説明

ポンプ循環量制御温度調節装置

【課題】負荷の温度を高精度に制御でき、省エネルギーを図って運転コストの低減を図る。
【解決手段】ポンプ循環量制御温度調節装置10は、タンク20、ポンプ41、負荷51、および熱交換器21を接続してブライン循環回路61を形成する複数の配管71と、冷却機30と、ポンプの回転数を可変制御するためのインバータ43と、熱交換器において冷却されたブラインの温度を検出する第1センサ81と、負荷の温度T2aを検出する第2センサ82と、を有する。コントローラ(80)は、ブライン温度T1を負荷の設定温度よりも低い温度に維持するように冷却機の作動を制御する。コントローラはさらに、ポンプの回転数を可変制御する運転周波数をインバータに出力し、負荷の温度を下げるときにはポンプの回転数を増加してブラインの循環流量を増加させ、負荷の温度を上げるときにはポンプの回転数を減少してブラインの循環流量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷にブラインを供給することによって負荷の温度を調節するポンプ循環量制御式の温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや半導体を生産するプロセスあるいは試験においては、温度制御を行うことが必須条件であり、種々の温度調節装置が使用されている。温度調節装置のなかには、ワークや検査装置などの負荷に、温度を調節した熱媒体つまりブラインを供給し、負荷の温度を設定温度に制御している。例えば、特許文献1に示される温度調節装置にあっては、負荷に供給するブラインの循環流量を一定にしたまま、比較的低温のブラインを混合させる量を変更することによって、負荷に供給するブラインの温度を調節している。比較的低温のブラインの混合量は、バルブの開度を制御することによって変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−89436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術においては、バルブの開度を制御することによって負荷に供給するブラインの温度を調節しているが、バルブの可動機構には、機械的なあそびが必ず存在する。このような機械的なあそびによって、比較的低温のブラインの混合量を高精度に変更することは難しい。したがって、負荷に供給するブラインの温度を高精度に調節することが難しく、負荷の温度を高精度に制御することが難しくなる。
【0005】
負荷に供給するブラインの循環流量が一定であるので、ポンプの動力分による発熱は一定である。このため、負荷の発熱量が比較的少ない運転中においても、ポンプの動力分の発熱を除去する必要があり、冷却負荷が低減しない。したがって、省エネルギーを図ることができず、運転コストの低減を図ることができないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、負荷の温度を高精度に制御でき、省エネルギーを図って運転コストの低減を図り得るポンプ循環量制御温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のポンプ循環量制御温度調節装置は、ブラインを収納するタンクと、ブラインの循環流量を調節自在なポンプと、ブラインが供給される負荷と、前記負荷から戻されるブラインが流れる熱交換器と、前記タンク、前記ポンプ、前記負荷、および前記熱交換器を接続してブライン循環回路を形成する複数の配管と、前記負荷から戻されるブラインを前記熱交換器において冷却するための冷却機と、前記ポンプの回転数を可変制御するためのインバータと、前記熱交換器において冷却されたブラインの温度を検出する第1センサと、前記負荷の温度を検出する第2センサと、前記第1センサによって検出したブライン温度の信号、および前記第2センサによって検出した負荷の温度の信号が入力されるコントローラと、を有している。
【0008】
前記コントローラは、ブライン温度を前記負荷の設定温度よりも低い温度に維持するように前記冷却機の作動を制御し、かつ、ポンプの回転数を可変制御する運転周波数をインバータに出力してブラインの循環流量を増減させるように前記ポンプの作動を制御する。コントローラは、前記負荷温度を下げるときには前記ポンプの回転数を増加してブラインの循環流量を増加させ、前記負荷温度を上げるときには前記ポンプの回転数を減少してブラインの循環流量を減少させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポンプ循環量制御温度調節装置によれば、インバータによってポンプの回転数を制御することによってブラインの循環流量を調節しており、機械的なあそびに起因する不感帯が生じることがない。このため、ブラインの循環流量を高精度に変更することができ、その結果、負荷の温度を高精度に制御することが可能となる。
【0010】
また、負荷に供給するブラインの循環流量を可変とすることによって、負荷の発熱量が比較的少ない運転中には、ブラインの循環流量が少なくなって、ポンプの動力分による発熱が少なくなる。したがって、負荷に供給するブラインの循環流量を一定にする形態に比べて冷却負荷が低減し、省エネルギーを図って、運転コストの低減を図ることができる。
【0011】
もって、本発明によれば、負荷の温度を高精度に制御でき、省エネルギーを図って運転コストの低減を図り得るポンプ循環量制御温度調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポンプ循環量制御温度調節装置を示す構成図である。
【図2】冷却機の冷凍サイクルを示す構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るポンプ循環量制御温度調節装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1を参照して、ポンプ循環量制御温度調節装置10(以下、単に、「温度調節装置10」という)を概説する。温度調節装置10は、ブラインを収納するタンク20と、ブラインの循環流量を調節自在な第1ポンプ41(ポンプに相当する)と、ブラインが供給される第1負荷51(負荷に相当する)と、第1負荷51から戻されるブラインが流れる熱交換器21と、タンク20、第1ポンプ41、第1負荷51、および熱交換器21を接続して第1ブライン循環回路61を形成する第1配管系71(複数の配管に相当する)と、第1負荷51から戻されるブラインを熱交換器21において冷却するための冷却機30と、第1ポンプ41の回転数を可変制御するための第1インバータ43(インバータに相当する)と、を有している。図示する温度調節装置10は、第2ポンプ42(他のポンプに相当する)と第2負荷52(他の負荷に相当する)とを含む第2ブライン循環回路62(他のブライン循環回路に相当する)が、タンク20の出口側と熱交換器21の入口側とに、第1ブライン循環回路61と並列的に接続されている。具体的には、温度調節装置10は、ブラインの循環流量を調節自在な第2ポンプ42と、ブラインが供給される第2負荷52と、タンク20、第2ポンプ42、第2負荷52、および熱交換器21を接続して、第1ブライン循環回路61に対して並列的に接続される第2ブライン循環回路62を形成する第2配管系72(複数の他の配管に相当する)と、第2ポンプ42の回転数を可変制御するための第2インバータ44(他のインバータに相当する)と、を有している。温度調節装置10は、熱交換器21において冷却されたブラインの温度T1を検出する第1センサ81と、第1負荷51の温度T2aを検出する第1負荷用センサ82(第2センサに相当する)と、第2負荷52の温度T2bを検出する第2負荷用センサ83(他の第2センサに相当する)と、温度調節装置10全体の制御を司るコントローラ80と、を有している。コントローラ80には、第1センサ81によって検出したブライン温度T1の信号、第1負荷用センサ82によって検出した第1負荷51の温度T2aの信号、および第2負荷用センサ83によって検出した第2負荷52の温度T2bの信号が入力される。
【0015】
コントローラ80は、ブライン温度T1を負荷の設定温度よりも低い温度に維持するように冷却機30の作動を制御する。コントローラ80は、第1と第2のポンプ41、42の回転数を可変制御する運転周波数を第1と第2のインバータ43、44に出力して、第1と第2のブライン循環回路61、62におけるそれぞれのブラインの循環流量を増減させるように第1と第2のポンプ41、42の作動を制御する。
【0016】
以下、詳述する。
【0017】
負荷51、52は、ワーク、検査装置、製造装置、あるいは恒温装置などであるが、本発明では特に限定されない。負荷側のブラインとしては、例えば、冷媒、純水などが用いられ、負荷Wに応じた媒体が選択される。冷却機側のブラインとしては、例えば、冷媒、冷水などが用いられ、負荷側のブラインに応じた媒体が選択される。
【0018】
熱交換器21は、伝熱面積が広くて熱交換効率が高いが、負荷側のブラインを保有する量が比較的少ない構造を有する熱交換器である。熱交換器21は、例えば、プレート式熱交換器から構成することができる。
【0019】
図2をも参照して、冷却機30の冷凍サイクルは、冷媒を圧縮するコンプレッサ31と、冷却水が流通する凝縮器32と、膨張弁33と、蒸発器として機能する熱交換器34と、を有する。冷却機側のブラインの出口温度T0は、熱交換器34に流入する冷媒の温度を調節することにより調節される。冷媒の温度は、冷却機30の容量を制御することにより調節される。冷却機30の容量制御は、ホットガス流量を制御することにより行われる。冷却機30には、コンプレッサ31の出口側と膨張弁33の出口側とを連通するホットガスバイパス配管35と、ホットガスバイパス配管35の途上に配置される容量調節弁36および第1電磁弁37と、凝縮器32の出口から膨張弁33に至る配管の途上に配置される第2電磁弁38と、が設けられている。第1、第2電磁弁37、38のそれぞれは、一方が閉のときには他方が開かれ、一方が開のときには他方が閉じられる。第1電磁弁37が開かれると、コンプレッサ31により圧縮された比較的高温のガス状冷媒は、容量調節弁36およびホットガスバイパス配管35を通り、膨張弁33により断熱膨張されて比較的低温となった冷媒に混合される。膨張弁33の出口側に流下するホットガス流量は、容量調節弁36の設定値および第1電磁弁37の開時間により定まる。第1、第2電磁弁37、38の開閉の結果、熱交換器34に流入する冷媒の温度が調節され、熱交換器34で冷却される冷却機側ブラインが所定の温度に調節される。
【0020】
熱交換器21の設計は、一般的に、負荷制御温度(温度設定値)より10℃以上低い温度のブラインを、ポンプの最大定格流量で負荷に供給した場合に、負荷の発熱量が最大のときに負荷の温度を所定の温度に制御することが可能となるように設計されている。冷却機30の温度制御は、負荷制御温度の一番低い設定値から10℃低い温度に維持する必要はなく、負荷制御温度の一番低い設定値から10℃以上低い温度で、冷却機30の運転下限温度以下に低下しなければ問題はない。
【0021】
図1を再び参照して、第1インバータ43の運転周波数を調節することによって、第1ポンプ41の回転数を可変制御して、第1ブライン循環回路61におけるブラインの循環流量を調節することができる。第1ポンプ41の回転数が大きくなるとブラインの循環流量が増加し、逆に、第1ポンプ41の回転数が小さくなるとブラインの循環流量が減少する。
【0022】
同様に、第2インバータ44の運転周波数を調節することによって、第2ポンプ42の回転数を可変制御して、第2ブライン循環回路62におけるブラインの循環流量を調節することができる。第2ポンプ42の回転数が大きくなるとブラインの循環流量が増加し、逆に、第2ポンプ42の回転数が小さくなるとブラインの循環流量が減少する。
【0023】
第1配管系71は、熱交換器21の出口とタンク20の入口とを接続する配管73a、タンク20の出口と第1ポンプ41の吸入口とを接続する配管73b、第1ポンプ41の吐出口と第1負荷51の入口とを接続する配管73c、および第1負荷51の出口と熱交換器21の入口とを接続する配管73dを含んでいる。
【0024】
第2配管系72は、配管73a、タンク20の出口と第2ポンプ42の吸入口とを接続する配管74b、第2ポンプ42の吐出口と第2負荷52の入口とを接続する配管74c、および第2負荷52の出口と熱交換器21の入口とを接続する配管74dを含んでいる。配管74dは、配管73dの途中に接続されている。
【0025】
第1センサ81は、熱交換器21に挿入配置され、熱交換器21において冷却されたブライン温度T1を検出する。第1センサ81は、例えば、熱交換器21の厚さの1/2程度の深さまで挿入して配置する。第1負荷用センサ82は、第1負荷51に挿入配置され、第1負荷51の温度T2aを検出する。第2負荷用センサ83は、第2負荷52に挿入配置され、第2負荷52の温度T2bを検出する。第1センサ81、第1負荷用センサ82、および第2負荷用センサ83は、測温抵抗体や熱電対などから構成されている。
【0026】
コントローラ80は、CPUやメモリを主体に構成されている。コントローラ80は、第1センサ81、第1負荷用センサ82、および第2負荷用センサ83のそれぞれが接続され、ブライン温度T1の信号、第1負荷51の温度T2aの信号、および第2負荷52の温度T2bの信号が入力される。コントローラ80はまた、第1インバータ43、および第2インバータ44のそれぞれが接続され、第1ポンプ41の回転数を可変制御する運転周波数を第1インバータ43に出力し、第2ポンプ42の回転数を可変制御する運転周波数を第2インバータ44に出力する。
【0027】
コントローラ80には、第1と第2の負荷51、52のそれぞれの設定温度などを設定する例えばテンキーなどの図示しない入力装置が接続されている。コントローラ80はまた、冷却機30にも接続され、容量制御のための制御信号が第1、第2電磁弁37、38に出力されて、ホットガス流量が制御される。メモリには、温度調節装置10の動作を制御するのに必要な各種パラメータやプログラムなどが記憶される。
【0028】
ブライン温度T1を一定にしてブライン循環量を制御する本実施形態の時定数は、ブライン循環量を一定にしてブライン温度を所定の温度に制御する場合の時定数に比べて、極端に小さくなる。このため、通常のPID演算制御がマッチングする。
【0029】
温度調節装置10および第1と第2の負荷51、52の全体の動特性を正確にシミュレーションすることは事実上不可能である。このため、最終的な各種パラメータの値については、温度調節装置10および負荷Wの全体の試運転を行いながら、トライアンドエラーにより決定される。決定されたパラメータ値はメモリに記憶される。
【0030】
なお、タンク20の容量は配管の長さ、第1ポンプ41の最大循環量、負荷51の発熱量の変動等により経験的に決定されるが、容量が最小限でも、配管のみでも、負荷の温度制御は可能である。但し、この場合は、配管73aと配管73bとの間にブラインに混入した気泡を分離できる機能を有する、いわゆるバッファータンク(膨張タンク)を装着する必要がある。タンクの容量が少ないと、装置の運転を開始してから、ブライン温度が規定の温度にまで降下する時間が短くなり、短時間で負荷の温度制御が可能となる。一方、タンクの容量を増加すると、ブライン温度が規定の温度に降下する時間は長くなるものの、負荷の大きな変動に対しても、負荷を一定に温度制御することが可能となる。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0032】
コントローラ80は、ブライン温度T1を負荷51、52の設定温度よりも低い温度に維持するように冷却機30の作動を制御する。ここにおける負荷51、52の設定温度は、第1負荷51の設定温度および第2負荷52の設定温度のうち、温度が低い方の設定温度である。ブライン温度T1は、負荷の設定温度よりも低い温度に維持できていればよく、一定の温度に維持する必要はない。コントローラ80は、冷却機30の容量制御のための制御信号を第1、第2電磁弁37、38に出力し、ホットガス流量を制御する。この制御によって、熱交換器34で冷却される冷却機側ブラインが所定の温度に調節され、熱交換器21で冷却される負荷側のブラインが所定の温度に調節される。
【0033】
コントローラ80は、第1と第2のポンプ41、42の回転数を可変制御する運転周波数を第1と第2のインバータ43、44に出力して、第1と第2のブライン循環回路61、62におけるそれぞれのブラインの循環流量を増減させるように第1と第2のポンプ41、42の作動を制御する。
【0034】
コントローラ80は、第1負荷51の温度T2aを下げるときには第1ポンプ41の回転数を増加して第1ブライン循環回路61におけるブラインの循環流量を増加させ、第1負荷51の温度T2aを上げるときには第1ポンプ41の回転数を減少して第1ブライン循環回路61におけるブラインの循環流量を減少させる。
【0035】
同様に、コントローラ80は、第2負荷52の温度T2bを下げるときには第2ポンプ42の回転数を増加して第2ブライン循環回路62におけるブラインの循環流量を増加させ、第2負荷52の温度T2bを上げるときには第2ポンプ42の回転数を減少して第2ブライン循環回路62におけるブラインの循環流量を減少させる。
【0036】
このように、コントローラ80は、第1ポンプ41および第2ポンプ42の作動をそれぞれ個別に制御することによって、第1ブライン循環回路61および第2ブライン循環回路62のそれぞれにおけるブラインの循環流量を制御して、第1負荷51の温度T2aおよび第2負荷52の温度T2bのそれぞれを独立して調節することができる。
【0037】
前述した特許文献1の技術にあっては、負荷に供給するブラインの循環流量を一定に維持したまま、ブライン温度を調節することによって、負荷の温度を制御している。一方、本実施形態にあっては、負荷51、52に供給するブライン温度T1を一定に維持したまま、ブラインの循環流量を調節することによって、負荷51、52の温度T2a、T2bを制御している。
【0038】
特許文献1の技術のように、バルブの開度を制御することによってブライン温度を調節する形態にあっては、バルブの可動機構に存在する機械的なあそびに起因する不感帯が生じる。このため、比較的低温のブラインの混合量を高精度に変更することが難しく、その結果、負荷の温度を高精度に制御することが難しくなる。モータで駆動するバルブの場合は極低温域(−30℃〜−80℃)で安定して使用できるバルブがなく、また電磁弁は極低温域で使用可能な液体窒素用のバルブがあるが、大きな口径のものが無いため、流量が増加すると電磁弁を複数使用して流量を確保する必要がある。
【0039】
これに対して、本実施形態では、第1と第2のインバータ43、44によって第1と第2のポンプ41、42の回転数を制御することによってブラインの循環流量を調節しており、機械的なあそびに起因する不感帯が生じることがない。このため、ブラインの循環流量を高精度に変更することができ、その結果、負荷51、52の温度T2a、T2bを高精度に制御することが可能となる。負荷の温度安定度が±0.5℃以内となるように、負荷51、52の温度T2a、T2bを制御することができる。
【0040】
また、負荷51、52に供給するブラインの循環流量を可変とすることによって、負荷51、52の発熱量が比較的少ない運転中には、ブラインの循環流量が少なくなって、ポンプ41、42の動力分による発熱が少なくなる。したがって、負荷に供給するブラインの循環流量を一定にする形態に比べて冷却負荷が低減し、省エネルギーを図って、運転コストの低減を図ることができる。
【0041】
もって、本実施形態の温度調節装置10によれば、負荷の温度を高精度に制御でき、省エネルギーを図って運転コストの低減を図ることが可能となる。
【0042】
タンク20に保有されるブライン温度T1を、第1と第2の負荷51、52の設定温度よりも低い温度に調節して保有している。このため、第1負荷51の温度上昇が大きいときでも、第1ポンプ41の回転数を増加し、第1ブライン循環回路61におけるブラインの循環流量を直ぐに増加することによって、第1負荷51の温度T2aを迅速に下げることができる。同様に、第2負荷52の温度上昇が大きいときでも、第2ポンプ42の回転数を増加し、第2ブライン循環回路62におけるブラインの循環流量を直ぐに増加することによって、第2負荷52の温度T2bを迅速に下げることができる。したがって、第1と第2の負荷51、52の温度を応答性良く制御できる。
【0043】
複数の負荷を異なった温度に制御する場合、特許文献1の技術のように、ブラインを異なった温度に調節して、ポンプで一定量を循環させる形態にあっては、ポンプのほかにバルブなどが必要になったり、配管経路が増えたりして、装置が複雑化、大型化するという問題がある。
【0044】
これに対して、本実施形態では、ブラインの循環流量を調節して負荷の温度を制御しているので、ポンプだけで制御することができ、バルブや配管経路の廃止などを通して、装置構成の簡素化、小型化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、温度調節装置10は、第1と第2の負荷51、52に要求される下限温度から上限温度までの温度範囲で、ブラインの温度を制御できなければならない。したがって、冷却機30の冷却能力は、ブラインの循環流量、第1と第2の負荷51、52の下限温度、第1と第2の負荷51、52における発熱量などに基づいて決定される。
【0046】
また、コントローラ80の制御出力がゼロ、つまり冷却が不要の場合には、ブラインの循環流量がゼロになる。ブラインの循環が停止するため、冷却機30の運転温度制御を行う場合は熱交換器21の内部温度を調節する。
【0047】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の他の実施形態に係る温度調節装置10aを示す構成図である。温度調節装置10と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
図3を参照して、この温度調節装置10aにあっては、第1と第2の負荷51、52と熱交換器21との間に配置された熱交換循環ポンプ45と、タンク20の出口側と熱交換循環ポンプ45のサクション側とを接続して第1と第2のポンプ41、42および第1と第2の負荷51、52をバイパスしてブラインを循環させるバイパス配管46と、をさらに有している。
【0049】
かかる形態によれば、第1と第2の負荷51、52へのブラインの供給を停止している待機運転中に、タンク20内のブライン温度T1を冷却機30の下限運転温度まで冷却することができる。したがって、第1と第2の負荷51、52を常温(例えば、25℃)から、冷却温度(例えば、−15℃)まで短時間(例えば、5分以内)に冷却することが可能になる。
【0050】
熱交換循環ポンプ45の装着位置については図示例に限られるものではない。熱交換循環ポンプ45を熱交換器21とタンク20との間、またはバイパス配管46の中間部に移動しても、運転に支障は生じない。
【0051】
(他の変形例)
第1と第2のポンプ41、42は、ブラインを循環できればよいため、その配置位置は図示のように第1と第2の負荷51、52の入口側に限られるものではない。例えば、第1と第2のポンプ41、42を、第1と第2の負荷51、52の下流側に配置して、ブラインを循環させるようにすることもできる。
【0052】
第1と第2のブライン循環回路61、62を有する実施形態について示したが、本発明は、この場合に限定されるものではない。ブライン循環回路は1つでもよいし、逆に、冷却機30の冷却能力の限度内において、ポンプ、インバータ、負荷の温度を測定するセンサを追加することによって、3つ以上のブライン循環回路を有する温度調節装置に適用することができる。
【0053】
インバータとインバータ用ポンプとを適用したが、インバータポンプをDCポンプに代替し、インバータの代わりにインバータと同等に機能するDCポンプ用ドライバーを適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 ポンプ循環量制御温度調節装置、
10a ポンプ循環量制御温度調節装置、
20 タンク、
21 熱交換器、
30 冷却機、
41 第1ポンプ(ポンプ)、
42 第2ポンプ(他のポンプ)、
43 第1インバータ(インバータ)、
44 第2インバータ(他のインバータ)、
45 熱交換循環ポンプ、
46 バイパス配管、
51 第1負荷(負荷)、
52 第2負荷(他の負荷)、
61 第1ブライン循環回路(ブライン循環回路)、
62 第2ブライン循環回路(他のブライン循環回路)、
71 第1配管系(複数の配管)、
72 第2配管系(複数の他の配管)、
80 コントローラ、
81 第1センサ、
82 第1負荷用センサ(第2センサ)、
83 第2負荷用センサ(他の第2センサ)、
T1 ブライン温度、
T2a 第1負荷の温度(負荷の温度)、
T2b 第2負荷の温度(他の負荷の温度)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインを収納するタンク(20)と、
ブラインの循環流量を調節自在なポンプ(41)と、
ブラインが供給される負荷(51)と、
前記負荷(51)から戻されるブラインが流れる熱交換器(21)と、
前記タンク(20)、前記ポンプ(41)、前記負荷(51)、および前記熱交換器(21)を接続してブライン循環回路(61)を形成する複数の配管(71)と、
前記負荷(51)から戻されるブラインを前記熱交換器(21)において冷却するための冷却機(30)と、
前記ポンプ(41)の回転数を可変制御するためのインバータ(43)と、
前記熱交換器(21)において冷却されたブラインの温度を検出する第1センサ(81)と、
前記負荷(51)の温度を検出する第2センサ(82)と、
前記第1センサ(81)によって検出したブライン温度(T1)の信号、および前記第2センサ(82)によって検出した負荷(51)の温度(T2a)の信号が入力されるコントローラ(80)と、を有し、
前記コントローラ(80)は、ブライン温度(T1)を前記負荷(51)の設定温度よりも低い温度に維持するように前記冷却機(30)の作動を制御し、かつ、ポンプ(41)の回転数を可変制御する運転周波数をインバータ(43)に出力してブラインの循環流量を増減させるように前記ポンプ(41)の作動を制御し、
前記負荷(51)温度を下げるときには前記ポンプ(41)の回転数を増加してブラインの循環流量を増加させ、前記負荷(51)温度を上げるときには前記ポンプ(41)の回転数を減少してブラインの循環流量を減少させる、ポンプ循環量制御温度調節装置。
【請求項2】
前記負荷(51)と前記熱交換器(21)との間に配置された熱交換循環ポンプ(45)と、
前記タンク(20)の出口側と前記熱交換循環ポンプ(45)のサクション側とを接続して前記ポンプ(41)および前記負荷(51)をバイパスしてブラインを循環させるバイパス配管(46)と、をさらに有する、請求項1に記載のポンプ循環量制御温度調節装置。
【請求項3】
ブラインの循環流量を調節自在な他のポンプ(42)と、
ブラインが供給される他の負荷(52)と、
前記タンク(20)、前記他のポンプ(42)、前記他の負荷(52)、および前記熱交換器(21)を接続して、前記ブライン循環回路(61)に対して並列的に接続される他のブライン循環回路(62)を形成する複数の他の配管(72)と、
前記他のポンプ(42)の回転数を可変制御するための他のインバータ(44)と、
前記他の負荷(52)の温度(T2b)を検出する他の第2センサ(83)と、をさらに有し、
前記コントローラ(80)は、前記他の第2センサ(83)によって検出した前記他の負荷(52)の温度(T2b)の信号が入力され、前記ポンプ(41)および前記他のポンプ(42)の作動をそれぞれ個別に制御することによって、前記ブライン循環回路(61)および前記他のブライン循環回路(62)のそれぞれにおけるブラインの循環流量を制御して、前記負荷(51)の温度(T2a)および前記他の負荷(52)の温度(T2b)のそれぞれを制御する、請求項1または請求項2に記載のポンプ循環量制御温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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