説明

マスクブランク、多階調マスクおよびそれらの製造方法

【課題】タンタルを含有する材料からなる半透光膜におけるクロム用エッチング液に対する耐性を向上させ、半透光膜のダメージを低減する。
【解決手段】透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とが順に形成されたマスクブランクであって、半透光膜は、タンタルを含有する材料からなり、半透光膜の透光性基板側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されており、高酸化層を除いた半透光膜中の酸素含有量が60at%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下FPDと呼ぶ)等の製造に用いられるマスクブランク、多階調マスクおよびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDデバイスを製造する場合においても、フォトリソグラフィ法によるパターン転写が行われている。そのパターン転写には、透光性基板上に転写パターンを有する薄膜を備えるフォトマスクが用いられる。当初は、透光性基板上に薄膜が残された領域であって露光光を遮光する遮光部と、薄膜が除去された露光光を透過する透光部と、からなるバイナリフォトマスクが用いられていた。バイナリフォトマスクは、転写対象物のレジスト膜に1つのマスクパターンを露光転写するものである。バイナリフォトマスクの場合、FPDデバイスを製造する際に転写する必要のある転写パターンの数だけ、フォトマスクが必要になる。
【0003】
近年、FPDデバイスを製造するプロセスで使用されるマスクの枚数を削減するため、多階調マスクが考え出された。多階調マスクは、たとえば3階調マスクの場合においては、従来のバイナリフォトマスクにも存在していた露光光を透過する透光部と、露光光を遮光する遮光部と、に加えて、露光光を所定の透過率で透過する半透光部を更に備えた構成となっている。この3階調マスクを用いて、転写対象物のレジスト膜に露光転写してレジスト膜を現像処理すると、レジストパターンには、レジスト膜が全て除去された領域と、レジスト膜が残存する領域との他に、レジスト膜がある程度減膜した領域が形成される。この段差を有するレジストパターンを用いると、エッチングプロセスにより、転写対象物の2層の薄膜に2つのパターンをそれぞれ形成することができる。つまり、転写対象物のレジスト膜に露光転写するプロセスを1つ削減できることになる。
【0004】
多階調マスクは、パターンの積層構造や製造プロセスの相違により、先付けタイプと後乗せタイプとに分類される。先付けタイプの多階調マスクを製造するには、透光性基板上に、露光光を所定の透過率で透過する半透光膜と、半透光膜との積層で露光光を遮光する遮光膜と、が順に積層された積層構造を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクに対してエッチングプロセスを行い、遮光膜と半透光膜とにそれぞれパターンを形成することで、透光性基板上に、遮光膜および半透光膜が除去されて透光性基板の表面が露出してなる透光部と、半透光膜のみが残存して半透光膜の表面が露出してなる半透光部と、半透光膜と遮光膜とが積層してなる遮光部と、を有する多階調マスクが得られる。
【0005】
この多階調マスク製造用のマスクブランクでは、半透光膜を形成する材料と遮光膜を形成する材料との間で、互いのエッチャントに対して十分なエッチング選択性を有することが求められる。また、FPDデバイス製造用の多階調マスクの基板サイズは、短辺方向で少なくとも300mm以上あり、半導体デバイス用の転写用マスク(一辺が約152mm)の基板サイズよりも大きい。このように大きな基板サイズのマスクブランクに対してドライエッチングを適用しようとすると、大型のドライエッチング装置が必要となり、非常に高価になってしまう。また、多階調マスクには、半導体デバイス用の転写用マスクのような高レベルのパターン寸法精度までは求められていない。
【0006】
このため、マスクブランクから多階調マスクを製造する際のエッチングプロセスには、ウェットエッチングが適用されている。ウェットエッチングプロセスが適用される多階調マスク用のマスクブランクとしては、透光性基板上に、モリブデンシリサイド(MoSi)を含有する材料で形成された半透光膜と、クロム(Cr)を含有する材料で形成された遮光膜と、が積層された構成のものが広く知られている。モリブデンシリサイド系材料の半透光膜のエッチング液に対し、クロム系材料の遮光膜はエッチングされ難く、また、クロム系材料の遮光膜のエッチング液に対し、モリブデンシリサイド系材料の半透光膜はエッチングされ難い。つまり、上述のマスクブランクは、互いのエッチング液に対して十分なエッチング選択性を有する膜構造を備えている。
【0007】
一方、モリブデンシリサイド系材料以外の半透光膜を形成する材料についても、研究が進んでいる。特に、タンタルを含有する材料は、露光光の波長帯域(i線からg線の波長帯域)に対する依存性がモリブデンシリサイド系材料よりも小さく、有望視されている。しかし、タンタルを含有する材料には、クロム系材料の遮光膜をエッチングする際のエッチング液(硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含有する水溶液)に対する耐性が、モリブデンシリサイド系材料よりも低いという技術的課題があった。
【0008】
特許文献1では、この技術的課題を解決するため、遮光膜における少なくともタンタル系材料の半透光膜に接する側の層を、クロムと窒素とを含有する材料により形成している。このような膜構成とすることで、遮光膜における少なくともタンタル系材料からなる半透光膜に接する側の層のエッチングレートを高めることができる。そして、半透光膜の表面がクロム用エッチング液に接触する時間を短くすることができ、クロムのエッチング液による半透光膜のダメージを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−249950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、クロム用エッチング液に対する半透光膜自体の耐性を向上させるものではない。そのため、タンタル系材料からなる半透光膜が、クロムのエッチング液によってダメージを受けてしまうことがあった。例えば、遮光膜に形成されるパターンには、比較的密なパターン部分と比較的疎なパターン部分とが存在するが、その疎密差が年々大きくなってきている。形成するパターンの疎密差が大きくなると、先にパターンが形成されて露出した半透光膜の一部が、クロム用エッチング液に長時間接触することとなり、半透光膜が部分的にダメージを受けてしまうことがある。そして、半透光部の透過率等が局所的に変動してしまい、多階調マスクの性能を低下させてしまうことがある。
【0011】
本発明は、タンタルを含有する材料からなる半透光膜におけるクロム用エッチング液に対する耐性を向上させ、半透光膜のダメージを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とが順に形成されたマスクブランクであって、
前記半透光膜は、タンタルを含有する材料からなり、
前記半透光膜の前記透光性基板側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されており、
前記高酸化層を除いた前記半透光膜中の酸素含有量が60at%未満であるマスクブランクが提供される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、
前記高酸化層中の酸素含有量が68at%以上である第1の態様に記載のマスクブランクが提供される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、
前記高酸化層の厚さが1.5nm以上4nm以下である第1または第2の態様に記載のマスクブランクが提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、
前記高酸化層中のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記半透光膜中のTa結合の存在比率よりも高い第1から第3の態様のいずれかに記載のマスクブランクが提供される。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、
前記半透光膜は、さらに窒素を含有する材料からなる第1から第4の態様のいずれかに記載のマスクブランクが提供される。
【0017】
本発明の第6の態様によれば、
前記遮光膜は、クロムを含有する材料からなる第1から第5の態様のいずれかに記載のマスクブランクが提供される。
【0018】
本発明の第7の態様によれば、
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなる第6の態様に記載のマスクブランクが提供される。
【0019】
本発明の第8の態様によれば、
前記遮光膜にパターンを形成するエッチングには、エッチング液を用いるウェットエッチングが適用される第1から第7の態様のいずれかに記載のマスクブランクが提供される。
【0020】
本発明の第9の態様によれば、
透光性基板上に、透光部、半透光部および遮光部からなる転写パターンが形成された多階調マスクであって、
前記透光性基板上に、半透光膜パターンと遮光膜パターンとが順に積層されており、
前記透光部は、前記透光性基板の表面が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光性基板上に形成された前記半透光膜パターンの表面が露出してなり、
前記遮光部は、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなり、
前記半透光膜パターンは、タンタルを含有する材料からなり、
前記半透光膜パターンの前記透光性基板側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されており、
前記高酸化層を除いた前記半透光膜パターン中の酸素含有量が60at%未満である多階調マスクが提供される。
【0021】
本発明の第10の態様によれば、
前記高酸化層中の酸素含有量が68at%以上である第9の態様に記載の多階調マスクが提供される。
【0022】
本発明の第11の態様によれば、
前記高酸化層の厚さが1.5nm以上4nm以下である第9または第10の態様に記載の多階調マスクが提供される。
【0023】
本発明の第12の態様によれば、
前記高酸化層中のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記半透光膜パターン中のTa結合の存在比率よりも高い第9から第11の態様のいずれかに記載の多階調マスクが提供される。
【0024】
本発明の第13の態様によれば、
前記半透光膜は、さらに窒素を含有する材料からなる第9から第12の態様のいずれかに記載の多階調マスクが提供される。
【0025】
本発明の第14の態様によれば、
前記遮光膜は、クロムを含有する材料から第9から第13の態様のいずれかに記載の多階調マスクが提供される。
【0026】
本発明の第15の態様によれば、
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなる第14の態様に記載の多階調マスクが提供される。
【0027】
本発明の第16の態様によれば、
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、温水またはオゾン水による処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有するマスクブランクの製造方法が提供される。
【0028】
本発明の第17の態様によれば、
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素を含有する気体中で加熱処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有するマスクブランクの製造方法が提供される。
【0029】
本発明の第18の態様によれば、
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素を含有する気体中で紫外線照射処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有するマスクブランクの製造方法が提供される。
【0030】
本発明の第19の態様によれば、
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素プラズマによる表面処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有するマスクブランクの製造方法が提供される。
【0031】
本発明の第20の態様によれば、
前記高酸化層中の酸素含有量を68at%以上とする第16から第19の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法が提供される。
【0032】
本発明の第21の態様によれば、
前記高酸化層の厚さを1.5nm以上4nm以下とする第16から第20の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法が提供される。
【0033】
本発明の第22の態様によれば、
前記高酸化層中のTa結合の存在比率を、前記高酸化層を除く前記半透光膜中のTa結合の存在比率よりも高くする第16から第21の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法が提供される。
【0034】
本発明の第23の態様によれば、
前記半透光膜を、さらに窒素を含有する材料で形成する第16から第22の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法が提供される。
【0035】
本発明の第24の態様によれば、
前記半透光膜上に、前記クロムを含有する材料からなる前記遮光膜を形成する工程を有する第16から第23の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法が提供される。
【0036】
本発明の第25の態様によれば、
第1から第8の態様のいずれかに記載のマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンおよび前記半透光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
を有する多階調マスクの製造方法が提供される。
【0037】
本発明の第26の態様によれば、
第1から第8の態様のいずれかに記載のマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンまたは前記ウェットエッチング後の遮光膜をマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
前記ウェットエッチング後の遮光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記ウェットエッチング後の遮光膜を更にウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
を有する多階調マスクの製造方法が提供される。
【0038】
本発明の第27の態様によれば、
前記半透光膜パターンに対し、温水またはオゾン水による処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、および酸素プラズマによる表面処理のうち少なくともいずれかを行い、前記半透光膜パターンの側壁の表層に、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層を形成する工程を有する第25または第26の態様に記載の多階調マスクの製造方法が提供される。
【0039】
本発明の第28の態様によれば、
第16から第24の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されるマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンおよび前記半透光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
を有する多階調マスクの製造方法が提供される。
【0040】
本発明の第29の態様によれば、
第16から第24の態様のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されるマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンまたは前記ウェットエッチング後の遮光膜をマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
前記ウェットエッチング後の遮光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記ウェットエッチング後の遮光膜を更にウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
を有する多階調マスクの製造方法が提供される。
【0041】
本発明の第30の態様によれば、
前記半透光膜パターンに対し、温水またはオゾン水による処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、および酸素プラズマによる表面処理のうち少なくともいずれかを行い、前記半透光膜パターンの側壁の表層に、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層を形成する工程を有する第28または第29の態様に記載の多階調マスクの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、タンタルを含有する材料からなる半透光膜におけるクロム用エッチング液に対する耐性を向上させ、半透光膜のダメージを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係るマスクブランクの断面拡大図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る多階調マスクの断面拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るマスクブランクの製造工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多階調マスクの製造工程を示すフロー図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る多階調マスクの製造工程を示すフロー図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る多階調マスクの製造工程を示す図である。
【図6】実施例に係るマスクブランクが備える半透光膜のXPS分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は、本実施形態に係るマスクブランク100bの断面拡大図であり、(b)は本実施形態に係る多階調マスク100の断面拡大図である。図2は、本実施形態に係るマスクブランク100bの製造工程を示すフロー図である。図3は、本実施形態に係る多階調マスク100の製造工程を示すフロー図である。
【0045】
(1)マスクブランク及び多階調マスクの構成
まず、本実施形態に係るマスクブランク100b及び多階調マスク100の構成について、図1を用いて説明する。
【0046】
本実施形態に係るマスクブランク100bは、転写用マスクを製造するために用いられるものであり、図1(a)に示すように、
透光性基板10上に、半透光膜20と遮光膜30とが順に形成されたマスクブランク100bであって、
半透光膜20は、タンタルを含有する材料からなり、
半透光膜20の透光性基板10側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21が形成されており、
高酸化層21を除いた半透光膜20(半透光膜下層:図中、符号22で示す部分)中の酸素含有量が60at%未満であることを特徴する。
【0047】
また、本実施形態に係る多階調マスク100は、例えばFPDデバイスを製造するために用いられるものであり、図1(b)に示すように、
透光性基板10上に、透光部101、半透光部102および遮光部103からなる転写パターンが形成された多階調マスク100であって、
透光性基板10上に、半透光膜パターン20pと遮光膜パターン30pとが順に積層されており、
透光部101は、透光性基板10の表面が露出してなり、
半透光部102は、透光性基板10上に形成された半透光膜パターン20pの表面が露出してなり、
遮光部103は、透光性基板10上に半透光膜パターン20pと遮光膜パターン30pとが積層されてなり、
半透光膜パターン20pは、タンタルを含有する材料からなり、
半透光膜パターン20pの透光性基板10側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21pが形成されており、
高酸化層21を除いた半透光膜20(図中、符号22pで示す部分)中の酸素含有量が60at%未満であることを特徴とする。
【0048】
上記の構成において、タンタルを含有する材料からなる半透光膜20の表層、或いは半透光膜パターン20pの表層に、層中の酸素含有量が60at%以上、好ましくは68at%以上である高酸化層21,21pを形成することによって、後述するクロム用エッチング液に対する半透光膜20(或いは半透光膜パターン20p)のエッチング耐性を向上させることができる。
【0049】
なお、上述の酸化層中の結合状態は、層中の酸素含有量が60at%未満だと、比較的不安定な酸化状態であるTaOが主体だと考えられる。TaOは、タンタルの酸化物のうちで酸化度が最も低く、本実施形態でいう「高酸化層」に含まれない。なお、膜中の酸素含有量が60at%未満のタンタル酸化膜は、表面反射防止層として形成される。このとき、酸素含有量は例えば50at%以上(例えば56〜58at%)である。
【0050】
また、マスクブランクの半透光膜や転写用マスクの半透光膜パターンは、結晶構造を微結晶、好ましくは非結質とすることが望まれており、本実施形態に係る半透光膜20及び半透光膜パターン20pも同様である。半透光膜20及び半透光膜パターン20p内の結晶構造は、単一構造にはなり難く、複数の結晶構造が混在した状態になり易い。すなわち、上述の高酸化層21,21p中の結晶構造は、TaO結合、Ta結合、TaO結合、Ta結合が混在した状態になり易い。高酸化層21,21p中におけるTa結合の存在比率が高くなるにつれ、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性が向上し、TaO結合の存在比率が高くなるにつれ、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性が低下する。
【0051】
なお、本実施形態において、高酸化層21,21p中の酸素含有量が60at%以上66.7at%未満だと、層中のタンタルと酸素との結合状態は、Ta結合が主体になる傾向が高くなると考えられる。そして、一番不安定な結合のTaO結合は、層中の酸素含有量が60at%未満の場合に比べて非常に少なくなると考えられる。
【0052】
また、本実施形態において、高酸化層21,21p中の酸素含有量が66.7at%以上だと、層中のタンタルと酸素との結合状態は、TaO結合が主体になる傾向が高くなると考えられる。そして、一番不安定な結合のTaO結合やその次に不安定な結合のTa結合は、共に非常に少なくなると考えられる。
【0053】
また、本実施形態において、高酸化層21,21p中の酸素含有量が60at%以上だと、最も安定した結合状態の「Ta」だけでなく、「Ta」や「TaO」の結合状態も含まれることになる。しかしながら、少なくとも一番不安定な結合のTaO結合は、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性を低下させるような影響を与えない程度の、非常に少ない値になると考えられる。
【0054】
また、本実施形態において、高酸化層21,21p中の酸素含有量が68at%以上だと、TaO結合が主体になるだけでなく、Taの結合状態の比率も高くなると考えられる。このような酸素含有量になると、「Ta」や「TaO」の結合状態はまれに存在する程度となり、「TaO」の結合状態は存在し得なくなってくる。
【0055】
また、本実施形態において、高酸化層21,21p中の酸素含有量が71.4at%であると、実質的にTaの結合状態だけで形成されていると考えられる。本実施形態では、高酸化層21,21pは、Taの結合状態だけで形成されていることが最も好ましい。
【0056】
また、本実施形態において、高酸化層21,21p中のTa結合の存在比率は、高酸化層21,21pを除く半透光膜20或いは半透光膜パターン20p中のTa結合の存在比率よりも高いことが好ましい。Ta結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、高酸化層21,21p中のTa結合の存在比率を大きくすることで、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性を大幅に向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態において、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層21,21p中の形成方法は、温水処理、オゾン含有水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、Oプラズマ処理等があげられる。これらの詳細については後述する。
【0058】
また、本実施形態において、半透光膜20及び半透光膜パターン20pは、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。また、半透光膜20及び半透光膜パターン20pは、組成傾斜膜を含む態様であってよい。
【0059】
また、本実施形態において、半透光膜20及び半透光膜パターン20pを構成するタンタルを含有する材料としては、タンタル単体(Ta)、タンタル窒化物(TaN)、タンタル酸化物(TaO)、タンタル酸窒化物(TaNO)、タンタルとホウ素とを含む材料(TaB、TaBN、TaBO、TaBONなど)、タンタルと炭素とを含む材料(TaC、TaCN、TaCO、TaCONなど)、タンタルとホウ素と炭素とを含む材料(TaBC、TaBCN、TaBCO、TaBCONなど)等が挙げられる。
【0060】
半透光膜20及び半透光膜パターン20pを構成するタンタルを含有する材料には、さらに珪素を含有させることができる。珪素は酸化するとSiO結合を形成するが、この結合もクロム用エッチング液に対してエッチング耐性が高い特性を有する。このため、タンタルと珪素とを含有する材料からなる高酸化層21,21pも、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性が高く、クロム用エッチング液による半透光膜20へのダメージ低減できる。なお、この他、前記の材料群に、高酸化層21,21pのエッチング耐性に悪影響を与えない範囲であれば、10at%以下の含有量で、その他の金属(Ge,Nb等)等の元素を含有させた材料を適用してもよい。
【0061】
なお、FPD用大型マスクブランクでは、半透光膜20のエッチング時間が長くなると、半透光膜パターン20pの断面形状が悪化し、即ち形状制御性が悪化し、結果的にCD精度が悪化する原因となる。半透光膜20のウェットエッチングレートを速くする観点からは、上記タンタルを含む材料のうち、Ta、TaN、TaB、TaBN、TaC、TaCN、TaBCNが好ましい。また、酸素を含有する塩素系ガスを用いて半透光膜20をドライエッチングしたときのエッチングレートを速くする観点からは、上記タンタルを含む材料のうち、Ta、TaN、TaB、TaBN、TaC、TaCN、TaBCNが好ましい。一方、フッ素系ガスを用いて半透光膜20をドライエッチングしたときのエッチングレートを速くする観点からは、上記タンタルを含む材料のうち、TaO、TaBO、TaBON、TaCO、TaCON、TaBCONが好ましい。
【0062】
また、本実施形態において、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層21,21pの厚さは、1.5nm以上4nm以下であることが好ましい。高酸化層21,21pの厚さが1.5nm未満であると、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性を大幅に向上させるという効果が得られ難くなる。また、高酸化層21,21pの厚さが4nmを超えると、所定の減光特性を得るために必要な半透光膜20及び半透光膜パターン20pの膜厚が厚くなり過ぎてしまう。つまり、タンタルの高酸化層は光学濃度が非常に低いことから、高酸化層21,21pを必要以上に厚くすると、半透光膜20及び半透光膜パターン20pを薄膜化する観点からはマイナスに働いてしまうのである。なお、半透光膜20の成膜直後又は自然酸化がされない状態で、上述の温水処理、オゾン含有水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、Oプラズマ処理等の表面処理を施すことで、形成される高酸化層21の厚さは1.5nm以上4nm以下の範囲内になる傾向がある。そして、高酸化層21の厚さが係る範囲内であれば、クロム用エッチング液に対するエッチング耐性を十分に向上させることができる。なお、半透光膜20及び半透光膜パターン20pの減光特性の確保の観点と、エッチング耐性の向上の観点との両方のバランスを考慮すると、高酸化層21,21pの厚さは1.5nm以上3nm以下とするのがより好ましい。
【0063】
また、本実施形態においては、半透光膜20及び半透光膜パターン20pを構成するタンタルを含有する材料として、窒素を含有する材料を用いることができる。このような態様は、裏面反射防止を図る上で有利である。また、裏面反射防止のための裏面反射防止層を、透光性基板10と半透光膜20(或いは半透光膜パターン20p)との間に形成する必要がなくなるため、半透光膜パターン20pの膜厚を薄くするという観点でも有利である。
【0064】
本実施形態においては、半透光膜20及び半透光膜パターン20pは、露光光に対して所望の透過率を有するように、その組成や膜厚等が設定される。この半透光膜20及び半透光膜パターン20pは、透光部101の露光光に対する透過率(透光性基板10のみを露光光が透過したときの透過率)を100%とした場合、露光光に対する透過率が10〜80%程度(好ましくは、20〜60%)であることが好ましい。多階調マスクに適用される露光光に関しては、特に限定されない。FPDデバイスの製造プロセスにおいて、多階調マスクを用いた被転写体(大型パネル基板上に形成されたレジスト膜等)への露光転写に適用する露光光は、超高圧水銀ランプを光源とする多色露光である場合が多い。超高圧水銀ランプの光強度の大きい露光波長帯域であるi線(波長365nm)からg線(波長436nm)にわたる波長領域において、前記の透過率に調整することが望ましい。また、この波長領域における透過率の変化が小さい(波長依存性が小さい、フラットな分光特性を有する)ことが望ましい(例えば、5%以下であることが好ましい。)。
【0065】
また、本実施形態においては、遮光膜30及び遮光膜パターン30pは、クロム(Cr)に窒素(N)を単独で含有する材料(CrN)の他、クロム(Cr)と窒素(N)に加え、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)などの元素を一以上含有する材料(例えばCrNO、CrNC、CrNCH、CrNCHO、CrCONなど)により構成される。なお、クロムと窒素とを含む材料からなる遮光膜(例えばCrN、CrCN,CrON)では、ウェットエッチングレートがCrに比べ大きくなり好ましい。また、CrONに比べ、CrNでは、膜中にOを含まないため、ウェットエッチングレートが大きくなり好ましい。なお、遮光膜30及び遮光膜パターン30pは、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。また、遮光膜30及び遮光膜パターン30pは、反射防止層を含む態様であってもよく、組成傾斜膜を含む態様であってよい。
【0066】
また、本実施形態において、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク及び多階調マスクとしては、LCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクが挙げられる。ここで、LCD製造用マスクには、LCDの製造に必要なすべてのマスクが含まれ、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、特にTFTチャンネル部やコンタクトホール部、低温ポリシリコンTFT、カラーフィルタ、反射板(ブラックマトリクス)、などを形成するためのマスクが含まれる。他の表示デバイス製造用マスクには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの製造に必要なすべてのマスクが含まれる。
【0067】
(2)マスクブランクの製造工程
次に、上述のマスクブランク100bの製造工程について、図2を用いて説明する。
【0068】
(透光性基板の用意)
まず、図2(a)に示すように、ガラス基板として構成された透光性基板10を用意する。透光性基板10としては、例えば合成石英基板、石英基板、その他各種のガラス基板(例えば、CaF2基板、ソーダライムガラス基板、アルミノシリケートガラス基板、無アルカリガラス基板、低熱膨張ガラス基板等)を用いることができる。また、この透光性基板10のサイズは、少なくとも一辺が300mm以上の矩形状である。透光性基板10のサイズとしては、短辺×長辺が330mm×450mm〜1620mm×1780mmの範囲で様々なサイズがあり、透光性基板10の厚さも5mm〜17mmの範囲で様々なサイズがある。
【0069】
(半透光膜の成膜)
続いて、図2(b)に示すように、例えば金属Taや、TaとSiとを含む材料や、TaとBとを含む材料からなるスパッタターゲットを用いたスパッタ成膜の手法を用いて、透光性基板10上に半透光膜20を形成する。半透光膜20は、上述したように、タンタルを含有し、酸素含有量が例えば60at%未満である膜として構成される。半透光膜20の膜厚は、半透光膜20に求められる露光光に対する透過率(例えば10〜80%)により適宜選定されるが、例えば5〜30nmである。
【0070】
なお、酸素含有量が例えば60at%未満であるタンタル含有膜は、Taをターゲットとした場合、DCマグネトロンスパッタリング法を用いても、低欠陥で成膜することは可能である。半透光膜20を形成する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましくあげられるが、本発明はスパッタ成膜法を用いる場合に限定されるわけではない。また、スパッタ成膜装置としては、DCマグネトロンスパッタ装置の他、上述したようにRFマグネトロンスパッタ装置や、イオンビームスパッタ装置も好適に用いられる。
【0071】
(高酸化層の形成)
続いて、図2(c)に示すように、半透光膜20に対して酸化処理を施し、半透光膜20の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21を形成する。高酸化層21の厚さは1.5nm以上4nm以下とする。酸化処理の方法は、例えば、温水処理、オゾン含有水処理、高濃度オゾンガスによる処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、Oプラズマ処理等があげられる。
【0072】
温水処理により高酸化層21を形成する場合、イオン交換水(DI water:deionized water)等の純粋や超純水を用いることが好ましい。温水の温度は、例えば70〜90℃程度とすることが好ましい。温水による処理時間は、例えば10〜120分程度が好ましい。
【0073】
オゾン含有水処理により高酸化層21を形成する場合、例えば40〜60ppmのオゾン含有水を用いることが好ましい。オゾン含有水の温度は、例えば10〜30℃程度が好ましい。オゾン含有水による処理時間は、例えば10〜20分程度が好ましい。
【0074】
加熱処理により高酸化層21を形成する場合、加熱処理の温度は例えば120〜280℃程度とすることが好ましい。加熱処理による処理時間は、5〜30分程度が好ましい。酸素を含有する気体は、大気の他、大気よりも酸素濃度の高い雰囲気等が挙げられる。
【0075】
プラズマ処理により高酸化層21を形成する場合、処理時間は、例えば1〜10分程度とすることが好ましい。
【0076】
紫外線照射処理により高酸化層21を形成する場合、紫外線は、遮光膜パターンの表面の周囲にある酸素を含有する気体(大気)中の酸素からオゾンを生成させることができれば、どのような波長のものを用いてもよい。なお、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、Xeエキシマレーザー光、Xeエキシマ光のような単色で波長の短い紫外線である方が、周囲の酸素から効率的にオゾンを発生させることができ、かつ紫外線の照射を受ける半透光膜20の発熱を最小限に押させることができ、好ましい。紫外線照射処理における照射時間は、エキシマレーザー光を用いた場合には、エキシマレーザー光の特性上、照射範囲が狭く、半透光膜20表面を操作させる必要があるため一概に言いきれないが、例えば15〜30分程度が好ましい。一方、超高圧水銀ランプによる紫外線照射の場合では、1〜10分程度が好ましい。酸素を含有する気体としては、大気の他、大気よりも酸素濃度の高い雰囲気等が挙げられる。
【0077】
(遮光膜の成膜)
続いて、図2(d)に示すように、例えば金属Crからなるスパッタターゲットを用い、窒素、酸素、メタン、二酸化炭素、一酸化窒素ガス、炭酸ガス、炭化水素系ガス、又はこれらの混合ガス等の反応性ガスを用いた反応性スパッタリング等の手法により、半透光膜20の上に遮光膜30を形成する。遮光膜30は、上述したように窒化クロム(CrN)等の材料により構成される。遮光膜30の膜厚は、例えば100nmである。なお、遮光膜30の表面にCr化合物(CrO、CrC,CrN等)を積層すれば(図示せず)、遮光膜30の表面に反射抑制機能を持たせることができる。以上の工程を実施することにより、本実施形態に係るマスクブランク100bが製造される。
【0078】
(3)多階調マスクの製造工程
次に、上述のマスクブランク100bを用いた多階調マスク100の製造工程について、図3を用いて説明する。
【0079】
(マスクブランクの用意)
まず、図3(a)に示すように、上述のマスクブランク100bの表面上(遮光膜30の表面上)に、第1のレジスト膜40を形成する。第1のレジスト膜40は、ポジ型レジスト材料或いはネガ型レジスト材料により形成可能である。第1のレジスト膜40は、例えばスリットコータやスピンコータ等を用いて形成することができる。
【0080】
(第1のレジストパターンの形成)
続いて、図3(b)に示すように、電子線或いはレーザ描画装置を用いて第1のレジスト膜40に描画露光を行い、第1のレジスト膜40を感光させ、第1のレジスト膜40に現像液を供給して現像を施し、遮光部の形成予定領域を覆う(透光部及び半透光部の形成予定領域が開口した)第1のレジストパターン40pを形成する。
【0081】
(遮光膜のエッチング)
続いて、図3(c)に示すように、第1のレジストパターン40pをマスクとして遮光膜30をエッチングし、遮光膜パターン30pを形成する。遮光膜30のエッチングは、例えばウェットエッチングにより行う。エッチャントとしては、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム((NHCe(NO)及び過塩素酸(HClO)を含む水溶液からなるクロム用エッチング液を用いることができる。上述したように、遮光膜30の下地である半透光膜20の表層には、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21が予め形成されている。そのため、遮光膜30のエッチングを行う際に、半透光膜20が部分的にダメージを受けてしまうことを抑制できる。
【0082】
(第2のレジスト膜の形成)
遮光膜30のエッチングが完了したら、遮光膜パターン30p上に形成されている第1のレジストパターン40pを剥離する。続いて、図3(d)に示すように、遮光膜パターン30p及び半透光膜20上の全面を覆うように、第2のレジスト膜50を形成する。第2のレジスト膜50は、第1のレジスト膜40と同様に、例えばポジ型レジスト材料により形成される。
【0083】
(第2のレジストパターンの形成)
続いて、図3(e)に示すように、レーザ描画機等により描画を行い、第2のレジスト膜50を感光させ、第2のレジスト膜50に現像液を供給して現像を施し、半透光部の形成予定領域を覆う第2のレジストパターン50pを形成する。
【0084】
(半透光膜のエッチング)
続いて、図3(f)に示すように、第2のレジストパターン50pをマスクとして半透光膜20をエッチングし、半透光膜パターン20pを形成する。半透光膜20のエッチングは、ウェットエッチング又はドライエッチングにより行う。半透光膜20をウェットエッチングする場合、エッチャントとしては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。また、半透光膜20をドライエッチングする場合、エッチャントとしては、例えばSF,CF,C,CHF等のフッ素系ガス、これらとHe,H,N,Ar,C,O等との混合ガス、或いはCHCl等の塩素系のガス、又はこれらとHe,H,N,Ar,C等との混合ガスを用いることができる。
【0085】
なお、このほかにも、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)およびキセノン(Xe)のうちのいずれかの元素と、フッ素(F)との化合物を含む非励起状態の物質を用いて、半透光膜20をエッチングすることもできる。このエッチング方法においても、前記のクロムを含有する材料からなる遮光膜30と半透光膜20との間で、十分なエッチング選択性が得られる。この非励起状態の物質としては、例えば、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IF、またはXeF等の化合物があげられる。これらの中でも、ClFが特に好ましい。また、前記非励起状態の物質は、ガス状態でエッチングチャンバー内に導入し、半透光膜20をエッチングすることが望ましい。また、ガス状態の前記非励起状態の物質(非励起ガス)を用いる場合、この非励起状態の物質に、窒素ガス、あるいはアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)等の希ガスとの混合ガスにして、エッチングチャンバー内に導入することが望ましい。前記非励起ガスを半透光膜20に接触させる場合の処理条件、例えばガス流量、ガス圧力、温度、処理時間については特に制約する必要はないが、半透光膜20の材料や膜厚によって適宜選定するのが望ましい。
【0086】
ガス流量については、例えば、前記非励起ガスとアルゴン等との混合ガスを用いる場合、前記非励起ガスが流量比で1%以上混合されていることが好ましい。前記非励起ガスの流量が上記流量比よりも少ないと、半透光膜20のエッチングの進行が遅くなり、結果として処理時間が長くなり、サイドエッチ量が大きくなる。また、ガス圧力については、例えば、100〜760Torrの範囲で適宜選定することが好ましい。ガス圧力が上記範囲よりも低いと、エッチングチャンバー内の前記非励起ガスのガス量自体が少なすぎて半透光膜20のエッチングの進行が遅くなり、結果として処理時間が長くなり、サイドエッチ量が大きくなる。一方、ガス圧力が上記範囲よりも高い(大気圧以上である)と、ガスがチャンバーの外に流出する恐れがあり、前記非励起ガスには毒性の高いガスも含まれるため、好ましくない。
【0087】
また、ガスの温度については、例えば、50〜250℃の範囲で適宜選定することが好ましく、50〜150℃の範囲で選定するとより好ましい。温度が上記範囲よりも低いと、半透光膜20のエッチングの進行が遅くなり、結果として処理時間が長くなり、サイドエッチ量が大きくなる。一方、温度が上記範囲よりも高いと、エッチングが早く進行し、処理時間は短縮できるものの、半透光膜20と透光性基板10との選択性が得られにくくなり、透光性基板10のダメージがやや大きくなる恐れがある。
【0088】
(第2のレジスト膜の剥離)
半透光膜20のエッチングが完了したら、半透光膜パターン20p上に形成されている第2のレジストパターン50pを剥離する。以上の工程を実施することにより、本実施形態に係る多階調マスク100が製造される。
【0089】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0090】
本実施形態では、遮光膜30の下地である半透光膜20の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21を形成する。そのため、遮光膜30のエッチングを行う際に、半透光膜20にダメージが生じてしまうことを抑制できる。その結果、多階調マスク100の半透光部の透過率等を、面内にわたり均一化させることができる。また、半透光膜パターン20pの表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21が形成されていることで、半透光膜パターン20pの耐薬性、耐温水性、耐光性等を向上させることができる。
【0091】
なお、酸素含有量が68at%以上である高酸化層21を形成することとすれば、半透光膜20及び半透光膜パターン20pのダメージをより効果的に抑制できる。
【0092】
また、半透光膜20の表層に形成する高酸化層21の膜厚を1.5nm以上4nm以下とすることで、半透光膜20及び半透光膜パターン20pのダメージをより効果的に抑制しつつ、半透光膜パターン20pの膜厚を薄くすることができる。
【0093】
また、高酸化層21中のTa結合の存在比率を、高酸化層21を除く半透光膜20(符号21で示す層)中のTa結合の存在比率よりも高くすることで、半透光膜20及び半透光膜パターン20pのダメージを、より効果的に抑制できる。
【0094】
上記により、多階調マスク100を用いた転写を高精度に行うことが可能となり、FPDデバイスの製造歩留まりを向上させ、品質を高めることができる。
【0095】
<本発明の他の実施形態>
多階調マスク100の製造方法は、上述の方法に限定されない。図4は、本発明の他の実施形態に係る多階調マスク100の製造工程を示すフロー図である。
【0096】
(マスクブランクの用意)
まず、図4(a)に示すように、マスクブランク100bの表面上(遮光膜30の表面上)に、ポジ型レジスト材料により第1のレジスト膜40を形成する。
【0097】
(第1のレジストパターンの形成)
続いて、図4(b)に示すように、レーザ描画機等により描画を行い、感光させ、現像を施し、半透光部の形成予定領域を覆う第1のレジストパターン40pを形成する。
【0098】
(遮光膜及び半透光膜のエッチング)
続いて、図4(c)に示すように、第1のレジストパターン40pをマスクとして遮光膜30をエッチングし、更に半透光膜20をエッチングして半透光膜パターン20pを形成する。遮光膜30のエッチングは、上述のクロム用エッチング液を用いたウェットエッチングにより行う。半透光膜20のエッチングは、上述のウェットエッチング、ドライエッチング、または非励起ガスによるエッチングのいずれかにより行う。
【0099】
(第2のレジスト膜の形成)
遮光膜30及び半透光膜20のエッチングが完了したら、第1のレジストパターン40pを剥離する。続いて、図4(d)に示すように、ウェットエッチング後の遮光膜30及び露出した透光性基板10の全面を覆うように、ポジ型レジスト材料からなる第2のレジスト膜50を形成する。
【0100】
(第2のレジストパターンの形成)
続いて、図4(e)に示すように、半透光部の形成予定領域以外の領域(透光部及び遮光部の形成予定領域)を覆う第2のレジストパターン50pを形成する。
【0101】
(遮光膜のエッチング)
続いて、図4(f)に示すように、第2のレジストパターン50pをマスクとして遮光膜30を更にエッチングし、遮光膜パターン30pを形成する。遮光膜30のエッチングは、上述のクロム用エッチング液を用いたウェットエッチングにより行う。上述したように、遮光膜30の下地である半透光膜20の表層には、酸素含有量が60at%以上である高酸化層21が予め形成されている。そのため、遮光膜30のエッチングを行う際に、半透光膜20が部分的にダメージを受けてしまうことを抑制できる。
【0102】
(第2のレジスト膜の剥離)
遮光膜30のエッチングが完了したら、第2のレジストパターン50pを剥離する。以上により、本実施形態に係る多階調マスク100を製造することができる。本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0103】
<本発明の更に他の実施形態>
上述の実施形態では、半透光膜パターン20pの表層にのみ高酸化層22pを形成していたが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、半透光膜20をエッチングして半透光膜パターン20pを形成した後、半透光膜パターン20pの側面に酸化処理を施して、図5(c)に示すように、半透光膜パターン20pの側面にも高酸化層22p’を形成するようにしてもよい。
【0104】
図5(a)は、上述の図3(f)で示す工程で半透光膜パターン20pを形成した後、上述の酸化処理を再び施して、半透光膜パターン20pの側面に高酸化層22p’を形成する様子を示している。また、図5(b)は、上述の図4(c)で示す工程で半透光膜パターン20pを形成した後、上述の酸化処理を再び施して、半透光膜パターン20pの側面に高酸化層22p’を形成する様子を示している。
【0105】
このように、半透光膜パターン20pの側面にも高酸化層22p’を形成することで、半透光膜パターン20pに生じるダメージをさらに抑制できるようになる。例えば、半透光膜パターン20pの側面に高酸化層22p’が予め形成されていれば、図4(f)に示す工程で遮光膜30をウェットエッチングする際に、半透光膜パターン20pに生じるダメージをさらに抑制できるようになる。また、半透光膜パターン20pの耐薬性、耐温水性、耐光性等を向上させることができる。
【実施例】
【0106】
以下に、本発明の実施例について、図2、図3および図6を用いて説明する。
【0107】
縦・横の寸法が、約1220mm×1400mmで、厚さが13mmの合成石英からなる透光性基板10上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用いて、厚み13nmのタンタル酸化膜(半透光膜20)を形成した。タンタル酸化膜の形成は、スパッタターゲットとしてタンタル材を用い、ArとOガスとの混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングにより行った(図2(b))。形成したタンタル酸化膜中の酸素含有量は58at%であった。次に、透光性基板10上に形成したタンタル酸化膜(半透光膜20)に対し、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に、又は成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、温水処理を行って、表層に高酸化層21を形成した(図2(c))。温水処理の処理条件は、90℃の脱イオン水(DI Water:Deionized Water)に20分間浸漬することとした。
【0108】
同様のプロセスによって、透光性基板10上に形成した温水処理を実施した後のタンタル酸化膜に対し、XPS分析(X線光電子分光分析)を行った。図6に、タンタル酸化膜から得られたTa4fのナロースペクトルを示す。この結果から、タンタル酸化膜の最表層におけるナロースペクトルでは、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置で高いピークが見られ、層中におけるTaの存在比が高いことが分かる。また、タンタル酸化膜の最表層から1nmの深さの層におけるナロースペクトルでは、一見するとピークが1つに見える。しかしこれは、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置でのピークと、Taの束縛エネルギー(21.0eV)のピークとが重なった結果、このようなスペクトルになったものである。また、スペクトルのピークもかなりTa寄りであり、最表層ほどではないが、Ta結合の存在比が高いといえる。また、タンタル酸化膜の最表層から5nmの深さの層におけるナロースペクトルも、一見するとピークが1つに見える。これも、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置でのピークと、Taの束縛エネルギー(21.0eV)のピークとが重なった結果である。しかし、スペクトルのピークがTa側に少し寄っており、Ta結合の存在比は比較的高くないといえる。
【0109】
また、XPS分析の深さ方向プロファイルから、タンタル酸化膜の表面から約2nmの深さに高酸化層21が形成されていることが確認された。この高酸化層21の酸素含有量は、71.4〜68at%であった。以上の結果から、タンタル酸化膜の表層(最表層から2nmの範囲内)は、酸素含有量が60at%以上であり、かつ、表面に近づくにつれて膜中の酸素含有量が増加していることが分かる。更に、表面に近づくにつれて、Ta4fのナロースペクトルのピークが高エネルギー側にシフトしており、膜中のTa結合の存在比が高くなることが分かる。
【0110】
続いて、加熱処理を施した後の半透光膜20上に、クロムと窒素とを含有する材料からなる遮光膜30を形成した。遮光膜30は、半透光膜20側から、CrN膜を15nm、CrCN膜を65nm、CrON膜を25nm、インラインスパッタ装置で連続成膜することで形成した(図2(d))。以上の手順により、マスクブランク100bを製造した。
【0111】
次に、製造したマスクブランク100bを用いて、以下の手順により、多階調マスクを製造した。まず、マスクブランク100bの遮光膜30上に第1のレジスト膜40を形成した(図3(a))。続いて、レーザ描画装置を用いて、第1のレジスト膜40に遮光部103のパターンを描画露光し、現像処理および洗浄等を行い、遮光部103の形成領域を覆う第1のレジストパターン40pを形成した(図3(b))。そして、第1のレジストパターン40pをマスクとして、遮光膜30を硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液でウェットエッチングし、遮光膜パターン30pを形成した(図3(c))。次に、第1のレジストパターン40pを剥離し、遮光膜パターン30pと半透光膜20上の全面を覆うように、第2のレジスト膜50を形成した(図3(d))。続いて、レーザ描画装置を用いて、第2のレジスト膜50に透光部101のパターンを描画露光し、現像処理および洗浄等を行い、半透光部102の形成領域を覆う第2のレジストパターン50pを形成した(図3(e))。そして、第2のレジストパターン50pをマスクとして、半透光膜20を水酸化ナトリウムを含むエッチング液でウェットエッチングし、半透光膜パターン20pを形成した(図3(f))。最後に、半透光膜パターン20pを剥離し、所定の洗浄工程を経て、多階調マスク100を得た(図3(g))。
【0112】
製造した多階調マスク100の半透光部102の透過率を測定したところ、マスクブランク製造時に加熱処理を行った後に測定した半透光膜の透過率との差は、0.3%程度と微小な変化で収まっていた。この結果から、半透光膜20の表層にタンタルの高酸化層21を形成していることによって、遮光膜30をウェットエッチングしたときのエッチング液に対する耐性が高くなっており、また、その後の洗浄処理等に対する耐性も非常に高くなっていることがいえる。
【0113】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 透光性基板
20 半透光膜
21 高酸化層
22 半透光膜下層
30 遮光膜
100b マスクブランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とが順に形成されたマスクブランクであって、
前記半透光膜は、タンタルを含有する材料からなり、
前記半透光膜の前記透光性基板側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されており、
前記高酸化層を除いた前記半透光膜中の酸素含有量が60at%未満であることを特徴するマスクブランク。
【請求項2】
前記高酸化層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記高酸化層の厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記高酸化層中のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記半透光膜中のTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記半透光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項6に記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記遮光膜にパターンを形成するエッチングには、エッチング液を用いるウェットエッチングが適用されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
透光性基板上に、透光部、半透光部および遮光部からなる転写パターンが形成された多階調マスクであって、
前記透光性基板上に、半透光膜パターンと遮光膜パターンとが順に積層されており、
前記透光部は、前記透光性基板の表面が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光性基板上に形成された前記半透光膜パターンの表面が露出してなり、
前記遮光部は、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなり、
前記半透光膜パターンは、タンタルを含有する材料からなり、
前記半透光膜パターンの前記透光性基板側とは反対側の表層に、酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されており、
前記高酸化層を除いた前記半透光膜パターン中の酸素含有量が60at%未満であることを特徴とする多階調マスク。
【請求項10】
前記高酸化層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする請求項9記載の多階調マスク。
【請求項11】
前記高酸化層の厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする請求項9または10に記載の多階調マスク。
【請求項12】
前記高酸化層中のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記半透光膜パターン中のTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の多階調マスク。
【請求項13】
前記半透光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の多階調マスク。
【請求項14】
前記遮光膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の多階調マスク。
【請求項15】
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項14に記載の多階調マスク。
【請求項16】
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、温水またはオゾン水による処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項17】
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素を含有する気体中で加熱処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項18】
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素を含有する気体中で紫外線照射処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項19】
透光性基板上に、半透光膜と遮光膜とを順に形成するマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、タンタルを含有し、酸素含有量が60at%未満である材料からなる前記半透光膜を形成する工程と、
前記半透光膜に対し、酸素プラズマによる表面処理を行って、酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記半透光膜の表層に形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項20】
前記高酸化層中の酸素含有量を68at%以上とすることを特徴とする請求項16から19のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項21】
前記高酸化層の厚さを1.5nm以上4nm以下とすることを特徴とする請求項16から20のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項22】
前記高酸化層中のTa結合の存在比率を、前記高酸化層を除く前記半透光膜中のTa結合の存在比率よりも高くすることを特徴とする請求項16から21のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項23】
前記半透光膜を、さらに窒素を含有する材料で形成することを特徴とする請求項16から22のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項24】
前記半透光膜上に、前記クロムを含有する材料からなる前記遮光膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項16から23のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項25】
請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンおよび前記半透光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項26】
請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンまたは前記ウェットエッチング後の遮光膜をマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
前記ウェットエッチング後の遮光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記ウェットエッチング後の遮光膜を更にウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項27】
前記半透光膜パターンに対し、温水またはオゾン水による処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、および酸素プラズマによる表面処理のうち少なくともいずれかを行い、前記半透光膜パターンの側壁の表層に、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層を形成する工程を有することを特徴とする請求項25または26に記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項28】
請求項16から24のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されるマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンおよび前記半透光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項29】
請求項16から24のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されるマスクブランクを用い、前記透光性基板上に、前記透光性基板の表面が露出してなる透光部と、前記透光性基板上に形成された半透光膜パターンの表面が露出してなる半透光部と、前記透光性基板上に前記半透光膜パターンと前記遮光膜パターンとが積層されてなる遮光部と、からなる転写パターンを形成する多階調マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1のレジストパターンをマスクとし、前記遮光膜をウェットエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンまたは前記ウェットエッチング後の遮光膜をマスクとし、前記半透光膜をエッチングし、前記半透光膜パターンを形成する工程と、
前記ウェットエッチング後の遮光膜上に第2のレジストパターンを形成する工程と、
前記第2のレジストパターンをマスクとし、前記ウェットエッチング後の遮光膜を更にウェットエッチングし、前記遮光膜パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項30】
前記半透光膜パターンに対し、温水またはオゾン水による処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、および酸素プラズマによる表面処理のうち少なくともいずれかを行い、前記半透光膜パターンの側壁の表層に、層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層を形成する工程を有することを特徴とする請求項28または29に記載の多階調マスクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−64797(P2013−64797A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202351(P2011−202351)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】