説明

マスター情報担体の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法

【課題】磁気転写性能に優れたマスター情報担体を安価に製造できるマスター情報担体の製造方法を提供する。
【解決手段】情報信号に対応する転写パターンが形成された転写面を有して、磁気記録媒体の記録面に転写面を重ね合わせた状態で、転写面とは反対側から外部磁界を印加することによって、転写面から磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する際に用いられるマスター情報担体の製造方法であって、転写パターンに対応したネガの凹凸パターン101が形成されたマザーモールド100を得る工程と、マザーモールド100を用いて転写パターンに対応したポジの凹凸パターン201が転写されたレプリカモールド200を得る工程と、レプリカモールド200の凹凸パターン201が形成された面上を覆う磁性層202を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気転写に用いられるマスター情報担体の製造方法、並びに、このようなマスター情報担体を用いた磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(ハードディスクドライブ)は、現在その記録密度が年1.5倍以上で増えており、今後もその傾向は続くと言われている。それに伴って、高記録密度化に適した磁気ヘッド及び磁気記録媒体の開発が進められている。そして、最新の磁気記録装置においては、トラック密度が320kTPIにも達している。
【0003】
このため、高いトラック密度を有する磁気記録媒体では、磁気ヘッドをトラック上で正確に走査するために、磁気ヘッドのトラッキングサーボ技術が重要な役割を果たしている。具体的に、現在のハードディスクドライブでは、ディスクの1周中、一定の角度間隔でトラッキング用のサーボ信号や、アドレス情報信号、再生クロック信号などの情報信号(以下、サーボ信号等という。)が記録されている。そして、磁気ヘッドから一定間隔の時間で再生されるこれらの信号によって、磁気ヘッドの位置を検出しながら、磁気ヘッドが正確にトラック上を走査するように磁気ヘッドの位置を修正する制御が行われている。
【0004】
したがって、上述したサーボ信号等は、磁気ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となることから、これらの信号の書き込みには高い位置決め精度が求められる。このため、従来のハードディスクドライブの製造現場では、高精度の位置検出装置を組み込んだ専用のサーボ信号記録装置(以下、サーボライタという。)を用いて、磁気記録媒体に対するサーボ信号等の書き込みが行われている。また、サーボライタは、その生産性を高めるために、一つのスピンドルに多数枚の磁気記録媒体をチャッキングし、これらの磁気記録媒体に対して同時にサーボ信号等を書き込む構造となっている。
【0005】
しかしながら、上述したサーボライタによるサーボ信号等の書き込みには、以下の課題が存在する。すなわち、磁気ヘッドを高精度に位置決めしながら多数のトラックに亘って信号を書き込むためには、多くの時間がかかり、更に生産性を上げるためには、多くのサーボライタを同時に稼働させる必要がある。しかしながら、導入するサーボライタの数を増やすと、その維持管理に多額のコストがかかることになる。また、スピンドルを長くして同時にチャッキングできる磁気記録媒体の枚数を増やすと、回転中にブレが生じ易くなり、磁気記録媒体に対する書き込み精度の低下を招くことになる。したがって、1つのスピンドルにチャッキングできる磁気記録媒体の枚数には自ずと限界がある。そして、これらの課題は、磁気記録媒体のトラック密度が向上し、トラック数が多くなるほど深刻なものとなっている。
【0006】
そこで、磁気記録媒体へのサーボ信号等の書き込みをサーボライタではなく、全てのサーボ信号、又は、ハードディスクドライブがサーボ信号を生成するためのプリサーボ信号、セルフサーボ信号等に対応する磁気転写パターンが書き込まれたマスター情報担体を用いて、このマスター情報担体に書き込まれた信号を磁気記録媒体に一括して磁気転写する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0007】
具体的に、この方法では、マスター情報担体と磁気記録媒体とを密着させた状態で、外部から転写用のエネルギーとして磁界を加えながら、マスター情報担体に書き込まれた信号を磁気記録媒体に磁気転写する。これにより、磁気記録媒体に対するサーボ信号等の書き込み作業を短時間で行うことが可能である。また、このようなマスター情報担体は、繰り返し使用可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したマスター情報担体を製造する際は、先ず、シリコンウェハの表面に電子線レジストをスピンコート法により塗布する。その後、このレジストに対して、電子線露光装置を用いてサーボ信号等に対応させて変調した電子ビームを照射し、レジストの露光・現像を行った後、未露光部分を除去することによって、シリコンウェハ上に、転写パターンに対応したレジストパターンを形成する。
【0010】
次に、このレジストパターンをマスクにして、シリコンウェハに対して反応性エッチング処理を行い、レジストでマスクされていない箇所を掘り下げる。このエッチング処理後、シリコンウェハ上に残存するレジストを溶剤で洗浄除去する。その後、シリコンウェハを乾燥させて、マスター情報担体を作製するための原盤を得る。
【0011】
次に、この原盤上に、Niからなる導電層をスパッタリング法により形成した後、この上に電鋳法によりNi層を形成する。その後、Ni層を原盤から外し、このNi層の洗浄等を行い、表面に転写パターンが形成されたNi基材を得る。
【0012】
次に、このNi基材の表面に磁性層を形成し、さらに、このNi基材の表面に保護膜を形成する。以上の工程を経ることによって、マスター情報担体を得ることができる。
【0013】
従来のマスター情報担体は、上述した複雑な工程を経ることによって作製されるため、非常に高価なものとなっている。したがって、このようなマスター情報担体を安価に製造する方法が求められている。また、マスター情報担体は、上述した磁気記録媒体の高記録密度化に対応して、転写パターンのサイズも微細化する必要があり、これ伴って磁気転写性能の更なる向上が求められている。
【0014】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、磁気転写性能に優れたマスター情報担体を安価に製造できるマスター情報担体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような方法で製造されたマスター情報担体を用いることによって、更なる生産性の向上を可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 情報信号に対応する転写パターンが形成された転写面を有して、磁気記録媒体の記録面に前記転写面を重ね合わせた状態で、前記転写面とは反対側から外部磁界を印加することによって、前記転写面から前記磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する際に用いられるマスター情報担体の製造方法であって、
前記転写パターンに対応したネガの凹凸パターンが形成されたマザーモールドを得る工程と、
前記マザーモールドを用いて前記転写パターンに対応したポジの凹凸パターンが転写されたレプリカモールドを得る工程と、
前記レプリカモールドの凹凸パターンが形成された面上を覆う磁性層を形成する工程とを含むことを特徴とするマスター情報担体の製造方法。
(2) 前記レプリカモールドとして、活性エネルギー線によって硬化する樹脂材料を用い、
前記レプリカモールドに前記凹凸パターンを転写する際は、前記マザーモールドの凹凸パターンが形成された面を流動状態の前記樹脂材料に押し当てる工程と、
前記樹脂材料に活性エネルギーを加えて、この樹脂材料を硬化させたレプリカモールドを形成する工程と、
前記マザーモールドと前記レプリカモールドとを分離する工程とを含むことを特徴とする前項(1)に記載のマスター情報担体の製造方法。
(3) 前記樹脂材料の粘度が10Pa・s以下であることを特徴とする前項(2)に記載のマスター情報担体の製造方法。
(4) 前記樹脂材料が、(メタ)アクリル基、オキセタニル基、シクロヘキセンオキサイド基、ビニルエーテル基の中から選ばれる何れか1種以上の反応基を有する樹脂材料であることを特徴とする前項(2)又は(3)に記載のマスター情報担体の製造方法。
(5) 前項(1)〜(4)の何れか一項に記載の方法により製造されたマスター情報担体の転写面と、磁気記録媒体の記録面とを重ね合わせた後、前記マスター情報担体の転写面とは反対側から外部磁界を印加しながら、前記マスター情報担体の転写面から前記磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、磁気転写性能に優れたマスター情報担体を安価に製造することが可能となる。また、このようなマスター情報担体を用いることによって、磁気記録媒体の更なる生産性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、マスター情報担体の製造工程を説明するための断面図である。
【図2】図2は、磁気転写工程を説明するための断面図である。
【図3】図3は、磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用したマスター情報担体の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
本発明を適用して製造されるマスター情報担体は、磁気記録媒体の記録面にサーボ信号、プリサーボ信号、セルフサーボ信号等の情報信号を磁気転写する際に用いられるものであり、情報信号に対応する転写パターンが形成された転写面を有して、磁気記録媒体の記録面に転写面を重ね合わせた状態で、転写面とは反対側から外部磁界を印加することによって、転写面から磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写するものである。
【0020】
本発明を適用したマスター情報担体の製造方法は、転写パターンに対応したネガの凹凸パターンが形成されたマザーモールドを得る工程と、マザーモールドを用いて転写パターンに対応したポジの凹凸パターンが転写されたレプリカモールドを得る工程と、レプリカモールドの凹凸パターンが形成された面上を覆う磁性層を形成する工程とを含んでいる。
【0021】
(マザーモールド)
具体的に、マザーモールドは、マスター情報担体の原盤となるものであり、マスター情報担体の転写パターンを反転させたネガの凹凸パターンを有する。
【0022】
マザーモールドは、例えば以下の方法によって製造することができる。すなわち、このマスター情報担体の原盤を製造する際は、先ず、シリコンウェハの表面に電子線レジストをスピンコート法により塗布する。その後、このレジストに対して、電子線露光装置を用いてサーボ信号等に対応させて変調した電子ビームを照射し、レジストの露光・現像を行った後、露光部分を除去することによって、シリコンウェハ上に、転写パターンのネガパターンに対応したレジストパターンを形成する。
【0023】
次に、このレジストパターンをマスクにして、シリコンウェハに対して反応性エッチング処理を行い、レジストでマスクされていない箇所を掘り下げる。このエッチング処理後、シリコンウェハ上に残存するレジストを溶剤で洗浄除去する。その後、シリコンウェハを乾燥させる。
【0024】
以上の工程を経ることにより、マスター情報担体の転写パターンを反転させたネガの凹凸パターンを有する原盤を得ることができ、これをマザーモールドとして用いることができる。
【0025】
(レプリカモールド)
レプリカモールドは、上記マザーモールドの凹凸パターンを反転させたポジの凹凸パターン、すなわちマスター情報担体の転写パターンに対応したポジの凹凸パターンが転写されたものである。
【0026】
このレプリカモールドに上記マザーモールドの凹凸パターンを転写する際は、例えば図1(a)に示すマザーモールド100の凹凸パターン101を流動状態の活性エネルギー線硬化性樹脂層200aに押し当てる工程と、図1(b)に示す活性エネルギー線硬化性樹脂層200aに活性エネルギーを加えて、この活性エネルギー線硬化性樹脂層200aを硬化させたレプリカモールド200を形成する工程と、図1(c)に示すマザーモールド100とレプリカモールド200とを分離する工程とを含む。
【0027】
これにより、マザーモールド100の凹凸パターン101を反転させたポジの凹凸パターン201、すなわちマスター情報担体の転写パターンに対応したポジの凹凸パターン201が転写されたレプリカモールド200を得ることができる。
【0028】
(磁性層)
磁性層については、磁気記録媒体に用いられる磁性層と同じものを使用することができ、図1(d)に示すように、上記レプリカモールド200の凹凸パターン201が形成された面上を磁性層202が覆うようにスパッタ法等により成膜する。また、上記レプリカモールド200の凹凸パターン201が形成された面上を覆う磁性層202のうち、磁気記録媒体への磁気転写に用いられるのは凸部201aが形成された部分の磁性層202であり、凹部201bが形成された部分の磁性層202は、磁気記録媒体と接触しないため、磁気転写に用いられない。
【0029】
さらに、磁性層202の表面には、磁気記録媒体と同様に保護膜(図示せず。)が形成される。この保護膜は、マスター情報担体の耐摩耗性を高めるためのものであり、数nm程度の厚さの硬質炭素膜等が用いられる。
以上の工程を経ることによって、サーボ信号等に対応する転写パターンが形成されたマスター情報担体を得ることができる。
【0030】
(活性エネルギー線硬化性樹脂層)
本発明では、上記活性エネルギー線硬化性樹脂層200a(レプリカモールド200)に、活性エネルギー線によって硬化する樹脂材料(以下、硬化性樹脂材料という。)を用いることが好ましい。
【0031】
具体的に、硬化性樹脂材料には、マザーモールド100によってナノインプリントするため、液状又はゲル状のように流動性のあるものを用いることが好ましく、その中でも、ナノインプリントによりレプリカモールド200を高精度に作製するためには、粘度が10Pa・s以下のものを用いることが好ましい。なお、粘度については、25℃の環境下において、例えばビスコメーター(ブルックフィールド社製、商品名「DV−EVISCOMETER」)を用いて測定することができる。
【0032】
硬化性樹脂材料としては、硬化性に優れた、(メタ)アクリル基、オキセタニル基、シクロヘキセンオキサイド基、ビニルエーテル基の中から選ばれる何れか1種以上の反応基を有する樹脂材料を用いることが好ましい。
【0033】
また、硬化性樹脂材料としては、光ナノインプリント法に用いる場合には、放射線硬化性樹脂が用いられ、熱ナノインプリント法を用いる場合には、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。その中でも、放射線硬化性樹脂材料を用いることがより好ましい。放射線硬化性樹脂材料によれば、光照射によって短時間に且つ容易に硬化させることができるため、マザーモールド100からレプリカモールド200を製造する工程を簡便且つ短時間に行うことができる。
【0034】
放射線硬化性樹脂材料は、300nm〜400nmの範囲内の波長に対して硬化性を有する樹脂を含有し、硬化後の硬化物の300nm〜400nmの範囲内の波長の透過率が20%以上、温度25℃における引張弾性率が1.3GPa以上であることが好ましい。このような放射線硬化性樹脂を用いれば、硬化性樹脂材料の硬化性が充分に光を透過させるため、ナノインプリントプロセスに光ナノインプリント法を適用することが可能になる。また、硬化性樹脂材料の硬化物の引張弾性率が1.3GPa以上であれば、ナノインプリント法に適した物性の硬化性樹脂材料が得られる。
【0035】
また、このような放射線硬化性樹脂材料は、光硬化時の収縮率が低く、マザーモールド100に対する離型性が高いため、この硬化性樹脂材料を用いた場合には、微細な凹凸パターン201を有するレプリカモールド200を低い不良率で製造できる。
【0036】
なお、波長の透過率は、例えば分光光度計(日本分光社製、商品名「V−650」)を用いて測定することができる。測定の際は、試料(樹脂層)の厚みは20μmとし、測定温度は室温とする。また、引張弾性率は、JIS K 7120に準拠して導出する。すなわち、チャック幅50mmでレオメーター(例えば、FUDOH社製、商品名「RT−3010D−CW」)に評価用硬化膜を取り付け、25℃で延伸して、破断点までの変位を求めることにより導出する。
【0037】
300nm〜400nmの範囲内の紫外線に対して硬化性を有する放射線硬化性樹脂材料としては、アクリル単量体(A)、光重合開始剤(B)および離型剤(C)を含有するものが好ましい。
【0038】
アクリル単量体(A)としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択できるものであり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類が用いられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート。
1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタアエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート。
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリレート。
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
具体的な商品名としては、ビームセット371(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
これらアクリル単量体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
放射線硬化性樹脂材料中のアクリル単量体(A)の含有量は、85〜98質量%の範囲が好ましく、より好ましくは87.5〜96質量%の範囲であり、特に好ましくは90〜94質量%の範囲である。このアクリル単量体(A)の含有量が85質量%以上であれば、硬化後の樹脂材料を成形して用いる場合に充分に良好な物性が得られ、98質量%以下であれば、重合開始剤や離型剤等との混合により、硬化後の樹脂材料の物性調整が容易になる。
【0041】
光重合開始剤(B)としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が用いられる。
【0042】
光重合開始剤(B)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤:アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等。
ベンゾイン系光重合開始剤:ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等。
ベンゾフェノン系光重合開始剤:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等。
チオキサントン系光重合開始剤:チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等。
その他の光重合開始剤:α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等。
【0043】
放射線硬化性樹脂材料中の重合開始剤(B)の含有量は、アクリル単量体(A)の100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量部であり、特に好ましくは0.1〜5質量部である。重合開始剤(B)の含有量が0.001質量部以上であれば、アクリル単量体(A)を短時間に重合でき、10質量部以下であれば、重合開始剤(B)の残渣が硬化物中に残存しにくい。
【0044】
本発明では、上記レプリカモールド200(活性エネルギー線硬化性樹脂層200a)に、上述した硬化性樹脂材料を用いることで、製造されるマスター情報担体の転写パターンのサイズを微細化することができ、更なる磁気記録媒体の高記録密度化に対応したマスター情報担体を得ることが可能である。更に、このマスター情報担体の磁気転写性能を向上させることが可能である。
【0045】
すなわち、上記硬化性樹脂材料は、表面張力及び粘性が低く、また、磁性層を構成する材料に対して濡れ性が高いため、マザーモールド100の凹凸パターン101の内側に緻密に充填でき、また、内部に空隙を生じさせることがない。したがって、マザーモールド100の凹凸パターン101を反転させたポジの凹凸パターン、すなわちマスター情報担体の転写パターンに対応したポジの凹凸パターン201をレプリカモールド200に正確に転写することができる。また、上記硬化性樹脂材料は、硬化時の収縮率が低いため、微細構造である凹凸パターン201に歪みを与えることが少ない。
【0046】
以上のように、本発明によれば、磁気転写性能に優れたマスター情報担体をレプリカモールドとして安価に製造することが可能である。また、このようなマスター情報担体を用いることによって、磁気記録媒体の更なる生産性の向上を図ることが可能である。
【0047】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法は、上記マスター情報担体(レプリカモールド)の転写面と、磁気記録媒体の記録面とを重ね合わせた状態で、転写面とは反対側から外部磁界を印加することによって、転写面から磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する工程(磁気転写工程という。)を含む。
【0048】
具体的に、この磁気転写工程では、先ず、磁気記録媒体の記録面を初期磁化する。この初期磁化は、面内磁気記録媒体の場合は、トラック方向の一方向に初期直流磁界を印加することにより行い、垂直磁気記録媒体の場合は、媒体表面に対して垂直な方向の一方向に初期直流磁界を印加することにより行う。
【0049】
この初期直流磁界は、永久磁石や電磁石を用いて印加することが可能である。また、永久磁石としては、より安定で磁力の強いNdFeB系の焼結磁石を用いることが好ましい。また、初期直流磁界の印加は、磁気記録媒体と非接触の状態で行うことが、磁気記録媒体の表面の清浄性を維持する上で好ましい。
【0050】
次に、図2に示すように、初期直流磁界の印加を行った後の磁気記録媒体Wの記録面と、マスター情報担体Mの転写面とを接触させた状態で、互いを所定の押圧力で密着させる。そして、この状態で、マスター情報担体Mの転写面とは反対側から、磁界生成手段Gを用いて、この磁界生成手段Gを相対的にトラック方向Xに移動させながら転写用の外部磁界を印加する。この転写用の外部磁界は、上記初期直流磁界とは逆方向となる磁界である。これにより、磁気記録媒体Wでは、マスター情報担体Mの転写パターン201と対向する箇所で磁化反転が生じ、サーボ信号等に対応した磁化パターンが磁気転写により書き込まれることになる。
【0051】
磁界生成手段Gは、電磁石や永久磁石によって構成されるものであり、面内磁気記録媒体の場合は、トラック方向の他方向に転写用の外部磁界を発生させ、垂直磁気記録媒体の場合は、媒体表面に対して垂直な方向の他方向に転写用の外部磁界を発生させる。そして、この磁界生成手段Gは、磁気記録媒体Wの半径方向において同一方向の外部磁界を発生させながら、磁気記録媒体Wの中心にトラック方向Xに回転移動させることが可能となっている。なお、図2は、垂直磁気記録媒体に対して磁気転写を行った場合を例示している。
【0052】
ここで、ハードディスクドライブに内蔵される磁気記録媒体Wは、一般的に非磁性基板300の両面に磁気層301が形成されており、また、1台のハードディスクドライブには、複数枚の磁気記録媒体Wが内蔵される場合が多い。このため、ハードディスクドライブでは、複数の磁気ヘッドがスタック構造により一体で移動操作されるが、磁気記録媒体Wのトラック幅は益々狭くなっており、1つの磁気記録媒体Wの記録面に書き込まれたサーボ信号等を用いて、他の記録面における磁気ヘッドの位置決めを行うことはヘッドのスタック構造の精度からは困難となっている。
【0053】
したがって、本発明の磁気転写工程では、磁気記録媒体Wの両面に磁気転写によってサーボ信号等を書き込むことが好ましい。具体的には、磁気記録媒体Wの両面を一対のマスター情報担体Mで挟み込んだ状態とする。そして、この状態で、これらマスター情報担体Mの転写面とは反対側から、磁界生成手段Gを用いて転写用の外部磁界を印加する。これにより、磁気記録媒体Wの両面にサーボ信号等を書き込むことができる。
【0054】
なお、磁気記録媒体200の記録面200aに書き込む信号がプリサーボ信号の場合、プリサーボ信号はサーボ信号に比べてパターンの密度を下げることが可能となるため、磁気記録媒体200の片面のみに書き込めばよい場合があり、また1台のハードディスクドライブに複数枚の磁気記録媒体200が内蔵される場合、内蔵される1枚の磁気記録媒体の片面のみに書き込めばよい場合がある。
【0055】
また、磁性層301の保磁力Hcは、通常は320kA/m(約4000Oe)以上である。したがって、本発明の磁気転写工程では、この磁性層301を初期直流磁化した後、磁気記録媒体Wの両面をマスター情報担体Mで挟み込み、磁気転写できる強度の磁界をマスター情報担体Mを介して印加して磁気転写を行うことが好ましい。
【0056】
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法では、上記マスター情報担体Mを用いることによって、高記録密度化に対応した磁気記録媒体に対するサーボ信号等の書き込み作業を短時間で行うことが可能となる。また、1枚のマスター情報担体Mによって繰り返し転写できる合計の回数を飛躍的に高めることが可能となり、その結果、磁気記録媒体Wの生産コストを大幅に低減することが可能となる。
【0057】
(磁気記録媒体)
次に、本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を図3に示す。
この磁気記録媒体は、図3に示すように、非磁性基板31上に、スペーサ層32bにより反強磁性結合させた2層の軟磁性層32aを含む軟磁性下地層32と、配向制御層33と、垂直磁性層34と、保護層35と、潤滑剤膜36とを順次積層した構造を有している。
【0058】
また、垂直磁性層34は、下層の磁性層34aと、中層の磁性層34bと、上層の磁性層34cとの3層を含み、磁性層34aと磁性層34bの間で非磁性層37aを、磁性層34bと磁性層34cの間で非磁性層37bを挟み込むことで、これら磁性層34a〜34cと非磁性層37a,37bとが交互に積層された構造を有している。
【0059】
非磁性基板31としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよく、例えば、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタ法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
【0060】
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができ、アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
【0061】
非磁性基板31は、その平均表面粗さ(Ra)が1nm(10Å)以下、好ましくは0.5nm以下であるとことが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下。)であることが、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。また、端面のチャンファー部の面取り部と、側面部との少なくとも一方の表面平均粗さ(Ra)が10nm以下(より好ましくは9.5nm以下。)のものを用いることが、磁気ヘッドの飛行安定性にとって好ましい。なお、微少うねり(Wa)は、例えば、表面荒粗さ測定装置P−12(KLM−Tencor社製)を用い、測定範囲80μmでの表面平均粗さとして測定することができる。
【0062】
また、非磁性基板31は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層32と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板31と軟磁性下地層32の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(20Å)以上であることが好ましい。
【0063】
軟磁性層32a,32cとしては、Fe:Coを40:60〜70:30(原子比)の範囲で含む材料を用いることが好ましい。また、その透磁率や耐食性を高めるために、Ta、Nb、Zr、Crの中から選ばれる何れか1種を1〜8原子%の範囲で含有させることが好ましい。スペーサ層32bとしては、Ru、Re、Cu等を用いることができるが、この中で特にRuを用いることが好ましい。
【0064】
配向制御層33は、垂直磁性層34の結晶粒を微細化して、記録再生特性を改善するためのものである。この配向制御層33としては、特に限定されるものではないが、hcp構造、fcc構造、アモルファス構造を有するものを用いることが好ましい。特に、Ru系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金を用いることが好ましい。また、これらの合金を多層化してもよい。例えば、基板側からNi系合金とRu系合金との多層構造、Co系合金とRu系合金との多層構造、Pt系合金とRu系合金との多層構造を採用することが好ましい。
【0065】
ここで、配向制御層33直上の垂直磁性層34の初期部には、結晶成長の乱れが生じやすく、これがノイズの原因となる。この場合、配向制御層33と垂直磁性層34の間に非磁性下地層38を設けることが好ましい。この初期部の乱れた部分を非磁性下地層38で置き換えることで、ノイズの発生を抑制することができる。
【0066】
非磁性下地層38としては、Coを主成分とし、更に酸化物を含んだ材料からなるものを用いることが好ましい。Crの含有量は、25原子%以上、50原子%以下とすることが好ましい。酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましく、その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。酸化物の含有量としては、磁性粒子を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上、18mol%以下とすることが好ましい。
【0067】
磁性層34a,34b,34cとしては、Coを主成分とし、更に酸化物を含んだ材料を用いることが好ましく、この酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、下層の磁性層34aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
【0068】
磁性層34a,34b,34cに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14原子%、Pt含有量18原子%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などの組成物を挙げることができる。
【0069】
また、本発明では、上記垂直磁性層34を4層以上の磁性層で構成することも可能である。例えば、上記磁性層34a,34bに加えて、グラニュラー構造の磁性層を3層で構成し、その上に、酸化物を含まない磁性層34cを設けた構成とし、また、酸化物を含まない磁性層34cを2層構造として、磁性層34a,34bの上に設けた構成とすることができる。
【0070】
また、本発明では、垂直磁性層34を構成する3層以上の磁性層間に非磁性層37を設けることが好ましい。非磁性層37を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができる。その結果S/N比をより向上させることが可能である。
【0071】
保護層35は、垂直磁性層34の腐食を防ぐと共に、磁気ヘッドが磁気記録媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのものである。保護層35には、従来公知の材料を用いることができ、例えばC、SiO、ZrOなどを含むものを用いることが可能である。保護層35の厚みは、1〜10nmとすることが磁気ヘッドと磁気記録媒体の距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
【0072】
潤滑剤膜36としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を保護層35上に塗布することによって形成される。
【0073】
そして、上述した潤滑剤の塗布工程の後に、ワイピング工程、バーニッシュ工程、及び上記磁気転写工程が行われる。
【0074】
ワイピング工程は、例えば、布製のワイピングテープ等を用いて行われる。すなわち、このワイピング工程は、ワイピングテープを磁気記録媒体の表面に対して相対走行させつつ、ゴム製のコンタクトロール又はパッドによってワイピングテープの表面を磁気記録媒体の表面に押し当てることにより、媒体表面を軽く拭く工程である。このような処理を行うことにより、磁気記録媒体の表面に付着したスパッタダスト等が除去されるので、磁気ヘッドの浮上量をより小さくすることが可能となる。
【0075】
また、ワイピング工程に用いられるワイピングテープとしては、超極細繊維よりなる布帛を帯状にスリットしたワイピングテープや、超極細繊維マルチフィラメント糸の織編物などが用いられる。
【0076】
また、このようなワイピングテープを用いる磁気記録媒体のワイピング方法は、具体的には、磁気記録媒体を回転させつつ、この磁気記録媒体の磁性層側の面に、ワイピングテープの表面(拭き面)を押し当てることにより行われる。これにより、磁気記録媒体の表面に付着したスパッタダスト等が拭き取られ、媒体表面が清浄化される。
【0077】
ワイピングテープは、供給リールと巻取リールとの間に掛け渡されており、供給リールから順次供給され、巻取リールに順次巻き取られる。そして、この供給リール側から巻取リール側に走行する途中で、ワイピングテープの拭き面と反対側の面(裏面)がゴム等のバッキングロール又はフェルト等により押圧され、ワイピングテープの拭き面が磁気記録媒体の表面に押し当てられる。
【0078】
バーニッシュ工程は、磁気記録媒体の表面にある突起物を除去するため、研磨テープを用いてその表面を研磨する工程である。これにより、ハードディスクドライブでの磁気ヘッドの浮上量をより小さくし、また、上記磁気転写工程で磁気記録媒体とマスター情報担体との間に隙間が生じて転写パターンが不鮮明となり、マスター情報担体が損傷を受けることを防止することができる。
【0079】
このようなバーニッシュ工程は、例えば、アルミナ砥粒を塗布した研磨テープ等を用いて行われる。すなわち、このバーニッシュ工程は、研磨テープをゴム製のコンタクトロールを磁気記録媒体の表面に押し当てることにより、媒体表面を軽く研磨する工程である。このような処理を行うことにより、磁気記録媒体の表面にある異常突起等が除去される。
【0080】
バーニッシュ工程に用いられる研磨テープ(バーニッシュテープ)としては、通常ポリエステル製のベースフィルム上に研磨材層を形成してなるテープを使用する。そして、この研磨材層が磁気記録媒体の表面と接触して摺動することによって、媒体表面に付着した微小な塵埃が除去されると共に、その媒体表面に存在する異常突起等が研磨・除去されて、その媒体表面が平滑化される。
【0081】
研磨材としては、平均粒子径が0.05μm〜50μm程度の、酸化クロム、α−アルミナ、炭化珪素、非磁性酸化鉄、ダイヤモンド、γ−アルミナ、α,γ−アルミナ、熔融アルミナ、コランダム、人造ダイヤモンド等が用いられる。
【0082】
また、このようなバーニッシュ加工は、磁気記録媒体を回転させつつ、この磁気記録媒体の表面に、研磨テープの砥粒面を押し当てることにより行われる。これにより、磁気記録媒体の表面にある突起が研磨除去され、その媒体表面が平滑化される。ここで、研磨テープは、供給リールと巻取リールとの間に掛け渡されており、供給リールから順次供給され、巻取リールに順次巻き取られる。そして、この供給リール側から巻取リール側に走行する途中で、研磨テープの砥粒面と反対側の面(裏面)がゴム等のバッキングロール又はフェルト等により押圧され、研磨テープの研磨面が磁気記録媒体の表面に押し当てられる。
【0083】
上記磁気転写工程の後は、得られた磁気記録媒体に対してグライド検査が行われる。グライド検査とは、磁気記録媒体の表面に突起物が無いかどうか検査する工程である。すなわち、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体に対して記録再生を行う際に、磁気記録媒体の表面に浮上量(媒体と磁気ヘッドの間隔)以上の高さの突起があると、磁気ヘッドが突起に衝突して磁気ヘッドが損傷したり、磁気記録媒体に欠陥が発生したりする原因となる。グライド検査では、そのような高い突起の有無を検査する。
【0084】
グライド検査をパスした磁気記録媒体には、通常ではサーティファイ検査が実施される。サーティファイ検査とは、通常のハードディスクドライブの記録再生と同様に、磁気記録媒体に対して磁気ヘッドで所定の信号を記録した後、その信号を再生し、得られた再生信号によって磁気記録媒体の記録不能を検出し、磁気記録媒体の電気特性や欠陥の有無など媒体の品質を確かめるものである。
【0085】
本発明を適用して製造された磁気記録媒体は、サーボ信号等が既に書き込まれているため、従来の方式でのサーティファイ検査とは異なる。すなわち、本発明を適用して製造された磁気記録媒体では、この磁気記録媒体に磁気転写されたサーボ信号等を用いて、磁気ヘッドを特定箇所に位置づけして読み書きを行う形式の検査を行う。
【0086】
(磁気記録再生装置)
次に、本発明を適用して製造された磁気記録媒体を備える磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)の一例を図4に示す。
この磁気記録再生装置は、上記図3に示す本発明を適用して製造された磁気記録媒体70と、磁気記録媒体70を回転駆動させる媒体駆動部71と、磁気記録媒体70に情報を記録再生する磁気ヘッド72と、この磁気ヘッド72を磁気記録媒体70に対して相対運動させるヘッド駆動部73と、記録再生信号処理系74とを備えている。また、記録再生信号処理系74は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド72に送り、磁気ヘッド72からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、この磁気記録再生装置が備える磁気ヘッド72には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
【0087】
上記磁気記録再生装置によれば、上記磁気記録媒体70に、本発明を適用して製造された高記録密度、高速書き込み、優れた電磁変換特性の磁気記録媒体70を採用することで、優れたハードディスクドライブとすることが可能である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0089】
(活性エネルギー線硬化性樹脂材料の調製)
本実施例では、先ず、ビームセット371(荒川化学工業社製)を80質量部、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の25質量%アセトン溶液を6.0質量部、メガファックR−30(DIC株式会社製)を3質量部、残部は酢酸エチル(希釈溶剤)として、紫外線硬化性の樹脂材料の溶液を調製した。また、この硬化性樹脂材料の粘度は、57mPa・sであり、硬化後の硬化物は、波長365nmの透過率が65%、温度25℃における引張弾性率が0.03GPaであった。
【0090】
(レプリカモールドの製造)
次に、厚さ0.3mm、内径16mm、外径63.5mmのニッケル電鋳製のドーナツ盤の表面に、サーボパターンのネガパターンを形成したスタンパを用意し、このマスターモールドの転写面を下にしてスタンパ装置に取り付けた。なお、サーボパターンは、トラック幅を60nm、トラック間隔を80nm、セクタ数を255/周とした。一方、上記硬化性樹脂材料の溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、厚さ50μm)の上に塗布した後、希釈溶剤を揮発させて、厚さ30μmの紫外線硬化性樹脂材料の層を形成した。そして、この硬化性樹脂材料の層に上記マスターモールドの転写面を圧力30MPaで10秒間押し付け、この状態のまま、照度が30mW/cmに設定された紫外線照射装置(波長365nmのLEDランプ)により紫外線を20秒間照射して、硬化性樹脂材料を硬化させた。硬化後は、紫外線の照射を停止し、マスターモールドを離間させた。これにより、硬化性樹脂材料の層にサーボパターンが転写されたレプリカモールドを得た。
【0091】
(マスター情報担体の製造)
次に、上記レプリカモールドのサーボパターンが転写された面上に、DCスパッタリング法を用いて、Ru層(層厚20nm)と、74Co−6Cr−18Pt−2SiOからなる磁性層(層厚15nm)、カーボン層(層厚10nm)とを順に形成し、その上に、潤滑剤を塗布してマスター情報担体を得た。そして、得られたマスター情報担体について、転写パターンの不良箇所を調べたところ、不良箇所は認められなかった。
【符号の説明】
【0092】
31…非磁性基板 32…軟磁性下地層 32a…軟磁性層 32b…スペーサ層 33…配向制御層 34…垂直磁性層 34a,34b,34c…磁性層 35…保護層 36…潤滑剤膜 37a,37b…非磁性層 38…非磁性下地層 70…磁気記録媒体 71…媒体駆動部 72…磁気ヘッド 73…ヘッド駆動部 74…記録再生信号処理系 100…マザーモールド 101…凹凸パターン 200…レプリカモールド 200a…活性エネルギー線硬化性樹脂層 201…凹凸パターン 202…磁性層 300…非磁性基板 301…磁性層 M…マスター情報担体 W…磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報信号に対応する転写パターンが形成された転写面を有して、磁気記録媒体の記録面に前記転写面を重ね合わせた状態で、前記転写面とは反対側から外部磁界を印加することによって、前記転写面から前記磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する際に用いられるマスター情報担体の製造方法であって、
前記転写パターンに対応したネガの凹凸パターンが形成されたマザーモールドを得る工程と、
前記マザーモールドを用いて前記転写パターンに対応したポジの凹凸パターンが転写されたレプリカモールドを得る工程と、
前記レプリカモールドの凹凸パターンが形成された面上を覆う磁性層を形成する工程とを含むことを特徴とするマスター情報担体の製造方法。
【請求項2】
前記レプリカモールドとして、活性エネルギー線によって硬化する樹脂材料を用い、
前記レプリカモールドに前記凹凸パターンを転写する際は、前記マザーモールドの凹凸パターンが形成された面を流動状態の前記樹脂材料に押し当てる工程と、
前記樹脂材料に活性エネルギーを加えて、この樹脂材料を硬化させたレプリカモールドを形成する工程と、
前記マザーモールドと前記レプリカモールドとを分離する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のマスター情報担体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂材料の粘度が10Pa・s以下であることを特徴とする請求項2に記載のマスター情報担体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料が、(メタ)アクリル基、オキセタニル基、シクロヘキセンオキサイド基、ビニルエーテル基の中から選ばれる何れか1種以上の反応基を有する樹脂材料であることを特徴とする請求項2又は3に記載のマスター情報担体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法により製造されたマスター情報担体の転写面と、磁気記録媒体の記録面とを重ね合わせた後、前記マスター情報担体の転写面とは反対側から外部磁界を印加しながら、前記マスター情報担体の転写面から前記磁気記録媒体の記録面へと情報信号を磁気転写する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−99168(P2012−99168A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244047(P2010−244047)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)