説明

マスカラブラシ

【課題】構造が簡素化され、かつ液だれを起こし難い使い勝手のよいマスカラブラシを提案する。
【解決手段】つまみ部1に固定保持された軸部2と、この軸部2の先端に設けられたブラシ部3とを備えた合成樹脂製のマスカラブラシにおいて、前記ブラシ部3は、軸部2の先端に一体成形され、前面部が凸状をなし背面部が凹状をなす湾曲形状になる本体部分3aと、この本体部分3aの先端もしくは基端部に、静電植毛により形成された植毛部3bとから構成する。そして、少なくともブラシ部3については、前面部に背面部よりも丈が長い複数の櫛歯状突起4を有し、静電植毛における加工温度において実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性合成樹脂にて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラブラシに関するものであり、構造の簡素化されたブラシでもって多彩な塗布形態を実現するとともに、化粧料のたれを確実に回避しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
マスカラ液を容器内から取出してそのまま睫毛に塗布する際に用いられるマスカラブラシは、つまみ部に固定保持された軸部の先端に弧状をなす芯部材を設け、この芯部材にブラシ毛を取り付けるとともにその先端部に植毛ブラシ部を配置した塗布具が知られており、この点に関する先行技術としては特許文献1が参照される。
【特許文献1】特開2005−87635号公報
【0003】
ところで、従来のマスカラブラシは、サイズが小さいわりには複数の部材にて構成されており効率的な製造を実現するのが難しく、しかも、使用に際しては液だれが生じることがしばしば見受けられることから使い勝手がよいとは言えないのが現状であり、未だ改善の余地が残されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、構造の簡素化を図るとともに、液だれの生じることのない使い勝手のよいマスカラブラシを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、つまみ部に固定保持された軸部と、この軸部の先端に設けられたブラシ部とを備えた合成樹脂製のマスカラブラシであって、
前記ブラシ部は、軸部の先端に一体成形され、前面部が凸状をなし背面部が凹状をなす湾曲形状になる本体部分と、この本体部分の先端もしくは基端部に、静電植毛により形成された植毛部とを有し、
少なくともブラシ部は、前面部に背面部よりも丈が長い複数の櫛歯状突起を有し、静電植毛における加工温度において実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性合成樹脂からなる、ことを特徴とするマスカラブラシである。
【0006】
本発明にしたがうマスカラブラシの植毛部はブラシ部の先端部に形成するか、あるいはブラシ部の前面部側の基端部に形成するか、その両方に形成するのが好ましい。また、静電植毛を可能とする熱可塑性樹脂としてはナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)を用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
軸部とブラシ部を、静電植毛における加工温度において実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性合成樹脂にて一体成形し、該ブラシ部の先端部及び基端部の少なくとも一方に静電植毛による植毛部を設けたので、マスカラブラシを単一部材として構成することが可能となり、植毛部についてはマスカラ液のたれを防ぐための液だれ防止部材、及び塗布動作時における液溜め部材として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本願発明にしたがうマスカラブラシの実施の形態を示した側面図であり、図2は図1に示したマスカラブラシの前面を示した図、そして図3(a)(b)は図1のA−A断面と図3(a)のB−B断面をそれぞれ示した図である。
【0009】
図における1はマスカラ容器(図示せず)にねじ止めされ、キャップとしての機能を兼ね備えたつまみ部、2はつまみ部1に固定保持された軸部、3は軸部2の先端に一体成形したブラシ部である。
【0010】
ブラシ部3と軸部2及び櫛歯状突起4、リブ状突起5は単一種類の合成樹脂によって一体成形されており、前記ブラシ部3は、前面部が凸状をなし背面部が凹状をなす湾曲形状の本体部分3aと、この本体部分3aの先端3aに形成された植毛部3bから構成されている。また、上記の突起のうち櫛歯状突起4は本体部分3aの前面部に設けられており、リブ状突起5は本体部分3aの背面部に設けられている。
【0011】
櫛歯状突起4は具体的には、先細り形状をなす細長の板状部材4aを極わずかな隙間を隔てて本体部分3aの周りに複数本配置し、これを一組として本体部分3aの長手方向に沿って複数配列することによって構成され(図3(a)参照)、リブ状突起5については本体部分3aの周りにおいて伸延する先細り断面形状をなす円弧状突起5aを、櫛歯状突起4と同様に、本体部分3aの長手方向に沿って複数配列することによって構成されている(図3(a)(b)参照)。櫛歯状突起4はリブ状突起5よりも丈が長く設定され、マスカラ液を塗布するに際して櫛歯状突起4、リブ状突起5を適宜使い分けることによって状況に応じた多彩な塗布形態を実現することができる。なお、リブ状突起5は丈を短くした櫛歯状突起を適用することも可能である。
【0012】
植毛部3bは静電植毛によって形成されたものであって、マスカラ液を含浸させ、該植毛部3bを塗布すべき部位に直接接触させて塗布する場合に用いることができるものであり、この植毛部3bは本体部分3aに付着した内容液が先端部分から滴下するのを防止することもできる。ここに、例えば、植毛部3bによりマスカラ液を睫毛に塗布したのち、櫛歯状突起4あるいはリブ状突起5によって当該睫毛を梳く場合においては櫛歯状突起4、リブ状突起5上にはマスカラ液の溜まりが形成されないためスムーズに睫毛を梳くことができるとともにその際に液だれを起こすことはない。植毛部3bとしては毛の直径が19μm程度、長さ1.0〜1.8mm程度、本数200〜300本/mm程度のものを適用するのが好ましい。
【0013】
本発明にしたがうマスカラブラシは、軸部2、ブラシ部3が一体成形されたものであり効率的な生産が可能であり、しかも植毛部5にて液の保持、及び液だれの防止を図ることができるので使勝手がよい。
【0014】
植毛部3bはブラシ部3の前面部側の基端部(ブラシ部3と軸部2の境界)に設けるようにしてもよく、この場合も液の滴下(液だれ)を防止するのに役立つ。
【0015】
ブラシ部3の本体部分3aについては、静電植毛を施しても実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性樹脂を用いることが肝要であり、とくにナイロン樹脂を用いるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
構造が簡素化され、かつ液だれを起こし難い使勝手のよいマスカラブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にしたがうマスカラブラシの実施の形態を示した図である。
【図2】図1に示したマスカラブラシの前面部側を示した図である。
【図3】(a)は図1のA−A断面、(b)は図3(a)のB−B断面を示した図である。
【符号の説明】
【0018】
1 つまみ部
2 軸部
3 ブラシ部
3a 本体部分
3b 植毛部
4 櫛歯状突起
5 リブ状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つまみ部に固定保持された軸部と、この軸部の先端に設けられたブラシ部とを備えた合成樹脂製のマスカラブラシであって、
前記ブラシ部は、軸部の先端に一体成形され、前面部が凸状をなし背面部が凹状をなす湾曲形状の本体部分と、この本体部分の先端もしくは基端部に、静電植毛により形成された植毛部とを有し、
少なくともブラシ部は、前面部に背面部よりも丈が長い複数の櫛歯状突起を備え、静電植毛における加工温度において実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性合成樹脂からなる、ことを特徴とするマスカラブラシ。
【請求項2】
前記植毛部は、ブラシ部の先端部に形成されたものである、請求項1記載のマスカラブラシ。
【請求項3】
前記植毛部は、ブラシ部の前面部側の基端部に形成されたものである、請求項1記載のマスカラブラシ。
【請求項4】
前記静電植毛における加工温度において実質的に熱変形を生じさせない熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である、請求項1〜3の何れかに記載のマスカラブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110369(P2010−110369A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283181(P2008−283181)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)