説明

マスカラ塗布具

【課題】低粘性のマスカラ液の保持が可能であり、しかも使用感、化粧性能等が好適な、マスカラ塗布具を提供すること。
【解決手段】少なくとも、軸部、当該軸部の先端側に設けた塗布部および当該軸部の基端側に設けられた把持部を含み、前記塗布部は、前記軸部の両側に、複数の平板状のクシ歯がその列で平面を形成し、さらに、前記軸部のクシ歯のない部分は軸の長手方向に連続してリブ部を設けてなることを特徴とするマスカラ塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラ塗布具に関し、更に詳細には、粘性の低いマスカラ液をきれいに睫毛に塗布することができるマスカラ塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マスカラを用い、睫毛を化粧することが広く行われている。このマスカラは、以前は、睫毛を長く見せるためのものが主流であり、そのためにマスカラ液の粘性が高い(稠度値が低い)ものが好まれていた。そして、このために用いるマスカラ塗布具としては、睫毛に付着した高粘性のマスカラ液を睫毛上およびその先へきれいに梳いて長く付けることに適したものとして、比較的硬い素材で形成されたクシ歯を有するものが利用されていた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のマスカラ塗布具は、高粘性マスカラ液に適したものの例であり、このマスカラ塗布具では、そのクシ歯片が曲げ弾性率にして1,500MPa以上の硬い樹脂素材で形成されている。
【0004】
ところが近年、睫毛の化粧効果への要望が多様化し、下睫毛のような短い睫毛にもきれいに付着させたり、繊細な仕上がりが求められるようになり、マスカラ液の粘性が比較的低いものが好まれるようになってきている。
【0005】
このような低粘性のマスカラ液では、界面張力の影響を受ける傾向が増えるため、クシ歯の表面に平面的に付着する傾向が出始め、クシ歯とクシ歯の間の空間に保持される量が減る傾向がある。従って、高粘性マスカラ液に適した従来のマスカラ塗布具では睫毛の化粧に適した十分な量のマスカラ液を保持することができず、使用感(睫毛の化粧のし易さ)が悪く、十分な化粧効果が得られないという問題があった。
【0006】
また、低粘性のマスカラ液に対して、硬い樹脂素材のクシ歯をもつマスカラ塗布具を用いると、シゴキ孔を介して容器からマスカラ塗布具を引き抜くときに、低粘性であるが故にマスカラ液が外に飛び散って周りを汚したり、この飛び散りによってさらに塗布具のマスカラ液保持量が減ってしまう場合があり、この面からも従来のマスカラ塗布具での問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−46243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は、低粘性のマスカラ液の保持が可能であり、しかも使用感、化粧性能等が好適な、マスカラ塗布具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、低粘性マスカラ液に適合したマスカラ塗布具を得るべく、その形状、素材等に関し鋭意研究を行っていたところ、マスカラ塗布具の複数のクシ歯を、そのクシ歯の列が平板状の面を形成するように軸の両側に配置し、さらに、前記軸のクシ歯のない部分に、軸に沿ってリブ部を設けることで、睫毛への塗布に適した十分な量のマスカラ液の保持が可能であることを見出した。
【0010】
更に、マスカラ塗布具の素材として、クシ歯片の素材を柔軟なものとすることで、マスカラ塗布具をマスカラ容器から引き抜く際に飛び散る等の問題が生じることなく、低粘性マスカラ液であっても、十分な使用感、塗布性能が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも、軸部、当該軸部の先端側に設けた塗布部および当該軸部の基端側に設けられた把持部を含み、前記塗布部は、前記軸部の両側に、複数の平板状のクシ歯がその列で平面を形成し、さらに、前記軸部のクシ歯のない部分は軸の長手方向に連続してリブ部を設けてなることを特徴とするマスカラ塗布具である。
【0012】
また本発明は、少なくとも塗布部が、曲げ弾性率が20〜1000MPaの樹脂で形成されたものである上記のマスカラ塗布具である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスカラ塗布具は、特に低粘性のマスカラ液を塗布するために適したものである。すなわち、本発明のマスカラ塗布具は、低粘性のマスカラ液を塗布する場合であっても、十分な量のマスカラ液を隣接するクシ歯どうしの間、および塗布具中央部分に線状に設けたリブ部とクシ歯の間の隅部に保持し、かつ他の部分に付着したマスカラ液はマスカラ容器のシゴキ部(ワイパー部)で拭い取られ、化粧に当たって問題になることがないので、睫毛の化粧に適した量の十分なマスカラ液の保持と、良好な使用感、化粧効果を得ることができるのである。
【0014】
なお、本発明で言う低粘性マスカラ液とは、30℃における稠度値が、240以上、特に250以上であるものを指称し、この稠度値は、JIS−K−2220に準拠し、30gアルミニウムコーンを用いて、落下後5秒後に測定される値を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のマスカラ塗布具の塗布機能部の一態様を示す正面図である。
【図2】本発明のマスカラ塗布具の塗布機能部の一態様を示す側面図である。
【図3】本発明のマスカラ塗布具の塗布機能部の一態様を示す平面図である。
【図4】図1の、A−A'断面の拡大図である。
【図5】本発明マスカラ塗布具全体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施態様を示す図面と共に、本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一態様であるマスカラ塗布具の塗布機能部(軸体や把持部を除いた塗布に関与する部分をいう)の正面図、図2はその側面図、図3はその平面図である。図中、1’は塗布機能部、2は軸部、3は塗布部、4はクシ歯、5はリブ部、6は梳き部、7は軸基部、8は隣接する2本のクシ歯4の間に形成される空間部を示す。
【0018】
本発明のマスカラ塗布具の塗布機能部1’は弾性樹脂により一体成形されており、塗布部3は、図1、2に示すようにその横断面が矩形である前記軸部2の左右両側に複数の平板状のクシ歯4を軸部2に対し垂直に、かつ、平板を横に並べて平面を形成するように配置している。従って、これらクシ歯4の列は平板状の包絡面を形成する。また、隣接するクシ歯4どうしを、その間隔がクシ歯4の基部から先端部まで一定となるよう各々平行に設けており、隣接するクシ歯4間には空間部8が形成される。そして、この軸部2のクシ歯4のない部分(図4の上側と下側)には、連続した線状のリブ部5が軸部2の長手方向に沿って設けられている。
【0019】
本発明図1の実施態様において、塗布機能部1’におけるクシ歯4は、軸部2から垂直に突出するものであり、最も好ましいが、軸部2の先端長手方向に対し任意の角度で設けても良く、例えば45°〜135°、好ましくは60°〜120℃の角度で突出させても良い。また、平板状のクシ歯4の横断面形状は、長方形、台形、半楕円形、あるいは長方形において隣接するクシ歯4に対向する辺が互いに内側に凹んだ鼓形等、任意の形状であって良いが、各クシ歯4どうしの間に多くの低粘性マスカラ液を保持する上で、一般には長方形や鼓形が好ましい。
【0020】
また、このクシ歯4の本数は、特に制約はないが、マスカラ塗布具という性格上、あまり多数とすることはできず、一般には、軸部2の片側で、6本ないし20本程度が好ましい。また、隣接するクシ歯4どうしの間隔も、特に制約されるものではないが、0.3mmないし1.5mm程度が好ましく、特に0.5mmないし0.7mm程度が、低粘性のマスカラ液を保持する上で好ましい。更に、同じ塗布部3ではそれらの間隔を異なるものとしてもよいが、同一であることが望ましい。
【0021】
なお、上記クシ歯4は、図1から3に示すような、全体が同じ間隔、同じ本数の、左右対称のものとしなくても良く、例えば、軸部2に対し左右の一方を相対的に狭い間隔、多数本とし、他方を相対的に広い間隔、少数本としても良い。このようにすることで、一方側のクシ歯4で低粘性マスカラ液の保持量を多くし、他方側のクシ歯4で睫毛を梳きやすくすることにより、マスカラ塗布具としての使用感、化粧効果を高めることができる。
【0022】
上記クシ歯4は、軸部2の両側に突出するものであるが、この軸部2のクシ歯のない部分には、リブ部5が設けられる。このリブ部5は、特に形状を限定するものではないが、断面が略半円状であることが好ましい。また、リブ部5の高さ(図4中、a)およびリブ部5を設けた軸部2の幅(図4中、b)は、特に制約されるものではないが、(a)が0.2mmないし1.0mm、(b)が1.0mmないし2.5mmであることが好ましく、特に(a)が0.4mmないし0.8mm、(b)が1.2mmないし1.8mmであることが好ましい。リブ部5の高さ(a)とリブ部5を設けた軸部2の幅(b)の比(a)/(b)も特に制約はないが、0.2ないし1.0、特に0.3ないし0.6がマスカラ液をリブ部5のクシ歯近傍部に保持するために好ましい。更に、連続して設けられたリブ部5の長さは、クシ歯4が設けられた軸部2の長さより若干長いことが好ましく、一般には1.2から1.8mm程度である。
【0023】
本発明の塗布機能部1’は、どのような材料で形成することも可能であるが、低粘性のマスカラ液を用いた場合にも、良好な使用感、化粧効果を得るためには、少なくとも、塗布部3が、曲げ弾性率(米国材料試験協会規格:ASTM D790)の値で20〜1000MPaの樹脂で形成されることが好ましく、100〜400MPaの樹脂で形成されること、特に150〜300MPaの樹脂で形成されることが望ましい。
【0024】
上記した曲げ弾性率を有する樹脂の例としては、弾性を有するゴム類、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂(POM)、ナイロン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂をはじめ、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系、ポリカーボネート系等のエラストマー等を使用することができる。これらのうち、ポリエステル系のエラストマーが使いやすさの点で好ましく、例えば熱可塑性のポリエステルエラストマーであるハイトレル(登録商標)や、ペルプレン(登録商標)等を好適に使用することができる。
【0025】
更に、本発明の塗布機能部1’においては、必要により、先端に軸部2の長手方向に延びる数本の板状突起よりなる梳き部6を設けることができる。このような梳き部6を設けることで、睫毛の細部に対するマスカラの最後の仕上げを容易にすることができる。
【0026】
本発明のマスカラ塗布具1は、例えば、上記で説明した塗布機能部1’の軸基部7を把持部材に取り付けることで調製される。この把持部材の一例としては、マスカラ容器の蓋を挙げることができる。この本発明のマスカラ塗布具1の具体例としては、図5に記載のものを挙げることができる。図5中、1’は塗布機能部を示し、9 は軸棒を、10は把持部をそれぞれ示す。この態様では、マスカラ容器の蓋でもある把持部10から軸棒9が垂下し、その先端部に、塗布機能部1’が取り付けられている。しかしながら、この軸棒9は必ずしも必要なものでなく、把持部10の先端に直接塗布機能部1’が取り付けられている態様であっても良い。
【0027】
本発明のマスカラ塗布具1が、低粘性のマスカラ液についても十分な液の保持と、良好な使用感、化粧効果を達成できる理由は、次の通りと考えられる。すなわち、塗布機能部1’に、ある程度の幅で形成される、平板状のクシ歯4には、マスカラ液の粘性が低くても、ある程度の量が、毛細管現象によって保持される。
【0028】
そして、軸部2においてクシ歯4のない部分に、リブ部5が設けられているため、リブ部5のクシ歯4近傍部分には睫毛への塗布に適した十分な量のマスカラ液が保持され、他の部分ではマスカラ容器に設けられるシゴキ部により余分なマスカラ液が拭い取られる。これは、マスカラ容器に設けられる、シゴキ部のシゴキ孔が円形であるため、平板状のクシ歯4のみでは軸部2付近のマスカラ液が拭い取られずに多くの量が付着しすぎるところ、リブ部5を設けることにより、リブ部5付近では、マスカラ液がシゴキ孔で拭い取られるため、適度な量がリブ部5のクシ歯近傍部分に残り、塗布具への付着量を適度なものに調整できるのである。
【0029】
また、塗布部3を、曲げ弾性率20〜1000MPaの樹脂で形成することで、このような平板状で幅広の塗布具でも、マスカラ容器のシゴキ部を容易に通過させることができ、更に塗布具をマスカラ容器から引き抜く際にも、マスカラ液が周りに飛び散る等の問題を起こすことがない。このような作用により、本発明のマスカラ塗布具は、低粘性のマスカラ液についても十分な保持機能を有し、更に良好な使用感、化粧効果を達成できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のマスカラ塗布具1は、特に低粘性のマスカラ液用の塗布具として有用であり、低粘性マスカラ液の普及に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0031】
1………マスカラ塗布具
1’………塗布機能部
2………軸部
3………塗布部
4………クシ歯
5………リブ部
6………梳き部
7………軸基部
8………空間部
9………軸棒
10………把持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、軸部、当該軸部の先端側に設けた塗布部および当該軸部の基端側に設けられた把持部を含み、前記塗布部は、前記軸部の両側に、複数の平板状のクシ歯がその列で平面を形成し、さらに、前記軸部のクシ歯のない部分は軸の長手方向に連続してリブ部を設けてなることを特徴とするマスカラ塗布具。
【請求項2】
前記塗布部において、隣接する前記クシ歯どうしの間隔がクシ歯の基部から先端部まで一定となるよう各々平行に設けられてなる請求項1記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
前記塗布部において、前記クシ歯を前記軸部に対し垂直に設けたものである請求項1または請求項2に記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
前記クシ歯の本数が、前記軸部の片側で、6本ないし20本であり、その間隔が、0.3mmないし1.5mmである請求項1ないし請求項3の何れかの項に記載のマスカラ塗布具。
【請求項5】
前記リブ部の高さが0.2mmないし1.0mmであり、リブ部を設けた軸部の幅が1.0mmないし2.5mmである請求項1ないし請求項4の何れかの項に記載のマスカラ塗布具。
【請求項6】
少なくとも塗布部が、曲げ弾性率が20〜1000MPaの樹脂で形成されたものである請求項1ないし請求項5の何れかの項記載のマスカラ塗布具。
【請求項7】
軸部の両側に設けたクシ歯において、一方の側のクシ歯の間隔が、他方の側のクシ歯の間隔と異なる請求項1ないし請求項6の何れかの項記載のマスカラ塗布具。
【請求項8】
更に、マスカラ塗布具の先端に、前記軸部の長手方向に延びる複数の板状突起よりなる梳き部を設けた請求項1ないし請求項7の何れかの項記載のマスカラ塗布具。
【請求項9】
前記把持部がマスカラ容器の蓋である請求項1ないし請求項8の何れかの項記載のマスカラ塗布具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94523(P2013−94523A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242047(P2011−242047)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)