説明

ポリ乳酸繊維の製造方法

【課題】新規な構造により、優れた高温力学特性を発揮する従来には無かったポリ乳酸繊維の効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】結晶サイズが6nm未満のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度を110℃以上、熱処理温度を120℃以上、延伸倍率(DR)を特定の範囲とするポリ乳酸繊維の製造方法。さらにポリ乳酸未延伸糸のウースター斑が2.0%以下であること、および/または延伸が1段延伸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、25℃での強度ならびに高温力学特性にも優れたポリ乳酸繊維の効率的な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解するポリマー素材の開発が切望されており、脂肪族ポリエステル等、様々なポリマーの研究・開発、また実用化の試みが活発化している。そして、微生物により分解されるポリマー、すなわち生分解性ポリマーに注目が集まっている。
【0003】
一方、従来のポリマーはほとんど石油資源を原料としているが、石油資源が将来的に枯渇するのではないかということ、また石油資源を大量消費することにより、地質時代より地中に蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出され、さらに地球温暖化が深刻化することが懸念されている。しかし、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料としてポリマーが合成できれば、二酸化炭素循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるのみならず、資源枯渇の問題も同時に解決できる可能性がある。このため、植物資源を原料とするポリマー、すなわちバイオマス利用ポリマーに注目が集まっている。
【0004】
上記2つの点から、バイオマス利用の生分解性ポリマーが大きな注目を集め、石油資源を原料とする従来のポリマーを代替していくことが期待されている。しかしながら、バイオマス利用の生分解性ポリマーは一般に力学特性、耐熱性が低く、また高コストとなるといった課題あった。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのはポリ乳酸である。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した繊維の開発が急ピッチで行われている。
【0005】
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途や産業資材用途が期待されている。特に産業資材用途では高強度ポリ乳酸繊維が要求されるが、その製造方法としては、汎用合成繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロンの高強度繊維の製造方法をポリ乳酸に適用したものが挙げられる。しかし、この製造方法は多段延伸が前提であり、設備投資額が大きく、また高温で大径のネルソン型のホットローラーを複数個使用するためエネルギー多消費型プロセスとなり、高コストとなるものであった。このため、例えば特許文献1等に記載のように最終熱処理以外には熱板を使う省エネタイプのものも提案されてはいるが、やはりローラー数が多くなるため高効率化や低コスト化は不充分であった。さらに、加熱手段として熱板を用いているため延伸速度を上げると毛羽や糸切れが頻発するという問題があった。一方、一段延伸によっても高強度ポリ乳酸繊維が得られることが特許文献2に記載されているが、未延伸糸の伸度に対し延伸倍率が高すぎるため、無理な変形により糸切れが頻発したり、糸斑が大きくなるといった問題があった。
【0006】
また、従来の高強度ポリ乳酸繊維の製造方法では、たしかに室温(25℃)での強度は高い物が得られていたが高温力学特性は低いという問題があった。ここで、高温力学特性が悪いとは、ポリ乳酸ポリマーのガラス転移温度(Tg)である60℃を超えると急激に軟化することを指している。実際、温度を変更してポリ乳酸繊維の引っ張り試験を行うと、70℃付近から急激に軟化し、90℃では流動に近い形状を示し、低強度となるばかりか力学的寸法安定性が大きく低下するのである(図5)。一方、従来のポリマーであるナイロン6ではこのような軟化現象は緩やかであり、90℃でも充分な力学特性を発揮している(図5)。
【0007】
このようにポリ乳酸繊維は高温力学特性が不良であるため、実際に種々の問題が発生している。例えば、織物の経糸に用いるときは、糸の集束性を高め製織性を向上させる目的で糸を糊付けするが、熱風乾燥を行うと経糸をぴんと張るためにかけている張力により、糸が伸びてしまうトラブルが発生してしまう。また、ポリ乳酸繊維に仮撚を施すと、熱板上で糸が急激に軟化するため、糸に撚りがかからず捲縮特性が劣るばかりか、熱板上で糸が破断してしまい、仮撚そのものが困難となる場合もある。さらに、このような熱板上でのトラブルのため、熱板温度はたかだか110℃までしか上げられず、熱セットが不足するため捲縮特性が低いのみならず、沸騰水中での糸の収縮率(沸収)を実用レベルである20%以下まで低下させることも困難である。
【0008】
このため、25℃で高強度でありさらに高温力学特性も優れたポリ乳酸繊維を得るための、高効率で低コストなプロセスが望まれていた。
【特許文献1】特開2000−248426号公報
【特許文献2】特開平8−226016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、25℃での強度ならびに優れた高温力学特性を有するポリ乳酸繊維の効率的な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、結晶サイズが6nm以上のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度が85℃以上、熱処理温度が120℃以上、延伸倍率(DR)が下記範囲であることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法、あるいは結晶サイズが6nm未満のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度が110℃以上、熱処理温度が120℃以上、延伸倍率(DR)が下記範囲であることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法により達成される。
0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規な構造を有するポリ乳酸繊維により、高温力学特性を大幅に向上させることが可能であり、仮撚加工や製織工程での問題点を解決でき、ポリ乳酸繊維の用途展開を大きく拡げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で言うポリ乳酸とは乳酸を重合したものを言い、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。本発明では、L体あるいはD体の光学純度が97%以上のものをホモポリ乳酸と呼ぶ。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含有していても良い。ただし、バイオマス利用、生分解性の観点から、ポリマーとして乳酸モノマーは50重量%以上とすることが重要である。乳酸モノマーは好ましくは75重量%以上、より好ましくは96重量%以上である。また、ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と製糸性のバランスが良く好ましい。
【0013】
本発明においては、1段延伸・熱処理とすることが設備費やエネルギー消費を抑制する点から好ましいが、必要に応じて多段延伸をすることももちろん可能である。ただし、得られる糸の品質や性能の面から下記の延伸条件を採用することが重要である。
【0014】
本発明の第1の方法は、結晶サイズが6nm以上のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度が85℃以上、熱処理温度が120℃以上、延伸倍率(DR)が0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)の範囲であることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法である。
【0015】
第1の方法では、結晶サイズが6nm以上のポリ乳酸未延伸糸に延伸・熱処理を施すことが重要である。結晶サイズが6nm以上の未延伸糸を用いることによって、後述するような高倍率延伸を行っても糸切れや糸斑を抑制できるのである。未延伸糸の結晶サイズは、好ましくは7nm以上、より好ましくは9nm以上である。さらに未延伸糸の結晶配向度が0.90以上であると、後述するように結晶からの分子鎖の引き抜きが安定して行えるため、高倍率延伸を行っても延伸が安定化し好ましい。そして、このような結晶化した未延伸糸を得るためには、ポリ乳酸を溶融紡糸し、未延伸糸の紡糸速度を4000m/分以上とすることが好ましい。未延伸糸の紡糸速度は、より好ましくは5000m/分以上である。
【0016】
また、延伸温度を85℃以上とすることが重要であり、これにより高倍率延伸を行っても糸斑を小さくできるのである。延伸温度は好ましくは130℃以上である。ただし、通常のポリ乳酸は融点が170℃程度であるため、延伸温度は160℃以下とすることが好ましい。
【0017】
また、熱処理温度を120℃以上とすることも重要であり、これにより得られる延伸糸の繊維構造を安定化することができ、充分な強度が得られるとともに沸収を低くすることができる。さらに、熱処理温度を高くすることにより、延伸・熱処理が安定化し糸切れや糸斑を抑制することができる。熱処理温度は好ましくは140℃以上である。ただし、通常のポリ乳酸は融点が170℃程度であるため、熱処理温度は165℃以下とすることが好ましい。
【0018】
また、延伸倍率(DR)は0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)とすることが重要であり、0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DRとすることにより、25℃での強度を充分高くできるのみならず、高温力学特性も大幅に向上することができる。一方、DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)とすることにより、繊維の無理な変形を抑制でき、糸切れや糸斑を大幅に抑制することができる。DRは好ましくは0.95+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦1.5+(未延伸糸伸度/100%)、より好ましくは1.1+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦1.4+(未延伸糸伸度/100%)である。
【0019】
本発明の第2の方法は、結晶サイズ6nm未満のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度が110℃以上、熱処理温度が120℃以上、延伸倍率(DR)が0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)の範囲であることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法である。
【0020】
第2の方法では、結晶化していない、すなわち非晶、あるいは結晶化が不充分であるポリ乳酸未延伸糸を用いるため、延伸温度の選定が特に重要であり、延伸温度は110℃以上とすることが重要である。これにより、延伸前の予熱により未延伸糸が配向結晶化、さらに結晶が十分成長し、本発明の第1の方法の如く、高倍率延伸を行っても延伸の均一性が良好となる。延伸温度は好ましくは130℃以上である。
【0021】
また、熱処理温度を120℃以上とすることも重要であり、これにより得られる延伸糸の繊維構造を安定化することができ、充分な強度が得られるとともに沸収を低くすることができるのである。さらに、熱処理温度を高くすることにより、延伸・熱処理が安定化し糸切れや糸斑を抑制することができるのである、熱処理温度は好ましくは140℃以上である。ただし、通常のポリ乳酸は融点が170℃程度であるため、熱処理温度は165℃以下とすることが好ましい。
【0022】
また、延伸倍率(DR)は0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)とすることが重要であり、0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DRとすることにより、25℃での強度を充分高くできるのみならず、高温力学特性も大幅に向上することができる。一方、DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)とすることにより、繊維の無理な変形を抑制でき、糸切れや糸斑を大幅に抑制することができる。DRは好ましくは0.95+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦1.5+(未延伸糸伸度/100%)、より好ましくは1.1+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦1.4+(未延伸糸伸度/100%)である。
【0023】
なお、本発明でいう未延伸糸とは、上記した延伸条件を採用しても、安定して延伸できる繊維のことをいうものである。このため、未延伸糸の伸度は25%以上であることが好ましい。また、生産効率向上の観点から紡糸したままの糸を用いることが好ましい。
【0024】
ところで、得られるポリ乳酸繊維の糸斑が大きいと、繊維製品の品位が劣るばかりか、高次加工工程において毛羽・弛み等を発生しやすく種々の問題が発生してしまう。特に、マルチフィラメントで用いる用途では染色や機能物質を後加工される場合が多いが、糸斑が大きいと染色斑や加工斑が発生し易い。このため、本発明の製造方法で得られるポリ乳酸繊維では糸斑の指標であるウースター斑が2.0%以下とするように、延伸・熱処理条件を決定することが重要である。このため、未延伸糸のウースター斑も小さい方が延伸・熱処理工程が安定化し、得られる繊維の糸斑が抑制でき、好ましい。未延伸糸のウースター斑は好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下である。また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維のウースター斑は好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下なるように、延伸温度、延伸倍率等の延伸条件を種々調整することが重要である。
【0025】
なお、ポリ乳酸繊維は摩擦係数が高いため、高速紡糸工程、仮撚加工や流体加工のような糸加工工程、ビーミング、製織、製編のような製布工程での毛羽が発生し易いという問題がある。このため、繊維用油剤としては、ポリエーテル主体のものを避け、脂肪酸エステルや鉱物油等の平滑剤を主体とするものを用いると、ポリ乳酸繊維の摩擦係数を低下させることができ、上記工程での毛羽を大幅に抑制でき、好ましい。
【0026】
本発明のポリ乳酸製造方法は、生産効率が非常に高いというメリットがあるが、それを以下に述べる。生産効率の指標の一つとして紡糸の際の単位時間当たりの吐出量を用いることができることが特開平8−246247号公報や特開2000−89938号公報に記載されている。すなわち、所望の繊度の繊維を得るまでの紡糸速度と延伸倍率の積が大きいほど単位時間当たりの吐出量が大きく、単位時間当たりの生産効率が高いと言える。この観点から本発明を見ると、本発明の製造方法では従来のポリ乳酸繊維の製造方法に比べ、延伸倍率を高く採ることができるため生産効率が非常に高くなる。例えば、紡糸速度3000m/分の未延伸糸を用いた場合では、本発明では紡糸速度×延伸倍率=6150(実施例7)と従来の製造方法の紡糸速度×延伸倍率=4950(比較例3)に比べ大幅に単位時間当たりの生産性が高い。さらに未延伸糸に高速紡糸繊維を用いた場合は、さらに単位時間当たりの生産性を高くすることが可能であり、実施例4では紡糸速度×延伸倍率=10500にまで達する。
【0027】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維は、工程通過性や製品の力学的強度を充分高く保つことを考慮すると、高強度であることが好ましく、得られる繊維の25℃での強度は4.0cN/dtex以上であることが好ましい。ポリ乳酸繊維の25℃での強度は、より好ましくは5.5cN/dtex以上である。また、ポリ乳酸繊維の25℃での伸度は15〜70%であると、ポリ乳酸繊維を繊維製品にする際の工程通過性が向上し、好ましい。
【0028】
さらに本発明の製造方法を用いると、得られるポリ乳酸繊維の高温力学特性を大幅に向上させることも可能である。繊維や繊維製品の工程通過性を考慮すると、ポリ乳酸繊維の90℃での強度は1.0cN/dtex以上であることが好ましい。90℃での強度は、より好ましくは1.3cN/dtex以上、さらに好ましくは1.5cN/dtex以上である。また、本発明の製造方法で得られるポリ乳酸繊維では、90℃で0.7cN/dtex応力下での伸びを15%以下とすることも可能であり、高温時の力学的な寸法安定性を大幅に向上させることも可能である。ここで、90℃で0.7cN/dtex応力下での伸びとは、90℃で繊維の引っ張り試験を行い、強伸度曲線図において、応力0.7cN/dtexでの伸度を読むことにより求めることができる。そして、この90℃で0.7cN/dtex応力下での伸びが15%以下であれば、高温での寸法安定性を向上でき、ポリ乳酸繊維の糊付け乾燥での伸びを抑制し、さらに仮撚での工程通過性、捲縮特性が向上できるのである。90℃で0.7cN/dtex応力下での伸びは、好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下である。
【0029】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維では、糸の太さ斑の指標であるウースター斑(U%)は2%以下とすることも可能であり、繊維や繊維製品の品位を向上させることができる。U%は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下である。
【0030】
また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維は、沸収が0〜20%であれば繊維および繊維製品の寸法安定性が良く好ましい。沸収は好ましくは2〜10%である。
【0031】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維の断面形状については、丸断面、中空断面、三葉断面等の多葉断面、その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、繊維の形態は、長繊維、短繊維等特に制限は無く、長繊維の場合マルチフィラメントでもモノフィラメントでも良い。
【0032】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維において、前記したように高温力学特性が向上する理由はよくわからないが、以下に記載するように通常のポリ乳酸繊維には存在しない、31らせん構造を採る分子鎖が形成されていることによるものと推定される。以下に31らせん構造について詳述する。
【0033】
まず、通常のポリ乳酸繊維中の分子鎖の構造について説明する。ポリ乳酸繊維中では通常、α晶という結晶形が生成しているが、α晶中での分子鎖の形態は103らせん構造を採っていることがJ. Biopolym., vol.6, 299(1968).等に記載されている。ここで、103らせん構造とは、図4に示すように10個のモノマーユニット当たり3回回転するらせん構造を意味している。一方、超高分子量ポリ乳酸(粘度平均分子量56万〜100万)のクロロホルム/トルエン混合溶媒からの溶液紡糸(紡糸速度1〜7m/分)により得られた繊維を融点以上の超高温(204℃)で超高倍率延伸(12〜19倍、延伸速度1.2m/分以下)して得られたポリ乳酸繊維中には、β晶という通常のα晶とは異なる結晶が生成することがMacromolecules, vol.23, 642(1990).等記載されている。ここでβ晶とは、3個のモノマーユニット当たり1回回転するらせん構造(31らせん構造、図4)から形成されていることが該文献等に記載されている。ところで、この31らせん構造は、見方を変えると9個のモノマーユニット当たり3回回転するらせん構造であり、103らせん構造を若干引き伸ばした緊張型の形態と言える。
【0034】
また発明者らの固体13C−NMRによる解析では、従来のポリ乳酸繊維では103らせん構造に対応する170.2ppm付近のピークしか観測されないが、本発明の繊維ではそれより低磁場である171.6ppm付近にピークが観測(図1)されることが分かった。これは、従来ポリ乳酸繊維の103らせん構造とは明らかにコンフォメーション、すなわち構造の異なるらせん構造が生成していると考えられる。そして、これは広角X線回折(WAXD)測定からβ晶類似のパターンが観測された(図3)ことから、31らせん構造が形成されていることが確認された。すなわち、固体13C−NMRにおいて、171.6ppm付近にピークが観測されれば、31らせん構造が生成していることを意味していることを発明者らは発見した。
【0035】
そして、本発明のポリ乳酸繊維では、緊張型である31らせん構造を有しているため引っ張りに対し強い抵抗力を発揮し、室温だけでなく90℃以上の高温下でも充分な力学特性を示すものと考えられる。
【0036】
1らせん構造は繊維中の少なくとも一部に含まれていれば良いが、固体13C−NMRスペクトルにおいて、31らせん構造に対応するピークの面積強度(31比)が165〜175ppmに観測されるピークの面積強度の5%以上であると、90℃での強度を1.0cN/dtex以上とすることができ好ましい。また、31らせん構造は必ずしも結晶化している必要はないが、図3のようにWAXDで確認できるほど結晶化していると90℃での強度を1.5cN/dtex以上とすることもでき好ましい。
【0037】
また、本発明の製造方法により、上記した繊維構造(31らせん構造)が発現する理由は以下のように推定される。
【0038】
本発明ではポリ乳酸未延伸糸を通常の延伸に比べ高倍率延伸するものであるが、これによりポリ乳酸分子鎖が引き抜かれ、さらに分子鎖に高応力がかかることにより103らせん構造から31らせん構造へ転移するものと考えられる。そして、熱処理によりこの構造が安定化されるものと考えられる。すなわち、未延伸糸の繊維構造を延伸により破壊しながら再構築することで、従来のポリ乳酸繊維とも未延伸糸とも異なる構造が発現していると考えられる。
【0039】
なお、通常のポリ乳酸繊維の延伸倍率は、衣料用途で0.75+(未延伸糸伸度/100%)以下(比較例2、3)であり、産業用途であっても、例えば特開2000−248426号公報では1段目の延伸倍率は0.75+(未延伸糸伸度/100%)以下であり、本発明の0.90+(未延伸糸伸度/100%)に比べればはるかに低倍率延伸なのである。このため、これらの製造方法で得られたポリ乳酸繊維には31らせん構造は形成されておらず、高温力学特性が低いものであった。
【0040】
このように、本発明では高倍率延伸によりはじめて31らせん構造が形成できるのであるが、延伸前にポリ乳酸分子鎖を引き揃えて並べておくと、高倍率延伸であっても均一な延伸が可能となり、繊維の白化や延伸斑が発生することを抑制できる。そして、延伸前にポリ乳酸分子鎖を引き揃えて並べる具体的方法として、本発明の第1の方法のように、高速紡糸による配向結晶化構造を利用すると予備延伸や予備熱処理のようなプロセスを付加することが不要であり、高効率で、しかも低コスト化を達成することができるのである。なお、本発明の第2の方法のように、紡糸速度3000m/分付近で得られる未延伸糸は、ある程度分子配向が進んでいるが結晶化には至らず非晶の場合が多いが、延伸温度を110℃以上に高温化することで、第1ホットローラー等の予熱部分で充分配向結晶化し、高倍率延伸が可能となる。
【0041】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維は、織物、編物、不織布、カップ等の成形品等の様々な繊維製品の形態を採ることができる。
【0042】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維は、仮撚加工等の捲縮加工用の原糸、シャツやブルゾン、パンツといった衣料用途のみならず、カップやパッド等の衣料資材用途、カーテンやカーペット、マット、家具等のインテリア用途や車両内装用途、ベルト、ネット、ロープ、重布、袋類、縫い糸等の産業資材用途、この他フェルト、不織布、フィルター、人工芝等にも好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸繊維をさらに延伸・熱処理することにより、超高強度ポリ乳酸繊維を得ることも可能である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0044】
A.ポリ乳酸の重量平均分子量
試料のクロロホルム溶液にTHF(テトロヒト゛ロフラン)を混合し測定溶液とした。これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0045】
B.25℃での強度および伸度
室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JISL1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
【0046】
C.90℃での強度
測定温度90℃で、上記Cと同様に強伸度曲線を求め、荷重値を初期の繊度で割り90℃での強度とした。
【0047】
D.90℃で0.7cN/dtex応力下での伸び
上記Dで求めた90℃での強伸度曲線において、0.7cN/dtex応力下での伸度を読み、90℃で0.7cN/dtex応力下での伸びとした。
【0048】
E.沸収
糸をかせ取りし、沸騰水中で処理し、その前後の寸法変化から下記式により沸収を求めた。
沸収(%)=[(L0−L1)/L0)]×100(%)
L0:延伸糸をかせ取りし初荷重0.09cN/dtex下で測定したかせの原長
L1:L0を測定したかせを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、風乾後初荷重0.09cN/dtex下でのかせ長
【0049】
F.ウースター斑(U%)
zellweger uster社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分、ノーマルモードで測定した。
【0050】
G.固体13C−NMR
Chemagnetics社製CMX-300 infinity型NMR装置を用い、以下の条件により13C核のCP/MAS NMRスペクトルを測定し、エステル結合のカルボニル炭素部分の解析を行った。そして、カーブフィッティングにより、103らせん構造に帰属される170.2ppm付近のピークと31らせん構造に帰属される171.6ppm付近のピークとをピーク分割し、165〜175ppmに観測されるピークの面積強度全体に対する171.6ppm付近のピークの面積強度比(31比)を求めた。
装置 : Chemagnetics社製CMX-300 infinity
測定温度 : 室温
基準物質 : Siゴム(内部基準:1.56ppm)
測定核 : 75.1910MHz
パルス幅 : 4.0μsec
パルス繰り返し時間 : ACQTM=0.06826sec PD=5sec
データ点 : POINT=8192 SAMPO=2048
スペクトル幅 : 30.003kHz
パルスモード : 緩和時間測定モード
コンタクトタイム: 5000μsec
【0051】
H.広角X線回折(WAXD)
理学電機社製4036A2型X線回折装置を用い、以下の条件でWAXDプレート写真を撮影した。
X線源 : Cu−Kα線(Niフィルター)
出力 : 40kV×20mA
スリット : 1mmφピンホールコリメータ
カメラ半径 : 40mm
露出時間 : 8分間
フィルム : Kodak DEF−5
【0052】
I.結晶サイズ
理学電機社製4036A2型X線回折装置を用い、以下の条件で赤道線方向の回折強度を測定した。
X線源 : Cu−Kα線(Niフィルター)
出力 : 40kV×20mA
スリット : 2mmφ−1゜−1゜
検出器 : シンチレーションカウンター
計数記録装置 : 理学電機社製RAD−C型
ステップスキャン : 0.05゜ステップ
積算時間 : 2秒
(200)面方向結晶サイズLは下記Scherrerの式を用いて計算した。
L=Kλ/(β0cosθB)
L : 結晶サイズ(nm)
K : 定数=1.0
λ : X線の波長=0.15418nm
θB : ブラッグ角
β0=(βE2−βI2)1/2
βE : 見かけの半値幅(測定値)
βI : 装置定数=1.046×10-2rad.
【0053】
J.結晶配向度
(200)面方向結晶配向度は下記のようにして求めた。
(200)面に対応するピークを円周方向にスキャンして得られる強度分布の半値幅から下記式により計算した。
結晶配向度(π)=(180−H)/180
H:半値幅(deg.)
測定範囲 : 0〜180°
ステップスキャン : 0.5゜ステップ
積算時間 : 2秒
【0054】
K.仮撚加工糸の捲縮特性、CR値
仮撚加工糸をかせ取りし、実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中15分間処理し、24時間風乾した。このサンプルに0.088cN/dtex(0.1gf/d)相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長L’0を測定した。次に、水中で0.088cN/dtex相当のかせを除き0.0018cN/dtex(2mgf/d)相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長L’1を測定した。そして下式によりCR値を計算した。
CR(%)=[(L’0−L’1)/L’0]×100(%)
【0055】
参考例1、2
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で180分間重合を行った。得られたホモポリL乳酸の重量平均分子量は19万、光学純度は99%L乳酸であった。これを240℃で溶融紡糸し、チムニー4により25℃の冷却風で糸を冷却固化させた後、集束給油ガイド6により脂肪酸エステルを主体とする繊維用油剤を付与し、交絡ガイド7により糸に交絡を付与した(図7)。その後、周速5000m/分(紡糸速度5000m/分)の非加熱の第1引き取りローラー8で引き取った後、非加熱の第2引き取りローラー9を介し未延伸糸10を巻き取った。巻き取ったホモポリL乳酸未延伸糸の(200)面方向の結晶サイズは9.2nm、結晶配向度は0.96、伸度は56%、U%は0.8%であった。この未延伸糸10に図8の装置を用い、延伸速度(第2ホットローラー13の周速)800m/分、表1に示す条件で1段延伸・熱処理を施し、84dtex、12フィラメント、丸断面の延伸糸を得た。紡糸、延伸での糸切れは発生せず、工程安定性も良好であった。
【0056】
これらの延伸糸の固体NMRスペクトルを図1に示すが、参考例1の繊維では31らせん構造に帰属される171.6ppm付近のピークがはっきり観測され、参考例2の繊維ではショルダーピークとして観測された。そして、これらのピーク分割を行い、171.6ppm付近のピークの面積強度比(31比)を求めたところ、参考例1で29%、参考例2で17%であった(図2)。また、WAXD測定を行ったところ参考例1の繊維では、Macromolecules, vol.23, 642(1990).記載のβ晶類似のパターンが得られ、31らせん構造を持つ結晶が生成していることが確認された(図3)。一方、参考例2の繊維では、31らせん構造からなる結晶のWAXDパターンとはならなかった。参考例1の90℃での強伸度曲線を図6、物性値を表2に示すが、従来の高強度ポリ乳酸繊維(比較例1)に比べ、90℃での力学特性が大幅に向上していた。
【0057】
実施例1
紡糸速度3000m/分として参考例1と同様に表1に示す条件で紡糸、延伸を行い84dtex、24フィラメントの延伸糸を得た。未延伸糸の物性は表1に示すが、参考例1、2で用いた未延伸糸とは異なりWAXDで結晶性のパターンが得られず、非晶性であった。このため、問題となるほどではないが、第1ホットローラー上での糸揺れがやや大きいものであった。
【0058】
この延伸糸の固体NMRスペクトルから31らせん構造の生成を確認できた。また、物性値を表2に示すが、従来の高強度ポリ乳酸繊維(比較例1)に比べ、90℃での力学特性が大幅に向上していた。
【0059】
比較例1
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行った。得られたホモポリL乳酸の重量平均分子量は15万、光学純度は99%L乳酸であった。これを用い、特開2000−248426号公報実施例9に準じて3段延伸・熱処理により高強度ポリ乳酸繊維を得た。この時、未延伸糸紡糸速度は2200m/分、1段目延伸温度は82℃、2段目の延伸温度は130℃、3段目の延伸温度は160℃、1段目延伸倍率は1.53倍、2段目の延伸倍率は1.55倍、3段目の延伸倍率は1.55倍、最終熱処理温度は155℃とした。
【0060】
これの固体NMRを測定したところ、171.6ppm付近の31らせん構造に対応するピークは観測されなかった(図1)。また、WAXD測定も行ったところ、高度に結晶化していたものの通常のα晶(103らせん構造)に対応するパターンしか得られなかった。さらに、物性を表2に示すが、室温での強度は高いが、90℃での力学特性は低いものであった。
【0061】
なお、延伸倍率を全て1.0、熱板温度、熱処理温度を室温として、紡糸速度2200m/分の未延伸糸を巻き取り物性を測定したところ、この未延伸糸は結晶化しておらず、伸度は120%であった。これより、本比較例における1段延伸目の延伸倍率は0.33+(未延伸糸伸度/100%)であった。
【0062】
比較例2、3
表1に示す紡糸速度として参考例1と同様にポリ乳酸未延伸糸を得た。得られた未延伸糸は非晶であり、結晶サイズは測定できなかった。この未延伸糸に表1の条件で参考例1と同様に延伸・熱処理を施し84dtex、24フィラメント、丸断面の延伸糸を得た。
【0063】
これの固体NMRを測定したところ、171.6ppm付近の31らせん構造に対応するピークは観測されなかった。また、WAXD測定も行ったところ、高度に結晶化していたもののα晶(103らせん構造)に対応するパターンしか得られなかった。さらに、物性を表2に示すが、90℃での力学特性は低いものであった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
参考例3
参考例1および2で得たポリ乳酸繊維に図9に示す装置で、表3に示す条件で延伸仮撚を施した。なお、延伸ローラー20の速度である加工速度は400m/分とし、セカンドヒーター21は使用しなかった。仮撚回転子19としては3軸ツイスターを用いた。これの糸物性は表3に示すが、CR≧25%と充分な捲縮特性を示す仮撚加工糸を得た。また、沸収も20%以下と充分なものであった。
【0067】
参考例4
参考例2の未延伸糸を用い、セカンドヒーター21の温度を150℃、延伸ローラー20とデリバリーローラー22の間のリラックス率を8%とし、仮撚加工糸を得た。これの糸物性は表3に示すが、セカンドヒーターの効果により、沸収を4%と低収縮化することができた。
【0068】
比較例4
比較例3で得た従来ポリ乳酸繊維に、延伸倍率1.35倍、ヒーター温度130℃として参考例3と同様にフリクションディスク仮撚加工を施したが、熱板上で糸切れが発生し糸かけ不能であった。次に、ヒーター温度を110℃に下げて加工を施したところ、やはり糸かけに問題があったが、糸を巻き取ることは可能であった。捲縮特性の指標であるCR値は20%であったが、ヒーター温度が低すぎるため沸収が25%と高すぎるものであった。
【0069】
比較例5
比較例3で得た従来ポリ乳酸繊維に、セカンドヒーター21の温度を150℃、延伸ローラー20とデリバリーローラー22の間のリラックス率を8%とし、比較例4と同様に仮撚加工糸を得た。これの糸物性は表3に示すが、セカンドヒーターの効果により沸収を8%と低収縮化することができたが、CR値が3%とほとんど捲縮の無いものになってしまった。
【0070】
【表3】

【0071】
参考例5
参考例1で得られた糸を経糸および緯糸に用い、平織りを作製した。経糸の糊付け乾燥を110℃で行ったが、毛羽の発生や糸が伸びるトラブルは発生しなかった。得られた平織りを常法にしたがい60℃で精練した後、140℃で中間セットを施した。さらに常法にしたがい110℃で染色した。得られた布帛は、きしみ感、ソフト感があり、衣料用として優れた風合いを有していた。
【0072】
参考例2、実施例1で得られた糸も同様にして製織、布帛評価を行ったが、毛羽の発生や糸が伸びるトラブルも発生せず、得られた布帛は、きしみ感、ソフト感があり、衣料用として優れた風合いを有していた。
【0073】
比較例6
比較例3で得られた糸を経糸および緯糸に用い、参考例5と同様に平織りを作製した。経糸の糊付け乾燥を110℃で行ったが、糸が伸びてしまい乾燥が不可能であった。そこで、比較例3で得られた糸を用い、筒編みを作製し、常法にしたがい110℃で染色を施したが染色斑が大きく品位に劣るものであった。
【0074】
参考例6
参考例2で得られたポリ乳酸繊維に図8の装置を用い、延伸温度150℃、延伸倍率1.15倍、熱処理温度155℃として再延伸・熱処理を施した。得られたポリ乳酸繊維は室温強度8.0cN/dtex、室温伸度15%、90℃強度3.0cN/dtex、90℃、0.7cN/dtexでの伸び3%、沸収2%、U%=1.2%の高強度ポリ乳酸繊維であった。また、固体NMRスペクトルから31らせん構造の生成を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明および従来高強度ポリ乳酸繊維の固体NMRスペクトルを示す図である。
【図2】固体NMRスペクトルのピーク分割を示す図である。
【図3】参考例1の広角X線回折パターンを示す図である。
【図4】ポリ乳酸分子鎖のらせん構造を示す図である。
【図5】従来ポリ乳酸繊維(比較例3)およびナイロン6繊維の強伸度曲線を示す図である。
【図6】参考例1および従来高強度ポリ乳酸繊維(比較例1)の90℃での強伸度曲線を示す図である。
【図7】紡糸装置を示す図である。
【図8】延伸装置を示す図である。
【図9】延伸仮撚装置を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1:スピンブロック
2:紡糸パック
3:口金
4:チムニー
5:糸条
6:集束給油ガイド
7:交絡ガイド
8:第1引き取りローラー
9:第2引き取りローラー
10:未延伸糸
11:フィードローラー
12:第1ホットローラー
13:第2ホットローラー
14:第3ローラー(室温)
15:延伸糸
16:フィードローラー
17:ヒーター
18:冷却板
19:仮撚回転子
20:延伸ローラー
21:セカンドヒーター
22:デリバリーローラー
23:仮撚加工糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶サイズが6nm未満のポリ乳酸未延伸糸を延伸するに際し、延伸温度が110℃以上、熱処理温度が120℃以上、延伸倍率(DR)が下記範囲であることを特徴とするポリ乳酸繊維の製造方法。
0.90+(未延伸糸伸度/100%)≦DR≦2.0+(未延伸糸伸度/100%)
【請求項2】
ポリ乳酸未延伸糸のウースター斑が2.0%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
【請求項3】
延伸が1段延伸であることを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−174898(P2008−174898A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55650(P2008−55650)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【分割の表示】特願2002−96925(P2002−96925)の分割
【原出願日】平成14年3月29日(2002.3.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】