説明

マイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置

【課題】加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供すること。
【解決手段】液体を送液する送液流路、あるいは液体を液体貯留部に注入する液体注入口に、液体よりも粘度の高い高粘度流体を注入することで、送液流路あるいは液体注入口の流路抵抗値を増大させることができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置に関し、特に、遺伝子増幅反応、抗原抗体反応などによる生体物質の検査・分析、その他の化学物質の検査・分析、有機合成等による目的化合物の化学合成などに用いられるマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサーなど)を微細化して1チップ上に集積化した分析用チップ(以下、マイクロ検査チップと言う)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に、遺伝子検査に見られるように煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化に優れたマイクロ検査チップは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とするので、その恩恵は多大と言える。
【0004】
上記のようなマイクロ検査チップでは、検査に用いられる検体や試薬を、必要に応じて正確に分割し、定量し、必要なタイミングで必要な場所に送液するとともに、不要なタイミングで検体や試薬が流路に流出したり、逆流したり、あるいは外部に漏れ出たりしないように、検体や試薬の移動を抑制するバルブ機能が重要である。不用意に検体や試薬が移動すると、検体や試薬の定量性が低くなり、反応およびその検出結果に多大の影響が生ずるからである。
【0005】
そこで、特許文献2には、加熱制御によって固相と液相とに変化する物質を流路の近傍の枝道に固相状態で待機させ、バルブとして機能させる場合には、物質を加熱溶融して液体としてから流路に送液し、送液した先で冷却することで固相状態に戻してバルブとする方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】米国特許第6679279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で提案された方法では、物質を固相と液相とに相変化させるために、マイクロ検査チップを局所的に加熱、冷却する必要があり、検査装置の構造や制御が複雑となってコスト高となる。また、加熱溶融のための熱がマイクロ検査チップ内の検体や試薬に伝わることで、検体や試薬あるいはその混合物の変質や反応の過剰な促進等が発生し、反応結果に悪影響を及ぼす、といった不具合が生ずる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0009】
1.液体を送液する送液流路と、
前記送液流路の下流側に連通され、前記送液流路から送液された前記液体を定量して保持する液体定量部と、
一端が前記液体定量部の下流側に連通された下流流路とを備えたマイクロ検査チップにおいて、
前記送液流路に連通された高粘度流体貯留部を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記液体よりも粘度が高く、前記送液流路に注入されることで前記送液流路を閉じるバルブの機能を果たす高粘度流体を貯留することを特徴とするマイクロ検査チップ。
【0010】
2.前記送液流路は、複数の流路に分岐する分岐部を有し、
前記高粘度流体は、前記分岐部に注入されることを特徴とする前記1に記載のマイクロ検査チップ。
【0011】
3.前記送液流路は、前記分岐部の上流側に、前記液体を貯留する液体貯留部を有し、
前記高粘度流体貯留部は前記液体貯留部の上流側に連通され、
前記高粘度流体は、前記液体貯留部を介して前記分岐部に注入されることを特徴とする前記2に記載のマイクロ検査チップ。
【0012】
4.前記送液流路の前記高粘度流体が注入される部分の上流側および下流側の一方または両方に、流路抵抗値の高い高抵抗流路を備えたことを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0013】
5.前記マイクロ検査チップの表面に開口し、外部から駆動液を注入または吸引する連通口を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記連通口と連通され、
前記高粘度流体は、前記連通口から注入または吸引される前記駆動液の圧力によって、前記送液流路に注入されることを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0014】
6.液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に外部から前記液体を注入する液体注入口とを備えたマイクロ検査チップにおいて、
前記液体注入口に連通された高粘度流体貯留部を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記液体よりも粘度が高く、前記液体注入口に注入されることで、前記液体注入口を閉じるバルブの機能を果たす高粘度流体を貯留することを特徴とするマイクロ検査チップ。
【0015】
7.前記液体注入口を封止する封止部材を備えたことを特徴とする前記6に記載のマイクロ検査チップ。
【0016】
8.前記封止部材に、前記液体注入口と前記マイクロ検査チップの外部とを連通させる微細な空気抜き孔が形成されていることを特徴とする前記7に記載のマイクロ検査チップ。
【0017】
9.前記マイクロ検査チップの表面に、前記液体注入口と前記マイクロ検査チップの外部とを連通させる微細な空気抜き孔が形成されていることを特徴とする前記7に記載のマイクロ検査チップ。
【0018】
10.前記マイクロ検査チップの表面に開口し、外部から駆動液を注入または吸引する連通口を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記連通口と連通され、
前記高粘度流体は、前記連通口から注入または吸引される前記駆動液の圧力によって、前記液体注入口に注入されることを特徴とする前記6乃至9の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0019】
11.前記高粘度流体貯留部の少なくとも一部は可撓性の膜で形成されており、前記可撓性の膜に外部から押圧力を印加することで、前記高粘度流体を注入することを特徴とする前記1乃至4または6乃至9の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【0020】
12.前記7に記載のマイクロ検査チップの液体逆流防止方法であって、
前記液体を液体注入口から前記液体貯留部に注入する液体注入工程と、
前記高粘度流体を前記液体注入口の内部に注入する高粘度流体注入工程と、
前記封止部材によって前記液体注入口を封止する封止工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの液体逆流防止方法。
【0021】
13.前記8または9に記載のマイクロ検査チップの液体逆流防止方法であって、
前記液体を液体注入口から前記液体貯留部に注入する液体注入工程と、
前記封止部材によって前記液体注入口を封止する封止工程と、
前記高粘度流体を前記液体注入口の内部に注入する高粘度流体注入工程とを備え、
前記高粘度流体注入工程において、前記高粘度流体を前記液体注入口に注入することで、前記微細な空気抜き孔を介して前記液体注入口の内部に残留する空気を前記マイクロ検査チップの外部に排出することを特徴とするマイクロ検査チップの液体逆流防止方法。
【0022】
14.前記1乃至10の何れか1項に記載のマイクロ検査チップと、
前記高粘度流体を注入するための駆動液を前記マイクロ検査チップに注入または吸引するマイクロポンプとを備えたことを特徴とする検査装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液体を送液する送液流路、あるいは液体を液体貯留部に注入する液体注入口に、液体よりも粘度の高い高粘度流体を注入することで、送液流路あるいは液体注入口の流路抵抗値を増大させることができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0025】
まず、本発明における検査装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明における検査装置の1例を示す模式図である。
【0026】
図1において、検査装置1は、マイクロ検査チップ100、マイクロポンプユニット210、加熱冷却ユニット230、検出部250および駆動制御部270等で構成される。
【0027】
マイクロ検査チップ100は、一般に分析チップ、マイクロリアクタチップなどとも称されるものと同等であり、例えば、樹脂、ガラス、シリコン、セラミックスなどを材料とし、その上に、微細加工技術により、幅および高さが数μm〜数百μmのレベルの微細な流路を形成したものである。マイクロ検査チップ100のサイズおよび形状は、通常、縦横が数十mm、厚さが数mm程度の板状である。
【0028】
ここでは、マイクロ検査チップ100は、例えばポリプロピレン等の撥水性の樹脂材料で形成されており、試薬や検体等の液体を流すための溝状の流路が表面に形成された流路基板101と、流路基板101の流路が形成された面に接着され、流路基板101の溝状の流路の蓋として機能する天板103とで構成されているとする。また、天板103には、マイクロポンプユニット210とマイクロ検査チップ100との連通口等が設けられる。
【0029】
マイクロポンプユニット210は、マイクロ検査チップ100内の送液を行うためのポンプユニットで、マイクロポンプ211、チップ接続部213、駆動液タンク215および駆動液供給部217等で構成される。マイクロポンプユニット210は、1つあるいは複数のマイクロポンプ211を備えている。マイクロポンプ211は、マイクロ検査チップ100内に駆動液216を注入あるいは吸引することで、マイクロ検査チップ100内の送液を行う。マイクロポンプについては図23で詳述する。チップ接続部213は、マイクロポンプ211とマイクロ検査チップ100とを接続する。
【0030】
駆動液供給部217は、駆動液タンク215からマイクロポンプ211に駆動液216を供給する。駆動液タンク215は、駆動液216の補充のために駆動液供給部217から取り外して交換可能である。マイクロポンプ211上には1個または複数個のポンプが形成されており、複数個の場合は、各々独立にあるいは連動して駆動可能である。
【0031】
マイクロ検査チップ100とマイクロポンプ211とはチップ接続部213で接続されて連通され、マイクロポンプ211が駆動されてマイクロポンプ211からチップ接続部213を介してマイクロ検査チップ100に注入あるいは吸引される駆動液216によって、あるいは駆動液216に押された空気等の気体によって、マイクロ検査チップ100内の複数の収容部に収容されている各種試薬や検体が、マイクロ検査チップ100内で送液される。
【0032】
加熱冷却ユニット230は、冷却部231および加熱部233等で構成され、マイクロ検査チップ100内の反応の促進および抑制のために、検体、試薬およびその混合液等の加熱および冷却を行う。冷却部231はペルチェ素子等で構成される。加熱部233は、ヒータ等で構成される。もちろん、加熱部233もペルチェ素子で構成してもよい。
【0033】
検出部250は、発光ダイオード(LED)やレーザ等の光源251と、フォトダイオード(PD)等の受光素子253等で構成され、マイクロ検査チップ100内の反応によって得られる生成液に含まれる標的物質を、マイクロ検査チップ100上の検出領域255の位置で光学的に検出する。
【0034】
駆動制御部270は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成され、検査装置1内の各部の駆動、制御、検出等を行う。
【0035】
(第1の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第1の実施の形態について、図2を用いて説明する。図2は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第1の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0036】
図2において、マイクロ検査チップ100の流路基板101の表面には、分割用空気流路141、液体貯留部113、液体注入口113i、第1の流路111a、第2の流路111bおよび高粘度流体貯留部161が形成されている。ここでは、液体貯留部113に貯留された液体が、第1の流路111aと第2の流路111bとに2分割され、定量され、別個に送液される例を示すが、これに限るわけではなく、3分割以上の分割でも有効である。
【0037】
分割用空気流路141と液体貯留部113とは、連結流路145を介して連通されている。図3に後述するように、液体貯留部113には、液体注入口113iから液体151が注入される。図3で後述するように、液体注入口113iは、液体151の注入後、例えば粘着テープ等の封止部材113sで封止される。
【0038】
第1の流路111aは、第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第1の下流流路131a、第1の定量送液用空気流路143a等で構成されている。第1の分岐流路119aは、その一部に例えば流路断面積を狭くすることで流路抵抗を高く設定した第1の高抵抗流路117aを有している。第1の液体定量部125aと第1の定量送液用空気流路143aとは、撥水バルブ123aで連通されている。
【0039】
また、第1の液体定量部125aと第1の下流流路131aとは、撥水バルブ127aで連通されている。第1の分岐流路119aと第1の液体定量部125aとは、撥水バルブ123aの位置で、第1の細流路121aを介して連通されている。撥水バルブについては、図24で詳述する。
【0040】
第2の流路111bの構成も同様で、上述した第1の流路111aの構成の「第1」を「第2」に、サフィックス「a」を「b」に読み替えればよい。第1の分岐流路119aと第2の分岐流路119bとは、分岐部115で液体貯留部113と連通されている。
【0041】
第1の実施の形態では、液体を分割して異なる容積に定量するために、第1の液体定量部125aと第2の液体定量部125bとは、その流路長を変えることで異なる容積を有するものとするが、もちろん、同じ容積に定量するのであれば同じ容積であってよい。また、液体貯留部113は、少なくとも第1の液体定量部125aの容積と第2の液体定量部125bの容積との和以上の容積を有することが必要である。
【0042】
分割用空気流路141、第1の定量送液用空気流路143aおよび第2の定量送液用空気流路143bの各々の上流端には、図1に示したマイクロポンプ211との連通口P1、P2およびP3が設けられている。マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入されると、連通口P1、P2およびP3は、マイクロポンプ211に連通され、必要に応じて、マイクロポンプ211から駆動液216が注入される。液体貯留部113への液体151の注入前には、各流路は空気153で満たされている。
【0043】
ここに、液体貯留部113、分岐部115、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bは、本発明における送液流路として機能する。
【0044】
さらに、分岐部115には、高粘度流体注入路163を介して、高粘度流体貯留部161が連通されている。高粘度流体貯留部161には、分岐部115に注入されることで、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値を増大させる高粘度流体165が予め充填されている。
【0045】
高粘度流体165は、例えば水とエチレングリコールとの混合液のような粘度の高い流体であり、高粘度流体165の分岐部115への注入は、高粘度流体貯留部161の上流に設けられたマイクロポンプ211との連通口P4から注入される駆動液216によって行われる。
【0046】
あるいは、図22で後述するように、マイクロポンプ211との連通口P4を設けずに、高粘度流体貯留部161を構成する壁の一部を可撓性の膜とし、可撓性の膜に外部から押圧力を加えることで、高粘度流体165を分岐部115に注入してもよい。
【0047】
上述した高抵抗流路117aおよび117bの流路抵抗値は、後述する液体定量部から下流流路への送液時に、液体151の逆流を防止するのに十分な抵抗として、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bの流路抵抗値の10倍以上であることが望ましい。
【0048】
ここに、流路抵抗値Rは、流体が流路を通って流れる時の圧力損失の係数に相当する。流路を単位時間に流れる流体の体積つまり流量をQとし、流体が流路を流れることによる圧力損失をΔPとすると、流路抵抗値R(N・s/m)は次の(1)式で与えられる。
【0049】
R=ΔP/Q ・・・(1)
特に、第1の実施の形態のように細くて長い流路であって、流路内で層流が支配的である場合には、流路抵抗値Rは次の(2)式で求めることもできる。
【0050】
R=∫{32×η/(S×φ)}dL ・・・(2)
ここで、ηは粘度、Sは流路断面積、φは等価直径、Lは流路長さである。
【0051】
なお、等価直径φは、幅がa、高さがbの長方形断面の場合には、
φ=(a×b)/{(a+b)/2} ・・・(3)
である。
【0052】
続いて、第1の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を、図3乃至図6を用いて説明する。図3は、第1の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を示すフローチャートであり、図4は後述する分割送液工程が完了した時点での流路の状態を、図5は、後述する高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を、図6は後述する定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【0053】
図3において、ステップS101で、ピペット等を用いて、試薬や検体等の液体151が液体注入口113iから液体貯留部113内に注入される(液体注入工程)。液体注入完了後、ステップS111で、液体注入口113iが封止部材113sで封止される(封止工程)。ここまでが、マイクロ検査チップ100単体で行われるステップである。
【0054】
次に、ステップS121で、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入され、連通口P1、P2、P3およびP4がマイクロポンプ211に連通される(チップ挿入工程)。ステップS131で、マイクロポンプ211から連通口P1を介して駆動液216が分割用空気流路141に注入される。駆動液216に押された分割用空気流路141内の空気153の圧力によって、液体貯留部113内に貯留された液体151が分岐部115側に押し出される。
【0055】
この時の駆動液216の注入圧力は、駆動液216に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ123a、123b、127aおよび127bを通過できない圧力とする。
【0056】
分岐部115側に押し出された液体151は、2分割されて、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bを介して第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに送液される(分割送液工程)。
【0057】
図4に、分割送液工程が完了した時点での流路の状態を示す。連通口P1から注入された駆動液216によって分割用空気流路141内の空気153が押されて液体貯留部113に流入し、液体貯留部113に流入した空気153に押された液体貯留部113内の液体151が、分岐部115、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125b内に満充填されている。
【0058】
この時の液体貯留部113内の空気153の圧力では、液体151は撥水バルブ123a、123b、127aおよび127bを通過できないので、液体151が第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125b内に満充填されると、送液はその状態で停止される。液体151が満充填された状態で、マイクロポンプ211からの駆動液216の注入が停止される。
【0059】
図3に戻って、ステップS141で、マイクロポンプ211から、連通口P4を介して、駆動液216が高粘度流体貯留部161に注入され、駆動液216に押された空気153の圧力により、高粘度流体165が高粘度流体注入路163を介して分岐部115に注入される(高粘度流体注入工程)。この時の連通口P4を介したマイクロポンプ211の送液力は、液体151よりも粘度の高い高粘度流体165を分岐部115に注入できるだけの送液力が必要である。
【0060】
図5に、高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を示す。連通口P4を介して注入された駆動液216に押された空気153に押された高粘度流体165が分岐部115に注入されることで、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値を増大させることができる。
【0061】
これによって、例えば第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第2の分岐流路119bあるいは第2の液体定量部125b内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0062】
図3に戻って、ステップS151で、マイクロポンプ211から、連通口P2を介して、駆動液216が第1の定量送液用空気流路143aに注入される。この時の駆動液216の注入圧力は、駆動液216に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ127aを通過できる圧力とする。
【0063】
駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力P2Aによって、第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液される(定量送液工程)。
【0064】
この時、第1の分岐流路119a内の液体151は、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153によって分岐部151側に押されるので、第1の液体定量部125a内に流出することはない。従って、第1の下流流路131aに送液される液体151の容積は第1の液体定量部125aの容積に等しく、正確に定量されて送液されることになる。
【0065】
また、上述したように、高粘度流体165によって、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値が増大している。従って、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力で第1の液体定量部125a内の液体151が第1の下流流路131aに送液されることによる、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の状態への影響は非常に軽微であり、液体151の不用意な移動を防止することができる。
【0066】
図6に定量送液工程の途中の流路の状態を示す。第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153に押されて、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液されている。この時、分岐部115に注入された高粘度流体165による大きな流路抵抗値によって、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の不用意な移動が防止されている。
【0067】
第2の液体定量部125b内に満充填された液体151を第2の下流流路131bに送液する場合も同様であり、検体や試薬等の液体151を流路毎に個別に正確に分割、定量でき、さらに、分割、定量された各液体151を個別に独立して下流に送液することができる。
【0068】
第1の実施の形態では、液体151の送液に空気153の圧力を用いた。空気153の圧力を与える手段としては、空気を直接送り込むポンプを用いてもよいが、ここでは、図23で詳述する駆動液216を注入するマイクロポンプ211を用い、駆動液216と液体151とが混じり合わないように、間に空気153を挟む構成にした。
【0069】
これによって、駆動液216からの圧力を液体151に伝達する空気153の量を一定の微少量に抑えることができるので、圧縮された空気153のダンパー成分による送液速度のバラツキや時間遅延等の送液の不安定要素を無くして、安定した送液を行うことができる。
【0070】
さらに、第1の実施の形態では、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bの一部を、例えば流路断面積を狭くすることで流路抵抗を高く設定した第1の高抵抗流路117aおよび第2の高抵抗流路117bとした。これによって、高粘度流体165が第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bに流入することを抑制することができる。
【0071】
なお、第1の実施の形態では、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bの両端には、撥水バルブ123a、127aおよび123b、127bを設け、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに液体151を満充填することで正確な定量を行うとしたが、撥水バルブは必須ではなく、マイクロポンプ211による液体貯留部113から第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bへの送液の精度が必要十分であれば、撥水バルブを必ずしも設ける必要はない。
【0072】
また、第1の実施の形態では、分割用空気流路141、第1の定量送液用空気流路143aおよび第2の定量送液用空気流路143bを設けたが、これは必須ではなく、液体151と駆動液216との間に空気を介在させることができれば、上記の各空気流路はなくてもよい。
【0073】
上述したように、第1の実施の形態によれば、液体貯留部113に貯留された液体151を、分岐部115と第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bとを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに分割、送液し、満充填する。
【0074】
次に、分岐部115に高粘度流体165を注入して、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値を増大させる。その後に、第1の液体定量部125aあるいは第2の液体定量部125bに満充填された液体151を、第1の下流流路131aあるいは第2の下流流路131bに送液する。
【0075】
これによって、例えば第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第2の分岐流路119bあるいは第2の液体定量部125b内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0076】
(第2の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第2の実施の形態について、図7を用いて説明する。図7は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第2の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0077】
図7において、第2の実施の形態では、図2の第1の実施の形態におけるマイクロポンプ211との連通口P1と分割用空気流路141との代わりに、大気開放穴A1と空気流路171とが設けられている。同様に、マイクロポンプ211との連通口P2およびP3と第1の定量送液用空気流路143aおよび第2の定量送液用空気流路143bとの代わりに、大気開放穴A2およびA3と空気流路173aおよび173bとが設けられている。
【0078】
さらに、空気流路173aおよび173bには、開閉バルブBaおよびBbが設けられている。開閉バルブBaおよびBbは、マイクロ検査チップ100上に組み込まれていてもよいし、検査装置1内に設けられていて、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入されることで空気流路173aおよび173bに接続されてもよい。
【0079】
また、第1の下流流路131aおよび第2の下流流路131bの下流には、連通口P5およびP6を介してマイクロポンプ211と連通される分割送液用流路175aおよび175bが設けられている。分割送液用流路175aおよび175bの内部は、予め駆動液216が充填されている。あるいは、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入された後に、分割送液用流路175aおよび175bの内部に駆動液216が充填されることでもよい。その他の点は、第1の実施の形態と同じであるので説明は省略する。
【0080】
続いて、第2の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を、図8および図9を用いて説明する。図8は、第2の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を示すフローチャートであり、図9は後述する高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を示す模式図である。
【0081】
図8において、ステップS101とステップS111は、第1の実施の形態と同じであるので説明は省略する。ステップS221で、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入され、連通口P4、P5およびP6がマイクロポンプ211に連通される。ステップS223で、開閉バルブBaおよびBbが閉じられる。
【0082】
ステップS231で、マイクロポンプ211によって、連通口P5およびP6を介して、駆動液216が分割送液用流路175aおよび175bから吸引される。開閉バルブBaおよびBbは閉じられているので、大気開放穴A2およびA3から、空気流路173aおよび173bを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bへの空気153の流入はない。
【0083】
マイクロポンプ211に吸引された駆動液216に引かれて、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119b、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125b内の空気153が下流流路131aおよび131b内に流入する。この空気153の移動に引かれて、液体貯留部113内に貯留された液体151が分岐部115に流入する。それによって、空気153が大気開放穴A1から空気流路171を介して液体貯留部113内に流入する。
【0084】
さらに駆動液216が吸引されることで、液体貯留部113内に貯留された液体151が、分岐部115、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに流入し、満充填される(分割送液工程)。
【0085】
この時の駆動液216の吸引圧力は、駆動液216に引かれた液体151が、撥水バルブ127aおよび127bを通過できない圧力とする。従って、液体151が第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125b内に満充填されると、送液はその状態で停止される。液体151が満充填された状態で、マイクロポンプ211による駆動液216の吸引が停止される。
【0086】
ステップS141(高粘度流体注入工程)は、第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0087】
図9に、高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を示す。液体151が、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに満充填されている。また、高粘度流体165が分岐部115に注入されることで、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値が増大している。これによって、液体151の不用意な移動を防止することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0088】
図8に戻って、ステップS251で、開閉バルブBaが開かれる。ステップS253で、マイクロポンプ211によって、連通口P5を介して、駆動液216がさらに吸引される。この時の駆動液216の吸引圧力は、駆動液216に引かれた液体151が、撥水バルブ127aを通過できる圧力とする。これによって、第1の液体定量部125a内の液体151が撥水バルブ127aを越えて第1の下流流路131aに送液される(定量送液工程)。一方、第1の液体定量部125aには、大気開放穴A2から空気流路173aを介して空気153が流入する。
【0089】
この時、第1の液体定量部125a内の液体151と第1の分岐流路119a内の液体151とは、空気流路173aを介して第1の液体定量部125a内に流入する空気153によって分断されるので、第1の液体定量部125a内に流出することはない。従って、第1の下流流路131aに送液される液体151の容積は第1の液体定量部125aの容積に等しく、正確に定量されて送液されることになる。
【0090】
また、高粘度流体165によって、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値が増大している。従って、分割送液用流路175a内の駆動液216の吸引によって第1の液体定量部125a内の液体151が第1の下流流路131aに送液されることによる、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の状態の影響は、非常に軽微であり、液体151の不用意な移動が防止できる。
【0091】
なお、第2の実施の形態では、分割送液用流路175aおよび175bに予め充填された駆動液216を吸引することで液体151を分割、定量、送液するとしたが、駆動液を予め充填することは必須ではなく、第1の下流流路131aおよび第2の下流流路131b内の空気をマイクロポンプで直接吸引することでもよい。
【0092】
上述したように、第2の実施の形態によれば、第1の下流流路131aおよび第2の下流流路131bの下流側から空気153を吸引することで、液体貯留部113に貯留された液体151を、分岐部115と第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bとを介して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに分割、送液し、満充填する。
【0093】
次に、分岐部115に高粘度流体165を注入して、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値を増大させることで、液体151の不用意な移動を防止する。その後に、下流側から空気153を吸引することで、第1の液体定量部125aあるいは第2の液体定量部125bに満充填された液体151を、第1の下流流路131aあるいは第2の下流流路131bに送液する。
【0094】
これによって、例えば第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第2の分岐流路119bあるいは第2の液体定量部125b内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0095】
(第3の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第3の実施の形態について、図10を用いて説明する。図10は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第3の実施の形態の構成を示す模式図である。
【0096】
図10において、第3の実施の形態は、図2の第1の実施の形態に対して高粘度流体貯留部161の位置が異なっている。高粘度流体貯留部161は分割用空気流路141と液体貯留部113との間に配置されており、分割用空気流路141とは連結流路145を介して連通され、液体貯留部113とは高粘度流体注入路163を介して連通されている。高粘度流体貯留部161内には、高粘度流体165が予め充填されている。その他は第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0097】
続いて、第3の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を、図11および図12を用いて説明する。図11は、第3の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を示すフローチャートであり、図12は後述する定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【0098】
図11において、ステップS101からステップS121までは第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。ステップS331で、マイクロポンプ211から連通口P1を介して駆動液216が分割用空気流路141に注入される。駆動液216に押された分割用空気流路141内の空気153の圧力によって、高粘度流体貯留部161に充填されている高粘度流体165が、高粘度流体注入路163を介して液体貯留部113に流入する。液体貯留部113に流入した高粘度流体165に押された高粘度流体注入路163内の空気153の圧力によって、液体貯留部113内に貯留された液体151が分岐部115側に押し出される。
【0099】
この時の駆動液216の注入圧力は、駆動液216に押された分割用空気流路141内の空気153の圧力によって液体151よりも粘度の高い高粘度流体165を送液でき、かつ、高粘度流体165に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ123a、123b、127aおよび127bを通過できない圧力とする。
【0100】
分岐部115側に押し出された液体151は、2分割されて、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bを介して第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに送液され、満充填される(分割送液工程)。高粘度流体165も、液体151の後を追うようにして液体貯留部113から分岐部115に流入する。
【0101】
高粘度流体165が第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bの高抵抗流路117aおよび117bに達すると、急激に流路抵抗値が高くなるために、高粘度流体165の送液速度が、ほぼ停止状態とみなされるほど急激に減速される(高粘度流体注入工程)。これによって、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値が増大させることができ、液体151の不用意な移動を防止することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0102】
ステップS151で、マイクロポンプ211から、連通口P2を介して、駆動液216が第1の定量送液用空気流路143aに注入される。この時の駆動液216の注入圧力P2Lは、駆動液216に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ127aを通過できる圧力とする。
【0103】
駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力P2Aによって、第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液される(定量送液工程)。
【0104】
この時、第1の分岐流路119a内の液体151は、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153によって分岐部151側に押されるので、第1の液体定量部125a内に流出することはない。従って、第1の下流流路131aに送液される液体151の容積は第1の液体定量部125aの容積に等しく、正確に定量されて送液されることになる。
【0105】
また、上述したように、高粘度流体165によって、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値が増大している。従って、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力で第1の液体定量部125a内の液体151が第1の下流流路131aに送液されることによる、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の状態の影響は、非常に軽微であり、液体151の不用意な移動を防止することができる。
【0106】
さらに、定量送液工程において、マイクロポンプ211から連通口P1を介して液体貯留部113内の駆動液216に圧力をかけ続けることで、液体貯留部113方向への液体151の逆流に対する抑止効果が、より高まる。
【0107】
また、高抵抗流路117aおよび117bの流路抵抗値を十分に高くしておけば、マイクロポンプ211によって液体貯留部113内の駆動液216に印加される圧力に多少バラツキが生じても、液体151の逆流量にはほとんど影響せず、安定した逆流防止機能が期待できる。この時の高抵抗流路117aおよび117bの流路抵抗値は、液体貯留部113およびその上流の各流路の流路抵抗値よりも十分高いことが望ましい。
【0108】
図12に、定量送液工程の途中での流路の状態を示す。第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153に押されて、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液されている。この時、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の状態への影響は非常に軽微であり、液体151の不用意な移動を防止することができる。
【0109】
第2の液体定量部125b内に満充填された液体151を第2の下流流路131bに送液する場合も同様であり、検体や試薬等の液体151を流路毎に個別に正確に分割、定量でき、さらに、分割、定量された各液体151を個別に独立して下流に送液することができる。
【0110】
上述したように、第3の実施の形態では、高粘度流体165および液体151の送液に駆動液216を注入するマイクロポンプ211を用い、駆動液216と高粘度流体165および液体151とが混じり合わないように、間に空気153を挟む構成にした。
【0111】
これによって、駆動液216からの圧力を高粘度流体165および液体151に伝達する空気153の量を一定の微少量に抑えることができるので、圧縮された空気153のダンパー成分による送液速度のバラツキや時間遅延等の送液の不安定要素を無くして、安定した送液を行うことができる。
【0112】
なお、高粘度流体165が水溶性でなければ、分割用空気流路141は必ずしも必要ではなく、高粘度流体165を駆動液216で直接送液してもよい。この場合、空気153のダンパー成分による送液速度のバラツキや時間遅延等の送液の不安定要素を排除することができ、より安定した分割、定量、送液を行うことができる。
【0113】
また、第1の実施の形態と同様に、分割用空気流路141、第1の定量送液用空気流路143aおよび第2の定量送液用空気流路143bは必須ではなく、液体151と駆動液216との間に空気を介在させることができれば、なくてもよい。
【0114】
上述したように、第3の実施の形態によれば、液体貯留部に貯留された液体を、分岐部および複数の分岐流路を介して複数の液体定量部に送液し、複数の液体定量部に満充填して保持することで分割、定量する。同時に、液体貯留部の上流側に配置された高粘度流体貯留部に予め充填された高粘度流体も送液することで、液体の分割、定量後に、分岐部に粘度の高い高粘度流体を注入して、液体貯留部および複数の分岐流路間の流路抵抗値を増大させることで、液体151の不用意な移動を防止する。その後に、複数の液体定量部に保持された液体を下流に送液する。
【0115】
これによって、例えば第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第2の分岐流路119bあるいは第2の液体定量部125b内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0116】
(第4の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第4の実施の形態について、図13を用いて説明する。図13は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第4の実施の形態の構成を示す模式図である。第4の実施の形態は、第1の実施の形態の別法の1つで、液体貯留部113に貯留された液体151を空気圧で送液するのではなく、液体151をマイクロポンプ211から直接送液するものである。
【0117】
図13において、第4の実施の形態では、第1の実施の形態の、液体貯留部113、分割用空気流路141および連結流路145の代わりに液体流路147が、第1の定量送液用空気流路143aおよび第2の定量送液用空気流路143bの代わりに、第1の駆動液流路149aおよび第2の駆動液流路149bが設けられている。ここに、液体流路147、分岐部115、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bは、本発明における送液流路として機能する。その他は第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0118】
続いて、第4の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を、図14および図15を用いて説明する。図14は、第4の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を示すフローチャートであり、図15は後述する定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【0119】
図14において、ステップS121で、図13の状態のマイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入され、連通口P1、P2、P3およびP4がマイクロポンプ211に連通される(チップ挿入工程)。
【0120】
ステップS431で、マイクロポンプ211から連通口P2およびP3を介して駆動液216が第1の駆動液流路149aおよび第2の駆動液流路149bに注入され、駆動液216が撥水バルブ123aおよび123bに達するまで充填される(駆動液充填工程)。
【0121】
ステップS433で、マイクロポンプ211内に収容された液体151が連通口P1を介して注入され、液体流路147、分岐部115、第1の分岐流路119aおよび第2の分岐流路119bを経由して、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに分割、送液され、満充填される(分割送液工程)。この時の液体151の注入圧力は、液体151が撥水バルブ123a、123b、127aおよび127bを通過できない圧力とする。
【0122】
ステップS141で、マイクロポンプ211から連通口P4を介して駆動液216が高粘度流体貯留部161に注入され、高粘度流体注入路163を介して高粘度流体165が分岐部115に注入される(高粘度流体注入工程)。
【0123】
これによって、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体流路147の間の流路抵抗値が増大しており、液体151の不用意な移動を防止することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0124】
この時の連通口P4を介したマイクロポンプ211の送液力は、液体151よりも粘度の高い高粘度流体165を分岐部115に注入できるだけの送液力が必要である。
【0125】
ステップS451で、マイクロポンプ211から連通口P2を介して駆動液216が第1の駆動液流路149aに再度注入され、駆動液216に押されて、第1の液体定量部125aに満充填された液体151が第1の下流流路に送液される(定量送液工程)。この時の駆動液216の注入圧力は、液体151が撥水バルブ127aを越えられる圧力とする。
【0126】
図15に、上述した定量送液工程の途中での各流路の状態を示す。マイクロポンプ211から連通口P1を介して注入された液体151が、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに充填され、高粘度流体165が分岐部115に注入されている。
【0127】
さらに、第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が駆動液216に押されて、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液されている。この時、分岐部115に注入された高粘度流体165により、第2の分岐流路119bおよび第2の液体定量部125b内に満充填された液体151の不用意な移動が防止されている。
【0128】
ここでは、マイクロポンプ211内に収容された液体151が連通口P1を介して注入されるとしたが、マイクロポンプ211とマイクロ検査チップ100との間に液体151を収容する液体収容部を設け、マイクロポンプ211から送出される駆動液216の圧力で、液体収容部内の液体151を、連通口P1を介して注入してもよい。
【0129】
このように、液体151を、空気153を介さずに、直接あるいは駆動液216の圧力によって送液することで、マイクロポンプ211の駆動流量と液体151の移動流量とが一致するために、より正確な送液制御が可能になる。
【0130】
ただし、駆動液216の圧力で送液する場合には、駆動液216と液体151との混入の可能性があるので、2液の境界部は下流での反応には用いないようにする、あるいは、駆動液216を液体151と混ざりにくい例えばオイル系の材料にする等の工夫をすると効果的である。
【0131】
なお、第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bの両端には、撥水バルブ123a、127aおよび123b、127bを設け、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに液体151を満充填することで正確な定量を行うとしたが、撥水バルブは必須ではなく、マイクロポンプ211による第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bへの送液の精度が必要十分であれば、撥水バルブを必ずしも設ける必要はない。特に第4の実施の形態では、空気153を介さずに液体151を直接送液するので、撥水バルブを省略できる可能性が大きい。
【0132】
上述したように、第4の実施の形態によれば、マイクロポンプ211内に収容された液体151を連通口P1から注入し、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bに分割、送液し、満充填する。
【0133】
次に、分岐部115に高粘度流体165を注入して、第1の分岐流路119a、第2の分岐流路119bおよび液体貯留部113の間の流路抵抗値を増大させることで、液体151の不用意な移動を防止する。
【0134】
その後に、第1の液体定量部125aあるいは第2の液体定量部125bに満充填された液体151を、マイクロポンプ211から注入される駆動液216で直接押して、第1の下流流路131aあるいは第2の下流流路131bに送液する。
【0135】
これによって、例えば第1の分岐流路119a、第1の液体定量部125a、第2の分岐流路119bあるいは第2の液体定量部125b内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0136】
(第5の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第5の実施の形態について、図16を用いて説明する。図16は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第5の実施の形態の構成を示す模式図である。第5の実施の形態は第1の実施の形態の変形例の1つで、液体151を分割せずに、定量して送液するものである。そのため、各部や工程の名称等は第1の実施の形態の名称をそのまま用いるが、分割や分岐はしない。
【0137】
図16において、マイクロ検査チップ100の流路基板101の表面には、分割用空気流路141、連結流路145、液体貯留部113、液体注入口113iと、図2に示した第1の実施の形態における第1の流路111aとが形成されている。
【0138】
さらに、第1の流路111aの第1の分岐流路119aには、高粘度流体注入路163を介して、高粘度流体貯留部161が連通されている。高粘度流体貯留部161には、第1の分岐流路119aに注入されることで、第1の分岐流路119aの流路抵抗値を増大させる高粘度流体165が予め充填されている。
【0139】
第1の分岐流路119aの高粘度流体貯留部161との連通部よりも上流側には、流路断面積の狭い高抵抗流路が設けられている。ここに、液体貯留部113および第1の分岐流路119aは、本発明における送液流路として機能する。第1の流路111aのその他の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0140】
続いて、第5の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を、図17および図18を用いて説明する。図17は、第5の実施の形態における液体の不用意な移動を防止する方法を示すフローチャートであり、図18は後述する定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【0141】
図17において、ステップS101で、ピペット等を用いて、試薬や検体等の液体151が液体注入口113iから液体貯留部113内に注入される(液体注入工程)。液体注入完了後、ステップS111で、液体注入口113iが封止部材113sで封止される(封止工程)。ここまでが、マイクロ検査チップ100単体で行われるステップである。
【0142】
次に、ステップS121で、マイクロ検査チップ100が検査装置1に挿入され、連通口P1、P2およびP4がマイクロポンプ211に連通される(チップ挿入工程)。ステップS131で、マイクロポンプ211から連通口P1を介して駆動液216が分割用空気流路141に注入される。駆動液216に押された分割用空気流路141内の空気153の圧力によって、液体貯留部113内に貯留された液体151が第1の分岐流路119aに押し出される。
【0143】
第1の分岐流路119aに押し出された液体151は、第1の液体定量部125aに送液される(分割送液工程)。この時、高粘度流体165の粘度が高いために高粘度流体注入路163の流路抵抗が高いので、液体151は高粘度流体注入路163には流入できない。
【0144】
この時の駆動液216の注入圧力は、駆動液216に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ123a、および127aを通過できない圧力とする。従って、液体151が第1の液体定量部125a内に満充填されると、送液はその状態で停止される。液体151が満充填された状態で、マイクロポンプ211からの駆動液216の注入が停止される。
【0145】
ステップS141で、マイクロポンプ211から、連通口P4を介して、駆動液216が高粘度流体貯留部161に注入され、駆動液216に押された空気153の圧力により、高粘度流体165が高粘度流体注入路163を介して第1の分岐流路119aに注入される(高粘度流体注入工程)。
【0146】
これによって、第1の分岐流路119aの流路抵抗値が増大し、液体151の不用意な移動を防止することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0147】
この時の連通口P4を介したマイクロポンプ211の送液力は、液体151よりも粘度の高い高粘度流体165を第1の分岐流路119aに注入できるだけの送液力が必要である。
【0148】
さらに、第1の分岐流路119aの高粘度流体貯留部161との連通部よりも上流側には、流路断面積の狭い高抵抗流路が設けられているので、第1の分岐流路119aの流路抵抗値はさらに増大し、液体151の不用意な移動を防止することができる。
【0149】
ステップS151で、マイクロポンプ211から、連通口P2を介して、駆動液216が第1の定量送液用空気流路143aに注入される。この時の駆動液216の注入圧力は、駆動液216に押された空気153の圧力によって、液体151が撥水バルブ127aを通過できる圧力とする。
【0150】
駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力によって、第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液される(定量送液工程)。
【0151】
この時、第1の分岐流路119a内の液体151は、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153によって第1の分岐流路119a側に押されるので、第1の液体定量部125a内に流出することはない。従って、第1の下流流路131aに送液される液体151の容積は第1の液体定量部125aの容積に等しく、正確に定量されて送液されることになる。
【0152】
また、上述したように、高粘度流体165と高抵抗流路117aとによって、第1の分岐流路119aの流路抵抗値が増大している。従って、第1の定量送液用空気流路143a内の空気153の圧力で第1の液体定量部125a内の液体151が第1の下流流路131aに送液されることで、第1の分岐流路119a内の液体151が液体貯留部113に逆流することはなく、液体151の不用意な移動を防止する閉バルブ機能が実現できる。
【0153】
図18に定量送液工程の途中の流路の状態を示す。液体貯留部113に貯留された液体151が、第1の液体定量部125aに満充填され、高粘度流体165が第1の分岐流路119aに注入されている。
【0154】
さらに、第1の液体定量部125a内に満充填された液体151が、駆動液216に押された第1の定量送液用空気流路143a内の空気153に押されて、撥水バルブ127aを介して第1の下流流路131aに送液されている。この時、第1の分岐流路119a内の液体151が液体貯留部113に逆流することはなく、液体151の不用意な移動は防止されている。
【0155】
上述したように、第5の実施の形態によれば、液体貯留部113に貯留された液体151を第1の液体定量部125aに送液し、満充填する。次に、第1の分岐流路119aに高粘度流体165を注入して、第1の分岐流路119aの流路抵抗値を増大させることで、液体151の不用意な移動を防止する。その後に、第1の液体定量部125aに満充填された液体151を、空気153を介してマイクロポンプ211から注入される駆動液216で押すことで、第1の下流流路131aに送液する。
【0156】
これによって、例えば第1の分岐流路119aあるいは第1の液体定量部125a内に充填された液体151が逆流する等といった液体151の不用意な移動を防止することができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0157】
(第6の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第6の実施の形態について、図19および図20を用いて説明する。図19は、本発明におけるマイクロ検査チップ100の第6の実施の形態の構成を示す模式図で、図19(a)は流路基板101上の流路形状を示す模式図、図19(b)は流路の断面を示す模式図である。ただし、図19(b)の断面は、構成を分かりやすくするためにアレンジしてあり、図19(a)の正確な断面ではない。
【0158】
第6の実施の形態では、検体や試薬等の液体を液体注入口から注入した後、マイクロ検査チップ内での送液時に液体が液体注入口の方に逆流してマイクロ検査チップの外部に漏れ出すことを防止する方法を提案する。
【0159】
図19(a)および(b)において、マイクロ検査チップ100の流路基板101上には、液体貯留部113、液体注入口113i、試薬貯留部191、合流路177、混合反応部179、高粘度流体貯留部161、高粘度流体注入路163等が形成され、天板103には、マイクロポンプ211との連通口P1、P2、P4および空気抜き孔A4等が形成されている。高粘度流体貯留部161には、高粘度流体165が予め貯留されている。
【0160】
液体貯留部113と試薬貯留部191とは合流路177で連通され、合流路177は混合反応部179に連通されている。液体注入口113iから液体貯留部113に注入された液体151と試薬貯留部191に貯留された試薬とは、マイクロポンプ211から連通口P1およびP2を介して流入する駆動液216によって送液され(送液工程)、合流路177で合流し、混合反応部179で混合されて反応する(混合反応工程)。各流路の空気153は、液体151および試薬の送液に従って、空気抜き孔A4からマイクロ検査チップ100の外部に排出される。反応結果は、図1に示した検出部250によって検出される(検出工程)。
【0161】
高粘度流体貯留部161は、高粘度流体注入路163を介して液体注入口113iに連通しており、マイクロポンプ211から連通口P4を介して流入する駆動液216によって、高粘度流体165を液体注入口113iの内部に注入することができる。
【0162】
図20は、第6の実施の形態における液体151の逆流防止方法を説明する模式図である。
【0163】
図20(a)において、ピペットPPT等を用いて、試薬や検体等の液体151が液体注入口113iから液体貯留部113内に注入される(液体注入工程)。
【0164】
図20(b)において、液体151の注入完了後、マイクロポンプ211から連通口P4を介して流入する駆動液216によって、高粘度流体165が液体注入口113iの内部に注入される(高粘度流体注入工程)。
【0165】
図20(c)において、万一、高粘度流体165に想定外の力が作用しても液体151が外部に漏れ出さないように、液体注入口113iが封止部材113sで封止される(封止工程)。以降の工程は、図19で述べた通りである。
【0166】
図20(c)において、高粘度流体165が液体注入口113iに注入されていなかった場合には、液体貯留部113内の液体151と封止部材113sとの間には液体注入口113iの容量分の空気153が残存する。このように相当量の空気153が残ると、マイクロポンプ211で液体151を送液する際に、残存する空気153が圧縮されて液体151の一部が空気153の圧縮量分だけ液体注入口113i方向に逆流してしまう。
【0167】
そのため、液体151の送液速度が一定にならず、液体151と試薬貯留部191から送液される試薬との合流路177での速度が異なってしまい、所望の混合比で安定した送液が行えなくなる。
【0168】
一方、第6の実施の形態によれば、高粘度流体165を液体注入口113iの内部に注入することで、高粘度流体165と封止部材113sとの間に残存する空気153の量を少なくすることができる。さらに、高粘度流体165によって液体注入口113iの流路抵抗が増大する。これらによって、液体151の逆流が起こりにくくなり、安定した送液に寄与することができる。また、流路に高粘度流体を注入することでバルブの役割を果たすので、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生しない。
【0169】
次に、第6の実施の形態の変形例について図21を用いて説明する。上述した第6の実施の形態では、高粘度流体165を液体注入口113iに注入した後に、液体注入口113iを封止部材113sで封止したが、この場合には、検査工程の効率化から、検査装置1内部に液体注入口113iを封止する機構が必要となる。さもなければ、検査装置内で高粘度流体165を液体注入口113iに注入した後に一旦マイクロ検査チップを検査装置外に取り出し、手動で封止部材113sを貼り付ける必要がある。
【0170】
そこで、第6の実施の形態の変形例では、液体151を液体注入口113iから液体貯留部113内に注入し(液体注入工程)、液体注入口113iを封止部材113sで封止(封止工程)した後に、高粘度流体165を液体注入口113iに注入(高粘度流体注入工程)する方法を提案する。
【0171】
この場合に問題となるのは、液体注入口113iを封止部材113sで封止した時に、液体注入口113iに残存する空気153である。空気153が残存するために、高粘度流体165を液体注入口113iに注入した時に、空気153の圧力によって液体151が下流側に移動してしまう場合がある。
【0172】
そこで、図21(a)においては、封止部材113sに微細な空気抜き孔113hを設けてある。これによって、高粘度流体165を液体注入口113iに注入した時に、液体注入口113iに残存する空気153を外部に排出することができ、液体151が下流側に移動してしまうことを防止できる。
【0173】
あるいは、図21(b)においては、液体注入口113iの側部に微細な空気抜き孔113hを設けてある。この構成でも図21(a)と同等の効果が得られる。
【0174】
なお、微細な空気抜き孔113hは、空気は通り抜けられるが、高粘度流体165は表面張力の作用で全く通り抜けられないか、または高い粘度の影響でほとんど漏れ出さないような寸法に設定されることが望ましい。
【0175】
上述したように、第6の実施の形態によれば、液体151を液体注入口113iから液体貯留部113内に注入した後に、高粘度流体165を液体注入口113iに注入することで、液体注入口113iに残存する空気153の量を少なくすることができる。さらに、高粘度流体165によって液体注入口113iの流路抵抗が増大する。
【0176】
これらによって、液体151の逆流が起こりにくくなり、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0177】
(第7の実施の形態)
次に、本発明におけるマイクロ検査チップの第7の実施の形態について、図22を用いて説明する。図22は、マイクロ検査チップの第7の実施の形態を説明するための模式図である。第7の実施の形態では、マイクロポンプ211を用いない高粘度流体165の注入方法について述べる。
【0178】
図22(a)において、マイクロ検査チップ100は、第6の実施の形態のように高粘度流体165を注入するためのマイクロポンプ211との連通口P4を備えておらず、その代わりに、高粘度流体貯留部161の少なくとも一部は可撓性の膜で形成されている。
【0179】
ここでは、高粘度流体貯留部161は、流路基板101の表面に開口部161aを有しており、開口部161aを可撓性蓋181で封止することで高粘度流体貯留部161が構成されている。もちろん、流路基板101の表面を薄い膜状に残すことで可撓性を持たせてもよい。ここに、可撓性蓋181は、本発明における可撓性の膜として機能する。
【0180】
図22(b)において、高粘度流体165を注入する際には、手指あるいは押圧棒のような部材によって、可撓性蓋181に押圧力Pを印加し、可撓性蓋181を高粘度流体貯留部161内に押し込む。この押圧力Pによって、高粘度流体注入路163を介して、高粘度流体165が液体注入口113iに注入される。例えば高粘度流体注入路163の流路断面積を狭くしておけば、一度注入された高粘度流体165が高粘度流体貯留部161に逆流することはない。
【0181】
また、ここでは図21(a)と同様に、封止部材113sに微細な空気抜き孔113hを設けてある。これによって、高粘度流体165を液体注入口113iに注入した時に、液体注入口113iに残存する空気153を外部に排出することができ、液体151が下流側に移動してしまうことを防止できる。
【0182】
第7の実施の形態では、可撓性蓋181を用いた高粘度流体165の注入方法を第6の実施の形態に適用した例を示したが、本方法は、例えば第1の実施の形態でも述べたように、第1乃至第5の実施の形態においても適用可能である。
【0183】
上述したように、第7の実施の形態によれば、高粘度流体貯留部161の少なくとも一部は可撓性の膜で形成されており、可撓性の膜に押圧力を印加することで高粘度流体165が液体注入口113iに注入される。
【0184】
注入された高粘度流体165によって液体注入口113iの流路抵抗が増大することで、液体151の逆流が起こりにくくなり、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0185】
ここで、高粘度流体165について述べる。高粘度流体165は、送液される液体151よりも粘度が高ければ、その材料、組成は選ばない。粘度に関しては、送液される液体151に対して1桁程度以上粘度が高ければ、完全な逆流阻止はできなくても、逆流量を大幅に減らせるので、十分に効果が得られる。一般に、液体は温度が下がるほど粘度が増加する。また、高分子系の液体の場合、せん断速度によって粘度が変わる場合もある。このような場合でも、使用時における分岐部115での実効的な粘度が送液される液体の粘度よりも高ければ、本発明の効果は得られる。
【0186】
次に、上述した実施の形態に用いられるマイクロポンプ211の1例について、図23を用いて説明する。マイクロポンプ211は、アクチュエータを設けた弁室の流出入孔に逆止弁を設けた逆止弁型のポンプなど各種のものが使用できるが、圧電素子を駆動源とするピエゾポンプを用いることが好適である。図23は、マイクロポンプ211の構成の1例を示す模式図で、図23(a)はピエゾポンプの1例を示した断面図、図23(b)はその上面図、図23(c)はピエゾポンプの他の例を示した断面図である。
【0187】
図23(a)および(b)において、マイクロポンプ211は、第1液室408、第1流路406、加圧室405、第2流路407および第2液室409が形成された基板402、基板402上に積層された上側基板401、上側基板401上に積層された振動板403、振動板403の加圧室405と対向する側に積層された圧電素子404と、圧電素子404を駆動するための図示しない駆動部とが設けられている。
【0188】
駆動部と圧電素子404の両面上の2つの電極とは、フレキシブルケーブル等による配線で接続されており、該配線を通じて駆動部の駆動回路により圧電素子404に駆動電圧を印加する構成となっている。第1液室408、第1流路406、加圧室405、第2流路407および第2液室409は、駆動液216で満たされる。
【0189】
1例として、基板402として、厚さ500μmの感光性ガラス基板を用い、深さ100μmに達するまでエッチングを行うことにより、第1液室408、第1流路406、加圧室405、第2流路407および第2液室409を形成している。第1流路406は幅を25μm、長さを20μmとしている。また、第2流路407は幅を25μm、長さを150μmとしている。
【0190】
ガラス基板である上側基板401を基板402上に積層することにより、第1液室408、第1流路406、第2液室409および第2流路407の上面が形成される。上側基板401の加圧室405の上面に当たる部分は、エッチングなどにより加工されて貫通している。
【0191】
上側基板401の上面には、厚さ50μmの薄板ガラスからなる振動板403が積層され、その上に、例えば厚さ50μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックス等からなる圧電素子404が積層され貼付されている。駆動部からの駆動電圧により、圧電素子404とこれに貼付された振動板403が振動し、これにより加圧室405の体積が増減する。
【0192】
第1流路406と第2流路407とは、幅および深さが同じで、長さが第1流路406よりも第2流路407の方が長くなっており、第1流路406では、差圧が大きくなると流路の出入り口およびその周辺で乱流が発生し、流路抵抗が増加する。一方、第2流路407では流路の長さが長いので差圧が大きくなっても層流になり易く、第1流路406に比べて差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が小さくなる。すなわち、差圧の大小によって第1流路406と第2流路407との液体の流れ易さの関係が変化する。これを利用して、圧電素子404に対する駆動電圧波形を制御して送液を行っている。
【0193】
例えば、圧電素子404に対する駆動電圧により、加圧室405の内方向へ素早く振動板403を変位させて、大きい差圧を与えながら加圧室405の体積を減少させ、次いで加圧室405から外方向へゆっくり振動板403を変位させて、小さい差圧を与えながら加圧室405の体積を増加させると、流体は加圧室405から第2液室409の方向(図23(a)のB方向)へ送液される。
【0194】
逆に、加圧室405の外方向へ素早く振動板403を変位させて、大きい差圧を与えながら加圧室405の体積を増加させ、次いで加圧室405から内方向へゆっくり振動板403を変位させて、小さい差圧を与えながら加圧室405の体積を減少させると、流体は加圧室405から第1液室408の方向(図23(a)のA方向)へ送液される。
【0195】
なお、第1流路406と第2流路407における差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合の相違は、必ずしも流路の長さの違いによる必要はなく、他の形状的な相違に基づくものであってもよい。
【0196】
上記のように構成されたマイクロポンプ211によれば、ポンプの駆動電圧および周波数を変えることによって、所望する流体の送液方向、送液速度を制御できるようになっている。図23(a)(b)には図示されていないが、第1液室408には図1に示す駆動液タンク215につながるポートが設けられており、第1液室408は「リザーバ」の役割を演じ、ポートで駆動液タンク215から駆動液216の供給を受けている。第2液室409は図1に示したマイクロポンプユニット210の流路を形成し、その先に図1に示したチップ接続部213があり、図1に示したマイクロ検査チップ100と繋がる。
【0197】
図23(c)において、マイクロポンプ211は、シリコン基板471、圧電素子404、基板474および図示しないフレキシブル配線で構成される。シリコン基板471は、シリコンウエハをフォトリソグラフィ技術により所定の形状に加工したものであり、エッチングにより加圧室405、ダイヤフラム403、第1流路406、第1液室408、第2流路407、および第2液室409が形成されている。加圧室405、第1流路406、第1液室408、第2流路407、および第2液室409は、駆動液216で満たされる。
【0198】
基板474には、第1液室408の上部にポート472が、第2液室409の上部にポート473がそれぞれ設けられており、例えばこのマイクロポンプ211をマイクロ検査チップ100と別体とする場合には、ポート473を介してマイクロ検査チップ100のポンプ接続部と連通させることができる。例えば、ポート472、473が穿孔された基板474と、マイクロ検査チップ100のポンプ接続部近傍とを上下に重ね合わせることによって、マイクロポンプ211をマイクロ検査チップ100に接続することができる。
【0199】
また、上述したように、マイクロポンプ211は、シリコンウエハをフォトリソグラフィ技術により所定の形状に加工したものであるため、1枚のシリコン基板上に複数のマイクロポンプ211を形成することも可能である。この場合、マイクロ検査チップ100と接続するポート473の反対側のポート472には、駆動液タンク215が接続されていることが望ましい。マイクロポンプ211が複数個ある場合、それらのポート472は、共通の駆動液タンク215に接続されていてもよい。
【0200】
上述したマイクロポンプ211は、小型で、マイクロポンプ211からマイクロ検査チップ100までの配管等によるデッドボリュームが小さく、圧力変動が少ないうえに瞬時に正確な吐出圧力制御が可能なことから、駆動制御部270での正確な送液制御が可能である。
【0201】
本発明におけるマイクロ検査チップ100の実施の形態では、第1の液体定量部125aおよび第2の液体定量部125bの両端に、撥水バルブ123a、123b、127aおよび127bを設けている。ここで、撥水バルブの一般的な構造と動作について、図24を用いて説明する。図24は、撥水バルブの一般的な構造と動作について説明するための模式図で、図24(a)は液体の送液が撥水バルブで遮断されている状態を、図24(b)は撥水バルブを越えて送液されている状態を示す。
【0202】
図24(a)において、撥水バルブ501は、細径の送液制御通路511で構成されている。送液制御通路511とは、その断面積S1(送液方向に対して垂直な断面の断面積)が、上流側流路521の断面積S2および下流側流路523の断面積S3よりも小さい細流路である。
【0203】
流路壁531がプラスチック樹脂などの撥水性の材質で形成されている場合には、上流側流路521内に充填された液体541は、弱い送液圧力P1(例えば3kPa程度)で送液制御通路511内に流入し、送液制御通路511と下流側流路523との境界部の流路壁531との表面張力の差によって、下流側流路523へ通過することが規制される。
【0204】
図24(b)において、下流側流路523へ液体541を流出させる際には、マイクロポンプ(図示せず)によって所定圧力以上の送液圧力P2(例えば10kPa程度)を加え、これによって表面張力に抗して液体541を送液制御通路511から下流側流路523へ押し出す。液体541が下流側流路523へ流出した後は、液体541の先端部を下流側流路523へ押し出すのに要した送液圧力Pを維持せずとも、液体541が下流側流路523へ流れていく。
【0205】
すなわち、上流側流路521から下流側流路523への正方向への送液圧力が、所定圧力P2に達するまでは送液制御通路511から先への液体541の通過が遮断され、所定圧力P2以上の送液圧力が加わることにより、液体541は送液制御通路511を通過する。
【0206】
上述したように、上流側流路521および下流側流路523と送液制御通路511のサイズとは、上流側流路521および下流側流路523への液体541の通過を規制できれば特に限定されないが、1例として、縦横が150μm×300μmの上流側流路521および下流側流路523に対して、縦横が25μm×25μm程度となるように送液制御通路511が形成される。
【0207】
また、液体541が送液制御通路511を通過するのを規制するための送液圧力差(P2−P1)を大きくするために、下流側流路523の送液制御通路511と接する部分の流路壁531の壁面531aは、図24に示したように、送液制御通路511に対して直角に立ち上がっていることが望ましい。
【0208】
以上に述べたように、本発明によれば、液体を送液する送液流路、あるいは液体を液体貯留部に注入する液体注入口に、液体よりも粘度の高い高粘度流体を注入することで、送液流路あるいは液体注入口の流路抵抗値を増大させることができるので、加熱、冷却等の複雑な制御を必要とせず、検体や試薬等の液体が不用意に移動しないような閉バルブとしての機能を備え、機械的なバルブのような隙間からのリークも発生せず、安定した分割、定量に寄与するマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を提供することができる。
【0209】
なお、本発明に係るマイクロ検査チップ、マイクロ検査チップの液体逆流防止方法および検査装置を構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明における検査装置の1例を示す模式図である。
【図2】本発明におけるマイクロ検査チップの第1の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図3】第1の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における分割送液工程が完了した時点での流路の状態を示す模式図である。
【図5】第1の実施の形態における高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を示す模式図である。
【図6】第1の実施の形態における定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【図7】マイクロ検査チップの第2の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図8】第2の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態における高粘度流体注入工程が完了した時点での流路の状態を示す模式図である。
【図10】マイクロ検査チップの第3の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図11】第3の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートである。
【図12】定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【図13】マイクロ検査チップの第4の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図14】第4の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートである。
【図15】第4の実施の形態における定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【図16】マイクロ検査チップの第5の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図17】第5の実施の形態における液体の分割定量送液方法を示すフローチャートである。
【図18】第5の実施の形態における定量送液工程の途中での流路の状態を示す模式図である。
【図19】マイクロ検査チップの第6の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図20】第6の実施の形態における液体151の逆流防止方法を説明する模式図である。
【図21】第6の実施の形態の変形例を示す模式図である。
【図22】マイクロ検査チップの第7の実施の形態の構成を示す模式図である。
【図23】マイクロポンプの構成の1例を示す模式図である。
【図24】撥水バルブの一般的な構造と動作について説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0211】
1 検査装置
100 マイクロ検査チップ
101 流路基板
103 天板
111a 第1の流路
111b 第2の流路
113 液体貯留部
113i 液体注入口
113s 封止部材
113h 微細な空気抜き孔
115 分岐部
117a 第1の高抵抗流路
117b 第2の高抵抗流路
119a 第1の分岐流路
119b 第2の分岐流路
121a 第1の細流路
121b 第2の細流路
123a 撥水バルブ
123b 撥水バルブ
125a 第1の液体定量部
125b 第2の液体定量部
127a 撥水バルブ
127b 撥水バルブ
131a 第1の下流流路
131b 第2の下流流路
141 分割用空気流路
143a 第1の送液用空気流路
143b 第2の送液用空気流路
145 連結流路
147 液体流路
149a 第1の駆動液流路
149b 第2の駆動液流路
151 液体
153 空気
161 高粘度流体貯留部
161a (高粘度流体貯留部の)開口部
163 高粘度流体注入路
165 高粘度流体
171、173a、173b 空気流路
175a、175b 分割送液用流路
177 合流路
179 混合反応部
181 可撓性蓋
191 試薬貯留部
210 マイクロポンプユニット
211 マイクロポンプ
213 チップ接続部
215 駆動液タンク
216 駆動液
217 駆動液供給部
230 加熱冷却ユニット
231 冷却部
233 加熱部
250 検出部
251 光源
253 受光素子
255 検出領域
270 駆動制御部
A1、A2、A3 大気開放穴
A4 空気抜き孔
Ba、Bb 開閉バルブ
P1、P2、P3、P4、P5、P6 (マイクロポンプ211との)連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を送液する送液流路と、
前記送液流路の下流側に連通され、前記送液流路から送液された前記液体を定量して保持する液体定量部と、
一端が前記液体定量部の下流側に連通された下流流路とを備えたマイクロ検査チップにおいて、
前記送液流路に連通された高粘度流体貯留部を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記液体よりも粘度が高く、前記送液流路に注入されることで前記送液流路を閉じるバルブの機能を果たす高粘度流体を貯留することを特徴とするマイクロ検査チップ。
【請求項2】
前記送液流路は、複数の流路に分岐する分岐部を有し、
前記高粘度流体は、前記分岐部に注入されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項3】
前記送液流路は、前記分岐部の上流側に、前記液体を貯留する液体貯留部を有し、
前記高粘度流体貯留部は前記液体貯留部の上流側に連通され、
前記高粘度流体は、前記液体貯留部を介して前記分岐部に注入されることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項4】
前記送液流路の前記高粘度流体が注入される部分の上流側および下流側の一方または両方に、流路抵抗値の高い高抵抗流路を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項5】
前記マイクロ検査チップの表面に開口し、外部から駆動液を注入または吸引する連通口を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記連通口と連通され、
前記高粘度流体は、前記連通口から注入または吸引される前記駆動液の圧力によって、前記送液流路に注入されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項6】
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に外部から前記液体を注入する液体注入口とを備えたマイクロ検査チップにおいて、
前記液体注入口に連通された高粘度流体貯留部を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記液体よりも粘度が高く、前記液体注入口に注入されることで、前記液体注入口を閉じるバルブの機能を果たす高粘度流体を貯留することを特徴とするマイクロ検査チップ。
【請求項7】
前記液体注入口を封止する封止部材を備えたことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項8】
前記封止部材に、前記液体注入口と前記マイクロ検査チップの外部とを連通させる微細な空気抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項9】
前記マイクロ検査チップの表面に、前記液体注入口と前記マイクロ検査チップの外部とを連通させる微細な空気抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項10】
前記マイクロ検査チップの表面に開口し、外部から駆動液を注入または吸引する連通口を備え、
前記高粘度流体貯留部は、前記連通口と連通され、
前記高粘度流体は、前記連通口から注入または吸引される前記駆動液の圧力によって、前記液体注入口に注入されることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項11】
前記高粘度流体貯留部の少なくとも一部は可撓性の膜で形成されており、前記可撓性の膜に外部から押圧力を印加することで、前記高粘度流体を注入することを特徴とする請求項1乃至4または6乃至9の何れか1項に記載のマイクロ検査チップ。
【請求項12】
請求項7に記載のマイクロ検査チップの液体逆流防止方法であって、
前記液体を液体注入口から前記液体貯留部に注入する液体注入工程と、
前記高粘度流体を前記液体注入口の内部に注入する高粘度流体注入工程と、
前記封止部材によって前記液体注入口を封止する封止工程とを備えたことを特徴とするマイクロ検査チップの液体逆流防止方法。
【請求項13】
請求項8または9に記載のマイクロ検査チップの液体逆流防止方法であって、
前記液体を液体注入口から前記液体貯留部に注入する液体注入工程と、
前記封止部材によって前記液体注入口を封止する封止工程と、
前記高粘度流体を前記液体注入口の内部に注入する高粘度流体注入工程とを備え、
前記高粘度流体注入工程において、前記高粘度流体を前記液体注入口に注入することで、前記微細な空気抜き孔を介して前記液体注入口の内部に残留する空気を前記マイクロ検査チップの外部に排出することを特徴とするマイクロ検査チップの液体逆流防止方法。
【請求項14】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のマイクロ検査チップと、
前記高粘度流体を注入するための駆動液を前記マイクロ検査チップに注入または吸引するマイクロポンプとを備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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