説明

マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤

【課題】マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面に低コストで、耐食性、密着性に優れた皮膜を形成しうる表面処理剤を提供する。
【解決手段】ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物の一種以上を含有することを特徴とするマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。好適には、ビスマス化合物、アンチモン化合物もしくはモリブデン化合物を含有し、かつさらに還元剤を含有し、もっと好適にはさらに有機酸類、臭素化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤、ならびにそれを用いたマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム元素は地球にきわめて豊富であり(たとえば銅元素のおよそ200倍とも推定されている)、金属としての取得も容易なものの一つでもある。しかしながら、長い歳月、低温で発火、燃焼という特性を用いた用途、添加元素としての用途、等が主たるものであった。そして、近年に至り、軽金属材料としての用途が注目されるに至った。すなわち、アルミニウムの比重2.7に対しマグネシウムの比重は1.7という軽量さ(アルミニウムの約6割)、また抗張力が25〜38kg/mmであり、加工性にも優れるので、航空機部品、自動車部品、コンピュータ、音響機器等の電気製品等に広く用いられている。また、マグネシウム及びマグネシウム合金成形品はダイカスト、押出し成形、圧延成型、射出成形等を用いることができ、その適用範囲を広げている。
【0003】
しかしながら、マグネシウムは酸化され易いという難点を有している。このため、従来から、クロム酸法、セレン法、リン酸法、フッ化物法等が防食のために用いられてきたが、その中には今日の環境基準に合致しなくなったものもあり、環境基準に合致し、しかも優れた防食性を付与しうる新たな防食法を見出すことは重要な課題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品に低コストで、優れた耐食性を付与しうるとともに密着性にも優れた表面処理剤を得るために、種々検討を行い本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
(1)ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物の一種以上を含有することを特徴とするマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(2)ビスマス化合物、アンチモン化合物もしくはモリブデン化合物を含有し、かつさらに還元剤を含有する(1)記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(3)さらに有機酸類を含有する(1)もしくは(2)記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(4)さらに臭素化合物を含有する(1)〜(3)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(5)ビスマス化合物が塩化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる(1)〜(4)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(6)アンチモン化合物が塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる(1)〜(5)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(7)ヨウ素化合物がヨウ素酸類もしくはヨウ化物である(1)〜(6)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
(8)還元剤が次亜リン酸塩、ホルマリン、チオ尿素、チオ硫酸塩、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖から選ばれる(1)〜(7)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(9)有機酸類が酒石酸、クエン酸およびシュウ酸またはそれらの塩類から選ばれる(1)〜(8)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤;
(10)(1)〜(9)のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤を含有する水溶液に、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品を浸漬することを特徴とするマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法;
(11)浸漬処理して得られるマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品に水溶性塗料を塗布し、ついでこれを乾燥する(10)記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法;ならびに
(12)乾燥が低温で行われる(11)記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面に低コストで、耐食性、密着性に優れた皮膜を形成しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤は、ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物の一種以上を含有する。好適には、ビスマス化合物、アンチモン化合物もしくはモリブデン化合物を含有し、かつ還元剤を含有し、もっと好適にはさらに有機酸類、臭素化合物を含有する。
【0008】
マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品としては、たとえばダイカスト、押出し成形、圧延成型、射出成形等により得られる製品が挙げられ、少なくともその表面がマグネシウムもしくはマグネシウム合金であればよい。
【0009】
ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物としては、水溶性であるのが好適であり、酸性ないしアルカリ性下に水溶性であるものを含む。ビスマス化合物としては、たとえば塩化ビスマス、三酸化ビスマス、五酸化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、クエン酸ビスマス、フッ化ビスマス、水酸化ビスマス、三ヨウ化ビスマス、硫酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酢酸ビスマス、安息香酸ビスマス、酒石酸ビスマス、炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、サルチル酸ビスマス、三硫化ビスマス、等が挙げられる。好適には塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類、最も好適にはヨウ化物から選ばれる。
【0010】
アンチモン化合物としては、たとえば五塩化アンチモン、五酸化アンチモン、硫酸アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、三酸化アンチモン、三硫化アンチモン、安息香酸アンチモン、酒石酸アンチモン、ヨウ化アンチモン等が挙げられる。好適には塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる、最も好適にはヨウ化物から選ばれる。
【0011】
モリブデン化合物としては、たとえば塩化モリブデン、酸化モリブデン、臭化モリブデン、水酸化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸類等が挙げられる。好適には塩化物、酸化物、水酸化物、硫化物、最も好適にはモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸類から選ばれる。
【0012】
ヨウ素化合物としては、ヨウ素酸もしくはヨウ素酸塩のヨウ素酸類、ヨウ化物が挙げられ、たとえばヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化ビスマス、ヨウ化アンチモン、ヨウ化銀、ヨウ化リン、ヨウ化四メチルアルソ二ウム、ヨウ化スズ等が挙げられるが、好適にはヨウ素酸類が用いられる。
【0013】
これらのヨウ素化合物を用いて形成された皮膜は、さらにその上にビスマス化合物、アンチモン化合物もしくはモリブデン化合物を用いてこれらの皮膜を形成する際にはアンカー効果を発揮し、密着性をさらに向上させうる。
【0014】
これらのビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物の配合量は、化合物の種類等によっても異なるが、通常0.5〜200g/L程度、好ましくは1〜50g/L程度である。
【0015】
還元剤は、ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物からビスマス、アンチモン、モリブデンをマグネシウムもしくはマグネシウム合金表面に析出させる作用を有し、たとえば次亜リン酸ソーダ等の次亜リン酸塩、ホルマリン、チオ尿素、チオ硫酸ソーダ等のチオ硫酸塩、チタン化合物、亜硫酸ガス、硫化水素、ヨウ化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸類、亜鉛塩類、ブドウ糖等が挙げられる。そして、好適には次亜リン酸塩、ホルマリン、チオ尿素、チオ硫酸塩、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖から選ばれる。配合量は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の種類、ビスマス化合物、アンチモン化合物およびモリブデン化合物の種類、還元剤の種類等によっても異なるが、通常5〜50g/L程度、好ましくは10〜30g/L程度である。
【0016】
有機酸類は、形成される皮膜をより平滑化し密着性を向上させるものであり、好適にはカルボキシル基を有する酸もしくは塩が用いられる。最も好ましくは、酒石酸、クエン酸およびシュウ酸またはそれらの塩類から選ばれる。配合量は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の種類、ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物およびヨウ素化合物の種類、有機酸類の種類等によっても異なるが、通常5〜150g/L程度、好ましくは10〜100g/L程度である。
【0017】
臭素化合物は、形成される皮膜の耐食性を一層向上させるものであり、好適には臭化カリウム等の臭化物、臭素酸カリウム等の臭素酸類が用いられる。配合量は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の種類、ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物およびヨウ素化合物の種類、有機酸類の種類等によっても異なるが、通常5〜150g/L程度、好ましくは10〜100g/L程度である。
【0018】
さらに、本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤は、目的に応じて上記以外の各種添加剤、たとえば着色向上剤、分散剤、分散促進剤、等を適宜用いることができる。
【0019】
本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤は酸性〜アルカリ浴として用いうる。反応速度は酸性側で大きく、アルカリ側で小さい傾向を示すので、適度な反応性を得るために特に好適にはpH2〜5程度で用いられるが、これらに制限されずpH5超でも用いられうる。
【0020】
本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤を用いて、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理を行うに際しては、この表面処理剤を含有する水溶液に、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品を浸漬して、その表面に本発明の耐食性皮膜を形成させる。皮膜の厚さは目的により適宜選定しうるが、通常0.1〜2μmである。この浸漬処理に際しては、表面に付着した酸化物を脱脂、酸洗、中和、エッチング等の常法により予め除去するのが好適である。
【0021】
マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の浸漬処理は、通常15〜40℃、好ましくは20〜30℃で、通常5分間程度以内で行われる。たとえば40℃を超える温度を用いると、皮膜形成速度が一層大きくなるので、一層厳格な品質管理が望まれる。浸漬処理されたマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品は、ついで常法により水洗、乾燥される。
【0022】
この皮膜形成後に、常法により、塗料を塗布することができ、さらに最上層を透明なトップコートにより形成することもできる。
【0023】
本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤に浸漬処理して得られる皮膜は、耐食性ならびにマグネシウムもしくはマグネシウム合金および塗料との密着性に優れる。したがって、塗料の剥離を抑止しうるが、仮に剥離してこの皮膜が露出しても良好な耐食性を示すので、実用性が大きい。塗料としては、水溶性塗料を用いるのが好適である。すなわち、焼付けも不要であり、乾燥も低温、たとえば40℃以下、好ましくは30℃〜−5℃程度としうるので、マグネシウムもしくはマグネシウム合金の引火等のおそれがなく、工業的に有利である。
【0024】
本発明のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤を用いて形成された皮膜は、マグネシウムもしくはマグネシウム合金が大気中に含まれる水分と直接作用して表面に形成され、腐食を進行させる水酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムの生成を抑制する効果を有するので、結果として腐食の進行を阻止し、材料本来の腐食性を保持しうると推察される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における塩水試験は、得られた浸漬処理試験片に塩水(35℃の6%NaCl水溶液)を72時間噴霧し、その耐食性を観察することにより行った。実施例中、pHの調整は特記しないかぎり塩酸により行った。
【0026】
実施例1
ヨウ化ビスマス25g/L、ロッシェル塩7g/Lおよび塩酸15g/Lを含有する水溶液(pH約2.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にヨウ化ビスマス皮膜(厚さ約0.5μm)を形成させた。マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、ビスマス皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0027】
実施例2
ヨウ化スズ20g/Lおよび酢酸ソーダ10g/Lを含有する水溶液(pH約2.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を30℃で3分間浸漬処理し、表面に皮膜を形成させた。得られたヨウ化スズ皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0028】
実施例3
ヨウ化銀15g/L、ロッシェル塩7g/Lおよびアンモニア水15cc/Lを含有する水溶液(pH約2.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にヨウ化銀皮膜を形成させた。得られた皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0029】
実施例4
ヨウ化アンチモン20g/L、ロッシェル塩15g/L、チオ尿素10g/L、チオ硫酸ソーダ10g/L、およびラウリル硫酸ソーダ5g/Lを含有する水溶液(pH約2.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にヨウ化アンチモン皮膜を形成させた。得られた皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0030】
実施例5
吐酒石(酒石酸カリアンチモン)60g/L、ロッシェル塩30g/L、タンニン5g/Lおよびホルマリン45g/Lを含有する水溶液(pH約2.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にアンチモン皮膜を形成させた。この皮膜は、3KHC+Sb=2K(SbO)C・HO複塩として析出、形成された。マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0031】
実施例6
ヨウ素酸カリ30g/L、氷酢酸15g/Lおよびチオ硫酸ソーダ10g/Lを含有する水溶液(pH約3.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理した。ついで、さらに次の組成を有する三塩化アンチモン浴(pH約3.5)に浸漬し、ヨウ素酸カリ皮膜を形成させた。このヨウ素酸カリ皮膜は、次のアンチモン皮膜形成のためのアンカー効果も有する。
【0032】
三塩化アンチモン30g/L
ヨードチンキ(ヨード1、ヨードカリ3)45g/L
クエン酸ソーダ20g/L
ロッシェル塩15g/L
得られたアンチモン皮膜は耐食性が良好であり、塗料の吸着性にも優れるものであった。
【0033】
実施例7
ヨウ化テトラエチルアンモン200g/L、アセトニトリル40g/Lおよび酢酸5g/Lを含有する水溶液(pH約3.5)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面に皮膜を形成させた。得られた皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0034】
実施例8
ヨウ化ナトリウム190g/L、アセトン15g/Lおよび塩酸10g/Lを含有する水溶液(pH約3.0)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にヨウ化ナトリウム皮膜を形成させた。得られた皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0035】
実施例9
モリブデン酸5g/L、ピクリン酸20g/L、ニコチン5g/L、アセトン15g/Lおよび塩酸10g/Lを含有する水溶液(pH約3.0)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にモリブデン皮膜を形成させた。得られた皮膜は、マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0036】
実施例10
塩化ビスマス25g/L、ロッシェル塩7g/Lおよび苛性ソーダ5g/Lを含有する水溶液(pH約5.0)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を25℃で3分間浸漬処理し、表面にビスマス皮膜(厚さ約0.5μm)を形成させた。マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、ビスマス皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【0037】
実施例11
硫酸ビスマス35g/L、65%アンモニア水60g/Lおよびチオ硫酸ソーダ10g/Lを含有する水溶液(pH約3.0)に、脱脂、酸洗して表面のMgOを除去したマグネシウム合金プレート試験片(100×100mm、厚さ1mm)を20℃で3分間浸漬処理し、表面にビスマス皮膜(厚さ約0.5μm)を形成させた。マグネシウム合金との密着性は良好であり、かつ塩水試験において良好な耐食性がみられた。ついで、得られた試験片に水溶性アクリル系塗料をスプレー塗布し、常温で乾燥させたところ、ビスマス皮膜は塗料との密着性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面に低コストで、耐食性、密着性に優れた皮膜を形成しうる表面処理剤を提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物もしくはヨウ素化合物の一種以上を含有することを特徴とするマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項2】
ビスマス化合物、アンチモン化合物もしくはモリブデン化合物を含有し、かつさらに還元剤を含有する請求項1記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項3】
さらに有機酸類を含有する請求項1もしくは2記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項4】
さらに臭素化合物を含有する請求項1〜3のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項5】
ビスマス化合物が塩化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる請求項1〜4のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項6】
アンチモン化合物が塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる請求項1〜5のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項7】
ヨウ素化合物がヨウ素酸類もしくはヨウ化物である請求項1〜6のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項8】
還元剤が次亜リン酸塩、ホルマリン、チオ尿素、チオ硫酸塩、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖から選ばれる請求項1〜7のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項9】
有機酸類が酒石酸、クエン酸およびシュウ酸またはそれらの塩類から選ばれる請求項1〜8のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品用表面処理剤を含有する水溶液に、マグネシウムもしくはマグネシウム合金製品を浸漬することを特徴とするマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法。
【請求項11】
浸漬処理して得られるマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品に水溶性塗料を塗布し、ついでこれを乾燥する請求項10記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法。
【請求項12】
乾燥が低温で行われる請求項11記載のマグネシウムもしくはマグネシウム合金製品の表面処理方法。

【公開番号】特開2007−162036(P2007−162036A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355759(P2005−355759)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(504371321)
【出願人】(597113930)
【Fターム(参考)】