説明

マイクロバブル発生装置及びマイクロバブル発生方法

【課題】液中に装置を配置させることなく、マイクロバブルを発生させる。
【解決手段】マイクロバブル発生装置10は、液体を旋回流にするための流路24を備える。流路24の開口部12Eは鉛直下向きに向けられる。旋回された液体は、流路24の開口部12Eから、膜状でかつ放射状に広がるようにして下方に噴出する。液体は、落下により、膜が破壊され、水滴状になり、液体Eの液面に衝突し、これにより、液体Eにマイクロバブルが発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気や酸素等の微細気泡を液体中に発生させるためのマイクロバブル発生装置及びマイクロバブル発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば空気や酸素ガス等を水等の液体に効率的に溶解させるために、液体中にマイクロバブルを発生させる場合がある。マイクロバブルを発生させる装置の一例としては、内部で旋回流を発生させるとともに、底部が開口されたハウジングと、加圧液体をハウジング内部に送る液体導入路と、ハウジング内部に気体を導入する気体導入路とを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような装置では、ハウジング底部を液体中に配置した状態で、ハウジング内に加圧液体を送り、その加圧液体をハウジング中で旋回させつつ下降させる。そして、その旋回する液体の負圧部分に気体導入路からの気体を吸い込ませて気液を混合させ、開口からマイクロバブルを含有する液体を放出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−142251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、液体中にマイクロバブルを発生させるためには、ハウジング底部を液体中に配置させる必要がある。しかし、マイクロバブルを発生させる液体が例えば回転または移動する容器中に溜められているような場合や、液体中に内容物があるような場合、ハウジング底部を液体中に配置させることが困難なことがある。また、上記マイクロバブル発生装置は、液体導入路と、気体導入路とを設けなければならず、その構成が複雑になる。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造を有し、かつ装置を液体中に配置させることなく、マイクロバブルを発生させることが可能なマイクロバブル発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマイクロバブル発生装置は、開口から液体を膜状にかつ広がるように噴出させる流路を備え、噴出された液体は、落下により膜が破壊して水滴状に変化し、液面に衝突することにより液中にマイクロバブルを発生させることを特徴とする。
【0008】
液体は開口から放射状に噴出させることが好ましく、また開口は下方に向けられ、液体が下向きに噴出されていたほうが良い。
【0009】
流路の一部で液体の旋回流を発生させて、開口から噴出させることが好ましく、旋回流を発生するために、流路の一部は、螺旋状に形成されることが好ましい。流路は、筒形を呈していても良く、この場合、筒形の流路の開口は、径方向外側に向けられる。
【0010】
本発明に係るマイクロバブル発生方法は、流路を流された液体を開口から膜状にかつ広がるように噴出させて、噴出された液体は、落下により膜が破壊して水滴状に変化し、液面に衝突することにより液中にマイクロバブルを発生させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成で、マイクロバブル発生装置を液体中に配置させることなく、マイクロバブルを発生することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態におけるマイクロバブル発生装置の断面図である。
【図2】第1の実施形態における変形例を示すブロック部材の頂面図である。
【図3】第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態におけるマイクロバブル発生装置の断面図である。
【図5】第2の実施形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロバブル発生装置10の構成を示す断面図である。
【0014】
マイクロバブル発生装置10は、略円筒形状を有するハウジング11を備え、ハウジング11にはその円筒軸Xに沿って連通する回転対称な空洞12が設けられる。すなわち、ハウジング11には、回転対称な内周面が形成される。装置10は、後述するように、ハウジング11の底部11Aが下方に、頂部11Bが上方に向けられて使用されるものである。
【0015】
ハウジング11は、頂部11B側から順に、連結部12A、螺旋流路形成部12B、縮径部12C、螺旋流形成部12D、開口部12Eが構成される。連結部12Aの内周面は、内径D1の円筒形状をなし、螺旋流路形成部12Bの内周面は、内径D1よりも一回り小さい内径D2を有する円筒形状をなす。縮径部12Cは、その内周面が内径D2よりもひと回り小さい内径D3を有する円筒形状をなす部分と、内径D3よりも小さい内径D4の円筒形状をなす旋回流路形成部12Dへと軸Xに沿って漸次縮径(本実施形態では、直線的に縮径)する部分とから形成される。また開口部12Eは、旋回流形成部12D(すなわち、内径D4)から一旦僅かに縮径した後、円筒形状をなす部分に続き、さらにハウジング11の下端面(すなわち、底面)に向けて拡径し、その底面において円形を成す開口部12Eの径は内径D4に略一致する。ハウジング11は、後述する固定部材15及び連結部材17によってその頂部11B側(すなわち、連結部12A)が気密に塞がれる。
【0016】
ハウジング11の内部には、ブロック部材13が配置される。ブロック部材13は、螺旋流形成部12Bに嵌入される円筒部13Aと、円筒部13Aから突出し、下方に向かって縮径する切頭円錐形の突出部13Bとを備える。円筒部13A及び突出部13Bは、軸Xを中心に回転対称である。円筒部13Aの外周面には、螺旋状の凸条14が一体的に設けられる。円筒部13Aの外径D5は螺旋流形成部12Bの内径D2よりも小さく、その高さは螺旋流路形成部12Bに略等しい。また、螺旋状の凸条14の外径は螺旋流路形成部12Bの内径D2に略等しい。円筒部13Aが螺旋流路形成部12Bの内部に嵌入されると、凸条14の下端部は、螺旋流路形成部12Bと縮径部12Cの間の段部に係合し、これにより、ブロック部材13が軸方向下向きに移動することが規制される。このとき、円筒部13Aの外周面と螺旋流路形成部12Bの内周面に挟まれた空間には、螺旋流路形成部12Bの内周面に当接する凸条14により仕切られた螺旋状の流路が形成される。
【0017】
円筒部13Aが螺旋流路形成部12Bに嵌め入れられた状態において、突出部13Bは縮径部12Cの内部に張り出しており、その先端はほぼ旋回流形成部12Dの入り口高さに達する。このとき、突出部13Bの外周面(錐面)と縮径部12Cの内周面との間には隙間22が形成される。
【0018】
連結部12Aには固定部材15が気密的に嵌入され、ブロック部材13の螺旋状凸条14の上端部は、固定部材15の下端部に係合される。さらに、この状態において、固定部材15の上端部は、連結部12Aの内周面に形成された環状の溝に嵌合されるCリング16により軸方向移動が規制される。これにより、ブロック部材13及び固定部材15は、ハウジング11に対して軸方向に固定される。
【0019】
固定部材15の中央には、軸Xに沿って連通するネジ穴が設けられ、ネジ穴には雄ネジを備えた連結部材17が気密的に螺着される。連結部材17には、軸Xに沿って通路17Aが連通されるとともに、雄ネジと反対側にチューブ18が連結される。チューブ18の内部は通路17Aとともに、高圧液体を螺旋流路形成部12B内の螺旋流路へと供給するための供給流路19を構成する。また、ブロック部材13と連結部材17の間には、ブロック部材13の頂面を覆う空間21が形成され、空間21は、供給流路19の一部を構成する。チューブ18は、ポンプなどの液体供給装置(図示せず)に連結され、液体供給装置から供給流路19を通って例えば高圧液体が螺旋流路形成部12Bの螺旋流路へと供給される。なお、高圧液体は、後述する液体Eと同種の液体であって、例えば水である。
【0020】
次に、本実施形態に係るマイクロバブル発生装置10の作用について図1を参照して説明する。マイクロバブル発生装置10は、例えば、所定の容器等に溜められた液体E(例えば、水)にマイクロバブルを発生させるものである。マイクロバブル発生装置10は、所定距離おいて、液体Eの液面の上方に配置され、開口部12Eが下方に向けられる。このとき、ハウジング11の軸Xは略鉛直になる。なお、開口部12E(すなわち、底面)と液面との離間距離は、例えば200mm程度である。
【0021】
本実施形態では、ポンプから供給された高圧液体(例えば、水)は、螺旋流路形成部12Bに形成された螺旋流路を通って、縮径部12Cに噴出される。このとき、液体は、螺旋流路に沿って噴出されるので、縮径部12Cの内周面の周方向に沿って螺旋ピッチに対応する下向き成分を有する流速で噴出される。噴出された液体は、縮径する縮径部12Cの内周面と、ブロック部材13の突出部13Bの外周面との間の隙間22を、螺旋を描きながら下降して流れ、旋回流として螺旋流形成部12Dに放出される。
【0022】
旋回流は、螺旋流形成部12Dの内周面の周方向に沿いつつ螺旋状に下降して流れ、開口部12Eから下方に噴出する。すなわち、高圧液体は、螺旋流路と、隙間22と、螺旋流形成部12Dの内部空間23とから成る流路24を下向きに流され、開口部12Eから旋回流として噴出される。
【0023】
なお、縮径部12Cは、下方に向かってその径が小さくなるので、液体の回転速度は、縮径部12Cにおいて下方に向かうに従って上昇し、螺旋流形成部12Dでは安定した旋回流が形成される。すなわち、旋回流形成部12Dの内部における、液体の回転速度分布は、略一定となる。なお、旋回流形成部12Dや開口部12Eでは、その中央部で負圧が発生し、軸Xにおける負圧が最大となる。
【0024】
旋回流として開口12Eから噴出される液体は、図1に示すように、膜状でかつ放物線を描くように放射状に広がって下方に噴出される。すなわち、開口部12Eからは、膜状の液体が、傘状に広げられて噴出される。これにより、開口部12Eから下方に噴出した液体は、落下により膜が徐々に破壊し、後述するマイクロバブルよりも径が十分に大きい微細な水滴状に変化する。水滴状の液体は、液体Eの液面に衝突し、液体E内部にマイクロバブルを発生させる。なお、水滴状の液体は、液面に衝突する際、その表面に付着する微細な空気粒を液体E中に取り込み、その液体E中に取り込まれた微細な空気粒が液体E中においてマイクロバブルになると考えられる。マイクロバブルは、その気泡径が例えば50μm以下となるものである。
【0025】
以上のように、本実施形態では、装置10を液体E中に配置させることなく、マイクロバブルを液体E中に発生することができる。したがって、例えば、液体Eが回転または移動する容器中に溜められているような場合や、液体E中に内容物があるような場合でも、液体E中にマイクロバブルを発生することが可能になる。また、ハウジング11内部に、気体を供給しなくてもマイクロバブルを発生することが可能になるので、装置10の構造を簡略化することが可能である。
【0026】
なお、図1で示されるマイクロバブル発生装置10では、ブロック部材13の外周に設けられた凸条14が1条のときの例を図示したが、凸条14の数は2条以上でもよい。また、ブロック部材13の外周面を円筒面のままとして、螺旋流路形成部12Cの内周面に凸条が設けられても良い。なお、図2に、変形例としてのブロック部材13として外周面に2つの凸条14A、14Bを備える場合のブロック部材13の頂面図を示す。なお、螺旋(すなわち、旋回流)の旋回方向は、右巻きでも左巻きでもよい。
【0027】
図3は、マイクロバブル発生装置10の変形例を示すものである。以下本変形例について説明するが、本変形例では、図1に示すものと同一の機能を有する部材については、同一符号を付してその説明を省略する。なお、本変形例は、マイクロバブル発生装置10が複数使用される場合の例であり、高圧液体は、メイン流路60を通って、そのメイン流路60から分岐された各供給流路19に供給される。
【0028】
図1で例示したマイクロバブル装置10では、パイプ18、固定部材15、及び連結部材17が別部材として設けられたが、本実施形態では、これらは接続管50として一体に形成される。接続管50は、その内部に供給流路19を構成する通路50Aが、軸Xに沿って形成される。接続管50は、一端側に雄ネジを備え、連結部12Aの内周面に形成された雌ネジに螺合され、ハウジング11に連結される。なお、接続管50には、螺合作業のためにナット部50Bが一体的に設けられる。また、接続管50と連結部12Aの内周面の間には、気密のためのシール部材(ゴムパッキングなど)54が介挿される。
【0029】
接続管50の他端は、メイン流路60を分岐するためのT字継手51の分岐管52に連結される。接続管50と分岐管52の連結は、例えば分岐管52内に接続管50を圧入して、接続管50の外周面に設けられた環状の爪57を、分岐管52の内周面に形成された環状の溝に引っ掛けることにより行われる。本変形例では、2組の溝と爪により接続管50とT字継手51の連結が行われ、接続管50はT字継手51に、軸X周りに回転自在に一体化される。接続管50の外周面と分岐管52の内周面の間には、気密のためのシール部材55が介挿される。
【0030】
また、本変形例では、ハウジング11の外形は、径の大きな円筒形状を呈する固定部41と、同軸で径の小さい円筒形状を呈する先端部42から構成され、先端部42の外周面に雄ネジが設けられる。本実施形態では、先端部42の雄ネジ及び固定部41は、装置10を板部材43に固定するために用いられる。先端部42は、その外径に略等しい穴が設けられた板部材43に挿通され、その後ナット44が先端部42の雄ネジに螺合される。すなわち、板部材43が固定部41とナット44の間に挟まれ、装置10は板部材43に固定される。さらに、本変形例では、縮径部12Cの内周面は、円筒形状をなす部分が省略されて、円筒軸Xに沿って漸次縮径する部分のみから構成される。
【0031】
本変形では、接続管50が用いられたことによって、マイクロバブル発生装置10の部品点数を減らすことができる。また、ハウジングに連結される接続管は、T字継手に回転自在に係合されているためハウジングの連結作業が行いやすく、連結後もT字継手がハウジングに対して自在に回転することもできる。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロバブル発生装置を説明するための模式的な断面図である。本実施形態では、マイクロバブル発生装置30は、内部に空洞を有するハウジング35と、ハウジング35の内部に挿入される芯部材36とを備え、ハウジング35の内周面と、芯部材36の外周面の間に筒状の流路31が形成される。
【0033】
筒状の流路31は、軸Xを中心に回転対称に形成されるとともに、その下側部分が拡径されて構成され、ハウジング35の底部で流路31は開口される。すなわち、筒状の流路31は、円筒部32と、その円筒部32の下方に接続される切頭円錐筒部33とから構成され、切頭円錐筒部33が開口部31Eを構成し、流路31の開口部31Eは、斜め下向きに向けられる。すなわち、流路31の開口部31Eは、径方向外側に向けられる。
【0034】
マイクロバブル発生装置30は、軸Xが略鉛直になるように、所定距離おいて、液体E(例えば、水)の液面上方に配置される。筒状の流路31は、上端が不図示の液体供給装置(図示せず)に連結される。液体供給装置からの高圧液体は、流路31の内部を下方に進み、開口部31Eから膜状に噴出される。開口部31Eから噴出される液体は、開口部31Eが径方向外側に向けられるため、図4に示すように放物線状かつ放射状に広げられて下方に噴出される。すなわち、開口部31Eからは、第1の実施形態と同様に、膜状の液体が傘状に広げられて噴出される。そのため、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、液体E中にマイクロバブルが発生する。
【0035】
なお、本実施形態では、開口部31Eは、斜め下向きに向けられたが、下向きに向けられなくても良い。例えば、図5に示すように、円筒状の流路31の下端部が、略水平に外側に進められ、開口部31Eは、略水平横向きに向けられても良い。すなわち、開口部31Eは、ハウジング35の外周面の全周に環状に開口される。
【0036】
なお、本実施形態では、液体を噴出するための流路は筒形でなくても良く、上記図4、5で示した流路31の円周方向における一部から成り、例えば弧状であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
10、30 マイクロバブル発生装置
11 ハウジング
12E 開口部
13 ブロック部材
24 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口から液体を膜状にかつ広がるように噴出させる流路を備え、前記噴出された液体は、落下により膜が破壊して水滴状に変化し、液面に衝突することにより液中にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置。
【請求項2】
前記液体を前記開口から放射状に噴出させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項3】
前記開口が下方に向けられ、前記液体が下向きに噴出されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項4】
前記流路の一部で前記液体の旋回流を発生させて、前記開口から噴出させることを特徴とする請求項3に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項5】
前記流路の一部は、螺旋状に形成されることを特徴とする請求項4に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項6】
前記流路は、筒形を呈することを特徴とする請求項2に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項7】
前記筒形の流路の開口は、径方向外側に向けられることを特徴とする請求項6に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項8】
流路を流された液体を開口から膜状にかつ広がるように噴出させて、前記噴出された液体は、落下により膜が破壊して水滴状に変化し、液面に衝突することにより液中にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−253396(P2010−253396A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106965(P2009−106965)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000247258)ニッタ・ムアー株式会社 (61)
【Fターム(参考)】