説明

マイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置

【課題】1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供すること。
【解決手段】液体貯留部に貯留された液体を液体定量部に送液して定量し保持し、送液先の下流流路を外部に開放した状態で、液体定量部に保持された液体を空気で分断して送液する。これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置に関し、特に、遺伝子増幅反応、抗原抗体反応などによる生体物質の検査・分析、その他の化学物質の検査・分析、有機合成等による目的化合物の化学合成などに用いられるマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサーなど)を微細化して1チップ上に集積化した分析用チップ(以下、マイクロ検査チップと言う)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に、遺伝子検査に見られるように煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化に優れたマイクロ検査チップは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とするので、その恩恵は多大と言える。
【0004】
上記のようなマイクロ検査チップでは、検査に用いられる検体や試薬を、必要に応じて正確に分割し、定量し、必要なタイミングで必要な場所に送液することが重要である。検体や試薬を精度良く分割、定量し、タイミングよく送液できないと、反応およびその検出結果に多大の影響が生ずる。
【0005】
そこで、特許文献2には、第1の流路に導入された液体が、第1の流路と第2の流路とを繋ぐ第3の流路内に毛細管現象によって引き込まれ、第1の流路内の液体を取り除いた後に第3の流路内の液体を第2の流路に送液することで、第3の流路の容積に応じた体積の液滴を作成する液体の定量方法が開示されている。さらに、複数の流路への液体の分割、定量方法についても開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、チップを回転させることで発生する遠心力を用いて、チップ内の液体を移動させ、流路の容積で液量を分割、定量する方法が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献4には、複数のポンプやバルブ構造部、反応容器を配して、これを適宜選択することによりバルブやポンプの制御を行って送液するマイクロチップが開示されている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2002−357616号公報
【特許文献3】特表2000−514928号公報
【特許文献4】特開2003−94395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2で提案された方法では、液体を定量するためだけに3本の流路が必要であり、マイクロ検査チップの構造が複雑となる。また、第1の流路の液体を取り除く工程と、第3の流路内の液体を第2の流路に送液する工程とを切り替える時に、送液ポンプの力を切り替えるか、第1の流路の末端を送液工程の途中で封止する等の工夫が必要であり、マイクロ検査チップの動作が複雑になる。さらに、分割、定量後も各流路が連通されたままなので、分割された各液体を個別に独立して送液することができない、という問題がある。
【0009】
また、特許文献3で提案された方法では、全ての流路で同時に遠心力による送液が行われるために、流路毎に個別に分割、定量、送液することができない、という問題がある。さらに、回転中心から外側に向かう方向に流路を配置する必要があるため、流路の配置の自由度が小さい、という問題もある。
【0010】
さらに、特許文献4で提案された方法では、個別に存在している任意の試液を、それぞれ個別に制御して選択的に送液することは開示されているが、1箇所に貯留された検体や試液を正確に定量し、かつ、分割する方法については示されていない。
【0011】
特に、外部からマイクロ検査チップに注入されることの多い検体は、複数箇所に分けて注入することは煩わしく、注入漏れの可能性も高いので、1箇所に注入して、マイクロ検査チップ内部で定量、分配されることが望ましい。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、1箇所にまとまって存在する検体や試薬等の液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0014】
1.液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された前記液体を定量して保持する液体定量部と、
前記液体貯留部と前記液体定量部とを連通させる接続流路と、
前記液体貯留部に外部から流体を導入する第1の流体導入路と、
前記接続流路に連通され、前記接続流路に流体を導入する第2の流体導入路と、
前記液体定量部に連通された分岐部と、
前記分岐部に連通された複数の分岐流路と、
複数の前記分岐流路に連通された複数の下流流路と、
複数の前記下流流路に連通され、複数の前記下流流路を外部に開放または閉鎖する複数の下流流路開閉手段とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップ。
【0015】
2.前記分岐部に連通された排気流路と、
前記排気流路に連通された排気流路開閉手段とを備えたことを特徴とする前記1に記載のマイクロ検査チップ。
【0016】
3.前記第1の流体導入路および前記第2の流体導入路の少なくとも一方は、空気貯留部を有することを特徴とする前記1または2に記載のマイクロ検査チップ。
【0017】
4.前記第2の流体導入路に連通された吸気流路と、
前記吸気流路に連通された吸気流路開閉手段とを備えたことを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0018】
5.前記第1の流体導入路に連通された第1の流体導入路開閉手段と、
前記第2の流体導入路に連通された第2の流体導入路開閉手段とを備えたことを特徴とする前記2乃至4の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0019】
6.複数の前記下流流路の少なくとも1つには、予め第2の液体が収容されていることを特徴とする前記1乃至5の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0020】
7.前記液体定量部は、撥水バルブを有することを特徴とする前記1乃至6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0021】
8.前記1乃至4または6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法であって、
前記液体貯留部に前記液体を貯留する液体貯留工程と、
前記第1の流体導入路に前記流体を導入することで、前記液体貯留部に貯留された前記液体を前記液体定量部に送液して定量し保持する液体定量工程と、
複数の前記下流流路開閉手段の何れか1つを選択して開放し、前記第2の流体導入路から前記接続流路に空気を導入することで、前記液体定量部に保持された前記液体を、選択された前記下流流路開閉手段に連通した前記下流流路に送液する液体送液工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの定量送液方法。
【0022】
9.前記液体定量工程は、前記排気流路開閉手段を開放することにより、前記分岐部の空気を外部に放出することを特徴とする前記8に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【0023】
10.前記5および6に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法であって、
前記液体貯留部に前記液体を貯留する液体貯留工程と、
前記第1の流体導入路開閉手段と前記排気流路開閉手段とを開放し、前記排気流路の内部の空気を外部に排気することにより、前記液体貯留部に貯留された前記液体を前記液体定量部に送液して定量し保持する液体定量工程と、
前記第2の流体導入路開閉手段と複数の前記下流流路開閉手段の何れか1つとを開放し、開放された前記下流流路開閉手段が連通する前記下流流路の内部の空気を外部に排気することにより、前記液体定量部に保持された前記液体を前記下流流路に送液する液体送液工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの定量送液方法。
【0024】
11.前記液体定量工程および前記液体送液工程を複数回繰り返すことを特徴とする前記8乃至10の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【0025】
12.前記吸気流路開閉手段を開放することにより、前記吸気流路を介して前記第2の流体導入路に空気を吸気する吸気行程を備えたことを特徴とする前記11に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【0026】
13.前記1乃至6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの前記液体定量部の近傍に、前記液体定量部に送液された前記液体の先頭部を検出するメニスカス検出部を備えたことを特徴とする検査装置。
【0027】
14.前記9乃至13の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法を用いて、前記液体の送液を制御する駆動制御部を備えたことを特徴とする検査装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、液体貯留部に貯留された液体を液体定量部に送液して定量し保持し、送液先の下流流路を外部に開放した状態で、液体定量部に保持された液体を空気で分断して送液する。これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0030】
まず、本発明における検査装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明における検査装置の1例を示す模式図である。
【0031】
図1において、検査装置1は、マイクロ検査チップ100、マイクロポンプユニット210、加熱冷却ユニット230、検出部250、メニスカス検出部260および駆動制御部270等で構成される。
【0032】
マイクロ検査チップ100は、一般に分析チップ、マイクロリアクタチップなどとも称されるものと同等であり、例えば、樹脂、ガラス、シリコン、セラミックスなどを材料とし、その上に、微細加工技術により、幅および高さが数μm〜数百μmのレベルの微細な流路を形成したものである。マイクロ検査チップ100のサイズおよび形状は、通常、縦横が数十mm、厚さが数mm程度の板状である。
【0033】
ここでは、マイクロ検査チップ100は、送液を円滑に行うために、例えばポリプロピレン等の撥水性の樹脂材料で形成されており、試薬や検体等の液体を流すための溝状の流路が表面に形成された流路基板101と、流路基板101の流路が形成された面に接着され、流路基板101の溝状の流路の蓋として機能する天板103とで構成されているとする。親水性の材料を用いる必要がある場合には、流路全体あるいは流路の内で撥水性が必要な部分をフッ素系の材料でコーティングする等の撥水処理を行うことが望ましい。また、天板103には、マイクロポンプユニット210とマイクロ検査チップ100との連通口等が設けられる。
【0034】
マイクロポンプユニット210は、マイクロ検査チップ100内の送液を行うためのポンプユニットで、マイクロポンプ211、チップ接続部213、駆動液タンク215および駆動液供給部217等で構成される。マイクロポンプユニット210は、1つあるいは複数のマイクロポンプ211を備えている。マイクロポンプ211は、マイクロ検査チップ100内に駆動液216を注入あるいは吸引することで、マイクロ検査チップ100内の送液を行う。マイクロポンプについては図13で詳述する。チップ接続部213は、マイクロポンプ211とマイクロ検査チップ100とを接続する。
【0035】
駆動液供給部217は、駆動液タンク215からマイクロポンプ211に駆動液216を供給する。駆動液タンク215は、駆動液216の補充のために駆動液供給部217から取り外して交換可能である。マイクロポンプ211上には1個または複数個のポンプが形成されており、複数個の場合は、各々独立にあるいは連動して駆動可能である。
【0036】
マイクロ検査チップ100とマイクロポンプ211とはチップ接続部213で接続されて連通される。マイクロポンプ211が駆動されてマイクロポンプ211からチップ接続部213を介してマイクロ検査チップ100に注入あるいは吸引される駆動液216によって、マイクロ検査チップ100内の複数の収容部に収容されている各種試薬や検体が、マイクロ検査チップ100内で送液される。あるいは駆動液216に押された空気等の気体によって、マイクロ検査チップ100内の複数の収容部に収容されている各種試薬や検体が、マイクロ検査チップ100内で送液される。
【0037】
加熱冷却ユニット230は、冷却部231および加熱部233等で構成され、マイクロ検査チップ100内の反応の促進および抑制のために、検体、試薬およびその混合液等の加熱および冷却を行う。冷却部231はペルチエ素子等で構成される。加熱部233は、ヒータ等で構成される。もちろん、加熱部233もペルチエ素子で構成してもよい。
【0038】
検出部250は、発光ダイオード(LED)やレーザ等の光源251と、フォトダイオード(PD)等の受光素子253等で構成され、マイクロ検査チップ100内の反応によって得られる生成液に含まれる標的物質を、マイクロ検査チップ100上の検出領域255の位置で光学的に検出する。
【0039】
メニスカス検出部260は、マイクロ検査チップ100の後述する液体定量部131の近傍に配置され、液体定量部131に送液された液体151の先頭部(以下、メニスカスと言う)151aを検出する。検出方法は、例えば投光部と受光部とを備え、液体定量部131からの反射光量の変化を検出する光学的方法、液体定量部131の電気抵抗の変化を検出する電気的方法等、任意の方法が考えられる。
【0040】
駆動制御部270は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成され、検査装置1内の各部の駆動、制御、検出等を行う。
【0041】
(第1の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第1の実施の形態について、図2を用いて説明する。図2は、マイクロ検査チップ100の第1の実施の形態の構成を示す模式図で、図2(a)は流路基板101の表面に形成された流路を示す平面図、図2(b)は図2(a)のA−A’断面図である。
【0042】
図2(a)および(b)において、マイクロ検査チップ100の流路基板101の表面には、第1の流体導入路111、液体貯留部113、液体注入口113i、接続流路115、第2の流体導入路121、液体定量部131、分岐部133、2本の分岐流路135aおよび135b、2本の下流流路141aおよび141bが形成されている。ここでは、分岐流路および下流流路は2本としたが、これに限るわけではなく、3本以上であってもよい。
【0043】
第1の流体導入路111は液体貯留部113の上流側に連通し、液体貯留部113の下流側と液体定量部131の上流側とは接続流路115によって連通している。第2の流体導入路121は接続流路115と合流点117で連通している。後述するように、第2の流体導入路121から接続流路115に空気を注入することで、液体貯留部113内の液体と液体定量部131内の液体とを分断するので、接続流路115の流路断面積は狭いことが望ましい。
【0044】
分岐部133は液体定量部131の下流側に連通し、2本の分岐流路135aと135bとに分岐している。2本の分岐流路135aと135bとはそれぞれ2本の下流流路141aと141bとに連通している。ここでは、下流流路141aと141bとは同一形状として図示しているが、これに限るものではなく、容積、長さ、形状等はそれぞれ異なっていてもよい。
【0045】
第1の流体導入路111および第2の流体導入路121の各々の上流端には、図1に示したマイクロポンプ211とのポンプポンプ連通口P1およびP2が設けられている。マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入されると、ポンプ連通口P1およびP2は、チップ接続部213を介してマイクロポンプ211に連通され、マイクロポンプ211から、必要に応じて、空気153あるいは駆動液216が注入される。
【0046】
第1の実施の形態では、液体151は、間に空気153を介して、マイクロポンプ211からマイクロ検査チップ100内に注入される駆動液216によって送液される例を示すが、これに限るわけではなく、駆動液216ではなく空気を注入するポンプを用いてもよいし、空気153を介さずに、液体151を駆動液216で直接送液してもよい。
【0047】
ただし、駆動液216で直接送液する場合には、液体と駆動液とが混じり合わないように例えばオイル系の駆動液216を用いるとか、液体定量部131に駆動液216が混入しないように液体貯留部113に貯留する液体151の量を多くする等の対応をとることが好ましい。
【0048】
2本の下流流路141aおよび141bの下流端には、本発明における下流流路開閉手段であり、個別に開閉が可能なバルブV1およびV2が連通し、下流流路141aおよび141bを外部に開放または閉鎖する。バルブV1およびV2は、マイクロ検査チップ100上に形成されてもよいし、図2(b)に示すように、マイクロ検査チップ100にはバルブ連通口V1およびV2が設けられ、バルブ280自体は外部に設けられてもよい。この場合も、バルブ280はバルブ連通口V1およびV2を個別に開閉可能である。
【0049】
第1の実施の形態では、液体貯留部113に貯留された液体151を液体定量部131で定量し、定量された液体151を下流流路141aに送液する。次に、再度、液体貯留部113に貯留された液体151を液体定量部131で定量し、定量された液体151を下流流路141bに送液する例について説明する。
【0050】
液体貯留部113への液体151の注入前には、各流路は空気153で満たされている。ただし、2本の下流流路141aおよび141bには、第2の液体155および157が予め注入されて保持されている。ここに、液体151は例えば検体であり、第2の液体155および157は例えば2種類の異なる試薬であり、液体151が下流流路141aおよび141bに送液されることで、下流流路内で検体と試薬との反応が行われる。
【0051】
液体貯留部113には液体注入口113iから液体151が注入され、液体151の注入後、液体注入口113iは、例えば粘着テープ等の封止部材113sで封止される。
【0052】
マイクロ検査チップ100の天板103側の液体定量部131の下流端近傍には、図1に示したメニスカス検出部260が設けられており、検出点260aに液体151のメニスカス151aが到達したか否かが検出される。例えば上述した光学的方法で検出を行う場合、少なくとも天板103の液体定量部131部分は光学的に透明である必要がある。
【0053】
メニスカス検出部260は図の矢印X方向に移動可能で、移動させることで検出点260aが変更可能であるため、液体151の定量に際して、所定の量を定量可能である。従って、例えば下流流路141aに送液する液体151の量と、下流流路141bに送液する液体151の量とを異ならせることも可能である。
【0054】
続いて、第1の実施の形態における液体の定量送液方法を、図3乃至図6を用いて説明する。図3乃至図5は、第1の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートで、図3がメインルーチン、図4および図5がサブルーチンである。図6は後述する液体定量工程および液体送液工程での流路の状態を示す模式図である。
【0055】
図3において、ステップS11で、ピペット等を用いて、試薬や検体等の液体151が液体注入口113iから液体貯留部113内に注入され、ステップS12で、液体注入口113iが封止部材113sで封止される(液体貯留工程)。ここまでが、マイクロ検査チップ100単体で行われるステップである。
【0056】
次に、ステップS13で、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入される。ステップS14で、検査装置1の駆動制御部270により、バルブ選択のためのパラメータn=1が設定される。ステップS15で、駆動制御部270により、図4に示す液体定量サブルーチンが実行され(液体定量工程)、メインルーチンに戻る。
【0057】
ステップS16で、駆動制御部270により、ステップS15の液体定量サブルーチンの中でエラーフラグEFが立てられた(EF=1)か否かが確認される。エラーフラグEFが立てられた場合(ステップS16;Yes)、液体定量サブルーチン内で異常が発生したとみなされて、ステップS17で、駆動制御部270により、エラー警告が出されて、動作が終了される。
【0058】
エラーフラグEFが立てられなかった場合(ステップS16;No)、ステップS18で、駆動制御部270により、図5に示す液体送液サブルーチンが実行され(液体送液工程)、メインルーチンに戻る。ステップS19で、駆動制御部270により、パラメータn=2であるか否かが確認される。n=2の場合(ステップS19;Yes)、下流流路141aと141bの両方に液体151が送液されたとみなされて、そのまま動作が終了される。n=2でない場合(ステップS19;No)、ステップS20で、駆動制御部270により、nに1が加算されて、ステップS15に戻り、上述した動作が繰り返される。
【0059】
図4は、図3のステップS15「液体定量サブルーチン」のフローチャートである。
【0060】
図4において、ステップS151で、検査装置1に挿入されたマイクロ検査チップ100のポンプ連通口P1およびP2がマイクロポンプ211に連通され、バルブ連通口V1およびV2がバルブ280に連通される。ステップS152で、駆動制御部270によりバルブ280が制御されて、バルブ連通口V1およびV2が閉鎖され、ステップS153で、図3のバルブ選択のためのパラメータn(nは1または2)の値に従って、n=1の場合にはバルブ連通口V1だけが、n=2の場合にはバルブ連通口V2だけが開放される。
【0061】
ステップS154で、パラメータn(nは1または2)の値に従って、駆動制御部270により、メニスカス検出部260の位置が図2に示した矢印X方向の所定位置Xnとなるように移動される。これによって、液体定量部131での液体151の定量に際して、パラメータnに従った所定の量の定量が可能となる。ステップS155で、駆動制御部270により、エラーフラグEFが初期化(EF=0)される。
【0062】
ステップS156で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第1の流体導入路111に注入され、駆動液216に押された第1の流体導入路111内の空気153に押されて、液体貯留部113に貯留された液体151が接続流路115を介して液体定量部131に流出する。
【0063】
この時、接続流路115および液体定量部131内の空気153は、パラメータn=1の場合、分岐部133、分岐流路135aおよび下流流路141aを介して、開放されたバルブ連通口V1から外部に排出される。また、パラメータn=2の場合、分岐部133、分岐流路135bおよび下流流路141bを介して、開放されたバルブ連通口V2から外部に排出される。
【0064】
ステップS157で、駆動制御部270により、メニスカス検出部260によって液体151のメニスカス151aが検出されたか否かが確認される。メニスカス151aが検出されない場合(ステップS157;No)、ステップS158で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211がステップS156で最初に駆動開始されてから、タイムアウト時間である所定時間T1が経過したか否かが確認される。
【0065】
所定時間T1が経過していない場合(ステップS158;No)、ステップS156に戻って上述した動作が繰り返される。所定時間T1が経過した場合(ステップS158;Yes)、所定時間T1以内に液体貯留部113から液体定量部131への送液が完了されないエラーが発生したとみなされて、ステップS159で、駆動制御部270により、エラーフラグEFが立てられ(EF=1)、ステップS160に進む。
【0066】
ステップS157でメニスカス151aが検出された場合(ステップS157;Yes)もステップS160に進み、駆動制御部270により、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211が停止され、ステップS161で、駆動制御部270により、ステップS153で開放されたバルブ連通口V1またはV2が閉鎖され、メインルーチンに戻る。
【0067】
図6(a)に、ステップS15「液体定量サブルーチン」終了時の流路の状態を示す。液体貯留部113に貯留された液体151の一部が送液され、接続流路115を介して液体定量部131に注入されている。液体定量部131に注入された液体151のメニスカス151aがメニスカス検出部260の検出点260aの位置に達したところで、送液が停止され、液体151が液体定量部131に保持されている。
【0068】
図5は、図3のステップS18「液体送液サブルーチン」のフローチャートである。
【0069】
図5において、ステップS181で、駆動制御部270により、図3のバルブ選択のためのパラメータn(nは1または2)の値に従って、バルブ280によって、n=1の場合にはバルブ連通口V1が、n=2の場合にはバルブ連通口V2が開放される。
【0070】
ステップS183で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P2に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第2の流体導入路121に注入され、駆動液216に押された第2の流体導入路121内の空気153が接続流路115に注入される。これによって、液体定量部131に保持された液体151が、液体貯留部113内の液体151と分断されて、分岐部133に流入する。
【0071】
この時、パラメータn=1の場合には、分岐部133、分岐流路135aおよび下流流路141a内の空気153は、開放されているバルブ連通口V1から外部に排出され、パラメータn=2の場合には、分岐部133、分岐流路135bおよび下流流路141b内の空気153は、開放されているバルブ連通口V2から外部に排出される。
【0072】
そして、液体定量部131に保持された液体151は、パラメータn=1の場合には、分岐部133および分岐流路135aを介して下流流路141aに注入され、パラメータn=2の場合には、分岐部133および分岐流路135bを介して下流流路141bに注入される。
【0073】
ステップS185で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P2に連通されたマイクロポンプ211がステップS183で最初に駆動開始されてから、送液終了時間である所定時間T2が経過したか否かが確認される。所定時間T2が経過していない場合(ステップS185;No)、ステップS183に戻って上述した動作が繰り返される。
【0074】
所定時間T2が経過した場合(ステップS185;Yes)、ステップS187で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P2に連通されたマイクロポンプ211が停止され、ステップS189で、駆動制御部270により、ステップS181で開放されたバルブ連通口V1またはV2が閉鎖され、メインルーチンに戻る。
【0075】
図6(b)に、パラメータn=1の場合のステップS18「液体送液サブルーチン」終了時の流路の状態、つまり、液体151が定量されて下流流路141aに送液された状態を示す。
【0076】
図6(b)において、第2の流体導入路121から接続流路115に注入された空気153によって、液体定量部131に保持されていた液体151が液体貯留部113内の液体151と分断されて、分岐部133および分岐流路135aを介して下流流路141aに注入されている。下流流路141aに注入された液体151は、予め下流流路141aに保持されていた第2の液体155と混合されて混合液156となり、反応が開始される。
【0077】
パラメータn=2の場合には、バルブ連通口V2が開放されているので、液体151は、分岐部133および分岐流路135bを介して下流流路141bに注入される。
【0078】
なお、第2の流体導入路121から接続流路115に空気153が注入される場合に、液体貯留部113に残存している空気153がポンプ連通口P1側に逆流する可能性があるので、逆流防止用に液体貯留部113とポンプ連通口P1との間に逆止弁を設けてもよい。
【0079】
上述した液体定量工程および液体送液工程において、マイクロポンプ211の駆動速度を制御することで、液体151の送液速度を所定の速度に制御することができ、液体151を所定のタイミングで所定の速度で送液することができる。
【0080】
第1の実施の形態では、液体定量部131での液体151の定量に、メニスカス検出部260を用いたが、これに限るものではなく、例えば送液精度の高いポンプを用い、ポンプの精度によって定量する方法や、液体定量部131に撥水バルブを設け、撥水バルブまで送液したところで、表面張力によってメニスカスを停止させて定量する方法等、種々の方法を用いることができる。
【0081】
上述した液体定量部131に撥水バルブを設ける方法の例を、図7を用いて説明する。図7は、第1の実施の形態の他の例を示す模式図で、図7(a)は流路形状を示し、図7(b)は液体定量状態を示す。
【0082】
図7(a)において、液体定量部131は、定量に必要な容量の位置に撥水バルブ131aを備えている。その他の流路構成は図2と同じであるので、説明は省略する。
【0083】
図7(b)において、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第1の流体導入路111に注入され、駆動液216に押された第1の流体導入路111内の空気153に押されて、液体貯留部113に貯留された液体151が接続流路115を介して液体定量部131に注入される。
【0084】
この時のマイクロポンプ211の送液圧力は、液体151が撥水バルブ131aを越えられない圧力とする。これによって、液体定量部131に注入された液体151は、撥水バルブ131aまで充填されたところで送液が止まり、液体定量部131の容量で定量される。
【0085】
上述したように、第1の実施の形態によれば、液体貯留部113に貯留された液体151の一部を液体定量部131に送液して定量し、定量された液体151を第2の流体導入路121から液体定量部131に注入された空気153によって液体貯留部113内の液体151と分断して下流流路に送液する。送液先の下流流路は、バルブ連通口V1およびV2の開閉によって決定される。
【0086】
これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【0087】
(第2の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第2の実施の形態について、図8を用いて説明する。図8は、マイクロ検査チップ100の第2の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0088】
図8において、第2の実施の形態では、図2の第1の実施の形態における分岐部133に排気流路137が連通され、排気流路137の下流端には、本発明における排気流路開閉手段であり、個別に開閉が可能なバルブV3が連通され、排気流路137を介して分岐部133が外部に開放または閉鎖される。
【0089】
バルブV3は、第1の実施の形態におけるバルブV1およびV2と同様に、マイクロ検査チップ100上に形成されてもよいし、図2(b)と同様に、マイクロ検査チップ100にはバルブ連通口V1、V2およびV3が設けられ、バルブ280自体は外部に設けられてもよい。この場合も、バルブ280はバルブ連通口V1、V2およびV3を個別に開閉可能である。
【0090】
また、下流流路141aは、第2の液体保持部161a、混合流路163aおよび反応検出部165aがこの順に連通されて構成され、下流流路141bは、第2の液体保持部161b、混合流路163bおよび反応検出部165bがこの順に連通されて構成されている。
【0091】
第2の液体保持部161aおよび161bの内部には、それぞれ第2の液体155および157が予め注入されて保持されている。混合流路163aおよび163bは、流路断面積の広い部分と狭い部分とが交互に複数段連結されており、液体151と第2の液体155との混合が行われやすい形状となっている。反応検出部165aおよび165bでは、図1に示した検出部250により、液体151と第2の液体155との混合液での反応結果が検出される。その他の構成は第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0092】
次に、第2の実施の形態における液体の定量送液方法について、図9を用いて説明する。第2の実施の形態での液体の定量送液方法のメインルーチンおよびステップS18「液体送液サブルーチン」は、それぞれ第1の実施の形態の図3および図5に示したものと同じで、ステップS15「液体定量サブルーチン」だけが図4と異なる。図9は、第2の実施の形態でのステップS15「液体定量サブルーチン」のフローチャートである。
【0093】
図9において、ステップS251で、検査装置1に挿入されたマイクロ検査チップ100のポンプ連通口P1およびP2がマイクロポンプ211に連通され、バルブ連通口V1、V2およびV3がバルブ280に連通される。ステップS252で、駆動制御部270により、バルブ280が制御されて、バルブ連通口V1、V2およびV3が閉鎖され、ステップS153で、バルブ連通口V3が開放される。ステップS154およびS155は、図4と同じであるので、説明は省略する。
【0094】
ステップS256で、駆動制御部270により、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第1の流体導入路111に注入され、駆動液216に押された第1の流体導入路111内の空気153に押されて、液体貯留部113に貯留された液体151が接続流路115を介して液体定量部131に流出する。
【0095】
この時、接続流路115および液体定量部131内の空気153は、排気流路137を介して、開放されたバルブ連通口V3から外部に排出される。ステップS157からステップS160は、図4と同じであるので、説明は省略する。ステップS261で、駆動制御部270により、開放されていたバルブ連通口V3が閉鎖され、メインルーチンに戻る。
【0096】
第2の実施の形態では、液体定量部131と第2の液体保持部161aおよび161bとの間の空気153を排気してあるので、液体151の下流流路141aあるいは141bへの送液時に、液体151と第2の液体155あるいは157とが近接している。従って、流路断面積の広い混合流路163aあるいは163bで、液体151と第2の液体155あるいは157との混合がより確実に行われる。
【0097】
上述したように、第2の実施の形態によれば、液体貯留部113に貯留された液体151の一部を液体定量部131に送液して定量する際に、接続流路115および液体定量部131内の空気153を排気流路137を介して、開放されたバルブ連通口V3から外部に排出する。その後に、定量された液体151を第2の流体導入路121から液体定量部131に注入された空気153によって液体貯留部113内の液体151と分断して下流流路に送液する。送液先の下流流路は、バルブ連通口V1およびV2の開閉によって決定される。
【0098】
これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【0099】
(第3の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第3の実施の形態について、図10を用いて説明する。図10は、マイクロ検査チップ100の第3の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0100】
本発明においては、液体定量部131定量され保持された液体151と、液体貯留部113内に残存する液体151とを分断するために、第2の流体導入路121から接続流路115に空気153を注入する必要がある。しかしながら、空気153は液体151に比べて圧縮性が高いので、空気153による液体151の送液では、送液速度が不安定になる可能性がある。
【0101】
送液速度が不安定になると、液体151が急加速して流路内に飛び散ったり、流路に送液残りが生じたり、液体151と第2の液体155あるいは157との混合度合いが不安定になったりする。第3の実施の形態では、上述した空気153の圧縮性に関わる課題の解決方法を提案する。
【0102】
図10において、第3の実施の形態では、図8の第2の実施の形態における第1の流体導入路111および第2の流体導入路121にそれぞれ空気室171および173が設けられている。その他の構成は図8の第2の実施の形態と同じである。
【0103】
液体貯留部113から液体定量部131への送液の際は、ポンプ連通口P1に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第1の流体導入路111に注入され、液体貯留部113に貯留された液体151は、空気室171内の空気153に押されて接続流路115に流出する。
【0104】
液体定量部131から下流流路141aあるいは141bへの送液の際は、ポンプ連通口P2に連通されたマイクロポンプ211が駆動されて駆動液216が第2の流体導入路121に注入され、液体定量部131に保持された液体151は、空気室173内の空気153に押されて分岐部133に流出する。
【0105】
このように、第1の流体導入路111および第2の流体導入路121にそれぞれ空気室171および173を設けることで、液体151と駆動液216とに挟まれた空気153の量を必要最小限に抑えることができるので、上述した空気153の圧縮性に関わる課題を低減することができる。空気室は、上述したように、第1の流体導入路111および第2の流体導入路121にそれぞれ設けるのが理想的であるが、どちらか一方だけであっても、設けただけの効果は得られる。
【0106】
図11は、図10の第3の実施の形態の更なる改良案を示す模式図である。図11において、改良案は、図10の第3の実施の形態の第2の流体導入路121に、さらに吸気流路175が連通されている。吸気流路175の下流端には、本発明における吸気流路開閉手段であり、個別に開閉が可能なバルブV4が連通され、吸気流路137を介して第2の流体導入路121が外部に開放または閉鎖される。バルブV4は、第1および第2の実施の形態と同様に、バルブ連通口V4とバルブ280とで構成されてもよい。
【0107】
複数の流路(第3の実施の形態では、下流流路141aおよび141b)に液体151を分配する場合、例えば下流流路141aへの送液完了後にバルブV4が開放され、ポンプ連通口P2に連通されたマイクロポンプ211が逆方向に駆動されて、駆動液216が第2の流体導入路121から外部に吸引されることで、空気室173への空気の補充を行うことができる。
【0108】
図10に示した例では、複数の流路に液体151を分配する場合には、空気室173は複数の流路の容積の合計以上の容積が必要であり、分配する流路が増えるほど空気室173が大きくなる。しかし、図11に示した改良案では、分配する流路が増えても、空気室の大きさは、分配する流路1本分あればよい。
【0109】
上述したように、第3の実施の形態によれば、第1の流体導入路111および第2の流体導入路121にそれぞれ空気室171および173を設けることで、液体151と駆動液216とに挟まれた空気153の量を必要最小限に抑えることができるので、送液時の空気153の圧縮性に関わる課題を低減することができる。
【0110】
これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【0111】
(第4の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第4の実施の形態について、図12を用いて説明する。図12は、マイクロ検査チップ100の第4の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0112】
図12において、第4の実施の形態は、図8の第2の実施の形態におけるポンプ連通口P1およびP2の代わりに、本発明における第1の流体導入路開閉手段および第2の流体導入路開閉手段であり、個別に開閉が可能なバルブV5およびV6が設けられ、第1の流体導入路111および第2の流体導入路121が外部に開放または閉鎖される。バルブV5およびV6は、第1乃至第3の実施の形態と同様に、バルブ連通口V5およびV6とバルブ280とで構成されてもよい。
【0113】
さらに、第4の実施の形態は、図8の第2の実施の形態におけるバルブV1、V2およびV3のさらに下流に、吸引ポンプP3、P4およびP5が連通されている。その他の構成は図8の第2の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0114】
マイクロ検査チップの第4の実施の形態の送液に用いられる吸引ポンプP3、P4およびP5としては、図1に示したマイクロポンプユニット210で駆動液216あるいは空気153を吸引することでもよいし、マイクロポンプユニット210に代えて、その他の吸引用のポンプを用いてもよい。
【0115】
次に、第4の実施の形態における液体の定量送液方法について、図13および図14を用いて説明する。第4の実施の形態での液体の定量送液方法のメインルーチンは、第1の実施の形態の図3に示したものと同じで、ステップS15「液体定量サブルーチン」およびステップS18「液体送液サブルーチン」が図4および図5と異なる。
【0116】
図13は、第4の実施の形態でのステップS15「液体定量サブルーチン」のフローチャートである。
【0117】
図13において、ステップS451で、検査装置1に挿入されたマイクロ検査チップ100のバルブV1、V2およびV3に吸引ポンプP3、P4およびP5が接続され、バルブV5およびV6が接続される。ステップS452で、駆動制御部270により、バルブV1、V2、V3、V5およびV6が閉鎖され、ステップS453で、バルブV3とV5とが開放される。ステップS154およびS155は、図4および図9と同じであるので、説明は省略する。
【0118】
ステップS456で、駆動制御部270により、バルブV3に接続された吸引ポンプP5が駆動されて、液体定量部131内の空気153が外部に吸引され、吸引された空気153に引かれて、液体貯留部113に貯留された液体151が接続流路115を介して液体定量部131に流入する。ステップS157からステップS159は、図4と同じであるので、説明は省略する。
【0119】
ステップS460で、駆動制御部270により、吸引ポンプP5の駆動が停止され、ステップS461で、駆動制御部270により、開放されていたバルブV3およびV5が閉鎖され、メインルーチンに戻る。
【0120】
図14は、第4の実施の形態でのステップS18「液体送液サブルーチン」のフローチャートである。
【0121】
図14において、ステップS481で、駆動制御部270により、図3のバルブ選択のためのパラメータn(nは1または2)の値に従って、n=1の場合にはバルブV1とV6とが、n=2の場合にはバルブV2とV6とが開放される。ステップS482で、駆動制御部270により、吸引ポンプを選択するためのパラメータmに値(n+2)が設定される。nは1または2であるので、mは3または4である。
【0122】
ステップS483で、パラメータn=1の場合、駆動制御部270により、バルブV1に接続された吸引ポンプP3が駆動されて、下流流路141a内の空気153が外部に吸引され、吸引された空気153に引かれて、液体定量部131内に保持された液体151と、第2の液体保持部161a内に保持された第2の液体155とが混合部163aに流入する。
【0123】
パラメータn=2の場合も同様に、駆動制御部270により、バルブV2に接続された吸引ポンプP4が駆動されて、下流流路141b内の空気153が外部に吸引され、吸引された空気153に引かれて、液体定量部131内に保持された液体151と、第2の液体保持部161b内に保持された第2の液体157とが混合部163bに流入する。
【0124】
ステップS185で、駆動制御部270により、吸引ポンプPm(mは3または4)がステップS483で最初に駆動開始されてから、送液終了時間である所定時間T2が経過したか否かが確認される。所定時間T2が経過していない場合(ステップS185;No)、ステップS483に戻って上述した動作が繰り返される。
【0125】
所定時間T2が経過した場合(ステップS185;Yes)、ステップS487で、駆動制御部270により、吸引ポンプPm(mは3または4)が停止され、ステップS489で、駆動制御部270により、ステップS481で開放されたバルブVn(nは1または2)およびV6が閉鎖され、メインルーチンに戻る。
【0126】
第4の実施の形態では、吸引ポンプP3、P4およびP5と各流路との間にバルブV1、V2およびV3を設けてあるが、これは必須ではなく、各吸引ポンプがある程度以上の自己保持力を有していれば、バルブV1、V2およびV3を省くことも可能である。
【0127】
図15は、図12の第4の実施の形態の更なる改良案を示す模式図である。図12の例では、下流流路141aおよび141bと排気流路137のそれぞれに吸引ポンプを設けている。この場合、下流流路の数が増加すると、その分だけ吸引ポンプの数も増加し、検査装置1の大型化、高価格化、消費電力の増大等の課題が発生する。そこで、図15において、改良案は、吸引ポンプを1台に共通化し、バルブV1、V2およびV3の切替によって吸引する流路を切り替えるようにしている。これによって、下流流路の数に関わらず、吸引ポンプの数を削減できる。
【0128】
上述したように、第4の実施の形態によれば、バルブV5を開放することで第1の流体導入路111を外部に開放した上で、液体定量部131内の空気153を、バルブV3を介して外部に吸引することで、液体貯留部113に貯留された液体151の一部を液体定量部131に送液する。その後に、バルブV6を開放することで第2の流体導入路121を外部に開放した上で、下流流路141aまたは141b内の空気153をバルブV1またはV2を介して外部に吸引することで、定量された液体151を下流流路141aまたは141bに送液する。
【0129】
これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【0130】
上述した各実施の形態においては、液体貯留部113および液体定量部131の上流側から空気153あるいは駆動液216を注入することで送液する方法(第1乃至第3の実施の形態)と、液体定量部131の下流側から吸引することで送液する方法(第4の実施の形態)とを例示したが、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0131】
例えば、液体定量部131の下流側から吸引することで液体貯留部113から液体定量部131に送液し、液体定量部131の上流側から空気153あるいは駆動液216を注入することで液体定量部131から下流流路141aあるいは141bに送液する等の方法である。
【0132】
また、下流流路への送液は、上述した各実施の形態のように、下流流路141a、下流流路141bと順次送液されるに限らず、ランダムな順序でもよいし、同一の下流流路に繰り返し送液してもよい。また、一旦別の下流流路に送液した後に、再び元の下流流路に送液してもよい。
【0133】
以上に述べたように、本発明によれば、液体貯留部に貯留された液体を液体定量部に送液して定量し保持し、送液先の下流流路を外部に開放した状態で、液体定量部に保持された液体を空気で分断して送液する。これによって、1箇所にまとまって存在する液体を、所定の流路に所定のタイミングで所定の速度で、所定の量だけ定量して配分して送液でき、流路の配置の自由度も高いマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を提供することができる。
【0134】
なお、本発明に係るマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの定量送液方法および検査装置を構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明における検査装置の1例を示す模式図である。
【図2】マイクロ検査チップの第1の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図3】第1の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すメインルーチンのフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図6】液体定量工程および液体送液工程での流路の状態を示す模式図である。
【図7】第1の実施の形態の他の例を示す模式図である。
【図8】マイクロ検査チップの第2の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図9】第2の実施の形態での「液体定量サブルーチン」のフローチャートである。
【図10】マイクロ検査チップの第3の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図11】第3の実施の形態の更なる改良案を示す模式図である。
【図12】マイクロ検査チップの第4の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図13】第4の実施の形態での「液体定量サブルーチン」のフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態での「液体送液サブルーチン」のフローチャートである。
【図15】第4の実施の形態の更なる改良案を示す模式図である。
【符号の説明】
【0136】
1 検査装置
100 マイクロ検査チップ
101 流路基板
103 天板
111 第1の流体導入路
113 液体貯留部
113i 液体注入口
113s 封止部材
115 接続流路
117 合流点
121 第2の流体導入路
131 液体定量部
131a 撥水バルブ
133 分岐部
135a、135b 分岐流路
137 排気流路
141a、141b 下流流路
151 液体
151a 液体の先頭部、メニスカス
153 空気
155、157 第2の液体
156 (液体と第2の液体との)混合液
161a、161b 第2の液体保持部
163a、163b 混合流路
165a、165b 反応検出部
171、173 空気室
175 吸気流路
210 マイクロポンプユニット
211 マイクロポンプ
213 チップ接続部
215 駆動液タンク
216 駆動液
217 駆動液供給部
230 加熱冷却ユニット
231 冷却部
233 加熱部
250 検出部
251 光源
253 受光素子
255 検出領域
260 メニスカス検出部
260a (メニスカス検出部の)検出点
270 駆動制御部
280 バルブ
V1、V2、V3、V4、V5、V6 バルブ、またはバルブ連通口
P1、P2 ポンプ連通口
P3、P4、P5 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された前記液体を定量して保持する液体定量部と、
前記液体貯留部と前記液体定量部とを連通させる接続流路と、
前記液体貯留部に外部から流体を導入する第1の流体導入路と、
前記接続流路に連通され、前記接続流路に流体を導入する第2の流体導入路と、
前記液体定量部に連通された分岐部と、
前記分岐部に連通された複数の分岐流路と、
複数の前記分岐流路に連通された複数の下流流路と、
複数の前記下流流路に連通され、複数の前記下流流路を外部に開放または閉鎖する複数の下流流路開閉手段とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップ。
【請求項2】
前記分岐部に連通された排気流路と、
前記排気流路に連通された排気流路開閉手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項3】
前記第1の流体導入路および前記第2の流体導入路の少なくとも一方は、空気貯留部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項4】
前記第2の流体導入路に連通された吸気流路と、
前記吸気流路に連通された吸気流路開閉手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項5】
前記第1の流体導入路に連通された第1の流体導入路開閉手段と、
前記第2の流体導入路に連通された第2の流体導入路開閉手段とを備えたことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項6】
複数の前記下流流路の少なくとも1つには、予め第2の液体が収容されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項7】
前記液体定量部は、撥水バルブを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項8】
請求項1乃至4または6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法であって、
前記液体貯留部に前記液体を貯留する液体貯留工程と、
前記第1の流体導入路に前記流体を導入することで、前記液体貯留部に貯留された前記液体を前記液体定量部に送液して定量し保持する液体定量工程と、
複数の前記下流流路開閉手段の何れか1つを選択して開放し、前記第2の流体導入路から前記接続流路に空気を導入することで、前記液体定量部に保持された前記液体を、選択された前記下流流路開閉手段に連通した前記下流流路に送液する液体送液工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの定量送液方法。
【請求項9】
前記液体定量工程は、前記排気流路開閉手段を開放することにより、前記分岐部の空気を外部に放出することを特徴とする請求項8に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【請求項10】
請求項5および6に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法であって、
前記液体貯留部に前記液体を貯留する液体貯留工程と、
前記第1の流体導入路開閉手段と前記排気流路開閉手段とを開放し、前記排気流路の内部の空気を外部に排気することにより、前記液体貯留部に貯留された前記液体を前記液体定量部に送液して定量し保持する液体定量工程と、
前記第2の流体導入路開閉手段と複数の前記下流流路開閉手段の何れか1つとを開放し、開放された前記下流流路開閉手段が連通する前記下流流路の内部の空気を外部に排気することにより、前記液体定量部に保持された前記液体を前記下流流路に送液する液体送液工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの定量送液方法。
【請求項11】
前記液体定量工程および前記液体送液工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【請求項12】
前記吸気流路開閉手段を開放することにより、前記吸気流路を介して前記第2の流体導入路に空気を吸気する吸気行程を備えたことを特徴とする請求項11に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法。
【請求項13】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの前記液体定量部の近傍に、前記液体定量部に送液された前記液体の先頭部を検出するメニスカス検出部を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項14】
請求項9乃至13の何れか1項に記載のマイクロ検査チップの定量送液方法を用いて、前記液体の送液を制御する駆動制御部を備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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