説明

ポンプ付き容器

【課題】 ディップチューブ内に液の浸入を防止して使用を開始した際の初流液の品質を確実に確保できるポンプ付き容器を提供する。
【解決手段】 ポンプ付き容器は、ポンプ10に内容液注出用のディップチューブ16が装着されたものであって、前記ディップチューブ16の内容液の入り口端部16aには、ポンプ10使用時にポンプ10の吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ16内への内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ10不使用時に閉弁してディップチューブ16内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構18を付加したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不使用時にディップチューブへの液流入を防止できるポンプ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式容器を用いて製品設計を行なう場合、充填する内容液と容器の適性を見るため様々な安定性評価を行なうことがある。特に、ポンプの内容液を吸い上げるチューブ(材質はPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)が多い、以後「ディップチューブ」と記載)については、内溶液の油溶(有効成分含む)成分が吸着し、成分が減量してしまうという課題がある。
【0003】
この課題に対して、ディップチューブの材質を選定することにより改善するケースもあるが、メーカーでの生産性制約等もあり材質がPE,PPとなることが多く、材質による改善は実際には難しい。
【0004】
特に問題となるのは使用開始前に、ディップチューブ内に内容液が浸入してしまい、長期間滞留することで滞留液の成分を著しく吸着することであり、使用開始した際の初流液の品質を確保できないことである。
【0005】
ここで、ポンプ付き容器の流入防止弁に関する従来技術を説明する。
【0006】
まず、実公昭31−3859号公報(:特許文献1という)では、アイロンかけ用の噴霧器が開示される。この噴霧器では、ノズル下方に繋がるディップチューブ(吸入管)下端の小孔を小球によって塞いでおり、ディップチューブ内の液を圧縮して噴霧する際にディップチューブ下端にある小球が逆止弁様に働く。この逆止弁として働く小球は、ディップチューブ内を自由に上下できる構造であり、横倒し等の姿勢によっては閉鎖能力に欠けていた。
【0007】
したがって、特許文献1の噴霧器は、この小球の閉鎖機能の不足によって、使用開始前にディップチューブへの液浸入を防止できず、上記課題に対応できないものであった。
【0008】
また、実開昭56−106861号公報(:特許文献2)では、ディップチューブ内に液浸入させない方法として、ディップチューブ(吸い上げ管)端部に、「密封栓」、「キャップ体」、「薄膜」を被嵌する方法を採用している。また、チューブの開封方法としては、「脱抜」「針金等」で開口「ハサミ、ナイフ等で切断」するものとなっている。噴霧装置のディップチューブ端部を密封することでポンプ内部に液浸入をさせないことで主にポンプ内の金属腐食等を防止し、使用開始前の保存状態を向上させるようとするものである。
【0009】
しかしながら、この方法では、使用開始前にディップチューブに液浸入をさせない方法として「流入防止弁」を用いておらず、使用開始時に密封部を破壊・分解しなければならず面倒であり、従来の使用性を損なわずに課題を解決することができないものであった。
【0010】
また、特開平8−290083号公報(:特許文献3)では、ポーション容器様のリフィル専用容器(開口部がシール材でシールされている)にシールを突き破るための鋭利な先端形状を持つディップチューブが取り付けられているディスペンサー容器である。使用前にはディップチューブが容器内に入っていないので、液浸入はしていない構成とも言える。本来リフィール構造を目的としたポーション容器様のリフィル専用容器(開口部にシール材でシールされている)を取り替えながら使用できるものである。
【0011】
しかしながら、使用開始前にディップチューブに液浸入させないためにリフィル専用容器を必要としてディップチューブが当初から装着されている通常の容器製品には不向きであり、上記課題に対応できないものであった。
【0012】
また、実用新案登録第3154499号公報(:特許文献4)では、電動噴霧器において容器内の圧力調整機構に天然ゴム、エラストマー等の材質の逆止弁を用いた構造が開示されている。小型噴霧器が作動しているとき容器内が負圧になることで噴霧液が出難くなることを解決するため、容器に天然ゴム・エラストマー等の逆止弁を装着して容器内の負圧改善と内容液の逆流を防止できるようにしている。
【0013】
しかしながら、当該材質の逆止弁を使用して容器内部での圧力に態様する構造ではあるが、チューブ内への液浸入防止を目的としておらず、通過する流体は「空気」であり、上記課題に対応できないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実公昭31−3859号公報
【特許文献2】実開昭56−106861号公報
【特許文献3】特開平8−290083号公報
【特許文献4】実用新案登録第3154499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のように従来の技術では、ポンプ付き容器において、ディップチューブ内への内容液の浸入防止が不十分で、内溶液がディップチューブ内に長期間滞留することで滞留液の成分を著しく吸着し、使用開始した際の初流液の品質を確保できない課題が完全に解消できなかったり、浸入を防止できるものであっても使用者の利便性においては課題を残すものであった。
【0016】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ディップチューブ内に液の浸入を防止して使用を開始した際の初流液の品質を確実に確保できるポンプ付き容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はポンプ付き容器に係るものである。
発明者は、ディップチューブを特別な材質に変更することなく内容液成分の吸着を解決できる方法として、ディップチューブ内に内容液が浸入しないチューブ構造を研究した。
【0018】
また、副次的効果として、ディップチューブに液浸入が起こらないことでポンプの液排出口から使用開始前に液漏れする事故防止の機能も得られるチューブ構造も研究した。
【0019】
ポンプ式容器は、従来、液状洗浄剤や口腔洗口液等を入れて使用することが多い。使用開始前のポンプは、機関部が動作しないように固定されており、ディップチューブ内の気密は保たれている。しかしながら、保管中の諸条件によりディップチューブ内に液が浸入してしまうことを見いだした。
【0020】
つまり、ディップチューブ内への液浸入は、「容器内圧の上昇による機関部側へのエアリーク」、「チューブ断面の表面張力による気液置換」、「内容液の攪拌による内圧上昇と気液置換」の3パターンが認められる。
【0021】
そこで、発明者は、液が浸入する諸原因に対策を立てるためディップチューブの入口端部に一定圧で動作する流入防止弁を装着することによって、上記の諸原因のうちの未使用時に内圧上昇によっては開弁せずに液浸入を防止し、ポンプ作動時に使用可能とする構成が考えた。このように動作差圧を利用することで問題が解決する。
【0022】
このような観点から本発明を案出したものである。
【0023】
本発明は、キャップ一体式のポンプをボトルに装着し、ポンプを作動させることによってボトル内の内溶液を注出できるようにしたポンプ付き容器であって、ポンプに内容液注出用のディップチューブが装着されたポンプ付き容器において、
前記ディップチューブの内容液の入り口端部には、ポンプ使用時にポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ内への内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ不使用時に閉弁してディップチューブ内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構を付加したことを特徴とするポンプ付き容器である。
【0024】
本発明において、前記浸入防止機構は、ポンプ使用時にポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ内への内容液の流通を許容し、所定圧に達しないときに閉弁して液体がディップチューブ内に浸入するのを防止する機構であることが好適である。
【0025】
また、本発明において、前記浸入防止機構は、中央のドーム部の周囲にフランジ部が形成された膜状の弾性体からなる弁体と、ディップチューブに弁体を装着する部材とを備え、前記ドーム部にスリットが形成されていて、当該スリットがポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開口して内容液の流通を許容し、一方、所定圧未満のときにスリットが閉鎖しかつ、内容液の表面張力によってスリットからディップチューブ内に内容液が浸入しない構造になっていることが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のポンプ付き容器によれば、ポンプに内容液注出用のディップチューブが装着されたポンプ付き容器において、前記ディップチューブの内容液の入り口端部には、ポンプ使用時に開弁してディップチューブ内に内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ不使用時にディップチューブ内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構を付加したものであるので、使用前のポンプ不使用時にディップチューブ内に内容液が浸入することがなく、内溶液の油溶(有効成分含む)成分が吸着し、成分が減量してしまうことを確実に防止でき、かつ、使用開始時にスムーズな液注出ができる。
【0027】
前記浸入防止機構を、ポンプ使用時にポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ内への内容液の流通を許容する機構として、不使用時にディップチューブ内に液が入らず、一方、所定圧以上で開弁して確実なポンプ作動ができるようにしている。
【0028】
また、前記浸入防止機構は、中央のドーム部の周囲にフランジ部が形成された膜状の弾性体からなる弁体であって、前記ドーム部にスリットが形成されていて、当該スリットがポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開口して内容液の流通を許容し、一方、所定圧未満のときにスリットが閉鎖しかつ、内容液の表面張力によってスリットからディップチューブ内に内容液が浸入しない構造にすることによって、弾性体からなる弁体とそれをディップチューブに取り付ける部材という簡単な構成で、浸入防止機構を構成することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るポンプ付き容器のポンプ原位置状態の説明図である。
【図2】ポンプが不使用または未使用でノズルヘッドが押し込まれた状態の前記容器の説明図である。
【図3】前記ポンプのディップチューブの下端に設けられた浸入防止機構の縦断した説明図である。
【図4】前記浸入防止機構の分解した斜視説明図である。
【図5】前記浸入防止機構の構造例の特性の説明図である。
【図6】前記ポンプ付き容器の性能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1〜図4は本発明の実施形態に係るポンプ付き容器の構造の説明図、図5〜図6は、作用効果の説明図である。
【0032】
図1〜図4に示すように、ポンプ付き容器は、キャップ一体式のポンプ10をボトル(容器本体)12に装着し、ポンプ10を作動させることによってボトル12内の内溶液を吐出ノズル14から注出できるようにしたポンプ付き容器であって、ポンプ10に内容液注出用のディップチューブ16が装着されたものである。
【0033】
前記ディップチューブ16の内容液の入り口端部16aには、ポンプ10使用時に開弁してディップチューブ16内に内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ10不使用時にディップチューブ16内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構18を付加したものである。
【0034】
ここで、ポンプ10について説明する。図1はポンプ10使用時にノズルヘッド20を押し下げる前の状態を示し、図2はポンプ10不使用時または未使用時にノズルヘッド20を押し下げた状態でノズルヘッド20を螺合する(首部26の雄ネジ26aを筒壁24aの雌ネジ24bにねじ込む)ことによって固定した状態を示している。
【0035】
ボトル12上部は下部よりも細径になった口元部12aの開口周囲の外周面に基部キャップ部22が螺合される。基部キャップ部22の上部に肩カバー24が装着され、この肩カバー24の中央部に筒壁24aが下方に向けて延在している。筒壁24a内周面に雌ネジ24bが形成されている。
【0036】
ノズルヘッド20には、その側方に延在した吐出ノズル14とノズルヘッド20に中空管路が連通して下方に延びる首部26とが一体的に設けられている。首部26が前記筒壁24a内の進退動(上下動)可能に挿入され,首部26の外周面に雄ネジ26aが形成されている。
【0037】
前記ポンプ10は、ボトル口元部12aと基部キャップ部22との間に設けたシリンダー部28と、シリンダー部28内を摺動するため、首部26下端にやや上下可動に設けられたピストン部30とを有している。首部26のピストン部30の設けられている位置には、首部26内に連通する導入孔26bが形成されていて、吐出ノズル14の開口に連通している。詳細に述べると、前記シリンダー部28は、上部にフランジ28aが形成されており、フランジ28aを首部26上端と基部キャップ部22とで挟み付けて前記シリンダー部28をボトル12の首部26に固定している。シリンダー部28内には下部が段状に先細になって内部にボールからなる弁部材28bの係止箇所(弁部材28bより小さな内径の段部)が形成されていて、シリンダー部28内に弁部材28bが上下動可能に配設されている。さらに弁部材28bの係止箇所より下方部内にディップチューブ16が挿着固定されている。なお、シリンダー部28内にスプリング32が配置される。このスプリング32の下端がシリンダー部28内に係止され、また、スプリング32の上端が首部26下端に係止され、これによって、このスプリング32が、首部26をシリンダー部28に対して上方に付勢している。
【0038】
ポンプ10の作動は、まず、ユーザがノズルヘッド20を押圧して下方に移動させ(その際、ピストン部30が首部26と相対的に上方向に移動して導入孔26bが開状態になり)、これによって、シリンダー部28内をピストン部30が下方に移動する。弁部材28bがディップチューブ16への流通を遮断するので、シリンダー部28内のピストン部30下方空間内の流体(内容液)が圧縮され、内容液は導入孔26bを通って吐出ノズル14から吐出される。当初、シリンダー部28内に空気があった場合、その空気が吐出ノズル14から排出される。
【0039】
次いで、ユーザが押圧を緩めると、首部26およびノズルヘッド20がピストン部30と共にスプリング32の弾発力により上方に移動して(その際、ピストン部30が首部26と相対的に下方向に移動して導入孔26bが閉状態になり)、シリンダー部28内が負圧になり、弁部材28bが開弁して塗布液が吸い上げられてシリンダー部28内に流入する。
【0040】
なお、図2は使用前に肩カバー24の雌ネジ24bに首部26の雄ネジ26aを螺合させてノズルヘッド20を固定しているものである。
【0041】
ここで、前記浸入防止機構18は、ポンプ10使用時にポンプ10の吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ16内への内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ10不使用時にディップチューブ16内に内容液が浸入するのを防止する機構である。
【0042】
すなわち、図3に示すように、前記浸入防止機構18は、中央のドーム部34の周囲にフランジ部36が拡径して形成された膜状の弾性体からなる弁体38と、ディップチューブ16に弁体38を装着する筒状部材40とを備え、前記ドーム部34にスリット34aが形成されていて、当該スリット34aがポンプ10の吸入負圧が所定圧以上になったときに開口して内容液の流通を許容してポンプ10内に内容液が吸い上がる。一方、所定圧未満のときにスリット34aが閉鎖しかつ、内容液の表面張力によってスリット34aからディップチューブ16内に内容液が浸入しない構造になっている。
【0043】
筒状部材40は、軸方向の上下が開口しており、上端がディップチューブ16に外嵌可能な寸法の開口でありディップチューブ16に差込むようになっている。また筒状部材40の下端が鍔状に狭くなっている。筒状部材40をディップチューブ16に外嵌すると、その鍔状に狭くなった部分とディップチューブ16の下端とで前記弁体38のフランジ部36を挟んで固定する構造となっている。筒状部材40はディップチューブ16に接着剤によって接着したり、圧入したり、互いに凹凸嵌合部を設けて嵌合したり等、各種方法で固定する。
【0044】
したがって、実施形態のポンプ付き容器によれば、前記ディップチューブ16の内容液の入り口端部には、ポンプ10使用時に開弁してディップチューブ16内に内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ10不使用時にディップチューブ16内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構18を付加したものであるので、使用前のポンプ10不使用時にディップチューブ16内に内容液が浸入することなく、使用時にスムーズな液注出ができる。
【0045】
前記浸入防止機構18を、ポンプ10使用時にポンプ10の吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ16内への内容液の流通を許容する機構として、不使用時にディップチューブ16内に液が入らず、一方、所定圧以上で開弁して確実なポンプ10作動ができるものである。
【0046】
また、前記浸入防止機構18は、中央のドーム部34の周囲にフランジ部36が形成された膜状の弾性体からなる弁体38であって、前記ドーム部34にスリット34aが形成されていて、当該スリット34aがポンプ10の吸入負圧が所定圧以上になったときに開口して内容液の流通を許容し、一方、所定圧未満のときにスリット34aが閉鎖しかつ、内容液の表面張力によってスリット34aからディップチューブ16内に内容液が浸入しない構造にすることによって、弾性体からなる弁体38とそれをディップチューブ16に取り付ける部材という簡単な構成の浸入防止機構18を提供できる。
【0047】
ここで、前記ディップチューブ16に装着する浸入防止機構18の原理について説明する。
【0048】
ディップチューブ16への内容液流入の諸条件について研究した。
【0049】
ディップチューブ16への内容液流入が起こるケースとして、(ア)「ボトルをスクイズし内圧を上げた場合」と、(イ)「ボトルを倒した場合」の事象を認めることができる。経験値的には、(ア)は「容器内圧の上昇による機関部側へのエアーリーク」と考えられ、(イ)は「チューブ断面の表面張力による気液置換」、(ア)、(イ)の複合条件として「内容液の攪拌による内圧上昇と気液置換」が起こっているものと仮定する。上記3仮説の検証を行なった。
【0050】
ボトル内圧上昇測定結果について説明する。
この場合、次の仕様であった。
使用容器:吉野工業株式会社製900ml規定量、PETボトル
内容液:ライオン株式会社製液体歯磨(粘度:0.001〜0.003pa・s(1〜3cp)
充填量:900ml
なお、浸入防止機構(逆止弁)の性能を図6に示す
【0051】
【表1】



製品が受けると予測できる全ての条件でボトル内圧の上昇値を測定して、最大で16kpaの内圧上昇が起こることを確認した。
【0052】
また、ディップチューブ内の液置換率について比較した。
【0053】
従来チューブ内径が9.5(mm)、5.0(mm)、4.0(mm)のポンプ容器と、本発明の浸入防止機構(流入防止弁)付ポンプ容器でチューブ内径5.5(mm)のものを比較した。
【表2】


上記のディップチューブ口径の違いあるポンプ付き容器を従来と本発明とで比較した結果の液置換率を図5に示す。
【0054】
この図5から内圧が高いほど液浸入が起こることが判った。また、口径が大きいほど表面張力が保持できず液が浸入することが判った。また、姿勢に加圧の条件を加えると、さらに液が浸入しやすいことが判った。以上より上記3仮説が正しいことが判った。
【0055】
そして、前記検証結果より、内圧上昇に対応でき、表面張力も保持できる工夫ができればディップチューブ内への液浸入は防止できることが可能と考えて改善方法を考えた。
【0056】
容器内圧を16kpaまで液浸入をさせない。
【0057】
通常の使用時ポンプ吸引圧(98kpa:真空圧1kgf/cmより)では液が浸入できる。また、チューブ端面に空気の表面張力を保てる工夫を施す。
【0058】
そのため、吸引圧16kpa〜98kpaで通常時開弁する。そして、吸引圧をかけないときは16kpa以下で開弁せず、ディップチューブ内に内容液が浸入することがない。
【0059】
なお、上記条件は一例であって、本発明は上記条件に限定されないことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポンプ付き容器は、家庭用洗剤、入浴用洗剤手洗い用洗剤等の液体製品を収容したポンプ付き容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 ポンプ
12 ボトル
12a 口元部
14 吐出ノズル
16 ディップチューブ
16a 口端部
18 浸入防止機構
20 ノズルヘッド
22 基部キャップ部
24 肩カバー
24a 筒壁
24b 雌ネジ
26 首部
26a 雄ネジ
26b 導入孔
28 シリンダー部
28a フランジ
28b 弁部材
30 ピストン部
32 スプリング
34 ドーム部
34a スリット
36 フランジ部
38 弁体
40 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ一体式のポンプをボトルに装着し、ポンプを作動させることによってボトル内の内溶液を注出できるようにしたポンプ付き容器であって、ポンプに内容液注出用のディップチューブが装着されたポンプ付き容器において、
前記ディップチューブの内容液の入り口端部には、ポンプ使用時にポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開弁してディップチューブ内への内容液の流通を許容し、かつ、ポンプ不使用時に閉弁してディップチューブ内に内容液が浸入するのを防止する浸入防止機構を付加したことを特徴とするポンプ付き容器。
【請求項2】
前記浸入防止機構は、中央のドーム部の周囲にフランジ部が形成された膜状の弾性体からなる弁体と、ディップチューブに弁体を装着する部材とを備え、前記ドーム部にスリットが形成されていて、当該スリットがポンプの吸入負圧が所定圧以上になったときに開口して内容液の流通を許容し、一方、所定圧未満のときにスリットが閉鎖しかつ、内容液の表面張力によってスリットからディップチューブ内に内容液が浸入しない構造になっていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140176(P2012−140176A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1175(P2011−1175)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】