説明

マイクロチューブ用ピッキング工具

【課題】マイクロチューブがマトリックス状に配列収納されているチューブラックから、特定のマイクロチューブを迅速かつ的確に個別に抜き取り可能なマイクロチューブ用ピッキング工具を提供すること。
【解決手段】複数本の爪121を有し、つかみ径DがマイクロチューブMTの外径より小さく、弾性力によってマイクロチューブMTを保持する爪部ユニット120と、この爪部ユニットと連結し、作業者が握持する円筒形状の胴部ユニット140と、この胴部ユニットを挿通し、押し込んだ状態で爪部ユニットが保持しているマイクロチューブを押し戻してマイクロチューブの保持状態を解除する押し出しバー160を有する構成をしたマイクロチューブ用ピッキング工具により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品、試料などが注入されるマイクロチューブをチューブラックから一本ずつ抜き取るのに好適なピッキング工具に係わり、特に、研究施設や製薬工場などの創薬用保管装置で使用されるマイクロチューブ用ピッキング工具に関している。
【背景技術】
【0002】
化学物質の試験研究、創薬関連の研究などの分野において、薬品、試料などが注入される多数のマイクロチューブを並び立てた状態で高集積率で収納保管したり搬送したりするためにチューブラックが用いられる。そして、このチューブラックを所定の温度、湿度に保たれた自動回転棚に格納し、移載装置を用いて所望のチューブラックを自動回転棚から入出庫口へ移載し、入出庫口において作業者が所望のマイクロチューブを取り出したり、あるいは、チューブラックの所定の位置にマイクロチューブを収納したりする創薬用保管装置が提供されている。
【0003】
このような創薬用保管装置で使用されるマイクロチューブのチューブラックは、隣り合うマイクロチューブ同士を僅かな隙間でマトリックス配列と称する行と列からなる収納形態によって、できる限り多数のマイクロチューブを高集積率でチューブラックに収容させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−285841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなチューブラックから所望のマイクロチューブを一本ずつ抜き取る場合、隣り合うマイクロチューブ同士の隙間が僅少であるため、作業者の指がマイクロチューブ同士の隙間に入りにくく、このような隙間に指が入らないと、指の爪先で摘み上げたり、ピンセットを用いて抜き取ったりしなければならず、しかも、マイクロチューブが隣り合うマイクロチューブと氷結している場合には、もう片方の手で分離する必要があったりして、抜き取りの際に相当程度の手間を必要とするという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、マイクロチューブがマトリックス状に配列収納されているチューブラックから、特定のマイクロチューブを迅速かつ的確に、作業者の熟練を要することなく個別に抜き取ることができるマイクロチューブ用ピッキング工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本請求項1に係る発明は、チューブラック内にマトリックス状に整列収納された複数のマイクロチューブを1本ずつ摘まみ上げることが可能なマイクロチューブ用ピッキング工具であって、複数本の爪を有し、つかみ径が前記マイクロチューブの外径より小さく、弾性力によって前記マイクロチューブを保持する爪部ユニットと、前記爪部ユニットと連結し、作業者が握持する円筒形状の胴部ユニットと、前記胴部ユニットを挿通し、押し込んだ状態で前記爪部ユニットが保持している前記マイクロチューブを押し戻して前記マイクロチューブの保持状態を解除する押し出しバーを有している。
【0007】
なお、爪部ユニットとそれに連結される胴部ユニットは、必ずしも別部材である必要性はなく、一体に成形することも可能である。樹脂を用いて一体成形することにより、きわめて安価に量産することが可能である。しかしながら、爪部ユニットの爪は、破損する可能性が他の部材より高いため、爪部ユニットと胴部ユニットは、脱着可能とし、爪が破損した際には、爪部ユニットのみを交換可能とすることが好ましい。その際の脱着可能手段としては、爪部ユニットの連結部に雌ねじを形成すると共に、胴部ユニットの一端部に雄ねじを形成し両者を螺合させることが好ましい。
【0008】
また、本発明における複数本の爪の「つかみ径」とは、常態において爪の先端の肉厚部に内接する円の直径を意味しており、このつかみ径をマイクロチューブの外径よりも小さくすることにより、爪の弾性力によってマイクロチューブの保持を可能にしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマイクロチューブ用ピッキング工具は、複数本の爪を有し、つかみ径が前記マイクロチューブの外形より小さく、弾性力によって前記マイクロチューブを保持する爪部ユニットと、前記爪部ユニットと連結し、作業者が握持する円筒形状の胴部ユニットと、前記胴部ユニットを挿通し、押し込んだ状態で前記爪部ユニットが保持している前記マイクロチューブを押し戻して前記マイクロチューブの保持状態を解除する押し出しバーを有しているため、胴部ユニットを握持し、押し出しバーの後端部を解放した状態で先端部をマイクロチューブの頭部に当接させて、胴部ユニットを押し込むだけでチューブラック内にマトリックス状に整列収納された複数のマイクロチューブを1本ずつ保持して摘まみ上げることが可能である。さらに、押し出しバーの後端部を押し込むことによって、マイクロチューブを押し戻して保持状態を解除することが可能となる。また、部品点数が少なく低コストであり、軽量であり操作性がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態である一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明によるマイクロチューブ用ピッキング工具の外観を示した斜視図である。このマイクロチューブ用ピッキング工具100は、4本の爪121を有し、これらの爪121の肉厚部121aに内接する円の直径に相当するいわゆるつかみ径Dが前記マイクロチューブMTの外径より小さく、弾性力によって前記マイクロチューブを保持する爪部ユニット120と、この爪部ユニット120と連結し、作業者が握持する円筒形状の胴部ユニット140と、この胴部ユニット140を挿通し、作業者が親指を使って押し込むことによって爪部ユニット120が保持しているマイクロチューブMTを押し戻してマイクロチューブMTの保持状態を解除する押し出しバー160を有している。爪部ユニット120と胴部ユニット140の連結の方法は、圧入、接着等を用いることができるが、爪部ユニット120の端部に設けられた連結部122の内周面に形成した雌ねじと胴部ユニット140の一端の外周面に形成した雄ねじとを螺合させることによって着脱可能に連結することが、爪部ユニットの取り替えに対応できるため好ましい。
【0011】
爪121の肉厚部121aは、最も肉厚な部分を中心として、爪の先端部及び根本部に向けてテーパー121b、121cが形成されている。押し出しバー160の後端部には、胴部ユニット140の内径より大きな直径を有する押し出しヘッド162を有しており、押し出しバー160が、胴部ユニット140をすり抜けることを防止すると共に、把持しているマイクロチューブMTを押し戻す際の作業者の親指に対するフィット感を高めている。さらに、必須の構成要件ではないが、胴部ユニット140の後端部にフック142を付設することにより、マイクロチューブ用ピッキング工具を、作業者のポケットなどに差して保管する際の便宜を図っている。
【0012】
次に図2を用いて本発明のマイクロチューブ用ピッキング工具の使用方法を詳述する。
図2には、マイクロチューブ用ピッキング工具の4つの使用状態A〜Dについて1枚の図面に記述している。Aは、胴部ユニット140を掴んでマイクロチューブ用ピッキング工具を垂直に持った状態を示している。この時、押し出しバー160は、自重により最も下がった状態にあり、押し出しヘッド162と胴部ユニット140の後端部が当接し、爪部ユニット120の4本の爪の中心を抜けて飛び出した状態にある。
【0013】
押し出しバー160を胴部ユニットに挿通させた後、爪部ユニット120から飛び出した押し出しバー160の先端を加熱処理等により符号164に示したように、若干拡径し胴部ユニット140の内径より僅かに大きくすることにより、押し出しバー160が胴部ユニット140から抜け落ちることを防止することができる。
【0014】
Bは、Aの状態にあるマイクロチューブ用ピッキング工具をラック200に並び立てて保持された所望のマイクロチューブMTの頭部に押し出しバー160の先端を当接させた状態である。この時、4本の爪が、所望のマイクロチューブMTの周辺の4方向に形成される隙間の位置に来るように向きを定める。
【0015】
Cは、Bの状態から、胴部ユニット140を握持し、爪部ユニット120の4つの爪121をマイクロチューブMTの周辺に形成された隙間に押し込んだ状態である。この時、マイクロチューブMTの頭部MT2の縁と爪121の先端のテーパー形状(図1における121b)とが摺接し、爪の間隔が若干押し拡げられ、爪121の弾性力によって、マイクロチューブMTの胴部MT1が挟持される。
【0016】
Dは、Cの状態から、胴部ユニット140を握持して、所望のマイクロチューブMTを引き抜いた状態である。マイクロチューブMTは、4本の爪121の弾性力によって挟持されている。この状態で胴部ユニット140の後端部から飛び出した押し出しバー160の押し出しヘッド162を押し込むことによって、爪121の弾性力で把持されたマイクロチューブMTは、押し戻される。この時、マイクロチューブMTの頭部MT2の縁と爪121の先端のテーパー形状(図1における121c)とが摺接し、爪の間隔が若干押し拡げられ、マイクロチューブMTは、4本の爪121による挟持状態から解放される。
【0017】
図1及び図2から明らかなように、本発明のマイクロチューブ用ピッキング工具の胴部ユニット140は、爪部ユニットとほぼ同じ径であるため、作業者が爪121によるマイクロチューブMTの把持状態を確認しながらピッキング作業をすることができるため、迅速且つ確実に所望のマイクロチューブMTのピッキング作業を行うことができる。
【0018】
なお、本実施例では、3つの構成部材、すなわち爪部ユニット120、胴部ユニット140、押し出しバー160の全てを樹脂成形によって成形しているためきわめて安価に製造することができるが、構造が簡単であるため、金属を用いて機械加工で製造しても安価に製作することが可能である。また、上記の実施例においては、爪部ユニット120の爪の数を4本としているが、マイクロチューブの形状とチューブラックへの収納形態に応じて、2本又は3本とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロチューブ用ピッキング工具の外観図である。
【図2】図1に示すマイクロチューブ用ピッキング工具の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
100 ・・・ マイクロチューブ用ピッキング工具
120 ・・・ 爪部ユニット
121 ・・・ 爪
122 ・・・ 連結部
140 ・・・ 胴部ユニット
142 ・・・ フック
160 ・・・ 押し出しバー
162 ・・・ 押し出しヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブラック内にマトリックス状に整列収納された複数のマイクロチューブを1本ずつ摘まみ上げることが可能なマイクロチューブ用ピッキング工具において、
複数本の爪を有し、つかみ径が前記マイクロチューブの外径より小さく、弾性力によって前記マイクロチューブを保持する爪部ユニットと、
前記爪部ユニットと連結し、作業者が握持する円筒形状の胴部ユニットと、
前記胴部ユニットを挿通し、押し込んだ状態で前記爪部ユニットが把持している前記マイクロチューブを押し戻して前記マイクロチューブの保持状態を解除する押し出しバーを有すること
を特徴とするマイクロチューブ用ピッキング工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−26775(P2006−26775A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207353(P2004−207353)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】