説明

マイクロチップ

【課題】比較的簡易な構造によっても密封状態に近い状態で液体試薬を保持することが可能であり、マイクロチップが外的な衝撃を受けた場合や液体試薬保持部の内圧が上昇した場合などであっても、液体試薬が液体試薬保持部から流出することを防止することができるマイクロチップを提供する。
【解決手段】第2の基板と、この上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、該溝と第2の基板における第1の基板側表面とから構成される流体回路を有し、該流体回路は、液体試薬を保持するための部位であって、液体試薬を流出させるための第1の流出口または第1の流出用流路を備える液体試薬保持部と、第1の流出口または第1の流出用流路に接続される、液体試薬保持部から流出する液体試薬を収容するための部位であって、液体試薬を流出させるための第2の流出口または第2の流出用流路を備える液体試薬収容部とを含むマイクロチップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA、タンパク質、細胞、免疫および血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに好適に使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップに関し、特には、検査・分析等の対象となる検体と混合または反応させるための液体試薬を、あらかじめマイクロチップ内に内蔵するための液体試薬保持部を有するマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。マイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、数cm角で厚さ数mm〜1cm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【0003】
マイクロチップは、通常、その内部に流体回路を有しており、該流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体(たとえば、血液または血液中に含まれる特定成分等)の計量、検体と試薬との混合などの種々の流体処理が行なわれる。このような流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことが可能である。
【0004】
上記マイクロチップのうち、液体試薬内蔵型マイクロチップは、検体または検体中の特定成分と混合あるいは反応させるための液体試薬を流体回路内にあらかじめ保持しているマイクロチップであり、その流体回路には、液体試薬を保持するための1または複数の液体試薬保持部が設けられる(液体試薬保持部を有するマイクロチップについては、たとえば特許文献1参照)。また、液体試薬内蔵型マイクロチップには、通常、その一方の表面に、液体試薬保持部内に液体試薬を注入するための、該液体試薬保持部まで貫通する試薬注入口が形成され、該試薬注入口は、液体試薬が注入された後、たとえば封止用ラベル(シール)などをマイクロチップ表面に貼付することにより封止される。
【0005】
ここで、液体試薬内蔵型マイクロチップにおいて、液体試薬は、通常、当該マイクロチップ製造時にそれが有する液体試薬保持部内に充填され、かかる状態で出荷されて使用に供される。この際、マイクロチップを用いた検体の検査・分析が精度よく行なわれるためには、マイクロチップ製造時から使用時までの間、内蔵された液体試薬の劣化が十分に抑制または防止されている必要があり、また、マイクロチップへの衝撃や液体試薬保持部の内圧上昇などによる液体試薬保持部からの液体試薬の流出が十分に抑制または防止されている必要がある。液体試薬の劣化や流出が生じていると、液体試薬と検体(または検体中に含まれる特定成分)とが適切に反応しなかったり、あるいはこれらが適切な割合で混合されないこと等により、正確かつ信頼性の高い検査・分析結果が得られない恐れがあるためである。
【0006】
たとえば特許文献2には、マイクロチップ使用時までの間、内蔵された液体試薬が密封されており、液体試薬の劣化や意図しない流出を防止し得る液体試薬内蔵型マイクロチップが開示されている。図4は、特許文献2に記載の液体試薬内蔵型マイクロチップの一例を示す平面図である。図4に示されるマイクロチップにおいて、液体試薬を保持するチャンバー96および98は、基板に対してスライド可能な、密封された容器であり、それぞれ開口可能な部分10を有している。また、チャンバー96および98に対向する位置には、スパイクまたは針状の開口手段12が設けられている。かかる構造により、マイクロチップ使用時までは、液体試薬をチャンバー96および98内に密封することができるとともに、マイクロチップ使用時には、マイクロチップに対して、図4におけるF0方向の遠心力を印加することにより、開口手段12によって開口可能な部分10に穴を開け、液体試薬を流出させることを可能にしている。
【0007】
しかし、上記手段の場合、液体試薬の劣化や意図しない流出を防止する効果は高いものの、開口手段12によって形成された穴から、全量の液体試薬が流出しない可能性がある。チャンバー96または98内に液体試薬が残存していると、その後の流体処理における遠心力の印加によって、残存していた液体試薬が流出し、検体との混合、反応に悪影響を及ぼしたり、検体と液体試薬との混合液の検査・分析結果に悪影響を及ぼし得る。
【0008】
また、特許文献2に記載のマイクロチップは、液体試薬保持部の構造が非常に複雑であり、作製が容易でないという問題を有している。すなわち、液体試薬を封止する容器には、窓部を設けた上、当該窓部に、開口可能な部分10として、針などで穴を形成することができるフィルムなどを貼り付けなければならないし、また、当該容器を、マイクロチップを構成する基板にスライド可能に設置しなければならない。さらに、特許文献2に記載のマイクロチップは、稼動部(スライド可能な容器)を有していることから、当該稼動部の動作不良により液体試薬が流出しないなど、動作上の安定性に欠ける。
【特許文献1】特開2007−17342号公報
【特許文献2】米国特許第4,883,763号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、比較的簡易な構造によっても密封状態に近い状態で液体試薬を保持することが可能であり、マイクロチップが外的な衝撃を受けた場合や液体試薬保持部の内圧が上昇した場合などであっても、液体試薬が液体試薬保持部から流出することを防止することができるマイクロチップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第2の基板と、該第2の基板上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、第1の基板が有する溝と第2の基板における第1の基板側表面とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップに関するものである。本発明のマイクロチップにおいて、流体回路は、液体試薬保持部と液体試薬収容部とを含むことを特徴とする。液体試薬保持部は、液体試薬を保持するための部位であって、液体試薬を流出させるための第1の流出口または第1の流出用流路を備える。また、液体試薬収容部は、上記第1の流出口または第1の流出用流路に接続される、液体試薬保持部から流出する液体試薬を収容するための部位であって、該液体試薬を流出させるための第2の流出口または第2の流出用流路を備える。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、液体試薬保持部は、液体試薬を流出させるための第1の流出用流路を備え、液体試薬収容部は、液体試薬を流出させるための第2の流出用流路を備える。この場合、該第2の流出用流路は、該第1の流出用流路とは異なる方向に延びることが好ましい。
【0012】
また、液体試薬収容部が液体試薬を流出させるための第2の流出用流路を備える場合において、該第2の流出用流路の一端は、該液体試薬を計量するための計量部に接続されることが好ましい。
【0013】
本発明のマイクロチップにおいて、第1の基板は、溝を備える表面とは反対側の表面から液体試薬保持部まで貫通する貫通口である、液体試薬を液体試薬保持部内に注入するための液体試薬注入口を有していることが好ましい。この場合、液体試薬保持部は、当該液体試薬保持部を、液体試薬注入口を有する第1の区画と、第1の流出口または第1の流出用流路を有する第2の区画とに二分する隔壁を有し、該隔壁は、第1の区画と第2の区画とを連通させる少なくとも1つの連通口を備えることが好ましい。
【0014】
本発明のマイクロチップにおいて上記隔壁は、好ましくは、2つの連通口を有する。この場合、当該2つの連通口は、隔壁の両端部に配置されることが好ましい。
【0015】
上記隔壁の少なくとも一部における、第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における断面は、第1の区画側に凸となるような略V字形状または略U字形状を有することが好ましい。あるいは、上記隔壁の少なくとも一部における、第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における断面は、第2の区画側に凸となるような略V字形状または略U字形状を有することが好ましい。
【0016】
本発明のマイクロチップにおいて、第1の区画側端部における連通口の高さと、第2の区画側端部における連通口の高さとは略同一とすることができる。あるいは、連通口の上側内壁面は、連通口の高さが第1の区画側から第2の区画側に向かうに従い小さくなるように傾斜していてもよい。ここで、本明細書中において「上側」とは、第2の基板の上に第1の基板を積層させた場合における上側を意味している。
【0017】
また、第1の区画の上側内壁面であって、連通口に隣接する領域は、該領域における液体試薬保持部の高さが該連通口に向かうに従い小さくなるように傾斜していてもよい。
【0018】
本発明のマイクロチップは、それが有する液体試薬保持部内に液体試薬が保持された液体試薬内蔵型マイクロチップであってもよい。この場合、液体試薬注入口は、該注入口を有する側のマイクロチップ表面(第1の基板表面)に、たとえば封止用ラベルまたは封止用シールなどを貼付する等の手段により封止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマイクロチップによれば、外的な衝撃が加えられた場合や、たとえば環境温度の変動等により液体試薬保持部の内圧が上昇した場合であっても、収容された液体試薬が液体試薬保持部から流出することを効果的に防止することができる。また、本発明のマイクロチップにおける液体試薬保持部は、比較的密封状態に近い状態で液体試薬を保持できるため、液体試薬の劣化防止能も良好である。さらに、液体試薬保持部は、比較的簡易な構造を有しているため、製造が容易であり、動作不良などの問題も生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査・分析等を、それが有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、本発明の1つの好ましい形態において、マイクロチップは、第2の基板と、該第2の基板上に積層、貼合された第1の基板とからなり、より具体的には、第2の基板上に、表面に溝を備える第1の基板を、当該第1の基板の溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わせてなる。したがって、かかる2枚の基板からなるマイクロチップは、その内部に、第1の基板表面に設けられた溝と第2の基板における第1の基板に対向する側の表面とから構成される空洞部からなる流体回路を備える。第1の基板表面に形成される溝の形状およびパターンは、特に制限されるものではないが、当該溝および第2の基板表面によって構成される空洞部の構造が、所望される適切な流体回路構造となるように決定される。
【0021】
また、本発明の別の好ましい形態において、マイクロチップは、基板の両表面に設けられた溝を備える第1の基板と、該第1の基板を狭むようにして積層、貼合された第2の基板および第3の基板とからなる。かかる3枚の基板からなるマイクロチップは、第2の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第2の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第3の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第2の流体回路と、の2層の流体回路を備える。ここで、「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。第1の流体回路と第2の流体回路とは、第1の基板に形成された厚み方向に貫通する1または2以上の貫通穴によって連結されていてもよい。
【0022】
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザ等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法;超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。
【0023】
本発明のマイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm程度、厚さ数mm〜1cm程度とすることができる。
【0024】
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料;シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。
【0025】
マイクロチップを第1および第2の基板の2枚から構成する場合において、第2の基板上に積層される、表面に溝を備える第1の基板は透明基板とすることができる。これにより、流体回路の一部として、透明な第1の基板の溝と、第2の基板表面とから構成される検出部を形成することができ、該検出部に検査・分析の対象となる検体と液体試薬との混合液を導入し、該検出部に対して光を照射し、透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板は、透明基板であってもよいし、基板を樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等を添加することにより黒色基板とするなど着色基板としてもよいが、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。第2の基板を着色基板とすることにより、レーザなどの光を用いた溶着法を用いることができる。また、レーザ溶着法により基板の貼り合わせを行なう場合、着色基板の貼り合わせ表面が主に融解されて貼合されることとなるため、第1の基板である透明基板に形成された溝の変形を最小限に抑えることができる。
【0026】
また、マイクロチップを第1の基板、第2の基板および第3の基板の3枚から構成する場合、たとえば、両表面に溝を備える第1の基板を挟持する第2の基板および第3の基板は、透明基板とすることができる。これにより、流体回路の一部として、第1の基板をその厚み方向に貫通する貫通穴と、透明な第2および第3の基板表面とから構成される検出部を形成することができ、該検出部に検査・分析の対象となる検体と液体試薬との混合液を導入し、該検出部に対してマイクロチップ表面と垂直な方向の光を、マイクロチップ上面(または下面)側から照射し、その反対側から透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板と第3の基板との間に位置する第1の基板は、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。
【0027】
第1の基板表面に、流体回路を構成する溝(流路パターン)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。
【0028】
本発明のマイクロチップにおいて、流体回路(2層の流体回路を備える場合には、第1の流体回路および第2の流体回路)は、流体回路内の液体に対して適切な様々な処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置された種々の部位を備えており、これらの部位は、微細な流路を介して適切に接続されている。
【0029】
本発明のマイクロチップにおいて、その流体回路は、これを構成する部位の1つとして、液体試薬を保持するための液体試薬保持部を備える。液体試薬保持部は1つのみであってもよいし、2以上あってもよい。「液体試薬」とは、検査・分析の対象となる検体と混合または反応させるための液体物質である。液体試薬は、1つのマイクロチップ内に1種のみ内蔵されていてもよいし、2種以上内蔵されていてもよい。また、「検体」とは、流体回路内に導入される検査・分析の対象となる物質(たとえば血液)自体、または、該物質中の特定成分(たとえば血漿成分)を意味する。
【0030】
マイクロチップが2枚の基板(第1の基板および第2の基板)からなる場合において、本発明のマイクロチップには、その上側表面(すなわち第1の基板表面)に、内部の液体試薬保持部まで貫通する(第1の基板をその厚み方向に貫通する)貫通口である、液体試薬を液体試薬保持部に注入するための液体試薬注入口が設けられている。このような本発明のマイクロチップは、通常、液体試薬注入口から液体試薬が注入された後、マイクロチップ表面(第1の基板表面)に当該液体試薬注入口を封止するためのラベルまたはシールが貼着されて、使用に供される。なお、マイクロチップが2枚の基板(第1の基板〜第3の基板)からなる場合においては、液体試薬注入口は、第2の基板または第3の基板をその厚み方向に貫通する貫通口として設けられる。
【0031】
本発明のマイクロチップにおいて流体回路は、液体試薬保持部以外の部位を備えていてもよく、かかる部位としては、たとえば流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を計量するための液体試薬計量部;検体と液体試薬とを混合するための混合部;得られた混合液についての検査・分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定を行なうためのキュベット)などを挙げることができる。本発明のマイクロチップは、これら例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。これらの部位は、所望する流体処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置され、かつ微細な流路を介して接続されている。
【0032】
検体と液体試薬とを混合させることによって最終的に得られた混合液は、特に限定されないが、たとえば、該混合液が収容された部位(たとえば検出部)に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法等の光学測定などに供され、検査・分析が行なわれる。
【0033】
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えている。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定することにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
【0034】
以下、実施の形態を示して、本発明のマイクロチップについて詳細に説明する。図1は、第2の基板(図示せず)上に、表面に溝を備える第1の基板100を積層、貼合してなる本発明のマイクロチップの好ましい実施形態の1つを示す上面図である。図1に示されるマイクロチップにおいて、第1の基板100は、図示しない第2の基板上に、その溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わされている。したがって、図1は、第1の基板100の、溝形成側表面とは反対側の表面を示したものであるが、説明の便宜上、溝パターンを実線で示している。本実施形態のマイクロチップにおいて第2の基板は、第1の基板100と同じか、または同様の輪郭形状を有している。第1の基板100および第2の基板はそれぞれ、たとえばプラスチック製の透明基板、黒色基板である。
【0035】
図1を参照して、本実施形態のマイクロチップは、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部101、サンプル管より導出された全血を、血球成分と血漿成分とに分離するための分離部102、分離された血球成分を計量するための血球計量部103、液体試薬を保持するための3つの液体試薬保持部104、105および106、液体試薬保持部105および106にそれぞれ隣接して設けられた、一時的に液体試薬を収容するための液体試薬収容部107および108、液体試薬を計量するための3つの液体試薬計量部109、110および111、血球成分と液体試薬とを混合するための第1の混合部112、血球成分と液体試薬との混合液を計量するための混合液計量部113、血球成分と液体試薬との混合液と、他の液体試薬との混合を行なうための第2の混合部114、ならびに、最終的に得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部115から主に構成される。3つの液体試薬保持部104、105および106は、液体試薬を当該液体試薬保持部内に注入するための液体試薬注入口116、117、118をそれぞれ有している。液体試薬注入口116、117および118は、第1の基板100を厚み方向に貫通する貫通口である。なお、以下では、液体試薬注入口を介して液体試薬保持部104、105および106内に注入、保持される液体試薬を、それぞれ液体試薬R0、R1、R2と称する。
【0036】
以上のように、本実施形態のマイクロチップが有する流体回路は、全血から分離された血球成分に対して、液体試薬R0、R1およびR2をこの順で混合させ、得られた混合液について光学測定等の検査・分析を行なうのに適した構成となっている。以下、本発明の特徴部分である液体試薬保持部周辺について、液体試薬保持部105周辺を例に挙げて詳細に説明する。
【0037】
図2は、図1に示されるマイクロチップにおける液体試薬保持部105の周辺を拡大して示す上面図である。図2に示されるように、本実施形態においては、液体試薬R1を保持する液体試薬保持部105に隣接して、液体試薬R1を一時的に収容するための液体試薬収容部107が設けられている。具体的には、液体試薬収容部107は、液体試薬保持部105の端部に接続された、液体試薬注入口117から注入され、液体試薬保持部105内に保持された液体試薬R1を流出させるための第1の流出用流路120の他端に接続されており、液体試薬保持部105から流出した液体試薬R1が、一旦、この液体試薬収容部107に収容されるように配置されている。液体試薬収容部107は、液体試薬保持部105を形成する壁面Mの一部、および、第1の流出用流路120周辺を取り囲むように配置された壁面Nによって形成される領域からなる。
【0038】
液体試薬収容部107は、上記第1の流出用流路120との接続部分とは別に開口(図2における開口X)を有しており、開口Xには、液体試薬R1を液体試薬収容部107から流出させるための第2の流出用流路121が接続されている。第2の流出用流路121の他端は、直接、液体試薬計量部110に接続されており、したがって、適切な方向の遠心力の印加(たとえば、図2における左向きの遠心力)により、液体試薬収容部107から液体試薬R1が排出されると、当該液体試薬R1は、同遠心力により液体試薬計量部110に導入され、計量されることとなる。
【0039】
液体試薬保持部105から流出した液体試薬R1を一旦収容可能な、上記構成の液体試薬収容部107を設けることにより、マイクロチップが外的な衝撃を受けた場合や液体試薬保持部105の内圧が上昇した場合などであっても、液体試薬R1が液体試薬計量部110へ流出することを防止することができる。すなわち、第1の流出用流路120は、微細な流路からなっており、それ自身バルブとしての機能を有しているため、液体試薬保持部105から液体試薬収容部107への流出は比較的起こりにくい構造となっているが、マイクロチップが外的な衝撃を受けた結果、液体試薬R1が液体試薬保持部105から排出されてしまう場合や当該衝撃により液体試薬R1が移動して第1の流出用流路120の開口を塞ぎ、その後の環境温度の上昇などにより液体試薬保持部105の内圧が上昇し、該開口を塞いでいた液体試薬R1が排出されてしまう場合などの意図しない流出が生じた場合であっても、液体試薬保持部105から流出した液体試薬R1は、液体試薬収容部107内に収容されるため、液体試薬R1が液体試薬計量部110へ流出してしまうことを防止できる。なお、ここでいうバルブとしての機能とは、所望しない場合には、液体試薬を排出させない一方、所望する場合には、所定の強さの遠心力の印加により、液体試薬を排出させることができる機能を意味する。また、液体試薬R1は、マイクロチップ使用時までの間、比較的密封状態に近い状態で保持されることになるため、品質の劣化等が生じにくい。
【0040】
また、マイクロチップが複数種類の液体試薬を使用する場合においては、このような液体試薬収容部を設けると、当該液体試薬収容部が、液体試薬を一旦待機させる機能を果たし、これらの液体試薬をそれぞれ適宜のタイミングで計量部に導入し、適宜のタイミングで検体と混合させることが可能となる。したがって、かかる液体試薬収容部を備えるマイクロチップは、検体に対して、複数種類の液体試薬を適切な順序で順次混合させることが必要な場合に特に有用である。
【0041】
本実施形態において液体試薬収容部107と液体試薬計量部110とを連結する第2の流出用流路121は、第1の流出用流路120と同様にバルブ機能を有しており、したがって、液体試薬収容部107に収容された液体試薬R1は、所定の強さの遠心力を印加することにより液体試薬計量部110に導入される。なお、液体試薬保持部105は、必ずしも第1の流出用流路120を有している必要はなく、当該流出用流路の代わりに、液体試薬保持部105を形成する壁面Mを貫通する貫通口などのような開口を設け、該開口により液体試薬保持部105と液体試薬収容部107とを接続してもよい。同様に、液体試薬収容部107は、必ずしも第2の流出用流路121を有している必要はなく、液体試薬収容部107を形成する壁面Nを貫通する貫通口などのような開口を設け、該開口により液体試薬収容部107と液体試薬計量部110とを接続してもよい。ただし、バルブ機能を良好に働かせるためには、流出用流路によりこれらの部位を接続することが好ましい。良好なバルブ機能を付与するため、第1の流出用流路120および第2の流出用流路121の幅は、0.1〜0.5mm程度とすることが好ましく、0.3mm程度とすることがより好ましい。また、第1の流出用流路120および第2の流出用流路121の流路長さは、0.6〜3.0mm程度とすることが好ましく、1.2〜2.0mm程度とすることがより好ましい。
【0042】
ここで、第2の流出用流路121は、図2に示されるように、第1の流出用流路120とは異なる方向に延びることが好ましい。より好ましくは、第1の流出用流路120および第2の流出用流路121は、第1の流出用流路120における液体試薬R1の流れ方向と、第2の流出用流路121における液体試薬R1の流れ方向とが、90°〜180°となるように配置されることが好ましい。これにより、液体試薬収容部107に上記液体試薬の待機機能を付与する場合において、液体試薬保持部105から液体試薬収容部107へ液体試薬R1を移動させるための遠心力と同じ遠心力によって、液体試薬R1が液体試薬収容部107に収容されることなく、そのまま液体試薬計量部110へ流出してしまうことを防止できる。
【0043】
また、第2の流出用流路121および該流路が接続される開口Xは、液体試薬収容部107を形成する壁面のうち、液体試薬保持部105に近い側の壁面に設けられることが好ましく、より好ましくは、液体試薬保持部105を形成する壁面Mに沿うように設けられる。これにより、一連の機能部との集積化が可能となる。
【0044】
ここで、本発明においては、液体試薬保持部内に、当該液体試薬保持部を二分する隔壁を設けてもよい。図3は、本発明のマイクロチップの別の好ましい実施形態における液体試薬保持部周辺を拡大して示す上面図である。図3に示される液体試薬保持部305内には、液体試薬保持部305を、液体試薬注入口317を含む第1の区画Aと、第1の流出用流路320を含む第2の区画Bとに二分する隔壁300が設けられている。隔壁300は、その両端部に、第1の区画Aと第2の区画Bとを連通させる2つの連通口310を有している。第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における隔壁300の断面は、第1の区画A側に凸となるようなU字形状を有している。
【0045】
このような連通口310を有する隔壁300を液体試薬保持部305内に設けると、液体試薬保持部305に液体試薬R1を注入した場合、液体試薬注入口317から注入され、第1の区画A内に収容された液体試薬R1は、2つの連通口310がバルブとして機能するため、マイクロチップに衝撃が加えられた場合であっても、第2の区画B側へ流出しにくくなる。すなわち、このような隔壁を設けた液体試薬保持部は、衝撃に対する液体試薬保持機能にさらに優れており、衝撃による意図しない液体試薬保持部からの液体試薬の流出をより効果的に抑制または防止することができる。
【0046】
また、隔壁310の設置により、液体試薬保持部305への液体試薬R1の注入時に、液体試薬R1が第1の流出用流路320の内側開口(液体試薬保持部305側の開口)を塞いでしまうのを抑制、防止することができ、また、上記のように、衝撃により液体試薬が移動し、第1の流出用流路320の内側開口を塞いでしまうのを抑制、防止することができるため、環境温度の上昇などによる液体試薬保持部305内の内圧上昇により、内側開口を塞いでいた液体試薬R1が液体試薬保持部305から流出することを抑制、防止することができる。
【0047】
ここで、連通口310の断面形状は、特に制限されず、正方形または長方形などとすることができる。連通口310にバルブ機能を付与するために、連通口310の幅および高さは、それぞれ0.1〜0.5mmとすることが好ましく、それぞれ0.2〜0.3mmとすることがより好ましい。図3に示される例のように、2つ以上の連通口を備える場合にあっては、各連通口の断面形状は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、連通口の断面形状は、その長さ方向(長さ方向とは、図3に示される隔壁300の厚み方向のことである。)全体にわたって同じ形状であってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、前者の場合とは、第1の区画A側端部における連通口310の断面形状、第2の区画B側端部における連通口310の断面形状、およびこれらの間に位置する連通口310の断面形状が全て同一かまたは略同一の場合である。このような連通口の形状は、加工が比較的容易であることから好ましい。
【0048】
連通口の断面形状がその長さ方向において異なる場合としては、(i)連通口の高さは一定であるが、幅が連続的に小さくなる、または大きくなる場合、(ii)連通口の幅は一定であるが、幅が連続的に小さくなる、または大きくなる場合などを挙げることができる。上記(ii)のより具体的な例としては、第1の基板の溝を備える側の表面における連通口310の内壁面を構成する溝底面が第1の区画Aから第2の区画Bに向かうに従い浅くなり、傾斜面(この傾斜面は、第2の基板の上に、第1の基板を積層した場合において(すなわち、第2の基板から第1の基板への積層方向を「上」とする)、連通口の上側内壁面を形成する面である)を形成する場合を挙げることができ、この場合、連通口の上側内壁面は、連通口の高さが第1の区画A側から第2の区画B側に向かうに従い小さくなるように傾斜する。このように、連通口の上側内壁面を形成する第1の基板表面を、第1の区画Aと同じ溝深さから、徐々に傾斜させた表面とすることにより、液残りを生じさせることなく、第1の区画A側から第2の区画B側へ、液体試薬を良好に流出させることができる。
【0049】
図3に示される例において、隔壁300は2つの連通口310を有しており、これらの連通口は、隔壁300の両端部に配置されている。第1の区画A内において、液体試薬注入口317を基準に、隔壁300側とは反対側領域に位置する液体試薬R1を、遠心力の印加により、連通口310を介して第2の区画B側に流出させる場合、液体試薬R1は、その表面張力の影響により、第1の区画Aの側壁面を伝って隔壁300に到達する傾向が高い。したがって、連通口を隔壁の両端、すなわち、液体試薬保持部の側壁面に沿うように配置することにより、液体試薬R1を良好に排出させることができる。また、第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における隔壁300の断面は、第1の区画A側に凸となるようなU字形状を有しているが、このような形状とすることにより、隔壁300の連通口310形成部以外の部分に到達した液体試薬R1を、連通口310方向に誘導させることができ、隔壁300近傍に液残りが生じることを防止することができる。隔壁300の断面形状は、U字状に限定されるものではなく、第1の区画A側に凸となるようなV字形状であってもよい。また、隔壁300の一部が、このようなV字状またはU字状となっていてもよい。
【0050】
隔壁300の厚みは特に制限されるものではなく、たとえば0.5〜1.5mm程度とすることができ、好ましくは0.5〜1.0mm程度である。隔壁130の厚みは、必ずしも一定である必要はない。
【0051】
隔壁300の液体試薬保持部305内における位置は、液体試薬注入口317と第1の流出用流路320の内側開口との間に配置される限り、特に制限されるものではないが、連通口310から流出した液体試薬R1を一旦収容し、第1の流出用流路320を液体試薬R1が塞いでしまう事態を避けるためのスペースを確保するという観点から、隔壁300と第1の流出用流路320との間の第2の区画Bは、適度な容積を有していることが好ましい。
【0052】
なお、第1の基板表面の溝を有する側の表面に対して平行な方向における隔壁300の断面は、第2の区画B側に凸となるようなV字形状またはU字形状を有していていてもよい。このような断面形状は、限られたスペース内で隔壁を設けるために適宜選択できる。また、連通口の数は、2つに限定されるものではなく、1つであってもよい。バルブ機能を有する連通口を1つ備える限りにおいて、液体試薬保持機能を向上させることが可能である。ただし、衝撃により液体試薬が移動し、連通口を全て塞いでしまうのを防ぐために、連通口を2つ備えることが好ましい。なお、連通口は3つ以上あってもよい。
【0053】
図1に示されるマイクロチップの動作方法は、概略以下のとおりである。なお、以下に説明する動作方法は一例を示したものであり、この方法に限定されるものではない。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部101に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図1における左向き方向(以下、単に左向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを分離部102に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。次に、左向きの遠心力を印加し、上層の血漿成分を除去する。この際、除去された血漿成分は、領域aに収容される。ついで、下向きの遠心力を印加することにより、分離部102内の血球成分液面を整えるとともに、除去した血漿成分を領域bに移動させる。次に、右向きの遠心力を印加し、液体試薬保持部104内の液体試薬R0を液体試薬計量部109に導入し、計量を行なう。この遠心力により、液体試薬保持部105内の液体試薬R1および液体試薬保持部106内の液体試薬R2は、それぞれ液体試薬収容部107、108に移動する。また、この遠心力により、分離部102内の血球成分は、血球計量部103に導入され計量される。
【0054】
次に、下向きの遠心力を印加して、計量された血球成分と液体試薬R0とを第1の混合部112にて混合し混合液を得る。この遠心力により、液体試薬収容部108内の液体試薬R2は、液体試薬計量部111にて計量される。ついで、右向き、下向き、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、上記混合液の混合を十分に行なう。なお、上記左向きの遠心力の印加により、液体試薬収容部107内の液体試薬R1は、液体試薬計量部110にて計量される。また、最後の下向きの遠心力により、計量された液体試薬R1は、第2の混合部114に移動する。
【0055】
次に、左向きの遠心力を印加した後、左上向きついで左向きの遠心力を印加して、第1の混合部112内の混合液の上澄み部分を混合液計量部113に導入し、計量を行なう。次に、下向きの遠心力を印加することにより、計量された混合液と液体試薬R1とを第2の混合液114にて混合する。ついで、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、当該混合液の混合を十分に行なう。この下向きの遠心力を印加した状態において、計量された液体試薬R2は、領域cに位置している。次に、右向きの遠心力を印加して、該混合液と液体試薬R2とを検出部115にて混合し、さらに下向きの遠心力を印加して混合を十分に行なう。最後に、右向きの遠心力を印加して、混合液を検出部115に収容させ、該検出部115に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定を行なう。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第2の基板上に、表面に溝を備える第1の基板を積層、貼合してなる本発明のマイクロチップの好ましい実施形態の1つを示す上面図である。
【図2】図1に示されるマイクロチップにおける液体試薬保持部の周辺を拡大して示す上面図である。
【図3】本発明のマイクロチップの別の好ましい実施形態における液体試薬保持部周辺を拡大して示す上面図である。
【図4】特許文献2に記載の液体試薬内蔵型マイクロチップの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
100 第1の基板、101 サンプル管載置部、102 分離部、103 血球計量部、104,105,106,305 液体試薬保持部、107,108,307 液体試薬収容部、109,110,111,330 液体試薬計量部、112 第1の混合部、113 混合液計量部、114 第2の混合部、115 検出部、116,117,118,317 液体試薬注入口、120,320 第1の流出用流路、121,321 第2の流出用流路、300 隔壁、310 連通口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の基板と、前記第2の基板上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、
前記溝と前記第2の基板における前記第1の基板側表面とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、
前記流体回路は、
液体試薬を保持するための部位であって、前記液体試薬を流出させるための第1の流出口または第1の流出用流路を備える液体試薬保持部と、
前記第1の流出口または第1の流出用流路に接続される、前記液体試薬保持部から流出する液体試薬を収容するための部位であって、前記液体試薬を流出させるための第2の流出口または第2の流出用流路を備える液体試薬収容部と、
を含むマイクロチップ。
【請求項2】
前記液体試薬収容部は、前記液体試薬を流出させるための第2の流出用流路を備え、
前記第2の流出用流路の一端は、前記液体試薬を計量するための計量部に接続される請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記第1の基板は、前記溝を備える表面とは反対側の表面から前記液体試薬保持部まで貫通する貫通口である、液体試薬を前記液体試薬保持部内に注入するための液体試薬注入口を有しており、
前記液体試薬保持部は、
前記液体試薬保持部を、前記液体試薬注入口を有する第1の区画と、前記第1の流出口または第1の流出用流路を有する第2の区画とに二分する隔壁を有し、
前記隔壁は、前記第1の区画と前記第2の区画とを連通させる少なくとも1つの連通口を備える請求項1または2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記隔壁は、2つの連通口を有し、
前記2つの連通口は、前記隔壁の両端部に配置される請求項3に記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記隔壁の少なくとも一部における、前記第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における断面は、前記第1の区画側に凸となるような略V字形状または略U字形状を有する請求項3または4に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記隔壁の少なくとも一部における、前記第1の基板の溝を有する側の表面に対して平行な方向における断面は、前記第2の区画側に凸となるような略V字形状または略U字形状を有する請求項3または4に記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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