説明

マグネチックスターラー及び撹拌装置

【課題】 試料を良好に撹拌することができるマグネチックスターラーおよび撹拌装置を提供する。
【解決手段】 磁性撹拌子5を回転させるマグネチックスターラー1であって、モーター15により水平回転可能な駆動回転体13を備え、駆動回転体13は、複数の駆動磁石16および補助磁石2を備え、複数の駆動磁石16および補助磁石2は、着磁方向が駆動回転体13の回転軸と平行するように配置されており、複数の駆動磁石16は、磁性撹拌子5と対向する磁極が全て同極となるように配置されており、複数の補助磁石2は、各駆動磁石16の回転軌道上において、各駆動磁石16に対してそれぞれ駆動回転体13の回転方向の反対側に隣接するように配置されており、隣接する各駆動磁石16の磁極と異なる磁極が磁性撹拌子5と対向するように配置されているマグネチックスターラー1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性撹拌子を回転させるマグネチックスターラー及び撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収容される試料を撹拌するものとして、容器内に配置される磁性撹拌子と、この磁性撹拌子を回転させるマグネチックスターラーとが一般的に知られている(例えば、特許文献1の従来技術参照)。
【0003】
図6に示すように、このような磁性撹拌子151は、棒状の撹拌磁石153をプラスチックで被覆したものである。また、マグネチックスターラー160は、上面が水平な本体161と、本体161の内部に配置された回転磁界発生部166とを備えている。回転磁界発生部166は、水平回転可能な駆動回転体163と、駆動回転体163を回転駆動するモーター162と、駆動回転体163に取り付けられた駆動磁石165とを備えている。
【0004】
このような磁性撹拌子151およびマグネチックスターラー160によれば、マグネチックスターラー160の上面に試料152が収容された容器150を載置し、容器150の底部に磁性撹拌子151を配置した状態で、マグネチックスターラー160を作動させることにより、駆動磁石165を回転させる。そして、この駆動磁石165に撹拌磁石153が吸引され、磁性撹拌子151が回転することにより、容器150内の試料152が撹拌される。
【特許文献1】特開平3−232524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような磁性撹拌子151及びマグネチックスターラー160では、磁性撹拌子151の回転に対する試料152の抵抗が、駆動磁石165と撹拌磁石153との吸引力に比して大きくなると、駆動磁石165と撹拌磁石153との吸着が外れて、磁性撹拌子151がスムーズに回転しなくなり、試料152を良好に撹拌できなくなるという問題があった。この問題は、試料152が高粘度である場合や、磁性撹拌子151を高速で回転させる必要がある場合には、特に顕著になっていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、試料を良好に撹拌することができるマグネチックスターラーおよび撹拌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、試料と共に容器に収容された状態の磁性撹拌子を回転駆動するマグネチックスターラーであって、駆動手段により水平回転可能な駆動回転体を備え、前記駆動回転体は、前記磁性撹拌子を吸引する複数の駆動磁石と、前記駆動磁石による前記磁性撹拌子の吸引状態を維持する複数の補助磁石とを備え、複数の前記駆動磁石および前記補助磁石は、着磁方向が前記駆動回転体の回転軸と平行するように配置されており、複数の前記駆動磁石は、前記磁性撹拌子と対向する磁極が全て同極となるように配置されており、複数の前記補助磁石は、前記各駆動磁石の回転軌道上において、前記各駆動磁石に対してそれぞれ前記駆動回転体の回転方向の反対側に隣接するように配置されており、隣接する前記各駆動磁石の磁極と異なる磁極が前記磁性撹拌子と対向するように配置されているマグネチックスターラーにより達成される。
【0008】
また、前記駆動回転体は、正逆回転可能であり、前記補助磁石は、前記駆動磁石に対して両側に隣接するように配置されていることが好ましい。
【0009】
また、前記駆動磁石と前記補助磁石とは、交互に隣接するように配置されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上記のいずれかに記載のマグネチックスターラーと、前記マグネチックスターラー上に載置された容器に収容された状態で、前記マグネチックスターラーの回転駆動力により回転する磁性撹拌子とを備える撹拌装置であって、前記磁性撹拌子は、複数の前記駆動磁石にそれぞれ対応する複数の撹拌磁石を備え、複数の前記撹拌磁石は、着磁方向が前記磁性撹拌子の回転軸と平行するように配置されており、かつ、対応する前記駆動磁石と異なる磁極同士がそれぞれ対向するように配置されている撹拌装置により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマグネチックスターラーおよび撹拌装置によれば、試料を良好に撹拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るマグネチックスターラー1及びこれを備える撹拌装置50の縦断面図であり、図2は、マグネチックスターラー1の駆動回転体13の平面図である。
【0013】
図1に示すように、撹拌装置50は、試料70と共に容器60内に収容される磁性撹拌子5と、磁性撹拌子5を回転駆動するマグネチックスターラー1とを備えている。
【0014】
磁性撹拌子5は、水平回転可能な棒状の撹拌回転体20と、撹拌回転体20の長手方向の両端部にそれぞれ配置された一対の撹拌磁石25とを備えている。撹拌回転体20は、例えばフッ素樹脂やポリプロピレン等の、容器60に対する摩擦抵抗が低く、かつ、優れた耐薬品性、耐摩耗性を有するプラスチックから形成された部材であり、内部に撹拌磁石25を収容している。
【0015】
撹拌磁石25は、着磁方向が撹拌回転体20の回転軸と平行するように配置されている。また、一対の撹拌磁石25は、着磁方向が互いに同方向となるように、すなわち、同極が全て同じ側に位置するように配置されている。本実施形態では、磁性撹拌子5を容器60の底部に配置した状態で、各撹拌磁石25のN極がいずれも容器60の底面と対向するように配置されている。
【0016】
マグネチックスターラー1は、上面が水平な本体11と、本体11の内部に配置された回転磁界発生部12とを備えている。回転磁界発生部12は、水平回転可能な駆動回転体13と、駆動回転体13を回転駆動するモーター15と、撹拌磁石25に対応して駆動回転体13に配置された一対の駆動磁石16とを備えている。モーター15は、鉛直方向に延びる回転軸部14を備えており、回転軸部14が駆動回転体13の回転中心に連結されることにより、駆動回転体13を回転可能に支持している。
【0017】
一対の駆動磁石16は、着磁方向が駆動回転体13の回転軸と平行するように配置されており、かつ、対応する撹拌磁石25と対向可能であるように配置されている。また、各撹拌磁石25は、着磁方向が互いに同方向となるように、すなわち、同極が全て同じ側に位置するように配置されている。さらに、各駆動磁石16は、対応する撹拌磁石25と異なる磁極同士が対向可能であるように配置されている。本実施形態では、一対の駆動磁石16のS極がいずれも磁性撹拌子5と対向するように配置されている。これにより、駆動磁石16と撹拌磁石25とは、異なる磁極同士が対向する。
【0018】
また、マグネチックスターラー1は、図2に示すように、各駆動磁石16の回転軌道R上において、各駆動磁石16にそれぞれ隣接して駆動回転体13に配置された一対の補助磁石2を備えている。各補助磁石2は、各駆動磁石16に対してそれぞれ駆動回転体13の回転方向(矢示P方向)の反対側に隣接するように配置されており、着磁方向が駆動回転体13の回転軸と平行するように配置されている。また、各補助磁石2は、着磁方向が駆動磁石16の着磁方向と逆方向となるように、すなわち、隣接する各駆動磁石16の磁極と異なる磁極が磁性撹拌子5と対向するように配置されている。本実施形態では、一対の補助磁石2のN極がいずれも磁性撹拌子5と対向するように配置されている。
【0019】
次に、以上のように構成されたマグネチックスターラー1および撹拌装置50を用いて試料を撹拌する方法を説明する。
【0020】
まず、マグネチックスターラー1の上面に、試料70が収容された容器60を載置し、容器60の底部に磁性撹拌子5を配置した状態で、マグネチックスターラー1を作動させることにより、駆動磁石16を矢示P方向に回転させる。駆動磁石16が回転すると、撹拌磁石25が駆動磁石16に吸引され、駆動磁石16と同調して回転する。これにより、磁性撹拌子5が矢示P方向に回転し、容器60内の試料70が撹拌される。
【0021】
この時、磁性撹拌子5の回転に対する試料70の抵抗により、磁性撹拌子5の回転が阻害されると、撹拌磁石25と駆動磁石16との吸着が解かれて脱調し、撹拌磁石25が駆動磁石16に対して矢示Q方向にずれようとする。そして、撹拌磁石25が駆動磁石16に隣接する補助磁石2に接近すると、撹拌磁石25と補助磁石2とが反発することにより、撹拌磁石25が矢示P方向に戻される。すると、再び撹拌磁石25が駆動磁石16に吸引され、駆動磁石16と同調して回転する。このように、駆動磁石16による磁性撹拌子5の吸引状態を補助磁石2が維持することにより、磁性撹拌子5が矢示P方向に確実に回転する。
【0022】
本実施形態に係るマグネチックスターラー1によれば、複数の補助磁石2が、各駆動磁石16の回転軌道R上において、各駆動磁石16に対してそれぞれ駆動回転体13の回転方向の反対側に隣接するように配置されており、隣接する各駆動磁石16の磁極と異なる磁極が磁性撹拌子5と対向するように配置されているので、撹拌磁石25と駆動磁石16との連結が解かれても、撹拌磁石25が補助磁石2と反発し、駆動磁石16に確実に吸引される。したがって、磁性撹拌子5を確実に回転させることができ、試料を良好に撹拌することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0024】
例えば、本実施形態では、補助磁石2は、駆動磁石16に対して一方側に隣接すように配置されていたが、図3に示すように、駆動磁石16の回転軌道上において、駆動磁石16に対して両側に隣接するように配置されている構成であってもよい。この場合、駆動回転体13は正逆回転可能に構成されている。このような構成によれば、駆動回転体13の回転方向が逆方向になっても、撹拌磁石25を駆動磁石16で確実に吸引することができ、磁性撹拌子5を確実に回転させることができる。したがって、駆動回転体13の回転方向を自由に切り換えることができる。
【0025】
また、本実施形態では、撹拌回転体20は、棒状の部材であったが、回転可能であればその構成は特に限定されない。また、本実施形態では、駆動磁石16、撹拌磁石25及び補助磁石2は一対であったが、磁性撹拌子5が回転するのであればその数は特に限定されない。図4は、他の実施形態に係るマグネチックスターラー1の駆動磁石16および補助磁石2の配置を説明する平面図である。図4に示すように、駆動磁石16は、駆動回転体13に複数配置されている。補助磁石2は、駆動回転体13の回転方向に駆動磁石16が隣接するように複数配置されている。撹拌回転体20は、回転中心から放射状に延びる複数の腕部29を備えており、複数の腕部29の先端に複数の撹拌磁石25がそれぞれ配置されている。
【0026】
また、補助磁石2及び駆動磁石16の大きさは特に限定されず、図5に示すように、補助磁石2及び駆動磁石16の大きさをそれぞれ調整することにより、補助磁石2と駆動磁石16とが交互に隣接するように配置された構成にすることができる。このような構成によれば、1つの補助磁石2に対して、両側に駆動磁石16が隣接するので、駆動磁石16による磁性撹拌子5の吸引状態を確実に維持することができ、磁性撹拌子5を確実に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るマグネチックスターラー及びこれを備える撹拌装置の縦断面図である。
【図2】マグネチックスターラーの駆動回転体の平面図である。
【図3】他の実施形態に係るマグネチックスターラーの駆動回転体の平面図である。
【図4】更に他の実施形態に係るマグネチックスターラーの駆動回転体の平面図である。
【図5】更に他の実施形態に係るマグネチックスターラーの駆動回転体の平面図である。
【図6】従来のマグネチックスターラーおよび磁性撹拌子の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 マグネチックスターラー
2 補助磁石
5 磁性撹拌子
13 駆動回転体
14 回転軸部
16 駆動磁石
20 撹拌回転体
25 撹拌磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と共に容器に収容された状態の磁性撹拌子を回転駆動するマグネチックスターラーであって、
駆動手段により水平回転可能な駆動回転体を備え、
前記駆動回転体は、前記磁性撹拌子を吸引する複数の駆動磁石と、前記駆動磁石による前記磁性撹拌子の吸引状態を維持する複数の補助磁石とを備え、
複数の前記駆動磁石および前記補助磁石は、着磁方向が前記駆動回転体の回転軸と平行するように配置されており、
複数の前記駆動磁石は、前記磁性撹拌子と対向する磁極が全て同極となるように配置されており、
複数の前記補助磁石は、前記各駆動磁石の回転軌道上において、前記各駆動磁石に対してそれぞれ前記駆動回転体の回転方向の反対側に隣接するように配置されており、隣接する前記各駆動磁石の磁極と異なる磁極が前記磁性撹拌子と対向するように配置されているマグネチックスターラー。
【請求項2】
前記駆動回転体は、正逆回転可能であり、
前記補助磁石は、前記駆動磁石に対して両側に隣接するように配置されている請求項1に記載のマグネチックスターラー。
【請求項3】
前記駆動磁石と前記補助磁石とは、交互に隣接するように配置されている請求項1又は2に記載のマグネチックスターラー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のマグネチックスターラーと、前記マグネチックスターラー上に載置された容器に収容された状態で、前記マグネチックスターラーの回転駆動力により回転する磁性撹拌子とを備える撹拌装置であって、
前記磁性撹拌子は、複数の前記駆動磁石にそれぞれ対応する複数の撹拌磁石を備え、
複数の前記撹拌磁石は、着磁方向が前記磁性撹拌子の回転軸と平行するように配置されており、かつ、対応する前記駆動磁石と異なる磁極同士がそれぞれ対向するように配置されている撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−68229(P2008−68229A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250710(P2006−250710)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(506020333)株式会社エム・エフ・ユー (3)
【Fターム(参考)】