本願発明の発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、温度条件を選ぶことにより、特別な架橋剤を用いなくても発泡させることが可能である。しかし、発泡スチロールの予備発泡機や成形機を用いた、ポリ乳酸にとってはかなり過酷な条件での成形を可能とし、幅広い予備発泡・成形条件に対応するには、架橋増粘させて伸張粘度の温度依存性を緩慢にするほうが好ましい。
【0024】
次に各構成についてさらに詳しく述べる。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂としては、特に限定されないが、結晶性の高い樹脂はガスを含浸するときや、予備発泡をする際に結晶化し、成形品を得るに至らないので、乳酸モノマーの異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92、好ましくは90/10〜10/90のものが用いられる。
ポリ乳酸系樹脂は、一部モノマーが乳酸と交換可能なヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオールなどで置き換わっていてもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油などで一部分岐架橋されていても良い。
【0026】
本願発明に用いる添加剤はポリ乳酸系樹脂に対して10質量%未満の添加で充分なガスバリア性の低下効果が得られるものであれば、ポリ乳酸用の可塑剤として上市されていなくてもよく、一般的に他のプラスチックの可塑剤として上市されているものであっても構わない。
【0027】
具体的に使用可能な化合物としては、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルアセチルリシノレート、ジブチルセバケート、2−(2−メトキシ)エチルベンジルアジペート、ビス[2−(2−メトキシ)エチル]アジペート、ジベンジルアジペート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル−2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアジペート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルベンジルアジペート、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、レボピマル酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)、トリアセチンなどが挙げられる。
【0028】
発泡条件幅、成形条件幅を広げ、生産性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物とするためにポリ乳酸系樹脂に添加する架橋剤としては、無水多塩基酸、多官能エポキシ、多官能イソシアネート、過酸化物等、一般的な架橋剤を単独または複数選択して用いることができるが、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することによってアロファネート結合などによる後増粘が可能であるポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族系のポリイソシアネートが使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシア
ネート化合物があり、いずれも使用可能であるが、汎用性、取り扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートが好ましく使用される。
【0030】
また、発泡セルのサイズ、形状を整える目的で発泡核剤を添加しても良い。発泡核剤としては、一般的に発泡スチロールの核剤に用いられるような発泡核剤を用いることが出来る。具体的には、シリカ、マイカ、タルク、モンモリロナイト(ベントナイト)およびその誘導体、炭酸水素ナトリウム、クエン酸などが挙げられるが、比較的結晶性の高いポリ乳酸系樹脂を用いる場合、結晶核剤効果の高いタルクを用いると成形性が損なわれることがあるので注意が必要である。
【0031】
なお、本発明の樹脂組成物中には、難燃剤、帯電防止剤、顔料/染料のごとき着色剤、造核剤などを含んでいてもよい。
【0032】
樹脂組成物に発泡性ガスを含浸する方法としては、所望の発泡性が得られる発泡性ガスの存在下で十分な圧力がかかる条件さえそろっていれば特に限定されるものではなく、水を分散媒とする系(水系)、水を分散媒として用いない系(非水系)のいずれでも含浸が可能である。
【0033】
非水系で含浸を行う場合には、イソシアネートを含む樹脂組成物を40℃〜50℃の温水中で熱処理して後増粘(熟成)させて乾燥して用いる。熟成した樹脂に発泡性ガス、分散媒を加え、密閉容器中で昇温・加熱して発泡性ガスをコンパウンド中に含浸することによって発泡性樹脂組成物を得る。
【0034】
水系で含浸を行う場合には、加水分解反応を受けやすいポリエステル系樹脂組成物であることを考慮し、加水分解を抑制する工夫や短時間で含浸を終了させる工夫が必要であるが、架橋剤としてポリイソシアネート類を用いた樹脂組成物を用いて水系含浸する場合は、ポリ乳酸系樹脂組成物の末端基はある程度イソシアネートで封鎖されるので、別途末端封鎖をする必要はない。しかも、水中で加温・含浸を行うため、加水分解反応とイソシアネートによる後増粘のバランスを調整することで、発泡ガスの含浸と熟成を同時に行うことが可能となる。
【0035】
含浸時に樹脂の分散性を改善し、膠着を防ぐ目的で分散助剤を添加しても良い。分散助剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類などの高分子物質を用いることも可能だが、界面活性剤、特に非イオン系界面活性剤を添加が好ましい。
【0036】
例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やTween20,40,60,80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、Span20,60,80などのソルビタン脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0037】
発泡性を付与するために用いられる発泡性ガスとしては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素系ガスに加え、フロンガスも好適に用いることが可能であるが、地球環境を考慮した場合、炭化水素系ガスが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
【0039】
<非水系含浸による方法の具体例>
[実施例1および比較例1]
D体比率10%、数平均分子量10万、重量平均分子量21万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−1)とDIFATTY101(大八化学工業(株))を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いて所定の混合比(質量比)PLA−1:DIFATTY101=97/3〜90/10の混合率でポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0040】
このうち、PLA−1:DAIFATTY101の混合比が、90/10のものを比較例1、その他を実施例1とする。
【0041】
[比較例2]
実施例1で用いたポリ乳酸(PLA−1)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いてポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0042】
[比較例3]
D体比率4.5%、数平均分子量11万、重量平均分子量22万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−2)とDIFATTY101(大八化学工業(株))を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いて混合比PLA−2/DIFATTY101=5/95の混合率でポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0043】
[比較例4]
D体比率7.5%、数平均分子量11万、重量平均分子量22万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−3)とDIFATTY101(大八化学工業(株))を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いて混合比PLA−3/DIFATTY101=5/95の混合率でポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0044】
[実施例2]
D体比率12%、数平均分子量8万、重量平均分子量15万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−4)とDIFATTY101(大八化学工業(株))を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いて混合比PLA−4/DIFATTY101=5/95の混合率でポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0045】
[熟成]
実施例1、実施例2および比較例1〜4で調製したビーズ状樹脂組成物を45℃の温水中で15時間熟成し、捕集乾燥した。
【0046】
[発泡性ガスの含浸(非水系)]
熟成の終わった実施例1、実施例2および比較例1〜4の樹脂組成物への発泡性ガスの含浸は、各熟成ビーズを各々10L回転ドラム型密閉容器に4.3kg仕込み、ビーズの重量を100部として、メタノール2部、イソブタン40部を添加して、85℃にて3時間含浸を行い、常温で通気風乾して発泡性粒子を得た。該発泡性粒子中の揮発分を200℃×5分の重量減で求めたところいずれも11.0%±0.3%の範囲にあった。
【0047】
<水系含浸による方法の具体例>
[実施例3]
D体比率12%、数平均分子量8万、重量平均分子量15万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−4)とトリアセチン(大八化学工業(株))を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いて混合比PLA−1:トリアセチン=99.2/0.8〜90/10の混合率でポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)1.5%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0048】
[比較例5]
実施例3で用いたポリ乳酸(PLA−4)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEX35B、L/D=35)を用いてポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、MR200)2%とともに溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0049】
[発泡性ガスの含浸(水系)]
実施例3および比較例5で得られたビーズ状樹脂組成物、各々3kgを10Lドラム回転式含浸機に入れ、100重量部に対して、脱臭ブタン(ノルマルブタン:イソブタン=70/30)を25部、蒸留水を25部、DO−1000(三洋化成(株)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)を0.7部仕込んだ。
【0050】
さらに、50℃から97℃まで1時間掛けて昇温し、97℃にて2時間保持して含浸を行い、冷却後排出して、常温で通気風乾して発泡性粒子を得た。該発泡性粒子中の揮発分を200℃×5分の重量減で求めたところいずれも6.7%±0.2%の範囲であった。
【0051】
[予備発泡]
実施例1〜3、比較例1〜5のポリ乳酸系樹脂組成物に発泡ガスを含浸して得られた発泡性粒子を各々発泡スチロール用予備発泡機(ダイセン工業(株)製 DYHL−300)にて予備発泡した。発泡温度は80℃〜96℃の範囲で発泡温度を2℃刻みで変えて行い、発泡体同士の融着(ブロッキング)が起こらず、最も発泡倍率の高いものを用いて成形テストを実施した。
【0052】
[成形]
予備発泡した発泡体は、24時間以上常温で保管・熟成した後、各々発泡スチロール用成型機(ダイセン工業(株)製 VS−300L−MC)にて30cm角×3cmのボードに成形し高温高湿下における熱膨張率を測定した。
【0053】
[熱膨張率の測定]
各成形サンプルを15cm角×3cmに切り出し、60℃×80%RHにて24時間処理し、処理前後の縦、横、厚みの測定値から体積膨張率を算出し、結果を表1、図1(非水系含浸)および表2、図2(非水系含浸)、にまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1および図1から明らかなようにDAIFATTY101の添加量が増えるにつれて、熱処理後の体積膨張率が抑制される。10%添加では成形が困難であり、6〜7%添加で体積膨張率がほぼ0になる。即ち、DAIFATTY101を用いて非水系含浸をする場合に於いて、本発明の効果が得られるのは添加量3%以上7%未満であり、家電緩衝材等の輸出梱包に耐えうるレベルの効果が認められるのは5%〜7%である。
【0057】
さらに、表1の実施例1のDAIFATTY101添加量5%品および実施例2、比較例2、比較例3を比較すると明らかなように、PLAの異性体比率が7.5%以下では成形が困難であったり、発泡そのものが難しく、発泡、成形が可能な異性体比率が8%以上の低結晶性もしくは実質的に非晶性のポリ乳酸(D体比率12%以上)が好ましい。
【0058】
また、トリアセチンを添加材として用い、水系含浸を行う場合は、表2および図2から明らかなようにDAIFATTYの場合と同じように、トリアセチンの添加量の増加に連れて熱処理後の体積膨張率が抑制され、添加量5%前後でほぼ熱処理後の体積膨張率が0%に達する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂組成物発泡体は、従来の汎用発泡スチロール用設備での成形が可能で、かつ高温高湿下での高い寸法安定性を有するので、輸出等過酷な条件に曝される用途にも対応が可能であり、用途が非常に広がる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】DAIFATTY101添加量と60℃耐熱試験時の体積膨張率の関係を示した図である。
【図2】トリアセチン添加量と体積膨張率の関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂の乳酸成分の光学異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92であるポリ乳酸系樹脂を主成分とし、ポリ乳酸系樹脂に対する可塑効果を有する化合物群のうち、少なくとも一種を構成成分に含む添加剤を、当該ポリ乳酸系樹脂組成物中に0.5質量%以上10質量%未満含むポリ乳酸系樹脂組成物からなる発泡体。
【請求項2】
ポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分がイソシアネート基に由来する尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合の少なくとも1種以上の結合で架橋されていることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体を成形してなる発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−96903(P2006−96903A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286041(P2004−286041)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】