マイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡
【課題】S/Nを高くして測定精度を向上させると共に、広いマイクロ波帯域にわたり測定が可能なマイクロ波共振器及びマイクロ波顕微鏡を提供する。
【解決手段】導体線路101とグランド導体102とを有する両端開放型のマイクロ波共振器100であって、マイクロ波共振器の両端104、105を結ぶ中央部における導体線路に接続され、かつグランド導体に接触せずにマイクロ波共振器の外側に突出し、試料300に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段120を備えている。
【解決手段】導体線路101とグランド導体102とを有する両端開放型のマイクロ波共振器100であって、マイクロ波共振器の両端104、105を結ぶ中央部における導体線路に接続され、かつグランド導体に接触せずにマイクロ波共振器の外側に突出し、試料300に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段120を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なスケールで対象の電気特性を測定し、画像化可能なマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡に関する。特に本発明は、マイクロ波帯で用いられるマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
数GHzから〜20GHzの帯域で電気的共振器に探針を配し、対象の微細な長さスケールでの電気的特性を測定し画像化する手法として、走査型容量顕微鏡(SCM)、非線形誘電率顕微鏡(SNDM)、マイクロ波顕微鏡(SMM)などが知られている。これらは、いずれも探針を電気的共振器の一端として構成し、探針と試料との間の相互作用を共振特性(共振周波数、Q値)に関する量の変化として測定する。この場合、共振器のおかげで共振周波数付近のs/nが良好になることが期待できる。
このような技術として、nλ/4波長で動作する直列共振器(n>>1)を利用したものや(特許文献1)、磁気結合したλ/4共振器を利用したもの(特許文献2)が知られている。また、並列共振器を用い、応答をV A N(ベクトルネットワークアナライザ)で測定する技術が知られている(特許文献3)。さらに、nλ/4直列同軸共振器(n>>1)を用い、探針と試料の間距離をSTMで制御する技術が知られている(特許文献4)。
【0003】
さらに、同軸ケーブルの開口端に探針をマイクロストリップラインで接続すると共に、探針と同軸ケーブルとをコネクターで脱着可能とする技術(特許文献5)や、試料と探針との距離を変えて容量応答を変調した時の応答の距離依存性を用い、試料と探針間の距離を一定に制御する技術(特許文献6)が知られている。
又、同軸ケーブルとコプレナー線路とを用いたプローブ構造(特許文献7)や、同軸ケーブルとプローブとをマイクロストリップで結ぶ技術(特許文献8)も知られている。
【0004】
ところで、SCMでは分布定数回路であるマイクロストリップライン共振器の一端に探針を配し、共振器の電気的閉鎖端に励振及び受信を行う2つの装置がそれぞれ磁気結合される。励振周波数は共振器の共振周波数から適宜離調し、試料の容量に関わる量は励振周波数における受信信号の振幅の変化として検出・画像化される。
一方、SNDMは、リアクタンス及び容量からなる集中定数回路と、探針下の容量との結合をタンクとし、これに増幅回路を付加して発振器を構成し、その発振周波数、すなわちタンクの共振周波数の変化として探針下容量を検出・画像化する。
【0005】
又、SMMは共振器の構造により2種類のタイプが知られている。1つのタイプは、片端開放の同軸共振器を用い、開放端に探針を配置して他端を同軸グランド導体で閉じ、他端近傍に導体線路へ磁気結合する励振及び受信の2つのループを有するものである。他のタイプは、両端開放型の同軸共振器を用い、その一端に探針を配し、他端には励振と受信を行う方向性結合器を共振器へ容量結合させるものである。両者のタイプとも共振器の共振周波数を検出することで探針下の容量に関する量を得ることができる。
また、共振器から反射出力の振幅に関る量を検出して探針下の損失に関する量を得ることができ、この検出を前者のタイプでは受信ループから行い、後者のタイプでは方向性結合器から行っている。さらに、同軸構造に代えてマイクロストリップラインで共振器を構成する方法もある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5900618号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/008305号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/103583号明細書
【特許文献4】特表03-509696号公報
【特許文献5】特開2001-305039号公報
【特許文献6】特開2002-168801号公報
【特許文献7】特開2006-010678号公報
【特許文献8】特表05-527823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SCMは、探針下の容量と電気的損失の混成した信号を検出する点で精度に難点がある。一方、SNDMは容量に比例する共振周波数のみを検出する点で精度に優れるが、探針下の損失を測定できない難点がある。さらにSCMとSNDMは、探針と試料間の距離をAFM等で一定に制御できる利点があるが、適用可能な周波数が一つに限られるので、試料の電気特性がマイクロ波周波数に依存するような測定に適さない。
一方、SMMは、複素誘電率に関わる探針下の容量と損失とを複数のマイクロ波周波数で検出できる点で優れているが、探針-試料間の距離の制御が困難であるという問題がある。又、従来のSMMでは、共振器の一端において励振とその出力の受信とを行うため、励振電磁場が受信信号に漏洩しS/Nが劣化するという問題がある。さらに、励振と受信を行う方向性結合器を共振器へ容量結合している場合、方向性結合器を使用できるマイクロ波帯域が制限されるため、測定できるマイクロ波帯域が制限を受けるという難点がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、S/Nを高くして測定精度を向上させると共に、広いマイクロ波帯域にわたり測定が可能なマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のマイクロ波共振器は、導体線路とグランド導体とを有する両端開放型のマイクロ波共振器であって、前記マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における前記導体線路に接続され、かつ前記グランド導体に接触せずに前記マイクロ波共振器の外側に突出し、試料に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段を備えている。
このような構成とすると、マイクロ波共振器の両端を開放しているため、この両端にそれぞれ励振手段および検出手段とを容量結合することで、マイクロ波共振器を共振させる励振手段と、マイクロ波を検出する検出手段とがマイクロ波共振器の両端に別々に配置され、各両端が互いに干渉しないよう距離を十分離すことができる。
さらに、マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における導体線路に測定手段を接続し、マイクロ波共振器の外側に突出させるので、測定手段そのものも励振手段と検出手段とから遠い位置に配置される。
これらの結果、励振波の受信(検出)信号への漏洩や干渉によるS/Nの劣化、測定手段と励振手段及び検出手段との相互作用によるS/Nの劣化を抑制し、高いS/Nを確保しつつ試料の複素誘電特性を測定できる。
また、共振状態の検出手段として、帯域制限や漏洩の問題がある方向性結合器を使用しない場合には、広い帯域にわたり高感度に信号を検出できる。
【0010】
前記マイクロ波共振器は、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、ストリップライン又はコプレーナラインから構成されていてもよい。
【0011】
前記導体線路は、前記両端を除いて誘電体層に囲まれていてもよい。このような構成とすると、測定時にノイズが漏洩することが少なく、測定精度が向上する。
【0012】
前記測定手段は、前記グランド導体及び/又は前記誘電体層の一部をくり抜いて配置されていてもよい。このような構成とすると、くり抜き部に測定手段が表出し、試料へ容易に近接させることができると共に、測定手段と試料との距離を制御する各種制御手段(光てこ等)を用いる空間が確保され、上記した距離制御が行える。
【0013】
前記測定手段は、先端が先鋭化された導電体、又はコイルからなっていてもよい。
前記コイルは、炭素を主成分とするコイル骨格と、該コイル骨格の表面に被覆された導電膜とからなっていてもよい。
【0014】
本発明のマイクロ波顕微鏡は、前記マイクロ波共振器と、前記マイクロ波共振器の一方の端に容量結合され、前記マイクロ波共振器を励振する励振手段と、前記マイクロ波共振器の他端に容量結合され、該他端から透過するマイクロ波を検出する検出手段とを備えている。
【0015】
さらに、前記測定手段と、これに近接する前記試料との相対的な距離を制御する距離制御手段を備えてもよい。
このような構成とすると、測定手段と試料との距離をほぼ一定に保持することができるので、測定手段と試料との距離が変化して複素誘電特性の測定精度を低下させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、S/Nを高くして測定精度を向上させると共に、広いマイクロ波帯域にわたり測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡1の全体構成を示すブロック図である。図1において、マイクロ波顕微鏡1は、マイクロ波共振器100と、マイクロ波共振器100の一方の端104に容量結合(符号C1で表す)された発振器(励振手段)2と、マイクロ波共振器100の他端105に容量結合(符号C2で表す)された検出器(検出手段)4と、試料300のマイクロ波共振器100に対する相対位置を走査するピエゾアクチュエータ6と、マイクロ波顕微鏡1の動作を制御する統括制御コンピュータ10とを備えている。
マイクロ波顕微鏡1はさらに、帰還制御手段(移相器12及び位相比較器14)、及び振幅測定手段(振幅検出器(ダイオード)16及び振幅誤差検出器17)を備えている。
なお、本発明において、マイクロ波顕微鏡は走査型であってもよく、非走査型(試料300の所定位置のみの複素誘電率を測定する)であってもよいが、この実施形態では走査型になっている。
【0018】
マイクロ波共振器100は長尺の角柱状をなし、断面から見て中心に位置する導体線路101と、図示しないグランド導体と、誘電体層103とを有するストリップラインを構成している。又、マイクロ波共振器100は両端開放型であり、両端104、105でそれぞれ励振と検出が別個に行われるようになっている。
マイクロ波共振器100の両端104、105を結ぶ中央部における導体線路101には、導体線路101の延設方向とほぼ直角に探針(測定手段)102が接続され、探針102は誘電体層103の一部をくり抜いたくり抜き部107を通って、マイクロ波共振器100の外側に突出している。なお、図1では、マイクロ波共振器100の外縁を符号110で表示している。探針102は先端が先鋭化された金属針であり、探針102に対向する試料300に近接して試料の複素誘電率に関する量を測定可能になっている。
【0019】
より詳しくは、くり抜き部107は、マイクロ波共振器の導体線路101の延びる方向に垂直に切り取られた誘電体層103yが露出する側壁と、マイクロ波共振器の導体線路101の延びる方向に切り取られた誘電体層103xが露出する前壁とから構成されている。そして、探針102は、誘電体層103xの面と垂直にして誘電体層103xから突出している。
ここで、本発明において、マイクロ波共振器の「外側」とは、マイクロ波共振器の外表面を構成するすべての面をいい、くり抜き部を設けない場合は、マイクロ波共振器を構成するストリップライン等の外面をいい、くり抜き部を設けた場合は、くり抜き部107の表面を含むマイクロ波共振器のすべての表面をいう。従って、図2の場合、くり抜き部107を構成する前壁(誘電体層103x)及び側壁(誘電体層103y)も、「外側」に含まれる。
又、探針(測定手段)102がマイクロ波共振器の外側に突出するとは、マイクロ波共振器の外側を構成するいずれかの表面に取付けられた測定手段が、マイクロ波共振器の外側を構成する他の面と接触せずに存在することをいう。例えば、図2の場合、くり抜き部107を設けることにより、前壁(誘電体層103x)に取付けられた探針102は、側壁(誘電体層103y)と間隔を持って配置され、これにより、探針102を試料300に近接できると共に、光てこのレーザ光の光路を設ける空間を備えることができる。
【0020】
ここで、試料の複素誘電率に関する量とは、具体的には、後述するようにしてマイクロ波顕微鏡1がマイクロ波共振器100の共振状態に関する量(複素共振周波数の変化)を測定し、複素共振周波数の変化に基づいて算出される量である。複素誘電率に関する量は、例えば、試料の容量と導電性である。
【0021】
この実施形態では、探針120の表面121がレーザ光を反射可能な鏡面になっていて、探針120がわずかに撓んでカンチレバーとして機能するようになっている。そして、マイクロ波顕微鏡1は、探針120の表面121にレーザ光を照射するレーザ光源8a、照射されたレーザ光の反射光を受光する位置検出センサ8b、及び上述のコントローラ8cを備え、これらのレーザ光源8a、位置検出センサ8b、及びコントローラ8cが本発明の「距離制御手段」を構成している。
【0022】
マイクロ波顕微鏡1は次のように動作する。
まず、発振器(電圧制御発振器)2からマイクロ波が発振されると、移相器12はその励振信号を受信し、位相を調整して位相比較器14に入力する。又発振されたマイクロ波は、容量結合C1を介してマイクロ波共振器100に供給され、マイクロ波共振器100の共振状態が容量結合C2を介して検出器4に受信される。
検出器4は、透過するマイクロ波を受信し、マイクロ波の振幅のみならず、励振信号に対する位相を含んだマイクロ波の複素振幅を検出する。検出器4としては、励振信号(例えばsinωt)、励振信号と90度位相が異なる成分(cosωt)、及び受信透過信号をミキサで混合(数学的には乗算)し、それぞれの乗算出力(Inphaseとquadrature)をダイオードにより検波して複素振幅を得るものを用いることができる。必要により、これらの複素振幅から振幅と位相を計算できる。
【0023】
受信信号は位相比較器14に入力されて移相器12からの励振信号と比較される。位相比較器14は、励振信号と受信信号との位相差を位相差信号として発振器2に出力(フィードバック)する(図1のL1のループ)。発振器2は、励振信号と受信信号との位相差が一定となるように発振を制御し、共振周波数をトラッキング(追尾)する。このように、発振器2からの出力と、マイクロ波共振器100からの受信信号との位相差が一定になるよう、共振周波数を帰還制御(フィードバック制御)することは、いわゆる位相・ロックド・ループ(PLL)として知られており、入力信号に同期した発振器出力が得られる。
又、受信信号は振幅検出器16にも入力されて振幅が検出され、検出された振幅は振幅誤差検出器17に入力される。振幅誤差検出器17は比較器になっていて、検出された振幅と所定の値Aとの差を出力するようになっている。振幅誤差検出器17の出力は発振器2に出力(フィードバック)され、励振振幅を一定にするように制御される(図1のL2のループ)。
【0024】
そして、位相比較器14からの位相差信号と、振幅誤差検出器17からの振幅誤差信号とは統括制御コンピュータ10に入力され、複素共振周波数(共振周波数およびQ値)として記録され、必要に応じて画像化される。
ここで、マイクロ波共振器100に配置された探針120を試料300に近接させると両者が相互作用し、マイクロ波共振器100の実効的な共振器特性(共振周波数およびQ値)を変化させる。一般には、共振周波数が低周波数側にシフトし、その振幅が広がってQ値が小さくなる。そして、共振周波数およびQ値は、試料300の容量(キャパシタンス)やインピーダンスに応じて変化するから、共振周波数およびQ値の変化を検出することで、試料300の複素共振周波数を測定し、複素誘電率に関する量を得ることができる。試料300の複素共振周波数は、例えば、予め標準試料について測定した複素共振周波数のデータをルックアップテーブルに格納しておき、このテーブルを参照することで求めることができる。
なお、発振器2に自動増幅率制御回路が付加されている場合、Q値の変化を検出する他の方法として、受信信号を検波し、設定値との差を誤差増幅器により増幅して自動増幅制御回路の制御信号として用い、励振信号の振幅を一定に保つとともに、制御信号を測定し記録することもできる。
【0025】
なお、この実施形態では、マイクロ波顕微鏡1は走査型であり、以下のように試料の走査を行う。
試料300は、ピエゾアクチュエータ(位置走査手段)6上に設けられたステージ7上に配置され、ピエゾアクチュエータ6がxy平面(ステージ7面)の2次元に変位することにより、試料300の相対位置をxy上で走査することができる。又、後述するように、ピエゾアクチュエータ6はz方向(ステージ7に垂直な面)に変位することができ、これにより試料300と探針120間の距離を一定に保持する。なお、ピエゾアクチュエータ6は、コントローラ(距離制御手段)8cによって動作制御される。
統括制御コンピュータ10は、上記した複素共振周波数(共振周波数およびQ値)を、コントローラ8cから取得した試料300の走査データ毎に記録し、試料300の個々のxy方向の座標毎に複素誘電特性(電気インピーダンス等)をマッピング(画像化)する。さらに、統括制御コンピュータ10は、画像化したデータを適宜ディスプレイ(表示手段)11に表示させる。
【0026】
又、この実施形態では、試料300と探針120の間の距離を次のように制御する。
まず、試料300と探針120の距離が変化し、試料300が探針120に接触するとカンチレバーである探針120が撓み、位置検出センサ8b上での反射光の受光位置が変化する。位置検出センサ8bは4分割フォトディテクタとなっていて、「光てこ」方式で変位の検出を行う。つまり、位置検出センサ8b上に入射したレーザ光のスポットは、探針120の変位に応じてディテクタ面内を動くので、4分割された各フォトディテクタ面の差分を検出することにより、探針120の変位を検出することができる。
そして、位置検出センサ8bによって検出された変位信号はコントローラ8cに入力され、コントローラ8cは、この変位を打ち消すような制御信号を生成してピエゾアクチュエータ6をz方向に動作させる。このようなフィードバック制御を行うことにより、試料と探針間の距離(両者が接触しないで近接した位置)を一定に保つことができ、上記した複素誘電特性(電気インピーダンス等)の測定精度が向上する。
【0027】
図2は、マイクロ波共振器100の詳細な構造を示す。マイクロ波共振器100は、図3の断面図に示すように、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102、102が形成され、各グランド導体102、102の間に誘電体層103が介装されると共に、誘電体層103の中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101が延びている。
図2に戻り、マイクロ波共振器100は、長手方向(両端104、105を結ぶ)中央部で所定の曲げ半径で曲げられている。そして、屈曲部の外側突出部で、導体線路101より外側のストリップライン(グランド導体102及び誘電体層103を含む)をくり抜いて(切除して)、くり抜き部107が形成されている。
なお、くり抜き部は、マイクロ波共振器100の側壁から導体線路101の近傍に至るまでくり抜かれているが、導体線路101が露出しないよう、わずかに誘電体層103を残している。そして、グランド導体102と平行になるようにして、探針120がくり抜き部の側壁に残った誘電体層103を貫通して導体線路101に接続されている。又、誘電体層103から外側に延びた探針120は、くり抜き部107内で下方に折曲げられ、探針120の先端が下方を向いている。又、探針120のうち、下方に折曲げられた前面が表面(鏡面)121を構成している。
【0028】
ここで、両端開放の共振器において、共振器の実効的な長さをLRとすれば、共振器内の電磁波の波長λが、λ=2LR/n(n=正の整数)を満たすときに共振する。nが奇数の場合に共振器の中央部は電場振幅の節となり、nが偶数の場合には電場振幅の腹となる。
従って、測定手段(探針、コイル)102を共振器の中央部における電場振幅の腹又は節となる位置に設置する。この場合、測定手段が試料の電気的特性に感受性を持つのは、nが偶数であって測定手段が電場振幅の腹になる位置に設置された場合である。一方、測定手段が試料の磁気特性に感受性を持つのは、nが奇数であって探針が電場振幅の節(すなわち磁場の振幅の腹)になる位置に設置された場合である。前者の場合、測定手段(探針)を先端が先鋭化された導電体とすることで試料の電気特性を検出できる。後者の場合、測定手段としてコイルを用いることで試料の磁気特性(透磁率等)を検出できる。
なお、本発明において、共振器の「中央」とは、設計上では共振波長の数十分の1程度の精度で中央であればよい。
【0029】
又、探針120で不要な共振が生じないよう、探針120の長さが共振波長の1/4以下であることが好ましく、共振波長の1/10以下であることがより好ましい。
なお、図2の例の場合、探針120の長さは、外部に露出している全長(グランド導体102と平行な部分及び下方に折曲げられた部分の合計長さ)である。
【0030】
マイクロ波共振器100の両端104、105は、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合(C1、C2)されている。この実施形態において、容量結合C1、C2は、それぞれ端104と発振器2、及び端105と検出器4の間に設けられたギャップにより形成されている。
図4に示すように、このギャップは、容量結合を形成しようとする位置で導体線路101の長手方向に空隙101xを形成することで得られる。なお、この空隙は誘電体で満たされていても良い。容量結合のための空隙の間隔は短いことが好ましく、例えば10μm程度である。又、マイクロ波共振器100の幾何学的な長さを決める2つの容量結合C1,C2は同じ結合度である必要はなく、励振及び検出の条件としてそれぞれ結合度が異なっていても良い。
【0031】
なお、この実施形態においては、共振器長は20mm、曲げ角は0.3ラディアンであり、曲げ半径は1.5mmである。又、導体線路101からの探針120の先端までの長さは1.5mmである。
さらに、この実施形態において、ストリップラインは上下非対称となっている。つまり、図3において、上側グランド導体102と導体線路101との距離d1の方が、下側グランド導体102と導体線路101との距離d2より大きく、具体的には、d1=0.9mm、d2=0.13mmとなっている。上記したように、探針120の長さが比較的短いため(例えば、共振周波数20GHzの場合、共振波長の1/4は1.5mm)、ストリップラインを上下非対称として、導体線路101から下側グランド導体102側に探針120を突出させるようにすれば、探針120が下側グランド導体102から外側に露出し、探針120の試料への近接、及び探針120の距離の測定(上記した光てこ方式等による)が容易となる。
勿論、本発明はこれらの具体的な寸法に限られない。
【0032】
以上述べたように、本発明の実施形態に係るマイクロ波共振器及びマイクロ波顕微鏡は、マイクロ波共振器の両端を開放している。このため、この両端にそれぞれ励振手段および検出手段とを容量結合することで、マイクロ波共振器を共振させる励振手段と、マイクロ波を検出する検出手段とがマイクロ波共振器の両端に別々に配置され、各両端が互いに干渉しないよう距離を十分離すことができる。
さらに、マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における導体線路に測定手段を接続し、マイクロ波共振器の外側に突出させるので、測定手段そのものも励振手段と検出手段とから遠い位置に配置されている。
これらの結果、励振波の受信(検出)信号への漏洩や干渉によるS/Nの劣化、測定手段と励振手段及び検出手段との相互作用によるS/Nの劣化を抑制し、高いS/Nを確保しつつ試料の複素誘電特性を測定できる。
また、本発明においては、共振状態の検出手段として、帯域制限や漏洩の問題がある方向性結合器を使用しないため、広い帯域にわたり高感度に信号を検出できる。
【0033】
又、この実施形態においては、距離制御手段を設け、複素誘電特性を測定する間、探針と試料との距離をほぼ一定に保持している。このため、探針と試料との距離が変化して複素誘電特性の測定精度を低下させることを抑制できる。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波共振器100Bの構成を示す。なお、マイクロ波共振器100Bが取り付けられるマイクロ波顕微鏡の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。
マイクロ波共振器100Bは、第1の実施形態に係るマイクロ波共振器100と同様、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102B、102Bが形成され、各グランド導体102B、102Bの間に誘電体層103Bが介装されると共に、誘電体層103Bの中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101Bが延びている。
【0035】
又、マイクロ波共振器100Bは、長手方向中央部で所定の曲げ半径で曲げられ、屈曲部の下方で、導体線路101がマイクロ波共振器の外縁110Bから表出するようにストリップライン(グランド導体102Bを含む)をくり抜き、くり抜き部(円形の開口)107Bが形成されている。
図6に示すように、くり抜き部107Bから臨む導体線路101Bに探針120Bの基端が固定され、導体線路101Bに電気的に接続されている。又、くり抜き部107Bの直径は探針120Bの直径より大きく、探針120Bがグランド導体102Bと接触しないようになっている。探針120Bは先鋭化した金属(例えば、プラチナイリジウム)からなっている。
【0036】
ここで、探針120Bの設置位置は、第1の実施形態と同様、マイクロ波共振器100Bの中央部で電場振幅の節となる部分である。又、第2の実施形態においては、くり抜き部107Bから導体線路101が露出しているため、くり抜き部107Bで不要な共振が生じる可能性がある。そこで、くり抜き部107Bの直径をマイクロ波共振器の共振波長の1/4以下とし、不要な共振を防止している。くり抜き部107Bの直径が共振波長の1/10以下であることがより好ましい。
なお、第2の実施形態のように、くり抜き部107Bから導体線路101が露出している場合、不要な共振を防止するためのくり抜き部107Bの「直径」とは、くり抜き部107Bの表出部分をマイクロ波共振器の外縁110Bに投影した外形のうち、最大長さの部分をいう。
又、上記したくり抜き部107Bの開口部に後から誘電体等を充填し、不要な共振を防止するようにしてもよい。
【0037】
又、マイクロ波共振器100Bの両端104B、105Bは、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合されている。この実施形態において、容量結合は、それぞれ端104Bと発振器2、及び端105Bと検出器4の間に設けられたギャップにより形成されている。
図7に示すように、このギャップは、容量結合を形成しようとする位置で導体線路101Bの長手方向に間隙101Bxを形成させることで得られる。
ここで、間隙101Bxに接する導体線路101Bの端縁には、導体線路101Bの幅方向に2箇所の段部が形成され、2つの段部101で挟まれた導体線路101Bの中央部が図7の前方に向かって突出し、間隙101Bxの縁部が入り組んだ(インターディジタルの)ギャップを形成している。
導体線路101Bの幅方向の入り組み具合を調整することで、結合度を調整できる。
なお、ギャップとなる空間に誘電体層が介装されていなくてもよく、又、誘電体層が介装されていてよい。後者の場合、マイクロ波共振器100Bを構成する誘電体層をギャップに介装するとよい。
ギャップの間隔は短いことが好ましく、例えば10μm程度である。又、2つの容量結合は同じ結合度である必要はなく、励振及び検出の条件としてそれぞれ結合度が異なっていても良い。
【0038】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るマイクロ波共振器100Cの構成を示す。なお、マイクロ波共振器100Cが取り付けられるマイクロ波顕微鏡の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。
マイクロ波共振器100Cは、第1の実施形態に係るマイクロ波共振器100と同様、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102C、102Cが形成され、各グランド導体102C、102Cの間に誘電体層103Cが介装されると共に、誘電体層103Cの中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101Cが延びている。
【0039】
又、マイクロ波共振器100Cは、長手方向中央部で曲げられ、屈曲部の外側で、導体線路101Cより外側のストリップライン(グランド導体102Cを含む)をくり抜くことにより、くり抜き部107Cが形成されている。なお、このくり抜き部107Cは、屈曲部で導体線路101Cより外側を、導体線路101Cの幅方向に平行に切開した形状を有し、切開されたマイクロ波共振器100Cの端面が屈曲部で表出するようになっている。
なお、くり抜き部107Cから表出した導体線路101Cは、後述するコイル120Cを配置するために切除されている。
【0040】
そして、図9に示すように、2巻に巻回されたコイル(測定手段)120Cの両端が、くり抜き部107Cから誘電体層103Cを貫通して(2つの)導体線路101Cにそれぞれ(直列に)接続している。従って、コイル120Cをマイクロ波共振器100Cの中央部における電場振幅の節(すなわち磁場の振幅の腹)となる位置に設置することで、試料の磁気特性(透磁率等)を検出できる。
なお、第3の実施形態において、マイクロ波共振器100Cの幾何学的な導体線路の長さは28.55mm(両端104、105の間の導体線路101Cの延設部分の全長)、曲げ角は0.46ラディアン、コイル半径0.3mm、1.36ターンである。勿論、本発明はこれらの具体的な寸法の値に限られない。
又、例えばFIB(Focused Ion Beam)により作成されるカーボンのコイルに金属膜をコーティングしたコイルを用いることで、より微細なコイルを製造して微細な領域の磁気的性質を検出することができる。
【0041】
なお、マイクロ波共振器100Cの両端104C、105Cは、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合されているが、容量結合は第1の実施形態と同様であるので説明及び図示を省略する。
又、第3の実施形態においては、導体線路101Cがくり抜き部107Cから表出していないので、くり抜き部107Cを大きく切開し、コイル120Cが表出するように構成することができる。
【0042】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るマイクロ波共振器100Dの構成を示す断面図である。なお、図10は、導体線路101Dの延設方向に垂直な面で切断した断面図であり、それ以外の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。又、マイクロ波共振器100Dの中央に探針120Dが配置される点も第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態のマイクロ波共振器100Dはマイクロストリップラインであり、グランド導体102Dの片面に誘電体層103Dが介装され、誘電体層103Dの表面の中心線上に導体線路101Dが配置され、導体線路101Dは大気中に表出している。
そして、導体線路101Dから上方(導体線路101Dの表面と垂直な方向)に探針120Dが延び、探針120Dの基端が導体線路101Dに電気的に接続されている。
第4の実施形態の場合、製造が容易である一方、導体線路101Dが露出しているため、測定精度が若干劣ることがある。
【0043】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るマイクロ波共振器100Eの構成を示す断面図である。なお、図11は、導体線路101Eの延設方向に垂直な面で切断した断面図であり、それ以外の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。又、マイクロ波共振器100Eの中央に探針120Eが配置される点も第1の実施形態と同様である。
第5の実施形態のマイクロ波共振器100Eはコプレーナラインであり、誘電体層103Eの片面に、グランド導体102Eと導体線路101Eが並んで配置され、導体102Eと導体線路101Eは大気中に表出している。
そして、導体線路101Eから側方(グランド導体102E側と反対側)に、導体線路101Eの表面と平行な方向に探針120Eが延び、探針120Eの基端が導体線路101Eに電気的に接続されている。
第5の実施形態の場合も、製造が容易である一方、導体線路101Eが露出しているため、測定精度が若干劣ることがある。
【0044】
図12は、本発明の第6の実施形態に係るマイクロ波共振器100Fの構成を示す断面図である。なお、図12は、探針120Fの位置が異なること以外は、図10と同様であるので、図10と同一の構成部分を同一符号を付して説明を省略する。
第6の実施形態のマイクロ波共振器100Fにおいては、導体線路101Fから下方(導体線路101Fの表面と垂直で、かつグランド導体102Fに向かう方向)に、誘電体層103Fを貫通してくり抜き部107F(開口)が形成されている。くり抜き部107F内には探針120Fが配置され、探針120Fの基端が導体線路101Fに電気的に接続されていると共に、探針120Fの先端がグランド導体102Fと離間しつつグランド導体102Fから外側に表出している。
このとき、くり抜き部107Fの直径dを共振波長の1/4以下(より好ましくは共振波長の1/10以下)にすることで、くり抜き部107Fでの不要な共振を防止し、測定精度を向上することができる。
第6の実施形態の場合、試料側(探針120F側)に導体線路101Fが露出していないため、第4の実施形態に比べて測定精度が向上する。
【0045】
図13は、本発明の第7の実施形態に係るマイクロ波共振器100Gの構成を示す断面図である。なお、図13は、探針120Gの位置が異なること以外は、図11と同様であるので、図11と同一の構成部分を同一符号を付して説明を省略する。
第7の実施形態のマイクロ波共振器100Gにおいては、導体線路101Gから下方(導体線路101Fの表面と垂直)に、誘電体層103Gを貫通して探針120Gが配置され、探針120Gの基端が導体線路101Gに電気的に接続されていると共に、誘電体層103Gから外側に表出している。
このとき、探針120Gが誘電体層103Gに埋設され、開口(くり抜き部)が無いため、不要な共振が生じず、測定精度を向上することができる。
第7の実施形態の場合、試料側(探針120G側)に導体線路101Gが露出していないため、第5の実施形態に比べて測定精度が向上する。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、マイクロ波共振器は、ストリップラインの他、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、又はコプレーナラインから構成されていてもよい。
又、容量結合は、マイクロ波共振器の端部と、励振手段及び/又は検出手段の間とにインターディジタルコンデンサ又はチップコンデンサを挿入することにより形成してもよい。
さらに距離制御手段は、上記した光てこの他、光干渉又はチューニングフォークを用いてもよい。ここで、チューニングフォーク(音叉)は、測定手段(探針)を振動させるための音叉型の水晶振動子であり、測定手段を水晶振動子の端に配置する。そして、測定手段を取り付けた水晶振動子を励振用圧電素子によって共振させることで、測定手段を振動させる。そして、水晶振動子から出力される電荷の情報を読み取るだけで、簡単に測定手段の振幅を検出し、試料と測定手段との間の距離の制御が可能となる。
又、探針を、半導体プロセスを用いてシリコンから形成し、探針の表面に金属を蒸着して導電性を付与してもよく、探針とカンチレバーを半導体プロセスを用いて一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡の全体構成を示すブロック図である。
【図2】マイクロ波共振器の詳細な構造を示す図である。
【図3】ストリップラインの断面を示す図である。
【図4】容量結合を示す図2の部分拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図6】くり抜き部と探針を示す図5の部分拡大図である。
【図7】容量結合を示す図5の部分拡大図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図9】くり抜き部とコイルを示す図8の部分拡大図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
2 励振手段(発振器)
4 検出手段(検出器)
6 位置走査手段
8a〜8c 距離制御手段(光てこ)
10 統合制御コンピュータ
12 帰還制御手段
100〜100G マイクロ波共振器
101〜101G 導体線路
102〜102G グランド導体
104〜104C マイクロ波共振器の一方の端
105〜105C マイクロ波共振器の他端
107〜107F くり抜き部
120〜120G 測定手段(探針、コイル)
C1、C2 容量結合
300 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なスケールで対象の電気特性を測定し、画像化可能なマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡に関する。特に本発明は、マイクロ波帯で用いられるマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
数GHzから〜20GHzの帯域で電気的共振器に探針を配し、対象の微細な長さスケールでの電気的特性を測定し画像化する手法として、走査型容量顕微鏡(SCM)、非線形誘電率顕微鏡(SNDM)、マイクロ波顕微鏡(SMM)などが知られている。これらは、いずれも探針を電気的共振器の一端として構成し、探針と試料との間の相互作用を共振特性(共振周波数、Q値)に関する量の変化として測定する。この場合、共振器のおかげで共振周波数付近のs/nが良好になることが期待できる。
このような技術として、nλ/4波長で動作する直列共振器(n>>1)を利用したものや(特許文献1)、磁気結合したλ/4共振器を利用したもの(特許文献2)が知られている。また、並列共振器を用い、応答をV A N(ベクトルネットワークアナライザ)で測定する技術が知られている(特許文献3)。さらに、nλ/4直列同軸共振器(n>>1)を用い、探針と試料の間距離をSTMで制御する技術が知られている(特許文献4)。
【0003】
さらに、同軸ケーブルの開口端に探針をマイクロストリップラインで接続すると共に、探針と同軸ケーブルとをコネクターで脱着可能とする技術(特許文献5)や、試料と探針との距離を変えて容量応答を変調した時の応答の距離依存性を用い、試料と探針間の距離を一定に制御する技術(特許文献6)が知られている。
又、同軸ケーブルとコプレナー線路とを用いたプローブ構造(特許文献7)や、同軸ケーブルとプローブとをマイクロストリップで結ぶ技術(特許文献8)も知られている。
【0004】
ところで、SCMでは分布定数回路であるマイクロストリップライン共振器の一端に探針を配し、共振器の電気的閉鎖端に励振及び受信を行う2つの装置がそれぞれ磁気結合される。励振周波数は共振器の共振周波数から適宜離調し、試料の容量に関わる量は励振周波数における受信信号の振幅の変化として検出・画像化される。
一方、SNDMは、リアクタンス及び容量からなる集中定数回路と、探針下の容量との結合をタンクとし、これに増幅回路を付加して発振器を構成し、その発振周波数、すなわちタンクの共振周波数の変化として探針下容量を検出・画像化する。
【0005】
又、SMMは共振器の構造により2種類のタイプが知られている。1つのタイプは、片端開放の同軸共振器を用い、開放端に探針を配置して他端を同軸グランド導体で閉じ、他端近傍に導体線路へ磁気結合する励振及び受信の2つのループを有するものである。他のタイプは、両端開放型の同軸共振器を用い、その一端に探針を配し、他端には励振と受信を行う方向性結合器を共振器へ容量結合させるものである。両者のタイプとも共振器の共振周波数を検出することで探針下の容量に関する量を得ることができる。
また、共振器から反射出力の振幅に関る量を検出して探針下の損失に関する量を得ることができ、この検出を前者のタイプでは受信ループから行い、後者のタイプでは方向性結合器から行っている。さらに、同軸構造に代えてマイクロストリップラインで共振器を構成する方法もある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5900618号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/008305号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/103583号明細書
【特許文献4】特表03-509696号公報
【特許文献5】特開2001-305039号公報
【特許文献6】特開2002-168801号公報
【特許文献7】特開2006-010678号公報
【特許文献8】特表05-527823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SCMは、探針下の容量と電気的損失の混成した信号を検出する点で精度に難点がある。一方、SNDMは容量に比例する共振周波数のみを検出する点で精度に優れるが、探針下の損失を測定できない難点がある。さらにSCMとSNDMは、探針と試料間の距離をAFM等で一定に制御できる利点があるが、適用可能な周波数が一つに限られるので、試料の電気特性がマイクロ波周波数に依存するような測定に適さない。
一方、SMMは、複素誘電率に関わる探針下の容量と損失とを複数のマイクロ波周波数で検出できる点で優れているが、探針-試料間の距離の制御が困難であるという問題がある。又、従来のSMMでは、共振器の一端において励振とその出力の受信とを行うため、励振電磁場が受信信号に漏洩しS/Nが劣化するという問題がある。さらに、励振と受信を行う方向性結合器を共振器へ容量結合している場合、方向性結合器を使用できるマイクロ波帯域が制限されるため、測定できるマイクロ波帯域が制限を受けるという難点がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、S/Nを高くして測定精度を向上させると共に、広いマイクロ波帯域にわたり測定が可能なマイクロ波共振器、及びそれを備えたマイクロ波顕微鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のマイクロ波共振器は、導体線路とグランド導体とを有する両端開放型のマイクロ波共振器であって、前記マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における前記導体線路に接続され、かつ前記グランド導体に接触せずに前記マイクロ波共振器の外側に突出し、試料に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段を備えている。
このような構成とすると、マイクロ波共振器の両端を開放しているため、この両端にそれぞれ励振手段および検出手段とを容量結合することで、マイクロ波共振器を共振させる励振手段と、マイクロ波を検出する検出手段とがマイクロ波共振器の両端に別々に配置され、各両端が互いに干渉しないよう距離を十分離すことができる。
さらに、マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における導体線路に測定手段を接続し、マイクロ波共振器の外側に突出させるので、測定手段そのものも励振手段と検出手段とから遠い位置に配置される。
これらの結果、励振波の受信(検出)信号への漏洩や干渉によるS/Nの劣化、測定手段と励振手段及び検出手段との相互作用によるS/Nの劣化を抑制し、高いS/Nを確保しつつ試料の複素誘電特性を測定できる。
また、共振状態の検出手段として、帯域制限や漏洩の問題がある方向性結合器を使用しない場合には、広い帯域にわたり高感度に信号を検出できる。
【0010】
前記マイクロ波共振器は、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、ストリップライン又はコプレーナラインから構成されていてもよい。
【0011】
前記導体線路は、前記両端を除いて誘電体層に囲まれていてもよい。このような構成とすると、測定時にノイズが漏洩することが少なく、測定精度が向上する。
【0012】
前記測定手段は、前記グランド導体及び/又は前記誘電体層の一部をくり抜いて配置されていてもよい。このような構成とすると、くり抜き部に測定手段が表出し、試料へ容易に近接させることができると共に、測定手段と試料との距離を制御する各種制御手段(光てこ等)を用いる空間が確保され、上記した距離制御が行える。
【0013】
前記測定手段は、先端が先鋭化された導電体、又はコイルからなっていてもよい。
前記コイルは、炭素を主成分とするコイル骨格と、該コイル骨格の表面に被覆された導電膜とからなっていてもよい。
【0014】
本発明のマイクロ波顕微鏡は、前記マイクロ波共振器と、前記マイクロ波共振器の一方の端に容量結合され、前記マイクロ波共振器を励振する励振手段と、前記マイクロ波共振器の他端に容量結合され、該他端から透過するマイクロ波を検出する検出手段とを備えている。
【0015】
さらに、前記測定手段と、これに近接する前記試料との相対的な距離を制御する距離制御手段を備えてもよい。
このような構成とすると、測定手段と試料との距離をほぼ一定に保持することができるので、測定手段と試料との距離が変化して複素誘電特性の測定精度を低下させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、S/Nを高くして測定精度を向上させると共に、広いマイクロ波帯域にわたり測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡1の全体構成を示すブロック図である。図1において、マイクロ波顕微鏡1は、マイクロ波共振器100と、マイクロ波共振器100の一方の端104に容量結合(符号C1で表す)された発振器(励振手段)2と、マイクロ波共振器100の他端105に容量結合(符号C2で表す)された検出器(検出手段)4と、試料300のマイクロ波共振器100に対する相対位置を走査するピエゾアクチュエータ6と、マイクロ波顕微鏡1の動作を制御する統括制御コンピュータ10とを備えている。
マイクロ波顕微鏡1はさらに、帰還制御手段(移相器12及び位相比較器14)、及び振幅測定手段(振幅検出器(ダイオード)16及び振幅誤差検出器17)を備えている。
なお、本発明において、マイクロ波顕微鏡は走査型であってもよく、非走査型(試料300の所定位置のみの複素誘電率を測定する)であってもよいが、この実施形態では走査型になっている。
【0018】
マイクロ波共振器100は長尺の角柱状をなし、断面から見て中心に位置する導体線路101と、図示しないグランド導体と、誘電体層103とを有するストリップラインを構成している。又、マイクロ波共振器100は両端開放型であり、両端104、105でそれぞれ励振と検出が別個に行われるようになっている。
マイクロ波共振器100の両端104、105を結ぶ中央部における導体線路101には、導体線路101の延設方向とほぼ直角に探針(測定手段)102が接続され、探針102は誘電体層103の一部をくり抜いたくり抜き部107を通って、マイクロ波共振器100の外側に突出している。なお、図1では、マイクロ波共振器100の外縁を符号110で表示している。探針102は先端が先鋭化された金属針であり、探針102に対向する試料300に近接して試料の複素誘電率に関する量を測定可能になっている。
【0019】
より詳しくは、くり抜き部107は、マイクロ波共振器の導体線路101の延びる方向に垂直に切り取られた誘電体層103yが露出する側壁と、マイクロ波共振器の導体線路101の延びる方向に切り取られた誘電体層103xが露出する前壁とから構成されている。そして、探針102は、誘電体層103xの面と垂直にして誘電体層103xから突出している。
ここで、本発明において、マイクロ波共振器の「外側」とは、マイクロ波共振器の外表面を構成するすべての面をいい、くり抜き部を設けない場合は、マイクロ波共振器を構成するストリップライン等の外面をいい、くり抜き部を設けた場合は、くり抜き部107の表面を含むマイクロ波共振器のすべての表面をいう。従って、図2の場合、くり抜き部107を構成する前壁(誘電体層103x)及び側壁(誘電体層103y)も、「外側」に含まれる。
又、探針(測定手段)102がマイクロ波共振器の外側に突出するとは、マイクロ波共振器の外側を構成するいずれかの表面に取付けられた測定手段が、マイクロ波共振器の外側を構成する他の面と接触せずに存在することをいう。例えば、図2の場合、くり抜き部107を設けることにより、前壁(誘電体層103x)に取付けられた探針102は、側壁(誘電体層103y)と間隔を持って配置され、これにより、探針102を試料300に近接できると共に、光てこのレーザ光の光路を設ける空間を備えることができる。
【0020】
ここで、試料の複素誘電率に関する量とは、具体的には、後述するようにしてマイクロ波顕微鏡1がマイクロ波共振器100の共振状態に関する量(複素共振周波数の変化)を測定し、複素共振周波数の変化に基づいて算出される量である。複素誘電率に関する量は、例えば、試料の容量と導電性である。
【0021】
この実施形態では、探針120の表面121がレーザ光を反射可能な鏡面になっていて、探針120がわずかに撓んでカンチレバーとして機能するようになっている。そして、マイクロ波顕微鏡1は、探針120の表面121にレーザ光を照射するレーザ光源8a、照射されたレーザ光の反射光を受光する位置検出センサ8b、及び上述のコントローラ8cを備え、これらのレーザ光源8a、位置検出センサ8b、及びコントローラ8cが本発明の「距離制御手段」を構成している。
【0022】
マイクロ波顕微鏡1は次のように動作する。
まず、発振器(電圧制御発振器)2からマイクロ波が発振されると、移相器12はその励振信号を受信し、位相を調整して位相比較器14に入力する。又発振されたマイクロ波は、容量結合C1を介してマイクロ波共振器100に供給され、マイクロ波共振器100の共振状態が容量結合C2を介して検出器4に受信される。
検出器4は、透過するマイクロ波を受信し、マイクロ波の振幅のみならず、励振信号に対する位相を含んだマイクロ波の複素振幅を検出する。検出器4としては、励振信号(例えばsinωt)、励振信号と90度位相が異なる成分(cosωt)、及び受信透過信号をミキサで混合(数学的には乗算)し、それぞれの乗算出力(Inphaseとquadrature)をダイオードにより検波して複素振幅を得るものを用いることができる。必要により、これらの複素振幅から振幅と位相を計算できる。
【0023】
受信信号は位相比較器14に入力されて移相器12からの励振信号と比較される。位相比較器14は、励振信号と受信信号との位相差を位相差信号として発振器2に出力(フィードバック)する(図1のL1のループ)。発振器2は、励振信号と受信信号との位相差が一定となるように発振を制御し、共振周波数をトラッキング(追尾)する。このように、発振器2からの出力と、マイクロ波共振器100からの受信信号との位相差が一定になるよう、共振周波数を帰還制御(フィードバック制御)することは、いわゆる位相・ロックド・ループ(PLL)として知られており、入力信号に同期した発振器出力が得られる。
又、受信信号は振幅検出器16にも入力されて振幅が検出され、検出された振幅は振幅誤差検出器17に入力される。振幅誤差検出器17は比較器になっていて、検出された振幅と所定の値Aとの差を出力するようになっている。振幅誤差検出器17の出力は発振器2に出力(フィードバック)され、励振振幅を一定にするように制御される(図1のL2のループ)。
【0024】
そして、位相比較器14からの位相差信号と、振幅誤差検出器17からの振幅誤差信号とは統括制御コンピュータ10に入力され、複素共振周波数(共振周波数およびQ値)として記録され、必要に応じて画像化される。
ここで、マイクロ波共振器100に配置された探針120を試料300に近接させると両者が相互作用し、マイクロ波共振器100の実効的な共振器特性(共振周波数およびQ値)を変化させる。一般には、共振周波数が低周波数側にシフトし、その振幅が広がってQ値が小さくなる。そして、共振周波数およびQ値は、試料300の容量(キャパシタンス)やインピーダンスに応じて変化するから、共振周波数およびQ値の変化を検出することで、試料300の複素共振周波数を測定し、複素誘電率に関する量を得ることができる。試料300の複素共振周波数は、例えば、予め標準試料について測定した複素共振周波数のデータをルックアップテーブルに格納しておき、このテーブルを参照することで求めることができる。
なお、発振器2に自動増幅率制御回路が付加されている場合、Q値の変化を検出する他の方法として、受信信号を検波し、設定値との差を誤差増幅器により増幅して自動増幅制御回路の制御信号として用い、励振信号の振幅を一定に保つとともに、制御信号を測定し記録することもできる。
【0025】
なお、この実施形態では、マイクロ波顕微鏡1は走査型であり、以下のように試料の走査を行う。
試料300は、ピエゾアクチュエータ(位置走査手段)6上に設けられたステージ7上に配置され、ピエゾアクチュエータ6がxy平面(ステージ7面)の2次元に変位することにより、試料300の相対位置をxy上で走査することができる。又、後述するように、ピエゾアクチュエータ6はz方向(ステージ7に垂直な面)に変位することができ、これにより試料300と探針120間の距離を一定に保持する。なお、ピエゾアクチュエータ6は、コントローラ(距離制御手段)8cによって動作制御される。
統括制御コンピュータ10は、上記した複素共振周波数(共振周波数およびQ値)を、コントローラ8cから取得した試料300の走査データ毎に記録し、試料300の個々のxy方向の座標毎に複素誘電特性(電気インピーダンス等)をマッピング(画像化)する。さらに、統括制御コンピュータ10は、画像化したデータを適宜ディスプレイ(表示手段)11に表示させる。
【0026】
又、この実施形態では、試料300と探針120の間の距離を次のように制御する。
まず、試料300と探針120の距離が変化し、試料300が探針120に接触するとカンチレバーである探針120が撓み、位置検出センサ8b上での反射光の受光位置が変化する。位置検出センサ8bは4分割フォトディテクタとなっていて、「光てこ」方式で変位の検出を行う。つまり、位置検出センサ8b上に入射したレーザ光のスポットは、探針120の変位に応じてディテクタ面内を動くので、4分割された各フォトディテクタ面の差分を検出することにより、探針120の変位を検出することができる。
そして、位置検出センサ8bによって検出された変位信号はコントローラ8cに入力され、コントローラ8cは、この変位を打ち消すような制御信号を生成してピエゾアクチュエータ6をz方向に動作させる。このようなフィードバック制御を行うことにより、試料と探針間の距離(両者が接触しないで近接した位置)を一定に保つことができ、上記した複素誘電特性(電気インピーダンス等)の測定精度が向上する。
【0027】
図2は、マイクロ波共振器100の詳細な構造を示す。マイクロ波共振器100は、図3の断面図に示すように、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102、102が形成され、各グランド導体102、102の間に誘電体層103が介装されると共に、誘電体層103の中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101が延びている。
図2に戻り、マイクロ波共振器100は、長手方向(両端104、105を結ぶ)中央部で所定の曲げ半径で曲げられている。そして、屈曲部の外側突出部で、導体線路101より外側のストリップライン(グランド導体102及び誘電体層103を含む)をくり抜いて(切除して)、くり抜き部107が形成されている。
なお、くり抜き部は、マイクロ波共振器100の側壁から導体線路101の近傍に至るまでくり抜かれているが、導体線路101が露出しないよう、わずかに誘電体層103を残している。そして、グランド導体102と平行になるようにして、探針120がくり抜き部の側壁に残った誘電体層103を貫通して導体線路101に接続されている。又、誘電体層103から外側に延びた探針120は、くり抜き部107内で下方に折曲げられ、探針120の先端が下方を向いている。又、探針120のうち、下方に折曲げられた前面が表面(鏡面)121を構成している。
【0028】
ここで、両端開放の共振器において、共振器の実効的な長さをLRとすれば、共振器内の電磁波の波長λが、λ=2LR/n(n=正の整数)を満たすときに共振する。nが奇数の場合に共振器の中央部は電場振幅の節となり、nが偶数の場合には電場振幅の腹となる。
従って、測定手段(探針、コイル)102を共振器の中央部における電場振幅の腹又は節となる位置に設置する。この場合、測定手段が試料の電気的特性に感受性を持つのは、nが偶数であって測定手段が電場振幅の腹になる位置に設置された場合である。一方、測定手段が試料の磁気特性に感受性を持つのは、nが奇数であって探針が電場振幅の節(すなわち磁場の振幅の腹)になる位置に設置された場合である。前者の場合、測定手段(探針)を先端が先鋭化された導電体とすることで試料の電気特性を検出できる。後者の場合、測定手段としてコイルを用いることで試料の磁気特性(透磁率等)を検出できる。
なお、本発明において、共振器の「中央」とは、設計上では共振波長の数十分の1程度の精度で中央であればよい。
【0029】
又、探針120で不要な共振が生じないよう、探針120の長さが共振波長の1/4以下であることが好ましく、共振波長の1/10以下であることがより好ましい。
なお、図2の例の場合、探針120の長さは、外部に露出している全長(グランド導体102と平行な部分及び下方に折曲げられた部分の合計長さ)である。
【0030】
マイクロ波共振器100の両端104、105は、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合(C1、C2)されている。この実施形態において、容量結合C1、C2は、それぞれ端104と発振器2、及び端105と検出器4の間に設けられたギャップにより形成されている。
図4に示すように、このギャップは、容量結合を形成しようとする位置で導体線路101の長手方向に空隙101xを形成することで得られる。なお、この空隙は誘電体で満たされていても良い。容量結合のための空隙の間隔は短いことが好ましく、例えば10μm程度である。又、マイクロ波共振器100の幾何学的な長さを決める2つの容量結合C1,C2は同じ結合度である必要はなく、励振及び検出の条件としてそれぞれ結合度が異なっていても良い。
【0031】
なお、この実施形態においては、共振器長は20mm、曲げ角は0.3ラディアンであり、曲げ半径は1.5mmである。又、導体線路101からの探針120の先端までの長さは1.5mmである。
さらに、この実施形態において、ストリップラインは上下非対称となっている。つまり、図3において、上側グランド導体102と導体線路101との距離d1の方が、下側グランド導体102と導体線路101との距離d2より大きく、具体的には、d1=0.9mm、d2=0.13mmとなっている。上記したように、探針120の長さが比較的短いため(例えば、共振周波数20GHzの場合、共振波長の1/4は1.5mm)、ストリップラインを上下非対称として、導体線路101から下側グランド導体102側に探針120を突出させるようにすれば、探針120が下側グランド導体102から外側に露出し、探針120の試料への近接、及び探針120の距離の測定(上記した光てこ方式等による)が容易となる。
勿論、本発明はこれらの具体的な寸法に限られない。
【0032】
以上述べたように、本発明の実施形態に係るマイクロ波共振器及びマイクロ波顕微鏡は、マイクロ波共振器の両端を開放している。このため、この両端にそれぞれ励振手段および検出手段とを容量結合することで、マイクロ波共振器を共振させる励振手段と、マイクロ波を検出する検出手段とがマイクロ波共振器の両端に別々に配置され、各両端が互いに干渉しないよう距離を十分離すことができる。
さらに、マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における導体線路に測定手段を接続し、マイクロ波共振器の外側に突出させるので、測定手段そのものも励振手段と検出手段とから遠い位置に配置されている。
これらの結果、励振波の受信(検出)信号への漏洩や干渉によるS/Nの劣化、測定手段と励振手段及び検出手段との相互作用によるS/Nの劣化を抑制し、高いS/Nを確保しつつ試料の複素誘電特性を測定できる。
また、本発明においては、共振状態の検出手段として、帯域制限や漏洩の問題がある方向性結合器を使用しないため、広い帯域にわたり高感度に信号を検出できる。
【0033】
又、この実施形態においては、距離制御手段を設け、複素誘電特性を測定する間、探針と試料との距離をほぼ一定に保持している。このため、探針と試料との距離が変化して複素誘電特性の測定精度を低下させることを抑制できる。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波共振器100Bの構成を示す。なお、マイクロ波共振器100Bが取り付けられるマイクロ波顕微鏡の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。
マイクロ波共振器100Bは、第1の実施形態に係るマイクロ波共振器100と同様、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102B、102Bが形成され、各グランド導体102B、102Bの間に誘電体層103Bが介装されると共に、誘電体層103Bの中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101Bが延びている。
【0035】
又、マイクロ波共振器100Bは、長手方向中央部で所定の曲げ半径で曲げられ、屈曲部の下方で、導体線路101がマイクロ波共振器の外縁110Bから表出するようにストリップライン(グランド導体102Bを含む)をくり抜き、くり抜き部(円形の開口)107Bが形成されている。
図6に示すように、くり抜き部107Bから臨む導体線路101Bに探針120Bの基端が固定され、導体線路101Bに電気的に接続されている。又、くり抜き部107Bの直径は探針120Bの直径より大きく、探針120Bがグランド導体102Bと接触しないようになっている。探針120Bは先鋭化した金属(例えば、プラチナイリジウム)からなっている。
【0036】
ここで、探針120Bの設置位置は、第1の実施形態と同様、マイクロ波共振器100Bの中央部で電場振幅の節となる部分である。又、第2の実施形態においては、くり抜き部107Bから導体線路101が露出しているため、くり抜き部107Bで不要な共振が生じる可能性がある。そこで、くり抜き部107Bの直径をマイクロ波共振器の共振波長の1/4以下とし、不要な共振を防止している。くり抜き部107Bの直径が共振波長の1/10以下であることがより好ましい。
なお、第2の実施形態のように、くり抜き部107Bから導体線路101が露出している場合、不要な共振を防止するためのくり抜き部107Bの「直径」とは、くり抜き部107Bの表出部分をマイクロ波共振器の外縁110Bに投影した外形のうち、最大長さの部分をいう。
又、上記したくり抜き部107Bの開口部に後から誘電体等を充填し、不要な共振を防止するようにしてもよい。
【0037】
又、マイクロ波共振器100Bの両端104B、105Bは、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合されている。この実施形態において、容量結合は、それぞれ端104Bと発振器2、及び端105Bと検出器4の間に設けられたギャップにより形成されている。
図7に示すように、このギャップは、容量結合を形成しようとする位置で導体線路101Bの長手方向に間隙101Bxを形成させることで得られる。
ここで、間隙101Bxに接する導体線路101Bの端縁には、導体線路101Bの幅方向に2箇所の段部が形成され、2つの段部101で挟まれた導体線路101Bの中央部が図7の前方に向かって突出し、間隙101Bxの縁部が入り組んだ(インターディジタルの)ギャップを形成している。
導体線路101Bの幅方向の入り組み具合を調整することで、結合度を調整できる。
なお、ギャップとなる空間に誘電体層が介装されていなくてもよく、又、誘電体層が介装されていてよい。後者の場合、マイクロ波共振器100Bを構成する誘電体層をギャップに介装するとよい。
ギャップの間隔は短いことが好ましく、例えば10μm程度である。又、2つの容量結合は同じ結合度である必要はなく、励振及び検出の条件としてそれぞれ結合度が異なっていても良い。
【0038】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るマイクロ波共振器100Cの構成を示す。なお、マイクロ波共振器100Cが取り付けられるマイクロ波顕微鏡の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。
マイクロ波共振器100Cは、第1の実施形態に係るマイクロ波共振器100と同様、矩形断面の細長いストリップラインとして構成され、ストリップラインの上下面にそれぞれグランド導体102C、102Cが形成され、各グランド導体102C、102Cの間に誘電体層103Cが介装されると共に、誘電体層103Cの中心部にストリップラインの長手方向に線状の導体線路101Cが延びている。
【0039】
又、マイクロ波共振器100Cは、長手方向中央部で曲げられ、屈曲部の外側で、導体線路101Cより外側のストリップライン(グランド導体102Cを含む)をくり抜くことにより、くり抜き部107Cが形成されている。なお、このくり抜き部107Cは、屈曲部で導体線路101Cより外側を、導体線路101Cの幅方向に平行に切開した形状を有し、切開されたマイクロ波共振器100Cの端面が屈曲部で表出するようになっている。
なお、くり抜き部107Cから表出した導体線路101Cは、後述するコイル120Cを配置するために切除されている。
【0040】
そして、図9に示すように、2巻に巻回されたコイル(測定手段)120Cの両端が、くり抜き部107Cから誘電体層103Cを貫通して(2つの)導体線路101Cにそれぞれ(直列に)接続している。従って、コイル120Cをマイクロ波共振器100Cの中央部における電場振幅の節(すなわち磁場の振幅の腹)となる位置に設置することで、試料の磁気特性(透磁率等)を検出できる。
なお、第3の実施形態において、マイクロ波共振器100Cの幾何学的な導体線路の長さは28.55mm(両端104、105の間の導体線路101Cの延設部分の全長)、曲げ角は0.46ラディアン、コイル半径0.3mm、1.36ターンである。勿論、本発明はこれらの具体的な寸法の値に限られない。
又、例えばFIB(Focused Ion Beam)により作成されるカーボンのコイルに金属膜をコーティングしたコイルを用いることで、より微細なコイルを製造して微細な領域の磁気的性質を検出することができる。
【0041】
なお、マイクロ波共振器100Cの両端104C、105Cは、それぞれ発振器2及び検出器4と容量結合されているが、容量結合は第1の実施形態と同様であるので説明及び図示を省略する。
又、第3の実施形態においては、導体線路101Cがくり抜き部107Cから表出していないので、くり抜き部107Cを大きく切開し、コイル120Cが表出するように構成することができる。
【0042】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るマイクロ波共振器100Dの構成を示す断面図である。なお、図10は、導体線路101Dの延設方向に垂直な面で切断した断面図であり、それ以外の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。又、マイクロ波共振器100Dの中央に探針120Dが配置される点も第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態のマイクロ波共振器100Dはマイクロストリップラインであり、グランド導体102Dの片面に誘電体層103Dが介装され、誘電体層103Dの表面の中心線上に導体線路101Dが配置され、導体線路101Dは大気中に表出している。
そして、導体線路101Dから上方(導体線路101Dの表面と垂直な方向)に探針120Dが延び、探針120Dの基端が導体線路101Dに電気的に接続されている。
第4の実施形態の場合、製造が容易である一方、導体線路101Dが露出しているため、測定精度が若干劣ることがある。
【0043】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るマイクロ波共振器100Eの構成を示す断面図である。なお、図11は、導体線路101Eの延設方向に垂直な面で切断した断面図であり、それ以外の構成は、図1に示した第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡と同様であるので図示を省略する。又、マイクロ波共振器100Eの中央に探針120Eが配置される点も第1の実施形態と同様である。
第5の実施形態のマイクロ波共振器100Eはコプレーナラインであり、誘電体層103Eの片面に、グランド導体102Eと導体線路101Eが並んで配置され、導体102Eと導体線路101Eは大気中に表出している。
そして、導体線路101Eから側方(グランド導体102E側と反対側)に、導体線路101Eの表面と平行な方向に探針120Eが延び、探針120Eの基端が導体線路101Eに電気的に接続されている。
第5の実施形態の場合も、製造が容易である一方、導体線路101Eが露出しているため、測定精度が若干劣ることがある。
【0044】
図12は、本発明の第6の実施形態に係るマイクロ波共振器100Fの構成を示す断面図である。なお、図12は、探針120Fの位置が異なること以外は、図10と同様であるので、図10と同一の構成部分を同一符号を付して説明を省略する。
第6の実施形態のマイクロ波共振器100Fにおいては、導体線路101Fから下方(導体線路101Fの表面と垂直で、かつグランド導体102Fに向かう方向)に、誘電体層103Fを貫通してくり抜き部107F(開口)が形成されている。くり抜き部107F内には探針120Fが配置され、探針120Fの基端が導体線路101Fに電気的に接続されていると共に、探針120Fの先端がグランド導体102Fと離間しつつグランド導体102Fから外側に表出している。
このとき、くり抜き部107Fの直径dを共振波長の1/4以下(より好ましくは共振波長の1/10以下)にすることで、くり抜き部107Fでの不要な共振を防止し、測定精度を向上することができる。
第6の実施形態の場合、試料側(探針120F側)に導体線路101Fが露出していないため、第4の実施形態に比べて測定精度が向上する。
【0045】
図13は、本発明の第7の実施形態に係るマイクロ波共振器100Gの構成を示す断面図である。なお、図13は、探針120Gの位置が異なること以外は、図11と同様であるので、図11と同一の構成部分を同一符号を付して説明を省略する。
第7の実施形態のマイクロ波共振器100Gにおいては、導体線路101Gから下方(導体線路101Fの表面と垂直)に、誘電体層103Gを貫通して探針120Gが配置され、探針120Gの基端が導体線路101Gに電気的に接続されていると共に、誘電体層103Gから外側に表出している。
このとき、探針120Gが誘電体層103Gに埋設され、開口(くり抜き部)が無いため、不要な共振が生じず、測定精度を向上することができる。
第7の実施形態の場合、試料側(探針120G側)に導体線路101Gが露出していないため、第5の実施形態に比べて測定精度が向上する。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、マイクロ波共振器は、ストリップラインの他、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、又はコプレーナラインから構成されていてもよい。
又、容量結合は、マイクロ波共振器の端部と、励振手段及び/又は検出手段の間とにインターディジタルコンデンサ又はチップコンデンサを挿入することにより形成してもよい。
さらに距離制御手段は、上記した光てこの他、光干渉又はチューニングフォークを用いてもよい。ここで、チューニングフォーク(音叉)は、測定手段(探針)を振動させるための音叉型の水晶振動子であり、測定手段を水晶振動子の端に配置する。そして、測定手段を取り付けた水晶振動子を励振用圧電素子によって共振させることで、測定手段を振動させる。そして、水晶振動子から出力される電荷の情報を読み取るだけで、簡単に測定手段の振幅を検出し、試料と測定手段との間の距離の制御が可能となる。
又、探針を、半導体プロセスを用いてシリコンから形成し、探針の表面に金属を蒸着して導電性を付与してもよく、探針とカンチレバーを半導体プロセスを用いて一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波顕微鏡の全体構成を示すブロック図である。
【図2】マイクロ波共振器の詳細な構造を示す図である。
【図3】ストリップラインの断面を示す図である。
【図4】容量結合を示す図2の部分拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図6】くり抜き部と探針を示す図5の部分拡大図である。
【図7】容量結合を示す図5の部分拡大図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図9】くり抜き部とコイルを示す図8の部分拡大図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係るマイクロ波共振器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
2 励振手段(発振器)
4 検出手段(検出器)
6 位置走査手段
8a〜8c 距離制御手段(光てこ)
10 統合制御コンピュータ
12 帰還制御手段
100〜100G マイクロ波共振器
101〜101G 導体線路
102〜102G グランド導体
104〜104C マイクロ波共振器の一方の端
105〜105C マイクロ波共振器の他端
107〜107F くり抜き部
120〜120G 測定手段(探針、コイル)
C1、C2 容量結合
300 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線路とグランド導体とを有する両端開放型のマイクロ波共振器であって、
前記マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における前記導体線路に接続され、かつ前記グランド導体に接触せずに前記マイクロ波共振器の外側に突出し、試料に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段を備えたマイクロ波共振器。
【請求項2】
前記マイクロ波共振器は、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、ストリップライン又はコプレーナラインから構成されている請求項1記載のマイクロ波共振器。
【請求項3】
前記導体線路は、前記両端を除いて誘電体層に囲まれている請求項1又は2記載のマイクロ波共振器。
【請求項4】
前記測定手段は、前記グランド導体及び/又は前記誘電体層の一部をくり抜いて配置されている請求項1〜3のいずれか記載のマイクロ波共振器。
【請求項5】
前記測定手段は、先端が先鋭化された導電体、又はコイルからなる請求項1〜4のいずれか記載のマイクロ波共振器。
【請求項6】
前記コイルは、炭素を主成分とするコイル骨格と、該コイル骨格の表面に被覆された導電膜とからなる請求項5記載のマイクロ波共振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のマイクロ波共振器と、
前記マイクロ波共振器の一方の端に容量結合され、前記マイクロ波共振器を励振する励振手段と、
前記マイクロ波共振器の他端に容量結合され、該他端から透過するマイクロ波を検出する検出手段とを備えたマイクロ波顕微鏡。
【請求項8】
さらに、前記測定手段と、これに近接する前記試料との相対的な距離を制御する距離制御手段を備えた請求項7記載のマイクロ波顕微鏡。
【請求項1】
導体線路とグランド導体とを有する両端開放型のマイクロ波共振器であって、
前記マイクロ波共振器の両端を結ぶ中央部における前記導体線路に接続され、かつ前記グランド導体に接触せずに前記マイクロ波共振器の外側に突出し、試料に近接して該試料の複素誘電率に関する量を測定する測定手段を備えたマイクロ波共振器。
【請求項2】
前記マイクロ波共振器は、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、ストリップライン又はコプレーナラインから構成されている請求項1記載のマイクロ波共振器。
【請求項3】
前記導体線路は、前記両端を除いて誘電体層に囲まれている請求項1又は2記載のマイクロ波共振器。
【請求項4】
前記測定手段は、前記グランド導体及び/又は前記誘電体層の一部をくり抜いて配置されている請求項1〜3のいずれか記載のマイクロ波共振器。
【請求項5】
前記測定手段は、先端が先鋭化された導電体、又はコイルからなる請求項1〜4のいずれか記載のマイクロ波共振器。
【請求項6】
前記コイルは、炭素を主成分とするコイル骨格と、該コイル骨格の表面に被覆された導電膜とからなる請求項5記載のマイクロ波共振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のマイクロ波共振器と、
前記マイクロ波共振器の一方の端に容量結合され、前記マイクロ波共振器を励振する励振手段と、
前記マイクロ波共振器の他端に容量結合され、該他端から透過するマイクロ波を検出する検出手段とを備えたマイクロ波顕微鏡。
【請求項8】
さらに、前記測定手段と、これに近接する前記試料との相対的な距離を制御する距離制御手段を備えた請求項7記載のマイクロ波顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−48692(P2010−48692A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213750(P2008−213750)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
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