説明

マイクロレンズアレイ及び当該マイクロレンズを有する液晶表示装置

【課題】
焦点距離の調整が容易で温度変化による画素とマイクロレンズとのズレ及び剥離を低減したマイクロレンズアレイを提供すること。
【解決手段】
本発明にかかるマイクロレンズアレイは、第1の紫外線硬化樹脂層2031と、紫外線硬化樹脂層2031の一方の面に易接着層2030を介して設けられた第1のフィルム層2033と、紫外線硬化樹脂層2031の他方の面に易接着層2030を介して設けられた第2のフィルム層2032と、第1のフィルム層2033の紫外線硬化樹脂層2031が設けられた面とは反対側の面に易接着層を介して設けられた複数のマイクロレンズ202とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロレンズアレイ及び当該マイクロレンズアレイを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の課題として高輝度化及び高視野角化がある。この課題を解決するものとしてマイクロレンズアレイを用いた液晶表示装置の発明が提案されている。
【0003】
マイクロレンズアレイを用いた液晶表示装置の例の模式図を図7に表す。液晶表示装置は2枚の透明基板2、12の間に液晶層7が挟持されている。そして、透明基板2の前面側には偏光フィルム1が設けられている。透明基板2の背面側にはブラックマトリクス3、カラーフィルタ層4、透明電極5、配向膜6が形成されている。透明基板2と透明基板12の間にはスペーサ8が設けられている。透明基板12の前面側には、TFT素子11、透明電極10、配向膜9が形成されている。ここまでが通常、液晶表示パネルと呼ばれる。
【0004】
マイクロレンズアレイ122及びリム121は透明基板12の背面側に形成されている。偏光フィルム13を通って入射してくる光源からの光を、マイクロレンズアレイ122が集光しTFT素子11やブラックマトリクス3を避けて透明基板2へ照射することによって光の利用効率を高め高輝度化を図っている。
【0005】
ここで紹介した例の他にもマイクロレンズアレイを透明基板2側(観察者側)に配置することによって高視野角化を図る技術もある。このような技術は例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
従来のマイクロレンズの製造方法には、あらかじめガラス基板表面に形成されたUV(Ultra Violet ray:紫外線)樹脂層にNi電鋳原盤(スタンパ)を押圧してマイクロレンズ面を転写した後、ガラス基板裏側からUV光を照射しUV樹脂を硬化させてマイクロレンズ面の凹凸を形成し、この凹凸形成後のUV樹脂層に所定の屈折率を有する光学樹脂で埋めて硬化させることでマイクロレンズ面を形成する2P(Photo−Polymer)法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
マイクロレンズとブラックマトリクスとの間隔を調整することによってマイクロレンズの焦点距離を調整する技術が特許文献3に記載されている。マイクロレンズの果たす役割は入射光をブラックマトリクス3やTFT素子11を避けて照射し、光の高効率化を図ることによって高輝度化を実現するものである。そのため、マイクロレンズの焦点はブラックマトリクス3やTFT素子11の開口部付近でなければならない。マイクロレンズの焦点が開口部付近から外れると光の高効率化が図られず高輝度化が図られない場合があるばかりか、液晶画面に輝度ムラが発生する場合もあり得る。
【0008】
特許文献3に開示されている内容はこのような問題を解決するためのものであり、マイクロレンズとブラックマトリクスとの間隔を決定する樹脂層に突起を設け、この突起の高さに沿って樹脂層を形成しマイクロレンズとブラックマトリクスとの間隔を固定するものである。
【0009】
他方、フィルム上に光学部品を形成する場合やフィルム状の光学部品を光学機器に接着する場合に、易接着層を設けることにより接着の信頼性を上げる技術が特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【0010】
特許文献4に開示されている内容は、液晶表示装置(LCD)やカソードレイテューブ(CRT)の表示画面に反射防止膜を貼り付ける際の問題を回避するものである。反射防止膜は主にプラスティックフィルムであり、表示画面は主にガラスである。両者の素材や形状による接着不良の問題を回避する手段として、片面に反射防止膜を設け他面には易接着層を設けたプラスティックフィルムを提供するものである。
【0011】
また、特許文献5に開示されている内容は電離放射硬化樹脂で成形される樹脂硬化物からなる光学部品をプラスティックフィルム又はシート上に形成する場合に、その密着力が充分ではなく、製造工程及び2次加工工程で剥離する問題を回避するものである。プラスティックフィルム層に易接着層を形成し、その上に光学部品を形成することによって密着性を充分なものとしている。この従来技術は、あくまでもプラスティックフィルムと光学部品との接着性にのみ関する課題を解決するものである。
【特許文献1】特開平8−166502号公報
【特許文献2】特開2001−148625号公報
【特許文献3】特開2000−329906号公報
【特許文献4】特開平9−193327号公報
【特許文献5】特開平10−307201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マイクロレンズアレイについて解決すべき課題の一つとして、上記特許文献3にも記述されている焦点距離の問題がある。特許文献3に開示された方法では、装着する液晶表示パネルによってブラックマトリクスの開口部の位置に差異があった場合、液晶表示パネルごとに突起を形成する必要があり量産性に課題がある。また、レジスト形成及びエッチングには時間がかかるのでこの面からも量産性に課題が残る。
【0013】
マイクロレンズアレイの製造方法については上記した2P法以外にも各種の方法が開発されているが、現状最も高品質のマイクロレンズアレイの製造が可能なのは2P法である。従ってマイクロレンズアレイの製造には2P法を用いるのが好ましいが、製造工程において解決すべき問題がある。
【0014】
1つ目は生産性の問題である。生産性が悪いとマイクロレンズアレイ1つ当たりのコストが高くなり、採算の合わないものとなってしまう。この問題についてはスタンパを大型化して1度に多数のマイクロレンズアレイを成形することで解決できる。
【0015】
2つ目はスタンパ剥離時の問題である。2P法において、UV樹脂層が硬化した後に押圧していたスタンパを剥離する工程が必要である。ここで、マイクロレンズアレイ基板と形成されたマイクロレンズとの接着力が充分でないと、スタンパを剥離する際にマイクロレンズの一部又は全部がスタンパから分離せずに残る製造不良が発生し、歩留まりに影響する。
【0016】
また、ガラス基板は厚く、液晶表示装置のパネル薄型化の面で更に改良の余地がある。しかし、上記のような大型化による同時多数個成形とした場合は強度の関係でガラス基板に十分な厚みが必要であり、薄型化とは矛盾してしまう。充分な厚みが無い場合、割れやすく取り扱いが難しくなってしまい、歩留まりも悪くなる。特に注意すべきはマイクロレンズアレイ形成時であるので、マイクロレンズアレイ形成後にエッチングもしくは研磨等で薄くすることも可能であるが、工程数の増加となり低コスト化には適さない。また、マイクロレンズアレイ形成後も割れやすいことには変わりはないので、歩留まりの悪さを完全に解決するには至らない。
【0017】
それに対して、ガラス基板ではなくフィルムを用いれば低コスト化及び薄型化が可能となり更にはガラスのように割れてしまうこともなくなるため、フィルム上にマイクロレンズを形成することも行なわれている。この場合、ガラスではなくフィルムとしたことによる問題として熱膨張及び熱収縮がある。
【0018】
マイクロレンズアレイによる高輝度化や高視野角化を実現するため、液晶パネル側の画素と各マイクロレンズとは、位置が合わせられている。マイクロレンズアレイの基板にガラスを用いた場合は、液晶表示パネルとマイクロレンズアレイとの熱膨張係数がほぼ等しくなるため、温度による液晶画素とマイクロレンズとのズレを考慮する必要が無い。しかし、マイクロレンズアレイの基板にフィルムを用いた場合には、液晶表示パネルとマイクロレンズアレイとの熱膨張係数が違うため、温度変化による液晶画素とマイクロレンズとのズレが生じてしまう。また、接着面が熱膨張又は熱収縮することにより、マイクロレンズアレイと液晶表示パネルとが剥離する虞もある。
【0019】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、焦点距離の調整が容易で温度変化による画素とマイクロレンズとのズレ及び剥離を低減したマイクロレンズアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明にかかるマイクロレンズアレイは、第1の紫外線硬化樹脂層と、前記紫外線硬化樹脂層の一方の面に易接着層を介して設けられた第1のフィルム層と、前記紫外線硬化樹脂層の他方の面に易接着層を介して設けられた第2のフィルム層と、前記第1のフィルム層の前記紫外線硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の面に易接着層を介して設けられた複数のマイクロレンズとを有するものである。これにより、フィルム部材の積層によってマイクロレンズアレイの基板を構成することができるようになり、マイクロレンズの焦点距離の調整が容易になる。また、マイクロレンズと基板との接着を強固にできる。
【0021】
ここで、前記第1及び第2のフィルム層には既存の流通しているフィルム部材が使用されていることが好ましい。これにより、より容易にマイクロレンズの焦点距離の調整を行なうことができる。
【0022】
また、前記第2のフィルム層の前記第1の紫外線硬化樹脂層と接着されている面とは反対の面に易接着層を介して第2の紫外線硬化樹脂層により液晶表示パネルと接着されることが好ましい。これにより、マイクロレンズアレイと液晶表示パネルとの接着をより強固にできる。
【0023】
詳細には、前記易接着層の層厚が0.05μm以上3μm以下であることが好ましい。これにより、液晶表示装置の薄型と、接着硬化のバランスの取れた寸法とすることができる。
【0024】
UV硬化樹脂との接着力強化のため、例えばUV硬化樹脂がアクリル系樹脂を主体とするものであれば、前記易接着層はアクリル系材料とすることができる。ポリエステル系、ウレタン系樹脂等でも同様に易接着層にはUV硬化樹脂を構成する樹脂と同様の樹脂を含むことが好ましい。中でもアクリル系樹脂が好ましい。
【0025】
更に、当該マイクロレンズアレイは330nmから380nmまでの領域の光学波長に対して透過率が30%以上、より好ましくは50%以上、更には60%以上であることが好ましい。これにより、UV硬化樹脂を露光する際に当該マイクロレンズを通して露光することができる。
【0026】
前記第1及び第2のフィルム層の層厚を選択する好適な範囲としては20μm以上200μm以下とすることができる。
【0027】
また、前記第1の紫外線硬化樹脂層の厚さを100μm以下とすることができる。これを以って液晶表示装置の薄型化と焦点距離の調整のバランスのとれた厚さとすることができる。
【0028】
他方、本発明にかかる液晶表示装置は、マイクロレンズアレイを有する液晶表示装置であって、当該マイクロレンズアレイは、第1の紫外線硬化樹脂層と、前記紫外線硬化樹脂層の一方の面に易接着層を介して設けられた第1のフィルム層と、前記紫外線硬化樹脂層の他方の面に易接着層を介して設けられた第2のフィルム層と、前記第1のフィルム層の前記紫外線硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の面に易接着層を介して設けられた複数のマイクロレンズとを有するものである。これにより、フィルム部材の積層によってマイクロレンズアレイの基板を構成することができるようになり、マイクロレンズの焦点距離の調整が容易になる。また、マイクロレンズと基板との接着を強固にできる。
【0029】
ここで、前記マイクロレンズアレイは前記第2のフィルム層の前期第1の紫外線硬化樹脂層と接着されている面とは反対の面に、易接着層を介して第2の紫外線硬化樹脂層により前記液晶表示パネルに接着されることが好ましい。これにより、マイクロレンズアレイと液晶表示パネルとの接着をより強固にできる。
【0030】
また、前記第1及び第2のフィルム層には既存の流通しているフィルム部材が使用されることが好ましい。これにより、より容易にマイクロレンズの焦点距離の調整を行なうことができる。
【0031】
詳細には、前記易接着層の層厚が0.05μm以上3μm以下であることが好ましい。これにより、液晶表示装置の薄型と、接着硬化のバランスの取れた寸法とすることができる。
【0032】
UV硬化樹脂との接着力強化のため、前記易接着層はアクリル系又はポリエステル系又はウレタン系等の材料とすることができる。
【0033】
更に、330nmから380nmまでの領域の光学波長に対して透過率が30%以上であることが好ましい。これにより、UV硬化樹脂を露光する際に当該マイクロレンズを通して露光することができる。
【0034】
前記第1及び第2のフィルム層の層厚を選択する好適な範囲としては、20μm以上200μm以下とすることができる。
【0035】
また、前記第1の紫外線硬化樹脂層の厚さを100μm以下とすることができる。これを以って液晶表示装置の薄型化と焦点距離の調整のバランスのとれた厚さとすることができる。
【0036】
他方、本発明にかかるマイクロレンズアレイの焦点距離の調整方法は、複数の層が積層された基板上に複数のマイクロレンズが形成された液晶表示装置に装着されるマイクロレンズアレイの製造工程における焦点距離の調整方法であって、装着される液晶表示装置に最適な焦点距離を決定するステップと、前記焦点距離に基づいて、予め階層的な厚さごとに用意されたフィルム及び樹脂基板の中から前記基板を構成する前記複数の層のそれぞれの層を選択するステップと、前記複数の層を積層し前記基板を形成するステップと、前記基板上にマイクロレンズを形成するステップとを有するものである。これにより、焦点距離の調整を容易に行なうことができる。
【0037】
詳細には、前記基板は剛性の高い樹脂材料からなる高剛性樹脂層の両面にフィルム層が設けられていることが好ましい。これにより、フィルム層の厚さを選択することで所望の焦点距離に近付け、高剛性樹脂層で微調整をすることができる。
【0038】
また、前記基板を構成する複数の層はそれぞれ易接着層を介して接着されていることが好ましい。これにより、各層の接着をより強固にすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、焦点距離の調整が容易で温度変化による画素とマイクロレンズとのズレ及び剥離を低減したマイクロレンズアレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。また、説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0041】
まず、本実施形態にかかるマイクロレンズアレイが装着される液晶表示装置について説明する。図1は液晶表示装置の断面図を示す図である。図1において液晶表示装置は複数の画素により画面表示を実現する液晶表示パネルを基本的な構成とし、この液晶表示パネルは2枚の透明基板101、102で液晶層103を挟持して構成される。
【0042】
透明基板101、102は例えばガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂等により形成される。液晶表示装置の前面側に配置されている第一の透明基板101の裏面側である液晶層103と接する面には、カラーフィルタ層104が形成される。カラーフィルタ層104は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の色表示を行なう3領域により構成される。ブラックマトリクス105はカラーフィルタ層104の各画素間に配置される遮光膜であり、画素間の光漏れを防止する。
【0043】
カラーフィルタ層104の裏側には、透明電極106、配向膜107が順次積層形成されている。透明電極106は、例えばフォトリソグラフィ法により透明導電性薄膜(ITO:Indium Tin Oxide)から形成される。配向膜107は例えば高分子材料であるポリイミド(Polyimide)薄膜等の有機薄膜で形成され、液晶層103の液晶分子を所定の方向に揃える役割を果たす。液晶表示装置の背面側に配置されている第2の透明基板102にはTFT素子108が形成され、更に透明電極106、配向膜107が積層形成される。TFT素子108は液晶駆動用のスイッチング素子である。
【0044】
第2の透明基板102の裏面側にはマイクロレンズアレイ200が設けられており、UV硬化樹脂層204によって接着されている。マイクロレンズアレイ200はリム201、マイクロレンズ202及び積層基板203を有する。図2はマイクロレンズアレイ200におけるリム201、マイクロレンズ202の配置関係を示す平面図である。
【0045】
図1及び図2において、マイクロレンズアレイ200にはマイクロレンズ202が外周縁に設けられたリム201に周囲を囲まれるように設けられている。ここで、マイクロレンズアレイ200とは光利用効率向上のために用いられるものである。マイクロレンズアレイ200はガラスや紫外線硬化樹脂等の積層からなる積層基板203上に、例えば直径50μm程度のマイクロレンズ202を多数配置したものである。本実施形態では積層基板203上に後述する易接着層2030を介してマイクロレンズ202及びリム201が配置されている。マイクロレンズ202及びリム201の材料はUV硬化樹脂や熱硬化樹脂及びフォトレジストからなり、製造方法によって適宜選択される。本実施形態ではUV硬化樹脂を用いる。
【0046】
画素とは、液晶表示パネル画面全体を格子状に細分化して、色や明るさの情報を蓄える微小単位をいい、画素ごとに蓄えられる情報量(Bit:ビット)で明暗を含む色彩の表現能力が決められる。マイクロレンズ202は一般に直径数mm以下の微小なレンズのことをいう。リム201はマイクロレンズ202の頂点と同一またはそれよりも高い高さで第2の透明基板102の裏面側の外周縁に沿って途切れることなく形成されている。リム201は後述の偏光板109を平坦性を維持して保持する目的で設けられる。リム201は好ましくはマイクロレンズ202と同一材料で構成される。
【0047】
偏光板109は、入射光に対して特定の偏光成分のみを透過させる機能を有する光学部材であって、2枚の透明基板101、102の両側表面に貼り付けられる。スペーサ110は、透明基板101、102間の液晶層103の高さ(セルギャップ)を制御する樹脂粒子で、透明基板101、102間の全範囲に亘り、複数個散在される。
【0048】
透明基板101、102は大型のマザー基板により多数個取りされる。図3は液晶表示パネル100のマザー基板の平面図である。マザー基板1000には液晶表示パネル100が一定の間隔をもって配列されている。液晶表示パネル100は上記のように各部材が透明基板101及び透明基板102によって挟持される形で形成されており、複数の第1の基板101のそれぞれの領域内には、裏面側にカラーフィルタ層104、透明電極106および配向膜107が積層形成される。複数の第2の透明基板102のそれぞれの領域内には、表面側にTFT素子108、透明電極106、および配向膜107が積層形成される。そして各透明基板101または102はマザー基板1000から分離切断可能に形成される。
【0049】
すなわち本実施形態における液晶表示装置は液晶層103、カラーフィルタ層104、ブラックマトリクス105、透明電極106、配向膜107、TFT素子108及びスペーサ110を透明基板101と透明基板102とで挟持する形で形成される液晶表示パネル100と、マイクロレンズアレイ200と、両面に設けられる偏光板109とで形成される。
【0050】
次に本実施形態にかかるマイクロレンズアレイ200について、図4を用いて説明する。図4は本実施形態にかかるマイクロレンズアレイ200の断面図である。マイクロレンズアレイ200は積層基板203上にリム201及びマイクロレンズ202が設けられている。積層基板203はフィルム又は合成樹脂層の積層からなる基板であり、本実施形態ではUV硬化樹脂層2031をフィルム層2032、2033で挟み込んだ形になっている。
【0051】
このように、マイクロレンズ202を形成する基板を積層構造とすることにより、既存の部材から所望の層厚の部材を適宜選択して積層すればよいので、所望の焦点距離に合わせてマイクロレンズアレイ200を形成することが容易となる。すなわち本実施形態では、フィルム層2032、2033を既存の流通しているフィルム部材の中から厚さによって選択し、UV硬化樹脂層2031を形成する厚さでマイクロレンズアレイ200全体の厚さの微調整をすることによって所望の焦点距離を得ることができる。フィルム層2032、2033の層厚は例えば20μm以上200μm以下である。UV硬化樹脂層2031の材料は例えばアクリル系材料であり、層厚は100μm以下である。
【0052】
また、マイクロレンズ202及びリム201と積層基板203との間には、マイクロレンズ202及びリム201と一体に成形された平坦部205が設けられている。平坦部205が設けられることによりマイクロレンズ202と積層基板203との接着面が平坦に確保される。
【0053】
また、図に示されるようにそれぞれの層の接着は易接着層2030を介してなされており、その接着強度を高めている。易接着層2030はUV硬化樹脂層2031とフィルム層2032、2033との接着面だけでなく、マイクロレンズ202と一体に成形された平坦層205との接着面にも設けられており、その接着強度を高めている。更に、液晶表示パネル100との接着面すなわちUV硬化樹脂層204との接着面にも設けられている。このように、易接着層2030を各部材同士の接着面に設けることにより接着強度を高めることができ、以って熱膨張係数の違いによる各部材同士のズレや剥離の発生を抑制することができる。
【0054】
上記の通り易接着層2030はUV硬化樹脂とフィルム部材との接着力向上のために設けられる層である。本発明の実施の形態にかかる易接着層2030はUV硬化樹脂層2031及びUV硬化樹脂層204と同様にアクリル系材料からなり、層厚は0.05μm以上3μm以下である。易接着層2030を設けUV硬化樹脂層204を介すことにより液晶表示パネル100とマイクロレンズアレイ200は強固に接着される。これにより、上記の通り熱膨張又は熱収縮による画素とマイクロレンズとのズレ並びに剥離を回避できる。また、後述するマイクロレンズ形成工程における製造不良を低減することもできる。
【0055】
本実施形態ではリム201とマイクロレンズ202とは平坦層205と共に一体に成形され生産効率の向上を図っているが、別々に成形されてもよい。
【0056】
本実施形態では、マイクロレンズアレイ200は全体で300μm程度の厚さである。このように非常に薄く作ることによって液晶装置全体の薄型化を実現している。また、可視光の波長領域の透過性に加えて330nmから380nmの波長領域に対しても30%以上の透過率を有する。
【0057】
次に本実施形態にかかるマイクロレンズアレイの製造方法について、図を用いて説明する。図5は本実施形態にかかるマイクロレンズアレイの製造方法を示す図である。まず貼り合わせる液晶表示パネル100のブラックマトリクス105の開口部に応じて、作成されるマイクロレンズの焦点距離を決定する。そして図5(a)に示すように、所望の焦点距離を実現するためのUV硬化樹脂層2031、フィルム層2032及びフィルム層2033を流通する既存のフィルム部材及び樹脂基板から選択し、易接着層2030を介して積層することによって積層基板203を形成する。ここで、フィルム部材2032及び2033を既存の部材から選択し、UV硬化樹脂層2031で厚さの微調整をするようにしてもよい。
【0058】
次に図5(b)に示すように積層基板203上にUV硬化樹脂層206を形成し、スタンパ207を押圧することによってリム201及びマイクロレンズ202の形状を転写し、更に平坦層205を形成する。スタンパ207はマイクロレンズ202やリム201などを形成するための型である。
【0059】
次に図5(c)に示すように、積層基板203側からUV光を照射しUV硬化樹脂層206を硬化させる。これでリム201及びマイクロレンズ202が形成される。UV光の照射は365nm付近の波長のUV光を3000mJのエネルギーで照射する。スタンパ207はNi電鋳原盤であるため、スタンパ207側からUV光を露光することは不可能であり積層基板203を通しての露光となる。そのため、積層基板203にはUV硬化樹脂層208の硬化に十分な透過率が必要である。
【0060】
図6に示すグラフはPETフィルム上にUV硬化樹脂層を形成し、光透過率の測定を行なった測定結果である。PETフィルムは両面にアクリル系材料からなる易接着層が形成されており、その上にUV硬化樹脂が形成されている。UV硬化樹脂の厚みは100μm程度で、PETフィルムの厚みは150μm程度である。図に示されるように波長350nm以上で70%の透過率が得られている。これはUV硬化樹脂層206を硬化させるのに十分な透過率といえる。
【0061】
そして図5(c)に示すようにスタンパ207を剥離することにより、マイクロレンズアレイ200が完成する。スタンパ207とマイクロレンズアレイ200を剥離する際に両者の間に応力が加わる場合がある。この応力によってマイクロレンズアレイの基板がガラス素材の場合は割れる虞があり、フィルム素材の場合は伸びてしまう虞があった。割れてしまえば当然のごとく歩留まりに影響するが、フィルムが伸びてしまった場合も、パネルと接着する際にマイクロレンズ202と画素とのアラインメントが取れなくなり、やはり歩留まりに影響する。また、UV硬化樹脂層208と積層基板203との接着力が十分でないと、UV硬化樹脂層208の一部又は全部がスタンパから分離せずに残ってしまい、製造不良となることもあった。
【0062】
本実施形態では、積層基板203の層にフィルム層2032、2033を用いることによって割れる問題を解決し、平坦層205及びUV硬化樹脂層2031を設けることによって基板が伸びてしまう問題を解決し、更に易接着層2030を設けることによってスタンパからUV硬化樹脂層208の一部又は全部が分離せずに残ってしまう問題を解決している。
【0063】
このようにして、積層基板203上にリム201、マイクロレンズ202及び平坦層205を備えるマイクロレンズアレイ200が形成された。このマイクロレンズアレイ200は図1に示すようにUV硬化樹脂層204を介して液晶表示パネル100へ接着される。この際、今度はマイクロレンズ202側からUV光を照射する。ここでも同様に易接着層2030があることによってUV硬化樹脂層204との接着力が強固になる。従って液晶表示パネル100とマイクロレンズアレイ200との熱膨張係数が異なる場合でも、強固に接着されていることにより温度変化による画素とマイクロレンズとのズレや剥離等の発生を低減することができる。
【0064】
尚、リム201、マイクロレンズ202を形成する素材やマイクロレンズアレイ200と液晶表示パネル100とを接着する層はUV樹脂に限定されず、例えば熱硬化性樹脂であってもよいが、上記のような熱膨張に関する問題を考慮すると製造工程は常温状態であることが好ましい。従ってUV硬化樹脂層206を用いることは有効であり、積層基板203及びUV硬化樹脂層206が十分な光透過率を有することは重要である。
【0065】
以上本発明にかかるマイクロレンズアレイ及び当該マイクロレンズアレイを有する液晶表示装置について説明したが、再度本発明の要旨及び伴う効果を言い換えると、まず焦点距離の調整を容易に行なうためにマイクロレンズ202を形成する基板を積層基板203とした。それに伴いフィルム部材と合成樹脂又はガラス部材との積層となるため、熱膨張係数の違いによる各層のズレ及び剥離を抑制するために各層を強固に接着した。強固な接着を実現するために各層の接着はUV硬化樹脂層によってなされるように構成し(本実施形態では平坦層205、UV硬化樹脂層2031及びUV硬化樹脂層204)、更にアクリル系材料からなる易接着層2030を介在させる構成とした。各層の接着をUV硬貨樹脂によって行なうことを可能とするため、マイクロレンズアレイ200の所定波長領域(本実施形態では330nmから380nm)の透過率を規定した。各層の接着をUV硬化樹脂層によって行なうことにより、例えば熱硬化樹脂層のように温度変化を伴う製造工程が不要となるので、先述の熱膨張係数の違いによる不具合を回避することができ、より好適である。
【0066】
以上説明したように、本実施形態にかかるマイクロレンズアレイでは、焦点距離の調整が容易で温度変化による画素とマイクロレンズとのズレ及び剥離を低減したマイクロレンズアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明にかかる液晶表示装置の断面図である。
【図2】透明基板、マイクロレンズアレイ、リムの配置関係を示す平面図である。
【図3】透明基板のマザー基板の平面図である。
【図4】本発明にかかるマイクロレンズアレイの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるマイクロレンズアレイの製造工程を表す図である。
【図6】本発明にかかるマイクロレンズアレイの光透過率の実験データである。
【図7】従来技術にかかる液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 マイクロレンズアレイ、2 透明基板、3 ブラックマトリクス、
4 カラーフィルタ層、5 透明電極、6 配向膜、7 液晶層、
8 スペーサ、9 配向膜、10 透明電極、11 素子、12 透明基板、
13 偏光フィルム、100 液晶表示パネル、101 透明基板、
102 透明基板、103 液晶層、104 カラーフィルタ層、
105 ブラックマトリクス、106 透明電極、107 配向膜、
108 素子、109 偏光板、110 スペーサ、121 リム、
122 マイクロレンズアレイ、200 マイクロレンズアレイ、
201 リム、202 マイクロレンズ、203 積層基板、
204 UV硬化樹脂層、205 平坦部、206 硬化樹脂層、
207 スタンパ、208 硬化樹脂層、1000 マザー基板、
2030 易接着層、2031 UV硬化樹脂層、2032 フィルム層、
2033 フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の紫外線硬化樹脂層と、
前記紫外線硬化樹脂層の一方の面に易接着層を介して設けられた第1のフィルム層と、
前記紫外線硬化樹脂層の他方の面に易接着層を介して設けられた第2のフィルム層と、
前記第1のフィルム層の前記紫外線硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の面に易接着層を介して設けられた複数のマイクロレンズと、
を有するマイクロレンズアレイ。
【請求項2】
前記第1及び第2のフィルム層には既存の流通しているフィルム部材が使用されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
前記第2のフィルム層の前記第1の紫外線硬化樹脂層と接着されている面とは反対の面に易接着層を介して第2の紫外線硬化樹脂層により液晶表示パネルと接着されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
前記易接着層の層厚が0.05μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項5】
330nmから380nmまでの領域の光学波長に対して透過率が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項6】
前記第1及び第2のフィルム層の層厚が20μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項7】
前記第1の紫外線硬化樹脂層の層厚が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項8】
マイクロレンズアレイを有する液晶表示装置であって、
当該マイクロレンズアレイは、
第1の紫外線硬化樹脂層と、
前記紫外線硬化樹脂層の一方の面に易接着層を介して設けられた第1のフィルム層と、
前記紫外線硬化樹脂層の他方の面に易接着層を介して設けられた第2のフィルム層と、
前記第1のフィルム層の前記紫外線硬化樹脂層が設けられた面とは反対側の面に易接着層を介して設けられた複数のマイクロレンズとを有する液晶表示装置。
【請求項9】
前記マイクロレンズアレイは前記第2のフィルム層の前記第1の紫外線硬化樹脂層と接着されている面とは反対の面に、易接着層を介して第2の紫外線硬化樹脂層により前記液晶表示パネルに接着されることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1及び第2のフィルム層には既存の流通しているフィルム部材が使用されていることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記易接着層の層厚が0.05μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
330nmから380nmまでの領域の光学波長に対して透過率が30%以上であることを特徴とするマイクロレンズアレイを備えた請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記第1及び第2のフィルム層の層厚が20μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記第1の紫外線硬化樹脂層の層厚が100μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
複数の層が積層された基板上に複数のマイクロレンズが形成された液晶表示装置に装着されるマイクロレンズアレイの製造工程における焦点距離の調整方法であって、
装着される液晶表示装置に最適な焦点距離を決定するステップと、
前記焦点距離に基づいて、予め階層的な厚さごとに用意されたフィルム及び樹脂基板の中から前記基板を構成する前記複数の層のそれぞれの層を選択するステップと、
前記複数の層を積層し前記基板を形成するステップと、
前記基板上にマイクロレンズを形成するステップと、
を有するマイクロレンズアレイの製造工程における焦点距離の調整方法。
【請求項16】
前記基板は剛性の高い樹脂材料からなる高剛性樹脂層の両面にフィルム層が設けられていることを特徴とする請求項15に記載のマイクロレンズアレイの製造工程における焦点距離の調整方法。
【請求項17】
前記基板を構成する複数の層はそれぞれ易接着層を介して接着されていることを特徴とする請求項15に記載のマイクロレンズアレイの製造工程における焦点距離の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−47708(P2006−47708A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228878(P2004−228878)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】