説明

マイヤー毛布の製造方法とマイヤー毛布

【課題】マイヤー毛布を、保温性に優れながら軽量、且つ通気性が良好で、コストダウンを図り得ながら生産性を上げることができるところのマイヤー毛布の製造方法と該方法により製造されたマイヤー毛布を提供すること。
【解決手段】マイヤー編機の筬送りをニードルの3針分〜5針分とし、1本のパイル糸10によってパイル糸領域部6を編成すると共にパイル糸が立ち上げられていない碁盤目の地編組織領域部7を、経糸11及び横糸12による地編組織のみで編成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、マイヤー編機によって製造するマイヤー毛布の製造方法と該方法により製造されたマイヤー毛布に関する。
【背景技術】
【0002】
マイヤー毛布は、カールマイヤー編機(一般にマイヤー編機とよばれている)というダブルラッセル編機によって前後二枚の地編組織を構成しながら、パイル糸を両地編組織間に掛けわたして編みつけ、編成後に、両地編組織を、そのパイル糸の中間で切り離して(センターカットという)二枚に分け、しかる後に、パイル糸面を起毛或いは裁き処理し、地編組織側を起毛処理等することによって製造されている。
この種のマイヤー毛布としては、一般に、センターカットの後に、上記二枚の地編組織側を背中あわせで重ねて1枚ものとし、パイル糸面を両面に位置させて両面に毛羽の嵩のある毛布として用いる場合と、上述の如く、二枚をそれぞれ1枚物の毛布として用いる場合とがある。
【0003】
こうしマイヤー毛布は、保温性に優れているが、厚みがるもので、冬季のみななら、春秋にも用い得るところの軽く、通気性に優れた毛布が望まれ、こうした要求に応えるマイヤー毛布が提案されている。
【特許文献1】特開10−127458。碁盤目状にパイル起毛部を編成したマイヤー毛布。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記引用特許にあるのは、パイル糸の編付けを碁盤目として、他の碁盤目に、地編組織の領域とパイル糸を編みつけた地編組織の領域とを交互になるように碁盤目(全体が市松模様)としたマイヤー毛布である。
この毛布は、全面(全地編組織)にパイル糸が立ち上げられているのではないので、従来のマイヤー毛布に比べて、毛羽量が少なく、通気性に優れながら保温性を有するという点で優れたものであった。
【0005】
しかし乍ら、このマイヤー毛布は、パイル糸を二本用い、パイル糸の立ち上げのない碁盤目の地編組織に対しても、その1本が、交互の位置において、地編組織に編付けられて強度を付加しているものであり、この部分において地編組織が密となって、通気性がいま少し良好でないこと、及び、この1本分のパイル糸分だけ、コストが高く、また、重量軽減が図れないという問題が残っていた。
更に、製造上においても、二本のパイル糸の編み付けを行わなければならない分だけ編成スピードを上げることができず、生産効率を上げることが出来ないという問題点もあった。
【0006】
本発明は、マイヤー毛布を、保温性に優れながら軽量、且つ通気性が良好で、コストダウンを図り得ながら生産性を上げることができるところのマイヤー毛布の製造方法と該方法により製造されたマイヤー毛布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるマイヤー毛布の製造方法は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、マイヤー編機により、地編組織からパイル糸が碁盤目に編み付けられて立ち上げられたパイル糸領域を備えたマイヤー毛布の製造方法であって、
マイヤー編機の筬送りをニードルの4針分から8針分とし、1本のパイル糸L3によってパイル糸領域部6を編成すると共にパイル糸が立ち上げられていない碁盤目の地編組織領域部7を、経糸L1、L4及び横糸L2、L5による地編組織のみで編成し、
然る後に編成生地をセンターカットし、
得られた2枚の毛布生地1Aの夫々の地編組織面側4を少なくとも起毛及び/又は捌き処理し、また、パイル面側5を少なくとも起毛及び/又は捌き処理することをすることを特徴とする。
【0008】
本発明によるマイヤー毛布は、上記目的を達成するために、請求項1の方法によって製造されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従前通りのマイヤー編機を用いて編成するものでありながら、筬をニードルの4針〜8針分を一度にシフトするという方法(従来一般技術及び引用特許では筬送りは1針分だけ)によって、1本のパイル糸を碁盤目に編みつけてパイル糸立ち上げ領域とし、他の地編組織の碁盤目にはパイル糸のない地編組織だけの編みつけが可能になったもので、これによって、保温性に優れながら軽量、且つ通気性が良好で、コストダウンを図り得ながら生産性を上げることができるところのマイヤー毛布を製造することができたのである。
【0010】
そして、かかる方法によって製造されたマイヤー毛布は、碁盤目の編成による従来のものに比べて、パイル糸1本分だけコストダウンを図り得ながら、軽量で通気性に優れながら充分な保温性を持つという利点があり、4針又は8針の筬の送り(シフト)による碁盤目では、外観的(表面)にはパイル糸面側の毛羽状態が全面を覆う状態でえられ、パイル糸の無い碁盤目が表に現れることによる斑状態にはならない綺麗な仕上がりとして得られるものである。即ち、そのパイル糸の毛羽を掻き分けると、碁盤目の地編組織部分が見えるといった状態である。尚、4針より少ないと碁盤目の目が詰まり過ぎ、8針より多いと隙間が大きくなって、パイルによる毛羽が綺麗に前面を覆うことが難しくなってくる。
【0011】
また、マイヤー編機のニードルの4針分から8針分の一挙の筬送りが、ドラムチエーンのカム突起の突出量を調整することによって行われる場合は、既存のマイヤー編機を大幅に改良することなく、従前のドラムチエーンのカムを、高さのあるカムに変えるだけで簡単に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面を参照して以下詳述する。
図1は、本発明にかかるセンターカットで得られた1枚のマイヤー毛布1(パイル面側のパイル捌き、又は起毛と呼ぶ場合もある、と地編組織側の起毛及び裁き処理ガ行われたもの)の全体の斜視図であり、図2は、要部の拡大斜視図である。この実施例では、筬送りとして、ニードルの4針をシフトする編成について説明する。尤も、8針の筬送りを行うことは、後述のカム調整によるので機械的にも、又編成上も問題はない。
【0013】
図2に示すように、このマイヤー毛布1(センターカットの後)は、パイル面側5は、パイル糸領域6と、地編組織領域部7とが碁盤目状に編成されている。地編組織面側4は、地編組織領域部7が存在し、パイル糸L3の立ち上がりが存在しない。
この碁盤目の地編組織領域部7には、パイル糸L3の編みつけが行われていない。パイル糸領域6は、少なくとも捌き処理(起毛処理と呼ぶこともある)され、地編組織領域部7の裏面は、起毛、捌き処理がなされている。必要に応じて両面がピーリング加工がされる。
【0014】
図3は、本発明に用いられるマイヤー編機の筬、ニードルの部分を示す。 針床20の前後面に配列する前後のニードル13、14に対し、筬15・・・より、一側面の地編組織7Aを構成するための経糸L1、横糸L2、他側面の地編組織7Bを構成するための経糸L4、横糸L5、これらに掛け渡されるパイル糸L3を供給し、経糸L1、横糸L2、によって一側の地編組織7Aを編成し、経糸L4、緯糸L5により他側の地編組織7B(図6及び図7参照)を編成し、パイル糸L3が両地編組織7A、7B間に掛け渡されるように編成される。図中、21は、センターカット用のカッターを示す。
【0015】
このパイル糸L3を両地編組織7A、7B間に掛け渡すように編成す方法は、マイヤー編機のドラムチエーンのカムの突出量(カム面の高さ)を高く調整する(高さのあるカムに取り替える)ことにより、上記筬15を4針分一挙に送る(シフト)ことで行う。かかるマイヤー編機の要部は、公知の構造であり、等業者において周知であるので、この機械構造については図面説明を省略する。
【0016】
次に、要部の編成の工程について説明すると、図4及び図5にあるように、パイル糸L3が4本供給されている夫々の筬15(他の筬4本にはパイル糸が供給されていない)が、図4に示す所定の位置で作動し、対抗位置にある4針のニードル13によって編成が行われ、これがパイルを4列形成した後、筬15の4針飛ばしの送りにより、図5に示すシフト位置に来て、対抗する位置にある前記ニードル針とは異なる隣接の4針によって、編成が行われることになる。
【0017】
即ち、図6及び図7の通り、経糸L1及び横糸L2がループを形成して、一側の地編組織7Aを編成し、経糸L1及び横糸L2によってループを形成して、他側の地編組織7Bを編成し、これらのループを通ってパイル糸L3が両地編組織7A、7Bを掛け渡らされている。
【0018】
この際、一側の地編組織7Aを編成に関わったパイル糸L3が他方の地編組織7Bに移行するときに、筬15の4針送りによって、対抗する位置にある地編組織7B形成のための経糸4及び横糸L5に絡むのではなく、4ループ飛ばした位置に形成の地編組織7Bの経糸4及び横糸L5に絡むのである。
【0019】
ついで、このように編成が終われば、編成生地をセンターカットするべくカッター21で、そのパイル糸L3の中間で地編組織7Aのがわと、地編組織7Bの側とに分離し、二枚の毛布生地1A(両地編組織7A、7Bにそれぞれ分断されたパイル糸L3が備えられている)を得る。
この後、1枚の毛布生地1Aの地編組織7Aのパイル糸L3のある前面は、捌き処理を行い、毛羽立ちを良好にし、必要に応じてピーリング加工を施す。
また、裏側のパイル糸L3のない地編組織7Bは、起毛処理工程を施し、捌き、ピールング加工等を必要に応じて行う。
【0020】
このように、編成方法としては、マイヤー編機の筬15の送りを4針分とし、1本のパイル糸L3によってパイル糸領域部6を編成すると共にパイル糸L3が立ち上げられていない碁盤目の地編組織領域部7を、経糸L1、L4及び横糸L2、L5による地編組織のみで編成し、然る後に編成生地をセンターカットし、得られた2枚の毛布生地1Aの夫々の地編組織面側4を別途起毛及び/又は捌き処理するのである。
また、実際には、染色工程、ピーリング(艶出し)加工等、マイヤー毛布生産の為に一般に行われている種々の処理加工が行われる。
【0021】
尚、マイヤー毛布編成の糸としては、経糸、横糸、パイル糸に、これまでに使用されてきた合成繊維(機能性繊維と呼ばれているものを含む)、例えば、ポリエステル、アクリル等の他、ウール等も適宜使用して良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のマイヤー毛布の製造方法は、碁盤目の通気性を有する軽量、安価、保温性に優れた毛布を提供できるので、季節性を問わない毛布を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のマイヤー毛布の全体の斜視図。
【図2】本発明のマイヤー毛布の要部の斜視図。
【図3】本発明のマイヤー毛布の製造に用いられるマイヤー編機の筬の要部の側面図。
【図4】本発明のマイヤー毛布の製造に用いられるマイヤー編機の筬の一作用状態を示す要部の側面図。
【図5】本発明のマイヤー毛布の製造に用いられるマイヤー編機の筬の一作用状態を示す要部の側面図。
【図6】本発明のマイヤー毛布の製造の一工程を示す概略説明図。
【図7】本発明のマイヤー毛布の製造の一工程を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0024】
1:マイヤー毛布
1A:毛布生地
4:地編組織面側
5:パイル面側
6:パイル糸領域部
7:地編組織領域部
L1:経糸
L2:横糸
L3:パイル糸
L4:経糸
L5::横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイヤー編機により、地編組織からパイル糸が碁盤目に編み付けられて立ち上げられたパイル糸領域を備えたマイヤー毛布の製造方法であって、
マイヤー編機の筬送りをニードルの4針分〜8針分とし、1本のパイル糸L3によってパイル糸領域部6を編成すると共にパイル糸が立ち上げられていない碁盤目の地編組織領域部7を、経糸L1、L4及び横糸L2、L5による地編組織のみで編成し、
然る後に編成生地をセンターカットし、
得られた2枚の毛布生地1Aの夫々の地編組織面側4を少なくとも起毛処理し、また、パイル面側5を少なくとも起毛及び/又は捌き処理することを特徴とするマイヤー毛布の製造方法。
【請求項2】
マイヤー編機のニードルの4針分〜8針分の筬送りが、ドラムチエーンのカム突起の突出量を調整することによって行われることを特徴とする請求項1のマイヤー毛布の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか1項の方法によって製造されたマイヤー毛布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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