説明

ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールへのトリメチレンカーボネートの重合の溶剤を用いない方法

本発明は、1つ以上の固体酸触媒を用いた、非置換または置換ポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート1,3−プロパンジオールエーテル)ジオールへの非置換または置換トリメチレンカーボネートの重合の溶剤を用いない方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の固体酸触媒を用いた、ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールへのトリメチレンカーボネートの重合の溶剤を用いない方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロキシ末端材料を製造することが必要とされている。本明細書に記載した材料、ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールは、これらに限られるものではないが、生体材料、工業用ポリマー、パーソナルケア材料、コーティング、潤滑剤およびポリカーボネート/ポリウレタン(TPU)を含む数多くの用途に用いることができる。
【0003】
Arigaらによる非特許文献1およびKricheldorfらによる非特許文献2に記載されているとおり、TMCのカチオン重合では、開始剤は、ポリマー端部に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules 1997,30,737−744
【非特許文献2】J.Macromol.Sci.−Chem A 26(4),631−644(1989)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、
【化1】

の構造のポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールを製造する方法であって、
【0006】
式中、zは約1〜10の整数であり、nは約2〜100の整数であり、各R置換基は、独立に、H、C〜C20アルキル、C〜C20環状アルキル、C〜C25アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アリールアルキルからなる群から選択され、各R置換基は、近接するR置換基と共にC〜C環状構造基(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタン)を任意で形成することができ、
トリメチレンカーボネートまたはR置換トリメチレンカーボネートを、固体酸触媒と、トリメチレンカーボネートまたはR置換トリメチレンカーボネートの融点を超える温度で接触させて、ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールオリゴマー組成物を形成することを含む、方法である。
【0007】
通常、温度は摂氏約30度以上である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、トリメチレンカーボネート(TMC、1,3−ジオキサン−2−オン)から、高温(通常、摂氏30〜250度)重合で、溶剤を存在させずに、固体酸触媒を用いて、ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールを製造する方法に関する。反応は、下式により表わすことができる。
【化2】

【0009】
上記の構造において、各R置換基は、独立に、H、C〜C20アルキル、特に、C〜Cアルキル、C〜C20環状アルキル、特に、C〜C環状アルキル、C〜C25アリール、特に、C〜C11アリール、C〜C20アルカリール、特に、C〜C11アルカリールおよびC〜C20アリールアルキル、特に、C〜C11アリールアルキルからなる群から選択され、各R置換基は、近接するR置換基と共に環状構造基を任意で形成することができる。典型的に、かかる環状構造基は、C〜C環状基、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンである。
【0010】
上記の構造において、nは、約2〜100、特に、約2〜50の整数であり、zは約1〜約20、特に約1〜7、さらに約1〜5の整数である。
【0011】
ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールは、公知の方法を用いて分離することができる。
【0012】
TMCは、当業者に公知の様々な化学的または生化学的方法のいずれかにより調製される。TMCを調製する化学的な方法としては、これらに限られるものではないが、a)1,3−プロパンジオールとジエチルカーボネートの、亜鉛粉末、酸化亜鉛、錫粉末、ハロゲン化錫または有機錫の存在下での高温での反応、b)1,3−プロパンジオールおよびホスゲンまたはビス−クロロギ酸の反応による、後に、熱および、任意で、触媒を用いて解重合されるポリカーボネート中間体の生成、c)拭取り式膜蒸発器における真空下でのポリ(トリメチレンカーボネート)の解重合、d)1,3−プロパンジオールとウレアの、金属酸化物の存在下での反応、e)トリエチルアミンのTHF中1,3−プロパンジオールおよびエチルギ酸クロロの溶液への滴下による付加およびf)1,3−プロパンジオールとホスゲンまたはジエチルカーボネートの反応が挙げられる。TMC調製の生化学的方法としては、これらに限られるものではないが、a)ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネートと、1,3−プロパンジオールとの有機溶媒中でのリパーゼ触媒縮合、およびb)TMCを生成するポリ(トリメチレンカーボネート)のリパーゼ触媒解重合が挙げられる。1,3−プロパンジオールおよび/またはトリメチレンカーボネート(TMC)は、新たな原料から生化学的に得ることができる(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)。
【0013】
好ましくは、反応物質として、または反応物質の成分として用いる1,3−プロパンジオールの純度は、ガスクロマトグラフィー分析により求めると、約99重量%を超える、より好ましくは、約99.9重量%を超えるであろう。
【0014】
1,3−プロパンジオールは以下の特徴を有するのが好ましい。
(1)紫外線吸収が、220nmで約0.200未満、250nmで約0.075nm未満、275nmで約0.075未満、および/または
(2)CIELAB「b」明度が、約0.15未満(ASTM D6290)、270nmでの吸光度が約0.075未満、および/または
(3)過酸化物組成物が、約10ppm未満、および/または
(4)合計有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、ガスクロマトグラフィーにより測定すると、約400ppm未満、より好ましくは、約300ppm未満、さらにより好ましくは、約150ppm未満である。
【0015】
本明細書に開示された方法において触媒として有用なその他の固体酸樹脂としては、スルホン化テトラフルオロエチレンコポリマー、例えば、Nafion(登録商標)SAC−13またはNAFION(登録商標)NR50(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)コポリマー、E.I.DuPont de Nemours Company(Wilmington,DE)より入手可能なイオノマーおよびジビニルベンゼンで架橋したポリ(スチレンスルホン酸)、例えば、DOWEX(登録商標)50WX8−200、DOWEX(登録商標)Marathon C、DOWEX(登録商標)HCR−W2、DIAION(登録商標)SK1B、DIAION(登録商標)PK228、Purolite(登録商標)C−100、IONAC(登録商標)C−250、Amberlyst(商標)70およびMonoplus S100Hの水素形態が例示される。
【0016】
好ましいのは、スルホン化テトラフルオロエチレンコポリマー、例えば、NAFION(登録商標)NR50(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)コポリマー、DuPont(Wilmington,DE))より入手可能なイオノマーおよびAcros Organics N.V.(Fair Lawn,NJ)より入手可能なDOWEX(登録商標)50WX8−200(ジビニルベンゼンで架橋したポリ(スチレンスルホン酸)からなるイオン交換樹脂)である。本明細書に開示した方法は、溶剤を実質的に存在させず、または全く存在させずに実施するのが望ましい(「無溶剤」)。
【0017】
本明細書に開示した方法は、高温、通常、用いるモノマーの融点を超え、典型的には、摂氏約30〜250度、しばしば摂氏約50〜150度、好ましくは摂氏約100〜150度でなされる。反応物質を併せて添加したら、任意の便利な方法により混合してよい。本方法は、バッチ、半バッチまたは連続モードで行うことができ、通常、不活性雰囲気中でなされる(すなわち、窒素下)。反応物質を、触媒と接触させたら、反応を所望の時間続ける。通常、少なくとも6パーセントのTMCを重合すると、約3〜6時間後、所望のポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールが得られ、約75パーセントを超える変換率が、約25時間以内に達成される。以下の実施例に示すとおり、触媒、触媒の量、反応温度および時間の適切な選択により、100パーセントの変換率が容易に達成される。
【0018】
さらに、所望の重合度mは、温度を変えることにより容易に達成することができる。以下の実施例に示すとおり、高温だと変換率が高くなり、m値は、例えば、約0.5以上低くなる。本実施形態において、nは約2〜100、より具体的には約2〜50、zは約1〜約20、より具体的には約1〜10の整数である。
【0019】
得られるポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールは、濃縮後ろ過を含む、ろ過等の任意の便利な手段により、未反応の出発材料および触媒から容易に分離される。
【0020】
本明細書に開示した方法によって、選択した溶剤および/または触媒、ならびに用いるこれらの材料の量に基づいて、重合度を選択することができる。本方法から得られる材料の特性を、粘度をはじめとして変えることができ、パーソナルケア、(熱可塑性ポリウレタンをはじめとする)コーティング、エラストマー、および潤滑剤などの製品への広範な使用が見出せるため、これは有利である。生成されたジオールは、生体材料、工業用ポリマー、パーソナルケア材料、コーティング、潤滑剤およびポリカーボネート/ポリウレタン(TPU)を含む製品に広く用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下の実施例で行われる方法は、下式で表わすことができる。
【化3】

【0022】
上記の構造において、各Rは、独立に、H、C〜C20アルキル、特に、C〜Cアルキル、C〜C20環状アルキル、特に、C〜C環状アルキル、C〜C25アリール、特に、C〜C11アリール、C〜C20アルカリール、特に、C〜C11アルカリール、C〜C20アリールアルキル、特に、C〜C11アリールアルキルからなる群から選択され、各R置換基は、近接するR置換基と共に環状構造を任意で形成することができる。
【0023】
上記の構造において、nは、約2〜100、特に、約2〜50の整数であり、zは約1〜約10、特に約1〜7、さらに約1〜5の整数である。
【0024】
TA Instruments Q2000 DSCで、10℃/分の加熱速度およびNパージを用いて、DSCを実施した。用いたプロフィールは、−90〜100℃の加熱、冷却および再加熱であった。TA Instruments Q5000 TGAで、10℃/分の加熱速度およびNパージを用いて、TGAを実施した。
【0025】
実施例1〜3
これらの実施例は、溶剤を用いずに、様々な温度で、Nafion(登録商標)NR50イオン交換樹脂を触媒として用いるポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールの製造を示すものである。
【0026】
トリメチレンカーボネート(40.00g、0.392モル)およびNafion(登録商標)NR50(4.00g)を、メカニカルスターラーを備えた3つの別個のフラスコに窒素下で入れた。フラスコを、100、120、140℃に維持した油浴に入れた。時折、一定分量を採り、プロトンNMRにより分析した。以下の表に結果の一覧を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1〜3で製造した材料の分子量を求めた。これは、各材料についての「m」の値であった。以下の表に結果を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例1および2の熱分析(TGA、1分当たり10℃の加熱速度で実施)によれば、以下の表に結果の一覧を示すとおり、材料は熱的に安定していたことが分かった。
【0031】
【表3】

【0032】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(式中、zは約1〜10の整数であり、nは約2〜100の整数であり、そして各Rは、独立に、H、C〜C20アルキル、C〜C20環状アルキル、C〜C25アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アリールアルキルからなる群から選択され、そしてここで各R置換基は、隣接するR置換基と共にC〜C環状構造基を任意で形成することができる)
の構造のポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールを製造する方法であって、
トリメチレンカーボネートまたはR置換トリメチレンカーボネートを、固体酸触媒と、トリメチレンカーボネートまたはR置換トリメチレンカーボネートの融点を超える温度で接触させて、ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールオリゴマー組成物を形成させることを含む、上記方法。
【請求項2】
トリメチレンカーボネートが、非置換トリメチレンカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体酸触媒が、ジビニルベンゼンで架橋されたポリ(スチレンスルホン酸)を含むイオン交換樹脂からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体酸触媒が、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)コポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオールオリゴマーを単離することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
温度が摂氏30度を超える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により製造されるポリ(トリメチレングリコールカーボネートトリメチレングリコールエーテル)ジオール。

【公表番号】特表2011−505468(P2011−505468A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536129(P2010−536129)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084693
【国際公開番号】WO2009/070587
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】