説明

マウスピース用ケース

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランペット、トロンボーン、ホルン等の金管楽器におけるマウスピースを取り外して携帯する様にしたマウスピース用ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、かかるマウスピース用ケースにあっては、図7に示す様に、可撓性を有すると共に肉厚で、幅が他端側より中間部まで徐々に狭くなると共に中間部より一端側まで同寸な主体部a、bの他端側に内外蓋c、dを形成した一対の表裏材e、fを合わせて、主体部a、bの両側縁部及び一端縁部で固着して、表裏材e、f間をマウスピースmの収容部とし、裏材fの外蓋d先端を表材eの主体部aに固定する手段を設けたものであった。
【0003】しかし、軟質な表裏材a、bだけではマウスピースmの楽器本体への差込部位、即ちシャンクsを保護出来ず、而も該シャンクsは凹み易いため、上記マウスピース用ケースwにマウスピースmを収容状態で硬質な床面上に落とした場合、シャンクsが凹んでしまう可能性が高い欠点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、収容したマウスピースの凹み易いシャンク先端を保護可能にしたマウスピース用ケースを提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来技術に基づく、軟質な表裏材からなるケースでは収容したマウスピースのシャンク先端を強い衝撃から保護出来ない課題に鑑み、収容ケースを形成する表裏材における収容ケースの基底側部位の間を拡開状態として、かかる収容ケースの基底部内に、硬質にして内径がマウスピースのシャンクの外径より大きい保護筒を内設したり、収容ケースの基底部側に保護筒を外嵌したり、或いは表裏材における収容ケースの基底側部位に合成樹脂を含浸、固化させる様な硬化処理を施すなどの保護手段を講じ、かかる収容ケースの基底部側内にマウスピースのシャンク先端を挿入する様に、収容ケース内にマウスピースを収容することによって、収容状態で収容ケースを落としてしまったとしても、マウスピースのシャンクを保護手段により保護して、シャンクが凹まない様にして、上記課題を解決せんとしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、図1、2、3に示す様に、1はトランペット、トロンボーン、ホルン等の金管楽器におけるマウスピースMの収容ケースであり、天然・合成皮革、樹脂シート等の可撓性を有し、且つある程度肉厚な素材からなる表材2及び裏材3を、裏面同志を合わせる様にして縫着、加熱溶着等の手段により、表材2及び裏材3間をマウスピースMの収容部4を形成する様に固着して、一方側を開口状、他方側を閉鎖状にした収容ケース1と成し、該収容ケース1の閉鎖側である基底部側、即ち収容状態のマウスピースMにおけるシャンクS先端側に相当する部位に、シャンクS先端の保護手段5を講じている。
【0007】又、表材2及び裏材3は幅が一端側、即ち収容ケース1の開口部側より中間部まで徐々に狭くなると共に、中間部より他端側、即ち収容ケース1の基底部側まで同寸な主体部6、7と、該主体部6、7の一端側(収容ケース1の開口部側)に一体形成した内蓋8及び外蓋9により形成し、内蓋8の形状は略円形状、外蓋9の略長三角形状としている。
【0008】10は外蓋9の留め金であり、該留め金10の凹部材10a を裏材3の外蓋9に、凸部材10b を表材2の主体部6に夫々固設している。
【0009】又、表材2及び裏材3間に形成した収容部4は、マウスピースMにおける口当て部N及びシャンクSに対応する口当て部収容部位4a及びシャンク収容部位4bにより構成している。
【0010】又、収容ケース1における基底部側に講じた保護手段5は、収容ケース1の収容部4におけるシャンク収容部位4b先端部、即ち収容ケース1の基底部側内に設けた、内径がシャンクSの外径より若干大い保護筒11とし、該保護筒11を、表材2及び裏材3の固着により該表材2及び裏材3により挟み付け、且つ外周部を表材2及び裏材3内側面に食い込ませて収容ケース1に固定すると共に、表材2及び裏材3間を拡開状態とし、かかる保護筒11の内部空間内にシャンクSの先端部挿入する様にし、その外殻部位である保護筒11を保護手段5としている。
【0011】又、図面中、12は保護筒11内にして収容ケース1の内底部に設けた円形状のコルク材である。
【0012】尚、表材2及び裏材3は主体部6、7を、固着部位を残して全体的に外方へ膨出させる様に絞り加工したものを使用して、収容ケース1の収容空間を常時拡開状態にしておくのが望ましいが、表材2及び裏材3を平板状のままとし、保護筒11を内設することにより、表材2及び裏材3における収容ケース1の基底側部位だけを外方膨出状態としても良い。
【0013】又、表材2及び裏材3の固着手段は、具体的に、表材2及び裏材3が天然・合成皮革の場合は縫着、合成樹脂シートの場合は縫着又は加熱溶着としている。
【0014】又、表材2及び裏材3は固着前の状態においては別体であるが、図示しないが、表材2及び裏材3を収容ケース1の基底部側となる他端部で一体化し、当該部位で折り曲げて表材2及び裏材3を合わせて固着する様にしても良い。
【0015】又、上記実施例において保護手段5は収容ケース1における基底部側に内設した保護筒11であるが、かかる形式に限定せず、例えば表材2及び裏材3における主体部6、7を全体的に、又は主体部6、7における収容ケース1の基底部側に相当する部位だけを外方へ膨出させる様に絞り加工して、少なくともマウスピースMの収容部4におけるシャンク収容部位4bを拡開状態にすると共に、図4に示す様に、収容ケース1の基底部側に保護筒13を外嵌固定したり、図5に示す様に、表材2及び裏材3における収容ケース1の基底側部位を合成樹脂の含浸、固化により硬化処理して、シャンク収容空間4bの外殻部位である、表材2及び裏材3における収容ケース1の基底側部位を保護筒13又は合成樹脂により補強して保護手段5としても良い。
【0016】又、図6に示す様に、内蓋6の他に、マウスピースMへの埃の付着を防止する被覆片14を収容ケース1の開口部近傍に設けても良い。
【0017】次に、本発明に係るマウスピース用ケースの作用について説明すると、先ず、収容ケース1の拡開した開口部よりマウスピースMを、シャンクS先端側より収容ケース1内に挿入すると共に、保護手段5を講じてある収容ケース1の基底部側内にシャンクS先端部が挿通してコルク材12に当接し、具体的には、マウスピースMにおけるシャンクS先端が、保護筒11内に挿通したり、保護筒13又は合成樹脂により補強した拡開状態の表材2及び裏材3間に挿通して、シャンクS先端部を保護手段5により保護する様にして、マウスピースMが収容ケース1内に収容される。
【0018】次に、内蓋8を収容ケース1の開口部側へ折り曲げた後、外蓋9を内蓋8の上方側へ折り曲げて、留め金10の裏材3における外蓋9側の凹部材10a と表材2における主体部6側の凸部材10b を係止固定する。
【0019】又、被覆片14を有した収容ケース1にあっては、先ず被覆片14で収容状態のマウスピースMにおける口当て部Nを被覆した後、上記と同様に内蓋8、外蓋9で折り曲げ、外蓋9を固定すれば、マウスピースMの口当て部Nに埃が付着しない。
【0020】
【発明の効果】要するに本発明は、可撓性を有すると共に肉厚で、幅が他端側より中間部まで徐々に狭くなると共に中間部より一端側まで同寸な主体部6、7の他端側に内外蓋8、9を形成した一対の表裏材2、3を合わせ、且つ該表裏材2、3の相互間に、口当て部N及びシャンクSからなるマウスピースMの収容部4を形成する様に表裏材2、3を固着した、一方側を開口部、他方側を閉鎖状の基底部とし、裏材3の外蓋9先端を表材2の主体部6に固定する手段を設けた収容ケースにおいて、上記表裏材2、3の収容ケース1における基底側部位の間を拡開状態にして、かかる収容ケースの基底部側にシャンクSの保護手段5を講じたので、マウスピースMを収容した収容ケース1を落としたとしても、シャンクS先端部は保護手段5により保護されているためにシャンクSは凹まず、よって収容ケース1によるマウスピースMの保護機能の向上を図ることが出来る。
【0021】又、上記保護手段5を上記表裏材2、3の収容ケース1における基底側部位の間に設けた保護筒11とし、該保護筒11の内部空間にシャンクSの先端部を挿入する様にしたり、保護手段5を収容ケース1の基底部側に外嵌固定した保護筒13としたり、或いは表裏材2、3における収容ケース1の基底側部位を硬化処理して上記保護手段5としたので、上記と同様の効果を奏すると共に、特に保護筒11を内設した収容ケース1の場合、保護筒11の取付けは表裏材2、3の一体化と同時に行うことが出来るため、製造工程の簡略化を図ることが出来る。
【0022】又、表裏材2、3の主体部6、7を絞り加工により外方膨出形状にしたので、かかる収容ケース1における表裏材2、3は離間状態で、マウスピースMの収容部4を常時拡開状態に維持することが出来るため、マウスピースMの出入れの容易化を図ることが出来る。
【0023】又、収容ケース1の内底部にコルク材12を設けたので、かかるコルク材12は吸湿、発散性に優れているため、唾液が収容ケース1に直接付着、含浸せず、収容ケース1自体が唾液により汚れず、美観を維持することが出来る。
【0024】又、内蓋8及び外蓋9だけでは両側部に形成される隙間から埃等が侵入してマウスピースMの口当て部Nに付着してしまうが、収容ケース1の開口部に被覆片14を設けたので、開口部側でほぼ露出状態であるマウスピースMの口当て部Nを被覆片14で覆えば、該口当て部Nへの埃等の付着を防止することが出来、よって極言すれば収容ケース1から取り出して直ぐにマウスピースMを拭かずに使用することが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマウスピース用ケースの正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】マウスピース用ケースの使用状態を示す断面図である。
【図4】保護手段を外嵌した保護筒としたマウスピース用ケースの使用状態を示す断面図である。
【図5】表裏材を硬化処理して保護手段としたマウスピース用ケースの使用状態を示す断面図である。
【図6】被覆片を設けたマウスピース用ケースの使用状態を示す断面図である。
【図7】従来のマウスピース用ケースの使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 収容ケース
2 表材
3 裏材
4 収容部
5 保護手段
6 主体部
7 主体部
8 内蓋
9 外蓋
11 保護筒
12 コルク材
13 保護筒
14 被覆片

【特許請求の範囲】
【請求項1】 可撓性を有すると共に肉厚で、幅が他端側より中間部まで徐々に狭くなると共に中間部より一端側まで同寸な主体部の他端側に内外蓋を形成した一対の表裏材を合わせ、且つ該表裏材の相互間に、口当て部及びシャンクからなるマウスピースの収容部を形成する様に表裏材を固着して、一方側を開口部、他方側を閉鎖状の基底部とし、裏材の外蓋先端を表材の主体部に固定する手段を設けた収容ケースにおいて、上記表裏材の収容ケースにおける基底側部位の間を拡開状態にして、かかる収容ケースの基底部側にシャンクの保護手段を講じたことを特徴とするマウスピース用ケース。
【請求項2】 上記保護手段を上記表裏材の収容ケースにおける基底側部位の間に設けた保護筒とし、該保護筒の内部空間にシャンクの先端部を挿入する様にしたことを特徴とする請求項1のマウスピース用ケース。
【請求項3】 上記保護手段を収容ケースの基底部側に外嵌固定した保護筒としたことを特徴とする請求項1のマウスピース用ケース。
【請求項4】 上記表裏材における収容ケースの基底側部位を硬化処理して上記保護手段としたことを特徴とする請求項1のマウスピース用ケース。
【請求項5】 表裏材の主体部を絞り加工により外方膨出形状にしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4のマウスピース用ケース。
【請求項6】 収容ケースの内底部にコルク材を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のマウスピース用ケース。
【請求項7】 収容ケースの開口部に被覆片を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のマウスピース用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3062434号(P3062434)
【登録日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【発行日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−161110
【出願日】平成8年5月30日(1996.5.30)
【公開番号】特開平9−319364
【公開日】平成9年12月12日(1997.12.12)
【審査請求日】平成10年2月12日(1998.2.12)
【出願人】(596090454)
【参考文献】
【文献】特開 昭59−88793(JP,A)
【文献】実開 昭59−138898(JP,U)