説明

マイクロ波手術器

【課題】小型化が可能なマイクロ波手術器を提供し、手術作業の利便性を向上させることを課題とする。
【解決手段】本発明に係るマイクロ波手術器1は、生体組織にマイクロ波を照射するための電極部24を有する手術器本体21と、手術器本体21に内蔵され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器51と、手術器本体21に内蔵され、電極部24とマイクロ波発振器51との間に接続されており、マイクロ波発振器からのマイクロ波を増幅させて電極部24に送る増幅器52と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波手術器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体組織に対してマイクロ波を照射することで生体組織を凝固させたり止血させたりするマイクロ波手術器として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。このマイクロ波手術器は、マイクロ波発生ユニットと、このマイクロ波発生ユニットからのマイクロ波を生体組織に対して照射する手術電極とを有している。手術電極からマイクロ波を生体組織に対して照射することによって生体組織内に発生した誘電熱を利用し、生体組織の凝固や止血、切開等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3782495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したマイクロ波手術器は、マイクロ波発生ユニットと手術電極とをコネクタを介して同軸ケーブルにより接続しており、この同軸ケーブルによってマイクロ波発生ユニットからのマイクロ波を手術電極へと伝送している。しかしながら、同軸ケーブルにおける電力損失は非常に大きく、その伝送効率は約30〜50%程度である。また生体組織部とのインピーダンス不整合が加わると更に効率が低下する。このように、同軸ケーブルにおける電力損失が大きいため、この電力損失分を補うために、マイクロ波発生ユニットを大出力とする必要があり、その結果、マイクロ波発生ユニットが大型の装置となってしまうという問題があった。そこで、本発明は、小型化が可能なマイクロ波手術器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るマイクロ波手術器は、生体組織にマイクロ波を照射するための電極部を有する手術器本体と、前記手術器本体に内蔵され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記手術器本体に内蔵され、前記電極部と前記マイクロ波発振器との間に接続されており、前記マイクロ波発振器からのマイクロ波を増幅させて前記電極部に送る増幅器と、を備えている。
【0006】
従来は、マイクロ波発振器と増幅器とを有するマイクロ波発生ユニットは、手術器本体とは別に構成されていたため、このマイクロ波発生ユニットと手術器本体と(詳細には増幅器と電極部と)を、可撓性のある約2〜3m程度の長い同軸ケーブルによって接続していた。しかしながら、このマイクロ波手術器によれば、マイクロ波発振器及び増幅器を有するマイクロ波発生ユニットが手術器本体に内蔵されており、従来のような可撓性のある長い同軸ケーブルによって電極部と増幅器とを接続する必要が無い。このため、例えば、長さが1〜15cm程度のもの、より好ましくは10〜14cm程度の、しかも可撓性を有さない同軸管によるケーブルでこれらを接続することができ、電力損失を低減することが可能となる。その結果、マイクロ波発生ユニットに大出力を要求しないために、これを小型化することが可能となり、その結果、マイクロ波手術器全体を小型化することができる。また、従来のマイクロ波手術器は大型であったために手術室に据え置きとなっていたが、本願発明に係るマイクロ波手術器は、上述したように小型化できるために気軽に持ち運びすることができる。また、可撓性のある同軸ケーブルであっても十分な柔軟性を有していないために手術器本体の操作性が悪いという問題があったが、本発明に係るマイクロ波手術器は、上述したように手術器本体内にマイクロ波発振器と増幅器とが内蔵されているために手術器本体とマイクロ波発生ユニットとを接続する同軸ケーブルを省略することができ、手術器本体の操作性を向上させることもできる。
【0007】
また、上記マイクロ波発振器及び増幅器を有するマイクロ波発生ユニットは、マイクロ波を発生させ且つ増幅する手段として半導体素子を用いた半導体マイクロ波発生ユニットとすることができる。従来は、同軸ケーブルによる電力損失を補うためにマイクロ波発生ユニットとしてマグネトロンを使用していた。しかし本発明に係るマイクロ波手術器では、同軸ケーブルを使用しないために電力損失を考慮する必要がなく、半導体素子を用いたマイクロ波発生ユニットを使用することができる。この半導体素子を用いたマイクロ波発生ユニットは、マグネトロンのように強磁性体を使用していないために、MRI装置と併用することが可能となる。
【0008】
また、増幅器と電極部との間に接続され、増幅器の出力インピーダンスと生体組織のインピーダンスとを整合させるための可変出力整合回路と、増幅器と電極部との間における反射電力及び入射電力を別々に検出する検出回路と、検出回路により検出された入射電力および反射電力の値に基づいて可変出力整合回路を制御する制御手段と、をさらに備えた構成とすることもできる。生体組織は、電磁気的インピーダンスの変化が大きいために、マイクロ波発生ユニットへ戻ってくる反射電力も大きくなってしまい、マイクロ波照射電力効率は10%〜20%程度となる。これに対して、上述したように、入射電力及び反射電力の値に基づいて可変出力整合回路を制御することで、変化する生体組織のインピーダンスと増幅器の出力インピーダンスとの整合をとることができ、マイクロ波照射電力効率を向上させることができる。また、従来は、反射電力と入射電力との合成によるマイクロ波発生ユニットの損傷を防止するために強磁性体を有するアイソレータなどの保護装置を設置していたが、上述したように構成することで、アイソレータなどの保護装置を省略することもできる。この結果、MRI装置との併用が可能となる。
【0009】
また、電極部へ低周波交流電流を供給するための低周波定電流源をさらに備えていてもよい。この構成によれば、低周波交流電流を生体組織へ送り、生体組織における電気抵抗の変化をモニタリングすることができる。生体組織は、マイクロ波の照射によって組織が変化することによって電気抵抗が変化するために、例えば、30〜50%程度抵抗値が低下すると止血が完了したと判断することができる。なお、低周波とは、生体組織におけるH2OやNaイオンなどの電気分解の影響が出ない程度であれば問題はなく、例えば、500Hz〜10kHz程度のものをいい、矩形波様が好ましい。
【0010】
また、マイクロ波発振器や増幅器などから構成される電子回路部を内部に収容する筐体と、この筐体に近接して配置されて内部に冷却水が供給される冷却水袋と、をさらに備えた構成とすることができる。この構成によれば、冷却水によって、筐体内からの熱を効率的に放出することができる。
【0011】
また、マイクロ波を照射するタイミングに合わせて冷却水袋への冷却水の供給量を制御するような構成とすることで、より効率的に放熱することができる。
【0012】
また、生理食塩水を冷却水とすることができる。この場合、この生理食塩水を電極部へと排水するような排水路を設けた構成とすることもできる。この構成により、電極部を洗浄することができ、炭化組織が電極部に固着することを防止したり、周辺組織の温度上昇を防止したりすることもできる。
【0013】
また、手術器本体は、電極部が先端に形成された挿入部を有しており、この挿入部を取り外し可能に構成することが好ましい。この構成によれば、電子回路部が内蔵された手術器本体を消毒液に浸すことなく、手術器本体から取り外した挿入部のみを消毒液に浸すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化が可能なマイクロ波手術器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態に係るマイクロ波手術器の正面図である。
【図2】図2は本実施形態に係るマイクロ波手術器の底面図である。
【図3】図3は本実施形態に係る筐体の正面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】図4は他の実施形態に係る筐体の側面図である。
【図5】図5は本実施形態に係る冷却水袋が設置された筐体の側面図である。
【図6】図6は図5の平面図である。
【図7】図7は他の実施形態に係る冷却水袋が設置された筐体の側面図である。
【図8】図8は本実施形態に係る電子回路部の回路図である。
【図9】図9は他の実施形態に係る冷却水袋が設置された筐体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るマイクロ波手術器の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、マイクロ波手術器1は、先端に電極部24を有する手術器本体2を備えている。この手術器本体2は、本体グリップ部21と、この本体グリップ部21に揺動可能に取り付けられたスライドグリップ部22と、本体グリップ部21の先端に取り外し可能に螺合された挿入部23と、から主に構成されている。なお、挿入部23は、術中、人体内に挿入される部分であるため、生体組織や血液などが付着しやすい部分である。また、挿入部23の先端に電極部24が設けられている。
【0018】
電極部24は、第1の電極241および第2の電極242から構成されており、スライドグリップ部22を握って矢印Aで示すように本体グリップ部21側に移動させることで、第1の電極241及び第2の電極242が互いに近づくように移動して生体組織を挟むことができるように構成されている。なお、第2の電極242がマイクロ波を供給するための電極であり、第1の電極241がリターン用のGND電極である。また、本体グリップ部21にはマイクロ波照射のオン/オフを制御するスイッチ25が設けられており、このスイッチ25を押すことで電極部24からマイクロ波が照射され、スイッチ25を離すことでマイクロ波の照射が停止するように構成されている。
【0019】
本体グリップ部21の後端側からは、後述する電子回路部5へ電力を供給するための電源ケーブル26や、電子回路部5からの熱を放出するための冷却水を供給する給水チューブ41が延びており、これらは電源や冷却水源に接続されている、もしくは接続可能となっている。なお、特に限定されるものではないが、手術器本体2の全長(電極部24の先端から本体グリップ部21の後端までの長さ)Lは、250〜300mm程度、スライドグリップ部22が本体グリップ部21から最も離れた位置にあるときの手術器本体2の高さHは、25〜30mm程度、手術器本体2の幅Wは、120〜140mm程度とすることができる。
【0020】
手術器本体2内、具体的には本体グリップ21内に、図3に示すような、直方体上の筐体3が設置されている。この筐体3は、特に限定されるわけではないが、軽さや熱伝導に優れているという観点からアルミニウム等によって形成することができ、この筐体3内には、後述するマイクロ波発振器51、増幅器52、可変出力整合回路53、検出回路54、マイクロコントローラ55等から構成される電子回路部5が収容されている。なお、マイクロコントローラ55は、筐体3内に収容せずに、別ユニットとして手術器本体2(特に本体グリップ21)内の他の場所に収容することができる。この場合は、マイクロコントローラ55と筐体3内の各部品とをコネクタを介して接続することができる。
【0021】
そして、筐体3の先端部にはSMAコネクタ等のコネクタ31が設置されており、挿入部23を本体グリップ部21に螺合させることで、このコネクタ31が、挿入部23内の給電ライン231の基端に設けられたコネクタ232に接続可能となっている。なお、この給電ライン231は、例えば、長さが、1〜15cm程度、より好ましくは10〜14cm程度の可撓性を有さない同軸管による低損失のケーブルなどによって構成することができる。また、本体グリップ21内の形状が複雑である場合は、筐体3の設置を容易にするために、筐体を2つに分けてもよく、例えば、図4に示すように、第1の筐体3aと第2の筐体3bとに分け、第1の筐体3a内にマイクロ波発振器51および増幅器52を収容し、第2の筐体3b内に可変出力整合回路53や検出回路54を収容することができる。なお、マイクロコントローラ55は、その大半をマイクロコンピュータチップの中に組み込んで非常に小さく構成することができるため(例えば、2×2×1cm程度)、本体グリップ21の空きスペースや筐体3内に収容することができ、筐体3内に収容する場合は、筐体3aや筐体3bのどちらに収容することもできる。この場合は、第1の筐体3a内の電子回路と、第2の筐体3b内の電子回路とを、長さが、1〜15cm程度、より好ましくは10〜14cm程度の可撓性を有さない同軸管による低損失のケーブル32や制御信号線(図示省略)によって接続することができる。
【0022】
マイクロ波電力の低下や動作不安定などの問題を防止するために、筐体3内の電子回路部5から発生する熱を効果的に放出する必要がある。このため、本実施形態では、図5及び図6に示すように、筐体3の上面をほぼ覆うように冷却水袋4が筐体3上に設けられている。この冷却水袋4内に冷却水を供給するよう、冷却水袋4は給水チューブ41を介して外部の冷却水源(図示省略)と接続されており、この冷却水源としては、生理食塩水が充填された輸液バッグなどを用いることができる。冷却水袋4内において筐体3から吸熱した水は、排水チューブ42を介して外部へと排水される。この排水チューブ42からの水を電極部24に対して排水することによって、電極部24を洗浄したり、電極部24に対する炭化組織の固着を防止したり、周辺組織の温度上昇を防止することができる。なお、冷却水袋4の材質としては、筐体3からの熱を生理食塩水に伝導するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを挙げることができる。なお、より効率的に排熱を行うために、図7に示すように筐体3の上面だけでなく下面にも冷却水袋4を設けてもよい。この場合は、給水チューブ41,排水チューブ42を分岐させて各冷却水袋4に接続させてもよいし、各冷却水袋4に別々の給水チューブ41及び排水チューブ42を接続してもよい。
【0023】
次に、筐体3内に収容された電子回路部5の詳細について説明する。なお、電子回路部5は面実装部品で構成され、全体として、マイクロストリップなどの形式で誘電体基板上に一体的に形成されている。
【0024】
図8に示すように、電子回路部5は、まず、マイクロ波発振器51と、マイクロ波を増幅させるための増幅器52とからなるマイクロ波発生ユニット50を有している。マイクロ波発振器51は、例えばGaAs MESFETなどの半導体素子を用いて構成された公知のマイクロ波発振器とすることができる。また、増幅器52は、マイクロ波発振器51から発振されるマイクロ波を増幅するためのものであって、例えば、高効率のGaN(ガリウムナイトライド)FET(高電力に向いている)等を用いて構成することができる。。
【0025】
また、増幅器52と電極部24とを直接接続すると、マイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)の出力インピーダンスと生体組織のインピーダンスとの整合が取れない(手術作業では手術器の刃先の当て方や組織の熱的変化によって生体組織のインピーダンスが大きく変化する)ため、反射電力が大きくなって生体組織へのマイクロ波エネルギの吸収効率が落ちてしまう。このため、本実施形態では、まず、マイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)と電極部24との間のインピーダンス整合を行うために、可変出力整合回路53を設置している。この可変出力整合回路53は、コイル531と、第1および第2の可変コンデンサ532a、532bとを備えており、第1および第2の可変コンデンサ532a、532bの静電容量を調節することで、インピーダンス整合を行い、ひいては、反射電力を最小となるように制御する。なお、この可変コンデンサ532a、532bは、静電容量を調整できるものであればよく、例えば、高耐圧のバラクタダイオード(バリキャップ)等を採用することができる。
【0026】
上記各可変コンデンサ532a、532bの静電容量は、マイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)と電極部24との間における入射電力及び反射電力に基づいて決定される。このために、電子回路部5は、検出回路54や、マイクロコントローラ55を備えている。検出回路54は、可変出力整合回路53と電極部24との間に接続されており、双方向の検波器541及び方向性結合器542から主に構成されている。また、マイクロコントローラ55は、演算処理や制御処理をするためのマイクロプロセッサ551や、アナログ/デジタル変換器(ADC)552a〜552cや、デジタル/アナログ変換器(DAC)553a〜553cや、メモリ(図示省略)などから主に構成されている。
【0027】
検出回路54やマイクロコントローラ55によって各可変コンデンサ532a、532bの静電容量を制御する方法について説明すると、検出回路54によって、マイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)と電極部24との間を流れる入射電力および反射電力をそれぞれ検出し、このデータに基づいてマイクロコントローラ55が各可変コンデンサ532a、532bの静電容量を制御する。具体的には、まず、方向性結合器542によって検出されたマイクロ波信号が検波器541へと入力される。検波器541に入力されたマイクロ波信号は、検波器541にてその電力レベルに応じた直流電圧に変換される。これをアナログ/デジタル変換器552a、552bによってデジタル信号に変換してマイクロプロセッサ551に入力する。マイクロプロセッサ551では、検出回路54から送られてきた入射電力および反射電力のデータに基づいて、この入射電力Piと反射電力Prとの比であるPi/Prが最大に近づくような可変コンデンサ制御データを算出し、デジタル/アナログ変換器553a、553bによってアナログ信号(直流電圧)に変換して可変出力整合回路53の第1および第2の可変コンデンサ532a、532bの静電容量を制御する。この一巡制御を繰り返しPi/Prが最大となる状態を維持する、いわゆるフィードバック制御を行う。
【0028】
また、電子回路部5では、低周波定電流源56が、高周波チョークコイル(RFC)57を介して電極部24に接続されている。この低周波定電流源56は、電極部24を介して、一定値の低周波交流電流を生体組織へと供給する。なお、コンデンサ58が設けられているために、低周波定電流は電極部24側のみへと供給される。このように低周波定電流源56が生体組織へ低周波交流電流を供給することによって生体組織の止血の完了を判断することができる。すなわち、生体組織の止血が完了すると、その抵抗値が変化する(具体的には抵抗値が約30〜50%減少する)ため、抵抗値の変化によって、生体組織の止血が完了したと判断することができる。この判断は、具体的には、アナログ/デジタル変換器552cを介して、低周波交流電圧の振幅値Vsと低周波定電流の振幅値Icをマイクロプロセッサ551に取り込み、以下の式によって、抵抗値Rsに変換する。
Rs=Vs/Ic
この抵抗値Rsが30〜50%程度下降すると、マイクロプロセッサ551はマイクロ波の発振を停止するよう、デジタル/アナログ変換器553cを介してマイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)を制御する。なお、マイクロコントローラ55は、予めメモリ(図示省略)に格納している抵抗値変化や時間経過に対する最適印加電力情報のデータに従って、マイクロ波電力を印加させるようにマイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)を制御することもできる。また、マイクロコントローラ55は、スイッチ25が押されると、マイクロプロセッサ551によってマイクロ波発生ユニット50(特に増幅器52)を制御し、マイクロ波を電極部24から照射させる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、冷却水が連続して冷却水袋4へと供給されているが、マイクロ波を照射するときのみ冷却水が流れるような構成とすることもできる。例えば、図9に示すように、冷却水袋4と排水チューブ42との間にソレノイドバルブ6を接続し、このソレノイドバルブ6をマイクロコントローラ55によって制御するような構成が挙げられる。マイクロコントローラ55が、マイクロ波の照射命令を受けるとソレノイドバルブ6を開けて冷却水が流れるように制御し、逆にマイクロ波の照射が停止するとソレノイドバルブ6を締めて冷却水の供給を停止させるように制御する。この構成によれば、放熱に寄与しない無駄な流水を止めることができる。なお、このソレノイドバルブ6は、冷却水袋4と給水チューブ41との間に接続することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 マイクロ波手術器
2 手術器本体
24 電極部
3 筐体
4 冷却水袋
5 電子回路部
51 マイクロ波発振器
52 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織にマイクロ波を照射するための電極部を有する手術器本体と、
前記手術器本体に内蔵され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、
前記手術器本体に内蔵され、前記電極部と前記マイクロ波発振器との間に接続されており、前記マイクロ波発振器からのマイクロ波を増幅させて前記電極部に送る増幅器と、
を備えた、マイクロ波手術器。
【請求項2】
前記マイクロ波発振器及び前記増幅器を有するマイクロ波発生ユニットは、マイクロ波を発生させ且つ増幅する手段として半導体素子を用いた半導体マイクロ波発生ユニットである、請求項1に記載のマイクロ波手術器。
【請求項3】
前記増幅器と前記電極部との間に接続され、前記増幅器の出力インピーダンスと前記生体組織のインピーダンスとを整合させるための可変出力整合回路と、
前記増幅器と電極部との間における反射電力及び入射電力を別々に検出する検出回路と、
前記検出回路により検出された入射電力および反射電力の値に基づいて前記可変出力整合回路を制御する制御手段と、
をさらに備えた、請求項1又は2に記載のマイクロ波手術器。
【請求項4】
前記電極部へ低周波交流電流を供給するための低周波定電流源をさらに備えた、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ波手術器。
【請求項5】
電子回路部を内部に収容する筐体と、
前記筐体に近接して配置され、内部に冷却水が供給される冷却水袋と、
をさらに備えた、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロ波手術器。
【請求項6】
前記冷却水袋は、マイクロ波を照射するタイミングに合わせて冷却水の供給量が制御される、請求項5に記載のマイクロ波手術器。
【請求項7】
前記冷却水は、生理食塩水である、請求項5又は6に記載のマイクロ波手術器。
【請求項8】
前記冷却水袋内の生理食塩水を前記電極部に対して排水する排水路をさらに備えた、請求項7に記載のマイクロ波手術器。
【請求項9】
前記手術器本体は、前記電極部が形成された挿入部を先端に有しており、前記挿入部は取り外し可能である、請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロ波手術器。
【請求項10】
前記手術器本体は、携帯可能な大きさである、請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロ波手術器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115384(P2012−115384A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266401(P2010−266401)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(399025952)株式会社 オリエントマイクロウェーブ (5)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【Fターム(参考)】