説明

マスカラブラシと、該マスカラブラシの製造方法

【課題】目的に応じて適切にマスカラが塗布できるように、一つのマスカラブラシに複数の塗布体を簡易且つ確実に、しかも強固に取り付ける。
【解決手段】第一塗布体7と第二塗布体8とから構成され、上記第一塗布体7は、芯線9’、9’を捻回し、その先端に有する環状の係止部7cを形成してなる軸体7aと、該軸体7aを中心として半径方向へ螺旋状に繊維11を配置して形成する円筒状のブラシ体7dとからなり、上記第二塗布体8は、第一塗布体7の軸体7aの先端に形成する環状の係止部7cを内包したインサート成形による成形体とするので、一つのマスカラブラシに複数の塗布体を設けることができ、しかも別体の第二塗布体を簡易且つ確実に、しかも強固に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、睫毛に対してマスカラを適切に塗布することができるマスカラブラシと、該マスカラブラシの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマスカラブラシは、一本の芯線を折曲することでV字形状に形成した二本の芯線間に繊維を挟持するとともに、二本の芯線を互いに捻回して、一本の軸体を形成しつつ該軸体を中心として半径方向へ螺旋状に繊維を配置した円筒状のブラシ体としてなるものが一般的である。
【0003】
そのため、上記マスカラブラシにおいて、通常、睫毛にマスカラを塗布する場合は、円筒状のブラシ体の側面によって睫毛にマスカラを塗布する。
そして、睫毛に塗布したマスカラを局部的に修正する場合は、円筒状のブラシ体の一部、例えば先端周縁だけを使用して塗布するものである。
また、睫毛を長く見せるようにマスカラを塗布する場合は、マスカラブラシを睫毛に沿って出来うる限り密着させるように睫毛に沿ってそのまま払うように動かしたり又は回転させながらマスカラを塗布するものである。
【0004】
ところが、局部的に修正する等のためにマスカラを塗布する場合には、上記マスカラブラシのブラシ体の一部、例えば先端周縁だけを使用し、様々な方向に動かすことでマスカラを適切に塗布するものである。その結果、円筒状であるブラシ体の側面等が邪魔になり誤って目蓋、目尻又は頬等に接触し易く、汚損を生ずるおそれがある。
また、睫毛を長く見せるようにマスカラを塗布する場合には、マスカラブラシを睫毛に沿ってそのまま払うように動かしたり又は回転させながらマスカラを塗布しようとしても、マスカラブラシのブラシ体の表面は睫毛の表面に対して面で密着することができず、睫毛に沿ってマスカラを十分且つ、均一に塗布することができないものである。
【0005】
そのため、一つのマスカラブラシであっても目的に応じて適切にマスカラを塗布できるように、マスカラブラシのブラシ体の一部の繊維方向を睫毛の毛先方向と一致に合致させるようにすることも考えられるが、上記従来のマスカラブラシの製造方法では一つのマスカラブラシの中で異なる繊維方向を有するブラシ体を一体に設けることは製造上不可能である。
【0006】
そこで、睫毛に対し目的に応じて適切にマスカラを塗布することができるように、一つのマスカラブラシの中に異なるマスカラ塗布体を有するように別体の塗布体、例えばマスカラブラシの先端において、毛先方向が軸体の軸線方向と同一方向とする別体のブラシ体(特許文献1参照)や別体の静電植毛ブラシ毛を有してなるフロッキーブラシ部(特許文献2参照)を具えるものが提案されている。
【0007】
しかしながら、上記マスカラブラシの先端に具えられる別体のブラシ体やフロッキーブラシ部は、局部的なマスカラの塗布に供するものであるから小さいものである。従って、マスカラブラシの製造工程において上記別体のブラシ体等を正確に取り付けることは困難であり、製造工程での作業効率は著しく低下するものである。
【0008】
また、上記別体のブラシ体を固定するにあたっては接着剤を使用するものである。そのため、接着剤の使用量が過剰であると、該接着剤が外部に滲み出し、ブラシ体をなす繊維束において毛細管現象により接着剤が浸透するとともに、ブラシ体をなす繊維束が互いに固着して弾性が失われ、マスカラの塗布を円滑に行えなくなる。一方、接着剤の使用量が不足すると、別体のブラシ体等の取付部での取付強度が低下してしまうので、マスカラブラシの抜出の際に生じる大きなシゴキの抵抗により脱落してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭60−116914号公報
【特許文献2】特開2002−172019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、睫毛に対して目的に応じて適切にマスカラを塗布することができる別体の塗布体を簡易且つ正確に、しかも強固に取り付けることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の特徴として、
第一塗布体と第二塗布体とから構成され、
上記第一塗布体は、芯線を捻回して形成され、その先端に環状の係止部を形成してなる軸体と、該軸体を中心として半径方向へ螺旋状に繊維を配置して形成する円筒状のブラシ体とからなり、
上記第二塗布体は、第一塗布体の軸体の先端に形成する環状の係止部を内包したインサート成形による樹脂製の成形体とするものである。
【0012】
そのため、一つのマスカラブラシにおいて異なる塗布体を具えるので、睫毛に対して目的に応じて適切にマスカラを塗布することができる。
そして、第二塗布体はインサート成形による成形体であるので、軸体の先端に形成される係止部内に第二塗布体の樹脂が充填されることとなり、第一塗布体と第二塗布体とは互いに強固に固定することができる。
【0013】
第2の特徴として、
一本の芯線をU字状に折曲することでU字端と共に、該U字端を介して連続する二本の芯線を形成し、
上記二本の芯線間において、U字端から一定の距離を有する始点より繊維を挟持し、
上記始点より二本の芯線を捻回して、
先端に中空部を有する環状の係止部を形成すると共に、半径方向へ螺旋状に繊維を配置して円筒状のブラシ体である第一塗布体を形成し、
更に、第1塗布体の軸体の先端の係止部において、該係止部を内包するようにインサート成形によって樹脂製の第二塗布体を形成するものである。
【0014】
このように、別体である第二塗布体は、第一塗布体の軸体先端に形成する係止部に対してインサート成形により形成されるので簡易且つ正確に固定することができる。更に、第二塗布体はインサート成形する際に第一塗布体の軸体の先端に形成される環状の係止部を内包するので、該係止部内に第二塗布体の樹脂が充填されることとなるため互いに強固に固定することができる。
【0015】
なお、第二塗布体の材質はインサート成形可能なものであれば目的に合わせて適宜選択することができる。即ち、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ゴム又はエストラマー等を塗布する目的に合わせて適宜選択し、第二塗布体を形成するものである。
【発明の効果】
【0016】
本願発明のマスカラブラシ及び該マスカラブラシの製造方法において、局部的にマスカラを塗布する別体の第二塗布体は、第一塗布体の軸体の先端に形成する環状の係止部内に第二塗布体の樹脂を充填させつつインサート成形により一体に成形することで第一塗布体の軸体に対して簡易且つ正確に、しかも強固に固定することができるので、目的に応じてマスカラを塗布できるとともに、マスカラブラシの製造作業における作業効率を著しく高める上、製造コストの低減をも図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明のマスカラブラシを具える液体化粧料塗布容器の部分断面図である。
【図2】(イ)は本願発明のマスカラブラシの正面図、(ロ)はA−A断面図である。
【図3】本願発明のマスカラブラシの製造工程を示す模式図である。
【図4】(イ)乃至(ヘ)は、本願発明のマスカラブラシの諸例の正面図及び側面図である。
【実施例】
【0018】
図1に示すものは、本願発明の実施例であるマスカラブラシ6を具える液体化粧料塗布容器1であり、該液体化粧料塗布容器1はその内部にマスカラ3を貯留する塗布容器本体2と、本願発明の実施例であるマスカラブラシ6を固持軸5を介して保持する蓋体4とから構成される。
【0019】
そこで、上記塗布容器本体2は、その開口部2aにおいて、外周面に雄ねじ部2bを周設するとともに、その内部には後述する固持軸5及び該固持軸5の先端に固持されるマスカラブラシ6の表面に過剰に付着したマスカラ3を拭い去るシゴキ2cが内装されているものである。
【0020】
また、蓋体4は、その開口部4a内周面に雌ねじ部4bを螺設するとともに、その内部では、根元部5aを一体に嵌着して保持される固持軸5を介してその先端にマスカラブラシ6が一体に固持されているものである。
【0021】
ここで、該蓋体4の内部で固持軸5を介して固持されるマスカラブラシ6は、第一塗布体7と第二塗布体8とから構成される。
まず、第一塗布体7は、芯線9’、9’を互いに捻回して形成され、その先端に中空部7bを有する環状の係止部7cを形成してなる軸体7aと、該軸体7aを中心として半径方向へ螺旋状に繊維を配置して形成する円筒状のブラシ体7dとからなるものである。
そして、第二塗布体8は、第一塗布体7の軸体7aの先端に形成する環状の係止部7cを内包して、その係止部7cに有する中空部7bを充填するようにインサート成形した樹脂製の成形体である。即ち、実施例での第二塗布体8は一端面を湾曲面とする円柱体形状である本体8aの湾曲面において、その間でマスカラ3を保持する複数の突起8bが配設されているものである。
【0022】
なお、第一塗布体7の軸体7aに固持される別体の第二塗布体8における本体8aの形状やその表面の突起8bの個数や配置は、局部的な修正や長く見せる等の目的に合わせて適宜選択することが好ましい〔図4(イ)乃至(ヘ)参照〕。
【0023】
そこで、上記液体化粧料容器1を構成する蓋体4に固持軸5を介して固持される本願発明の実施例であるマスカラブラシ6は、図3に示す工程によって製造されるものである。
即ち、一本の芯線9をU字状に折曲してU字端9’aと共に、該U字端9’aを介して連続する二本の芯線9’、9’を形成する〔図3(イ)〜(ロ)〕。
更に、上記二本の芯線9’、9’間において、該U字端9’aから一定の距離Lを空けた位置を始点10として繊維11を挟持する〔同図(ハ)〕。
更に、該始点10より繊維11を挟持した二本の芯線9’、9’を互いに捻回して、先端に中空部7bを有する環状の係止部7cとともに一本の軸体7aを形成する。その結果、該軸体7aから半径方向へ螺旋状に繊維を配置するブラシ体7dである第一塗布体7を形成するものである〔同図(ニ)〜(ホ)〕。
その上で、上記第1塗布体7の軸体7aの先端において、係止部7cに有する中空部7bを樹脂により充填するようにインサート成形によって第二塗布体8を成形するものである〔同図(ヘ)〕。
【0024】
以上のとおり、本願発明の実施例であるマスカラブラシ6は大きさや形態の異なる第一塗布体7と第二塗布体8から構成されるので、部分修正や長く見せる等の目的に合わせて睫毛に対して適切にマスカラ3を塗布することができる。
さらに、該マスカラブラシ6おいて第二塗布体8を成形するに当たっては、第一塗布体7の軸体7aの先端に形成される係止部7cを内包するようにインサート成形されるので、該係止部7cの有する中空部7b内に第二塗布体8の一部の樹脂は充填される。その結果、該第二塗布体8は第一塗布体7の軸体7aに対して簡単且つ確実に、しかも強固に固定されるものとなる。
【0025】
その結果、マスカラブラシ6の製造において作業効率を高めることができ、さらに製造コストの低減化をも図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
目的に応じて別体の塗布体をインサート成形により簡易且つ確実に、しかも強固に取り付けることができるので、液体化粧料のみならず塗料等に用いる塗布体においても適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 液体化粧料塗布容器
2 塗布容器本体
2a 開口部
2b 雄ねじ部
3 マスカラ
4 蓋体
4a 開口部
4b 雌ネジ部
5 固持軸
5a 根元部
6 マスカラブラシ
7 第一塗布体
7a 軸体
7b 中空部
7c 係止部
7d ブラシ体
8 第二塗布体
8a 本体
8b 突起
9、9’ 芯線
9’a U字端
10 始点
11 繊維


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一塗布体と第二塗布体とから構成され、
上記第一塗布体は、芯線を捻回して形成され、その先端に環状の係止部を形成してなる軸体と、該軸体を中心として半径方向へ螺旋状に繊維を配置して形成する円筒状のブラシ体とからなり、
上記第二塗布体は、第一塗布体の軸体の先端に形成する環状の係止部を内包したインサート成形による樹脂製の成形体とする
ことを特徴とするマスカラブラシ。
【請求項2】
一本の芯線をU字状に折曲することでU字端と共に、該U字端を介して連続する二本の芯線を形成し、
上記二本の芯線間において、U字端から一定の距離を有する始点より繊維を挟持し、
上記始点より二本の芯線を捻回して、
先端に中空部を有する環状の係止部を形成すると共に、半径方向へ螺旋状に繊維を配置して円筒状のブラシ体である第一塗布体を形成し、
更に、第1塗布体の軸体の先端の係止部において、該係止部を内包するようにインサート成形によって樹脂製の第二塗布体を形成する
ことを特徴とする請求項1記載のマスカラブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207422(P2010−207422A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57223(P2009−57223)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】