説明

ポリ塩化ビフェニル類の分析方法

【課題】 疎水性試料に含まれ、抗原抗体反応を用いたイムノアッセイによるポリ塩化ビフェニル類(PCB類〜の分析に妨害となる共存物質を、簡便な操作で、十分に除去して、イムノアッセイによりPCB類を分析しうる方法を提供する。
【解決手段】 本発明のPCB類の分析方法は、
(1)ポリ塩化ビフェニル類を含む疎水性試料を、多孔質担体に遊離SO3濃度5〜15質量%の発煙硫酸が含浸された発煙硫酸含浸担体と接触させる前処理工程、および
(2)該ポリ塩化ビフェニル類と抗体との抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ工程
を含むことを特徴とする。好ましくは多孔質担体は珪藻土である。疎水性試料を、発煙硫酸含浸担体が充填されたカラムに加え、通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル類の分析方法に関し、詳しくは疎水性試料中のポリ塩化ビフェニル類を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスなどに使用されている絶縁油などの疎水性試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類〔以下、PCB類と略称することがある。〕を分析するに際しては、PCB類の分析に妨害となる共存物質を予め除去することが必要であるが、このような共存物質には、カラムクロマトグラフ処理などの通常の処理方法だけでは分離が困難なものもある。このため、非特許文献1〔平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」〕に記載された、いわゆる公定法では、疎水性試料を濃硫酸と液−液接触させて処理する操作を繰り返したのちに、共存物質を上記カラムクロマトグラフ処理などの処理方法により除去する方法が開示されており、濃硫酸に代えて遊離SO3濃度25質量%の発煙硫酸を用いて疎水性試料を処理する方法も知られている。かかる処理方法によれば、疎水性試料に含まれる分離困難な妨害物質を除去することができる。濃硫酸または発煙硫酸と液−液接触させたのちの疎水性試料は、分液操作により濃硫酸または発煙硫酸から分離される。
【0003】
しかし、液−液接触させたのちの疎水性試料を濃硫酸または発煙硫酸から分離する操作を繰り返すことは煩雑である。
【0004】
一方、比較的短時間で、簡便に、妨害物質を除去しうる方法としては、疎水性試料を、多孔質担体に濃硫酸単独を含浸させた濃硫酸含浸担体と接触させる方法が知られており、特許文献1〔特開2001−116723号公報第9頁の段落番号0082〕には、この濃硫酸含浸担体を充填したカラムに、疎水性試料を通過させたのちに、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理を行うことにより、妨害物質の除去を図っている。
【0005】
しかし、濃硫酸単独を用いる従来の分解方法では、PCB類との分離が困難な妨害物質を十分に除去することができないという問題があった。
【0006】
【非特許文献1】平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」
【特許文献1】特開2001−116723号公報第9頁の段落番号0082
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者らは、疎水性試料に含まれ、PCB類の分析に妨害となる共存物質を、簡便な操作で、十分に除去して、PCB類を分析しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、
(1)ポリ塩化ビフェニル類を含む疎水性試料を、多孔質担体に遊離SO3濃度5質量%〜15質量%の発煙硫酸が含浸された発煙硫酸含浸担体と接触させる前処理工程、および
(2)該ポリ塩化ビフェニル類と抗体との抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ工程
を含むことを特徴とする前記ポリ塩化ビフェニル類の分析方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、遊離SO3濃度5〜15質量%の発煙硫酸を用いるので、疎水性試料に含まれる上記妨害物質を十分に除去することができることから、PCB類と抗体とのイムノアッセイでの共存物質による妨害を解消することができ、これによりPCB類を正確に分析できる。また、この発煙硫酸は多孔質担体に担持されているので、従来技術における妨害物質の除去に際して必要な、煩雑な分液操作を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法に適用される疎水性試料は、疎水性の液体試料であって、例えばトランス、コンデンサーなどの電気機器に絶縁、冷却などのために封入されて使用される絶縁油、該絶縁油を分解処理して得られる分解処理油などの油性試料が挙げられる。かかる油性試料は希釈されることなくそのまま用いられてもよいし、n−ヘキサンなどのような疎水性溶媒で希釈されて用いられてもよい。
【0011】
また、疎水性試料としては、例えば焼却炉から排出される煤塵、燃え殻、土壌から採取される土質試料などの固形試料、雨水、排水などの水質試料などから、n−ヘキサンなどのような疎水性溶媒により抽出されたPCB類を含む疎水性溶媒の溶液も挙げられる。
【0012】
かかる疎水性溶媒の溶液は、そのまま疎水性試料として用いてもよいが、通常は、PCB類と共に抽出される他の共存物質を分離するために、これを極性有機溶媒でさらに抽出し、得られた極性有機溶媒抽出液からPCB類を疎水性溶媒に転溶させることもできる。かかる極性有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、n−メチルピロリドンなどが挙げられる。極性有機溶媒抽出液から疎水性溶媒に転溶させるには、例えば極性有機溶媒抽出液に水を加えたのち、疎水性溶媒により抽出すればよい。
【0013】
本発明の方法において、前処理工程で用いる発煙硫酸含浸担体は、多孔質担体に発煙硫酸が含浸されてなるものである。多孔質担体としては、例えば珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、珪酸マグネシウム(フロリジル)、活性炭、ポーラスグラファイトカーボンなどが挙げられる。
【0014】
発煙硫酸は、濃硫酸に三酸化硫黄〔SO3〕ガスを吸収させたものであり、その遊離SO3濃度は、JIS K8741に従って測定される。一般に市販されている発煙硫酸の遊離SO3濃度は25質量%程度であるので、本発明で規定する遊離SO3濃度の発煙硫酸は、例えば市販の発煙硫酸に、濃硫酸、すなわちH2SO4濃度98質量%以上の硫酸を加えることにより調製することができる。
【0015】
発煙硫酸の遊離SO3濃度は、妨害物質を十分に除去しうる点で、5質量%以上、好ましくは7質量%以上であり、PCB類を精度よく分析できる点で、15質量%以下、好ましくは12質量%以下である。
【0016】
多孔質担体に対する発煙硫酸の含浸量は、多孔質担体に含浸されて保持されうる量であればよく、通常は、多孔質担体に対して0.5質量倍〜3質量倍程度である。
【0017】
疎水性試料を発煙硫酸含浸担体と接触させるには、通常は、疎水性試料を、発煙硫酸含浸担体が充填された発煙硫酸含浸担体カラムに加えて通過させればよい。発煙硫酸含浸担体カラムは、例えばカラムに多孔質担体を充填したのち、本発明で規定する遊離SO3濃度の発煙硫酸を加えればよい。発煙硫酸を加えることにより、カラム内で、多孔質担体に発煙硫酸が含浸されて発煙硫酸含浸担体が形成され、発煙硫酸含浸担体カラムが調製される。
【0018】
疎水性試料を発煙硫酸含浸担体と接触させる際の接触温度は、通常0℃〜50℃程度であり、接触時間は、通常3分〜10分程度である。
【0019】
疎水性試料の粘度によっては、そのままでは発煙硫酸含浸担体カラムを通過させることが困難な場合もあるが、このような場合には、適宜、疎水性試料を、例えばn−ヘキサンなどの疎水性溶媒で希釈することにより粘度を下げて用いてもよいし、発煙硫酸含浸担体カラムに疎水性試料を戴置したのち、さらに疎水性溶媒を流下させることにより希釈させながら通過させてもよい。
【0020】
疎水性溶媒試料は、あらかじめ脱水されていることが好ましい。脱水させるには、例えば乾燥剤と接触させればよく、発煙硫酸含浸担体カラムとして、その上流側にさらに乾燥剤を充填した発煙硫酸含浸担体層と乾燥剤層との2層構成のカラムを用い、疎水性試料が、この乾燥剤層を通過することにより脱水されてから、発煙硫酸含浸担体層を通過するように構成してもよいし、発煙硫酸含浸担体カラムの上流側に乾燥剤を充填した乾燥剤カラムを接続して、疎水性試料が、乾燥剤カラムを通過したのちに、発煙硫酸含浸担体カラムを通過するように構成してもよい。乾燥剤として通常は、無水硫酸ナトリウムなどのような発煙硫酸および濃硫酸に対して不活性な乾燥剤が用いられる。
【0021】
このようにして発煙硫酸含浸担体と接触したのちの疎水性試料を、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフ処理することにより、妨害物質を除去することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフ処理には、通常、カラムにシリカゲルが充填されたシリカゲルカラムが用いられ、通常は、発煙硫酸含浸担体カラムの下流側に接続されて用いられる。
【0022】
このような処理操作を施したのちの疎水性試料は、必要に応じて、例えば溶媒留去などの方法により濃縮されてもよい。また、通常は、PCB類をジメチルスルホキシド、アセトンなどの極性有機溶媒に転溶させる。極性有機溶媒に転溶させる方法としては、例えば疎水性試料を溶媒留去し、残渣に上記の極性有機溶媒を加えて溶解させる方法が挙げられるが、疎水性試料に残存する他の共存物質のうち、極性有機溶媒に不溶のものをPCB類と分離し、除去できることから、疎水性試料に対して不溶性の極性有機溶媒を加え、疎水性溶媒層と極性有機溶媒層との2層に層分離させたのち、分液により親水性溶媒層を得る方法が好ましく用いられ、分液前に溶媒留去などなどの方法により疎水性試料を濃縮してから分液してもよい。
【0023】
なお、必要に応じ、上記の処理操作を付して得られる疎水性試料に残存する他の共存物質を次のようにして除去することにより、分析精度の向上を図ることもできる。
【0024】
例えば上記他の共存物質のうち親油性のものは、該疎水性試料に含まれるPCB類を極性有機溶媒で抽出し、得られた極性溶媒抽出液を、親油性吸着剤を充填剤とするカラムクロマトグラフ処理することにより、PCB類と分離し、除去することができる。極性有機溶媒としては、前記と同様のものが挙げられる。親油性吸着剤とは、少なくとも表面が油性の物質と親和性のある材料で構成された固形の吸着剤であって、通常は粒状のものが用いられる。かかる親油性吸着剤としては、例えばカラムクロマトグラフ用充填剤、固相抽出用充填剤、逆相液体クロマトグラフィーのカラム充填剤として広く用いられているものが挙げられ、例えばジーエルサイエンス社からカラムクロマト充填剤「C18」、米国ウォーターズ(Waters)社から「SEP−PAK−C18」、「SEP−PAK−tC18」、「SEP−PAK−Vac tC18」などの商品名で市販されているものを用いることができる。
【0025】
当該カラムクロマトグラフ処理は、流下液として極性有機溶媒を用いることにより行われる。流下後の極性溶媒の溶液は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0026】
このようにして得られる極性有機溶媒の溶液に、親水性の他の共存物質が含まれる場合には、極性有機溶媒の溶液に含まれるPCB類を疎水性溶媒に転溶させた転溶液を、さらに多層シリカゲルカラムクロマトグラフ処理することにより、PCB類から分離し、除去することができる。
【0027】
ここで、極性有機溶媒抽出液に含まれるPCB類を疎水性溶媒に転溶させるには、例えば極性有機溶媒抽出液に水を加えたのち、疎水性溶媒で抽出すればよい。多層シリカゲルカラムクロマトグラフ処理は、例えばカラムに無処理のシリカゲル、水酸化カリウム被覆シリカゲル、硫酸被覆シリカゲルなどのシリカゲル充填剤が充填された多層構成の多層シリカゲルカラムに転溶液を通過させることにより行われる。通過後の転溶液は、溶媒留去などの方法により濃縮してもよい。
【0028】
かかる前処理を施した後、PCB類と抗体とのイムノアッセイにより、PCB類を分析する。
【0029】
このようなPCB類と抗体と抗原抗体反応を利用したイムノアッセイは、特に制限されるものではなく、適宜公知の方法を採用し得るが、例えば
(1)前処理工程で得られるPCB類に、該PCB類に対する1次抗体を過剰量加えて混合することにより、当該1次抗体を抗原抗体反応により該PCB類と結合させたのち、
(2)該1次抗体との抗原抗体反応能力を有し、蛍光物質で標識化された標識化2次抗体を過剰量加えて混合し、PCB類の類似化合物であるハプテン抗原が担体に固定化された抗原固定化担体と接触させることにより、上記でPCB類と結合しなかった過剰分の1次抗体を抗原固定化担体のハプテン抗原に結合させると共に、この結合した1次抗体に標識化2次抗体を結合させ、
次いで、
(3)このようにして1次抗体を介して抗原固定化担体に担持された標識化2次抗体の担持量を求めればよい。
【0030】
この方法によれば、PCB類の含有量が多い場合には、抗原固定化担体への標識化2次抗体の担持量が少なくなり、PCB類の含有量が少ない場合には、標識化2次抗体の担持量が多くなるので、抗原固定化担体への標識化2次抗体の担持量を求めることにより、PCB類の含有量を求めることができる。標識化2次抗体の担持量は、担持後の抗原固定化担体に紫外線などを照射して蛍光強度を測定する通常の蛍光分析法により求めることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0032】
参考例1
〔発煙硫酸含浸担体の調製〕
遊離SO3濃度25質量%の発煙硫酸〔和光純薬工業社製、試薬一級〕1mLおよび98%濃硫酸〔和光純薬工業社製、試薬特級〕2mLを混合して遊離SO3濃度8.3質量%の発煙硫酸を調製した。
【0033】
カラム(内容積約24mL)に珪藻土2gが充填された珪藻土カラム〔Merck社製「Extrelut NT3」〕に、上記で調製した発煙硫酸を加えて珪藻土に含浸させて、発煙硫酸含浸珪藻土カラムを調製した。この発煙硫酸含浸珪藻土カラムの上流側に無水硫酸ナトリウム〔和光純薬工業社製、残留農薬試験用〕1.5gを充填した。
【0034】
実施例1
〔模擬絶縁油の調製〕
市販のPCB類を含まない絶縁油に、添加後のPCB類含有量が0.1ppmとなるように市販の標準PCB類を加えて、模擬絶縁油1を得た。
【0035】
〔模擬絶縁油の前処理〕
発煙硫酸含浸珪藻土カラムの下流側にシリカゲルカラム〔Waters社製、「Sep Pak Silica Plus」〕を接続し、該珪藻土カラムに、上記で調製した模擬絶縁油1(0.5g)を添加し、その後、直ちにn−ヘキサン〔和光純薬工業社製、「ダイオキシン類測定用」〕1mLを加えたところ、加えた模擬絶縁油1およびn−ヘキサンは全て発煙硫酸含浸珪藻土カラムおよびシリカゲルカラムに保持された。n−ヘキサンを加えてから5分後に、さらにn−ヘキサン〔和光純薬工業社製、「ダイオキシン類測定用」〕5mLを加え、液面がシリカゲルカラムまで下がった時点で、さらにn−ヘキサン〔和光純薬工業社製、「ダイオキシン類測定用」〕10mLを加えて通過させて流出液を得た。
【0036】
〔ジメチルスルホキシドへの転溶〕
上記で得た流出液に、ジメチルスルホキシド〔和光純薬工業社製、生化学用試薬〕0.5mLを加えたのち、ロータリーエバポレーターにより、減圧下、30℃の温浴中で、n−ヘキサンが留出しなくなるまで濃縮したのち、5分間の遠心分離を行って、n−ヘキサン層(上層)とジメチルスルホキシド層(下層)との2層に層分離させた。その後、分液操作によりジメチルスルホキシド層(下層)を取り出して、ジメチルスルホキシド試料1を得た。
【0037】
〔イムノアッセイによるPCB類の分析〕
塩化ナトリウム〔和光純薬工業(株)製、残留農薬試験用〕8.0g、
リン酸水素二ナトリウム〔和光純薬工業(株)製、試薬特級〕2.9g、
塩化カリウム〔和光純薬工業(株)製、試薬特級〕2.0g、
リン酸二水素カリウム〔和光純薬工業(株)製、試薬特級〕0.2g、
アジ化ナトリウム〔和光純薬工業(株)製、試薬特級〕0.1gおよび
牛血清アルブミン〔SIGMA社製、Albumin Bovine Serum Fraction V〕1.0gをイオン交換水1Lに溶解して緩衝水溶液を調製した。
【0038】
上記で得たジメチルスルホキシド試料1(40μL)に、ジメチルスルホキシド〔和光純薬工業社製、生化学用試薬〕40μLを加え、上記で得た緩衝水溶液3.12mLを加えた。次いで、1次抗体〔モノクローナル マウス抗PCB抗体、Reserch Diagnostics Inc.製〕を濃度約2.5nmol/Lとなるように上記緩衝水溶液に溶解した水溶液0.4mLを加え、攪拌した後、標識化2次抗体〔CY−5標識ポリクローナル Fab2牛血清アルブミン、SIGMA社製〕を濃度約15nmol/Lとなるように上記緩衝水溶液に溶解した水溶液0.4mLを加え、攪拌して、測定溶液4mLを得た。
【0039】
式(1)

で示されるジクロロベンゼン誘導体(ハプテン抗原)1gをジメチルスルホキシド1mLと混合し、さらにメタノール100mLを加えて混合した。得られた溶液から16mLを採取し、濃度1質量%の牛血清アルブミン水溶液〔SIGMA社製、Albumin Bovine Serum Fraction V〕10mLを加え、生理食塩水〔滅菌した食塩水であり、100mL中にNaCl約0.9gを含む〕74mLを加えて一晩、振盪した。振盪後の溶液1mLを採取し、ビーズ状の担体〔アガロースビーズ、NHS-activatedSepharoseTM 4 fast flow、Amercham Bosciences社製、粒子径約0.1mm〕を容積で5mL加え、さらに生理食塩水10mLを加えて2時間振盪した。その後、濃度10質量%の牛血清アルブミン水溶液〔SIGMA社製、Albumin Bovine Serum Fraction V〕1mLを加えて、さらに2時間振盪したのち、ビーズ状の担体を取り出し、生理食塩水で洗浄して、クロロベンゼン誘導体を担体に固定化した抗原固定化担体を得た。この抗原固定化担体5mgを内容積2μm3の検出セル(透明カラム)に充填して、抗原固定化担体カラムを調製した。
【0040】
上記で得た測定溶液を上記緩衝水溶液および0.1質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液と容積比1:1:1で混合しながら、合計の通液速度0.75mL/分にて、上記で調製した抗原固定化担体カラムに通液したのち、通液後の抗原固定化担体カラムに紫外線を照射して蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定には、蛍光強度測定装置〔米国Sapidyne社製、「EndoBiosensor」〕を用いた。
【0041】
模擬絶縁油1について、上記の操作を3回ずつ行った。蛍光強度に基づく蛍光強度測定装置からの信号強度、この信号強度の標準偏差(SD)および分散(CV)を第1表に示す。
【0042】
実施例2
添加後のPCB類含有量がそれぞれ0.2ppm〔模擬絶縁油2〕、0.5ppm〔模擬絶縁油3〕、1ppm〔模擬絶縁油4〕、2ppm〔模擬絶縁油5〕、10ppm〔模擬絶縁油6〕、20ppm〔模擬絶縁油7〕、200ppm〔模擬絶縁油8〕となるように市販の標準PCB類を加えて、模擬絶縁油2〜模擬絶縁油8を調製した。また、市販のPCB類を含まない絶縁油をそのまま模擬絶縁油0とした。
模擬絶縁油1に代えて、上記で調製した模擬絶縁油2〜模擬絶縁油8および模擬絶縁油0を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、蛍光強度を測定した。結果を第1表に示す。









【0043】
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
模擬絶縁油 PCB類濃度 信号強度 CV SD
番号 (ppm) (mV) (%)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 0.1 22.8 33.3 31.6 5.6 19.3
2 0.2 21.4 32.8 29.5 5.9 21.0
3 0.5 15.0 26.1 23.4 5.8 27.0
4 1 10.1 19.4 18.3 5.1 31.8
5 2 5.9 10.6 12.3 3.3 34.8
6 10 2.4 3.9 4.9 1.3 33.9
7 20 2.1 3.3 3.0 0.6 21.6
8 200 1.3 3.3 3.1 1.1 41.9
───────────────────────────────────────
0 0 23.5 35.7 34.4 − −
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0044】
実施例3
各ジメチルスルホキシド試料の使用量を4μLとし、これにジメチルスルホキシド76μLを加えた以外は実施例1および実施例2と同様に操作して蛍光強度を測定する操作を、各模擬絶縁油について2回ずつ行った。蛍光強度測定装置からの信号強度およびその平均値を第2表に示す。
【0045】
第 2 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
模擬絶縁油 PCB類濃度 信号強度 平均値
番号 (ppm) (mV)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 0.1 43.4 44.1 43.7
2 0.2 41.1 42.1 41.6
3 0.5 38.5 40.2 39.3
4 1 36.5 37.8 37.1
5 2 29.9 30.9 30.4
6 10 12.3 12.2 12.2
7 20 6.8 7.2 7.0
8 200 2.2 1.5 2.8
─────────────────────────────
0 0 47.1 59.0 53.1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリ塩化ビフェニル類を含む疎水性試料を、多孔質担体に遊離SO3濃度5質量%〜15質量%の発煙硫酸が含浸された発煙硫酸含浸担体と接触させる前処理工程、および
(2)該ポリ塩化ビフェニル類と抗体との抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ工程
を含むことを特徴とする前記ポリ塩化ビフェニル類の分析方法。
【請求項2】
多孔質担体が珪藻土である請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記疎水性試料を、前記発煙硫酸含浸担体が充填されたカラムに加え、通過させる請求項1または請求項2に記載の分析方法。

【公開番号】特開2006−292654(P2006−292654A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116582(P2005−116582)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:日本農芸化学会2005年度(平成17年度)大会 開催日 :平成17年3月28日〜平成17年3月30日 予稿集発行日:平成17年3月5日 発表日 :平成17年3月29日 主催者名 :社団法人日本農芸化学会
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)