説明

マイクロ波センサ

【課題】積雪、凍結、湿潤、乾燥等の対象物の表面状態を判別する精度が高いマイクロ波センサを提供する。
【解決手段】マイクロ波受信機4が路面1等の対象物から放出される微弱なマイクロ波帯熱雑音2を計測し、赤外線放射温度計5が対象物から放出される赤外線3から物理温度を計測し、データ処理部6が計測されたマイクロ波帯熱雑音2と、物理温度との割合から積雪、凍結、湿潤、乾燥等の対象物の表面状態を判別する。さらにはデータ処理部6の検知結果を表示する表示部7を設けた積雪、凍結、湿潤、乾燥、等の対象物の状況を判別し、その結果を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物から放出される微弱なマイクロ波帯の熱雑音強度を検出して、積雪、凍結、湿潤、乾燥等の対象物の状態を判別するマイクロ波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯の熱雑音強度を検出するセンサは、従来からリモートセンシングに用いられてきている。
例えば、特許文献1にあるようにマイクロ波受信機を用いて、対象物である路面から放出される微弱なマイクロ波帯の熱雑音強度を検出して路面の状態を検知する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−187884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マイクロ波受信機を用いて対象物として例えば路面からの熱雑音強度を計測しても、乾燥路面と凍結路面で、同様な熱雑音強度となる場合があり、それだけでは実際に路面状態を判別することは困難であった。
【0005】
かかる点に鑑み、この発明は、対象物からの熱雑音強度だけでなく、温度計により対象物の物理温度を計測し、それらのデータを演算処理することにより、積雪、凍結、湿潤、乾燥、等の対象物の状態を判別するマイクロ波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るマイクロ波センサは、対象物からの熱雑音強度を計測するマイクロ波受信機と、上記対象物の温度を計測する温度計と、上記熱雑音強度と温度との割合から対象物の状態を検知するデータ処理部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のマイクロ波センサによれば、マイクロ波受信機が対象物からの熱雑音強度を計測し、温度計が上記対象物の温度を計測し、データ処理部が上記熱雑音強度と温度との割合から対象物の状態を検知するので、対象物の積雪、凍結、湿潤、乾燥等の状態を精度良く判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるマイクロ波センサの構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態2によるマイクロ波センサの構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態3によるマイクロ波センサの構成を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態4によるマイクロ波センサの構成を示す説明図である。
【図5】所定周波数での熱雑音強度及び物理温度の計測値と路面状態との関係図である。
【図6】実施の形態1におけるデータ処理部6の動作説明図である。
【図7】実施の形態2におけるデータ処理部6の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるマイクロ波センサの構成を示す説明図であり、1は観測すべき対象物でここでは以下路面として説明する。2は路面1から放出されるマイクロ波帯熱雑音(以下、熱雑音と称す)、3は路面1から放出される赤外線、4は熱雑音2の強度を計測するマイクロ波受信機、5は赤外線3から物理温度を計測する赤外線放射温度計、6は熱雑音2と物理温度との割合から対象物の状態を検知するデータ処理部である。
【0010】
なお、ここで言うマイクロ波は、「波長1000mm程度から1mm程度までの電磁波」を代表的に以下単にマイクロ波と称することとする。
【0011】
図1に示す例では、路面1から放出される微弱な熱雑音2の強度をマイクロ波受信機4で計測する。同時に路面1から放出される赤外線3を赤外線放射温度計5で検出することにより路面1の物理温度を計測する。
また、データ処理部6はマイクロ波受信機4で計測された熱雑音2の強度と、赤外線放射温度計5で計測された物理温度の割合を演算処理し、積雪、凍結、湿潤、乾燥等の路面状態を判別する。
【0012】
図5は所定周波数での熱雑音強度及び物理温度の計測値と路面状態との関係図である。図5では例えば乾燥路面、凍結路面及び湿雪路面の例を示している。図5により路面1の所定状態での物理温度と熱雑音強度とは比例関係にあることがわかる。また、例えば乾燥路面における路面1の物理温度が0℃、凍結路面における路面1の物理温度が−10℃、及び湿雪路面における路面1の物理温度が10℃時の熱雑音2の強度が等しくなっていることがわかる。このことより熱雑音2の強度を計測しただけで路面状態を判別することは困難である。しかしながら、路面1の熱雑音強度とともに物理温度を計測することによって、路面1の状態を精度良く推定できるようになることがわかる。
【0013】
次に、データ処理部6の動作を説明する。図6は実施の形態1におけるデータ処理部6の動作説明図である。尚データ処理部6には、予め図5で示すような路面1を所定の周波数で計測した熱雑音、物理温度と路面状態との関係データが記憶されているものとする。データ処理部6は、マイクロ波受信機4にて測定した熱雑音強度を赤外線放射温度計5で測定した物理温度で除算した射出率と予め記憶しているデータとを比較して路面状態を判別する。図6では6GHzのマイクロ波が出力した熱雑音強度を計測した時の射出率により路面状態を判別している。これにより、熱雑音強度が同じでも物理温度の相違によって路面状態を把握することができるようになる。
【0014】
参考までに、図6で示した路面状態は以下のように定義される。
・ 湿潤・・・湿気を帯びている路面状態
・ 湿雪・・・含水率の大きい雪(湿り雪)がある路面状態
・ 乾燥・・・湿気や水分の無い路面状態
・ 凍結・・・こおりついている路面状態。
・ 積雪・・・降り積もった雪がある路面状態
【0015】
以上のように実施の形態1のマイクロ波センサによれば、マイクロ波受信機4が路面1からの熱雑音強度を計測し、赤外線放射温度計5が路面1からの温度を計測し、データ処理部6が上記熱雑音強度と温度との割合から路面1の状態を検知するので、路面の積雪、凍結、湿潤、乾燥等の状態を精度良く判別することができる。
尚、図6での判別結果において例えば「湿潤」と「湿雪」の重なり部分は「半湿雪」と定義しても良い。また、温度計として赤外線放射温度計5を用いることで熱雑音強度および温度とも対象物である路面と接触することなく計測できるので、車等の移動物に搭載しての計測が可能となり、より利用しやすくなる。
【0016】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2によるマイクロ波センサの構成を示す説明図であり、前述した実施の形態1の場合と同様に路面1の熱雑音強度と物理温度を計測するが、路面1から放出される微弱な周波数の異なるマイクロ波帯熱雑音2a,2bを受信周波数の異なる2つのマイクロ波受信機4a,4bで計測し、赤外線放射温度計5で計測した路面1の物理温度とともにデータ処理部6で演算処理して路面1の状態を判別する。
【0017】
また、図7は実施の形態2におけるデータ処理部6の動作説明図である。図7では第1に6GHzのマイクロ波が出力した熱雑音強度と物理温度から求めた射出率より6GHzでの路面状態を割り出す。第2に18GHzのマイクロ波が出力した熱雑音強度と物理温度から求めた射出率より18GHzでの路面状態を割り出す。これにより、6GHzの射出率と18GHzの射出率との相関関係より路面1の状態を判別する。
【0018】
これにより、例えば6GHzでの射出率で判別が「湿潤」及び「湿雪」との重なり部分にある「半湿雪」箇所を、18GHzでの射出率との相関により「湿潤」又は「湿雪」と明確に判別できるようになる。また、6GHz及び18GHzの射出率が共に「湿潤」及び「湿雪」との重なり部分にある場合は「半湿雪」との判別に確実性が増すことで、実施の形態1よりもこまやかにかつ確実に路面1の状態を判別できるようになる。
【0019】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3によるマイクロ波センサの構成を示す説明図であり、データ処理部6の検知結果を表示する表示器7を設けたものである。
この形態に示すマイクロ波センサも前述した実施の形態1又は2の場合と同様に、路面1の状態を判別するが、実施の形態1又は2の構成に表示器7を付加することにより、自動的にしかもリアルタイムにマイクロ波センサを搭載した車の運転手に現在の路面の状態を知らせることができるようになる。
【0020】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4によるマイクロ波センサの構成を示す説明図であり、データ処理部6の検知結果を外部に送信するデータ送信機8を設けたものである。
この形態に示すマイクロ波センサも前述した実施の形態1又は2の場合と同様に、路面1の状態を判別するが、実施の形態1又は2の構成にデータ送信機8を付加することにより、自動的にしかもリアルタイムに送信先の道路管理者等に路面の状態を知らせることができ、さらに道路管理者から付近を走行中のドライバーに現在の路面の状態を通報したり、広く現状の情報を発信し注意を喚起したりすることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、マイクロ波受信機と赤外線放射温度計を用いて、高い精度で路面状態を判別するセンサ装置の実現に有用である。またさらに、路面に限定されることなく表面の積雪、凍結、湿潤、乾燥の状態に関する情報を得ることができる。例えば、レーダードームの表面状態や太陽電池パネルの表面状態を自動的に判別し、除雪等の適切な対策を施すことによってより効率化を図ることができる等、広くその利用分野が存在する。
【符号の説明】
【0022】
1 路面
2,2a,2b マイクロ波帯熱雑音
3 赤外線
4,4a,4b マイクロ波受信機
5 赤外線放射温度計
6 データ処理部
7 表示器
8 データ送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物からの熱雑音強度を計測するマイクロ波受信機と、
上記対象物の温度を計測する温度計と、
上記熱雑音強度と温度との割合から上記対象物の状態を検知するデータ処理部とを備えたことを特徴とするマイクロ波センサ。
【請求項2】
上記温度計に上記対象物から放出される赤外線を検出して計測する赤外線放射温度計を用いたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波センサ。
【請求項3】
上記マイクロ波受信機は上記対象物からの熱雑音強度を周波数の異なる2つの周波数で測定し、
上記データ処理部は上記各々の周波数で計測した熱雑音と温度から周波数毎に上記対象物の状態を割り出すとともに、当該割り出した2つの状態の相関により上記対象物の状態を検知することを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波センサ。
【請求項4】
上記データ処理部の検知結果を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のマイクロ波センサ。
【請求項5】
上記データ処理部の検知結果を外部に送信するデータ送信部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のマイクロ波センサ。

【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−53184(P2011−53184A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204733(P2009−204733)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(394025094)三菱電機特機システム株式会社 (24)
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)