説明

マットレス及びベッド装置

【課題】マットレス収縮時に上方向の力が働いてもマットレスの浮き上がりを確実に防止できるマットレス及びベッド装置を提供する。
【解決手段】マットレス10は、長手方向端面10aがボトム14の収縮時にフットボード24から圧縮力を受けるように用いられるものであり、その圧縮を受ける長手方向端面10aは、その上側(符号「10a1」で示す)がその下側(符号「10a2」で示す)よりも長手方向の足側先方に位置する斜面構造に形成されていて、圧縮されてもマットレス10に浮き上がりが生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマットレス及びベッド装置に関する。
【0002】
従来、ベッド装置において、足部の長さを調整可能にした技術が提案されている。
【0003】
例えば特開2006-136669号公報(「特許文献1」という)には、マットレスの足側の箇所をベッド装置の長手方向に伸縮調整可能にしてボトム長を調整可能にしたマットレスが開示されている。この特許文献1では、ベッドのボトム上に載せたマットレスは、単層のウレタンフォーム芯材の足側部分に反発度を調整するため、十字状もしくは一字状の厚さ方向の貫通穴を所定間隔ごとに千鳥状に打抜き加工して形成している。
【0004】
又、特開2009−273894号公報には、その図面に示されるように、マットレスの足部がフォームコアを波打たせて形成されているものが開示されている。この場合、デッキ足部の長さを収縮した際に、フォームコアの波形態が該足部の長手方向の縮小を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−136669号公報
【特許文献2】特開2009−273894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マットレス芯材の足部の収縮性調整ため、前述の特許文献1のように十字の打ち抜き加工することや、特許文献2のように波形状にすることによって、マットレス収縮時の長手方向の反発力を小さくすることは出来るが、ベッドボトム面のわずかな段差等によってベッドボトム上のマットレスが弓なりになるので、従来技術では、マットレス収縮時に上方向の力が働いて、マットレスの浮き上がりを抑えることは出来ないものであった。
【0007】
したがって、従来のマットレスの構成では、マットレス収縮時に上方向の力を抑える有効な対策が必要である。
【0008】
また、打抜加工や波形状によって、マットレス収縮時の長手方向の反発力を小さくしたとしても、マットレスのカバーに伸縮性のない織物を用いた場合、マットレスの収縮に伴い、当該カバーに広範囲にしわが寄ってしまい、その寄ったしわにより、マットレスが浮き上がってしまった。
【0009】
したがって、従来の形状ではマットレス収縮時のカバーのしわを抑えることに対しても有効な対策が必要であった。
【0010】
本発明は、前記の実情に鑑みなされたもので、マットレス収縮時に上方向の力が働いてもマットレスの浮き上がりを確実に防止できるマットレス及びベッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、長手方向の端面が圧縮を受けるように用いられるマットレスにおいて、圧縮を受ける長手方向の端面は、その上側がその下側よりも長手方向の先方に位置する構造に形成されていることを特徴とするマットレスである。
【0012】
本発明においては、前記マットレスがカバーに覆われており、該カバーには、前記長手方向の端面側の底面部に滑り止め構造を設けたことが好適である。
【0013】
本発明は、前記マットレスを設置して用いるボトム起伏または伸縮機能を備えたことを特徴とするベッド装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、マットレスの圧縮を受ける長手方向端面が、その上側がその下側よりも長手方向先方に位置する構造(例えば斜面構造)に形成されているので、圧縮を受けたときに他面の上側が下側よりも先に圧縮され、該マットレス端面が回転モーメントを受けながら圧縮される。したがって、該マットレスの端面には下方向に向かう力が働き、上方向の力が抑えられるので、マットレスの浮き上がりが確実に防止できる。
【0015】
また、本発明において、マットレスのカバーに、前記長手方向端面側の底面部に滑り止め構造を設けることによって、マットレスの長手方向端面が圧縮を受けたときにマットレスカバーは滑り止め構造から端面側の部分のみが収縮し、マットレスカバーにしわが寄るのをこの収縮部分だけに抑える(収縮範囲を限定する)ことができる。したがって、仮にカバーに伸縮性のない織物を用いた場合等に、しわが寄るのを上記の収縮部分のみに抑えてマットレスがしわにより浮き上がるのを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマットレスが設置された伸縮機能を持ったベッドの装置の説明図であり、(a)が側面図、(b)が平面図である。
【図2】図1のマットレスの側面視した説明図である。
【図3】(a)は従来品の説明図、(b)は実施形態のマットレスの説明図である。
【図4】(a)〜(c)図1のマットレスの変形過程の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るマットレスの側面視説明図である。
【図6】(a)がマットレスの比較例動作説明図、(b)が図5のマットレスの動作説明図である。
【図7】カバーのしわの寄り方を示す説明図であって、(a)がマットレスの比較例動作説明図、(b)が図5のマットレスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図7は、本発明の実施形態に係るマットレスの説明図である。
【0018】
図1〜図2に示すように、マットレス10は、ベッド装置12のボトム14上に載置されて使用されるものである。前記ベッド装置12は、病院や家庭等の使用箇所において、患者等の使用者がマットレス10上に横臥するための水平に設置されるものであって、図1において、マットレス10の長手方向が左右方向であって、マットレス10上の横臥する使用者の頭が向く頭部方向側について「head」を略記して符号「h」で示し、足が向く足部18方向側について「foot」を略記して符号「f」で示している。この「h」及び「f」で指し示す方向がマットレス10の長手方向である。
【0019】
前記ベッド装置12は、一般的な水平なフロア上にキャスター車輪16aによって移動可能に設置される概略矩形の台車部16と、該台車部16上に昇降脚部16bによって昇降可能に支持されるメインフレーム20と、該メインフレーム20上に保持される前記ボトム14とを備えた構造のものである。
【0020】
前記メインフレーム20の長手方向側端部、つまり、足側端部には、延長フレーム22が長手方向に進退動可能に設置され、その延長フレーム22の末端部に使用者の足に向くフットボード24が垂直方向に立設している。又、メインフレーム20の頭側端部には、ヘッドボード26が立設されている。延長フレーム22は、手作動又はアクチュエータ等の動力によってメインフレーム20から進退動し、同時にフットボード24も進退動する。
【0021】
前記ボトム14には、前記延長フレーム22が伸長した場合に当該延長フレーム22上を覆うようにボトム14の足側から延びる延長ボトム14aが設けられており、延長フレーム22の進退動に追従して延長ボトム14aが進退動して、マットレス10が延長フレーム22側に落ち込まないようになっている。
【0022】
延長ボトム14aはフットボトムでもあり、図1や図2に示すように中程のボトム14に比較して、段差を有して高くなっている。
【0023】
また、この延長ボトム14aの進退動に追従するようにフットボード24も移動する。
【0024】
このようにフットボード24が立設しており、メインフレーム20から延長フレーム22が進退動することによってボトム14の長さが伸縮し、同時に、フットボード24が長手方向に移動する。ボトム14の長さが一番長いときに合わせて設置されたマットレス10である。マットレス10は、ボトム14が短くなる方向に移動することによって、フットボード24が長手方向端面10aを押圧して、該マットレス10の足部18が圧縮を受けるように用いられる。
【0025】
実施形態において、マットレス10は、f方向側の足部18(使用者の足が載る部分であって例えばマットレス10全体長さの1/2〜1/5程度)が前記長手方向端面(足側端面)10aの押圧等による圧縮によって変形する部分になる。マットレス10は、少なくとも足部18は発泡ウレタン素材からなる板材を単層又は複数層で設けており、該足部18を含めてマットレス10全体外側がカバー28で覆われている。
【0026】
図2に詳細に示すように、実施形態のマットレス10は、長手方向の端面10aがボトム14の収縮時にフットボード24から圧縮力を受けるように用いられるものであり、その圧縮を受ける長手方向の端面10aは、その上側(符号「10a1」で示す)がその下側(符号「10a2」で示す)よりも長手方向の足側先方に位置する斜面構造に形成されている。
【0027】
比較のため、ベッド装置上に従来のマットレスに設けた例を図3(a)に示し、当該ベッド装置上に実施形態のマットレスを設けたものを図3(b)に示す。図3(a)に示すように、従来のマットレスAの長手方向の足側端面A1が垂直方向上下に向いており、当該端面A1がフットボード24の当接面に平行に形成されている。したがって、端面A1がフットボード24によって押圧されると、上向きに曲がってしまう。
【0028】
これに対して、実施形態では、図3(b)に示すように、長手方向端面10aにおいて上側10a1が下側10a2よりも凸の端面に形成されており、該端面10aはフットボード24の当接面に対して例えば10°〜40°の角度で開いている。
【0029】
図4(a)〜(c)は、前記端面10aがフットボード24で押圧された経過を示す説明図である。
図4の(a)に示すように、フットボード24にマットレスの長手方向の端面10aが対向する状態から、フットボード24をh方向に移動させる。
【0030】
図4の(b)に示すように、当該端面10aにフットボード24を力Fで押しつける。すると長手方向端面10aが下側10a2よりも凸に形成された上側10a1が先にフットボード24に当る。この場合、端面10aへの力が上側10a1から下側10a2にかけて各矢印で示す力F1、F2、…Fn(n=1…n)は順に力が少なくなる(F1>F2>…>Fn)。
つまり、前記長手方向端面10a(斜面)の上ほど多くの圧縮力が作用する。このように端面10aへの力が上側10a1が下側10a2よりも強い圧縮力から斜面の下側10a2(底辺)を中心とした回転モーメントFtが発生し、図4(b)に示すよう、マットレス10は破線の状態から実線の状態に下側の延長ボトム14a上に押しつけられる。
したがって、マットレス10の浮き上がりが生じない。
【0031】
マットレス10の端面10aに、さらに、フットボード24を押し付けて圧縮しても、図4(c)に示すように、強い回転モーメントFtからマットレス10は破線の状態から実線の状態にさらに強く押し付ける力が作用する。したがって、さらに圧縮されたマットレス10であっても浮き上がりは生じない。
【0032】
以上のように第1の実施形態においては、マットレス10の圧縮を受ける長手方向端面10aが、その上側10a1がその下側10a2よりも長手方向先方に位置する構造(斜面構造)に形成されているので、圧縮を受けたときに長手方向端面10aの上側10a1が下側10a2よりも先に圧縮され、該マットレス端面10aが下向きの回転モーメントFtを受けながら圧縮される。
したがって、該マットレス10の長手方向端面10aには下方向に向かう力が働き、上方向の力が抑えられるので、マットレス10の浮き上がりが確実に防止される。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態を図5〜図7によって説明する。第2の実施形態に係るマットレス10では、上記第1の実施形態のマットレスのカバー28に、前記長手方向の端面側、つまり足部18の底面部に滑り止め構造30を設けたものである。
【0034】
マットレス10では、芯材が各種ウレタンフォーム材を用いている。また、カバー28の材質が織物、不織布等各種の繊維質のものや、樹脂製の平坦なシート材等を使用できるが、足部の圧縮によってマットレス芯材が圧縮した際にカバー28にしわが寄る構造である
カバー28底部に設ける滑り止め構造30には、ボトム14aに対する摩擦係数の高い材質のもの(例えば、ゴム、エラストマー、合成樹脂等のカバー28よりも摩擦係数の高い材質のもの)を用いる。
【0035】
また、滑り止め構造30は、図5に示すように、マットレス10の足部18の底面側であり、ボトム14の延長ボトム14a表面に対面する側に設けており、延長ボトム14a表面の加工を前記滑り止め構造30に対して適切な摩擦係数を付与する材質が好ましい。例えば樹脂系滑り止め塗料を塗ることや、凹凸の表面加工(エンボス加工)を施すことが適切である。
【0036】
第2実施形態のマットレス10においては、フットボード24によって長手方向の端面10aを押圧すると第1実施形態のマットレス10と同様に足部18には下向きにモーメントが生じると共に、カバー28の頭方向(h方向)への移動は滑り止め構造30との間で生じる摩擦力によって延長ボトム14aに固定されるので、圧縮は滑り止め構造30と足部18の長手方向端面10aとの間で生じ、限定された範囲になる。
【0037】
図6(a)、図7(a)に従来のマットレスAと、図6(b)、図7(b)に第2の実施形態に係るマットレス10とについて実施形態のベッド装置上に載置してそれぞれ長手方向の端部を押圧し圧縮した状態を比較して示している。
【0038】
図6(a)に示すように、従来のマットレスAでは、長手方向の端部A1が平坦であるので、そのままマットレスAが押されて収縮するが、カバーA2に広範囲にしわNが寄りかつマットレスAが浮き上がる。
【0039】
これに対して、図6(b)及び図7(b)に示すように、第2の実施形態のマットレス10はフットボード24が圧縮すると、滑り止め構造30と長手方向端面10aとの間の収縮部32のみにカバー28の収縮が抑えられ、マットレス10が浮き上がりにくくなる。
【0040】
第2の実施形態によれば、マットレス10のカバー28に、前記長手方向端面10a側の底面部に滑り止め構造30が設けられることによって、マットレス10の長手方向端面10aが圧縮を受けたときに、カバー28は滑り止め構造30から端面10a側の収縮部32のみが収縮し、マットレスカバー28にしわが寄るのはこの収縮部分だけに抑える(収縮範囲を限定する)ことができる。
【0041】
したがって、仮にカバー28に伸縮性のない織物を用いた場合等、しわが寄るのが上記の収縮部分のみに抑えてマットレス10がしわによって浮き上がるのを効果的に防止できる。
【0042】
発明者の知見によれば、第2の実施形態において、マットレス(95mm厚)の伸縮時の浮き上がり量が図6(a)の従来の場合が67mmであったのが、実施形態のマットレス10では、19mmに減少した。つまり、浮上がり量で見て72%減少しており、本発明の有用性が確認された。
【0043】
なお、本発明においては、マットレスの圧縮される長手方向端面が斜面に限定されず、その上側がその下側よりも長手方向先方に位置する構造であれば段状である等各種形状に形成することができる。
又、マットレス10を載置するベッド装置は、実施形態の構成の他、各種の構成例えばリンクで足部18を伸縮させるものでもよい。ベッド装置は、その他、上下に起伏する機能を持ち全体としてマットレスを伸縮させるように作用するベッド装置も用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の家庭用、病院用等各種ベッド装置用のマットレスに利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 マットレス
10a マットレスの長手方向端面
10a1 長手方向端面の上側
10a2 長手方向端面の下側
12 ベッド装置
14 ボトム
14a 延長ボトム
16 台車部
18 足部
20 メインフレーム
22 延長フレーム
24 フットボード
26 ヘッドボード
28 マットレスのカバー
30 滑り止め構造
32 収縮部
F フットボードによる押圧力
F1…Fn 各部の押圧力の力
Ft 回転モーメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向端面が圧縮を受けるように用いられるマットレスにおいて、
圧縮を受ける長手方向端面は、その上側がその下側よりも長手方向先方に位置する構造に形成されていることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記マットレスがカバーに覆われており、該カバーには、前記長手方向端面側の底面部に滑り止め構造を設けたことを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマットレスを設置して用いるボトム起伏または伸縮機能を備えたことを特徴とするベッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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