説明

マスト取付金具

【課題】支持剛性を高め,着雪等によってアンテナが傾くことを防止する。
【解決手段】マスト取付金具10は,支持杆7に対して取付ボルト70を使ってアンテナエレメント6aの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で回動自在に固着して取り付けるように構成されている。特に水平偏波の電波を受信するために,前記アンテナエレメント6aを水平方向に配設する場合は,前記マスト取付金具10の内側に湾曲した凹部に前記支持杆7の一方側の側面を受け入れると共に,当該マスト取付金具10と一体的に形成された止着部55B(55C)を,前記支持杆7の他方側の上側側面に沿うように被せつけた状態で,前記取付ボルト70とナット71の螺合を使って,前記支持杆7を挟み込むようにして挟持緊締することで,アンテナに積もった雪による積雪荷重や,風が吹き付けることで発生する風圧荷重による負荷を,前記取付ボルトと前記止着部とで分散して受け止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,支持杆の上方にブームを止着するように構成された屋外用のアンテナを,取り付け対象であるマストに取付けるためのマスト取付金具に関し,詳しくは,前記支持杆に対して,取付ボルトを使ってアンテナのエレメントの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で回動自在に固着して取り付けるように構成されたマスト取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテレビ放送受信用アンテナとして一般的な,長尺のアンテナアーム(本発明の実施例のブームに相当)14と,当該アンテナアーム14に配列された複数のアンテナ素子14Aから構成されるアンテナ11において,当該アンテナ11を取付け対象物であるマスト12に取付ける方法の一例として,アンテナアーム14の中間部に略U字状のアンテナ補助アーム(本発明の実施例の支持杆に相当)15を取付けることで,アンテナアーム14と当該アンテナ補助アーム15の端部を取付具16を介して支持すると共に,前記アンテナ補助アーム15に具備されたマスト取付金具13を使ってアンテナ11を支持した前記アンテナ補助アーム15を,前記マスト12に取付ける構造のものが知られている。
【0003】
更に言えば,前記アンテナ11を使って,例えばテレビ放送電波のような,水平偏波若しくは垂直偏波の何れか一方の偏波を使って放射される電波を受信することを考えると,当該電波を受信するアンテナ11は,簡単な操作で,水平偏波による電波にも垂直偏波による電波にも対応できるように構成されていることが望ましい。このような両偏波で放射される電波の受信に前記アンテナ11を対応させるには,当該アンテナ11の設置時に,受信する電波の偏波に応じて,当該アンテナ11の取付方向を機械的に変える方式が,安価に構成でき,且つ,簡単に取り付けができる。その為,一般的には,前記アンテナ11を支持している前記アンテナ補助アーム15に具備された前記マスト取付金具13が,当該アンテナ11の取付方向を適切に切換えることができる機構を備えるように構成されている。
【0004】
ところで,このような機構を備えた前記マスト取付金具13であっても,前記アンテナ補助アーム15を含む前記アンテナ11の自重が全て加わった状態でも耐え得るように構成されていなければならない。更に言えば,前記マスト取付金具13は,風が吹き付けることで発生する風圧や,降雪によってアンテナ11に着雪した雪の自重が加わっても,アンテナ11が傾いてしまわないように,設置時の状態を維持する強固さが必要とされる。特に,前記アンテナ11が水平偏波を受信するようマスト12に取り付けられており,しかもその設置場所が,降雪量の多い豪雪地帯に設置されている場合でも,アンテナ11の上に繰り返し積もる大量の雪の荷重に耐えるようにしなければならない。しかしながら,周知技術として知られている,本願における説明図の図5(b)によって示された構成のマスト取付金具13では,アンテナ11の上に積もった雪の積雪荷重によって,前記取付ボルト21が徐々に曲がってしまって前記アンテナ11が大きく傾き,その結果,受信性能を大きく損なうことがあった。
【0005】
そこで,前記従来技術では,前記マスト取付金具13に対して前記アンテナ補助アーム15を挟んでアンテナ取付補助具1を設けるように構成しておいて,前記アンテナ取付補助具1は,前記マスト取付金具13に取付ボルト21を用いてねじ止めされると共に,前記マスト取付金具13に連結されている部分を有するように構成して,特に水平偏波を受信する状態における支持剛性を高めたアンテナ補助アーム15の取付構造が提案されている。
(例えば,特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−034993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,前記従来技術のマスト取付金具13では,新たに追加したアンテナ取付補助具1の存在によって,前記マスト取付金具13の支持剛性が高くなるものの,部品点数が増えてコストが高くなると言った問題があった。また,部品点数の増加は,アンテナ11の自重を増加させることになるから,前記マスト取付金具13とマスト12との固着強度を見直したり,マスト12に加わる荷重の増加に耐え得るように,アンテナ11の設置工事の見直しを行ったりする必要が有った。
【0008】
加えて,前記アンテナ取付補助具1は,断面L字形状の本体部1Aの長手方向の両側に設けられた断面逆U字形状の係止部1Bを,マスト取付金具13を構成する第1の部材18の端縁部18Bcに係止させるようにして,前記取付ボルト21を用いてねじ止めする必要があることから,製品の組み立て工数アップし,延いては製品コストが高くなると言った問題も有った。
【0009】
更に,少なくとも前記アンテナ取付補助具1は,前記アンテナ補助アーム15を受け入れ添え付けるための前記本体部1Aの断面がL字形状となるように形成したことによって,取付ボルト21に螺号した蝶ねじ22が,L字形状の本体部1Aの外面側に形成される平面に当接するため,取付ボルト21によるねじ止め効果が期待できるものの,アンテナの取付方向を変える場合,取付ボルトを大きく緩めないと変更できないと言った問題点があった。
【0010】
そこで本願は,上記のような問題点を解決するためになされたものであり,
その目的は,特にアンテナが水平偏波を受信するようにマストに取り付けられていて,しかもその設置場所が,降雪量の多い豪雪地帯に設置される場合でも,アンテナに積もる大量の雪の荷重や吹き付ける風による風圧等によって加わる負荷に対して,簡単な構成であっても,傾くことなく耐える支持剛性の高いマスト取付金具を提供することにある。
他の目的は,支持剛性の高い構成であっても,アンテナの設置の際に,水平偏波受信若しくは垂直偏波受信に応じて,アンテナの取付方向を簡単な操作によって適切に切換えることができるマスト取付金具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,複数のアンテナエレメントを具備するアンテナブームを,横臥させた状態で下方から支持するようにした略U字形状の断面略円形の支持杆に備えられ,当該支持杆をマストに対して取り付けることができるように構成されたマスト取付用の金具であって,前記支持杆に対して,取付ボルトを使って前記アンテナエレメントの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で回動自在に固着して取り付けるように構成されたマスト取付基体と,当該マスト取付基体との間に前記マストを受け入れ,当該マストに当て付けるマスト当付金具と,前記マスト取付基体に備えられ,当該マスト取付基体と前記マスト当付金具とを,前記マストを挟んだ状態でナットの螺合を使って挟持緊締するU字ボルトと,からなるマスト取付金具において,
前記マスト取付基体は,内側には前記支持杆の外周面に重合しないように形成され,前記支持杆の一方側の側面を受け入れる凹部を有した受入部を備えると共に,外側には前記マストに向かうように設けられ,当該マストに添え付けるように形成された一対の添付部と,前記受入部の中間位置にあって前記マストとは重合しないように設けられ,前記U字ボルトの元部を回動自在に収納する収容部と,を備えてなる基体と,前記基体の両側に延設され,内側に前記支持杆を受け入れ回動自在に固着するように形成された部材であって,前記支持杆の外周面に対応する凹部を有するように形成され,当該支持杆の一方側の側面を開口部から前記凹部に受け入れる当接部と,当該当接部の前記凹部の形成方向における一方側の開口端部から突出するように連設され,当該支持杆の他方側の側面の一部に沿うように形成された止着部と,前記当接部に設けられた孔であって,前記凹部の形成方向に長手方向を有するように形成され,前記取付ボルトを挿通すると共に,前記支持杆の配設方向の変更に伴う前記取付ボルトの回動を自在とするように構成された長孔と,前記止着部の先端面から前記長孔に向けて,前記長孔の長手方向の軸線と略一致する軸線を有するように設けられ,前記取付ボルトの回動に伴って当該ボルトの端部を挿抜自在に係合する大きさに形成された切欠部と,前記止着部の先端面部分から外方向に向けて突設した係止片と,を備えてなる支持杆取付体と,から構成した。
【0012】
請求項2の発明は,請求項1に記載のマスト取付金具において,前記止着部は,前記当接部の上側の開口端部から前記支持杆側に向かって突出するように連設され,前記開口端部から前記係止片までの範囲内で続く平面を有する板体からなり,しかも,当該板体は前記支持杆の他方側の上側側面に沿うよう水平方向より下方に向けて前記平面を傾斜させた状態に形成されており,前記支持杆に対して,前記アンテナエレメントの配設方向が水平方向を向くように取り付けた状態において,前記当付部と前記止着部とで前記支持杆を挟み込むようにして,前記取付ボルトを使って挟持緊締するように構成した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のマスト取付金具は,複数のアンテナエレメントを具備するアンテナブームを,横臥させた状態で下方から支持するようにした略U字形状の断面略円形の支持杆に備えられ,当該支持杆をマストに対して取り付けることができるように構成されたマスト取付用の金具であって,前記支持杆に対して,取付ボルトを使って前記アンテナエレメントの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で回動自在に固着して取り付けるように構成されたマスト取付基体と,当該マスト取付基体との間に前記マストを受け入れ,当該マストに当て付けるマスト当付金具と,前記マスト取付基体に備えられ,当該マスト取付基体と前記マスト当付金具とを,前記マストを挟んだ状態でナットの螺合を使って挟持緊締するU字ボルトと,からなるマスト取付金具において,
前記マスト取付基体は,内側には前記支持杆の外周面に重合しないように形成され,前記支持杆の一方側の側面を受け入れる凹部を有した受入部を備えると共に,外側には前記マストに向かうように設けられ,当該マストに添え付けるように形成された一対の添付部と,前記受入部の中間位置にあって前記マストとは重合しないように設けられ,前記U字ボルトの元部を回動自在に収納する収容部と,を備えてなる基体と,前記基体の両側に延設され,内側に前記支持杆を受け入れ回動自在に固着するように形成された部材であって,前記支持杆の外周面に対応する凹部を有するように形成され,当該支持杆の一方側の側面を開口部から前記凹部に受け入れる当接部と,当該当接部の前記凹部の形成方向における一方側の開口端部から突出するように連設され,当該支持杆の他方側の側面の一部に沿うように形成された止着部と,前記当接部に設けられた孔であって,前記凹部の形成方向に長手方向を有するように形成され,前記取付ボルトを挿通すると共に,前記支持杆の配設方向の変更に伴う前記取付ボルトの回動を自在とするように構成された長孔と,前記止着部の先端面から前記長孔に向けて,前記長孔の長手方向の軸線と略一致する軸線を有するように設けられ,前記取付ボルトの回動に伴って当該ボルトの端部を挿抜自在に係合する大きさに形成された切欠部と,前記止着部の先端面部分から外方向に向けて突設した係止片と,を備えてなる支持杆取付体と,から構成されている。
【0014】
つまり,前記マスト取付金具は,その内側に形成された凹部に前記支持杆の一方側の側面を受け入れると共に,前記マスト取付金具に備えられた止着部を,前記支持杆の他方側の側面の一部に被せつけた状態で,前記支持杆を挟み込むようにして前記取付ボルトで固定保持するように構成されている。従って請求項1の発明によれば,前記支持杆(言い換えれば,アンテナ)に,積雪荷重や風圧荷重による負荷が加わったとしても,これらの力は前記取付ボルトだけではなく,前記止着部においても受け止め支えることができるから,前記取付ボルトだけに負荷が集中して,当該取付ボルトが曲がってしまうことが防げるので,アンテナが大きく傾いて受信性能を劣化させることの無いマスト取付金具を提供できる。
【0015】
しかも,前記止着部はマスト取付金具と一体的に形成されているため,当該マスト取付金具本体自体も,前記支持杆の保持状態を維持する役目を担わすことができるので,従来技術のように補強のための余分な部材を備えたり,当該部材を組み付けたりする手間が省けることから,コストが安価で且つ取扱性の優れたマスト取付金具を提供できる。
【0016】
更に,アンテナの配設方向の変更に当たっては,前記取付ボルトの緊締状態を,少なくとも前記係止片を乗り越えるほどに緩めるだけで行うことができ,従来技術のように大きく緩める必要が無いので,良好な利便性を有したマスト取付金具を提供できる。
【0017】
また望ましくは,請求項2の発明のように,請求項1に記載のマスト取付金具において,前記止着部は,前記当接部の上側の開口端部から前記支持杆側に向かって突出するように連設され,前記開口端部から前記係止片までの範囲内で続く平面を有する板体からなり,しかも,当該板体は前記支持杆の他方側の上側側面に沿うよう水平方向より下方に向けて前記平面を傾斜させた状態に形成されており,前記支持杆に対して,前記アンテナエレメントの配設方向が水平方向を向くように取り付けた状態において,前記当付部と前記止着部とで前記支持杆を挟み込むようにして,前記取付ボルトを使って挟持緊締するように構成されているのが良い。
【0018】
つまり,前記マスト取付金具は,その内側に形成された凹部に前記支持杆の一方側の側面を受け入れると共に,前記マスト取付金具と一体的に形成された前記止着部を,前記支持杆の他方側の上側側面に被せつけた状態で,前記当付部と前記止着部とで前記支持杆を挟み込むようにして,前記取付ボルトでもって挟持緊締することができる。従って請求項2の発明によれば,特にアンテナが水平偏波を受信するようにマストに取り付けられていて,しかもその設置場所が,降雪量の多い豪雪地帯に設置される場合において,アンテナに積もる大量の雪の積雪荷重や吹き付ける風による風圧荷重等によって発生する負荷が,前記支持杆に加わったとしても,これらの力は前記取付ボルトと当該取付ボルトの端部が係合されている前記止着部(即ち,マスト取付金具)とで分散して受け止め支えることができるから,アンテナに加わるストレスによって,前記取付ボルトが曲がってしまってアンテナが大きく傾き,受信性能が劣化することを防げる。
【0019】
しかも,請求項2の発明は,水平方向より下方に向くように形成された前記止着部が,前記支持杆の他方側の上側側面において沿うように被せつけた状態に配設されていることから,仮に,前記アンテナに対して前記止着部が撓むような大きな力が加わったとしても,当該止着部が前記支持杆7を巻き込む向きに撓んで負荷を吸収するため,前記取付ボルトに負荷が集中して当該取付ボルトが曲がってしまうことを防止でき,前記支持杆7の配設方向の大きな変化を起こすことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明のマスト取付金具を備えたアンテナの設置状態を示す斜視図。
【図2】本願発明のマスト取付金具を説明するための分解斜視図である。
【図3】本願発明のマスト取付金具を構成するマスト取付基体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は(a)の右側面図,(c)は正面図,(d)は(c)の右側面図,(e)は(c)におけるA−A´線から見た断面図,(f)は(c)におけるB−B´線から見た断面図,(g)は支持杆を装着した状態を示す右側面図である。
【図4】本願発明のマスト取付金具と支持杆の装着状態を説明するための要部拡大図であり,(a)は水平偏波受信の場合,(b)は垂直偏波受信の場合である。
【図5】アンテナに雪が着雪した場合における本願発明のマスト取付金具と周知技術のマスト取付金具を比較するための要部拡大図であり,(a)本願発明のマスト取付金具の場合,(b)周知技術のマスト取付金具の場合である。
【図6】本願発明のマスト取付金具の異なる実施形態を説明するための要部拡大図であり,(a)は水平偏波受信の場合,(b)は垂直偏波受信の場合である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
以下,本発明の実施形態に係るマスト取付金具の使用例について図面1を基に説明する。図1は本願発明のマスト取付金具を備えたアンテナを説明するための斜視図である。この図1において,10は本願発明の実施形態に係るマスト取付金具であり,100は例えばUHF帯の電波の送受信に利用されるアンテナを示している。
【0022】
この図において2は,周知のようにアルミニウム或いは塑性変形可能な硬質材等によって形成された中空のブームを示しており,一般的には建物等の上に設置されたアンテナマスト3の上方に装着され,電波到来方向に向けて配置される。
ブーム2の軸線方向においては,図1に示されるように導波器6,放射器5,反射器4が高周波的に適切な間隔を隔てた位置に周知に手段で備えられている。
前記導波器6が設けられているブーム2にあっては,夫々ブーム2の軸線に対して直交する方向に向けて適切な間隔を隔てて,当該導波器6を構成するアンテナエレメント6aが貫通するように形成された2個一対の貫通孔が複数個所に備えられており,当該貫通孔において前記アンテナ素子6aがブーム2に対して固着されている。
【0023】
このように構成されたアンテナ100において,ブーム2の軸線方向の長さが長い場合,当該アンテナ100をアンテナマスト3に取付ける方法の一例として,図1に示されているように,ブーム2の中間部に略U字状の断面略円形の支持杆7を取付けることでアンテナ100を支持すると共に,当該支持杆7に具備されたマスト取付金具10を使ってアンテナマスト3に取付ける構造のものが知られている。
尚,前記アンテナ100のブーム2と支持杆7との取り付けは,当該支持杆7の立上部7aの上端に添え付けられ連結具7bによって行なわれる。
【0024】
次に図2及び図3を用いて前記マスト取付金具10について説明する。これらの図において,図2は,本願発明のマスト取付金具10を説明するために分解した斜視図である。図3は,本願発明のマスト取付金具10を構成するマスト取付基体50を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は(a)の右側面図,(c)は正面図,(d)は(c)の右側面図,(e)は(c)におけるA−A´線から見た断面図,(f)は(c)におけるB−B´線から見た断面図,(g)は支持杆を装着した状態を示す一部を断面にした右側面図である。尚,以下の説明で方向を記す場合は,特に明示しないかぎり図4で示された状態を基準とし,図4における上が上方若しくは上側であり,図4における下が下方若しくは下側である。また,図4における上下方向が垂直方向であり,図4における左右方向が水平方向である。
【0025】
本願発明のマスト取付金具10は,例えば金属材等を成型したものであり,図2に示されているように,内側に湾曲状に形成された凹部に受け入れた前記支持杆7に対して,取付ボルト70(以下,特に明示した場合を除いて蝶ナット71を含む)を使って,前記アンテナエレメント6aの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で(言い換えれば,前記支持杆7の立上部7aの配設方向を垂直方向から水平方向の範囲で)回動自在に固着して取り付けるように構成されたマスト取付基体50と,当該マスト取付基体50との間に前記アンテナマスト3を受け入れ,当該アンテナマスト3に当て付けるように構成されたマスト当付金具30と,前記マスト取付基体50に備えられ,当該マスト取付基体50と前記マスト当付金具30とを,前記アンテナマスト3を挟んだ状態でナット41の螺合を使って挟持緊締するU字ボルト40(以下,特に明示した場合を除いて蝶ナット41を含む)と,から構成されている。
【0026】
ここで前記アンテナ取付基体50について説明する。前記アンテナ取付基体50は,中間位置に備えられた部材であって,内側には湾曲状に形成された凹部に前記支持杆7を受け入れると共に,外側には当該アンテナ取付基体50(延いては,マスト取付金具10)を前記アンテナマスト3に着脱自在に固着する前記U字ボルト40を保持するように形成された基体50Aと,当該基体50Aの両側に一体的に延設され,湾曲状に形成された凹部の内側に前記支持杆7を受け入れ回動自在に固着するように形成された支持杆取付体50B・50Cと,から構成されている。
【0027】
更に詳しく説明すれば,前記基体50Aは,内側に前記支持杆7を受け入れる凹部であって,当該支持杆7の外周面に重合しないよう湾曲状に形成された受入部51Aを備えると共に,外側には前記アンテナマスト3に向かうように設けられ,当該アンテナマスト3に添え付けるための鋸歯部52aが形成され,前記受入部51Aの上下に位置するように設けられた一対の添付部52Aと,前記受入部51Aの上下方向の中間位置にあって,前記アンテナマスト3とは重合しないように設けられ,前記U字ボルト40の元部42を,前記支持杆7の軸線に平行な軸線を回転軸として回動自在となるように収納保持する収容部53Aと,を備えるように構成されている。
【0028】
次に前記支持杆取付体50B・50Cについて説明する。尚,支持杆取付体50B・50Cは,同じ構成のものが前記基体50Aを挟んで左右対称となるように配設されているため,以下の説明では主に一方の前記支持杆取付体50Bを用いて説明する。前記支持杆取付体50B(50C)は,内側に前記支持杆7を受け入れ回動自在に固着するように形成された部材であって,前記支持杆7の外周面に対応する凹部を有するように形成され,当該支持杆7の一方側の側面を開口部54b(54c)から受け入れる当接部54B(54C)と,前記当接部54B(54C)の前記凹部の形成方向における一方側の開口端部から突出するように一体的に連設された止着部55B(55C)を備える。
【0029】
更に加えて,前記当接部54B(54C)に設けられた孔であって,前記凹部の形成方向に長手方向を有するように形成され,前記取付ボルト70の軸部73を挿通すると共に,前記支持杆7の立上部7aの配設方向(垂直方向から水平方向の範囲)の変更に伴う前記取付ボルト70の回動を自在とするように構成された長孔56B(56C)と,前記止着部55B(55C)の先端面55b(55c)から前記長孔56B(56C)に向けて,当該長孔56B(56C)の長手方向の軸線と略一致する軸線を有するように設けられ,前記取付ボルト70の回動に伴って当該取付ボルト70の軸端部を挿抜自在に係合する大きさに形成された切欠部58B(58C)と,前記止着部55B(55C)の先端面55b(55c)部分から外方向に設けた止片であって,前記切欠部58B(58C)に挿着された状態の,前記取付ボルト70の軸端部に螺合する蝶ナット71を係り止めるように突設した係止片57B(57C)と,を備えるように構成されている。
【0030】
尚,本願発明の実施形態に係る前記止着部55B(55C)は,図に示されているように,前記当接部54B(54C)の開口部54b(54c)における上側開口端部54ba(54ca)から前記支持杆7側に向かって突出するように連設されており,前記係止片57B(57C)から前記上側開口端部54ba(54ca)までの範囲内で続く平面を有する板体59B(59C)で構成されている。しかも,前記板体59B(59C)は,当該板体59B(59C)と前記当接部54B(54C)の下側開口端部54bb(54cc)との間で,前記前記支持杆7を受け入れる程の幅を有するように,前記平面が水平方向Hより下方Rに向けて傾斜させ,前記支持杆7の他方側の上側側面に沿わせる配置となっている[図3(g)参照]。
【0031】
また,本願発明の実施形態では,前記長孔56B(56C)の側辺部に形成され,前記支持杆取付体50B(50C)の外方向に向かうように突出した堤状突起56b(56c)が形成されている。この堤状突起56b(56c)は,前記長孔56B(56C)に挿着された状態の,前記取付ボルト70のネジ頭72を係り止めるように設けられたものであり,前記係止片57B(57C)の存在と合わせ,前記取付ボルト70の緊締によって,前記支持杆7と本願発明のアンテナ取付基体50との固着状態(水平方向及び垂直方向)を確実に維持させることができる。
【0032】
このように,本発明の実施形態に係る前記止着部55B(55C)は,少なくとも平面を有した前記板体59B(59C)と,当該板体59B(59C)の先端面55b(55c)から形成された前記切欠部58B(58C)と,前記板体59B(59C)の先端面55b(55c)付近に形成された前記係止片57B(57C)と,から構成されている。
【0033】
次に,前記マスト当付金具30は,金属材等の板体を,一方を開口するように形成した箱体からなり,前記アンテナ取付基体50に具備された一対の添付部52Aと対向するとように突出させた一対の当付片32が形成されている。また,前記マスト取付金具30の底部には孔33,34が形成されており,前記Uボルト40の自由端43が挿通される。取り付けに当たっては,当該前記マスト当付金具30の当付片32と前記マスト取付基体50の添付部52Aとを,前記アンテナマスト3を挟んだ状態でナット41の螺合を使って前記U字ボルト40で挟持緊締することで行なわれ,前記マスト取付金具10は前記アンテナマスト3に固着される。
【0034】
次に,前記マスト取付金具10の使用方法についいて図4を用いて説明する。図4は本願発明のマスト取付金具10と支持杆7の装着状態を説明するための要部拡大図であり,(a)は水平偏波受信の場合,(b)は垂直偏波受信の場合である。尚,図4において破線で示されたブーム2と,アンテナエレメント6aは,前記アンテナ100の存在を模式的に示したものであり,当該アンテナ100に具備された前記アンテナエレメント6aの配設方向を示すために表示したものである。
【0035】
始めに,本願発明のマスト取付金具10と前記支持杆7との取り付けについて説明する。これらの各部材の取り付けに当たっては,少なくとも前記マスト取付金具10に形成された前記長孔56B(56C)と,前記支持杆7を貫通するように形成された連結孔7cと,がそれぞれ対向するように配設する。その状態で前記取付ボルト70を,前記長孔56B(56C)側から前記支持杆7の連結孔7cに対して挿通する。そして,挿通が完了したなら,前記取付ボルト70が前記連結孔7cにおいて軸線方向に遊挿自在となるように,当該取付ボルト70の軸部73に形成された雄ネジの先端部に蝶ナット71を緩やかに取り付けておく。
【0036】
前記蝶ナット71の取り付けが終わったなら,前記支持杆7の配設方向の設定を行なう。水平偏波の電波を受信する場合,図4(a)に示されているように,前記支持杆7の立上部7aの配設方向が垂直(図4の上下方向。これに伴いアンテナエレメント6aは水平方向に配設される)になるまで,前記支持杆7を前記マスト取付金具10に沿うように回動させる。この時,本願発明の実施形態では,前記取付ボルト70の軸部73が,前記当接部54B(54C)に形成された前記長孔56B(56C)の下側に位置する内周面に当接するように,また,前記蝶ナット71が挿着された前記取付ボルト70の軸部73の端部が,前記止着部55B(55C)に形成された前記切欠部58B(58C)における図4の上側に位置する内周面に当接するように前記支持杆7を回動させれば,前記支持杆7の立上部7aは垂直方向(アンテナエレメント6aは水平方向)に配設できるように構成してある。そして,このように前記支持杆7を垂直方向に配設した状態で前記蝶ナット71を前記取付ボルト70に緊締することによって前記支持杆7(即ち,アンテナ100)は固定保持される。
【0037】
この状態では,前記蝶ナット71は前記止着部55B(55C)の前記板体59B(59C)の平面と当接した状態で締め付けられるので,前記蝶ナット71の緊締状態を確りと保持することができる。また,例え前記蝶ナット71による緊締が僅かに緩んだとしても,前記長孔56B(56C)の内周面と前記切欠部58B(58C)の内周面の存在によって,前記支持杆7の図における左方向への回動は無い。また,前記取付ボルト70の端部に対応する前記と前記取付ボルト70のネジ頭の対応する前記堤状突起56b(56c)の存在によって,前記支持杆7の図における右側への回動は制限を受けるため,前記支持杆7の配設方向が大きく変位することは無い。
【0038】
次に,垂直偏波の電波を受信する場合について図4(b)を用いて説明する。図4(b)に示されているように,前記支持杆7の立上部7aの配設方向が水平(図4の左右方向。これに伴いアンテナエレメント6aは垂直方向に配設される)になるまで,前記支持杆7を前記マスト取付金具10に沿うように回動させる。この時,本願発明の実施形態では,前記取付ボルト70の軸部73が,前記当接部54B(54C)に形成された前記長孔56B(56C)の上側に位置する内周面に当接するまで回動させれば,前記支持杆7の立上部7aは水平方向(言い換えれば,前記マスト取付金具10が取り付けられた前記アンテナマスト3と垂直)に配設できるように構成してある。そして,所定位置に固定された状態で前記蝶ナット71を緊締することによって前記支持杆7(即ち,アンテナ100)は固定保持される。
【0039】
この状態で,例え前記蝶ナット71による緊締が僅かに緩んだとしても,前記取付ボルト70の軸端73が前記長孔56B(56C)の上側に位置する内周面に当接するので,図の右方向への回動は制限され,前記支持杆7の配設方向が変位することは無い。
【0040】
アンテナ100の配設方向の変更に当たっては,前記取付ボルト70の緊締状態を,少なくとも前記係止片57B(57C)[本願の実施形態の場合は前記堤状突起56b(56c)を含む)]を乗り越えるほどに緩めるだけで行うことができる。
【0041】
このように構成された本願発明のマスト取付金具10と周知技術のマスト取付金具との違いについて図5を用いて説明する。図5はアンテナエレメントaが水平方向に配設されたアンテナに,雪が着雪した場合における本願発明のマスト取付金具10と周知技術のマスト取付金具13を比較するための要部拡大図であり,(a)本願発明のマスト取付金具10の場合,(b)周知技術のマスト取付金具13の場合である。
【0042】
図5(a)及び図5(b)との比較で判るように,本願発明のマスト取付金具10と周知技術のマスト取付金具13との違いは,本願発明のマスト取付金具10には,前記支持杆7の他方側の側面に被せるように一体的に突設した前記止着部55B(55C)が備えられていることであり,この止着部55B(55C)が本願発明の特徴である。尚,図5において破線で示したのはアンテナ100・11の存在であり,また,一点二短鎖線で示したのは着雪した雪の存在をそれぞれ模式的に記載したものである。
【0043】
既に述べたように,これらの前記マスト取付金具は,風が吹き付けることで発生する風圧や,降雪によってアンテナに着雪した雪の自重が加わっても,当該アンテナが傾いてしまわないように,設置時の状態を維持する強固さが必要とされる。特に,前記アンテナが水平偏波を受信するようマストに取り付けられていて,しかもその設置場所が,降雪量の多い豪雪地帯に設置されている場合でも,アンテナの上に繰り返し積もる大量の雪の荷重や,風圧の荷重に耐えるようにしなければならない。
【0044】
図5(b)に示されている周知技術のマスト取付金具13は,当該アンテナ補助アーム15(本願発明の支持杆7に相当)の一方側の側面(図の左側に位置する側面)を受け入れて,取付ボルト21でもって前記アンテナ補助アーム15を固定保持する構成である。この構成では前記アンテナ補助アーム15(言い換えれば,アンテナ11)に,図の右方向の回動に係る力(即ち,積雪荷重Nや風圧荷重W)が加わったとすると,前記取付ボルト21だけがそれらの力を受け止め支えることとなり,前記マスト取付金具13の本体自体は,前記アンテナ補助アーム15の保持状態を維持する支持剛性を高める役目を担っていない。
【0045】
その結果,前記アンテナ11に積もった雪の積雪荷重や,風が吹き付けることで発生する風圧荷重が前記アンテナ11に繰り返し加わることによって,取付ボルト21が徐々に曲がってしまって,受信性能を大きく損なうことが起きる。この時,図5(b)の矢印Rで示されているように,アンテナ補助アーム15に力が加わると,当該アンテナ補助アーム15は,その軸線ではなく,取付ボルト21とマスト取付金具13とアンテナ補助アーム15が連接されている部分を回動の凡の中心として,当該アンテナ補助アーム15がマスト取付金具13から離れる(図の間隙G)ように回動することから,前記取付ボルト21のネジ頭近傍の軸部23にストレスが集中して,前記取付ボルト21のネジ頭近傍の軸部23で曲がってしまい,その結果としてアンテナ11の配設方向が傾いてしまう。
【0046】
そこで特許文献1で示される従来技術では,アンテナ取付補助具1を新たに追加することによって,当該アンテナ取付補助具1とマスト取付金具13とで,前記アンテナ補助アーム15を挟み込むようにして取付ボルト21で挟持緊締する構成としたことによって,マスト取付金具13の支持剛性を高くしていた。
【0047】
これに対して,本願発明のマスト取付金具10は,図5(a)に示されているように,その内側の凹部に前記支持杆7の一方側の側面(図の実施例では支持杆7の左側に位置する側面)を受け入れると共に,前記当接部54B(54C)における前記止着部55B(55C)を,前記支持杆7の他方側の側面の一部(図の実施例では支持杆7の右側の上側側面)に被せるように備えることで,前記当接部54B(54C)と前記止着部55B(55C)とで持って,前記支持杆7を挟み込むように前記取付ボルト70でもって挟持緊締するように構成されている。その為,前記支持杆7(言い換えれば,アンテナ100)に,図の右方向の回動に係る力(即ち,積雪荷重Nや風圧荷重W等)が加わったとしても,前記取付ボルト70及び前記止着部55B(55C)がそれらの力を分散して受け止め支えることができるから,ストレスによって前記取付ボルト70が曲がってしまってアンテナ100が大きく傾き,受信性能が劣化することを防ぐことができる。
【0048】
しかも,前記止着部55B(55C)はマスト取付金具10本体と一体的に形成されているため,当該マスト取付金具10本体自体も,前記支持杆7の保持状態を維持する役目を担わすことができるので,従来技術のように補強のための余分な部材を備えたり,当該部材を組み付けたりする手間が省けることから,コストが安価で且つ取扱性の優れたマスト取付金具10を提供できる。
【0049】
つまり,図5(a)に示された実施形態では,前記支持杆7(つまり,アンテナ100)に対して図の右方向に回動させようとする力は,前記取付ボルト70から当該取付ボルト70が前記切欠部58B(58C)において係合された前記止着部55B(55C)加わる。更に当該止着部55B(55C)に加わった力は,当該止着部55B(55C)の前記板体59B(59C)の平面の傾斜方向である斜め下向き外方向に加わるものの,前記止着部55B(55C)は,前記支持杆取付体50B・50Cに一体的に形成されていることから,前記マスト取付金具10本体自体も,前記支持杆7の保持状態を維持する役目を担うことで,支持剛性が高くなる。
【0050】
更に言えば,図5(a)に示された実施形態では,前記止着部55B(55C)は,前記板体59B(59C)がなす平面が,水平方向より下方に向くように傾斜させた状態で,前記支持杆7の他方側の上側側面に沿うように被せつけられていることから,仮に,前記アンテナ100に対して前記止着部55B(55C)が撓むような大きな力が加わったとしても,当該止着部55B(55C)が前記支持杆7を巻き込むように撓んで負荷を吸収するため,前記取付ボルトに負荷が集中して当該取付ボルトが曲がってしまうことを防止でき,前記支持杆7の配設方向の大きな変化は起こらない。
【0051】
既に述べたようにこの状態において,前記蝶ナット71と前記止着部55B(55C)における前記板体59B(59C)の平面との当接面は,図5(b)に示された周知技術のような,アンテナ補助アーム15の外周面と蝶ナット21aとの当接面と比べ広くなるので,より確りと緊締状態を維持することができる。また,例え前記蝶ナット71による緊締が僅かに緩んだとしても,前記取付ボルト70の端部に対応する前記係止片57B(57C)と前記取付ボルト70のネジ頭の対応する前記堤状突起56b(56c)の存在によって,前記支持杆7の図における右側への回動は制限を受けるため,前記支持杆7の配設方向が大きく変位することは無い。
【0052】
尚,本発明は,図6において例示するマスト取付金具10Aように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。尚,図6は本願発明のマスト取付金具の異なる実施形態を説明するための要部拡大図であり,(a)は水平偏波受信の場合,(b)は垂直偏波受信の場合を示している。
本願発明の異なる実施形態のマスト取付金具10Aと,前記マスト取付金具10との違いは,前記止着部55B(55C)の形成位置にある。前記マスト取付金具10における前記止着部55B(55C)は,前記当接部54B(54C)の開口部54b(54c)における上側開口端部54ba(54ca)から,前記支持杆7側に向かって斜め下方に向けて突出させた例を示したが,この異なる実施形態におけるマスト取付金具10Aの止着部55B(55C)は,図6に示されるように,前記開口部54b(54c)における下側開口端部54bb(54cc)から,前記支持杆7側に向かって斜め上方に向けて突出するように一体的に連設されている。
【0053】
この異なる実施形態における止着部55B(55C)は,当該止着部55B(55C)を構成する板体59B(59C)の平面が,水平方向より斜め上方に向けて突設されているため,図6(a)のようにアンテナ100の配設方向を水平偏波受信に対応させた状態では,この止着部55B(55C)は前記支持杆7の他方側の下側側面(図の実施例では支持杆7の右側に位置する下側側面)を斜め下から受け止める(矢印r)。その結果,この止着部55B(55C)は,前記支持杆7がボルト70とマスト取付金具10と支持杆7の連接部分を回動の凡その中心として,前記マスト取付金具10の凹部から図の右方向へ離れようとする動きを制限するので,前記取付ボルト70(詳しくは,当該取付ボルト70のネジ頭72近傍の軸部73)に加わるストレスは,当該取付ボルト70と前記止着部55B(55C)とで分散され,前記支持杆7の配設方向を大きく変化させることを防ぐから,アンテナが大きく傾いて,受信性能が劣化することが無い。
【符号の説明】
【0054】
2…ブーム,3…アンテナマスト,4…反射器,5…放射器,6…導波器,6a…アンテナエレメント,7…支持杆,7a…立上部,7b…連結具,7c…連結孔,10…マスト取付金具,30…マスト当付金具,32…当付片,33・34…孔,40…U字ボルト,41…蝶ナット,42…元部,43…自由端,50…マスト取付基体,50A…基体,51A…受入部,52A…添付部,52a…鋸歯部,53A…収容部,50B・50C…支持杆取付体,54B・54C…当接部,54b・54c…開口部,54ba・54ca…上側開口端部,54bb・54cc…下側開口端部,55B・55C…止着部,55b・55c…先端面,56B・56C…長孔,56b・56c…堤状突起,57B・57C…係止片,58B・58C…切欠部,59B・59C…板体,70…取付ボルト,71…蝶ナット,72…ネジ頭,73…軸部,100…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナエレメントを具備するアンテナブームを,横臥させた状態で下方から支持するようにした略U字形状の断面略円形の支持杆に備えられ,当該支持杆をマストに対して取り付けることができるように構成されたマスト取付用の金具であって,前記支持杆に対して,取付ボルトを使って前記アンテナエレメントの配設方向を水平方向から垂直方向の範囲で回動自在に固着して取り付けるように構成されたマスト取付基体と,当該マスト取付基体との間に前記マストを受け入れ,当該マストに当て付けるマスト当付金具と,前記マスト取付基体に備えられ,当該マスト取付基体と前記マスト当付金具とを,前記マストを挟んだ状態でナットの螺合を使って挟持緊締するU字ボルトと,からなるマスト取付金具において,
前記マスト取付基体は,内側には前記支持杆の外周面に重合しないように形成され,前記支持杆の一方側の側面を受け入れる凹部を有した受入部を備えると共に,外側には前記マストに向かうように設けられ,当該マストに添え付けるように形成された一対の添付部と,前記受入部の中間位置にあって前記マストとは重合しないように設けられ,前記U字ボルトの元部を回動自在に収納する収容部と,を備えてなる基体と,
前記基体の両側に延設され,内側に前記支持杆を受け入れ回動自在に固着するように形成された部材であって,前記支持杆の外周面に対応する凹部を有するように形成され,当該支持杆の一方側の側面を開口部から前記凹部に受け入れる当接部と,当該当接部の前記凹部の形成方向における一方側の開口端部から突出するように連設され,当該支持杆の他方側の側面の一部に沿うように形成された止着部と,前記当接部に設けられた孔であって,前記凹部の形成方向に長手方向を有するように形成され,前記取付ボルトを挿通すると共に,前記支持杆の配設方向の変更に伴う前記取付ボルトの回動を自在とするように構成された長孔と,前記止着部の先端面から前記長孔に向けて,前記長孔の長手方向の軸線と略一致する軸線を有するように設けられ,前記取付ボルトの回動に伴って当該ボルトの端部を挿抜自在に係合する大きさに形成された切欠部と,前記止着部の先端面部分から外方向に向けて突設した係止片と,を備えてなる支持杆取付体と,
から構成されたマスト取付金具。
【請求項2】
前記止着部は,前記当接部の上側の開口端部から前記支持杆側に向かって突出するように連設され,前記開口端部から前記係止片までの範囲内で続く平面を有する板体からなり,しかも,当該板体は前記支持杆の他方側の上側側面に沿うよう水平方向より下方に向けて前記平面を傾斜させた状態に形成されており,
前記支持杆に対して,前記アンテナエレメントの配設方向が水平方向を向くように取り付けた状態において,前記当付部と前記止着部とで前記支持杆を挟み込むようにして,前記取付ボルトを使って挟持緊締するように構成されていることを特徴とした請求項1に記載のマスト取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−249162(P2012−249162A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120493(P2011−120493)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】