説明

マグネットホルダ

【課題】掲示物の取り外しの際に傷が生じるのを防止しつつ、磁性体への吸着を容易になし得るようにすること。
【解決手段】カプセル状の中空体1を、円筒軸に垂直な分割面で分割して二つの分割中空体2、2とする。各分割中空体2の円筒部内面側の対向する位置にポケット3を形成し、各ポケット3に円板状の磁石4を分割中空体2の開口部に臨むように収納する。分割中空体2の円筒部内面側に磁石4が固定された状態となっているため、このマグネットホルダを円筒軸周りに最大でも1/2回転すれば、磁性体に対する吸着可能な箇所に至り、その固定を速やかに、かつ容易に行うことができる。また、掲示物Pが円筒面に接触しているため、この掲示物Pの取り外しの際における傷付きを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性体からなる掲示板等に、掲示物を固定する際に使用するマグネットホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体からなる冷蔵庫の前面ドアや掲示板等に掲示物を固定する際に、マグネットホルダがよく用いられる。一般的なマグネットホルダは、樹脂製のホルダ本体に円板状の磁石が嵌め込まれた構成となっているものが多く、この磁石と磁性体の間に掲示物を挟み込むことによって、この掲示物が磁性体に固定される。そして、掲示物の取り外しに際しては、一方の手で掲示物を支えつつ、他方の手でマグネットホルダを磁性体から取り外す。手でマグネットホルダを取り外さずに掲示物を引き抜くと、このマグネットホルダが磁性体から外れて落下したり、このマグネットホルダあるいは磁石の端部と、掲示物とがこすれ合って、この掲示物に両者がこすれ合った痕跡等(すじ等)の傷が残ってしまい、その見栄えが悪くなったりすることがあるからである。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載のマグネットホルダにおいては、ホルダ本体をカプセル形状、楕円球形状、円柱形状等とするとともに、このホルダ本体の空間部に遊動可能に磁石を内包した構成を採用している。このようにすると、掲示物を取り外す際に、いちいち手でマグネットホルダを取り外さなくても、掲示物を引き抜く際にマグネットホルダがカプセル形状等の丸みに沿って少しずつ回転スライドするため、磁性体からこのマグネットホルダが外れて落下する恐れは低い。また、ホルダ本体をカプセル形状とするとともに、磁石をこのホルダ本体に内包することにより、ホルダ本体や磁石と掲示物とがこすれ合うことによる傷の発生を極力防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るマグネットホルダは、ホルダ本体内に磁石が遊動可能に設けられているため、このマグネットホルダが磁性体に吸着していない状態(マグネットホルダを磁性体から取り外した状態)では、磁石はその自重でホルダ本体の下部(底部)に位置している(同文献の図1参照)。この状態でマグネットホルダを磁性体に接近させても、このマグネットホルダの形状や大きさによっては、磁石と磁性体との間の距離が開きすぎてしまい、磁石の磁力が磁性体まで十分に及ばないことがあり得る。すると、この磁石が磁性体側に吸着しないため、このマグネットホルダによる掲示物の固定ができない。この場合、マグネットホルダを手で振る等して、磁石の磁力が磁性体まで及ぶように、この磁石を前記下部から適宜移動させる必要があり、使い勝手が非常に悪い。
【0006】
そこで、この発明は、掲示物の取り外しの際に傷が生じるのを防止しつつ、磁性体への吸着を容易になし得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明では、円筒部の両端に半球部を形成したカプセル状の中空体の円筒部内面側に磁石を固定し、前記円筒部を介して前記磁石を磁性体に吸着させて掲示物を固定するようにマグネットホルダを構成した。
【0008】
磁石を円筒部内面側に固定することにより、その固定された磁石が磁性体側を向くようにマグネットホルダを円筒軸周りに少し回転させながら接近させるだけで、この磁石(マグネットホルダ)を磁性体に容易に吸着させることができる。また、マグネットホルダの中空体をカプセル状としたので、掲示物の取り外しの際に特定箇所に力が集中するのを緩和することができ、この力に起因する傷付きを防止することができる。
【0009】
前記構成においては、前記中空体を、円筒部の中心軸を横切る分割面によって複数の分割中空体に分割し、各分割中空体に、前記分割面に臨むように前記磁石を設け、各分割中空体に設けた磁石同士の吸着力により、各分割中空体の分割面同士を吸着させて、カプセル状の中空体に一体化し得るようにすることができる。
【0010】
このように中空体を分割中空体に分割して、この分割中空体を磁石の磁力によって適宜一体化し得るようにすることにより、例えば、大面積の掲示物を固定する際は分割中空体に分割した状態でこの掲示物の上端両側を固定する一方で、掲示物の面積が小さい場合は各分割中空体を一体の中空体とした状態でこの掲示物の上端の一箇所のみを固定するように、その使用目的に応じて、使用態様を適宜選択することができる。この分割数は適宜変更でき、例えば、掲示物の四隅を固定し得るように、中空体を四分割した分割中空体としてもよい。
【0011】
前記中空体を分割して分割中空体とする構成においては、前記分割中空体の円筒部内面側の対向する位置にそれぞれ磁石を設けることもできる。
【0012】
このように各分割中空体の複数箇所に磁石を設けることにより、磁性体に対する吸着箇所の数が増えるため、この分割中空体で掲示物を固定する際の使い勝手が一層向上する。また、分割中空体同士を吸着させて一体の中空体とする際に、増やした磁石の数の分だけ吸着力が増大するため、一体とした分割中空体同士が外れにくく、掲示物を固定する際の安定性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、カプセル状の中空体の円筒部内面側に磁石を固定した。中空体をカプセル状とすることにより、掲示物を取り外す際に特定箇所への力の集中を緩和して、この掲示物に傷が付くのを極力防止しつつ、磁石を円筒部内面側に固定することにより、この磁石が設けられた箇所を磁性体側に向けて接近させるだけで吸着作用が発揮されるため、掲示物の固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係るマグネットホルダを示す斜視図
【図2】マグネットホルダの分割中空体本体を示し、(a)は側面図、(b)は(a)中のIIb−IIb線に沿う断面図
【図3】マグネットホルダの分割中空体を分解した状態を示す、図2(a)中のIIb−IIb線に沿う断面図
【図4】マグネットホルダの分割中空体を示し、(a)は側面図、(b)は正面図
【図5】カプセル状のマグネットホルダを構成した状態を示す正面図であって、(a)は二つの分割中空体を一体にした場合、(b)は四つの分割中空体を一体にした場合
【図6】マグネットホルダの使用態様を示し、(a)(b)は正面図、(c)は斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係るマグネットホルダの一実施形態を図1〜6に示す。
【0016】
このマグネットホルダは、図1〜4に示すように、円筒部の両端に半球部を形成したカプセル状の中空体1からなり、この中空体1は円筒軸に垂直な分割面によって、同形状の二つの分割中空体2、2に分割されている。この中空体1は樹脂材からなる。各分割中空体2、2には、円筒部内面側の対向する位置にポケット3が形成され、各ポケット3に円板状の磁石4が分割中空体2の開口部に臨むように収納されている。
【0017】
この磁石4の一方の面がS極4s、他方の面がN極4nとなっており、各磁石4は、いずれも両極4s、4nが同じ側を向いている(図1を参照)。すなわち、対向するポケット3のうち、一方のポケット3に収納した磁石4が円筒部外側に向かってS極4sの場合、他方のポケット3に収納した磁石4が円筒部外側に向かってN極4nとなる。この磁石4の種類は特に問わないが、分割中空体2の円筒部を介しつつ磁性体まで磁力を及ぼす必要があることから、ネオジム磁石等の吸着力の高い磁石4を採用するのが好ましい。
【0018】
両ポケット3、3の円筒部内面に沿う中間位置には、半球部側に向いつつ円筒部軸心側に起立するリブ5が形成されている。このリブ5によって分割中空体2の強度を確保している。この磁石4を収納した状態で、分割中空体2の開口部には蓋6が設けられ、ねじ7で分割中空体2のねじ孔8にねじ止めされる。
【0019】
このように蓋6をねじ7でねじ止めする代わりに、分割中空体2の開口部に嵌合部を形成し、この嵌合部に蓋6を嵌め込むようにしてもよい。そうすれば、ねじ止め作業が不要となって、製造コストの低減を図り得る。
【0020】
磁石4を設けた二つの分割中空体2、2を、対向して設けた磁石4の磁極4s、4nが互いに反対向きとなるようにして接近させると、図5(a)に示すように、互いに吸着して一体のカプセル状の中空体1からなるマグネットホルダとすることができる。また、図5(b)に示すように、両端の分割中空体2、2の間に、同様に磁石を設けた円筒状の分割中空体2を設けて、使用の際に中空体1を四分割し得るようにすることもできる。もちろん、用途に対応してこの分割数をさらに増やすこともできる。
【0021】
このマグネットホルダは、図6(a)に示すように、一体のカプセル状の中空体1のまま掲示物Pを固定できる一方で、図6(b)に示すように、二つの分割中空体2、2に分割した状態で、掲示物Pの上部両端を固定するようにすることもできる。このとき、図5(b)に示した四分割式のマグネットホルダを用いれば、この掲示物Pの四隅を固定できるため、その安定性が一層向上する。
【0022】
この掲示物Pの固定に際しては、中空体1又は分割中空体2の円筒部内面側に磁石4が固定されているため、このマグネットホルダを円筒軸周りに最大でも1/2回転すれば、磁性体に対する吸着可能な箇所に至り、その固定を速やかにかつ容易に行うことができる。
【0023】
この分割中空体2は、その円筒面が掲示物Pに接触するようにすれば、この分割中空体2による掲示物Pの傷付きが防止できるため好ましいが、図6(c)に示すように、分割中空体2の蓋6が掲示物Pに向くようにして、掲示物Pを固定することもできる。
【0024】
図6(a)及び(b)に示すように固定した掲示物Pを取り外す際は、この掲示物Pを一方の手で下方前方側にマグネットホルダから引き抜く。すると、このマグネットホルダが、磁性体に吸着しつつ掲示物Pに対して小刻みにスライドして(引き抜き方向への回転と、この回転と逆方向の回転(磁石の吸着方向に向かう回転)を小刻みに交互に繰り返して)、このマグネットホルダをもう一方の手で取り外したり、支えたりすることなく、この掲示物Pを取り外すことができる。しかも、このマグネットホルダと掲示物Pは、中空体1又は分割中空体2の円筒面で接触していてこの掲示物Pに集中的に力がかからないため、掲示物Pを取り外す際に傷付きが生じるのを極力防止することができる。
【0025】
上記の各実施形態においては、磁石4を収納するポケット3を円筒部内面側の対向する位置に形成したが、例えば、円筒部の周方向に90度間隔でポケット3を形成し、より多くの磁石4を設けるようにすることができる。このようにすれば、中空体1又は分割中空体2の円筒部を磁性体に吸着させる際の、その吸着可能な箇所の数を増やすことができるため、掲示物Pを速やかに磁性体に吸着させることができる。
【0026】
また、上記の各実施形態においては、円筒軸に垂直の分割面で中空体1を分割した構成としたが、この円筒軸に対して多少傾斜した分割面でこの中空体1を分割する構成とすることもできる。このようにすれば、分割した分割中空体2の形状に多様性が生じ、商品としてのデザイン性がさらに向上するというメリットがある。
【0027】
この中空体1の形状として、円筒部の両端に半球部を形成したカプセル状とする代わりに、前記円筒部が無い球状、前記半球部が無い円筒状、回転楕円体形状等も採用し得る。これらの形状とした場合も、この中空体1の壁面内部に磁石を固定することによって、カプセル状とした場合と同様に、掲示物Pの傷付きを防止しつつ、磁性体への吸着を容易になし得るためである。
【符号の説明】
【0028】
1 中空体
2 分割中空体
3 ポケット
4 磁石
4s (磁石の)S極
4n (磁石の)N極
5 リブ
6 蓋
7 ねじ
8 ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部の両端に半球部を形成したカプセル状の中空体(1)の円筒部内面側に磁石(4)を固定し、前記円筒部を介して前記磁石(4)を磁性体に吸着させて掲示物(P)を固定するようにしたマグネットホルダ。
【請求項2】
前記中空体(1)を、円筒部の中心軸を横切る分割面によって複数の分割中空体(2)に分割し、各分割中空体(2)に、前記分割面に臨むように前記磁石(4)を設け、各分割中空体(2)に設けた磁石(4)同士の吸着力により、各分割中空体(2)の分割面同士を吸着させて、カプセル状の中空体(1)に一体化し得るようにした請求項1に記載のマグネットホルダ。
【請求項3】
前記分割中空体(2)の円筒部内面側の対向する位置にそれぞれ磁石(4)が設けられている請求項2に記載のマグネットホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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