説明

マスクブレイスおよびマスクアセンブリ

【課題】ヘッドストラップの本数やマスクへの取付位置の変化を許容するマスクアセンブリを提供する。
【解決手段】陽圧換気用の患者用マスクアセンブリは、マスクをはさむブレイス12を有している。ブレイス12は、マスクによって提供されるヘッドギア14用の取付位置17に代替的な位置に、ヘッドギア14用の取付位置17を提供する。ブレイスはマスク安定部20も含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブレイおよびマスクアセンブリに関する。特に本発明は、非侵襲型陽圧換気を届けるのに適しており、かつ閉塞型睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害の経鼻的持続的気道陽圧法(CPAP)による治療に適しているマスクの構成、装着および動作に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、日中の眠気、大いびきや日中の神経過敏を特徴とする病気である。OSAの他の影響には、気分の落ち込み、高血圧、重大な心臓の異常、性的な問題、記憶力の衰え、知的低下および午前中の頭痛がある。経鼻的持続的気道陽圧法(CPAP)を用いてのOSAの治療がサリバンによって発明されており、米国特許第4944310号(特許文献1)(サリバン、譲受人はレスメド社)に記載されている。この手法は、患者が眠っている間、加圧された呼吸可能なガス(一般的には大気)を患者の鼻、あるいは鼻と口との両方に流すということに関連している。この手法は、気道を「添え木をあてて」開放することであると言われる。典型的な治療圧は、3〜20cmHOの範囲内である。流量は約200L/minまでである。通常、加圧された空気の流れは送風機によって作り出されて、患者用インタフェースを介して患者に届けられる。空気流の発生源と患者用インタフェースとは導管によって接合されている。OSAの治療には、例えば外科手術のような他の手法もあるが、CPAPの使用が「王道の」標準となりつつある。特定の患者に対しては、気道を開放した状態にしておくのに必要とされる圧力を、一晩の間に変えることができ、また夜ごとに変えることもできる。米国特許第5245995号(特許文献2)(サリバンおよびリンチ、譲受人はレスメド社)は指示にしたがって圧力を変更する方法および装置を記載している。例えば、患者がいびきをかき始めると圧力は自動的に増加し、いびきをかいていないときには圧力は自動的に減少する。
【0003】
非侵襲型陽圧換気(NIPPV)は呼吸障害の治療の他の形態である。その最も基本的な形態においては、それは、呼吸の息を吸っているフェーズ中には患者のマスクにおいて比較的高い圧力の気体を提供し、息をはいているフェーズ中は患者のマスクにおいて比較的低い圧力あるいは大気圧を提供することを含む。典型的な治療圧は3〜30cmHOの範囲内である。
【0004】
他のNIPPVの形態では、圧力を呼吸サイクルを通じて複雑な方法で変えることができる。例えば、息を吸っている時あるいは息をはいている時のマスクにおける圧力は、国際出願第PCT/AU97/00631号(特許文献3)(バートン ジョーンズ、譲受人はレスメド社)および国際出願第PCT/AU99/00386号(特許文献4)(バートン ジョーンズ、譲受人はレスメド社)において開示されているように、治療期間内で変えることができる。
【0005】
本明細書では、CPAP治療という言葉は、換気治療あるいは換気による支援の上述した形態の全てを包括するものとして理解されるべきである。
【0006】
CPAP治療を提供する最も初期の患者用インタフェースの一つは、患者の鼻のファイバーグラスによる模型を含むように構成されている。この模型は、夜、患者の鼻に貼り付けられ、朝になったら除去される。この患者用インタフェースの利点は、患者用インタフェースと患者の気道との間に良好な封止を実現するのに役立つカスタマイズされたフィット部を有することであった。しかしながらマスクを固定するための接着剤の使用が不便であり、望ましいものではなかった。
【0007】
他の適した患者用インタフェースは、「装着者の鼻および顔の形状に対して膨張する/成型の封止を有するCPAPのための鼻用マスク」と題する米国特許第5243971号(特許文献5)(サリバンおよびブルデラー、譲受人はシドニー大学)に記載されている。この特許は、やわらかい顔接触部と剛性のあるシェルとを有する鼻用マスクを記載している。このマスクはヘッドギアを用いて定位置に保持される。ヘッドギアはマスクシェルに取り付けられており、装着者の頭の後ろ側にまわされる。この特許はヘッドギアにおいて2セットのストラップを図示している。最初のセットは額の領域から頭部後ろ側に伸びる一対のストラップから構成されている。第二のセットはマスクの鼻の領域から頭部の後ろ側に伸びる一対のストラップから構成されている。
【0008】
他の公知の患者用インタフェースには、MIRAGE(登録商標)鼻用マスク(レスメド社)がある。この鼻用マスクは、マスクの鼻の領域に一対のヘッドギア取付点と、もう一対のヘッドギア取付点を有する額支持部とを備えている。このマスクに対する額支持部が米国特許第6119693号(特許文献6)(クォック、マチェットおよびグラント、譲受人はレスメド社)の主題である。ヘッドギアは、略三角形状の背面部と4本のストラップとを有する一つづきのやわらかくて曲がりやすい複合繊維を備えている。4本のストラップは一対の上側ストラップと一対の下側ストラップとを含んでおり、それぞれが額支持部および鼻用マスクシェル上のヘッドギア取付点に接続される。各ストラップの端には、一片のVelcro(商標)のようなフック・ループで留める材料が固定されており、これは、使用時にはヘッドギア取付点を通されて、ストラップ上の対応するループ状材料上で留められる。略三角形状の背面部は後頭部領域で頭蓋骨に係合する。繊維は負荷がかかると伸びる。三角形の底辺は上側ストラップの近くで、上側ストラップのほぼ線上に位置する。
【0009】
患者の中には睡眠時に口をあけている人もいる。このことは、彼らは、口からの漏れのせいで経鼻的CPAPの恩恵をこうむることができないかもしれないということを意味する。この問題に対しては、さまざまな解決策が提案されている。ある解決策は、米国特許第6123082号(特許文献7)(バートン ジョーンズ、譲受人はレスメド社)によって教示されており、それによって唇は閉じた状態に保たれる。他の解決策は、患者の鼻と口との両方をカバーするマスクを用いることである。口・鼻用のマスクの一例は米国特許第5560354号(特許文献8)(バートン ジョーンズ、カルオード、リンチおよびヘリー、譲受人はレスメド社)に記載されている。
【0010】
他の適しているマスクシステムとしては、MIRAGE(登録商標)フルフェイスマスク(譲受人レスメド社によって提供される)がある。このMIRAGE(登録商標)フルフェイスマスクおよびヘッドギアを図1に示す。このマスクに適しているヘッドギアは、ナイロン、ネオプレンおよびフック・ループ材料の複合材料から構成される。ヘッドギアは、同様に、一対の上側ストラップと一対の下側ストラップと略三角形状の背面部とを有している。上側ストラップは、全長が約610mmである。ストラップは約25mmの幅を有しているが、上側ストラップの幅は約19mmである。三角形状の部分は約15.5cmの底辺と約11cmの等しい2辺を有している。上側および下側ストラップは約192mm離れている。また、ヘッドギアは、係属中の米国特許出願第09/482718号(特許文献9)(リスゴー、譲受人はレスメド社)に記載されているクイックリリース機構を備えている。このクイックリリース機構は、緊急時に上に引っ張られるとヘッドギアを分離させ、したがってマスクを取り外す「引っぱりひも」を備えている。ヘッドギアが患者の頭部上にあるときは、クイックリリース機構は頭部の後ろ側に位置しており、ひもは、マスクシステムの正面の方に、ループを通って這わされている。
【0011】
患者用インタフェースの構成は、鼻用マスク、鼻・口用マスク、鼻用の突起(prong)、および鼻用の枕を含む。睡眠時の呼吸障害を治療するためのCPAPで用いられる患者用インタフェースの全ての形態では、加圧された空気の力の釣り合いを取り、適切にインタフェースを位置決めする必要がある。患者はこのインタフェースをつけて眠らなければならないので、インタフェースは快適であることが重要である。製造上および流通経路の観点からは、一つのサイズのヘッドギアが幅広い範囲の頭部形状およびサイズに適合すれば有利である。
【0012】
他の例の先行技術のヘッドギアおよびマスクシェルは、ヘッドギアストラップの本数が異なっている、ヘッドストラップの取付点の配置が異なっている、あるいはその両方が異なっているという限りにおいて、米国特許第5243971号(特許文献10)に図示されている構成や、MIRAGE(登録商標)鼻用マスクおよびMIRAGE(登録商標)フルフェイスマスクにおいて用いられている構成とは異なる構成を有している。このマスク構成の多様性が、ユーザ間に存在する生物学的な変化に対応するためには必要である。ユーザは一人一人独自の顔の形状、頭の形状を有している。しかし、ヘッドギアと固定されたストラップ取付点とを含むマスクシステムで、配置の連続的な変化を提供するものは一つもない。その結果、大量生産されたマスクとヘッドギアシステムとの範囲の中から選択するときに、大半の場合、その選択は、快適さと、マスクとユーザとの間のしっかりとした装着および良好な封止を得ることとの間でバランスがぶつかるユーザにとっての妥協を表している。
【0013】
ヘッドストラップの本数やマスクへの取付位置の大きな変化を許容するヘッドギア取付部へのアプローチは、快適さおよび機能の点ではユーザに多大な利点をもたらし、製造者および納入業者の在庫を合理化するという望ましい目的に向かって進みつつ異なるマスク位置とヘッドギア構成とを容易に実験する機会を助長するという点ではマスクシステムの製造者に多大な利益をもたらすであろう。
【0014】
ここで、換気装置、呼吸装置、飛行士のマスクおよび他の呼吸するための装置に使用可能なマスクおよびヘッドギアの構成は多くあるが、一般的にはこれらは睡眠時の呼吸障害の治療での使用には適していないかもしれない。なぜならこれらは、患者が眠ることができるほど十分に快適ではないからである。
【特許文献1】米国特許第4944310号明細書
【特許文献2】米国特許第5245995号明細書
【特許文献3】国際出願第PCT/AU97/00631号パンフレット
【特許文献4】国際出願第PCT/AU99/00386号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5243971号明細書
【特許文献6】米国特許第6119693号明細書
【特許文献7】米国特許第6123082号明細書
【特許文献8】米国特許第5560354号明細書
【特許文献9】米国特許出願第09/482718号明細書
【特許文献10】米国特許第5243971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできるマスクブレイスおよびマスクアセンブリを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0016】
本発明は、患者の快適さを向上させ、長持ちし、かつ幅広い範囲の頭部形状およびサイズに適合する、マスクを構成する方法および睡眠時の呼吸障害の治療で使用されるマスクを提供することに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、マスクのような患者用インタフェースにヘッドギアを位置決めして取り付けるための方法および装置の改良に関連する。
【0018】
本発明は、マスクシェルとは独立しているブレイスをマスクに組み込むことを含んでいる。前記ブレイスは、マスクに対して実質的的に固定された位置に保持されるように、かつ、ヘッドギアの少なくとも一部の取付を収容するように使用時に適応される。
【0019】
本発明は、ヘッドギアのための取付点を、マスクシェルの構成とは独立して物理的な意味あるいは時間的な意味で決定し、変更することを可能にする。
【0020】
発明は、患者の気道のインタフェースのためのブレイスに広く存在しており、このブレイスは、インタフェースと着脱自在に係合可能であるような形状であり、ヘッドギア部材との係合のための少なくとも一つの構造を提供する。
【0021】
好ましくは、ブレイスは、前記インタフェース上の構造によって係合可能であるような形状である細長い部材を備えている。
【0022】
また、発明は患者の気道のインタフェースのためのブレイスに広く存在しており、このブレイスはインタフェースと着脱自在に係合可能であるような形状であり、ブレイスはさらに、患者の額と係合するために配置された構造を含んでいる。
【0023】
即ち、本発明の第1の形態によると、患者の気道インタフェース用のブレイスであって、 前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状であり、ヘッドギア部材との係合のための少なくとも一つの構造を提供することを特徴とする。
【0024】
前記ブレイスは、前記インタフェース上の構造によって係合可能であるような形状である細長い部材を有していてもよい。
【0025】
前記細長い部材は、前記インタフェース上の対向する構造間で係合可能であってもよい。
【0026】
前記構造の少なくとも一つは、前記インタフェースの周辺フランジであってもよい。
【0027】
前記構造の少なくとも一つは、前記インタフェース上のヘッドギア部材取付構造であってもよい。
【0028】
前記細長い部材は、前記インタフェースの形状に合い、かつヘッドギア部材配置位置を提供するように曲げられたワイヤによって形成されていてもよい。
【0029】
前記ヘッドギア部材配置位置は、前記ワイヤをU字状に局所的に曲げることで形成されていてもよい。
【0030】
前記患者のインタフェースは、一致した顔係合部と比較的かたいシェルとを備えている種類のものであり、前記対向する構造は前記シェル上に設けられていてもよい。
【0031】
前記構造の一つは、前記シェルの周辺フランジであってもよい。
【0032】
前記構造の少なくとも一つは、前記シェル上のヘッドギア部材取付構造であってもよい。
【0033】
本発明の第2の形態によれば、患者の気道インタフェース用のブレイスであって、前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされており、前記患者の額と係合するために配置された構造をさらに含むことを特徴とする。
【0034】
前記インタフェース上の構造によって係合可能であるような形状であり、前記額との係合のために前記インタフェースを超えて伸びている細長い部材を有していてもよい。
【0035】
前記細長い部材は、前記インタフェースの形状に合うように、かつヘッドギア部材配置位置を提供するように曲げられたワイヤによって形成されていてもよい。
【0036】
本発明の第3の形態によれば、患者の気道インタフェース用のブレイスであって、前記ブレイスは前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされた細長い部材を有しており、前記細長い部材は、少なくとも一つのヘッドギア部材と係合するための構造と、前記患者の額の領域に配置された部分とを有していることを特徴とする。
【0037】
少なくとも一つの係合構造は、前記部分に配置されていてもよい。
【0038】
本発明の第4の形態によれば、マスクシェルと、マスククッションと、前記クッションを前記シェルに取り付けるためのマスククッションクリップとを有する患者の気道インタフェースアセンブリであって、前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされ、かつ少なくとも一つのヘッドギア部材との係合のための構造を提供するブレイスをさらに備えていることを特徴とする。
【0039】
前記ブレイスは前記シェルおよび前記クッションクリップと係合して、前記クッションクリップを前記シェルに固定してもよい。
【0040】
前記シェルは、ヘッドギア部材の取り付けのための少なくとも一つの構造を有しており、前記ブレイスの前記構造は、前記シェルの構造によって提供されるものとは異なるヘッドギア部材の位置合わせを提供するように配置されていてもよい。
【0041】
前記シェルの前記構造の少なくとも一つは、前記ブレイスと前記シェルとの間の係合点として機能していてもよい。
【0042】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0044】
図2は、本発明を組み込んだマスクシステム10を示しており、ブレイス12、マスクシェル13、ヘッドギアストラップ14、ブレイスヘッドストラップ取付点15、マスククッション16およびマスクシェルヘッドギア取付点17を有している。
【0045】
本発明のこの実施形態においては、マスクシェルのヘッドギア取付点17はヘッドギア用の取付点としてのそれらの本来の役割に関する限りは不要である。なぜならブレイスのヘッドギア取付点がマスクシェルのどの取付点とも独立して必要な目的を果たすからである。にもかかわらず、ブレイスがマスクシェルに対して固定された所定の位置をとるとを目的としているため、マスクシェルヘッドギア取付点17が存在することはブレイスの構造を保持するのに役立つ。
【0046】
図2に示されているブレイスは、5本のヘッドギアストラップを取り付けるための設備を有しているが、ブレイスは、適切な本数であれば何本のストラップを受けるように構成されてもよい。本発明は、マスクアセンブリがユーザ上に適切に配置されるときにマスクシェルに対して実質的に一定の位置をブレイスがとるすることを考えている。ブレイスは、特定のヘッドギア構成に必要である本数と少なくとも同数のヘッドギアストラップを受けるように構成されてよく、あるいはどのような特定のヘッドギア構成に対してもより少ない、あるいはより多い数のヘッドギア取付点を有してもよい。
【0047】
本発明の汎用性は、どのような任意のマスクシェルについても、必要な本数のヘッドギアストラップを受けるようにブレイスを構成することができ、かつ、ユーザが多様なヘッドギア構成の中で選択することを可能にするような位置にブレイスヘッドギア取付点を配置することができるという点で、当業者にすぐに明らかとなることであろう。この汎用性によって、ユーザは、特定の要件が指示するときのヘッドギアの選択を最適にすることが可能であり、必要なマスクの封止および快適さを実現することができる。
【0048】
ユーザには、適切な選択のために、ヘッドギア取付部の数がそれぞれ異なっている数多くのブレイス、あるいは、マスクシェルに関するさまざまな構成において配置されている定数のヘッドギア取付点を少なくとも有する数多くのブレイスを供給される。
【0049】
発明の一実施形態において、ブレイスは、前述したように既存のマスクフレーム上での「クリップによるはめこみ(クリップフィット)」を実現するように設計されている。
図3は、ブレイス12が既存のマスクフレームのヘッドギア取付点17とマスクシェルの外表面、この場合は周辺フランジ部18との間にはめ込まれているクリップフィット構成を示している。ヘッドギアストラップ取付点17がマスクシェル上に設けられている場合、それらはブレイス12のヘッドギアストラップ取付点15のいくつか、あるいは全てと関連して用いられ、それによりこの構成においてさらなるフレキシビリティを提供する。
【0050】
発明の他の実施形態(図示せず)では、適切な係合点がブレイスを受けるようにマスクシェル内で作り出されてもよい。このような取付点は、ヘッドギアストラップを取り付けるのには適していないように設計されている。
【0051】
本発明のブレイスによって提供される汎用性によって、ブレイスは、ヘッドギア取付点を含むこととは独立して、あるいはそれに加えて、マスクを安定させる特徴を含む可能性を提供する。このような安定させる特徴の例は、添付の図面に額安定化セクション20という形で図示されている。この安定化セクション20は、マスクシェルをよけて伸びるブレイスの一部という形態をとっており、持ち上がった係合点を提供し、および/またはユーザの顔の一部、この場合には額に接触する。ブレイスを形成するのに用いられるワイヤの可鍛性により、安定化部の位置を個々の患者に対して調整することが可能である。図2において、額安定化部20はユーザの額とほぼ接触、あるいは接触しており、それにより鼻梁領域における付随するマスクフレームおよびマスククッションのユーザの顔方向への動きを制限することがわかる。この安定させる特徴は、マスクシェルに関連するブレイスの比較的かたい係合によって実現されるものである。
【0052】
図5は、本出願人によるMIRAGE(登録商標)フルフェイスマスクシステムとともに使用するのに適した本発明によるブレイスの一バージョンを模式的に示している。ブレイスは、連続した形状をとるように2.5mmゲージの鍛接軟鋼から構成されている。ワイヤは標準的なワイヤを曲げる技術を用いて適切な形状に曲げられている。このワイヤを曲げる技術は、ふさわしくプログラムされたNCワイヤ曲げ機による自動化された曲げ工程を含んでもよい。
【0053】
好ましくは、得られるブレイスは、耐食性の容易に洗浄される表面を提供すべく、粉体塗装される。
【0054】
マスクシェルは、典型的には、ポリカーボネイトまたは類似した材料から成型される。このような構成技術は、比較的高価な成型ツールを必要とする。これは、ヘッドギア取付点がマスクシェルに成型されると、製造者がヘッドギア取付点の位置を変更するには費用がかかるということを意味する。対照的に、本発明によるブレイスの構成、製造は比較的安価に行うことができる。
【0055】
ブレイスは、前述したように、容易に手でマスクフレームに装着され、クリップによって定位置にセットされる。この操作は、ブレイス材料に備わっている可鍛性ゆえに、手で容易に行われる。マスクフレーム内でブレイスを受ける特徴によって受けられるようにブレイスを適応させて他の実施形態を構成することもできることは明らかである。
【0056】
また、ブレイスを受ける特徴に係合するようにブレイスを構成することも意図される。このブレイスを受ける特徴は、マスククッションクリップによって提供される。このようにしてブレイスは、マスクフレームにクッションクリップおよびクッションを固定するように働きつつ、正確にかつしっかりとマスクフレームに対して位置決めされる。ブレイスを係合する特徴はブレイス上に配置されてもよく、それに対応する特徴はマスクシェル上に配置される。あるいは、ブレイスを係合する特徴は、ブレイスとマスクシェルとを係合させる別の構成要素であってもよい。ブレイスを受ける特徴は、マスククッションを取りまいて固定するマスクフレームの外周の周りに沿って伸びているか、あるいはマスクフレーム内に提供される開口部を通って伸びていてもよい。
【0057】
本発明の方法およびマスクアセンブリは、ユーザに対して利益となるであろう他のアクセサリを含むことを可能にするというようなさらなる利点を提供する。アクセサリとは、例えば、胃−鼻間のチューブ、あるいはユーザの生理学上のパラメータを測定するセンサを保持するまたは取り付けるための装備、補足的なガスあるいは医薬品を提供するためのチューブを取り付けるための装備、あるいは、例えば米国特許第6,123,082号(バートン ジョーンズ、譲受人はレスメド社)に記載され、図示されているような口を通る空気の通路を妨げる、あるいは含めるための装置のような他のアクセサリの取り付けのための装備である。
【0058】
発明の他の利点には、マスクシェルおよびクッションを洗うために、ヘッドギアをブレイスに係合させたままでストラップ長の調整に影響を及ぼすことなくヘッドギアをマスクから取り外すことが可能であるということが含まれる。これの利点は、ブレイスとヘッドギアアセンブリとを、ストラップ長の再調整を必要とすることなくマスクフレームに再度取り付けることができるということである。
【0059】
これは、ブレイスが一旦マスクフレームに対して所定の位置に配置されると、マスクフレームに対するヘッドストラップの位置は、ブレイスがマスクシェルからはずされた時の位置に戻るからである。
【0060】
好ましい実施形態に関連して上述したように、可鍛性材料からマスクブレイスを形成することによって、ユーザは、特定の必要性に合うように、ヘッドギア保持部あるいはマスクを安定させる特徴の位置あるいはその両方に対して、いくらかの調整を行うことができるということが理解されるであろう。このような調整の機会により、ユーザの特定の要求に合わせてマスクアセンブリを素早く調整することが可能となる。
【0061】
好ましい実施形態では、マスクシェルへのクリップによる装着を有するマスクブレイスを説明したが、ブレイスは、例えばVelcro(商標)のようなフック・ループシステムあるいは他の適切な手段といった他の手段によってマスクシェルに取り付けられてもよいことを認識されたい。この取付手段は、本発明に伴う他の利点を得ることを容易にするために、配置されるだけではなく、これら2つの構成要素を比較的容易に取り外すことを許容しつつ、マスクフレームに対して一貫したブレイスのサポートを実現することが好ましい。
【0062】
本発明は、顔面麻痺をもつ人達のようなユーザによって必要とされるであろう非対称なマスク構成に対応するのに特に適している。例えば、本発明は、非対称なヘッドストラップ取付点の個別の配置を可能とし、標準的なマスクフレームと一緒に非対称なマスククッションを使用することを可能にする。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】ユーザの顔の上に配置された先行技術のフルフェイスマスクシステムを示す図である。
【図2】ユーザの顔の上に配置された、本発明によるブレイスを内蔵しているマスクシステムを示す図である。
【図3】マスクシェル上に位置している本発明によるブレイスを示す図である。
【図4】図3のブレイスおよびマスクシステムの別の図である。
【図5】本発明によるブレイスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気道インタフェース用のブレイスであって、
前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状であり、ヘッドギア部材との係合のための少なくとも一つの構造を提供することを特徴とするブレイス。
【請求項2】
前記ブレイスは、前記インタフェース上の構造によって係合可能であるような形状である細長い部材を有していることを特徴とする請求項1に記載のブレイス。
【請求項3】
前記細長い部材は、前記インタフェース上の対向する構造間で係合可能であることを特徴とする請求項2に記載のブレイス。
【請求項4】
前記構造の少なくとも一つは、前記インタフェースの周辺フランジであることを特徴とする請求項3に記載のブレイス。
【請求項5】
前記構造の少なくとも一つは、前記インタフェース上のヘッドギア部材取付構造であることを特徴とする請求項3に記載のブレイス。
【請求項6】
前記細長い部材は、前記インタフェースの形状に合い、かつヘッドギア部材配置位置を提供するように曲げられたワイヤによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のブレイス。
【請求項7】
前記ヘッドギア部材配置位置は、前記ワイヤをU字状に局所的に曲げることで形成されることを特徴とする請求項6に記載のブレイス。
【請求項8】
前記患者のインタフェースは、一致した顔係合部と比較的かたいシェルとを備えている種類のものであり、前記対向する構造は前記シェル上に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のブレイス。
【請求項9】
前記構造の一つは、前記シェルの周辺フランジであることを特徴とする請求項8に記載のブレイス。
【請求項10】
前記構造の少なくとも一つは、前記シェル上のヘッドギア部材取付構造であることを特徴とする請求項8に記載のブレイス。
【請求項11】
患者の気道インタフェース用のブレイスであって、
前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされており、前記患者の額と係合するために配置された構造をさらに含むことを特徴とするブレイス。
【請求項12】
前記インタフェース上の構造によって係合可能であるような形状であり、前記額との係合のために前記インタフェースを超えて伸びている細長い部材を有していることを特徴とする請求項11に記載のブレイス。
【請求項13】
前記細長い部材は、前記インタフェースの形状に合うように、かつヘッドギア部材配置位置を提供するように曲げられたワイヤによって形成されていることを特徴とする請求項12に記載のブレイス。
【請求項14】
患者の気道インタフェース用のブレイスであって、
前記ブレイスは前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされた細長い部材を有しており、前記細長い部材は、少なくとも一つのヘッドギア部材と係合するための構造と、前記患者の額の領域に配置された部分とを有していることを特徴とする、ブレイス。
【請求項15】
少なくとも一つの係合構造は、前記部分に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のブレイス。
【請求項16】
マスクシェルと、マスククッションと、前記クッションを前記シェルに取り付けるためのマスククッションクリップとを有する患者の気道インタフェースアセンブリであって、前記インタフェースを保持するように係合可能であるような形状とされ、かつ少なくとも一つのヘッドギア部材との係合のための構造を提供するブレイスをさらに備えていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項17】
前記ブレイスは前記シェルおよび前記クッションクリップと係合して、前記クッションクリップを前記シェルに固定することを特徴とする請求項16に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記シェルは、ヘッドギア部材の取り付けのための少なくとも一つの構造を有しており、前記ブレイスの前記構造は、前記シェルの構造によって提供されるものとは異なるヘッドギア部材の位置合わせを提供するように配置されていることを特徴とする請求項16に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記シェルの前記構造の少なくとも一つは、前記ブレイスと前記シェルとの間の係合点として機能することを特徴とする請求項18に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−207907(P2009−207907A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−137364(P2009−137364)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2002−547564(P2002−547564)の分割
【原出願日】平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD