説明

マイクロアレイ及びスポッティング装置

基板にプリグルーブを設け、前記少なくともプリグルーブ上にプローブDNA又は蛋白と接着性が良好な薄膜を設けた上で、前記プリグルーブの凸部または凹部にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置して、液滴の表面張力及び/又は凹部の場合、凹溝の壁によってグルーブに直角方向の広がりを制限された状態でプリグルーブの接線方I川こ広がり、その状態でプローブDNA又は蛋白を前記基板上に固定させていることを特徴とするマイクロアレイディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、マイクロアレイおよびマイクロディスクの構成およびスポッティング装置に関する。
【背景技術】
DNAマイクロアレイはスライドグラスなどの基板上に、数千個のDNAプローブを固定したもので、蛍光分子等で標識した試料(ターゲット)を流し、DNAプローブとハイブリタイズさせて、ハイブリッド形成による蛍光発光の強弱を測定して、試料に含まれる遺伝子の発現量を推定するものである。
これによって、多数の遺伝子の発現を同時に網羅的に分析できることから、生命科学や薬学、農学の分野の研究開発に基盤的な標準的機器として普及している。たとえば、ある薬剤に反応するガン組織と反応しないガン組織からmRNA(メッセンジャRNA)を抽出して、両者の発現量の差を全ヒト遺伝子の載ったDNAマイクロアレイによって推定すれば、そのガン組織と薬剤に特異的な遺伝子発現が判明する。これを用いてその遺伝子をターゲットに発症機序の解明や創薬研究を効率的に実施することができる。
ポストゲノムシーケンスの時代に入って、遺伝子発現の網羅的計測の必要性は、いわゆるテーラメード医療や医学分野における臨床検査はもちろん、食品検査や生産品質管理などのニューバイオ産業に広がり、今後いわゆるDNAマイクロアレイ市場はきわめて大きな拡大が予想されている。
主流となっている型式には、光リソグラフィ技術と固相法DNA合成技術によりシリコン基板上にオリゴヌクレオチドを垂直に積み上げたアフィメトリックス型と、スライドグラス上にDNAを貼り付けるいわゆるスタンフォード型の2つがある。前者はあらかじめ遺伝子を選択して発注設計製造依頼しなければならず高価であるが、後者は利用者が使用環境でスポットする遺伝子を自由に選べる利点がある。本発明において、プローブDNA(試料とハイブリダイゼイション後はDNAスポットと呼ぶ)とは、前記したアフィメトリックス型と、スタンフォード型、あるいはその他の形式のプローブDNAを意味するものである。
現在のDNAマイクロアレイは、図11に示すように、ガラス基板110上に、2次元格子状に配列されているDNAスポット列111を、レーザ走査ないし映像計測手段によって蛍光を測定し画像化して読み取っている。2自由度の計測が必要で装置が複雑になり、また後処理として蛍光信号の補正や雑音軽減のための計算機画像解析処理が必要である。スライドグラスの代わりにビーズを使ったものや、多孔性の媒質を用いた装置もあるが、扱える遺伝子数がせいぜい数100種類程度で網羅性にかける。
しかしながら、DNAマイクロアレイを解析するためのスポッター、ハイブリダイゼイション、およびスキャナーからなるシステムは、定量性と感度の点において課題の多いものである。
現在の課題を箇条書にすると、
1.蛍光測定の感度が悪い
2.読み取りに時間がかかる
3.2次元走査による画像化が必要
4.操作性が悪い
5.1枚のガラス基板に配置するDNAスポット数が十分でない(高々1万スポット)
6.試料の性質や実験条件を同時に記録することが困難で、試料に番号を付加し、データシートを別々に用いていた。
本発明の目的はDNAマイクロアレイやスポッティング装置、プローブDNA作製装置の構造等を根本的に見直し、DNAスポットを効率よくスポッティングあるいは光化学反応により生成した後、安定して短時間のうちに読み取り、解析結果を得ることができ、構成がシンプルで、極めて効率が高い低価格のシステムを提供することにある。
現在X,Yの2次元格子状に配列されているDNAマイクロアレイのスポットを1次元に配列させ、同時にガラス板を円盤形状に変更し、スポット位置を特定できるプリグルーブ、プリピット等の指標を設ける。このように構成した円盤状のプリグルーブにプローブDNAをスポッティングし作成したDNAマイクロディスクと、スポッティングするための装置を提供するための発明である。本発明は同じ発明者による特開2004−333333に用いるDNAマイクロアレイの基板に関し、特に基板にスポッティングあるいは光化学反応により生成する方法、および蛍光測定感度に優れた基板に関する発明である。
【発明の開示】
本発明は下記の発明に係る。
A.基板にプリグルーブを設け、前記プリグルーブにプローブDNA又は蛋白と接着性が良好な薄膜を設けた上で、前記プリグルーブの凸部または凹部にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置して、液滴の表面張力によってグルーブに垂直な方向の広がりを制限された状態でプリグルーブの接線方向に広がり、その状態でプローブDNA又は蛋白を基板上に結合させていることを特徴とするマイクロアレイディスク。
B.ディスク基板上のグルーブの凹部あるいは凸部に、プローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置するために、1)前記グルーブの位置を検出する機構、2)プローブDNA又は蛋白を含む液滴を吐出できる機構により、グルーブ上にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置することを特徴とするマイクロディスクを作成するためのスポッティング装置。
C.基板上に薄膜からなる層を少なくとも1層以上設け、基板側から波長λ1のレーザビームを照射し、プリグルーブの位置を検出するときには前記基板を照射したレーザビームの一部は透過し、前記基板上に配置されたDNA又は蛋白スポットを計測するために、検出波長λ2のレーザビームを基板の反対側から照射したときには、一部が反射することを特徴とするマイクロアレイディスク。
D.ディスク基板上のプリグルーブの凹部あるいは凸部に、プローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置するために、1)前記グルーブの位置を検出する機構、2)プローブDNA又は蛋白を含む液滴を吐出できる機構により、プリグルーブ上にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置することを特徴とするマイクロアレイディスクを作成するためのスポッティング装置において、液滴の吐出位置の制御、液滴の量の制御を行うため、液滴の位置を検出する光学測定部、マイクロアレイディスク上に設けたプリグルーブを検出し、液滴がプリグルーブ上にスポットを形成するようにするための制御部、ならびに機構部を有するスポッティング装置。
E.種類の異なるプローブDNA又は蛋白を効率よく基板上にスポッティングするため、プリグルーブとプローブDNA又は蛋白を含む液滴を吐出するインクジェット、液滴を滴下する吐出装置であるマイクロピペット、あるいは針状のツール、などの吐出器との相対位置を検出するとともに、複数の吐出器を設けた吐出ユニットを移動制御し、次々に異なる種類のプローブDNA又は蛋白をプリグルーブの所定の位置に配置するための機構部、光学測定部、制御部(サーボ部とも呼ぶ)を有するスポッティング装置。
F.マイクロディスク上のプリグルーブの凹部あるいは凸部にプローブDNAを光化学反応により生成するため、プリグルーブの位置を示すアドレスを検出し、レーザビームを選択的に照射し、プローブDNAを生成する方法。
G.基板にプリグルーブあるいはプリピットにより場所を特定できる。平面部を設け、少なくとも前記プリグルーブあるいは平面部にプローブDNAと接着性が良好な薄膜を設けた上で、前記プリグルーブの凸部またはおよび凹部、あるいはプローブDNA格納部にオリゴヌクレオチドを光化学反応により創出するに際し、前記格納部の場所をプリグルーブあるいはプリピットにより構成したアドレス情報により特定し、前記特定した場所にレーザ光を照射し活性化した後、第1のモノマーを塗布し、前記モノマーの一方の光反応保護基にレーザ光を照射し、前記保護基を取り去り、その後に塗布した第2のモノマーを連結し、オリゴヌクレオチドを生成することを特徴とするプローブDNA作成装置。
H.マイクロディスク上に作製した複数の同一種類のプローブDNA又は蛋白の良否を判定し、少なくとも良品と判定されたプローブDNA又は蛋白のアドレス情報を保管することを特徴とするマイクロディスク。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施例であるスポッティング装置の概略構成を示す図である。
図2は、本発明のDNAマイクロディスクの概略構成を示す図である。
図2aは、本発明のDNAマイクロディスクの一部を拡大したアドレス情報とVマーク拡大図である。
図3は、本発明の一実施例であるスポッティング装置の制御部ブロック図を示す図である。
図4は、スポッティング時の反射光量分布変化を示すグラフである。
図5は複数のスポッティング液であるプローブDNA吐出口を有するスポッティング装置の概略図である。
図6はマルチスポッティング装置を示す概略図の側面図である。
図7はマルチスポッティング装置を示す概略図の上面図である。
図8はマルチスポッティング装置の制御部を示すブロック図である。
図9はインクジェットとスポッティング液のタンクを示す概略図である。
図10はDNAマイクロディスク上に設けた金の薄膜上に設けた金、SiO膜上にできる電場強度の計算結果を示すグラフである。
図11は従来のDNAマイクロアレイ構成図である。
図12はDNAマイクロディスクプリグルーブ部の拡大図
図13はプローブDNA作成装置ブロック図
図14はプローブDNA作製装置制御ブロック図
図15はプローブDNA作製装置波形図
図16は読取装置のブロック図
図17はDNAマイクロディスクにおける読取ビームとサーボビームの配置図
【符号の説明】
1 DNAマイクロディスク、2 レーザ、3 ビームエキスパンダ、4 対物レンズ、4a トラッキングアクチュエータ、4b フォーカシングアクチュエータ、5 ビームスプリッタ、6 レンズ、7 光検出器、7a 光検出器A、7b 光検出器B、8 インクジェット、9 インクジェット吐出口、10 光検出器、10a 光検出器A、10b 光検出器B、11 スポッティング液供給チューブ、12 トラバースユニットA、12−1 トラバースユニットB、12−2 トラバースユニットC、13 トラバースモータA、13−1 トラバースモータB、13−2 トラバースモータC、14 ディスクモータ、
15 Vマーク検出器、22 中心穴、23 プリグルーブ、24 第1のデータ記録部、25 第2のデータ記録部、26 Vマーク、26a Vマークピット a列、26b Vマークピット b列、27 プリグルーブのアドレス情報、28 半径方向矢印、29 接線方向矢印、30 差動増幅器1、31 位相補償器1、32 駆動増幅器1、33 差動増幅器2、34 位相補償器2、
35 駆動増幅器2、36 CPU、37 加算器、38 加算器出力、
39 ディスクモータ制御器、41 図4グラフ横軸 DNAマイクロディスク回転時間経過、42 反射光量(図4グラフ縦軸)、43 スポッティング液吐出時点、44 スポッティング液吐出時点、45 反射光量低下期間、51 インクジェット、52 インクジェット吐出口、53 インクジェットユニット、54 インクジェットユニット移動方向、55 移送ギア、61 ディスクモータ移送装置、62 移送方向、71 マルチインクジェットロータリーテーブル、81 ロータリーテーブル回転制御装置、82 位相補償器3、83 駆動増幅器3、90 インクジェットA、91 タンク、92 接続シール、93 接続孔、94 吐出口、95 加圧室、96 加圧デバイス、97 液名表示部、100 図10 横軸:SiO膜の膜厚[nm]、101 図10 縦軸:基板 表面上の電場強度、102 波長563nmの特性、103 波長652nmの特性、104 波長532nmの特性、110 ガラス基板、111 DNAスポット列、112 アドレス1のプリグルーブ、
113 アドレス1、114 アドレス2のプリグルーブ、115 アドレス2、116 半径方向を示す矢印、117 接線方向を示す矢印、118 DNAマイクロディスク、120 レーザ、121 ビームエキスパンダ、122 ビームスプリッタ、123 対物レンズ、124 トラッキングアクチュエータ、
125 フォーカシングアクチュエータ、126 レンズ、128 光検出器、129 トラバースユニット、130 トラバースモータ、131 ディスクモータ、132 ターンテーブル、140 プリアンプ、141 デコーダ、
142 CPU、143 照射パルス制御部、144 I/Fインターフェース、145 PC パーソナルコンピュータ、146 レーザパワー変調器、147 サーボ部、148 再生光パワー、149 ピークパワー、
152 ディスクモータ、153 対物レンズ、153a X方向、
153b Z方向、154 対物レンズアクチュエータ、154a トラッキング素子、154b フォーカシング素子、155 蛍光励起用光源(出力光波長λ1)、156 コリメータレンズ1、
157 サーボ用光源(出力光波長λ3)、158 コリメータレンズ2、
159 ハーフミラー、160 ビームスプリッタ1、161 集光レンズ1、162 光学フィルタ、163 蛍光読取検出器、164 ビームスプリッタ2、165 集光レンズ2、166 サーボ誤差検出器、167 シリンドリカルレンズ、168 回折格子、170 DNAスポット読取ビーム、171 プリグルーブまたはDNAスポット列、172 サーボ用ビーム、173 DNAスポット、174 X方向を示す矢印
【発明を実施するための最良の形態】
本発明においては現在2次元格子状に配列されているDNAマイクロアレイのスポットを同心円状あるいはスパイラル状の1次元に配列させ、同時にガラス板を円盤形状に変更し、スポット位置を特定できる指標を設ける。具体的には、ガラスディスク上のプリグルーブおよび、あるいは指標を設けた場所に正確にスポッティングを行い、1次元方向に走査し、歪無くDNAスポットを読み取ることができる。DNAマイクロディスクと、前記DNAマイクロディスクにプローブDNAをスポッティングするための装置である。
さらに、DNAマイクロディスク上に記録可能なゾーンを設け、作成条件と測定結果、プリグルーブにより位置決めされスポッティングされたスポットの位置を示すアドレス情報とスポッティング液名との対応関係を、スポッティングしたDNAマイクロディスク上に記録する。これによって、従来ガラス板と作成時のデータが別に保管されていたのを一体的に保存でき、”操作性、信頼性”とセキュリティが向上する。このための具体的制作方法を提供するためのものである。
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施例について図面とともに記載する。
以下、図1、図2、図3を用いて本発明における第1の実施例の概略構成を図示する。尚、蛋白等を用いることもできるが、以下、主にDNAを用いた説明を行う。
図1は、図2に示したDNAマイクロディスクにプローブDNAをスポッティングするための装置の構成を示すブロック図、図2はDNAマイクロディスクを示す図面である。
図1において、1はDNAマイクロディスクで、23のプリグルーブを有している。そして14のディスクモータにより、回転制御される。8は前記基板にプローブDNAを吐出するための吐出装置で、実施例ではインクジェットを用いている。インクジェットの代わりにマイクロピペットあるいはペン先のようなツールを用いることも可能である。前記インクジェットの位置を検出するためインクジェット吐出口に対して一定の位置に置かれた光検出器10(10a、10bの受光素子を有する)が設けられている。なお、スポッティングされてプリグルーブ上に固定されるDNAスポットの形状に関し、接線方向と直角の幅方向の大きさの比は、接線方向が大きく、2倍以上になることが実験により確かめられている。
プローブDNAの液(スポッティング液)はインクジェットに設けられたタンクから、あるいは、11のスポッティング液供給チューブにより供給される。スポッティング液はプローブDNA、蛋白などを水、その他の媒体(アルコールなど)に溶解した液である。このスポッティング液はプリグルーブの凸部または凹部の両方あるいはいずれか一方に配置することができる。
2はレーザであり、出射したレーザビームは3のエキスパンダあるいはコリメータレンズにより平行光に変換され、5のビームスプリッタを経て4の対物レンズにより1のDNAマイクロディスク上のプリグルーブ23に焦点を結ぶ。前記プリグルーブ23から反射した光は4の対物レンズ、5のビームスプリッタを経て、6のレンズにより、7a,7bの2分割セルを有する光検出器7に前記プリグルーブのファーフィールド像が形成され、7a,7bの光検出器の差動信号により、4の対物レンズから出射したビームスポットと、23のプリグルーブの相対位置が検出できる。
また23のプリグルーブの透過光は10a,10bの2つの光検出器からなる光検出器10に入射する。そして、光検出器10a,10bの差動信号は、9のインクジェット吐出口とプリグルーブの相対位置を示す。12はトラバースユニットAであり、インクジェット8、光検出器10、および、2のレーザ、3のビームエキスパンダ、4の対物レンズ、4a,4bのアクチュエータ、5のビームスプリッタ、6のレンズ、7の光検出器から構成される光学測定部および機構部は、トラバースユニットAとして一体に構成され、13のトラバースモータAにより1のDNAマイクロディスクの半径方向に可動制御される。
4の対物レンズをDNAマイクロディスクの半径方向に位置を移動制御し、23のプリグルーブに対物レンズから出射したレーザビームを追従させるための制御部をトラッキングサーボと呼び、8のインクジェットの位置を10の光検出器により検出し、プリグルーブ23上にインクジェットから吐出される液を配置する制御部を、トラバースサーボと呼ぶ。
図2において、DNAマイクロディスク1には、ディスクモータにより回転させるための中心穴22と、凹凸状のプリグルーブ23が設けられている。プリグルーブを作成する方法としては、ガラス基板を選択的にエッチングし作成することができる。また、プリグルーブの凸部を印刷により設けることもでき、印刷により作成した場合は、印刷のインクが付着しない基板上に、DNAスポットを配置する。もちろん樹脂を用い、CD等の光ディスクと同様な方法を用い、インジェクションモールドにより作成することも可能である。またプリグルーブを接線方向に切断して、プリピットとし、プリグルーブの代わりに用いることもできる。
プローブDNAをスポッティングする表面上に、必要により例えばSiOあるいは金などの、レーザビームを照射したときに蛍光を発しない薄膜を設ける。さらにSiOあるいは金などの薄膜上にプローブDNAと接着性が良好な薄膜を形成する。この後者の薄膜はスポッティングするプローブDNAとの密着を促進し、プローブDNAの液滴がその表面張力、及び/又は凹部にスポッティングされた場合は凹溝の壁の存在によりプリグループ上に存在し、時間の経過によりプローブDNAを溶解している液体が蒸発して最終的にプローブDNAはプリグループ上に固定される。このような薄膜の例としては例えば、ポリ−L−リシン(Poly−L−lysine:PLLと略記)水溶液で処理することで形成される薄膜などを代表例として挙げることができるが、これに限定されるものではなく3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APSと略記)水溶液等を挙げることができる。あるいは、末端をビオチン化したDNAをプローブDNAに用いることができ、この場合 には基板表面にアビジンを固定しておくことでアビジン−ビオチン間の特異的結合形成能によってDNAを基板に固定することができる。また、基板の表面だけに薄膜を設けると、温度湿度環境の変化により基板が反ることがあるので、基板の両面に対称に薄膜を設けた方が好ましい。このときも、基板面から入射したレーザビームが基板を透過するように薄膜を設けるのが好ましい。
プリグルーブの位置を示すためのアドレス情報をプリグルーブに附加している。図2においてプリグルーブを同心円状あるいはスパイラル状に作成し、27に示すように同心円のプリグルーブの一部分を切断し、プリグルーブのある部分とない部分を設け、プリグルーブの位置を示すアドレス情報とした。またDNAマイクロディスクの最外周部、あるいは内周部に26のVマークと称する回転位置を示すマークを設けた。図2aは図2の一部を拡大して示したアドレス情報とVマーク拡大図である。実際のプリグルーブは円周に沿っているため、扇型になるが、ここでは簡単のため直線として示した。なお図2との対応関係は同じ番号を与え、示している。
このように構成したDNAマイクロディスク上に、次に述べるスポッティングによるDNAスポットを設けたものもDNAマイクロディスクと呼ぶ。
次に、Vマークの構成を詳細に述べる。図2aにおいて、このVマーク26は、プリグルーブの回転方向の角度を示しており、本実施例では、Vマーク26の間の回転方向の角度にプリグルーブのアドレス情報を示すプリピット列(26a、26b…)を設けた。このようにVマークを設けることにより、アドレス情報のディスク円周上の位置を検出することが容易になる。例えば26aを起点0度とすると、26bは円周上の0.5度の位置を示す指標となるわけである。
このように、Vマークがディスク上の回転角度を表す絶対番地を構成することになるわけである。例えば半径方向に4ビットを表すプリピット列(26a、26b…)を構成し、それらを用いて、角度を番地に対応させた。なお図2aの28の矢印はDNAマイクロディスクの半径方向を、矢印29は接線方向を示している。27のプリグルーブのアドレス情報は半径方向に複数本配置されるプリグルーブの半径方向の位置を示すアドレス情報を示している。(例えば最外周を1番目のプリグルーブとし、内周方向に2,3,4となる4ビットの番地を与える)アドレス情報、角度情報を記録する時には、よく知られた変調方法、例えばFM変調、位相変調、を用いる。Vマークの示す角度情報は、図6に示すVマーク検出器15により読み取られ、プリグルーブの位置情報は、プリグルーブを走査する対物レンズ4の出射光ビームにより読み取られる。この間の時間軸上での時間ズレが存在する時には、もちろんスポッティング装置のCPU36により補正される。
また図2において、24の第1のデータ記録部はスポッティング時に、あるいはスポッティング終了時に、スポッティング液をデータ記録に用いるために濃淡マークが生成できるインク等にする。そしてこのインク等により作製されたスポットの位置、大きさ、位相などを変化させ情報を記録するためのものである。そして、DNAスポットを作成する時の条件などの情報を、DNAスポットを基板上に設けるときに、情報により変調された記録スポットの列を作成し記録する。
特に、スポッティングする位置を示すアドレス情報と、スポッティング液に名称との対応関係を記録することが、有効である。
このときに用いることのできる変調方法としては、記録スポットを2値信号からなる情報信号に応じて、記録スポットの位置を変化させる方法、あるいは情報信号に応じて、記録スポットの周期を変化させる方法などを用いることが可能である。また記録スポットを構成する材料としては、有機材料あるいは、無機材料などから作られたインク等を使用できる。
また、言うまでもないが、スポッティングする位置を示すDNAマイクロアレイ基板上のアドレス情報と、スポッティング液の名称の対応関係は、別のメモリーに記録し、DNAマイクロアレイ基板に付属させることもできる。この時にはDNAマイクロアレイ基板にバーコードなどにより、識別情報を設け、メモリーとの関係付けをメモリーに記録すればよい。
この第1の記録部分とは別に第2の記録可能部25を基板上に設け、DNAスポットの読取を行った後に、読み取られたDNAスポットの有する情報データを追記することも可能にした。
記録可能部分には、従来から記録可能光ディスクに用いられている色素あるいは、金属薄膜を基板上に蒸着あるいはスパッタ手段により形成することができる。第2のデータ記録部はプリグルーブ上に設け、かつ前記プリグルーブに番地情報を設け、他の部分と識別を容易にすることが望ましい。このデータ記録部に、スポッティングする位置を示すアドレス情報と、スポッティング液に名称との対応関係を記録することももちろん可能であり、そのときには、スポッティング中に取得された情報を、一時的に別のメモリーに記憶させ、スポッティングが終了後にまとめて記録することも可能である。
次に動作について、図2のDNAマイクロディスク、図3のスポッティング装置制御部ブロック図、および図4のスポッティング時の反射光量分布変化を示すグラフを用いて説明する。
図1、図3において、4の対物レンズから出射したレーザビームは、4aのトラッキングアクチュエータにより1のDNAマイクロディスク上のプリグルーブ23を追従する。このため、7の光検出器を二分割した7a、7bの光検出器の出力差は30の差動増幅器1の出力として得られ、31の位相補償器1によりトラッキングサーボ部の応答を適正化し、32の駆動増幅器1により4aのトラッキングアクチュエータを位置制御する。また4の対物レンズからの出射する光の一部は、1のDNAマイクロディスクを透過し、10aの光検出器、10bからなる光検出器10により検出され、その差は33の差動増幅器2により出力される。33の出力は34の位相補償器2によりトラバースサーボ部の応答を適正化し、35の駆動増幅器1により、13のトラバースモータAを駆動制御し、13のトラバースユニットAを位置制御する。この結果、9のインクジェット吐出口の位置は常に23のプリグルーブと対向する位置に追従するように制御され、インクジェットから吐出する液は23のプリグルーブ上に吐出し配置される。
インクジェットから吐出されプリグルーブ上に付着した液滴を4の対物レンズから出射されたビームスポットにより照射する。そしてプリグルーブおよび付着した液滴により反射され、7の光検出器により検出される。図4はこのときの様子を示すグラフである。図4のグラフの横軸はDNAマイクロディスクの回転位置を示し、縦軸は光検出器7により検出される反射光量を示す。
図4は液滴がプリグルーブ上に付着した時に、液滴により反射光量が著しく低下することを示している。これは図4における45の矢印(反射光量低下部を示す)により示される。
液滴が吐出され、プリグルーブ上に付着した時点を光検出器7により検出可能である。実施例では、光検出器7の出力を37の加算器により検出し、その加算器出力38はCPU36に供給され、液滴が付着したかどうか、また付着した位置を7の光検出器の出力により測定できる。インクジェットの吐出位置精度は±30μm程度であるので、プリグルーブの半径方向のピッチ(トラックピッチと呼ぶ)を30μmとした時には、前記した光検出器7の出力を測定することにより13のトラバースユニットAの位置を制御し、液滴がプリグルーブ上に配置されるように制御可能である。またプリグルーブの接線方向の位置精度に関しては、インクジェットの取り付け位置を調整することにより最適位置に調整できる。
次にインクジェットの取り付け位置調整方法に関し、図1と図3を用い具体的に説明する。図1においてレーザから出射したレーザ光は、対物レンズを経て23のプリグルーブ上に焦点を結ぶ。このとき9のインクジェット噴射口からスポッティング液を吐出する。
このときの様子を図4に示す。図4において、1のDNAマイクロディスクを回転させ8のインクジェットからスポッティング液滴を43、44に示すスポッティング液吐出時点において、吐出させ、プリグルーブ23から反射し対物レンズを経由して7の光検出器に戻る光量を、反射光量をグラフの縦軸42にプロットした。横軸は時間経過をDNAマイクロディスク回転時間経過41として示す。
液滴がプリグルーブ上に付着すると、図4において、45の反射光量低下期間に示すように、プリグルーブから反射し対物レンズを経由して7の光検出器に戻る光量が約1/10となることがわかる。7の光検出器により23のプリグルーブから反射した光量分布を測定し、23のプリグルーブの中心に吐出した液滴が配置されるように、8のインクジェットの位置を調整する。調整はインクジェットからの吐出を何回か繰り返して行い、最適の位置に調整する。
7の光検出器の出力は30の差動増幅器により光量分布を測定し、37の加算器の出力を、36のCPUに供給することにより光量を測定し、13のトラバースユニットAの位置を制御しながら行う。
なお14のディスクモータは1のDNAマイクロディスクを回転駆動する。
尚、4の対物レンズは、4bの対物レンズアクチュエータにより、DNAマイクロディスクに対して垂直方向に可動させることができ、1のDNAマイクロディスクと4の対物レンズの距離を検出し、一定に制御するフォーカス制御部(図示せず)を構成することも可能である。このときには、4の対物レンズと1のDNAマイクロディスクの相対位置を検出し、検出した位置が一定となるように4の対物レンズの位置(DNAマイクロディスクに対して垂直方向)を4bのフォーカシングアクチュエータにより駆動制御する。
次に図5を用い、インクジェットとスポッティング液を保有したタンク(インクジェットに含む)を、複数収納したインクジェットユニット53を12−1のトラバースユニットBに載置し、複数種類のプローブDNAの液滴を順次インクジェット51から吐出し、DNAマイクロディスク上のプリグルーブに配置する方法を説明する。
ここで、インクジェットを複数個設けたインクジェットユニット53を図5に示す12−1のトラバースユニットBに載置し、インクジェットユニットはトラバースユニットBに対して55の移送ギアにより移動可能にした。この時、51のインクジェットを複数個設け、各々のインクジェットに各々異なる成分を有するプローブDNAの液が吐出できるようにしている。そして各インクジェットからプローブDNAを含む液をスポッティング可能に構成した。そして10の光検出器とインクジェットユニットに設けられたインクジェットの吐出口52は常に同じ位置関係を保つように、12−1のトラバースユニットBに対してインクジェットユニット53を54のインクジェットユニット移動方向に示す方向に移動制御する。
図6,7はスポッティング装置の別の一実施例を示す構成図である。図6は側面からみた構成図、図7は上面からみた構成図である。図6において、図1との共通点が多いため、図1において使用した番号はそのまま同じものを使用している。
最初に大まかな動作について述べる。1のDNAマイクロディスクのプリグルーブ23上にプローブDNAの液滴をインクジェットから吐出して、液滴をプリグルーブ状に配置するため、DNAマイクロディスクを回転させる。同時にインクジェットが複数個取り付けられたロータリーテーブルを回転させ、所望のインクジェットがプリグルーブ上の指定した位置になるように、DNAマイクロディスクの位置を62の移送方向に変位させる。プリグルーブ上の指定した位置にインクジェットが来た時、インクジェットから液滴が吐出され、プリグルーブ上に配置される。
次に詳細な動作について説明する。
図6において60以上の番号を有するものは、図1の構成に対して新たに附加したものである。
61はディスクモータ14を62の移送方向に移送するディスクモータ移送装置である。もちろん14のディスクモータにクランプされている1のDNAマイクロディスクは、14のディスクモータと一体に移送される。
4の対物レンズから出射したレーザビームは23のプリグルーブにより回折され、その反射光のファーフィールドパターンが7の光検出器により受光される。7a、7bの光検出器の差動信号は、前記したレーザビームが1のDNAマイクロディスク上に形成するスポットとプリグルーブの相対位置を示すので、差動信号が0になるように4aのトラッキングアクチュエータと13−2のトラバースモータCを制御し、前記ビームスポットが23のプリグルーブを追従するように動作する。12−2のトラバースユニットCは図5に示した12−1のトラバースユニットBとは異なり、インクジェットと光検出器10が71のマルチインクジェットロータリーテーブルに取り付けられている。
4の対物レンズから出射したレーザビームは23のプリグルーブにより回折され、そのファーフィールドパターンが10の光検出器により受光される。
10a,10bの光検出器の差動信号は、前記したレーザビームが1のDNAマイクロディスク上に形成するスポットと、プリグルーブの相対位置を示すので、61のディスクモータ移送装置を制御し、インクジェット9の吐出口が23のプリグルーブ上に位置するように追従制御する。
つまり対物レンズを出射したレーザビームスポットは、4aのトラッキングアクチュエータおよび13−2のトラバースモータCによりプリグルーブを追従し、DNAマイクロディスクの位置は、インクジェットの吐出口の位置に追従するわけである。インクジェットからスポッティング液を吐出するタイミングは14のVマーク検出器の出力およびプリグルーブに設けたプリグルーブの場所を特定するアドレス情報27を、7の光検出器の出力から読み取って行う。Vマーク検出器15としては、例えばフォトカップラー、レーザビームをVマークピット列に沿って半径方向に走査する光ヘッド等を用いることができる。フォトカップラーを用いた時には、光を基板の一方から照射し、基板を透過した光をもう一方の光検出器により受光し、Vマークを読み取る。
走査光ヘッドを用いた時には、光ヘッドからレーザビームをVマークに走査しながら照射し、基板を透過した光を別の光検出器により受光し、Vマークを読み取る。なお、走査方向は図2の28に示す半径方向である。走査方法は、レーザビームを照射するためのレンズの位置を変位させることにより行う。Vマークを走査し位置を検出すれば、DNAマイクロディスクとレーザ光の相対速度が0に近くなってもプリグルーブの位置情報を読み取ることが可能となる。
このように制御した上で、図7における71のマルチインクジェットロータリーテーブルに載置されたインクジェット8が、1のDNAマイクロディスク上のプリグルーブに正確に液滴を、吐出し、配置する。71のマルチインクジェットロータリーテーブルの回転は図8のロータリーテーブル回転制御装置83により回転制御される。なお図示していないが、インクジェットから液滴を吐出するための制御信号は、図8のCPU36が、前記したVマーク検出器15の出力およびプリグルーブに設けたプリグルーブの場所を特定するアドレス情報を、7の光検出器により受け取り、インクジェットの吐出タイミングを制御する。また13−2のトラバースモータCは、31の位相補償器1の出力を81の位相補償器、82の駆動増幅器3を経由した駆動信号により制御される。
図9に図7のマルチスポッティング装置を用いるインクジェットの構造を示した。91はスポッティング液としてプローブDNAを貯蔵するタンク、90はインクジェットAであり、接続孔93により、91のタンクに挿入し、接続される。
なお92は接続シール、94は吐出口、95は96の加圧デバイスの圧力を受け、94の吐出口からスポッティング液を吐出するための加圧室である。
インクジェットのタンクにはタンクに有するスポッティング液の種類を表示するバーコード等の液名表示部97が設けてある。
プリグルーブ上の規定の位置にスポッティングする時には、必ず前記バーコード97を読み取り、プリグルーブ上のアドレス情報とともに表示部97が表示した情報をメモリーに記録する。プリグルーブのアドレス情報は、図3の38の加算器出力を用いて読み取ることもできる。もちろん、図6のVマーク検出器の出力からDNAマイクロディスク上のスポッティング位置を検出することも可能としている。このメモリーの内容は最終的には、DNAマイクロディスク上の記録領域(図2の領域24あるいは25)に転記し、スポッティングが終了したDNAマイクロディスク上のどの位置に、どのようなスポッティング液が配置されているかを、知ることができるようにしてある。
以上のごとく構成することにより、基板上のプリグルーブの位置を検出し、スポッティング液としてプローブDNAをプリグルーブ上にスポッティングすることが可能となり、基板上の予め決められたアドレス情報をもつ位置にプローブDNAを設けることが出来、かつプリグルーブによりプローブDNAが基板上に広がることを規制できるため、プローブDNAを高密度で配置することが可能になった。図1ではプリグルーブの凸の部分にスポッティング液を配置しているが、プリグルーブの凹の部分に配置してもよい。この場合には、スポッティングされたスポッティング液はプリグルーブの凹の部分に沿って配置される。
また、プリグルーブには予め番地情報27を附加させることができるため、プローブDNAを正確に示すことができる。
なお以上の実施例においては、プローブDNAをスポッティングする時には、基板上のプリグルーブの位置を検出するため基板側から例えば波長780nmのレーザビームを2のレーザより照射し、透過したレーザビームを用いて、基板上のプリグルーブ23の位置を検出し、前記したごとく位置決めを行う。基板に薄膜を設けたときには、基板側から照射したレーザビームが基板を透過する波長をもつレーザを選択し、使用する。
基板上のDNAプローブに試験試料であるcDNAを塗布し、プローブDNAとハイブリダイゼイション反応が生じた後、生成されたDNAスポットに含まれる蛍光を検出する時には、例えば波長約650nm,約530nm,約400nmのレーザビームを基板上より照射し、その反射光を用いる。このため、基板上にはSiO、金などの層を設けている。実施例においては基板上に金の層を設けその上にSiO層を作製している。金の代わりにPtなど、またSiOの代わりに同等な性質をもった無機材料、有機材料を使用することも可能である。
基板上に設けた金、SiOの薄膜の機能について説明する。図10において、横軸100はSiO膜の膜厚[nm]を示し、縦軸101は基板表面上の電場強度のポリカーボネート基板のみの場合に対する比を示し、金、SiOの薄膜を設けたときと、何も設けなかったときの比較値をあらわした。102は波長563nmのレーザ光を、103は波長652nm、104は波長532nmのレーザ光を用いた時の特性である。
図10では、金の薄膜の上にSiOの薄膜を配置した。金の膜厚を50nmとした時SiO膜上にできる電場強度比を、SiO膜の厚さを変化させて計算した結果を図10の縦軸に示したものである。
この結果、例えばSiOの膜厚70nmにおいて、縦軸の強度比が5倍になっている事がわかる。これは前記した膜構造にしたとき、膜の形成した面から532nmの波長の光を照射したときの反射光量が5倍になることを示すわけである。
図10のグラフにおいては、金の薄膜の厚さを50nmとした時、SiO膜厚を70nmとすることにより、SiO表面の電場が薄膜の無い時に比べ約5倍になることがわかる。このように基板表面に薄膜を設け、レーザ光を照射したときに、電場を大きくするように構成することにより、蛍光体を含んだDNAスポットにレーザビームを照射しその反射光を観測すれば、光量が増加し、反射光のS/Nが向上する効果が得られる。
基板にスポッティングする場合においては、スポッティングする基板表面に微小な油脂成分等の汚れを取り除くことが重要である。そのため、スポッティングする直前にプリグルーブを照射するレーザビームの出力を増大させることにより、基板表面の温度を上昇させ、汚れ成分を取り除くことができる。
このために、位置検出用のレーザビームを用いることが可能であるが、別のレーザを準備し、スポッティングに先立って基板表面の温度を一時的に上昇させた後、スポッティングを行うこともできる。
基板としては円盤状とした実施例を用いて説明したが、円盤状ではなく、長方形などの形状でも適用可能である。もちろんプリグルーブを円周状ではなく、直線状の線分を集合させた形状でも利用可能である。
またインクジェットの位置を検出するために、インクジェットに直接光検出器を取り付けることもできる。もちろん光を用いた位置検出方法以外の方法、例えば磁気検出を用いることも可能である。スポッティング液としては、cDNAなどのプローブDNAを用いた実施例により説明したが、スポッティング液としては、蛋白など、液状のものであれば、何にでも適用できる。
また本発明の基板は、プローブDNAとして、オリゴDNAを光化学反応を用いて作製するときの基板としても使用することができる。
ここで簡単に本発明の基板を用いて、光化学反応により用いて作製するプローブDNAの説明を行う。
周知のように、DNAはデオキシリボヌクレオチド(ヌクレオチドという)の重合体である。このヌクレオチドはデオキシリボースにリン酸、及び、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、の4種類の塩基の中の1つが結合した化合物である。たとえば2つのヌクレオチド、今これらの一つを[X]、もう一つを[Y]とし、[X]の中のデオキシリボースの5’炭素原子と[Y]の中のデオキシリボースの3’炭素原子が、間にリン酸をはさんでエステル結合を形成することでつながることができる。
ヌクレオチドは、2つの末端を持っているが、この1つの端を5’炭素、もう1つの端を3’炭素と結ばれており、ヌクレオチド間の結合は5’炭素と3’炭素の間だけでつくられ、5’炭素間、あるいは3’炭素間では結合が起きない。
そして結合をくりかえすことで、理論的には無限の数のヌクレオチドを直鎖状に結合することができる。そして、各ヌクレオチドにはA,G,C,Tの4種類の塩基のうち1つが含まれるため、DNAの中ではこの塩基の並ぶ順番を指定することが出来、これがDNAの塩基配列となる。ここでは簡単のためこれらを、A,G,C,Tと呼ぶ。このDNAを基板上に作成したものをプローブDNAと呼ぶ。
プローブDNAを図2のDNAマイクロディスク上に生成するに際し、DNAマイクロディスク上に記録可能なゾーンを設け、作成条件と測定結果、プリグルーブあるいはプリピットにより位置決めされプローブDNAの格納位置を示すアドレス情報と、プローブDNAとの対応関係を、DNAマイクロディスク上に記録する。これによって、従来ガラス板と作成時のデータが別に保管されていたのを一体的に保存でき、操作性、信頼性とセキュリティが向上する。このための具体的作成方法を提供するためのものである。
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した1実施例について図面とともに記載する。
以下、図12,図13を用いて、本発明における第1の実施例の概略構成を図示する。図11はDNAマイクロディスクのプリグルーブとその位置を示すアドレスの部分を拡大して示した図面である。また、図13はプローブDNAを作成ための装置の構成を示すブロック図である
ここでは図12に示したDNAマイクロディスク118上のアドレス1(113)を有するプリグルーブ112にA−C−G−Tという塩基配列の4つのヌクレオチドから出来たオリゴヌクレオチドを、生成する。そして、115のアドレス2が示すプリグルーブ114にG−A−T−Cの配列を持つオリゴヌクレオチドをDNAマイクロディスク上につくる場合を例にとり説明する。
すでに説明したように、Aが3’末端側で、Tが5’末端側だとする。DNAの化学合成では3’末端側から始めて、その5’末端に順次ヌクレオチドを一つずつ付加していき、その際に付加するヌクレオチドの種類をコントロールすることで目的の塩基配列のDNAを合成する。例えばAから開始する場合を説明する。このヌクレオチドの5’末端には別の化学基を結合させて他のヌクレオチドの3’末端と反応できないようにしておく。このような化学基をここでは保護基と呼ぶ。この最初のAのヌクレオチドをその3’末端で、基板上の樹脂に共有結合させておく。なお、3’末端をビオチン化したDNAをプローブDNAに用いることができ、この場合にはDNAマイクロディスク111の表面にアビジンを固定しておくことでアビジン−ビオチン間の特異的結合形成能によってDNAを基板に固定することもできる。
この最初のAのヌクレオチドをその3’末端で固定する方法としては、次の方法もある。まずこのDNAマイクロディスクの表面に光化学的に活性化する物質を設ける。
あるいは、このDNAマイクロディスクの表面にレーザ光を照射したときに発生する電場を大きくするため、例えば金の層、SiOの層を設けその上に前記した光化学的に活性化する物質を設けることもできる。
まずこのDNAマイクロディスク基板の表面に光化学的に活性化する物質、光照射によって乖離し、その後にOH−基が残存する性質を持つ保護基によって端末されたモノマー(モノヌクレオチド)を設け、これを重合させて一端を基板表面に固定した状態のオリゴヌクレオチド(鎖長の短いポリマー)を合成する。次に基板表面に選択的にレーザ光を照射して保護基を外してOH−基を生成した後、モノヌクレオチド溶液を、例えばスピンコートにより塗布すると化学反応が起こり、ポリヌクレオチド(DNA)が光をあてた部分に結合する。モノマーとしては、感光性保護基で5’ヒドロキシルを光保護された3’−O−活性化ホスホルアミダイトヌクレオチドを例示することができる。光保護されたモノヌクレオチドおよびその合成法については、WO1997/039151(特開2000−508542)に詳述されている。また、感光性保護基としては、オルトニトロベンジル基を例示することができる。
つまり、基板表面に選択的にレーザ光を照射後、ヌクレオチド溶液を加えると化学反応が起こり、ヌクレオチドが光をあてた部分に結合する活性化層をもつように構成する。たとえば、光を照射した部分にOH−基が生成されるようにし、その後スピンコートにより塗布したモノマーと結合するようにする。
本発明では、基板上に、プリグルーブあるいはプリピットにより構成したアドレス情報により特定可能な格納部を設け指定した格納部において光化学反応を行う。そのため、前記アドレス情報を読み取り格納部にレーザ光を選択的に照射するわけである。
この格納部は、プリグルーブの凹部、あるいは凸部、あるいはプリピットにより特定可能な領域なら平面でもサッカースタジアムのような形状をした凹ピット、凸ピットなどの形状などを用いる。またその寸法は幅が1μm以上、長さが1μm以上とすることがレーザビームスポットの大きさとの関係で好ましいが、これに限定するものではなく、プローブDNAが格納できる寸法に設定している。
このようにアドレス情報を読み取りレーザビームスポットを格納部であるプリグルーブなどにトラッキングした後、DNAマイクロディスク表面の任意の格納部に選択的に光を照射する。そこでまず、アドレス1にレーザ光をあててからAヌクレオチドを加える。このAヌクレオチドの末端は保護基で保護している。Aヌクレオチドの溶液をスピンコートにより基板上に塗布する。ただし、その保護基は光化学的に不安定なものを使う。つまりレーザ光をあてると脱保護の反応が起きるというものである。このAヌクレオチドがアドレス1のプリグルーブ112の表面に結合したら、洗浄液を基板にスピンコートにより塗布し、未反応のAヌクレオチドを取り除く。
つぎにアドレス2のプリグルーブ114に光を照射してここを活性化し、末端に保護基をもったGヌクレオチドを反応させこれをそこに配置する。ここまででアドレス1のプリグルーブ112にAが、アドレス2のプリグルーブ114にGが結合したDNAマイクロディスクができたわけである。つぎに、アドレス1のプリグルーブ112にレーザ光を照射するとAヌクレオチドの保護基がとれるためその後、Cヌクレオチドを付加する。アドレス2のプリグルーブ114にレーザ光を照射しGヌクレオチドの脱保護をしてAヌクレオチドを付加する。その後は同じことを繰り返せば、アドレス1のプリグルーブ112にA−C−G−T、アドレス2のプリグルーブ114にG−A−T−CのオリゴDNAを有するDNAマイクロディスクが完成する。なお118のDNAマイクロディスクは便宜上直線的に書かれているが、実際は円盤状であり、プリグルーブは、117の接線方向に同心円あるいはスパイラル状に作製してある。そしてこの同心円あるいはスパイラル状のプリグルーブは半径方向に複数本(例えばトラックピッチ2μmから20μm程度で数1000本以上)ディスク上に整列している。
この特定のプリグルーブにレーザ光を照射する方法を図13のブロック図を用いて説明する。
図13はプローブDNA作製装置のブロック図である。118はDNAマイクロディスクで、アドレス1のプリグルーブ112、アドレス2のプリグルーブ114が設けられている。このプローブDNA作製装置においては、プローブDNAの格納部としてプリグルーブを用いている。
118のDNAマイクロディスクは131のモータに132のターンテーブルを介して乗せられており、ディスクモータ131により回転制御される。120はレーザであり、121のビームエキスパンダにより平行光に変換され、122のビームスプリッタを経て、123の対物レンズにより焦点を113のアドレス1のプリグルーブ112上に結ぶ。このため、対物レンズ123は125のフォーカシングアクチュエータ、124のトラッキングアクチュエータ、および130のトラバースモータにより制御され、113のアドレス1を有するプリグルーブ112上に焦点を結ぶように制御される。制御のために、対物レンズは113のアドレス1を対物レンズが集光した118のDNAマイクロディスクからの反射光を126のレンズをへて128の光検出器により検出し、113のアドレス1が読み取られ、位置制御される。最初レーザビームのパワーは保護基を照射した時も影響を与えないよう低パワーに調整され、ビームスポットが112のアドレス1のプリグルーブを追従する。そして、アドレス1のプリグルーブ112が検出されたときに保護基を除去するため、レーザパワーを高出力にする。つまり、レーザビームがアドレス1のプリグルーブ112を走査する期間のみ、レーザパワーを高出力に設定する。
図14はプローブDNA作製装置のブロック図である。120のレーザは146のレーザパワー変調器によりレーザパワーが変調される。128の光検出器の出力は140のプリアンプにより光出力が電流に変換され、プリグルーブ112のアドレス1の情報が検出され、デコーダ141により復調され、142のCPU(コントローラ)に送られる。プリグルーブ112の位置が読み取られた後、前記プリグルーブ上において行う光化学反応に適合したレーザパワーが、CPU142により演算され、143の照射パルス制御部により出力される。そして、146のレーザパワー変調器を経由して、120のレーザの出力レーザパワー、出力パルス幅、等が制御され、レーザの光出力がプリグルーブ112を照射する。120のレーザから出力されるレーザパワーは、光化学反応に適した値になるようにパルス幅、パルスピーク値が制御されるが、DNAマイクロディスクとレーザビームスポットとの相対速度により、パワーを変える必要があるため、147のサーボ部より131のディスクモータの回転数情報が、CPU142に入力され、パワー制御のための情報として使用される。例えば光化学反応に大きなレーザパワーが必要なときは、相対速度を低下させ、対象のプリグルーブ上に大きな光エネルギー(プリグルーブ上に与えられた光エネルギーの積分値)を与えることができる。147のサーボ部は123の対物レンズの出射光ビームをDNAマイクロディスクのプリグルーブ上に、フォーカシング、トラッキングするため動作も行う。
なお145のPCはプローブDNA作製装置をコントロールするためのパソコンであり、インターフェース(I/F)144を介して、プローブDNA作製装置全体の動作をコントロールする。例えば、DNAマイクロディスク上のアドレス情報により特定できるプリグルーブの総数は、100万カ所以上とすることが可能であり、プローブDNA作製装置内部のCPU142だけではどのアドレスにどのようなDNAを生成するかをコントロール出来ないため、外部のパソコンによる制御が必要になる。
図15に動作波形図を示す。141は読み取られたアドレス情報の1例を示す。120のレーザの光出力は、再生光パワー148によりアドレス情報を読み取り、特定のアドレスを有するプリグルーブに、149のピークパワーを持つレーザ光を照射する。
特にプリグルーブ上において光化学反応を生じさせるときには、光エネルギーの積分値が重要であり、照射レーザパワーのはじめのパルス幅を大きくし、その後パルス幅をちいさくすることにより、プリグルーブ上に設けた光保護基に対する適切な反応エネルギーを与えることができる。
このように、DNAマイクロディスク表面の任意の微小な部位(プリグルーブ)に光を当てるトラッキングサーボ技術と、光の照射で脱保護反応が起きる保護基を持ったヌクレオチドを用いたDNA合成反応により、「オリゴDNAマイクロディスク」の作製が可能になる。レーザ波長については、350nm程度が脱保護基のためには好適であることが分かっている。また複数のレーザ波長を選択して用いることにより、光化学反応にたいする働きを変えることも可能である。例えば、光保護基やモノマーの性質を波長依存性の強いものにすることにより、モノマーの反応を波長を変えることにより選択的に行うことができる。最終的に作製されたプローブDNAはレーザビームを走査することにより、プローブDNAが正常に作製されたものかどうか判別できる。判別する方法としては、プローブDNAを走査し、正常に動作するプローブDNAと反射率、色、等を比較し、行うことが可能である。
そして、同じ種類のプローブDNAを複数個作製しておき、正常なものを判別し、管理することができる。そして最終的にはカスタマーはその最終的に正常とされたプローブDNAを管理データより知り、そのアドレス情報を持つプローブDNAだけを使用することができるわけである。管理する方法としては、正常に作製できたプローブDNAの存在するアドレス情報をDNAマイクロディスク上に保管することにより可能としている。これは記録できるゾーンをDNAマイクロディスクに備えているので、その箇所に情報を保管する。
最後に以上のように作製した基板上のプローブDNAを用い、mRNAの解析を行うときの方法については、公知のDNAチップと同じプロセスにより、検査対象試料とハイブリダイゼイションさせ、塩基結合させた後、プローブDNAに検査用レーザビームを照射し、蛍光を観測しておこなう。この時、本発明のDNAマイクロディスクを用いたときには、DNAスポットを1次元に走査可能であるので、高速に検査を行うことができる。プリグルーブ上にプローブDNAを配置したので、塩基結合したプローブDNA(DNAスポットと呼ぶ)の検出S/Nを向上させることが出来、そのための光学測定部と、サーボ部を備えることにより、塩基結合計測の高速化と操作性の向上および低価格化を実現する。そして制御部を構成する光学測定部をDNAスポットの読取光学測定部と独立に設け、サーボ誤差を検出するためのビームスポットがDNAスポットに含まれる蛍光体を劣化させないようにできた。また、DNAマイクロアレイの読み取りビーム光の位置制御を、サーボ機構を用いて精度良く行い、フォーカス、トラッキング方向の誤差を無くし、正確に走査することが実現できた。
また、読取レーザビームによる蛍光体の退色を防止し、DNAスポットの読取S/Nを向上させるため、読取レーザ光を高周波(例えば100−500MHz)で振幅変調することも可能である。このように変調することにより、基板上において、照射エネルギーの蓄積が少なくなることが分かっており、退色を防止できる。
以下本発明のDNAマイクロディスクを計測するための最良の形態を具体的に示した実施例について、図面とともに記載する。
以下、図16,図2を用いて、本発明における計測の実施例の概略構成を図示する。
図16は、図2に示したDNAマイクロディスクを読み取る装置の構成を示すブロック図、図2はDNAマイクロディスクである。
図16において、1はDNAマイクロディスクで、152のディスクモータにより、回転制御される。153は対物レンズで、DNAマイクロディスク上に形成されたDNAスポットにレーザビームを集光し、反射した光を集める。153の対物レンズは、154の対物レンズアクチュエータ、フォーカス素子154aトラッキング素子154b、により、DNAマイクロディスクの基板に対して垂直方向(153bのZ方向)と、DNAスポット列にレーザビーム先を追従させるトラッキング方向(153aのX方向)、に可動させることができる。
155は蛍光励起用光源(出力光波長λ1)で、この場合、650nmの波長のレーザを用いている。156はコリメータレンズ1で、155のレーザの出力光を平行光、あるいは規定の角度をもった発散光に変換し、159のハーフミラー、160のビームスプリッタ1を経由して、153の対物レンズにより、1のDNAマイクロディスク上に焦点を結ぶ。規定の角度をもった発散光に変換する理由は、焦点を結んだ時のビームスポットの大きさを、DNAスポットの大きさと同程度にするためである。またこのとき波長λ1の光源から出射する光束は対物レンズに入射する前に開口制限が設け、対物レンズのNAを実質的に小さくなるようにしてもいい。
この開口制限は、図14において、156のコリメータレンズの出射側に設けることができる。例えば対物レンズのNAとして0.6のものを用いた時でも、波長λ1の光に対しては、NAが0.5で、波長λ3のサーボ用の光に対しては、0.6となるようにした。このようにすることにより、サーボ誤差検出感度を高くでき、かつDNAスポット読取ビーム径を大きくできる。
157はサーボ用光源(出力光波長λ3)であり、158のコリメータレンズ2,159のハーフミラーを経て、160のビームスプリッタ1を経由して、153の対物レンズにより1のDNAマイクロディスク上に焦点を結ぶ。DNAマイクロディスクで反射された反射光は、153の対物レンズ、160のビームスプリッタ1を経て、164のビームスプリッタ2により、165の集光レンズ2を経て、166のサーボ誤差検出器上に導かれる。
一方、153の対物レンズにより、1のDNAマイクロディスク上に集光した155の蛍光励起用光源(出力光波長λ1)の出力光は、1のDNAマイクロディスク上のDNAスポットに含まれる蛍光体を励起し、励起された波長λ2の光は153の対物レンズにより集められ、160,164のビームスプリッタを経て、161の集光レンズ1で集光された後、162の光学フィルタにより、励起された光の波長λ2だけが選択されて163の蛍光読取検出器に導かれる。この時、160,164のビームスプリッタ1,2は波長λ1のレーザで励起されたDNAスポット中の蛍光体の発光波長λ2を通過させ、14のビームスプリッタはサーボ用光源の出力波長λ3の光を反射し、162の光学フィルタは波長λ2だけを透過させるように構成している。167のサーボ用光源の出力光は168のコリメータレンズ2により平行光に変換される。
そしてこのスポットの形状は、167のシリンドリカルレンズにより、153の対物レンズで集光された時に、焦点前後において、集光したスポットの形状が変化する。すなわち、166のサーボ誤差検出器上において、真円から楕円に変化する。この変化を166の光検出器を4分割したサーボ誤差検出器により、測定する。検出器の中央にほぼ真円の状態にDNAマイクロディスクから反射したビームが投影された時に、153の対物レンズが合焦点になったことを示す。同時に、サーボ用光源の出力光は、168の回折格子により、1のDNAマイクロディスク上のDNAスポットあるいはプリグループ上に図17に示すように、対物レンズ153を出射した光ビームS1,S2,S3が形成される。このうちS1,S3で示した光ビームは、166のサーボ誤差検出器のD1,D2により受光し、その出力の差がトラッキング誤差となる。
図17はDNAマイクロディスクと読取レーザビームおよびサーボ用レーザビームが形成するビームスポットの相対関係を示す原理図である。
図17において、171はプリグループでP1,P2,P3で示している。プリグループの巾は1〜100μm、高さは0.1〜10μmの凸または凹、プリグループの間隔は1〜150μm程度に設定する。171のプリグルーブ上に173のDNAスポットが形成されている。172はサーボ用ビームであり、171のプリグルーブP2を照射した状態を示している。
サーボビームS1が図14に示すサーボ誤差検出器D1に、S2はD3に、S3はD2に照射する。
170はDNAスポット読取ビーム(波長λ1)であり、173のDNAスポットを照射し、173のDNAスポットに含まれる蛍光体を励起し、波長λ1による波長λ2の励起光は、図16の蛍光読取検出器163により読み取られる。サーボ用光源(波長λ3)から形成されるサーボビームはDNAスポットを照射するが、DNAスポットの蛍光体を励起できる波長にならないよう設定している(例えば780nm)ので、DNAスポットを退色させることはない。
【産業上の利用可能性】
以上のように構成した本発明は、次に述べる効果を奏することができる。
DNAマイクロディスク上のプリグルーブにプローブDNAを正確にスポッティングしたDNAマイクロディスクを使用した場合は、読取ビームを1次元方向に走査すればよいので、読取速度を早くできる。そのため、DNAスポットを1回だけ走査すれば読取が完了し、従来の2次元走査による画像化を不要にした。
さらに、基板にプリグルーブを設けたDNAマイクロディスクを用いたため、基板上に従来より多くのDNAスポットを設けることができ、例えば10万スポット以上のDNAスポットを有するDNAマイクロディスクを作ることができる。基板上に金などの薄膜を設け、その上にSiOなどの薄膜を設けたため、基板上にレーザを照射したとき、その反射光量が大きくなり、DNAマイクロディスク上のDNAスポットを検出する時のS/Nが大きくとれる。
また基板材料として樹脂を用いることが出来、全体システムを安価に構成できる。樹脂を基板材料に用いた時でも、基板の両面に対称に薄膜を設けたため、ハイブリダイゼイション時にも基板の反りが最小に抑圧できる。
スポッティング時に、スポッティング液を1種類ずつ別のタンクに収納し、前記タンクにスポッティング液の種類、名前等を表示する表示部を設けたので、スポッティング時に間違った液をスポッティングすることがない。
高速でスポッティングするため、1枚のDNAマイクロディスクにロータリーテーブルを複数個組み合わせて、スポッティングできるため、1つ当たりのスポッティング時間が節約でき、スポッティングの時間が減少した。
DNAマイクロディスク上のプリグルーブにおいて、プローブDNAを光化学反応により合成する際には、レーザビームスポットを指定したアドレスを有するプリグルーブにレーザビームを照射することにより、合成を行うことが出来、この時、レーザ光の制御のみにより可能であるので、従来のようなマスクを使用する必要がない。また、レーザビームを制御することにより、毎回異なるプローブDNAを作製でき、カスタムDNAチップを簡単に作製できる。
なお本発明では、基板上に、アドレス情報により特定が出来るプリグルーブを設けた実施例により説明したが、プリグルーブの代わりにアドレス情報により特定が出来る格納部であれば平面部、あるいは凹面部、凸面部を用いることも可能である。つまり、アドレス情報を有するプリピットにより特定可能な格納部を設け、指定した格納部において光化学反応を行う。そのため、前記アドレス情報を読み取り格納部にレーザ光を選択的に照射するわけである。
この格納部は、プリグルーブの凹部、あるいは凸部、あるいはプリピットにより特定可能な領域なら平面でもサッカースタジアムのような形状をした凹ピット、凸ピットなどの形状なども用いることができる。またその寸法は幅が1μm以上、長さが1μm以上とすることが現在のレーザビームスポットの大きさとの関係で好ましいが、これに限定するものではなく、プローブDNAが格納できる寸法に設定できればどのような寸法に設定しても良い。
DNAマイクロディスクあるいはDNAマイクロアレイのDNAスポットを照射するレーザビームを、サーボ用のレーザビームと読取用のレーザビームの両方をもたせることにより、DNAスポット上に正確に読取用レーザビームを位置決めでき、DNAスポットの蛍光体を効率よく励起でき、蛍光測定の感度を向上させた。もちろん、DNAマイクロスポットを配置する基板のそりなど変形、またDNAスポットの配置位置のずれがあってもサーボにより、スポットの正確な位置が検出でき、読取ビームが正確にスポットを照射するようにできた。また、読取ビームを高周波で変調することにより、蛍光体の退色を防止し、従来よりも大きな読取レーザピークパワーを照射できるようになった。
特に、マイクロディスク基板を使用した場合は、読取ビームを1次元方向に走査すればよいので、読取速度を早くできる。そのため、DNAスポットを1回だけ走査すれば読取が完了し、従来の2次元走査による画像化を不要にした。
【図1】

【図2】

【図2a】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にプリグルーブを設け、前記少なくともプリグルーブ上にプローブDNA又は蛋白と接着性が良好な薄膜を設けた上で、前記プリグルーブの凸部または凹部にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置して、液滴の表面張力及び/又は凹部の場合、凹溝の壁によってグルーブに直角方向の広がりを制限された状態でプリグルーブの接線方向に広がり、その状態でプローブDNA又は蛋白を前記基板上に固定させていることを特徴とするマイクロアレイディスク。
【請求項2】
前記基板にプリグルーブを設け、前記プリグルーブの凸部または凹部に前記プリグルーブの番地情報を設けたことを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスク。
【請求項3】
前記基板上には液滴をスパイラル状、あるいは同心円状に配置することを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスク。
【請求項4】
前記基板上に回転位相を示すマークを設けたことを特徴とする請求項3記載のマイクロアレイディスク。
【請求項5】
前記マイクロアレイディスクにおけるプローブDNA又は蛋白の設置領域について、そのプリグルーブ上の接線方向の長さがそれに垂直な方向の幅に対して2倍以上であることを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスク。
【請求項6】
基板上に反射膜を設け、前記反射膜上に前記基板の屈折率より小さく、空気の屈折率よりも大きな光透過膜を少なくとも1層以上設け、前記基板上にプローブDNA又は蛋白を含む液滴をスポッティングしたことを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスク。
【請求項7】
前記基板上に薄膜からなる層を少なくとも1層以上設け、基板側から波長λ1のレーザビームを照射し、プリグルーブの位置を検出するときには前記基板を前記照射したレーザビームの一部は透過し、前記基板上に配置された液滴を計測するために、検出波長λ2のレーザビームを基板の反対側から照射したときには、一部が反射することを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスク。
【請求項8】
前記基板上のプリグルーブの凸部または凹部に、プローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置するために、1)前記プリグルーブの位置を検出する機構、2)プローブDNA又は蛋白を含む液滴を吐出できる機構により、プリグルーブ上にプローブDNA又は蛋白を含む液滴を配置することを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイディスクを作成するためのスポッティング装置。
【請求項9】
前記プリグルーブに対物レンズを経由してレーザ光を照射し、反射光を第1の光検出器により受光し、前記対物レンズの出射光が前記プリグルーブに追従するように前記対物レンズの位置を制御可能にしたトラッキングサーボを構成したうえ、前記プリグルーブにプローブDNA又は蛋白を含むスポッティング液を吐出する装置を設け、前記吐出装置の吐出口と前記プリグルーブの相対位置を検出するために、前記プリグルーブを透過した光を検出する第2の、少なくとも2分割セルを有する光検出器を設け、前記第2の光検出器の2分割セルの各出力の差を得るための差動増幅器出力を用い、前記トラッキングサーボを構成する光学ブロックと、前記吐出装置と第2の光検出器を一体に移動制御するトラバースユニットモータを駆動制御し、前記吐出装置から吐出するスポッティング液を前記プリグルーブ上に配置することを特徴とする請求項8記載のスポッティング装置。
【請求項10】
プローブDNA又は蛋白を含むスポッティング液を入れたタンクに前記スポッティング液の名前を読み取るための標識を設け、スポッティング時にスポッティング装置により前記標識を読み取り、前記スポッティング液をアドレス情報を有するプリグルーブ上に、スポッティングし、前記標識および前記アドレス情報の対応関係をスポッティングしたディスク上に記録したことを特徴とする請求項8記載のスポッティング装置。

【国際公開番号】WO2005/085848
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510816(P2006−510816)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004263
【国際出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(503169378)
【Fターム(参考)】