説明

ポリ乳酸製品およびその使用

本発明は、ポリ乳酸(PLA)を含む物質に関する。本発明によれば、PLA物質が、1:4以上の総延伸比で少なくとも機械方向に延伸される。これらの物質は、優れた生物分解性を有し、園芸において、特に植物またはその一部を縛るために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸(PLA)を含む物質に向けられている。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、−[−C(CH)−C(O)−O−]−の構造式を有する。PLAの重要な特性のひとつは、それが生物分解性である、すなわち、酵素作用の影響下で堆肥化されるとやがて分解し得るということである。生物分解性ポリマーの開発は、農業、特に園芸において特に興味深い。生物分解性の物質で作られたテープ(あるいは糸状のもの、ワイヤなど)が長年要求されている。そのようなテープは、例えば植物などを縛るために使用され得る。現在、これらのテープは、ポリオレフィンなどの非分解性プラスチックで作られている。その結果、現在の園芸作業で生じる有機廃棄物(例えば、葉、茎または植物全体)は、堆肥化して完全に生物分解性の資源を得る前に、これらの非分解性プラスチックを取り除かなければならない。この取り除きは通常、手で行われ、したがって、コストも時間もかかる。
【0003】
農業、特に園芸において上記目的のために使用され得る生物分解性のテープがあると望ましいであろう。本発明の目的は、上記目的のための、特に園芸において植物や植物の小片を縛るために使用するためのPLA物質を提供することである。
【0004】
これまで、上記目的のためのPLAテープを製造することが試みられている。しかし、これらの試みでは、適する特性を有する製品は得られていない。この目的のために適するテープの製造における重要な操作の一つがフィブリル化工程であることが分かった。フィブリル化工程は、テープの長さ方向に1以上の小さく切ったものを適用することを含む。典型的には、この目的のためにニードルローラーまたはピンローラーが使用される。そうすることによって、テープはより柔軟になる。柔軟であることは、実際に結び目を作ることができる製品を得るために必須である。従来のPLA物質を使用すると、フィブリル化工程をうまく行うことができないことが分かった。なぜならば、それは、テープの開裂や引裂きを生じて適切でない製品をもたらすであろうからである。
【0005】
欧州特許出願公開EP−A-1514902は、特定の種類の可塑剤を含む二軸延伸されたPLAフィルムを記載している。上記欧州特許出願公開EP−A-1514902のフィルムは、7倍以上の面積倍率に延伸されている。特に機械方向での、4より上の比での縦方向延伸は、この文献には示唆も記載もされていない。上記可塑剤は、PLAマトリックスの破壊靭性を増加させ、従ってテープの引裂きを少なくするために、欧州特許出願公開EP−A-1514902の組成物に添加されている。しかし、この解決法は、物質の弾性率を低下させるという影響を有する。その結果、欧州特許出願公開EP−A-1514902に記載された物質は、一般的に1.5GPaより小さい(これは比較的小さい)E−モジュラスを有することが開示されている。内部潤滑剤としても知られるいくつかの可塑剤の添加は、増加されたクリープ速度をもたらすことが知られている。これは、Baiardoら、Journalof Applied Polymer Science, 90 (2003) 1731-1738に記載されているように、改変されたポリマーのTgにおける影響から容易に観察され得る。高いクレープ速度は、多くの状況では、特に本発明によって意図される用途のためには、許容され得ない。また、これらの内部潤滑剤は、物質の表面に浸出し、またはちょっと移動し、そして脆いプラスチック、ロープやヤーン上のつるつるする表面故のより低い結び性(knottability)、および/または植物と適合しない場合の病気を引き起こし得る場合がある。
【0006】
特開2004−115051は、10〜45重量%のPLAと脂肪族−芳香族コポリエステルのブレンドを含む包装バンドを開示している。このバンドは、少なくとも1の面の上に表面不規則性を備えている。脂肪族−芳香族コポリエステルは、PLAの加工性を改善するために広く使用され、また、製造されたテープおよびヤーンにより高い引張強さ(tenacity)を与え得る。にもかかわらず、これらのコポリマーはUV安定性が不十分であり、物質が太陽光にさらされるであろう用途において使用されるためにはUV安定化が必要であることが分かった。他方、純のポリマーとしてのPLA(すなわち、95重量%より多い、好ましくは97重量%より多い、より好ましくは99重量%より多いPLAを含む)は、非常に良好なUV安定性を示すことが分かったが、特開2004−115051に記載された型のコポリエステルの5重量%と低いレベルでの添加は、下記の物質比較例1から分かるように、促進された分解をすでにもたらす。
【0007】
特開2003−260733は、L−エナンチオマーに富む非ラセミ乳酸に基づくPLAを含む二軸延伸フィルムを開示している。上記二軸延伸は、X/Yが0.9〜2.0であるように行われる。ここで、Xは機械方向の延伸比であり、Yは横方向の延伸比である。機械方向の総延伸比が4より大きいことはこの文献に開示も示唆もない。明らかにフィルムの切断特性は関心事であるので、横方向の引き裂き強度は非常に低く、50mNより小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のPLA製品は、テープ、フィルムまたはヤーンの形状あるいは類似の形状を有する。一般に、それらは、その厚みよりもかなり長い長さによって特徴付けられる。典型的には、上記製品は、その厚みの100倍より大きい長さを有するひも形状の物体である。例えば、典型的な一巻きは、0.1mm以下の厚みを有する約5000mのテープを含み得る。また、上記テープは、撚り合わされていてもよく、その場合には、典型的な直径が約2.5mmである。その断面は、任意の形状であり得る。典型的には、それは円形、正方形または長方形である。また、上記製品は、マルチフィラメントから成り得る。
【0009】
PLA製品の機械的特性を改善するために、本発明者らは、広く研究を行い、特に、1以上の延伸工程を適用することによりこれらの特性を改善するための可能性を研究した。これに関して、重要なことは、全てのポリマー物質が実質的な意味で「延伸可能」であるわけではない、すなわち、高い処理量、例えばキログラム/分(例えば1kg/分)以上のオーダーの処理量を伴う自動プロセスを使用する工業的規模で延伸可能であるわけではないことである。多くのポリマー物質は、実際的な規模で延伸を適用するには不十分な強度を有する。これは、ポリマーの物理的特性によっておよび/または製品中の異質物によって引き起こされ得る。
【0010】
今まで、上記の型のPLA製品(テープ、フィルム、ヤーンなど)は、工業的規模では延伸され得ないと信じられていた。なぜならば、上記製品は、非常に破れやすいからである。そのようなPLA製品が工業的延伸装置、例えば図1に示す型の装置で巻かれる場合、特定の処置、例えばかなりの量の可塑剤の添加、が取られなければ、工業的規模での操作はできないと信じられていた。なぜならば、上記製品は、任意の適切な延伸が行われる前に破れ得るからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、PLA出発物質を注意深く選択することにより、このPLAを含むテープ、フィルム、ヤーンなどを1:4より大きい総延伸比で延伸することができることが分かった。さらに、一つの延伸工程で1:4より大きい延伸比への延伸がいつも可能であるわけではなく、物質の破壊を招き得ることが分かった。従って、好ましくは、総延伸比への延伸が1より多い延伸工程で行われる。ここで、第一の延伸工程では、延伸比が1:4より下であり、第二以降の延伸工程が、1:4より大きい、より好ましくは1:5より大きい、さらにより好ましくは1:6より大きい総延伸比で行われる。一般的に、総延伸比を1:11未満、好ましくは1:8未満、に保持するのが好ましい。上記延伸工程を行うことにより、PLA物質の白化が観察される。これは、増加された強度を示す。多工程延伸工程で延伸を行うことにより、物質の特性の優れた制御が得られ得る。
【0012】
従来技術、例えば特開2003−260733に見られるように、二軸延伸もPLAテープの製造に使用されている。しかし、二軸延伸のこの公知の使用は、明らかに高速切断操作のために適するものにするために、フィルムの引き裂き強度を低下させることを目的としている。この限定された二軸延伸(2以下の二軸延伸比アスペクト)は、物質の既に低い破壊靭性に効果を有しない。これは、下記実施例6から明らかに分かる。未延伸PLAは、そのような物質から作られたテープの小さいエネルギー吸収に示されるところの非常に低い破断時の伸びおよび引張強さを有する。延伸の間、PLAは、分子の歪み誘起による配列故にガラス状から半結晶性への転移を受ける。これは、テープまたはフィルムの色が、ひび割れ故の透明から白色への変化によって示される。この効果は、温度に依存して種々の延伸比で発揮され、より高い温度延伸は、この効果をより高い延伸比に移動させる。破断時の伸びおよびエネルギー吸収は、テープが白色に変わる直前に最適に達する。より高い延伸では、引張強さは大きくなり続けるが、製造されたフィルムまたはテープの破壊靭性は再び下がる。4の総延伸比(SR)より下の単軸または二軸延伸は、比較的弱くかつ取扱にくいフィルムおよびテープを製造するであろう。
【0013】
すなわち、1の局面において、本発明は、少なくとも1:4の総延伸比で延伸された、PLAを含むテープ、フィルムまたはヤーンに向けられる。なお、本発明者らの知見によれば、純なPLAテープは従来、このような高い延伸比で延伸されなかった。当業者には周知のように、その製品を延伸することにより、それは構造的に、特に分子(ポリマー鎖)が再配列されることにおいて、変わる。この変化した構造は、増加された引張強度および増加された弾性率(E−モジュラス)によって示される。すなわち、引張強度および/またはE−モジュラスは、実際、製品の特徴であり、製品を特徴付けるために使用され得る。本発明によれば、150MPa以上の引張強度、典型的には、7〜25%の破断時の伸び、および4.5GPa以上のE−モジュラスを有する製品が提供され得る。比較として、未延伸のPLAは、典型的には、約60MPaの引張強度、1%の破断時の伸び、および約3GPaのE−モジュラスを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の製品を製造するプロセスを模式的に示す図である。
【図2】図2は、フィブリル化ローラーの位置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用されるE−モジュラスは、従来公知の方法を使用して決定され得る。特に断らない限り、本明細書で使用される全ての値は、標準テストEN10002の方法を使用して得られる。
【0016】
本発明の製品は、好ましくは、キャストフィルム押出またはインフレーション法によって作られる。本明細書で使用される総延伸比は、主として、単一方向延伸、特に機械(縦)方向での延伸を意味する。しかし、一般的に、何らかの横延伸は、特にインフレーション法が行われるときには、避けられ得ない。本発明によれば、機械方向の総延伸比(X)が4より大きいが、フィルムに対して直角の方向での総延伸比(Y)は好ましくは、1.5未満であり、その結果、これらの延伸比の比(X/Y、二軸延伸比アスペクト)が2.7以上、好ましくは4以上である。
【0017】
延伸性に影響を及ぼすことが分かったパラメータの一つは、PLAのガラス転移温度、Tg、である。本発明によれば、物質が単一の延伸工程で延伸され得るならば、PLAは、好ましくは、60℃以上の、より好ましくは60〜75℃のTgを有するべきである。これは、最も商業的に得られ得るPLA(これは典型的には、約50℃のTgを有する)のTgよりも高い。60℃よりも低い、例えば58℃のTgを有するPLA製品は、単一の延伸工程を適用するプロセスにあまり適しないことが分かった。しかし、1より多い延伸工程が適用されるとき、これらの物質もまた使用され得る。
【0018】
好ましくは、エナンチオマーに富むPLA、好ましくはL−エナンチオマーが主なエナンチオマーであるPLAが使用され、より好ましくは、PLAを構成するモノマー単位の85重量%より多くが、さらにより好ましくは90重量%より多くが、最も好ましくは96〜98重量%がL−乳酸である。これは、園芸での用途に要求される加工性および機械的特性を改善することが分かった。
【0019】
延伸性に大きく影響を及ぼすことが分かった別のパラメータは、PLAの融点、Tm、である。本発明によれば、物質が単一の延伸工程で延伸され得るならば、PLAは好ましくは160℃以下のTm、好ましくは130〜160℃、より好ましくは約150℃のTmを有するべきである。これは、最も商業的に得られ得るPLA(典型的には約170〜185℃のTmを有する)のTmよりも低い。しかし、1より多くの延伸工程が適用されるとき、160℃より高いTmを有するPLA製品も使用され得る。
【0020】
本発明のPLA製品は、加工性を改善しまたは光学特性を変えるための添加剤をさらに含み得る。好ましくは製品が可塑剤を含まない、または本質的に含まない(すなわち、典型的には0.5重量%未満の可塑剤を含む)。
【0021】
園芸におけるPLAの使用の重要な利点は、UV照射の影響下で分解しない、あるいはほとんど分解しないということであり、これは、この目的のために使用される他の物質、例えば、この理由のためにUV安定剤の添加を通常必要とするポリプロピレン、と対照的である。本発明の製品には、UV安定剤を添加する必要がない。本発明の一実施態様では、添加剤は存在せず、製品は本質的にPLAからなる。すなわち、製品の95重量%より多くがPLAである。好ましくは製品の97重量%より多くが、より好ましくは製品の99重量%より多くがPLAである。
【0022】
本発明の製品は、優れた堆肥性を示し、これは、フィブリル化によってもたらされる高い比表面積を付与することによりさらに高められ得る。すなわち、本発明の物質は、堆肥化されるとき、典型的には植物物質と同じまたは匹敵する速度で、またはより早くすら、分解する。
【0023】
好ましい実施態様では、図1に模式的に示された装置を使用してテープが製造される。
【0024】
図1を参照すると、本発明の方法の一実施態様では、通常はペレットの形状である原料PLA原料が押出機に供給され、そこでダイ2を通される。次いで、物質は、典型的には15〜45℃の温度を有する水浴中に置かれたローラー3上にそれを供給することにより冷却される。次いで、物質は、スリッター4に供給され、そこでテープが2以上の細片に切断される。物質を最初にローラー1に供給し、次いで第一オーブンに供給し、そこで物質が典型的には75〜95℃、好ましくは80〜90℃の温度に加熱され、次いでローラー2に供給されることにより第一の延伸工程が行われる。ローラー2のローラー速度をローラー1のローラー速度より高く選択することにより、PLA物質が延伸される。次いで、第二の延伸工程が、最初に物質を第二のオーブンに供給し、そこで物質が典型的には95〜120℃、好ましくは100〜110℃の温度に加熱され、次いでローラー3に供給され、そこでローラー3のローラー速度がローラー2のローラー速度より高く選択されることにより行われる。最後に製品がリールに巻き取られる。
【0025】
好ましくは、ゴデット(godet)ローラーがローラー1〜3のために使用される。好ましくは、フィルムが押出機のダイから形成された後、冷却浴、典型的には15〜45℃、好ましくは、約30〜35℃の比較的低い温度の、水で満たされた浴に供給される。これは、フィルムを「凍結し」、フィルムのいわゆるネックインを防ぐ。
【0026】
好ましくは、押出機が、延伸の前に、少なくとも2、好ましくは少なくとも5、例えば約8、のメルトフローインデックスを有するポリエチレン(PE)でパージされる。
【0027】
本発明の製品はまた、インフレーション法(チューブラーフィルム押出成形とも言う)により製造され得る。インフレーション法は、自体公知の方法である。上記方法は、円形ダイによるプラスチックの押出と、続く「バブル様」膨張を含む。このようにして、チューブ(フラットかつ襞付き)が単一の操作で製造され得る。フィルムの幅および厚さは、バブル中の空気の体積(空気流速)、押出機の出力および引取りの速度などの要素により制御され得る。フィルムの二軸配向は、輸送速度および空気流速によって制御され得る。
【0028】
本発明の製品は、典型的には7〜20%、好ましくは約10%の優れた破断伸びを有する。これは、園芸における上記使用のために非常に重要である。なぜならば、それは、容易な取り扱いおよび結束を可能にするからである。
【0029】
さらに、本発明の製品は、高められた温度での優れた収縮を特徴とする。約60℃までの温度に関して、収縮は0%と低くあり得、または実施例8におけるデータから認められ得るものに非常に近いものであり得る。
【0030】
本発明の製品は、例えばポリプロピレン(PP)から作られたひも様の製品と比較して比較的低いクリープを有することを特徴とする。本明細書で使用されるクリープは、種々のレベルの応力への長時間の暴露下でゆっくり移動するまたは変形する傾向として定義される。低いクリープを有するひも様の製品は、園芸での使用のために、例えば植物またはその一部を縛るために望ましい。ひも様の製品によって縛られた植物は、成長すると、ひも様製品に応力を及ぼす。そのような応力は、ひも様製品の変形をもたらし得、それは、植物の垂れさがりを、したがって、植物を再び縛る必要性をもたらし得る。現在、園芸に使用されるひも様製品は、主としてPPから作られ、その製品は高いクリープを有し、従って、上記欠点を伴う。PPのクリープと本発明の製品のそれとの比較は、下記実施例7に示される。これらのクリープ試験は、20%の破断負荷と40%の破断負荷を用いて行われた。本発明は、PPと比較したとき、クレープに関してより良好な性能を付与する。本発明の製品は、十分低いクリープを有し、園芸において植物またはその一部を縛るために使用されるとき、植物の成長の後に植物を再び縛る必要がない。すなわち、植物の成長故の撚り糸の増加された変形が避けられ得る。
【0031】
従来技術(欧州特許出願公開EP−A-1514902)に記載された可塑剤の使用は、本発明ではあまり勧められない。なぜならば、そのような添加剤は、PLA物質のクリープ挙動に悪影響を及ぼし得るからである。
【0032】
従来技術、特に特開2004−115051から、物質の粗さを高めるためにフィルムまたはテープの片面または両面にエンボスを有する物質が知られている。しかし、製品をエンボス加工することは、表面に波形を作ることによるより堅いフィルムを作り出し、それは、フィルムの手触りを硬くし、また園芸用途における摩耗により植物を害し得る。また、エンボス加工されたフィルムおよびテープは、より高い断面二次モーメントを有し、それは、そのようなテープを結んだりねじったりするのを妨げ、また、手動の場合も機械による場合も、高速操作でのそのようなテープの自由な流れを妨げる。本発明の物質は、好ましくは平滑である。本発明の製品は、フィブリル化ローラー(例えば、ニードルローラーまたはピンローラー)を使用して非常によくフィブリル化することができる。フィブリル化されていない製品は、強靭であり、かつ取り扱い難い。フィブリル化されていない製品は、無理に曲げなければならず、ランダムに亀裂を作り得る。この亀裂は製品の強度を低下させ、製品の破壊を引き起こしすらし得る。フィブリル化された製品は、はるかに平滑であり、切ったものの上で折り畳めるであろう。これは、所望の可撓性を有する製品をもたらし、その結果、テープは容易に撚り合わされて丸いヤーンを作ることができる。上記可撓性は、製品を園芸において使用する、例えば植物またはその一部を縛るために使用するために必要である。フィブリル化工程の追加の利点は、表面の粗さが高められることである。これは結び性を改善する。
【0033】
フィブリル化ローラーは、典型的には、図2に模式的に示されるように、本発明の製品がその上に供給されるところの2つのローラーの間に置かれる。所望の可撓性を得るために、フィブリル化ローラー(F)の速度は好ましくは、第一ローラー(R1)の速度より高い。第二ローラー(R2)の速度は典型的には、第一ローラー(R1)の速度よりわずかに高い(例えば、2m/分高い)。これは、製品がローラー上を通るときに製品に張力をかけ続けるために、また製品がニードルで詰まることを避けるために必要である。
【0034】
フィブリル化ローラーの速度は通常、フィブリル化ローラー速度と第一ローラー速度との比であるフィブリル化比(FR)で表される。FRは、好ましくは1.2〜1.7であり、より好ましくは1.25〜1.35である。1.2より低いFRは、非常に短い細片を与えるであろう。1.6より高いFRは、毛羽立った(hairy)製品を与えるであろう。フィブリル化ローラー上のニードルの配列は、本発明の製品に有意な影響を及ぼさないことが分かった。例えば、1cm当たり約10本のニードルの配列が使用され得る。
【0035】
好ましい実施態様では、図1に模式的に示されるプロセスにおいて、フィブリル化ローラーが、ローラー3と巻き取り工程の前の最後のローラーとの間に置かれる。
【0036】
多くの場合に、製品のフィブリル化は必要ない。これらの例は、折り畳み、曲げまたは捩りの必要のない小さいテープ;厚いテープよりも天然に平滑である薄いテープ;およびプロファイルを有するテープ、このテープは亀裂を形成するためにプロファイルを使用し、したがって上記亀裂は制御される、である。
【0037】
本発明の製品は、任意のひも形状を有し得る。例えば、フィルム、テープ、ヤーン、マルチフィラメント(フィラメントの束を含む)などである。園芸のために、ヤーンが好ましい。なぜならば、その厚み故にそのような製品は、植物物質を切断する危険を最少にするからである。ヤーンは、1以上のテープを互いの周りに巻きつけるまたは捩ることにより作られる。そのようなヤーンの断面は丸であり、約2〜3mmの厚みを有する。ヤーンにおいて使用されるテープの厚みは、典型的には0.1mmより小さく、好ましくは0.03〜0.09mm、より好ましくは約0.07mmである。そのようなテープ、すなわちそのような小さい厚みを有するテープが好ましい。なぜならば、薄いテープはより柔らかく、それは、植物物質を損なう危険を最少にするために望ましい。
【0038】
本発明の製品はまた、ロープの主要成分として使用され得る。好ましくは、そのようなロープは、ロープの総重量に関して少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の本発明の製品を含む。
【実施例】
【0039】
物質比較例1
暴露後に残っている強度によって示される、UV感受性に対するPLA含量の影響を調べるために3種類の物質を試験した。
第一サンプルは、PLAグレード2002D(NatureWorks製)100%を含んでいた。
第二サンプルは、PLAグレード2002D(NatureWorks製)95重量%と脂肪族−芳香族コポリエステル(BASF製のEcoflex(商品名) F BX7011)5重量%との混合物であった。
第三サンプルは、PLAグレード2002D(NatureWorks製)75重量%と脂肪族−芳香族コポリエステル(BASF製のEcoflex(商品名) F BX7011)25重量%であった。
【0040】
3つのサンプル全てをQUV Atlas 2000システムのUVに8時間照射および4時間縮合のサイクル下で800時間暴露した。使用された照射工程は、60℃の温度で標準UV−A 340nmランプを使用して0.77W/mであった。縮合工程は50℃の温度で行われた。次いで強度が暴露後に測定され、最初の強度と比較された。
【0041】
第一サンプルは、残っている強度が99%であり、第二サンプルは83%であり、第三サンプルは64%であった。すなわち、高いPLA含量サンプルのUV安定性が示された。
【0042】
実施例1
100%PLA(Tg=65℃およびTm=150℃)からフィルムが押出成形され、次いでテープ状に切断された。これらのテープは、次いで、100℃の温度を使用して単一延伸工程で1:6〜1:8.5の比で延伸された。こうして得られたテープの特性を表1に示す。
【0043】
強度の測定は全て、引張試験機を使用して100%/分の歪み速度および500mmのゲージ長さで、調整された温度の部屋で行われた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例2
80℃の延伸温度および1:7の延伸比を使用して実施例1を繰り返した。得られテープを、フィブリル化ローラーを使用し、10本/cmおよび1.6のFRでフィブリル化した。こうして得られたフィブリル化テープの特性を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
上記で得られたフィブリル化テープの2つを互いのまわりに捩ってヤーンを作った。得られたヤーンの特性を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例3
100%PLA(Tg=55〜60℃およびTm=160〜170℃)からフィルムが押出成形され、次いでテープ状に切断された。これらのテープは、次いで、第一延伸工程を使用して1:3.6の延伸比に第一延伸され、次いで、第二延伸工程を使用して1:7.8の総延伸比に延伸された。第一および第二延伸工程の延伸温度はそれぞれ80℃および100℃であった。延伸後、得られたテープを、フィブリル化ローラーを使用し、5本/cmおよび1.4のFRでフィブリル化した。こうして得られたフィブリル化テープの1つを捩ってヤーンにした。捩っていないフィブリル化テープおよびヤーンの特性を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
上記ヤーンについて、およびPPから作られた同様の標準のヤーンについてクリープ試験を行った。試験は、比較的長い時間、特定長さのヤーンに、破断の50%負荷をかけることにより行われた。100時間後、PLAのクリープは4.5%で安定であったが、PPのクリープは19%で安定であった。これは、PPヤーンがPLAヤーンの4.2倍伸ばされたことを意味する。
【0052】
実施例4
98%PLA(Tg=55〜60℃およびTm=145〜155℃)および2%の可塑剤を含む混合物からフィルムが押出成形され、次いでテープ状に切断された。これらのテープは、最初に、第一延伸工程を使用して1:4の延伸比に第一延伸され、次いで、第二延伸工程を使用して1:10.2の総延伸比に延伸された。第一および第二延伸工程の延伸温度はそれぞれ90℃および110℃であった。延伸後、得られたテープを、フィブリル化ローラーを使用し、5本/cmおよび1.9のFRでフィブリル化した。こうして得られたフィブリル化テープの特性を表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
実施例5
100%PLA(Tg=55〜60℃およびTm=145〜155℃)を含むフィルムがインフレーション法により製造され、次いでテープ状に切断された。上記フィルムは、1:1.2のブローアップ比を有した。これらのテープは、第一延伸工程を使用して1:4の延伸比に第一延伸され、次いで、第二延伸工程を使用して1:10.2の総延伸比に延伸された。第一および第二延伸工程の延伸温度はそれぞれ100℃および110℃であった。延伸後、得られたテープを、フィブリル化ローラーを使用し、20本/cmおよび1.6のFRでフィブリル化した。こうして得られたテープの特性を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
実施例6
この実施例は、延伸処方の機械的特性、例えば、引張強さ、破断時の伸びおよびエネルギー吸収、に対する影響を示す。
100%PLAサンプル(グレード2002D、NatureWorks製)を下記表7に示す種々の延伸順序に付した。引張強さおよび破断時の伸びは、上述した方法を使用して測定された。また、比較のために、エネルギー吸収を、応力−歪み曲線の下の面積として定義した。
【0057】
【表7】

【0058】
実施例7
この実施例は、本発明の物質のクリープを、ポリプロピレンに関して得られた値(参照)と比較する。100%PLAグレード2002D(NatureWorks製)およびPPグレード040−G1E(Repsol製)の種々のサンプルをそれぞれ、破断負荷(BL)の20%および40%の負荷に付した。クリープを長時間にわたって測定した。結果を表8に示す。
【0059】
【表8】

【0060】
実施例8
実施例6のサンプルの自由収縮を、Testrite法を使用し、2分の収縮時間および88mNの力で測定した。
【0061】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(PLA)を含み、少なくとも機械方向に少なくとも1:4の総延伸比で延伸された、テープ、フィルムまたはヤーンのようなひも様製品。
【請求項2】
機械方向に少なくとも1:4の総延伸比(X)で延伸され、機械方向に対して直角の方向に最大で1:1.5の総延伸比(Y)で延伸され、二軸延伸比アスペクト(X/Y)が最小で2.7である、請求項1記載の製品。
【請求項3】
製品の97重量%より多くがPLAである、請求項1または2記載の製品。
【請求項4】
150MPa以上の引張強度、典型的には7〜25%の、好ましくは10〜15%の伸び、および3GPa以上のE−モジュラスを有する請求項1記載の製品。
【請求項5】
該PLAが少なくとも60℃のTgを有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の製品。
【請求項6】
該PLAが160℃未満のTmを有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の製品。
【請求項7】
その長さの少なくとも一部および/またはその周囲の少なくとも一部がフィブリル化されている、請求項1〜6のいずれか1項記載の製品。
【請求項8】
少なくとも1:4の機械方向の総延伸比(X)が、1より多い延伸工程によって得られる、ここで、第一の延伸工程で、機械方向の延伸比が1:4より下であり、第二以降の延伸工程が、1:4より大きい機械方向の総延伸比で行われる、請求項1〜7のいずれか1項記載の製品。
【請求項9】
機械方向の延伸比(X)が1:5〜1:8、より好ましくは1:6〜1.8である、請求項1〜8のいずれか1項記載の製品。
【請求項10】
下記工程:
PLA物質を押出機に供給すること、
押し出されたPLA物質を15〜45℃、好ましくは30〜35℃の温度に冷却すること、
所望により、上記冷却された物質を2以上の細片に切断すること、
第一延伸工程、ここで、上記物質が第一ローラーに供給され、次いで第一オーブンに供給され、ここで典型的には75〜95℃、好ましくは80〜90℃の温度に加熱され、次いで第二ローラーに供給される、ここで第二ローラーのローラー速度が第一ローラーのローラー速度より高い、および
第二延伸工程、ここで、上記物質が第三ローラーに供給され、次いで第二オーブンに供給され、ここで典型的には95〜120℃、好ましくは100〜110℃の温度に加熱され、次いで第四ローラーに供給される、ここで第四ローラーの速度が第三ローラーの速度より高い、
を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の製品を製造する方法。
【請求項11】
インフレーション工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の製品を園芸において使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項記載の製品を少なくとも80重量%含むロープ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514070(P2012−514070A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543454(P2011−543454)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050802
【国際公開番号】WO2010/074576
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511154124)ランクホルスト ピュール コンポシテ ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】